説明

電柱昇降用縄ばしご

【課題】 本発明は、持ち運びが便利で、且つ電柱の昇降を円滑に行うことのできる電柱昇降用縄ばしごを提供することを課題とする。
【解決手段】 左右両側に複数のステップが取り付けられ、少なくとも下方側にある左右のステップが高さ方向で互い違いに配置された電柱に用いる電柱昇降用縄ばしごであって、ステップから垂下させる左右一対の垂下縄部と、両端部が一対の垂下縄部に接続され、該垂下縄部の長手方向に間隔をおいて設けられた二つ以上のステップ縄部とを備え、前記一対の垂下縄部は、各一端部にステップに掛止させる掛止手段が設けられ、各掛止手段を左右のステップの配置に対応させるべく、一方の垂下縄部の一端側が他方の垂下縄部の一端よりも延出するように形成されるとともに、各ステップ縄部の両端部は、先端を垂下縄部の他端側にして垂下縄部に沿った状態で該垂下縄部に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電柱の昇降に用いるための電柱昇降用縄ばしごに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から電柱には昇降用のステップが設けられている。かかるステップは、電柱の径方向の左右両側に、電柱の高さ方向に所定間隔をおいて複数設けられている。そして、その左右両側にある複数のステップは、電柱の高さ方向に互い違いに配設されている。すなわち、各ステップは、電柱を昇降する作業者の手や足の位置に適した配置で設けられており、電柱に対して昇降する作業者の利便性を高めるようにしている。
【0003】
ところで、複数のステップを電柱の全長に亘って配設できれば、作業者はそのまま電柱に対して昇降できるが、ステップは電柱に対して突出した態様で設けられるため、安全面等の配慮から地面から所定高さの範囲にステップを配置しないのが一般的である。
【0004】
そのため、作業者は梯子で所定高さにまで上がって最下のステップに乗り移るようにして電柱に対する昇降作業を行っている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の如く電柱の昇降に梯子が必要であると、作業者は常に梯子を持ち運ばなければならず、該作業者の作業負担が大きくなるといった問題がある。特に、山間部のように車の乗り入れが困難な地域においては、作業者が梯子を持って長距離を移動しなければならず、作業負担は多大なものとなってしまう。
【0006】
そこで、本発明は、斯かる実情に鑑み、持ち運びが便利で、且つ電柱の昇降を円滑に行うことのできる電柱昇降用縄ばしごを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電柱昇降用縄ばしごは、左右両側に所定高さから上方に向けて所定間隔で複数のステップが取り付けられ、少なくとも下方側にある左右のステップが高さ方向で互い違いに配置された電柱に対し、作業者が昇降する際に用いる電柱昇降用縄ばしごであって、左右両側のステップから垂下させる左右一対の垂下縄部と、両端部が一対の垂下縄部に接続され、該垂下縄部の長手方向に間隔をおいて設けられた二つ以上のステップ縄部とを備え、前記一対の垂下縄部は、各一端部にステップに掛止させる掛止手段が設けられ、各掛止手段を左右のステップの配置に対応させるべく、一方の垂下縄部の一端側が他方の垂下縄部の一端よりも延出するように形成されるとともに、各ステップ縄部の両端部は、先端を垂下縄部の他端側にして垂下縄部に沿った状態で該垂下縄部に接続されていることを特徴とする。なお、ここで「縄」とは、シュロや麻等の植物繊維を縒り合わせたロープや、合成繊維を縒り合わせたロープは勿論のこと、植物繊維と合成繊維とを縒り合わせたロープ等を含む概念である。
【0008】
上記構成の電柱昇降用縄ばしごによれば、一対の垂下縄部及び二つ以上のステップ縄部が縄(ロープ)で構成されているので、それぞれが変形自在で未使用時にコンパクトにすることができ、持ち運びが便利である。また、一対の垂下縄部は、各一端部にステップに掛止させる掛止手段が設けられ、各掛止手段を左右のステップの配置に対応させるべく、一方の垂下縄部の一端側が他方の垂下縄部の一端よりも延出するように形成されるので、電柱に取り付けられた左右両側のステップの配置が電柱の高さ方向で相違していても、各垂下縄部の他端側で位置ズレすることがなく、一対の垂下縄部に接続された各ステップ縄部の配置を適正な状態にすることができる。
【0009】
さらに、各ステップ縄部の両端部は、先端を垂下縄部の他端側にして垂下縄部に沿った状態で該垂下縄部に接続されているので、作業者が当該電柱昇降用縄ばしごを上がる際に、各ステップ縄部に対して円滑に足をかけることができる。すなわち、作業者が足をかける部分を真っすぐな棒材で構成したり、各垂下縄部と略直交するようにステップ縄部を設けたりすると、一対の垂下縄部をステップから垂下させた状態で、足のかける部分が電柱と接触して作業者が足をかけることができなくなる。しかしながら、本発明に係る電柱昇降用縄ばしごのステップ縄部は、両端部が先端を垂下縄部の他端側にして垂下縄部に沿った状態で該垂下縄部に接続されているので、端部よりも中央側が上方に位置することになり、一対の垂下縄部をステップに掛止した状態で、ステップ縄部が自重或いは電柱との接触等によって倒れてその中央部分が電柱から離れた態様となる。従って、作業者はステップ縄部に容易に足をかけることができ、円滑に昇降することができる。
【0010】
そして、本発明の一態様として、前記ステップ縄部には、筒状に形成された保持体が外嵌されてもよい。このようにすれば、保持体の存在でステップ縄部の少なくとも一部に剛性を持たせることができ、作業者が足をかけやすくすることができる。
【0011】
さらに、本発明の他態様として、電柱に対して巻着可能な巻着手段を更に備えるとともに、一対の垂下縄部のそれぞれの他端部に巻着手段を挿通させる挿通部が設けられていてもよい。このようにすれば、巻着手段を挿通部に挿通した状態で電柱に巻き付けることで、ステップから垂下した垂下縄部(電柱昇降用縄ばしご)の下端部の移動が規制され、さらに作業者が昇降し易い状態にすることができる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明の電柱昇降用縄ばしごによれば、持ち運びが便利で、且つ電柱の昇降を円滑に行うことができるという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態に係る電柱昇降用縄ばしごについて、添付図面を参照しつつ説明する。
【0014】
本実施形態に係る電柱昇降用縄ばしごは、図1に示す如く、径方向左右両側に所定高さから上方に向けて所定間隔で複数のステップSL…、SR…が取り付けられ、少なくとも下方側にある左右両側のステップSL…、SR…が高さ方向で互い違いに配置された電柱Pに対し、作業者が昇降するのに用いるものである。
【0015】
具体的に説明すると、本実施形態に係る電柱昇降用縄ばしごは、図2に示す如く、左右両側のステップSL…、SR…から垂下させる左右一対の垂下縄部10a,10bと、両端部が一対の垂下縄部10a,10bに接続され、該垂下縄部10a,10bの長手方向に間隔をおいて設けられた二つ以上のステップ縄部11…とを備えている。さらに、本実施形態に係る電柱昇降用縄ばしごは、前記ステップ縄部11…に外嵌された筒状の保持体14と、電柱Pに対して巻着可能な巻着手段15とを備えている。
【0016】
前記一対の垂下縄部10a,10bのそれぞれは、麻やシュロ等の植物繊維、又は、合成繊維、或いはこれらの組合せで縒られた変形自在な(可撓性を有する)ロープで構成されている。そして、一対の垂下縄部10a,10bは、一方の垂下縄部10aの一端側が他方の垂下縄部10bの一端よりも延出するように形成されている。すなわち、一対の垂下縄部10a,10bの一方10aは他方10bの比べてステップSL…、SR…の間隔分長く形成されており、他端側を一致させるように設けられている。本実施形態に係る一対の垂下縄部10a,10bは、上述の態様となるよう、一本のロープを長手方向でU字状に曲げることで対向する部分で構成されている。
【0017】
そして、一対の垂下縄部10a,10bの各一端部には、ステップSL…、SR…に掛止するための掛止手段12a,12bが設けられている。上述の如く、一対の垂下縄部10a,10bの一端同士が長手方向にずれた位置にあるため、各掛止手段12a,12bについても、それぞれ垂下縄部10a,10bの長手方向にずれた位置に設けられている。すなわち、本実施形態に係る電柱昇降用縄ばしご1は、掛止手段12a,12bを電柱Pの左右両側にあるステップSL…、SR…に対応した配置にすべく、一方の垂下縄部10aの一端側が他方の垂下縄部10bの一端よりも延出するように構成している。
【0018】
本実施形態に係る掛止手段12a,12bは、垂下縄部10a,10bの一端部を輪のようにして形成されている。すなわち、各掛止手段12a,12bは、垂下縄部10a,10bの一端側を略U字状に折り曲げて該垂下縄部10a,10bの他端側の部分に端部を接続することで、環状に形成されている。なお、垂下縄部10a,10bの他端側の部分に対する端部の接続方法については、垂下縄部10a,10bに対するステップ縄部11…の接続、及び後述する挿通部13a,13bの作製方法と併せて、詳細に後述することとする。
【0019】
本実施形態に係る電柱昇降用縄ばしご1は、垂下縄部10a,10bの各他端部に前記巻着手段15を挿通させる挿通部(以下、ベルト挿通部という)13a,13bが設けられている。本実施形態のベルト挿通部13a,13bは、垂下縄部10a,10bと同様のロープを環状にして形成されている。なお、本実施形態おいては、一対の垂下縄部10a,10bが一本のロープをU字状に曲げて形成されているため、ベルト挿通部13a,13bは垂下縄部10a,10bとは別体で形成された上で、各垂下縄部10a,10bの他端部に接続されている。
【0020】
前記ステップ縄部11…についても、垂下縄部10a,10bと同様のロープで形成されている。そして、各ステップ縄部11…は、一方の端部が一方の垂下縄部10aに接続され、他方の端部が他方の垂下縄部10bに接続されることで、一対の垂下縄部10a,10bに跨った態様をなしている。ここで本実施形態の特徴部分について説明すると、各ステップ縄部11…の両端部は、先端を垂下縄部10a,10bの他端側(ステップSL…、SR…に掛止した状態で下側になる端部側)にして垂下縄部10a,10bに沿った状態で該垂下縄部10a,10bに接続されている。すなわち、各ステップ縄部11…の端部は、両端から中央側に向けて垂下縄部10a,10bの一端側(ステップSL…、SR…に掛止した状態で上側になる端部側)に延びるように、垂下縄部10a,10bに接続されている。
【0021】
従って、該電柱昇降用縄ばしごは、常態(ステップSL…、SR…に掛止していない状態)で、ステップ縄部11…の中央部がその端部よりも垂下縄部10a,10bの一端側に倒れた姿勢になるようになっている。これにより、一対の掛止手段12a,12bを左右両側のステップSL…、SR…に掛止して垂下縄部10a,10bをステップSL…、SR…から垂下させると、ステップ縄部11…が電柱Pから離間して作業者の足がかけやすい態様になるようになっている。つまり、一対の垂下縄部10a,10bをステップSL…,SR…から垂下させると、ステップ縄部11…の中央が自重又は電柱Pとの接触で垂下縄部10a,10bとの接続部分を支点にして該垂下縄部10a,10bの他端側に倒れようとするが、ステップ縄部11…(ロープ自体)の剛性で垂下した姿勢に至ることなく倒れる途中の姿勢で維持させ、ステップ縄部11…の中央部分(足をかける部分)が電柱Pから離れた状態、すなわち、足のかけ易い状態になるようになっている(図4(ロ)参照)。
【0022】
さらに、本実施形態においては、各ステップ縄部11…は、垂下縄部10a,10bの他端側に位置するものほど長さが短く設定されている。すなわち、電柱Pの左右両側にあるステップSL…、SR…から垂下する一対の垂下縄部10a,10bは、ステップSL…、SR…の軸線と交差する方向に傾斜(他端側ほど電柱Pの前方側(作業者が位置する側)に傾斜)した状態になるため、各ステップ縄部11…は、その状態を考慮して、電柱Pの外周回りにおける一対の垂下縄部10a,10b間の距離に対応した長さに設定している。これにより、ステップ縄部11…と電柱Pとの間に、作業者がステップ縄部11…に足をかけるのに最低限必要な隙間を形成した上で、作業者が足をかけたときにステップ縄部11…が必要以上に下方に垂れてしまうのを防止できるようにしている。
【0023】
前記保持体14は、ステップ縄部11…の足をかける部分を適正な姿勢で維持させるためのもので、本実施形態においては、重量の増加の防止やステップ縄部11…の変形を担保の観点から、樹脂やゴム等の可撓性を有するチューブで構成されている。なお、該保持体14は、ステップ縄部11…を垂下縄部10a,10bに接続する前にステップ縄部11…に外嵌されており、ステップ縄部11…は保持体14が外嵌された状態で垂下縄部10a,10bに接続されている。
【0024】
そして、前記巻着手段15は、電柱Pの基端部の外周長さ以上のベルト15aと、該ベルト15aの一端部に設けられたバックル15bとで構成されている。前記バックル15bは、ベルト15aを挿通可能に構成されるとともに挿通したベルト15aを係止できるようになっている。これにより、該巻着手段15は、帯体を電柱Pに巻き付けた状態で該電柱Pを締め付けて固定できるようになっている。
【0025】
次に、掛止手段12a,12bやベルト挿通部13a,13bの作製、及び垂下縄部10a,10bとステップ縄部11…との接続に用いられるロープの接続方法について説明する。なお、ここでは、図3に示す如く、被接続側のロープA及び接続側のロープBのそれぞれに、三本の細目のロープ(以下、細目ロープという)R1、R2、R3を縒って形成された同種のものを採用した場合を一例に説明することとし、便宜上、被接続側Aのロープを親ロープと、接続側のロープBを子ロープと称することとする。また、図中、下から上に向けて順に、ハッチングの入っていない細目ロープR1を第一細目ロープと、斜めハッチングの入った細目ロープR2を第二細目ロープと、縦ハッチングの入った細目ロープR3を第三細目ロープといい、親ロープAと子ロープBとの間で対応する細目ロープには同一名称及び同一符号を付すこととする。
【0026】
まず、子ロープBの先端部の縒りを解き、三本の細目ロープ(第一細目ロープR1、第二細目ロープR2、第三細目ロープR3)の状態にしてそれぞれの先端部にテープ等を張って各細目ロープR1、R2、R3の縒りが解かれるのを防止する。その後、子ロープBの第二細目ロープR2を親ロープAの第三細目ロープR3の下に通し、親ロープAの第三細目ロープR3を押さえつつ子ロープBの第一細目ロープR1を親ロープAの第一細目ロープR1の下に通す。
【0027】
そして、親ロープA及び子ロープBを180°回して(図において左右反転させて)、親ロープAの第二細目ロープR2を探し出し、子ロープBの第一及び第二細目ロープR1,R2と同じ方向で、子ロープBの第三細目ロープR3を親ロープAの第二細目ロープR2の下に通す。この状態で子ロープBの第一乃至第三細目ロープR1,R2,R3は親ロープAから三方向に出た状態になるので、これらを一本ずつ締め付ける。この工程がいわゆるサツマ挿しと言われるもので、この工程(サツマ挿し)を三回以上繰り返すことで親ロープAと子ロープBとが接続される。
【0028】
従って、掛止手段12a,12bは、垂下縄部10a,10bで輪をつくるように該垂下縄部10a,10bの端部を曲げ、子ロープBとして折り返された端部側が、該端部と対向する親ロープAとしての部分(垂下縄部10a,10b)にサツマ挿しされることで形成される。また、ベルト挿通部13a,13b部は、短尺なロープを輪にして子ロープBとしての一方の端部を親ロープAとしての他方の端部側にサツマ挿しされることにより形成され、そして、子ロープBとしての他方の端部を親ロープAとしての垂下縄部10a,10bにサツマ挿しされることで垂下縄部10a,10bに接続されている。
【0029】
そして、垂下縄部10a,10bに対するステップ縄部11…の接続においては、親ロープAとしての垂下縄部10a,10bに対して子ロープBとしてのステップ縄部11…の端部が該垂下縄部10a,10bの一端側から他端側に向けてサツマ挿しされることで、垂下縄部10a,10bに対して各ステップ縄部11…が接続されている。
【0030】
従って、本実施形態に係る電柱昇降用縄ばしご1の主たる構成は、単一の材料で形成されたもので、全体として折り曲げ自在な構成となっている。
【0031】
本実施形態に係る電柱昇降用縄ばしご1は、以上の構成からなり、図4(a)及び(b)を参照して、該電柱昇降用縄ばしご1の使用態様について説明すると、まず、一対の垂下縄部10a,10bの一端部に形成された各掛止手段12a,12bを電柱PのステップSL…、SR…に掛止させる。すなわち、各掛止手段12a,12bを間接活線工具や棒材等を介して電柱PのステップSL…、SR…に掛止させる。そうすると、本実施形態に係る電柱昇降用縄ばしご1は、各掛止手段12a,12bが左右両側のステップSL…、SR…の高さ方向の間隔に対応してずれた位置に設けられているので、左右両側で互い違いに配置されたステップSL…、SR…に垂下させても、各垂下縄部10a,10bの下端部(他端部)が略同じ高さに位置し、各ステップ縄部11…の両端同士が高さ方向で略対応した位置になる。
【0032】
そして、ベルト挿通部13a,13bにベルト15aを挿通した上で、該巻着手段15を電柱Pの基部に巻着して固定し、電柱昇降用縄ばしご1の下端の揺れの防止を図る。
【0033】
このように電柱昇降用縄ばしご1を取り付けると、上述の如くステップ縄部11…が一定の姿勢にまで倒れ、該ステップ縄部11…の中央部(保持体14)が電柱Pから離間してステップ縄部11…(保持体14)と電柱Pとの間につま先を位置させる隙間が形成される。従って、ステップ縄部11…(保持体14)に足をかけやすい状態となり、作業者は、円滑な昇降を行うことができる。
【0034】
以上のように、本実施形態に係る電柱昇降用縄ばしご1は、一対の垂下縄部10a,10b及び二つ以上のステップ縄部11…が縄(ロープ)で構成されているので、それぞれが変形自在で未使用時にコンパクトにすることができ、持ち運びが便利である。そして、前記一対の垂下縄部10a,10bは、各一端部にステップSL…、SR…に掛止させる掛止手段12a,12bが設けられ、各掛止手段12a,12bを左右のステップSL…、SR…の配置に対応させるべく、一方の垂下縄部10a,10bの一端側が他方の垂下縄部10a,10bの一端よりも延出するように形成されるので、電柱Pに取り付けられた左右両側のステップSL…、SR…の配置が電柱Pの高さ方向で相違していても、各ステップ縄部11…が傾くことなく適正な配置状態にすることができる。
【0035】
さらに、各ステップ縄部11…の両端部は、先端を垂下縄部10a,10bの他端側にして垂下縄部10a,10bに沿った状態で該垂下縄部10a,10bに接続されているので、作業者が当該電柱昇降用縄ばしご1を上がる際に、各ステップ縄部11…に対して円滑に足をかけることができる。
【0036】
そして、前記ステップ縄部11…には、筒状に形成された保持体14が外嵌されているので、保持体14の存在でステップ縄部11…の少なくとも一部に剛性を持たせることができ、作業者が足をかけやすくすることができる。
【0037】
さらに、電柱Pに対して巻着可能な巻着手段15を備えるとともに、一対の垂下縄部10a,10bのそれぞれの他端部にベルト15aを挿通させるベルト挿通部13a,13bを設けるようにしたので、電柱昇降用縄ばしご1の下端部の移動を規制することができ、作業者が円滑に昇降することができる。
【0038】
尚、本発明の電柱昇降用縄ばしごは、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0039】
上記実施形態において、ステップ縄部11…に外嵌した保持体14を設けるようにしたが、これに限定されるものでなく、例えば、保持体14を設けることなくステップ縄部11…に直接足をかけるような構成であってもよい。但し、作業者が足を置いたときの安定性等を考慮すれば、保持体14を設けることが好ましことが言うまでもない。また、保持体14を設ける場合、保持体14は円筒状のものに限定されるものではなく、例えば、保持体14に断面多角形状をなす筒体を採用するようにしてもよい。このようにすれば、保持体14の軸線方向に延びる稜線が周方向に複数形成されるため、当該稜線が滑り止めの役目を担うことになる。従って、保持体14の外周面に滑り止めを施さなくても安全性を確保することができる。
【0040】
上記実施形態において、電柱PのステップSL…、SR…に掛止するための掛止手段12a,12bを垂下縄部10a,10bの一端部を輪にして形成するようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば、垂下縄部10a,10bの一端部に金属製のフックを設け、当該フックで掛止手段12a,12bを構成するようにしてもよい。また、掛止手段12a,12bを金属製のフックで構成する場合には、必ずしも掛止手段12a,12bを輪状に形成する必要はなく、ステップSL…、SR…に掛止できる形状であればよい。但し、フックを取り付けるに際し、垂下縄部10a,10bの端部(フックに挿通する部分)を輪の如く形成しなければならず、当該電柱昇降用縄ばしこを作製するに際して、上記実施形態と同様の工程を要するため、フックを設けることなく垂下縄部10a,10bの一端部で掛止手段12a,12bを形成することがコスト面や当該電柱昇降用縄ばしご1のコンパクト化の観点においても有効である。
【0041】
上記実施形態において、一本のロープをU字状に曲げることで一対の垂下縄部10a,10bを形成するようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば、一対の垂下縄部10a,10bのそれぞれを独立したロープで構成するようにしてもよい。この場合においても、一対の垂下縄部10a,10bのそれぞれの一端が、電柱Pに設けられた左右両側のステップSL…、SR…の間隔に対応してずれる、すなわち、一方の垂下縄部10a,10bの一端に対して他方の垂下縄部10a,10bの一端が延出した態様にすることは勿論のことである。
【0042】
さらに、上記実施形態において、垂下縄部10a,10bの下端部に挿通部13a,13bを形成するとともに、挿通部13a,13bに挿通して電柱Pに巻着させる巻着手段15を設けるようにしたが、これに限定されるものではなく、挿通部13a,13b及び巻着手段15は必要に応じて設けるようにすればよい。但し、当該電柱昇降用縄ばしご1は、全体がロープで構成され、昇降時に揺れが生じる虞が大きいため、上記実施形態と同様にすることが好ましい。
【0043】
そして、巻着手段15を設ける場合、該巻着手段15はベルト15aとバックル15bとを備えたものに限定されるものではなく、例えば、巻着手段15を垂下縄部10a,10b等と同様のロープで構成するようにしても勿論よい。また、挿通部13a,13bについては、ロープで構成したものに限定されるものではなく、例えば、挿通部13a,13bを金属製のリングやフックで構成するようにしてもよい。但し、掛止手段12a,12bと同様、挿通部13a,13bを金属や樹脂等の別部材で構成すると、その部分が変形できなくなる上に、取り付け作業や部品の増加に伴ってコストが高騰する虞があるため、上記実施形態と同様の構成にすることが好ましい。
【0044】
上記実施形態において、電柱昇降用縄ばしご1を間接活線工具や棒材を用いてステップSL…、SR…に掛止させるようにしたが、例えば、掛止手段12a,12bと最上のステップ縄部11…との間の垂下縄部10a,10bに対し、例えば可撓性のある樹脂チューブを外嵌部した構成とし、その樹脂チューブを把持することで先端にある掛止手段12a,12bをステップSL…、SR…に掛止させるようにしてもよい。すなわち、垂下縄部10a,10bのみを把持して掛止手段12a,12bを上方にあるステップSL…、SR…に掛止させるようにすると、垂下縄部10a,10bが変形して掛止手段12a,12bを直接ステップSL…、SR…に掛止させることができないが、上述のような樹脂チューブを外嵌しておけば、わずかながらも剛性を高めることができるため、掛止手段12a,12bをステップSL…、SR…に掛止させるといった短時間での折れ曲がりを防止することができる。そのため、上記実施形態の如く間接活線工具や棒材等の別の道具を用いることなくステップSL…、SR…に掛止手段12a,12bを掛止させることができる。そして、上述の如く樹脂チューブに可撓性を持たせれば、未使用時に折り曲げることもでき、当該電柱昇降用縄ばしご1のコンパクト化が阻害されるのも防止することができる。
【0045】
上記実施形態において、垂下縄部10a,10bに対するステップ縄部11…の接続、掛止手段12a,12bや挿通部13a,13bの作製等をロープ同士の編み込み(サツマ挿し)で行うようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば、ロープ同士を縫い合わせて接続したり、他の編み込み方法でロープ同士を接続するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施形態に係る電柱昇降用縄ばしごを用いて昇降する電柱の概略構成図を示す。
【図2】同実施形態の電柱昇降用縄ばしごの全体斜視図を示す。
【図3】同実施形態の電柱昇降用縄ばしごの垂下縄部に対するステップ縄部の接続や、掛止手段の作製、ベルト挿通部の作製と取り付け等に用いるロープの接続方法を説明するための説明図を示す。
【図4】同実施形態の電柱昇降用縄ばしごを電柱に取り付けた状態であって、(a)は、正面(ステップの軸線と直交方向)から見た状態を示し、(b)は、横(ステップの軸線方向)から見た状態を示す。
【符号の説明】
【0047】
10a,10b…垂下縄部、11…ステップ縄部、12a,12b…掛止手段、13a,13b…ベルト挿通部、14…保持体、15…巻着手段、15a…ベルト、15b…バックル、A…親ロープ、B…子ロープ、R1…第一細目ロープ(細目ロープ)、R2…第二細目ロープ(細目ロープ)、R3…第三細目ロープ(細目ロープ)、P…電柱、SL,SR…ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右両側に所定高さから上方に向けて所定間隔で複数のステップが取り付けられ、少なくとも下方側にある左右のステップが高さ方向で互い違いに配置された電柱に対し、作業者が昇降する際に用いる電柱昇降用縄ばしごであって、左右両側のステップから垂下させる左右一対の垂下縄部と、両端部が一対の垂下縄部に接続され、該垂下縄部の長手方向に間隔をおいて設けられた二つ以上のステップ縄部とを備え、前記一対の垂下縄部は、各一端部にステップに掛止させる掛止手段が設けられ、各掛止手段を左右のステップの配置に対応させるべく、一方の垂下縄部の一端側が他方の垂下縄部の一端よりも延出するように形成されるとともに、各ステップ縄部の両端部は、先端を垂下縄部の他端側にして垂下縄部に沿った状態で該垂下縄部に接続されていることを特徴とする電柱昇降用縄ばしご。
【請求項2】
前記ステップ縄部には、筒状に形成された保持体が外嵌されている請求項1に記載の電柱昇降用縄ばしご。
【請求項3】
電柱に対して巻着可能な巻着手段を更に備えるとともに、一対の垂下縄部のそれぞれの他端部に巻着手段を挿通させる挿通部が設けられている請求項2又は3に記載の電柱昇降用縄ばしご。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−278024(P2007−278024A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−108976(P2006−108976)
【出願日】平成18年4月11日(2006.4.11)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】