説明

電極パターンおよびワイヤボンディング方法

【課題】アイレット上にサブマウントと半導体チップを接着するパッケージへの実装形態において、組立装置の精度の影響によりアイレットの中心線とレーザダイオードの中心線が傾き、ワイヤボンディングのためのAuボールが電極外にはみ出してしまう。
【解決手段】ワイヤボンディング用の電極パターンが、ワイヤボンド基準パターンと、ワイヤボンド認識パターンを有し、ワイヤボンド基準パターンからワイヤボンディング位置までの距離と、ワイヤボンド認識パターンからワイヤボンディング位置までの距離を所定の値に設定することで、精度良くワイヤボンディングを行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体装置や基板などの電極上にワイヤボンドを行うための電極パターンおよびワイヤボンディング方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電極と金属ワイヤを結線するワイヤボンディングを行う際、ボンディング装置にボンディング位置をティーチングする必要がある。通常、Auボールなどでワイヤボンディングする際、Auボールがワイヤボンディングされる電極内に充分に収まるように設計されている。半導体装置製造の際のワイヤボンディング工程において、ワイヤボンディング装置が結線すべき場所を把握するための技術として特開2001−326241号公報に記載のものがある。
【0003】
レーザダイオードにワイヤボンディングする場合には、ワイヤボンディング用の電極パターンは細長い形状をしている。記録型レーザダイオードは、記録時の倍速が上がるにつれてレーザダイオードに要求される光出力が益々増大する一方で、低価格化の要求が非常に強い。これらの要求に応えるため、高出力を得るためにはレーザダイオードの縦方向の長さを長くし、低価格化のためにはレーザダイオードの横方向の長さを縮めて、単一ウエハ内から取れるチップ数を増やしている。そのため、例えば350mW級の記録型高出力レーザダイオードの場合、縦方向長さは2000μm超、横方向長さは150μm以下という非常に細長い形状となっている。
【0004】
記録型高出力レーザダイオードのパッケージへの実装形態は、アイレット上にサブマウントとレーザダイオードをAuSn半田等で接着している。そしてレーザダイオードの電極と、リードもしくはアイレットとをワイヤボンディングするが、電極上の所定の位置にAuボールを形成するために、電極端部の特徴的なパターンを認識し、次にレーザの長手方向に所定量ずらした場所にAuボールをボンディングしている。アイレット上にサブマウントとレーザダイオードを接着する際、組立装置の精度の影響によりアイレットの中心線とレーザダイオードの中心線が最大2°程度傾くことがわかっている。
【0005】
【特許文献1】特開2001−326241号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
レーザダイオード中心とアイレット中心に傾きがない場合、Auボールは電極中心にボンディングできる。しかし、傾きがあるとAuボールが電極外にはみ出してしまうという問題があった。電極の長手方向の長さが長く、短辺方向の長さ(電極幅)が短いと短辺方向へのずれが大きくなり、Auボールのはみ出し量が多くなる。電極端部のすぐ近傍にAuボールを形成すれば傾き誤差によるAuボールはみ出し量を少なくできるが、この場合、Auボール近傍と離れた場所ではレーザダイオードに供給できる電流密度が変わってしまい正常なレーザダイオードの動作が困難になるという問題があった。そのため、Auボールはレーザダイオードの中心付近に形成する必要がある。記録型高出力レーザダイオードのように細長い電極パターンにAuボールを形成する場合にはその影響はより顕著となる。
【0007】
本発明は、上記のような問題を解消するためになされたもので、精度よくワイヤボンディングを行うことができる電極パターンおよびワイヤボンディング方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る電極パターンは、短辺と長辺を有するワイヤボンド用の電極パターンであって、ワイヤボンドの位置を決めるための基準位置を示すワイヤボンド基準パターンとワイヤボンド認識パターンを有し、前記電極パターンに接着されたワイヤボンディング用の金属部位で前記短辺に平行な方向の幅が最大となる位置を通る前記短辺に平行な方向の線と前記基準位置との距離Lと、前記ワイヤボンド認識パターンの前記長辺方向における中心を通る前記短辺に平行な方向の線と前記金属部位の前記短辺に平行な方向の幅が最大となる位置を通る前記短辺に平行な方向の線との距離Lbが
L≧14.3×(W−3d/4)
Lb≦14.3×(W−3d/4)
ただし、
d:電極パターンに接着されたワイヤボンディング用金属部位の前記短辺に平行な方向の幅の最大値
W:電極パターンの短辺に平行な方向の幅
であることを特徴とする電極パターンである。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、上述の構成を備えることにより、細長い電極パターンの任意の位置に、ワイヤボンディング用ワイヤを形成することができる電極パターンを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
実施の形態1.
図1に本発明の実施の形態に係るワイヤボンド用の電極パターンの概略図を示す。また、図2に本発明の実施の形態に係るワイヤボンド用の電極パターンを用いた半導体素子の概略図を示す。以下、図1、図2を用いて説明する。本発明の実施の形態では細長いレーザダイオードチップにワイヤボンドを行った半導体素子を例とする。レーザダイオードチップには、ワイヤボンドのための電極パターン103が形成されている。この電極パターン103上のワイヤボンドを行う領域111内に直径dのAuボール109を形成してワイヤボンドを行う。その際、図2に示すアイレット201中心とレーザダイオード205の中心の傾きずれが無い状態(θ=0)のときには、中心が電極パターン103の短辺に平行な方向における中心を通る長辺方向の線上となるように、Auボール109を形成してワイヤボンドを行う。電極パターン103にはワイヤボンド認識パターン107となる特徴的なパターンが形成されている。本実施の形態では電極パターン103の長手方向の1辺に矩形の切り抜きを形成し、ワイヤボンド認識パターン107としている。各寸法を以下のように定める。
L:電極パターンのエッジ部(電極端部105)とワイヤボンド領域111に形成されたAuボール109の中心との最短距離
Lb:ワイヤボンド認識パターン107の長辺方向における中心を通る短辺に平行な方向の線とワイヤボンド領域111に形成されたAuボール109の中心との最短距離
d:Auボール109の直径
W:電極パターン103の短辺に平行な方向の幅
アイレット201中心とレーザダイオード205の中心の傾きずれ量θは組立て装置精度より最大2°となる。ワイヤボンド領域111にAuボール109を形成する際に、ワイヤボンド領域111からはみ出す量をxとすると、xは次式で表される。
x=d/2−W/2+Ltanθ
ここではみ出し量xをd/8まで許容した場合、tan2°=0.0349なので、LとLbはそれぞれ次式となる。
L=14.3×(W−3d/4)
Lb=14.3×(W−3d/4)
本実施の形態では、電極端部105をワイヤボンドの位置を特定するための基準となるワイヤボンド基準パターンとしている。このワイヤボンド基準パターンとワイヤボンド領域111内の直径dのAuボール109の中心との距離Lが、
L≧14.3×(W−3d/4)となる位置にワイヤボンドされる。このとき、電極パターン103上に形成されたワイヤボンド認識パターン107の長手方向における中心を通る短辺に平行な方向の線とAuボール109の中心との距離Lbは
Lb≦14.3×(W−3d/4)(μm)
となるように位置決めされる。記録型高出力レーザダイオードを例にすると、レーザダイオードの長手方向の長さを2000μm、幅120μm、電極の幅を80μmとして、Auボール径が80±10μmでは、Lは286μm程度となり、ワイヤボンド認識パターン無しでは、細長い電極の端の方にしかAuボールが形成できず、注入される電流密度が電極上端部と下端部で変わってしまい、レーザダイオードの動作が安定しない。本発明のワイヤボンド認識パターンを所望の位置に形成することにより、注入される電流密度の不均一を簡単に解消することができる。
本実施の形態では、ワイヤボンド基準パターンとして電極端部105を用いたが、電極端部以外にも、電極内の特徴的なパターンをワイヤボンド基準パターンとすることができる。例えば、電極パターン103の四隅のひとつには、チップの前後確認等のための切り欠きが形成されており、この切り欠きをワイヤボンド基準パターンとすることもできる。本実施の形態では、この切り欠きは矩形を組合わせた形状となっているが、円形や三角形など他の形状でも構わない。また、本実施の形態では、Auボール109を形成してワイヤボンドを行ったが、ウェッジボンドの場合にはAuボールを形成せず、ワイヤ先端を超音波圧着して結線する。
【0011】
実施の形態2.
図3および図4に本発明の実施の形態2に係るワイヤボンド用の電極パターンの概略図を示す。実施の形態1では、図1に示すようにワイヤボンド認識パターン107を矩形の切り欠きパターンとしていたが、本実施の形態ではワイヤボンド認識パターンを図3に示すような丸い認識パターン形状、あるいは図4に示すような三角形状にした。円状のワイヤボンド認識パターン307では、このワイヤボンド認識パターン307を小さくした場合や、加工精度の低いエッチング法を用いた場合にエッチングだれが生じても、形状は丸い円状のまま変わらず、認識エラーを防ぐことができる。また、三角形状のワイヤボンド認識パターン407の場合は、同じ大きさの四角い形状に比べて直線部の長さを長くできるためにエッチングだれ等によるパターン崩れの影響を少なくすることができる効果がある。
ワイヤボンド認識パターン307、407は電極パターン303、403の長手方向の一辺の側部に形成することによりリフトオフ法で容易に形成することができる。また、エッチング等の方法を用いる場合には、図5に示すように、ワイヤボンド認識パターン507を電極パターン503の内部に形成してもよい。
【0012】
実施の形態3.
本実施の形態は、ワイヤボンド認識パターンを認識しワイヤボンディングを行う方法に関するものである。
図1および図2を参照し、アイトレット201の外形を認識することでワイヤボンド認識パターン107のおおよその位置を知ることができる。次に、電極パターン103に形成されたワイヤボンド認識パターン107を認識する。このとき必要であればカメラ倍率を変更してワイヤボンド認識パターン107を認識する。最後にワイヤ211、213でワイヤボンドを行い、リード207、GNDへの結線を行う。この方法を用いた場合、アイレット201上のレーザダイオード205が、設定ミス、プリアライメントの不具合等や位置決め治具の不具合等で所定の位置からずれてしまったときにそれを即座に見つけることが可能となる。すなわちアイレット外形の認識後に予想位置にワイヤボンド認識パターンがないため、装置はそこで停止する。これはレーザダイオード接着工程での位置ずれ不良品の生産を最低限にできるため、不良品を作り続けることによるロスを抑える効果がある。
【0013】
実施の形態4.
本実施の形態は、ワイヤボンド認識パターンを認識しワイヤボンディングを行う他の方法に関するものである。
実施の形態3と同様に、アイトレットの外形を認識することでワイヤボンド認識パターンのおおよその位置を知ることができる。次に、ワイヤボンドの基準となるワイヤボンド基準パターンを認識する。本実施の形態では、電極端部105をワイヤボンド基準パターンとして用いる。次に電極パターン103に形成されたワイヤボンド認識パターン107を認識する。このとき、必要であればカメラ倍率を変更してワイヤボンド認識パターン107を認識する。最後にワイヤボンドを行う。この方法を用いた場合、一旦チップの位置を確認するので、実施の形態3よりも正確にワイヤボンド認識パターン107の位置を認識することができる。また、電極パターン103の四隅のひとつに形成された切り欠きをワイヤボンド基準パターンとして位置確認に使用することもできる。本実施の形態では、この切り欠きは矩形を組合わせた形状となっているが、円形や三角形など他の形状でも構わない。
【0014】
実施の形態5.
本実施の形態は、ワイヤボンド認識パターンを認識しワイヤボンディングを行う他の方法に関するものである。
まず図1を参照し、アイトレットの外形を認識することでワイヤボンド認識パターン107のおおよその位置を知ることができる。次に、電極パターン103に形成されたワイヤボンド認識パターン107を認識する。このとき必要であればカメラ倍率を変更してワイヤボンド認識パターン107を認識する。次に予想される位置にある電極端部105のパターンを認識し、最後にワイヤボンドを行う。この方法を用いた場合、実施の形態3のように接着工程での位置ずれを検知できるのに加えて、異機種のレーザダイオードチップを接着してしまったときの不良をすぐに検知できる。レーザダイオードチップは出力できる光パワーにより、レーザダイオード長手方向の長さが異なるので、異機種のチップの場合、電極端部のパターンを認識できなくなり、装置は停止するため、異機種チップ搭載不良を作り続けることによるロスを抑える効果がある。また、電極パターン103の四隅のひとつに形成された切り欠きを電極端部の確認に使用することもできる。本実施の形態では、この切り欠きは矩形を組合わせた形状となっているが、円形や三角形など他の形状でも構わない。
【0015】
なお、本発明は、短辺と長辺を有する電極パターンに関するものであるが、アイレットの中心線に対するレーザダイオードの中心線の傾きずれによる影響は、電極パターンの短辺方向の幅Wが小さいほど大きい。Wが大きい場合には、ずれに対するマージンが大きくなるが、Wが100μm以下になるとこのマージンがほとんど無くなる。従って、本発明は、Wが100μm以下の場合に特に効果を有する。
【0016】
なお、本発明は、記録型高出力レーザダイオードについて説明してきたが、それ以外にも赤色レーザダイオードや青紫色レーザダイオード、通信用レーザダイオード、LED、その他の半導体装置、またはパッケージや基板上等の配線パターンなどのワイヤボンディングを行う電極パターンにも適応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態における電極パターンを示す概略図
【図2】本発明の実施の形態における電極パターンを用いた半導体素子の概略図
【図3】本発明の実施の形態における電極パターンを示す概略図
【図4】本発明の実施の形態における電極パターンを示す概略図
【図5】本発明の実施の形態における電極パターンを示す概略図
【符号の説明】
【0018】
103 電極パターン
105 電極端部
107 ワイヤボンド認識パターン
109 Auボール
303 電極パターン
307 ワイヤボンド認識パターン
403 電極パターン
407 ワイヤボンド認識パターン
503 電極パターン
507 ワイヤボンド認識パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
短辺と長辺を有するワイヤボンド用の電極パターンであって、
ワイヤボンドの位置を決めるための基準位置を示すワイヤボンド基準パターンとワイヤボンド認識パターンを有し、
前記電極パターンに接着されたワイヤボンディング用の金属部位で前記短辺に平行な方向の幅が最大となる位置を通る前記短辺に平行な方向の線と前記基準位置との距離Lと、
前記ワイヤボンド認識パターンの前記長辺方向における中心を通る前記短辺に平行な方向の線と前記金属部位の前記短辺に平行な方向の幅が最大となる位置を通る前記短辺に平行な方向の線との距離Lbが
L≧14.3×(W−3d/4)
Lb≦14.3×(W−3d/4)
ただし、
d:電極パターンに接着されたワイヤボンディング用金属部位の前記短辺に平行な方向の幅の最大値
W:電極パターンの短辺に平行な方向の幅
であることを特徴とする電極パターン。
【請求項2】
前記ワイヤボンド基準パターンが電極パターン端部であることを特徴とする請求項1に記載の電極パターン。
【請求項3】
前記電極パターンに接着された前記ワイヤボンディング用金属部位がAuボールであることを特徴とする請求項1あるいは2に記載の電極パターン。
【請求項4】
前記電極パターンに接着された前記ワイヤボンディング用金属部位が、ウェッジボンドのためにつぶされたワイヤ端部であることを特徴とする請求項1あるいは2に記載の電極パターン。
【請求項5】
前記Wが100μm以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電極パターン。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電極パターンにワイヤボンドするワイヤボンディング方法であって、パッケージ外形を認識した後に前記ワイヤボンド用認識パターンを認識してワイヤボンド位置を決め、ワイヤボンドを行うことを特徴とするワイヤボンディング方法。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電極パターンにワイヤボンドするワイヤボンディング方法であって、パッケージ外形を認識した後に前記ワイヤボンド基準パターンを認識し、さらに前記ワイヤボンド用認識パターンを認識した後にワイヤボンドを行うことを特徴とするワイヤボンディング方法。
【請求項8】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のワイヤボンド用認識パターンの認識方法であって、パッケージ外形を認識した後に前記ワイヤボンド用認識パターンを認識し、さらに電極端のパターンを認識した後にワイヤボンドを行うことを特徴とするワイヤボンディング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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