説明

電極端子付き有機エレクトロルミネッセンス素子

【課題】 有機材料層へのダメージが低減され、そして外部回路を簡単な作業で電気的に接続できる電極端子付きの有機エレクトロルミネッセンス素子を提供すること。
【解決手段】 第一の電極層が表面に形成された第一の基板、この電極層上に積層された有機発光材料を含む有機材料層、有機材料層上に積層された第一の電極層とは反対の極の第二の電極層、そして第二の電極層上に配置された第二の基板を備え、第一の基板の第一の電極層側の表面に第一の電極層に電気的に接続されている第一の電極端子と第一の電極層には電気的に接続されていない第三の電極端子が、そして第二の基板の第二の電極層側の表面に第二の電極層に電気的に接続されている第二の電極端子が各々形成されていて、第二の電極端子が第三の電極端子に、これらの端子間に配置された導電性材料を介して電気的に接続されている電極端子付き有機エレクトロルミネッセンス素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、各種の計測機器にて測定値を数値として表示するセグメント型ディスプレイ、あるいはテレビジョン受像器やパーソナルコンピュータにて文字や画像を表示するドットマトリックス型ディスプレイに有利に用いることができる有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子は、透明基板上に、透明陽電極層、少なくとも有機発光材料層を含む有機材料層、そして陰電極層がこの順に積層された基本構成を有する。有機エレクトロルミネッセンス素子は、陽電極層から正孔を、そして陰電極層から電子を有機発光材料層の内部に注入して正孔と電子とを再結合させて励起子(エキシトン)を生成させ、この励起子が失活する際の光の放出(蛍光、燐光)により発光する素子である。
【0003】
一般に、有機エレクトロルミネッセンス素子は、基板上に陽電極層、そして有機材料層を積層したのちに、スパッタ法や真空蒸着法などによって陰電極層として用いる金属層を上記有機材料層の表面に直接に積層して製造される。このような方法で製造すると、有機材料層が上記の金属層を形成する際に金属分子の持つエネルギーが付与されてダメージを受け、例えば、有機材料層にピンホールを生成させて有機エレクトロルミネッセンス素子の発光特性を低下させるなどの問題を生じ易い。
【0004】
このような問題を解決するため、特許文献1には、一方の防湿フィルム上に透光性の陽極層とn(n≧1)層からなる有機薄膜層のうちのm(m≧0)層を順に積層し、他方の防湿フィルム上に陰極層と残りのn−m層からなる有機薄膜層を順に積層したのちに双方の積層膜を対向させて貼り合わせ、そして周辺部を接着または融着封止して有機エレクトロルミネッセンス素子を製造する方法が開示されている。そして、この製造方法によれば、有機薄膜層の表面に陰極層を形成する必要がないので有機薄膜層(有機材料層)がダメージを受けることがないとされている。
【0005】
さらに特許文献2には、一方の基材上に設けられた陽極上に第一の有機接合層を少なくとも形成する工程、他方の基材上に設けられた陰極上に第一の有機接合層と同じ材料で構成される第二の有機接合層を少なくとも形成する工程、そして第一の有機接合層と第二の有機接合層とを対向させて互いに圧着してベーク処理することにより貼り合せる工程を順に実施して有機発光素子(有機エレクトロルミネッセンス素子)を製造する方法が開示されている。そして、この製造方法によれば、同じ材料からなる有機層同士を貼り合わせるために、貼り合わせ界面における密着性が向上するとされている。
【0006】
また、この製造方法においては、例えば、陽極を備える基材と陰極を備える基材とが、互いの位置をずらした状態にて貼り合わされる。これにより各々の基材の電極(陽極もしくは陰極)が形成されている表面の一部分は、他方の基材とは重ならずに露出される。そして各々の基材の電極には、上記の基材表面の露出された部分にまで伸びる電極端子が電気的に接続されており、一方の基材表面の露出された部分に形成された陽極の電極端子と、他方の基材表面の露出された部分に形成された陰極の電極端子とのそれぞれに、例えば、電源などの外部回路が電気的に接続される。
【特許文献1】特開平9−7763号
【特許文献2】特開2002−203675号公報(図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2の製造方法により、有機材料層へのダメージが低減され、そして貼り合わせ界面での密着性も良好な有機エレクトロルミネッセンス素子を作製することができる。しかしながら、このようにして作製された有機エレクトロルミネッセンス素子では、一方の基材の表面(下側に配置された基材の上面)の露出された部分に形成された陽極の電極端子と、他方の基材の表面(上側に配置された基材の下面)の露出された部分に形成された陰極の電極端子とのそれぞれに、例えば、電源などの外部回路を電気的に接続する必要がある。従って、この有機エレクトロルミネッセンス素子(発光素子)は、陽極の電極端子と外部回路とを電気的に接続したのちに発光素子を裏返し、次いで陰極の電極端子と外部回路とを電気的に接続する必要があるために、外部回路を電気的に接続する作業に手間がかかる。
【0008】
本発明の課題は、有機材料層へのダメージが低減され、そして外部回路を簡単な作業で電気的に接続できる電極端子付きの有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、第一の電極層が一方の表面に形成されている第一の基板、この電極層の上に積層されている有機発光材料を含む有機材料層、この有機材料層の上に積層されている第一の電極層とは反対の極の第二の電極層、そして第二の電極層の上に配置されている第二の基板からなる有機エレクトロルミネッセンス素子であって、第一の基板の第一の電極層が形成されている表面に第一の電極層に電気的に接続されている第一の電極端子と第一の電極層には電気的に接続されていない第三の電極端子が、そして第二の基板の第二の電極層側の表面に第二の電極層に電気的に接続されている第二の電極端子が、それぞれ形成されていて、第二の基板の表面の第二の電極端子が、第一の基板の第三の電極端子に、これらの電極端子間に配置された導電性材料を介して電気的に接続されていることを特徴とする電極端子付き有機エレクトロルミネッセンス素子にある。
【0010】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の好ましい態様は、次の通りである。
(1)導電性材料が複数個の導電性粒子から構成されている。
(2)導電性粒子のうちの80個数%以上の粒子が1乃至500nmの粒子径を有する。
(3)導電性粒子が、Ag、Cu、Au、Al、Zn、Ni、Fe、Pt、Pd、Sn、Cr、Pd、Sb25、ZnOまたは錫ドープ酸化インジウムからなる。
(4)第一の基板が透明基板であって、第一の電極層が透明陽電極層であり、そして第二の電極層が陰電極層である。更に好ましくは、第三の電極端子が、仕事関数が4eV以上の導電性材料から形成されている。
(5)第一の電極層が陰電極層であり、そして第二の基板が透明基板で、第二の電極層が透明陽電極層である。更に好ましくは、第一の電極端子が、仕事関数が4eV以上の導電性材料から形成されている。
(6)第一の電極層と第一の電極端子そして第三の電極端子のそれぞれが複数個存在し、そして第二の電極層と第二の電極端子のそれぞれも複数個存在する。
【0011】
なお、本明細書において「透明」とは、可視光の透過率が70%以上であることを意味する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電極端子付き有機エレクトロルミネッセンス素子は、第二の電極層を有機材料層の表面に直接に形成することなく作製することができるので、有機材料層へのダメージが低減されたものである。さらに本発明の電極端子付き有機エレクトロルミネッセンス素子(発光素子)は、第一の電極層と第二の電極層とに電気的エネルギーを供給するために用いる第一の電極端子と第三の電極端子とが共に第一の基板の表面に備えられているため、これらの電極端子と電源などの外部回路とを発光素子を裏返すことなく簡単な作業によって電気的に接続することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明を、添付の図面を用いて説明する。図1は、本発明の電極端子付き有機エレクトロルミネッセンス素子の構成例を示す分解斜視図である。そして図2は、図1に記入した切断線II−II線に沿って切断した電極端子付き有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子という)の断面図である。
【0014】
図1及び図2に示す有機EL素子10は、第一の電極層12が一方の表面に形成されている第一の基板11、電極層12の上に積層されている有機発光材料を含む有機材料層13、有機材料層13の上に積層されている第一の電極層12とは反対の極の第二の電極層14、そして第二の電極層14の上に配置されている第二の基板15などから構成されている。そして有機EL素子10において、第一の基板11の第一の電極層12が形成されている表面には、第一の電極層12に電気的に接続されている第一の電極端子16と、第一の電極層12には電気的に接続されていない第三の電極端子18とが、そして第二の基板15の第二の電極層14の側の表面には、第二の電極層14に電気的に接続されている第二の電極端子17が、それぞれ形成されていて、第二の基板15の表面の第二の電極端子17は、第一の基板11の第三の電極端子18に、これらの電極端子間に配置した導電性材料19を介して電気的に接続されている。
【0015】
この有機EL素子10の第一の基板11は透明基板であり、第一の電極層12は透明陽電極層であり、そして第二の電極層14は陰電極層である。また有機材料層13は、正孔輸送層13bと有機発光材料層13aとから構成されている。
【0016】
有機EL素子10は、第一の電極端子16と第三の電極端子18とに電気的エネルギーを付与すると、第一の電極端子16に電気的に接続されている第一の電極層12(透明陽電極層)から正孔輸送層13bを通って正孔が、そして第三の電極端子18に導電性材料19、そして第二の電極端子17を介して電気的に接続されている第二の電極層14(陰電極層)から電子が、それぞれ有機発光材料層13aの内部に注入されて発光する。この発光は、第一の電極層12と第二の電極層14とに挟まれている有機発光材料層部分にて生じ、正孔輸送層13b、第一の電極層(透明陽電極層)12、そして第一の基板(透明基板)11を通って有機EL素子10の外部に取り出される。
【0017】
この有機EL素子10は、第一の電極層12と第二の電極層14とに電気的エネルギーを供給するために用いる第一の電極端子16と第三の電極端子18とが共に第一の基板11の表面に備えられているため、これらの電極端子と電源などの外部回路とを有機EL素子を裏返すことなく簡単な作業によって電気的に接続することができる。また、例えば、これらの電極端子にフレキシブル配線フィルムを介して外部回路を電気的に接続するような場合にも、この配線フィルムを一方の基板(第一の基板)のみに取り付ければ良いので接続の作業が簡単である。
【0018】
第一の基板(透明基板)11、第一の電極層(透明陽電極層)12、有機材料層13、および第二の電極層(陰電極層)14の各々の層を形成する方法や材料は、公知の有機EL素子の場合と同様であり、多くの文献(例えば、有機エレクトロニクス材料研究会編著,「有機LED素子の残された研究課題と実用化戦略」,初版,ぶんしん出版,1999年7月)に詳細な記載があるため、以下では簡単に説明する。
【0019】
透明基板(第一の基板)としては、例えば、透明なガラス基板やプラスチック基板(プラスチックフィルムを含む)が用いられる。本明細書において「透明」とは、可視光の透過率が70%以上であることを意味している。透明基板の可視光透過率は、80%以上であることが好ましい。透明基板の光透過率は、その厚みを増減させることで調節することができる。
【0020】
透明陽電極層(第一の電極層)は、仕事関数の大きい(4eV以上)材料、例えば、錫ドープ酸化インジウム(ITO)や亜鉛ドープ酸化インジウム(IZO)から形成される。透明陽電極層は、例えば、スパッタ法により形成され、その厚みは1μm以下、好ましくは200nm以下に設定される。
【0021】
有機材料層は、有機発光材料を含む単一の層(有機発光材料層)、あるいは有機発光材料層に正孔輸送層や電子輸送層などが積層された二以上の層から構成される。以下に、図1及び図2に示す有機EL素子10の場合と同様に第一の電極層が透明陽電極層であり、第二の電極層が陰電極層である場合を例として、有機材料層の層構成の代表例を示す。
【0022】
(a)透明陽電極層/有機発光材料層/陰電極層
(b)透明陽電極層/正孔輸送層/有機発光材料層/陰電極層
(c)透明陽電極層/有機発光材料層/電子輸送層/陰電極層
(d)透明陽電極層/正孔輸送層/有機発光材料層/電子輸送層/陰電極層
【0023】
正孔輸送層の材料の代表例としては、NPD(N,N’−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニルベンジジン)、およびPEDOT/PSS(ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸)混合物が挙げられる。正孔輸送層の厚みは2乃至200nmの範囲にあることが好ましい。
【0024】
有機発光材料層の材料の代表例としては、MEH−PPV(ポリ2−メトキシ,5−(2’−エチル−ヘキシルオキシ−1,4−フェニレンビニレン))に代表されるPPV(ポリパラフェニレンビニレン)誘導体、およびポリフルオレン誘導体が挙げられる。有機発光材料層の厚みは、実用的な発光輝度を得るために200nm以下であることが好ましい。
【0025】
電子輸送層の材料の代表例としては、ニトロ置換フルオレン誘導体、およびジフェニルキノン誘導体が挙げられる。電子輸送層の厚みは5乃至300nmの範囲にあることが好ましい。
【0026】
正孔輸送層、有機材料層、および電子輸送層のそれぞれは、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法、スプレー法、ブレードコート法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、およびインクジェット印刷法によって形成される。
【0027】
陰電極層(第二の電極層)は、仕事関数の小さい(4eV未満)材料、例えば、Al、Li、CaもしくはBaなどの金属、あるいはMg−Ag合金もしくはAl−Li合金などの合金組成物から形成される。陰電極層は、例えば、真空蒸着法やスパッタ法により形成され、その厚みは1μm以下、好ましくは400nm以下に設定される。
【0028】
第二の基板15としては、第一の基板と同様に透明なガラス基板やプラスチック基板を用いることもできるし、更には不透明な基板、例えば、セラミック基板や金属基板を用いることもできる。金属基板を用いる場合には、その第二の電極層側の表面に絶縁層が付設されていることが好ましい。
【0029】
図1及び図2に示す有機EL素子10においては、第一の電極層12と第一の電極端子16とが一体に形成され、そして第二の電極層14と第二の電極端子17とが一体に形成されている。これにより第一の電極端子16と第二の電極端子17とを、第一の電極層12と第二の電極層14とのそれぞれに電気的に接続された状態にて、各々の基板の表面に容易に形成することができる。さらに第一の基板11の表面に第一の電極層12と第一の電極端子16とを一体に形成する際に、これらの材料と同一の材料により第三の電極端子18を同時に形成してもよい。
【0030】
各々の電極端子の材料の例としては、例えば、アルミニウムや金などの金属、および錫ドープ酸化インジウムや亜鉛ドープ酸化インジウムなどの導電性の金属酸化物が挙げられる。電極端子の材料は、その仕事関数が4eV以上であることが好ましい。仕事関数が4eV以上の材料は、電子を外部に放出し難い、すなわち化学的に安定な材料であるため、これを用いると電極端子に酸化などの劣化が生じ難くなるからである。また、上記のように第二の電極層14と第二の電極端子17とを一体に形成する場合には、第二の電極端子14は仕事関数が4eV以下の化学的に活性な材料から形成される。このため第二の電極端子17と電気的に接続して第二の電極層14に電気的エネルギーを供給するために用いる第三の電極端子18は、仕事関数が4eV以上の材料から形成することが好ましい。
【0031】
第二の電極端子17と第三の電極端子18とを電気的に接続するために用いる導電性材料19の例としては、Ag、Cu、Au、Al、Zn、Ni、Fe、Pt、Pd、Sn、Cr、Pdなどの金属、Sb25、ZnO、ATO、PTO、ITO(錫ドープ酸化インジウム)などの金属酸化物、ポリチアジル、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフェニレンビニレン、ポリアニリン、PEDOT/PSS(ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸)混合物などの導電性高分子、およびグラファイト、フラーレン、カーボンナノチューブなどの炭素の同素体が挙げられる。導電性材料の形態は、粒子状であっても薄膜状であっても良い。
【0032】
図1及び図2に示すように導電性材料19は、複数個の導電性粒子から構成されていることが更に好ましい。導電性粒子の材料としては、上記の金属や金属酸化物を用いることが好ましい。導電性粒子のうちの80個数%以上の粒子は1乃至500nmの粒子径を有していることが好ましい。
【0033】
有機EL素子10は、例えば、次のような手順で作製される。先ず、第一の基板11の表面に、第一の電極層12、第一の電極端子16、そして第三の電極端子18を形成する。次いで、第一の電極層12の上に有機材料層13として正孔輸送層13bと有機発光材料層13aとを形成する。そして第三の電極端子18の表面の第二の電極端子17と電気的に接続される表面部分に導電性粒子を配置する。一方、第二の基板15の表面に第二の電極層14と第二の電極端子17とを形成する。そして第一の基板11と第二の基板15とを、第一の電極層12と第二の電極層14とが有機材料層13を挟んで対向し、且つ第二の電極端子17と第三の電極端子18との間に金属微粒子19が配置されるようにして重ね合わせ、これらを加熱圧着して放冷する。これにより第二の電極層14と有機発光材料層13とが互いに接合され、そして第二の電極端子17と第三の電極端子18とが導電性粒子(導電性材料)を介して電気的に接続される。このようにして有機エレクトロルミネッセンス素子10を作製することができる。
【0034】
このように、本発明の有機EL素子10は、第二の電極層14を有機材料層13の表面に直接に形成することなく作製できるため、有機材料層13の劣化が抑制されたものとなる。
【0035】
なお、導電性粒子を第三の電極端子18の表面に配置するためには、例えば、導電性粒子を水や有機溶媒中に分散した塗布液、あるいは導電性粒子を含む導電性接着剤(異方性導電性接着材を含む)が用いられる。この塗布液には、更に熱可塑性樹脂から形成された粒子を添加することもできる。このような熱可塑性樹脂製の粒子の添加により、第一の基板と第二の基板とを加熱圧着する際の熱によって熱可塑性樹脂製粒子が溶融し、そして加圧によって熱可塑性樹脂が流動して導電性粒子が各々の電極端子と接触し易くなる。そして第一の基板と第二の基板とを加熱圧着した後には熱可塑性樹脂が固化して、導電性粒子を介して電気的に接続された第二の電極端子と第三の電極端子とを互いに接着する。
【0036】
そして上記のような導電性粒子(更に熱可塑性樹脂製粒子)を含む塗布液や導電性接着剤を、例えば、ディスペンサやインクジェット印刷機を用いて第三の電極端子の表面に塗布、そして加熱乾燥して水や有機溶媒を除去することにより、第三の電極端子18の表面に導電性粒子を配置することができる。
【0037】
導電性粒子は、第二の電極端子17の表面に配置しても良い。また、有機材料層13として用いる正孔輸送層13bと有機発光材料層13aとを共に第二の電極層14の上に形成しても良いし、あるいは正孔輸送層13bを第一の電極層12の上に形成し、そして有機発光材料層13aを第二の電極層14の上に形成しても良い。
【0038】
また、第一の基板11と第二の基板15とを貼り合わせる際に導電性粒子19の粒子径が上記の範囲内にあると、第一の電極層12、有機材料層13、および第二の電極層14の合計の厚みと、第三の電極端子18、導電性粒子19、および第二の電極端子17の合計の厚みとの差が極端に大きくなることがなくなるため、有機材料層13と第二の電極層14との電気的な接続、および第三の電極端子18と第二の電極端子17との電気的な接続を共に良好なものとすることができる。
【0039】
また、有機EL素子は、大気中の水分によって陰電極層が酸化するなどして発光特性が時間の経過とともに劣化(例、非発光部の生成など)していくことが知られている。このような発光特性の劣化を抑制するため、例えば、有機EL素子を形成する基板に、低透湿性の接着剤を用いてガラスや金属から形成されたキャップを接合し、この基板とキャップとから形成される空間の内部に陽電極層、有機材料層及び陰電極層の積層体が気密に封入される。そして上記の低透湿性の接着剤としては、アクリル樹脂系あるいはエポキシ樹脂系の紫外硬化型接着剤が広く用いられている。
【0040】
有機EL素子10の第一の基板11と第二の基板15との各々に透湿性の低い基板(例、ガラス)を用いた場合には、有機EL素子10の第一の基板11と第二の基板15との隙間を低透湿性の樹脂で塞ぐことによって、簡単に両基板の間への水分の侵入を抑制することができる。低透湿性の樹脂としては、例えば、上記の紫外線硬化型接着剤の硬化物が挙げられる。また、予め第二の基板15の第二の電極層14の側の表面の周縁部に紫外線硬化型接着剤を塗布しておき、第一の基板11と第二の基板15とを貼り合わせて有機EL素子10を作製したのちに、第一の基板(透明基板)11の側から紫外線を照射して接着剤を硬化させて両基板間への水分の侵入を抑制することもできる。
【0041】
図3は、本発明の電極端子付き有機エレクトロルミネッセンス素子の別の構成例を示す断面図である。そして図4は、図3の電極端子付き有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法を示す図である。
【0042】
図3の有機EL素子30の構成は、有機材料層33として用いる正孔輸送層33bと有機発光材料層33aが、第一の基板11の全面に形成されていること以外は図1の有機EL素子10と同様である。
【0043】
有機EL素子30は、図4に示すように、第一の基板11の全面に形成された有機材料層33の第三の電極端子上方の表面部分に導電性粒子を配置して、第一の基板11と第二の基板15とを加熱圧着することで作製される。上記の有機材料層33の表面に配置された導電性粒子(導電性材料19)は、第一の基板11と第二の基板15とを加熱圧着する際に第二の電極端子17に押されて有機材料層33の内部に埋め込み配置され、第二の電極端子17と第三の電極端子18とを電気的に接続する。電極端子付き有機EL素子30は、有機材料層33のパターニングが不要であり、また導電性粒子が第二の電極端子17と第三の電極端子18との間にある有機材料層部分に埋め込まれて安定に配置されるという利点を有している。なお、第一の電極端子16及び第三の電極端子18の外部回路と接続される表面部分の上に形成された有機材料層は、例えば、有機溶媒を用いて溶解除去すれば良い。
【0044】
図5は、本発明の電極端子付き有機エレクトロルミネッセンス素子のさらに別の構成例を示す分解斜視図である。そして図6は、図5に記入した切断線VI-VI線に沿って切断した電極端子付き有機エレクトロルミネッセンス素子の断面図である。
【0045】
図5及び図6に示す有機EL素子50の構成は、第一の電極層12が陰電極層であり、そして第二の基板15が透明基板で、第二の電極層14が透明陽電極であること以外は図1の有機EL素子10と同様である。有機EL素子50の第一の電極層12が陰電極層であるため、第一の電極端子16は仕事関数が4eV以上の導電性材料から形成されていることが好ましい。
【0046】
図7は、本発明の電極端子付き有機エレクトロルミネッセンス素子のさらに別の構成例を示す分解斜視図である。
【0047】
図7の有機EL素子70の構成は、第一の電極層12、12と第一の電極端子16、16そして第三の電極端子18、18のそれぞれが複数個(二個ずつ)存在し、そして第二の電極層14、14と第二の電極端子17、17のそれぞれも複数個(二個ずつ)存在すること以外は図1の有機EL素子10と同様である。
【0048】
このような構成の有機EL素子の第一の電極層、第一の電極端子、第三の電極端子、第二の電極層、そして第二の電極端子の各々の数を増加させることにより、ドットマトリックス型ディスプレイを構成することができる。
【実施例】
【0049】
[実施例1]
ガラス基板(第一の基板)の表面に、スパッタ法により厚さ150nmの錫ドープ酸化インジウム(ITO:仕事関数4.8eV)膜を形成する。このITO膜を、フォトリソグラフィー法によりパターニングして、図7に示すように第一の電極層(透明陽電極層)12、12を第一の電極端子16、16のそれぞれと一体に形成し、そして同時に第三の電極端子18、18を形成する。
【0050】
次に、第一の電極層の上にPEDOT/PSS(ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸)混合物の水溶液(H.C.Stark社製)をインクジェット印刷法により塗布して、この塗布膜を200℃で10分間乾燥して厚みが約60nmのPEDOT/PSS薄膜(正孔輸送層13b)を形成する。同様にして、正孔輸送層の表面にMEH−PPV(ポリ2−メトキシ,5−(2’−エチル−ヘキシルオキシ−1,4−フェニレンビニレン))(H.W.Sands社製)の1%テトラハイドロフラン溶液を塗布して、この塗布膜を130℃で1時間乾燥して厚みが約60nmのMEH−PPV薄膜(有機発光材料層13a)を形成する。
【0051】
そして第三の電極端子のそれぞれの表面に金粒子(導電性粒子)が分散された水溶液をディスペンサにより塗布して、この塗布膜を130℃で5分間乾燥して、第三の電極端子18、18のそれぞれの表面に金粒子を配置する。第三の電極端子の表面に配置する金粒子としては、80個数%の粒子の直径が約150nmであるものを用いる。
【0052】
一方、別のガラス基板(第二の基板)の表面にシャドーマスクを置き、シャドーマスクの上から厚さ200nmのMg−Ag膜を形成する。シャドーマスクを取り除いてMg−Ag膜をパターニングすることにより、図7に示すように第二の電極層14、14を第二の電極端子17、17のそれぞれと一体に形成する。
【0053】
そして第一の基板11と第二の基板15とを、第一の電極層12、12と第二の電極層14、14とが各々有機材料層13を挟んで対向し、且つ第二の電極端子17、17と第三の電極端子18、18との間に金粒子がそれぞれ配置されるようにして重ね合わせ、これを180℃にて加熱圧着して放冷することにより図7に示す構成の有機エレクトロルミネッセンス素子を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の電極端子付き有機エレクトロルミネッセンス素子の構成例を示す分解斜視図である。
【図2】図1に記入した切断線II−II線に沿って切断した電極端子付き有機エレクトロルミネッセンス素子の断面図である。
【図3】本発明の電極端子付き有機エレクトロルミネッセンス素子の別の構成例を示す断面図である。
【図4】図3の電極端子付き有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法を示す図である。
【図5】本発明の電極端子付き有機エレクトロルミネッセンス素子のさらに別の構成例を示す分解斜視図である。
【図6】図5に記入した切断線VI-VI線に沿って切断した電極端子付き有機エレクトロルミネッセンス素子の断面図である。
【図7】本発明の電極端子付き有機エレクトロルミネッセンス素子のさらに別の構成例を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0055】
10、30、50、70 電極端子付き有機エレクトロルミネッセンス素子
11 第一の基板
12 第一の電極層
13、33 有機材料層
13a、33a 有機発光材料層
13b、33b 正孔輸送層
14 第二の電極層
15 第二の基板
16 第一の電極端子
17 第二の電極端子
18 第三の電極端子
19 導電性材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の電極層が一方の表面に形成されている第一の基板、該電極層の上に積層されている有機発光材料を含む有機材料層、該有機材料層の上に積層されている第一の電極層とは反対の極の第二の電極層、そして第二の電極層の上に配置されている第二の基板からなる有機エレクトロルミネッセンス素子であって、第一の基板の第一の電極層が形成されている表面に第一の電極層に電気的に接続されている第一の電極端子と第一の電極層には電気的に接続されていない第三の電極端子が、そして第二の基板の第二の電極層側の表面に第二の電極層に電気的に接続されている第二の電極端子が、それぞれ形成されていて、第二の基板の表面の第二の電極端子が、第一の基板の第三の電極端子に、該電極端子間に配置された導電性材料を介して電気的に接続されていることを特徴とする電極端子付き有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項2】
導電性材料が複数個の導電性粒子から構成されている請求項1に記載の電極端子付き有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
導電性粒子のうちの80個数%以上の粒子が1乃至500nmの粒子径を有する請求項2に記載の電極端子付き有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
導電性粒子が、Ag、Cu、Au、Al、Zn、Ni、Fe、Pt、Pd、Sn、Cr、Pd、Sb25、ZnOまたは錫ドープ酸化インジウムからなる請求項2に記載の電極端子付き有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
第一の基板が透明基板であって、第一の電極層が透明陽電極層であり、そして第二の電極層が陰電極層である請求項1乃至4のうちのいずれかの項に記載の電極端子付き有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
第三の電極端子が、仕事関数が4eV以上の導電性材料から形成されている請求項5に記載の電極端子付き有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】
第一の電極層が陰電極層であり、そして第二の基板が透明基板で、第二の電極層が透明陽電極層である請求項1乃至4のうちのいずれかの項に記載の電極端子付き有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項8】
第一の電極端子が、仕事関数が4eV以上の導電性材料から形成されている請求項7に記載の電極端子付き有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項9】
第一の電極層と第一の電極端子そして第三の電極端子のそれぞれが複数個存在し、そして第二の電極層と第二の電極端子のそれぞれも複数個存在する請求項1乃至8のうちのいずれかの項に記載の電極端子付き有機エレクトロルミネッセンス素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−87818(P2007−87818A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−276503(P2005−276503)
【出願日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(504180239)国立大学法人信州大学 (759)
【出願人】(000227180)日置電機株式会社 (982)
【出願人】(505227043)野村ユニソン株式会社 (25)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】