説明

電極触媒の製造方法

【課題】本発明は、電極触媒の製造方法に関し、触媒担持カーボンやアイオノマー同士の凝集を防止しつつ、これらを良好に分散させることが可能な電極触媒の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本実施形態の製造方法は、(1)電極材料調製工程、(2)破砕分散工程、(3)塗布、乾燥工程、の各工程を含む。(2)破砕分散工程において、触媒インクを供給しながらローター14を回転させると、撹拌スペース16のビーズ18間において、流動速度差が生じる。これにより、ビーズ18間にせん断力やずり応力、摩擦などを発生させて、触媒インクを破砕分散できる。特に本工程によれば、図2(B)に示すように、隣り合うビーズ18を逆方向に流動させることができる。したがって、これらビーズ18間において、主としてせん断力を生じさせることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電極触媒の製造方法に関し、より詳細には、燃料電池用の電極触媒の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1には、白金担持カーボン、アイオノマーのアルコール溶液及び有機溶媒を、遊星ボールミルやホモジナイザーで撹拌することにより電極触媒を製造する方法が開示されている。カーボンペーパーといった多孔質のガス拡散基材に電極ペーストを塗布すると、この電極ペーストがガス拡散基材の内部に入り込んでしまう問題がある。電極ペーストがガス拡散基材の内部に入り込むと、ガス拡散基材の細孔が閉じてしまうことになる。このため、ガス拡散基材がその機能を発揮できず、結果として、電極触媒中の触媒利用率が低下する可能性が高い。そこで、特許文献1では、遊星ボールミルやホモジナイザーで撹拌し、複数の白金担持カーボンが一次粒子の状態で繋がった構造体を形成させ、更に、これらの構造体を高度に絡み合わせている。これにより、撹拌後の電極ペーストに粘度を持たせることができる。したがって、電極ペーストがガス拡散基材内部へ入り込むのを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−164224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、燃料電池に対しては、更なる発電性能の向上が求められている。このため、特許文献1に限られず、発電性能を向上させる様々な取り組みがなされてきているところである。しかしながら、各種の製造方法において、電極触媒用の材料の撹拌手法に着目したものは非常に少ない。また、撹拌手法に着目した特許文献1の方法あっても、撹拌が不十分な場合には、触媒担持カーボンやアイオノマーの分散が不良となるので、作製した電極触媒の触媒層抵抗(プロトン移動抵抗)が高くなり、燃料電池の出力の低下に繋がる可能性があった。また、撹拌が進みすぎる場合には、触媒担持カーボンやアイオノマー同士が凝集してしまい、作製した電極触媒の反応ガス拡散性を低下させるので、上記同様、燃料電池の出力低下に繋がる可能性があった。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、触媒担持カーボンやアイオノマー同士の凝集を防止しつつ、これらを良好に分散させることが可能な電極触媒の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、上記の目的を達成するため、電極触媒の製造方法であって、
触媒担持カーボンと、固体高分子電解質成分としてのアイオノマーとを含む電極触媒用材料を調製する工程と、
円筒状のローターを内装する円筒状のベゼルを備え、前記ローターの外周壁と、前記ベゼルの内周壁との間に幅5mm以上9mm以下のミリング槽が形成されたミリング装置を準備し、調製した前記電極触媒用材料と、平均粒径0.1mm以上0.3mm以下のビーズとを、前記ミリング槽に投入する工程と、
前記ローターを1.5m/s以上5.0m/s未満の周速で回転させて前記ビーズを流動させることにより、投入した前記電極触媒用材料を破砕分散する工程と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
第1の発明によれば、幅5mm以上9mm以下のミリング槽において、電極触媒用材料と、平均粒径0.1mm以上0.3mm以下のビーズとを、周速1.5m/s以上5.0m/s未満でローターを回転させてビーズを流動させることにより、投入した電極触媒用材料を破砕分散することができる。これにより、電極触媒用材料中の触媒担持カーボンやアイオノマーが良好に破砕、分散するために必要なせん断力を加えることができる。したがって、触媒担持カーボンやアイオノマー同士の凝集を防止しつつ、これらを良好に分散させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態の製造方法の工程図である。
【図2】破砕分散工程に用いるロータータイプのビーズミルを説明するための図である。
【図3】ピンタイプのビーズミルを説明するための図である。
【図4】各種分散装置を用いた破砕分散工程前後におけるインク状態を説明するための図である。
【図5】粒度分布測定の結果を示すグラフである。
【図6】触媒層抵抗の結果を示すグラフである。
【図7】I−V特性試験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図1〜図7を参照しながら、本実施形態の製造方法を開示する。図1は、実施形態の製造方法の工程図を表す。図1に示すように、本実施形態の製造方法は、(1)電極材料調製工程、(2)破砕分散工程、(3)塗布、乾燥工程、の各工程を含む。これら(1)〜(3)の各工程について詳細を説明する。
【0010】
(1)電極触媒用材料調製工程
本工程は、触媒担持カーボンと、固体高分子電解質成分としてのアイオノマーとを含む電極触媒用の材料を調製する工程である。
【0011】
本工程では、先ず、カーボンに触媒を担持させる。具体的には、カーボンを、触媒となる金属の化合物溶液中に分散させて、含浸法や共沈法、あるいはイオン交換法によって担持させる。ここで、カーボンとしては、カーボンブラックが最も一般的であるが、その他にも黒鉛、炭素繊維、活性炭等やこれらの粉砕物、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ等の炭素化合物等が使用できる。また、これらの2種類以上を混合して使用することもできる。また、触媒としては、白金、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、パラジウム、オスニウム、タングステン、鉛、鉄、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウム等の金属、又はそれらの合金等が挙げられる。これらの2種類以上を複合したものも用いることもできる。
【0012】
例えば、カーボンとしてカーボンブラックを用い、触媒として白金を用いる場合には、エタノールやイソプロパノール等のアルコール中に、テトラアンミン白金塩溶液やジニトロジアンミン白金溶液や白金硝酸塩溶液、あるいは塩化白金酸溶液等を適量溶解させた白金塩溶液中に、カーボンブラックを分散させる。その後、この白金塩溶液を水素雰囲気中で200℃以上に加熱して白金を還元させる。これにより、カーボンブラックに白金粒子を担持させることができる。
【0013】
続いて、得られた触媒担持カーボンを、適当な水及びアルコール等の有機溶剤中に分散させる。更に、アイオノマーのアルコール溶液を添加する。これにより、電極触媒用材料(以下、「触媒インク」ともいう。)が調製できる。ここで、アイオノマーは、電極触媒中のプロトン伝導部位として機能するものであり、一般に、側鎖にリン酸基、スルホン酸基等を導入した炭化水素系の高分子電解質から構成される。アイオノマーのアルコール溶液としては、例えば、アルドリッチ社製のナフィオン(登録商標)溶液が挙げられる。
【0014】
(2)破砕分散工程
本工程は、ローターを有するビーズミルを用い、ローターを1.5m/s以上5.0m/s未満の周速で回転させてビーズを流動させることにより(1)の工程で調製した触媒インクを破砕分散させる工程である。
【0015】
本工程を図2〜図4を用いて詳細に説明する。図2は、ロータータイプのビーズミルの説明図であり、図3は、ピンタイプのビーズミルの説明図である。図4は、各種分散装置を用いた破砕分散工程の前後における触媒インクの状態の説明図である。
【0016】
図2(A)に示すように、本工程では、ロータータイプのビーズミル10を用いる。ビーズミル10は、その中心線が鉛直方向を向いている円筒状のベゼル12を備えるタイプである。ベゼル12内には、円筒状のローター14が内装されている。これにより、ベゼル12の内周壁とローター3の外周壁との間には、触媒インクを破砕、分散する撹拌スペース16が環状に形成される。ここで、撹拌スペース16の幅は、5mm以上9mm以下に設計されている。ベゼル12には、周壁上部に触媒インク及びビーズを供給する供給口(図示せず)が、側壁部に触媒インク及びビーズを排出する排出口(図示せず)が、それぞれ形成されている。したがって、触媒インクはポンプ等によって上記の供給口からベゼル12内に圧送され、撹拌スペース16を流れて排出口から排出される。
【0017】
ビーズミルの10の動作について、図2(A)、(B)を用いて説明する。触媒インクを供給しながらローター14を回転させると、撹拌スペース16のビーズ18間において、流動速度差が生じる。これにより、ビーズ18間にせん断力やずり応力、摩擦などを発生させて、触媒インクを破砕分散できる。特に本工程によれば、図2(B)に示すように、隣り合うビーズ18を逆方向に流動させることができる。したがって、これらビーズ18間において、主としてせん断力を生じさせることができる。この結果、後述する実施例で明らかにするように、触媒担持カーボン粒子がアイオノマー内に良好に分散された電極触媒を製造できる。
【0018】
上記ロータータイプのビーズミルとの比較として、図3にピンタイプのビーズミルを示す。図3(A)に示すように、ピンタイプのビーズミル20は、円筒状のベゼル22を備え、ベゼル22内には、円筒状のローター24が内装されている。ローター24の外周壁には、ベゼル22の中心軸と直交する方向に中心軸が形成されたピン25が複数設けられている。このため、ベゼル22の内周壁とローター24の外周壁との間に形成された撹拌スペース26は、一般に、図2(A)の撹拌スペース16よりも広く形成される。
【0019】
複数のピン25が設けられていることで、ロータータイプのビーズミルと同一の周速としたときに、より強い撹拌力を触媒インクに加えることができる。特に、複数のピン25の周辺では、ピン25の上方から圧送されてきたビーズを、圧送方向とは異なる方向に流動させることができる。したがって、ピンタイプのビーズミルを用いた場合、図3(B)に示すように、隣り合うビーズ28を鉛直方向に強い力で衝突させることが可能となる。このような鉛直方向への強い衝突は、ピンの代わりにディスクを設けたディスクタイプのビーズミルによっても可能である。しかしながら、このような強い衝突による粉砕は、衝突エネルギーが強すぎるという問題がある。衝突エネルギーが強すぎると、せっかく破砕したカーボン粒子が再凝集してしまう場合がある。
【0020】
また、ピンタイプのビーズミル以外の撹拌装置を用いた場合にも、それぞれ他の問題が生じる。更に、ロータータイプのビーズミルを用いた場合であっても、撹拌する際の条件が異なる場合には、必ずしも分散が良好とならないこともある。これらの現象に関して、図4を用いて説明する。
【0021】
図4に示すように、破砕分散工程の前は、触媒担持カーボン、溶媒、アイオノマーが単に同一系に存在する状態である。即ち、カーボンはカーボン、アイオノマーはアイオノマーというように別々に存在している。一方、破砕分散工程の後には、触媒担持カーボンの粒子がアイオノマーで被覆されることになる。
【0022】
図4(A)に、超音波ホモジナイザーを用いて破砕分散工程を行った後の触媒インクの状態を示す。図4(A)に示すように、超音波ホモジナイザーを用いて破砕分散を行った場合、分散が進めば、カーボン粒子をアイオノマーで被覆することはできる。しかし、同図に示すように、アイオノマーは、それぞれが分離した状態となってしまう。アイオノマーのそれぞれが分離した状態では、離れたアイオノマーにプロトンを伝導させることができない。また、同図に示すように、カーボン粒子を被覆していないアイオノマー同士で凝集してしまうこともある。アイオノマー同士で凝集した場合には、プロトンの伝導はできる。しかし、アイオノマー内に触媒が存在しないので、電気化学反応を起こすことができない。
【0023】
図4(C)に、ローラータイプのビーズミルを用い、強い力で撹拌して破砕分散工程を行った後の触媒インクの状態を示す。図4(C)に示すように、ローラータイプのビーズミルを用いた場合でも、強い力で撹拌した場合には、エネルギーが過大となる。そのため、アイオノマーで被覆されたカーボン粒子が過分散してしまう。この結果、せっかく破砕したカーボン粒子が再凝集してしまう。カーボン粒子が再凝集しても、プロトンの伝導や運搬は可能である。しかし、再凝集することで、複数のカーボン粒子が二次粒子を構成し、アイオノマー中に溶解した反応ガスの拡散を阻害する可能性がある。したがって、例えば、燃料電池を高負荷運転する場合、反応ガスの供給量を増加させたにも関らず、出力が低下してしまう原因となる。また、これら再凝集したカーボン粒子は、個々の凝集体として分離する可能性もある。この場合、各凝集体間にアイオノマーが不存在となるため、離れた凝集体にプロトンを伝導させることができない。
【0024】
一方、図4(B)に示すように、本実施形態の破砕分散工程では、ローラータイプのビーズミルを用いて弱い力で撹拌する。これにより、カーボン粒子をアイオノマーで被覆すると同時に、このアイオノマー同士をせん断で引き伸ばす。したがって、同図に示すように、アイオノマーが繊維状に絡み合うネットワークを構築できる。
【0025】
弱い力で撹拌するためには、ローター14の周速を低く設定することが必要である。具体的に、ローター14の周速を、1.5m/s以上5.0m/s未満に設定する。ローター14の周速を上記範囲に設定すれば、カーボン粒子の再凝集や分散不良を防止できる。
【0026】
また、撹拌スペース16において、カーボン粒子やアイオノマー同士の凝集を防止し、良好に分散させるために、ビーズ18は微小なものを用いる。具体的に、ビーズ18の粒子径(平均)は、0.1mm以上0.3mm以下である。ビーズ18の粒子径を上記範囲とすれば、隣り合うビーズ18の衝撃によるエネルギーの発生を抑制でき、カーボン粒子の再凝集を防止できる。
【0027】
(3)塗布、乾燥工程
本工程は、上記(2)破砕分散工程により得られた触媒インクを所定の基材上に塗布し、その後乾燥させる工程である。所定の基材としては、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。このような基材上に、例えば、グラビア印刷、スプレー法、アプリケーター法、スクリーン印刷、ドクターブレード法、あるいはインクジェット法により触媒インクを塗布する。続いて、触媒インク中の溶媒を乾燥除去する。乾燥温度や乾燥時間は、溶媒の沸点や、触媒インクの厚み等に応じて適宜変更できる。これにより、基材上に電極触媒が形成される。
なお、本工程は、触媒インクを所定の基材上ではなく、電解質膜上に塗布し、その後、触媒インク中の溶媒を乾燥除去する工程であってもよい。
【実施例1】
【0028】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0029】
<試料の調製>
先ず、触媒インク用試料として、Ptをカーボンブラックに30wt%担持させたPt担持カーボン3.5g、溶媒として水44g、エタノール20gをそれぞれ秤量した。また、アイオノマーをI/C(アイオノマー/Pt担持カーボン中のカーボン重量)=0.75となるように秤量した。秤量したPt担持カーボンと水とを混合し、更に、エタノール、アイオノマーを添加して撹拌し、試料を調製した。
【0030】
[実施例1]
先ず、撹拌スペースの幅が7mm程度に調整されたロータータイプのビーズミルを準備した。次に、調製した上記試料をこのビーズミルに投入した。ビーズ径0.1mm、ローター周速2.5m/sで分散させて触媒インクを作製した。
その後、アプリケーターを用い、作製した触媒インクをPTFEシート上に塗工した。乾燥後、触媒インク面を電解質膜面に対向させて熱圧着し、その後にPTFEシートを剥離することでMEA化した。
【0031】
[比較例1]
ホモジナイザーを使用して、調製した上記試料を分散させて触媒インクを作製した。作製後、実施例1同様にMEA化した。
【0032】
[比較例2]
実施例1で使用したビーズミルを用い、調製した上記試料を、ビーズ径0.3mm、ローター周速10m/sで分散させて触媒インクを作製した。作製後、実施例1同様にMEA化した。
【0033】
<評価方法>
評価は、(i)分散後の各触媒インクにおける粒度分布測定、(ii)各MEAにおける触媒層抵抗測定、(iii)各MEAにおけるI−V特性観察、により行った。
なお、(i)は、レーザ回折式粒度分布測定装置を用い、粒度分布積算分率50%の値(D50)を算出することで評価した。(ii)は、交流インピーダンス測定装置(エヌエフ回路設計ブロック社製FRA)を用いて測定した値で評価した。具体的には、次の実験条件;温度=80℃、露点An/Ca=40℃/40℃、Bias=0.5V、Anガス(流速)/Caガス(流速)=H(0.5L/min)/N(0.5L/min)において、流振幅を±0.05V、周波数領域を0.1Hz〜10kHzとしてCole−Coleプロットを行う。スクリブナー社製ソフトのZプロットにて等価回路を組み、フィッテイングを行う。これにより求めた触媒層抵抗を評価した。(iii)の特性図は、各I−V特性を低加湿条件下で測定することで作成した。
【0034】
実施例1、比較例1、2の結果を図5〜図7に示す。図5は、分散後の各触媒インクにおけるD50の結果を示す図である。図6は、各MEAにおける拡散層抵抗の結果を示す図である。図7は、各MEAにおけるI−V特性を示す図である。
【0035】
図5から、比較例2、実施例1、比較例1の触媒インク順にD50値が小さくなっていることが分かる。D50値が小さくなる程、粒度が細かくなることを示す。比較例1の触媒インクの粒度が細かくなったのは、アイオノマー同士のネットワークが構築されていないためである。また、比較例2の触媒インクの粒度が粗くなったのは、ローターの周速を上げた結果、アイオノマーや白金担持カーボン粒子が再凝集したためである。
【0036】
図6から、実施例1及び比較例2の触媒層抵抗と比べ、比較例1の触媒層抵抗が極端に高くなっていることが分かる。触媒層抵抗が高くなったのは、アイオノマー同士のネットワークが構築されていないためである。一方、実施例1と比較例2の触媒層抵抗は、比較例1の触媒層抵抗に比べて低いことが分かる。
【0037】
図6に示す触媒層抵抗の結果から、比較例2のMEAは、実施例1のMEA同様、触媒層抵抗が低いので、両者共に発電性能が良好となると考えられた。しかしながら、図7に示すように、同じ電流密度では、実施例1のMEAの電圧値は、比較例2における電圧値に比べて高い値を示していた。これは、ローターの周速を上げた結果、アイオノマーや白金担持カーボン粒子が再凝集したため、アイオノマー内における酸素の拡散性が低下したことによると考えられた。
【実施例2】
【0038】
[実施例2]
実施例1で使用したビーズミルを用い、調製した上記試料を、平均粒径0.3mmビーズと共に投入した。ローター周速2.5m/sで分散させて触媒インクを作製した。作製後、実施例1同様にMEA化した。
【0039】
[比較例3]
実施例1で使用したビーズミルを用い、調製した上記試料を、平均粒径0.3mmビーズと共に投入した。ローター周速5.0m/sで分散させて触媒インクを作製した。作製後、実施例1同様にMEA化した。
【0040】
[比較例4]
実施例1で使用したビーズミルを用い、調製した上記試料を、平均粒径0.5mmビーズと共に投入した。ローター周速2.5m/sで分散させて触媒インクを作製した。作製後、実施例1同様にMEA化した。
【0041】
<評価方法>
上記作製した実施例1、2及び比較例2〜4について、評価を行った。評価は、上記(i)、(ii)の他、(iv)0.4Vの際の電流密度により評価した。(iv)は、各MEAについてI−V特性曲線を作成することにより取得したものである。結果を下表に示す。
【表1】

【0042】
表から分かるように、ビーズ径を0.3mmとした場合は(実施例2)、実施例1よりも触媒層抵抗の低いMEAが得られ、0.4Vの際の電流密度も良好なMEAが得られた。一方、ビーズ径を0.5mmとした場合は(比較例4)、0.4Vの際の電流密度が低く、発電性能が低下していることを示す結果となった。
ローター周速を5.0m/sとした場合は(比較例3)、比較例2の場合同様、触媒層抵抗の低いMEAが得られるが、0.4Vの際の電流密度が低く、発電性能が低下していることを示す結果となった。
【符号の説明】
【0043】
10 ビーズミル
12 ベゼル
14 ローター
16 撹拌スペース
18 ビーズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒担持カーボンと、固体高分子電解質成分としてのアイオノマーとを含む電極触媒用材料を調製する工程と、
円筒状のローターを内装する円筒状のベゼルを備え、前記ローターの外周壁と、前記ベゼルの内周壁との間に幅5mm以上9mm以下のミリング槽が形成されたミリング装置を準備し、調製した前記電極触媒用材料と、平均粒径0.1mm以上0.3mm以下のビーズとを、前記ミリング槽に投入する工程と、
前記ローターを1.5m/s以上5.0m/s未満の周速で回転させて前記ビーズを流動させることにより、投入した前記電極触媒用材料を破砕分散する工程と、
を備えることを特徴とする電極触媒の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−171120(P2011−171120A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33880(P2010−33880)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】