説明

電機子、モータ及び圧縮機並びにそれらの製造方法

【課題】電機子である固定子を小型化し、しかもモータの駆動の効率及び出力を高めることが目的とされる。
【解決手段】コア631は、第1の磁心11〜13及び第2の磁心21〜23を備える。第1の磁心11〜13は、いずれもが第1層1に配置される。第2の磁心21〜23は、いずれもが第2層2に配置される。第2の磁心21において、それ自身が有する磁性体211及び磁性体213が、第1の磁心11の磁性体113及び第1の磁心12の磁性体121とそれぞれ重なる。上述したと同様の関係で、第2の磁心22は第1の磁心12,13と、第2の磁心23は第1の磁心11,13とそれぞれ重なる。第1の磁心11〜13の磁性体はいずれの一からも他へと磁束を通すことが、第2の磁心21〜23の磁性体もいずれの一からも他へと磁束を通すことが、コア631においてそれぞれ阻害されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電機子、モータ及び圧縮機並びにそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アキシャルギャップ型モータは、回転軸に沿って磁束を発生させる固定子と、回転軸を中心として回転可能な回転子とを備える。
【0003】
固定子は、回転軸の周りに巻回される巻線を有し、巻線に電流が流されて磁束を発生する。回転子は、回転軸方向に空隙を介して固定子に対向して配置される。回転子には、固定子に対向して磁石が設けられる。固定子で発生した磁束が回転子に作用することで、回転子が回転する。
【0004】
本発明に関連する技術を以下に示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−333562号公報
【特許文献2】特開2001−57753号公報
【特許文献3】特開2004−52657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
固定子において、巻線を巻回する方式として例えば分布巻がある。分布巻を採用したモータに関する技術が、例えば特許文献1及び特許文献2に開示されている。
【0007】
特許文献1によれば、回転軸方向に対して固定子の両方に回転子が配置されているため、発生した磁束を効率良く利用され、以って駆動の効率が高められる。しかし、固定子がコアレスであるため、コアを有するものに比べて、発生する磁束の磁束密度が小さい。また、巻線の内部のみならず巻線自体にも磁束が通るため、巻線に鎖交する磁束も少ない。このため駆動の出力を高めることが困難である。
【0008】
特許文献2によれば、固定子において巻線がコアの周りに巻回されているため、発生する磁束の磁束密度が増大される。しかし、回転軸方向に対して固定子の一方にしか回転子が配置されておらず、駆動の効率及び出力を高めることが困難である。この態様で駆動の効率及び出力を高めようとすれば、固定子が大型化する可能性がある。
【0009】
特許文献1において従来技術として開示されているモータによれば、回転軸方向に関して固定子の両方に回転子が配置され、かつ固定子においてそれぞれの回転子に対向して巻線がコアの周りに巻回されている。そして、当該固定子の一方で巻回される巻線と、他方で巻回される巻線との間にもコアが存在し、これがヨークとして機能する。このため、巻線で発生した磁束はヨークで短絡し、以って駆動の効率及び出力を高めることが妨げられる。
【0010】
この発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、電機子である固定子を小型化し、しかもモータの駆動の効率及び出力を高めることが目的とされる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明の請求項1にかかる電機子は、第1層(1)に沿って配置され相互に重ならない一対の巻線(A31,A32)と、前記第1層に対して積層される第2層(2)に沿って配置される相互に重ならない一対の巻線(B31,B32)と、前記第2層に対して前記第1層とは反対側から積層される第3層(3)に沿って配置される相互に重ならない一対の巻線(C31,C32)と、前記第1層乃至第3層が積層される方向(91)に沿って、いずれも延在する第1乃至第6の磁性体(311〜316)とを備え、前記第1の磁性体(311)は、前記方向から見て、前記第1層(1)の一の前記巻線(A31)と前記第2層(2)の一の前記巻線(B31)とのいずれもが巻回され、前記第2の磁性体(312)は、前記方向から見て、前記第2層の他の前記巻線(B32)と前記第3層の一の巻線(C32)とのいずれもが巻回され、前記第3の磁性体(313)は、前記方向から見て、前記第1層の前記一の前記巻線(A31)と前記第3層(3)の他の前記巻線(C31)とのいずれもが巻回され、前記第4の磁性体(314)は、前記方向から見て、前記第1層の他の前記巻線(A32)と前記第2層の前記他の前記巻線(B32)とのいずれもが巻回され、前記第5の磁性体(315)は、前記方向から見て、前記第2層の前記一の前記巻線(B31)と前記第3層の前記他の前記巻線(C31)とのいずれもが巻回され、前記第6の磁性体(316)は、前記方向から見て、前記第1層の前記他の前記巻線(A32)と前記第3層の前記一の前記巻線(C32)とのいずれもが巻回される。
【0012】
この発明の請求項2にかかる電機子は、請求項1記載の電機子であって、前記巻線(A31,A32,B31,B32,C31,C32)は、それぞれ個別に絶縁体によって囲まれる。
【0013】
この発明の請求項3にかかる電機子は、請求項1または請求項2記載の電機子であって、前記巻線(A31,A32,B31,B32,C31,C32)は平角線である。
【0014】
この発明の請求項4にかかるモータは、請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の電機子と、前記電機子を固定子(64)とし、前記方向(91)に沿った回転軸(92)を中心に回転可能な第1の回転子(61)とを備え、前記第1の回転子は、前記方向に関して前記第2層(2)と反対側から前記第1層(1)と対向して配置される複数の第1磁石(615,616)を有する。
【0015】
この発明の請求項5にかかるモータは、請求項4記載のモータであって、前記巻線(A31,A32,B31,B32,C31,C32)に3相電流を流すことを特徴とする。
【0016】
この発明の請求項6にかかるモータは、請求項4及び請求項5のいずれか一つに記載のモータであって、前記第1の回転子(61;61)は、前記方向(91)に関して前記第2層(2)と反対側から前記第1層(1)と対向する第1基体(61a;61a)を更に有し、前記第1磁石(611〜614;615,616)は前記第1基体上に配置される。
【0017】
この発明の請求項7にかかるモータは、請求項6記載のモータであって、前記第1基体(61a)が磁性材からなることを特徴とする。
【0018】
この発明の請求項8にかかるモータは、請求項4乃至請求項7のいずれか一つに記載のモータであって、前記第1の回転子(61)と共に、前記回転軸(92)を中心に回転可能な第2の回転子(62;62)を更に備え、前記第2の回転子は、前記方向(91)に関して前記第1層(1)と反対側から前記第2層(2)と対向して配置される複数の第2磁石(621〜624;625,626)を有する。
【0019】
この発明の請求項9にかかるモータは、請求項8記載のモータであって、前記第2の回転子(62;62)は、前記方向(91)に関して前記第1層(1)と反対側から前記第2層(2)と対向する第2基体(62a;62a)を更に有し、前記第2磁石(621〜624;625,626)は前記第2基体上に配置される。
【0020】
この発明の請求項10にかかるモータは、請求項9記載のモータであって、前記第2基体(62a)が磁性材からなることを特徴とする。
【0021】
この発明の請求項11にかかる圧縮機は、請求項4乃至請求項10のいずれか一つに記載のモータを搭載することを特徴とする。
【0022】
この発明の請求項12にかかる電機子の製造方法は、いずれも一の方向(91)に延在する第1乃至第6の磁性体(311〜316)と、前記一の方向に垂直な面に沿って配置され、いずれも対をなす第1巻線乃至第3巻線とを備えるコアを製造する方法であって、(a)前記第1乃至前記第3の巻線の各々の対を、この順に前記一の方向に沿って積み重ねる工程と、(b)前記第1乃至第6の磁性体を、所定の関係で前記第1巻線乃至前記第3巻線に嵌め込む工程とを備え、前記所定の関係では、前記第1の磁性体(311)は、一の前記第1巻線(A31)と一の前記第2巻線(B31)とのいずれにも嵌め込まれ、前記第2の磁性体(312)は、他の前記第2巻線(B32)と一の前記第3巻線(C32)とのいずれにも嵌め込まれ、前記第3の磁性体(313)は、前記一の前記第1巻線(A31)と他の前記第3巻線(C31)とのいずれにも嵌め込まれ、前記第4の磁性体(314)は、前記他の前記第1巻線(A32)と前記他の前記第2巻線(B32)とのいずれにも嵌め込まれ、前記第5の磁性体(315)は、前記一の前記第2巻線(B31)と前記他の前記第3巻線(C31)とのいずれにも嵌め込まれ、前記第6の磁性体(316)は、前記他の前記第1巻線(A32)と前記一の前記第3巻線(C32)とのいずれにも嵌め込まれる。
【0023】
この発明の請求項13にかかる電機子の製造方法は、請求項12記載の電機子の製造方法であって、前記第1巻線乃至前記第3巻線(A31,A32,B31,B32,C31,C32)がそれぞれ個別に絶縁体によって囲まれることを特徴とする。
【0024】
この発明の請求項14にかかる電機子の製造方法は、請求項12または請求項13記載の電機子の製造方法であって、前記第1巻線乃至前記第3巻線(A31,A32,B31,B32,C31,C32)が平角線であることを特徴とする。
【0025】
この発明の請求項15にかかるモータの製造方法は、請求項12乃至請求項14のいずれか一つに記載の電機子の製造方法と、(c−1)複数の第1磁石(615,616)を、前記方向(91)に関して前記第2巻線と反対側から前記第1巻線(A31,A32)に対向させ、前記方向に沿った回転軸を中心に回転可能に配置する工程とを備える。
【0026】
この発明の請求項16にかかるモータの製造方法は、請求項15記載のモータの製造方法であって、前記巻線(A31,A32,B31,B32,C31,C32)に3相電流が流されることを特徴とする。
【0027】
この発明の請求項17にかかるモータの製造方法は、請求項15及び請求項16のいずれか一つに記載のモータの製造方法であって、前記工程(c−1)では、第1基体(61a;61a)上に前記第1磁石(611〜614;615,616)が配置され、前記第1基体は、前記方向(91)に関して前記第2巻線(B31,B32)と反対側から前記第1巻線(A31,A32)に対向し、前記方向に沿った回転軸を中心に回転可能である。
【0028】
この発明の請求項18にかかるモータの製造方法は、請求項17記載のモータの製造方法であって、前記第1基体(61a)が磁性材からなることを特徴とする。
【0029】
この発明の請求項19にかかるモータの製造方法は、請求項15乃至請求項18のいずれか一つに記載のモータの製造方法であって、(c−2)複数の第2磁石(621〜624;625,626)を、前記方向(91)に関して前記第1巻線(A31,A32)と反対側から前記第2巻線(B31,B32)に対向させ、前記第1磁石(611〜614;615,616)と共に回転可能に配置する工程を更に備える。
【0030】
この発明の請求項20にかかるモータの製造方法は、請求項19記載のモータの製造方法であって、前記工程(c−2)では、第2基体(62a;62a)上に前記第2磁石(621〜624;625,626)が配置され、前記第2基体は、前記方向(91)に関して前記第1巻線(A31,A32)と反対側から前記第2巻線(B31,B32)に対向し、前記第1基体(61a;61a)と共に回転可能である。
【0031】
この発明の請求項21にかかるモータの製造方法は、請求項20記載のモータの製造方法であって、前記第2基体(62a)が磁性材からなることを特徴とする。
【0032】
この発明の請求項22にかかる圧縮機の製造方法は、請求項15乃至請求項21のいずれか一つに記載のモータの製造方法によって製造される前記モータを、圧縮機に搭載することを特徴とする。
【発明の効果】
【0033】
この発明の請求項1にかかる電機子もしくは請求項12にかかる電機子の製造方法によれば、巻線が分布巻で構成されるので、これらに電流を流すことで発生する磁束には高調波成分が顕著に含まれず、当該磁束の多くが第1乃至第6の磁性体を一の方向に沿って貫く。よって、磁束が例えば回転子に作用して回転させる場合には、その効率及び駆動出力が高まる。
【0034】
この発明の請求項4にかかるモータもしくは請求項15にかかるモータの製造方法によれば、固定子において巻線の各々が分布巻で配置されるので、これらに電流を流すことで発生する磁束には高周波成分が顕著には含まれず、以ってモータの振動や駆動時の騒音が低減される。
【0035】
この発明の請求項5にかかるモータもしくは請求項16にかかるモータの製造方法によれば、モータの駆動効率及び駆動出力が高い。
【0036】
この発明の請求項6にかかるモータもしくは請求項17にかかるモータの製造方法によれば、第1基体に磁性材が採用されても、磁石から発生した磁界が第1基体内の磁束を飽和させるので、固定子で生じた磁束の高周波成分によって生じる第1基体の鉄損が低減される。
【0037】
この発明の請求項7にかかるモータもしくは請求項18にかかるモータの製造方法によれば、第1基体がヨークとして機能するので、モータの駆動効率が高い。
【0038】
この発明の請求項8にかかるモータもしくは請求項19にかかるモータの製造方法によれば、第2の回転子をも回転させることができるので、第2の回転子を回転させる際の駆動出力がさらに高まる。
【0039】
この発明の請求項9にかかるモータもしくは請求項20にかかるモータの製造方法によれば、第2基体に磁性材が採用されても、磁石から発生した磁界が第2基体内の磁束を飽和させるので、固定子で生じた磁束の高周波成分によって生じる第2基体の鉄損が低減される。
【0040】
この発明の請求項10にかかるモータもしくは請求項21にかかるモータの製造方法によれば、第2基体がヨークとして機能するので、モータの駆動効率が高い。
【0041】
この発明の請求項11にかかる圧縮機もしくは請求項22にかかる圧縮機の製造方法によれば、例えば冷媒を効率良く圧縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】第1及び第2の実施の形態にかかる、モータを概念的に示す斜視図である。
【図2】回転子61,62及び固定子63の各々を概念的に示す斜視図である。
【図3】コア631、巻線A11〜A13及び巻線B21〜B23の各々を概念的に示す斜視図である。
【図4】巻線を磁性体に巻回した状態を概念的に示す上面図である。
【図5】巻線に平角線を採用した場合を概念的に示す斜視図である。
【図6】巻線に3相電流が流された態様を示す図である。
【図7】電流の波形を概念的に示す図である。
【図8】第3の実施の形態にかかる、モータを概念的に示す斜視図である。
【図9】回転子61,62及び固定子64の各々を概念的に示す斜視図である。
【図10】巻線A31,A32、巻線B31,B32、巻線C31,C32及び磁性体311〜316の各々を概念的に示す斜視図である。
【図11】巻線が積み重ねられた状態を概念的に示す斜視図である。
【図12】巻線に3相電流が流された態様を示す図である。
【図13】電流の波形を概念的に示す図である。
【図14】固定子65を概念的に示す斜視図である。
【図15】インバータにより3相電流を流す態様を示す回路図である。
【図16】モータを搭載した圧縮機を概念的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
第1の実施の形態.
図1は、本実施の形態にかかるモータを概念的に示す斜視図である。モータは、回転子61,62及び固定子63を備え、それぞれ図2(c),(a),(b)に示されている。固定子63は、コア631、巻線A11〜A13及び巻線B21〜B23を備え、それぞれが図3(b),(c),(a)に示されている。本実施の形態では、主として図3(b)で示されるコア631について説明する。
【0044】
コア631は、第1の磁心11〜13及び第2の磁心21〜23を備える。第1の磁心11〜13は、いずれもが第1層1に配置される。第2の磁心21〜23は、いずれもが第2層2に配置される。ここで第2層2は、第1層1に対して積層された層と把握できる。
【0045】
第1の磁心11は第1乃至第3の磁性体111〜113を、第1の磁心12は第1乃至第3の磁性体121〜123を、第1の磁心13は第1乃至第3の磁性体131〜133を、それぞれ有する。但し、第1の磁性体131は、図3(b)において図示されていないが、後述する第6の磁性体223の下方に位置する。第1乃至第3の磁性体111〜113,121〜123,131〜133は、第1層1においてこの順に環状に配置される。このとき、第1乃至第3の磁性体111〜113,121〜123,131〜133は互いに接触しない。
【0046】
第2の磁心21は第4乃至第6の磁性体211〜213を、第2の磁心22は第4乃至第6の磁性体221〜223を、第2の磁心23は第4乃至第6の磁性体231〜233を、それぞれ有する。第4乃至第6の磁性体211〜213,221〜223,231〜233は、第2層2においてこの順に環状に配置される。このとき、第4乃至第6の磁性体211〜213,221〜223,231〜233は互いに接触しない。
【0047】
第2の磁心21〜23は、第1の磁心11〜13と次の関係にある。第1層1と第2層2とが積層される方向91に沿って見て、第2の磁心21において、それ自身が有する第4の磁性体211及び第6の磁性体213が、第1の磁心11の第3の磁性体113及び第1の磁心12の第1の磁性体121とそれぞれ重なる。このとき方向91に沿って見て、第4の磁性体211は第3の磁性体113以外の磁性体とは重ならず、第6の磁性体213は第1の磁性体121以外の磁性体とは重ならない。
【0048】
上述したと同様の関係で、第2の磁心22は第1の磁心12,13と、第2の磁心23は第1の磁心11,13とそれぞれ重なる。
【0049】
このような関係は次のように把握できる。つまり、いずれの一の第2の磁心21〜23においても、同じ第2の磁心が有する第4の磁性体211,221,231及び第6の磁性体213,223,233は、第2の磁性体を介することなく相互に隣接する第3の磁性体113,123,133及び第1の磁性体121,131,111とそれぞれ重なる。
【0050】
第1の磁心11〜13が有する第1乃至第3の磁性体111〜113,121〜123,131〜133は、いずれの一からも他へと磁束を通すことがコア631において阻害されている。具体的には、第1乃至第3の磁性体111〜113,121〜123,131〜133は、磁性材を介して接続されない。あるいは、第1乃至第3の磁性体111〜113,121〜123,131〜133が磁性材を介して接続されたとしても、当該磁性材を通る磁束が著しく小さい。このような磁性材には、例えば電磁鋼板等の薄い鋼板などが採用できる。このような鋼板は、後述するように、例えば第1乃至第6の磁性体を載置するために用いられる。
【0051】
第2の磁心21〜23が有する第4乃至第6の磁性体211〜213,221〜223,231〜233も、第1乃至第3の磁性体111〜113,121〜123,131〜133と同様に、いずれの一からも他へと磁束を通すことがコア631において阻害されている。
【0052】
上述したコア631によれば、第1の磁心11〜13はいずれも第1層1に沿って巻線を配置可能であり、第2の磁心21〜23はいずれも第2層2に沿って巻線を配置可能である。従って、第1の磁心11〜13及び第2の磁心21〜23に巻線を配置するだけで、巻線の構成を分布巻かつ2段にすることができる。よって、巻線を設けて電機子63を構成する場合には、当該電機子63が小型化できる。
【0053】
第1の磁心11〜13が有する第2の磁性体112,122,132の各々は、第1の磁心11〜13から方向91に沿って第2層2側へと突出してもよい(第1の突出態様)。また、第2の磁心21〜23が有する第5の磁性体212,222,232の各々は、第2の磁心21〜23から方向91に沿って第1層1側へと突出してもよい(第2の突出態様)。図3(b)では、これら二つの態様が併せて示されている。
【0054】
第1の磁心11〜13には第1層1に沿って巻線を配置し、第2の磁心21〜23には第2層2に沿って巻線を配置して、これらの巻線に電流を流すことで発生する磁束は、それぞれ磁心内で方向91に沿って流れる。これにより、当該磁束の大きさを顕著に減少させることなく、上述した第1の突出態様によれば第2層2側へ、第2の突出態様によれば第1層1側へと、それぞれ磁束を導ける。
【0055】
よって、いずれの態様においても、当該コアに巻線を設けて電機子を形成し、第2層側及び第1層側の少なくとも一方に回転子を配置することで、電機子で発生した磁束を回転子に多く与えることができる。これは、電機子と回転子との間で相対的な駆動を行う場合に、駆動の効率を良くする。
【0056】
第1の磁心11において、それ自身が有する第1乃至第3の磁性体111〜113を、第1層1において非磁性体によって囲んでもよい。第1の磁心12,13についても同様にすることができる。
【0057】
具体的には、第1乃至第3の磁性体111〜113を第1層1において熱可塑性樹脂などでモールドする。特に熱可塑性樹脂によれば、第1乃至第3の磁性体111〜113の表面に薄くモールドすることができるので、第1乃至第3の磁性体111〜113の変形や破損を低減しつつも、コア631が大型化することが回避できる。熱可塑性樹脂には、例えばポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)及び不飽和ポリエステル樹脂などが採用できる。
【0058】
この態様によれば、第1の磁心11〜13が有する第1乃至第3の磁性体が非磁性体によって囲まれるので、これらの磁性体の破損が低減される。しかも、第1層1において巻線を巻回する位置が定められ、以って巻線を巻回する箇所が容易に認識される。
【0059】
さらに、第2の磁心21において、それ自身が有する第4乃至第6の磁性体211〜213を、第2層2において非磁性体によって囲んでもよい。具体的には、第4乃至第6の磁性体211〜213を第2層2において樹脂などでモールドする。当該樹脂には、上述したと同様の熱可塑性樹脂が採用できる。第2の磁心22,23についても同様にすることができる。
【0060】
この態様によれば、第2の磁心21〜23が有する第4乃至第6の磁性体が非磁性体によって囲まれるので、これらの磁性体の破損が低減される。しかも、第2層2においても巻線を巻回する位置が定められ、以って巻線を巻回する箇所が容易に認識される。
【0061】
さらに、このような磁性体を非磁性体で囲む態様によれば、上述したいずれの態様においても、巻線のうち一の磁性体とそれに隣接する磁性体とに跨る部分に、巻線の配置後に外側から応力がかかっても、当該部分の変形や破損が防止できる。
【0062】
上述したコア631は、例えば、非磁性体で囲まれた第1の磁心11〜13及び第2の磁心21〜23が互いに樹脂などで接続されて構成されてもよい。
【0063】
また、平板の一方の面に第1の磁心11〜13を、他方の面に第2の磁心21〜23を、それぞれ上述したと同様の関係で載置することで、コア631を構成しても良い。このとき平板に非磁性体を採用することが、第1乃至第3の磁性体のいずれの一からも他へと磁束を通すことが阻害される点及び第4乃至第6の磁性体のいずれの一からも他へと磁束を通すことが阻害される点で特に望ましい。ただし、平板には薄い鋼板などの磁性材を採用してもよい。
【0064】
上述したコア631において、第3の磁性体113と第4の磁性体211とが一つの磁性体であっても良い。第3の磁性体123及び第4の磁性体221、第3の磁性体133及び第4の磁性体231についても同様である。また、第1の磁性体111と第6の磁性体233とが一つの磁性体であっても良い。第1の磁性体121及び第6の磁性体213、第1の磁性体131及び第6の磁性体223についても同様である。
【0065】
第2の実施の形態.
本実施の形態では、主として電機子である固定子63及びモータについて説明する。固定子63は、第1の実施の形態で説明したコア631と、巻線A11〜A13,B21〜B23とを備える(図2(b)、図3)。モータについては後述する。
【0066】
巻線A11〜A13は、第1の磁心11〜13に第1層1に沿ってそれぞれ配置される。巻線B21〜B23は、第2の磁心21〜23に第2層2に沿ってそれぞれ配置される。このような配置により、図2(b)で示された構造が得られる。
【0067】
例えば、巻線A11〜A13及び巻線B21〜B23を第1の磁心11〜13及び第2の磁心21〜23にそれぞれ巻回することができる。この場合、巻回後の巻線A11〜A13は、例えば図4(a)に示されるように第1の磁心11〜13の凹部1101において第1の磁心11〜13との間に空隙1102を生じやすい。この凹部1101は、例えば方向91に沿ってモータの軸を固定子63に設ける際に空間効率を高めるために、設けられることが望ましい。
【0068】
そこで、例えば巻線A11〜A13の巻回後に外側から応力1103を与えることで、巻線A11〜A13を第1の磁心11〜13の凹部1101に沿わせることができる(図4(b))。巻線B11〜B13についても同様にすることができる。
【0069】
予め巻回された巻線A11〜A13及び巻線B21〜B23を、第1の磁心11〜13及び第2の磁心21〜23にそれぞれ嵌め込んでも良い。予め巻回された巻線A11〜A13,B21〜B23がコア631に嵌め込まれる前の状態が図3(a)〜(c)に示されている。嵌め込まれた後は、図2(b)に示された構造が得られる。
【0070】
このような固定子63によれば、巻線A11〜A13,B21〜B23が分布巻で構成されるので、これらに電流を流すことで発生する磁束は高調波成分を顕著に含むことなく、かつ当該磁束の多くが第1層1及び第2層2をそれらが積層される方向91に沿って貫く。よって、磁束が例えば回転子61,62の少なくとも一方に作用して回転させる場合には、その効率及び駆動出力が高まる。しかも、巻線A11〜A13,B21〜B23が2段に積層されるので、電機子63が小型化される。
【0071】
巻線A11〜A13,B21〜B23は、それぞれが個別に絶縁体によって囲まれていてもよい。これによれば、巻線に応力がかかることによる巻線の変形や破損が回避される。しかも巻線と磁心、巻線同士のそれぞれの間の絶縁が確保される。
【0072】
巻線A11〜A13,B21〜B23には丸線や平角線が採用できる。図5には、例えば巻線A12に平角線を採用した場合が示されており、巻線A12の断面が拡大して示されている。平角線は丸線に比べて、巻線の占積率が向上し以って銅損が低減されたり、電機子が小型化されたりする点、更には表皮効果の影響が低減される点で特に望ましい。
【0073】
上述した固定子63において、コア631と巻線A11〜A13,B21〜B23とが、例えば絶縁体で囲まれていてもよい。具体的には、コア631と巻線A11〜A13,B21〜B23とを熱硬化性樹脂などでモールドする。熱硬化性樹脂には、例えばBMC(Block Molding Compound)などが採用できる。これによれば、コア631及び巻線A11〜A13,B21〜B23の変形や破損が低減できる。
【0074】
モータは、上述した固定子63と、回転子61,62を備える(図1、図2)。
【0075】
回転子61は、方向91に沿った回転軸92を中心に回転可能であり、方向91に関して第2層2と反対側から第1層1と対向する第1基体61aを有する。第1基体61a上には、空隙S1を介して第1層1と対向して複数の磁石611〜614が環状に配置される。具体的には、磁石611〜614は、第1層1と対向する面において磁極を有し、隣接する磁石で磁極の極性が異なる。回転子61は、固定子63で発生した磁束が磁石611〜614に作用して回転する。
【0076】
回転子62は、方向91に沿った回転軸92を中心に回転可能であり、方向91に関して第1層1と反対側から第2層2と対向する第2基体62aを有する。第2基体62a上には、空隙S2を介して第2層2と対向して複数の磁石621〜624が環状に配置される。具体的には、磁石621〜624は、第2層2と対向する面において磁極を有し、隣接する磁石で磁極の極が異なる。回転子62は、固定子63で発生した磁束が磁石621〜624に作用して回転する。
【0077】
第1基体61a及び第2基体62aの少なくとも一方において磁性材を採用することが望ましい。当該磁性材はヨークとして機能し、駆動効率が高まるからである。
【0078】
そして、基体61a,62aに磁性材を採用したとしても、次の理由から鉄損、主に渦電流損とヒステリシス損とが低減される。つまり、固定子63から得られる磁束には高調波成分が少ないので渦電流損が小さい。また、固定子63で発生する回転磁界に同期して回転子61,62が回転する場合には、当該回転磁界の基本波成分に基づくヒステリシス損が低減される。
【0079】
上述したモータによれば、固定子63で巻かれる巻線A11〜A13,B21〜B23の各々は分布巻であるので、これらに電流を流すことで発生する磁束には、高周波成分が顕著には含まれず、以って当該モータの振動や駆動時の騒音が低減される。
【0080】
回転子61が基体61aを含まない場合であっても良い。この場合、磁石611〜614に代えて、例えば複数の磁極が着磁された円盤状の磁石が採用できる。当該磁石への着磁では、例えば当該磁石の固定子63側の面からのみ磁束が流れるように磁極が形成される。回転子62についても同様に基体62aを含まない態様であっても良い。
【0081】
回転子61が磁石611〜614を含まない場合であっても良い。この場合、当該回転子には、固定子から流れる磁束によってリラクタンストルクを発生するように例えば固定子側の面に凹凸を施したものが採用できる。回転子62についても同様に磁石621〜624を含まない態様であっても良い。また、一方の回転子61,62に従動して磁石を含まない他方の回転子を回転させる態様であっても良い。
【0082】
しかしながら、回転子61において、基体61a上に磁石611〜614を配置することが次の点から望ましい。つまり、基体61aに磁性材が採用されても、磁石611〜614から発生した磁界が基体61a内の磁束を飽和させるので、固定子63で生じた磁束の高調波成分によって生じる基体61aの鉄損が低減される。回転子62についても同様のことが言える。
【0083】
更には、回転子61,62のいずれにも磁石を配置することが、回転子61,62を回転させる際の駆動出力がさらに高まる点で特に望ましい。そして、磁束は層1,2を方向91に沿って貫くので、磁石611〜614,621〜624を例えば以下のように配置することで、回転子61,62をより効率良く回転されることができる。
【0084】
つまり、磁石621は磁石611に、磁石622は磁石612に、磁石623は磁石613に、磁石624は磁石614に、それぞれ固定子63を介して対向する。そして、対向した磁石は、互いに極性が異なる磁極を有する。
【0085】
図2では方向91に沿って見て磁石611と磁石621とがほぼ一致して重なり合っているが、磁石611の一部と磁石621の一部とが重なり合っている態様であってもよい。この態様によれば、コギングトルクが低減される。ただし、回転子61,62を回転させるためのトルクが低減しないように、方向91から見た磁石611と磁石621との重なりを調節することが望ましい。磁石612〜613と磁石622〜624との位置関係についても同様である。
【0086】
巻線A11〜A13,B21〜B23に例えば3相電流を流すことで、以下のように固定子63において磁束を発生させることができる。
【0087】
図6は、巻線A11〜A13,B21〜B23に3相電流が流された態様を第1層1において示す。具体的には、巻線A12,B23にU相電流が、巻線A13,B21にV相電流が、巻線A11,B22にW相電流が、それぞれ流されている。巻線A11〜A13,B21〜B23に流れる電流はいずれも、第2層2に対して第1層とは反対側から見て、反時計回りに流れる方向が例えば正とされる。
【0088】
磁性体122,232には、巻線A12,B23のみがそれぞれ巻回されているので、U相電流によって発生した磁束のみが貫かれる。図6では磁性体122,232に符号Uを付すことで、この内容を示しており、他の相についても同様である。
【0089】
磁性体132,212にはV相電流によって発生した磁束のみが、磁性体112,222にはW相電流によって発生した磁束のみが、それぞれ貫かれる。
【0090】
相互に重なり合う磁性体121,213には巻線A12,B21がそれぞれ巻回されているので、磁性体121,213にはU相電流とV相電流とによって発生した磁束の重畳したものが貫かれる。当該磁束は、U相電流とV相電流とを重畳した電流(以下では、U+V相電流という)により発生すると把握することができる。よって、図6では、磁性体121(213)に符号U+Vを付すことで、この内容を示しており、他の相についても同様である。
【0091】
相互に重なり合う磁性体133,231には、U相電流とV相電流とによって発生した磁束の重畳したもの、つまりU+V相電流により発生した磁束が貫かれる。相互に重なり合う磁性体113,211と、相互に重なり合う磁性体131,223とには、V相電流とW相電流とによって発生した磁束の重畳したもの、つまりV相電流とW相電流とを重畳した電流(以下では、V+W相電流という)により発生する磁束が貫かれる。相互に重なり合う磁性体111,233と、相互に重なり合う磁性体123,221とには、W相電流とU相電流とによって発生した磁束の重畳したもの、つまりW相電流とU相電流とを重畳した電流(以下では、W+U相電流という)により発生する磁束が貫かれる。
【0092】
図7(a)は、U相電流、V相電流及びW相電流のそれぞれの波形を示す。図7(b)〜(d)は、U+V相電流、V+W相電流及びW+U相電流のそれぞれの波形を示す。例えば、U相電流とV+W相電流とは、その大きさが等しく符号が異なる。他の相についても同様であり、一の相電流と、他の相電流の和とは、その大きさが等しく符号が異なる。
【0093】
また、図6に示されるように、符号Uが付された磁性体122,232は回転軸92を介して相互に対向し、符号V+Wが付された磁性体113,131は回転軸92を介して相互に対向している。すなわち、磁性体122、232には回転軸92に沿って一の方向に向かって磁束が貫かれ、磁性体113,131には回転軸92に沿って他の方向に向かって、当該磁束と大きさがほぼ等しい磁束が貫かれる。符号Vまたは符号W+Uが付された磁性体132,212,111,123、符号Wまたは符号U+Vが付された磁性体112,222,121,133についても同様である。
【0094】
よって、一の相によって、いずれも同じ一の極性を有する二つの極が生じ、他の相によって、いずれも同じ他の極性を有する二つの極を生じると把握できる。一般的な場合については後述する。
【0095】
U相電流、U+V相電流、V相電流、V+W相電流、W相電流、W+U相電流は、この順にそれぞれ電気角が60度ずつずれている。これにより、固定子63の第1層1側及び第2層2側のそれぞれの表面において、回転軸92の周りで滑らかに変化する磁束が生じる。よって、発生する磁束には高調波成分が顕著に含まれず、以って騒音や振動が防止される。
【0096】
回転軸92方向から見て重なった磁性体を一つの磁性体と把握すれば、本実施の形態で示されたモータは、回転軸92方向から見た磁性体数は12であり、かつ極対数が2、巻線の数が6である。そして当該モータに3相電流を流した態様が具体的に示された。
【0097】
一般的には、極対数が2・P(Pは自然数を表す)、回転軸92方向から見た磁性体数が4・P・F(Fは電流の相数を表す)、巻線の数が2・P・Fであるモータにおいて、巻線を2段かつ分布巻で積層することができる。よって、当該巻線にF相電流を流すことで、モータの駆動の効率及び出力を高めることができる。
【0098】
また、一の相によって、いずれも同じ一の極性を有する2・P個の極が生じ、他の相によって、いずれも同じ他の極性を有する2・P個の極を生じる。上述の例はP=1、F=3の場合に相当する。
【0099】
第3の実施の形態.
図8は、本実施の形態にかかるモータを概念的に示す斜視図である。モータは、回転子61,62及び固定子64を備え、それぞれ図9(c),(a),(b)に示されている。固定子64は、巻線A31,A32、巻線B31,B32、巻線C31,C32及び第1乃至第6の磁性体311〜316を備え、それぞれ図10(c),(b),(a),(d)に示されている。
【0100】
巻線A31,A32は対をなし、第1層1に沿って配置されている。巻線B31,B32は対をなし、第1層1に対して積層される第2層2に沿って配置されている。巻線C31,C32は対をなし、第2層2に対して第1層1とは反対側から積層される第3層3に沿って配置されている。対をなす巻線同士は、いずれも第1層乃至第3層が積層される方向91において重ならない。
【0101】
第1乃至第6の磁性体311〜316はいずれも、方向91に沿って延在する。図9(b)では、第1乃至第6の磁性体311〜316がこの順に環状に配列されている。
【0102】
巻線A31は磁性体311,312,313を纏めて囲んで配置され、巻線A32は磁性体314,315,316を纏めて囲んで配置される。巻線B31は磁性体315,316,311を纏めて囲んで配置され、巻線B32は磁性体312,313,314を纏めて囲んで配置される。巻線C31は磁性体313,314,315を纏めて囲んで配置され、巻線C32は磁性体316,311,312を纏めて囲んで配置される。このような配置により、図9(b)で示された構造が得られる。
【0103】
例えば、巻線A31,A32,B31,B32,C31,C32を上述した配置で磁性体311〜316を囲んで巻回しても良いし、予め巻回された巻線A31,A32,B31,B32,C31,C32を上述した配置で磁性体311〜316に嵌め込んでも良い。予め巻回された巻線A31,A32,B31,B32,C31,C32が磁性体311〜316に嵌め込まれる前の状態が図10(a)〜(d)に示されている。嵌め込まれた後は、図9(b)に示された構造が得られる。
【0104】
上述した内容は、第1乃至第6の磁性体311〜316の各々が、方向91から見て巻線A31,A32,B31,B32,C31,C32と以下の関係にあると把握できる。
【0105】
第1の磁性体311は、磁性体316側の面及び外周側の面を巻線A31によって巻回され、磁性体312側の面及び外周側の面を巻線B31によって巻回され、外周側の面をC32によって巻回される。
【0106】
第2の磁性体312は、磁性体311側の面及び外周側の面を巻線B32によって巻回され、磁性体313側の面及び外周側の面を巻線C32によって巻回され、外周側の面をA31によって巻回される。
【0107】
第3の磁性体313は、磁性体314側の面及び外周側の面を巻線A31によって巻回され、磁性体312側の面及び外周側の面を巻線C31によって巻回され、外周側の面をB31によって巻回される。
【0108】
第4の磁性体314は、磁性体313側の面及び外周側の面を巻線A32によって巻回され、磁性体315側の面及び外周側の面を巻線B32によって巻回され、外周側の面を巻線C31によって巻回される。
【0109】
第5の磁性体315は、磁性体314側の面及び外周側の面を巻線B31によって巻回され、磁性体316側の面及び外周側の面を巻線C31によって巻回され、外周側の面をA32によって巻回される。
【0110】
第6の磁性体316は、磁性体311側の面及び外周側の面を巻線A32によって巻回され、磁性体315側の面及び外周側の面を巻線C32によって巻回され、外周側の面をB31によって巻回される。
【0111】
上述した固定子64によれば、巻線A31,A32,B31,B32,C31,C32が分布巻で構成されるので、これらに電流を流すことで発生する磁束には高調波成分が顕著に含まれず、当該磁束の多くが第1層乃至第3層を方向91に沿って貫く。よって、磁束が例えば回転子61,62の少なくとも一方に作用して回転させる場合には、その効率及び駆動出力が高まる。
【0112】
また、いずれの層1〜3においても、第1乃至第6の磁性体311〜316は、一対の巻線のいずれか一方によって囲まれるので、固定子64の空間効率が高くなる。
【0113】
巻線A31,A32,B31,B32,C31,C32は、それぞれが個別に絶縁体によって囲まれていてもよい。これによれば、巻線に応力がかかることによる巻線の変形や破損が回避される。しかも巻線と磁心、巻線同士のそれぞれの間の絶縁が確保される。
【0114】
巻線A31,A32,B31,B32,C31,C32には、第2の実施の形態と同様、丸線や平角線(図5)が採用できる。平角線は丸線に比べて、巻線の占積率が向上し以って銅損が低減されたり、電機子が小型化されたりする点、更には表皮効果の影響が低減される点で特に望ましい。
【0115】
上述した固定子64において、第1乃至第6の磁性体311〜316と巻線A11〜A13,B21〜B23とが、例えば絶縁体で囲まれていてもよい。具体的には、第1乃至第6の磁性体311〜316と巻線A11〜A13,B21〜B23とを熱硬化性樹脂などでモールドする。熱硬化性樹脂には、例えばBMC(Block Molding Compound)などが採用できる。これによれば、第1乃至第6の磁性体311〜316及び巻線A11〜A13,B21〜B23の変形や破損が低減できる。
【0116】
本実施の形態にかかる固定子64は、例えば次のように製造することができる。まず、上述した巻線の対A31,A32、巻線の対B31,B32及び巻線の対C31,C32を、この順に方向92に沿って積み重ねる。このとき、予め巻回した巻線A11〜A13,B21〜B23を方向92に沿って積み重ねてもよく、工程が簡単になる。
【0117】
そして、第1乃至第6の磁性体311〜316を上述した関係で巻線の対(A31,A32),(B31,B32),(C31,C32)に嵌め込む。
【0118】
図11は、第1乃至第6の磁性体311〜316が嵌め込まれる前の巻線A31,A32,B31,B32,C31,C32の状態を示す。図11では、第1乃至第6の磁性体311〜316が嵌め込まれる位置が破線によって示されており、それぞれの位置に第1乃至第6の磁性体311〜316を嵌め込むことで、上述した関係が得られる。
【0119】
いずれか一対の巻線を第1乃至第6の磁性体311〜316に嵌めこんでから、他の二対の巻線を嵌め込んでも良い。
【0120】
図11で示される状態で巻線A31,A32,B31,B32,C31,C32を例えば樹脂などで固着することが、第1乃至第6の磁性体311〜316が嵌め込みやすくなる点で望ましい。この際、巻線A31,A32側あるいは巻線C31,C32側を樹脂などで閉じておけば、第1乃至第6の磁性体311〜316の嵌め込みの際、軸方向92の位置決めが容易になる。
【0121】
モータは、上述した固定子64と、回転子61,62を備える(図8、図9)。
【0122】
回転子61は、方向91に沿った回転軸92を中心に回転可能であり、方向91に関して第2層2と反対側から第1層1と対向する第1基体61aを有する。第1基体61a上には、空隙S1を介して第1層1と対向して複数の磁石615,616が配置される。具体的には、磁石616は、回転軸92に対して磁石615とは反対側に位置する。磁石615,616は、第1層1と対向する面において磁極を有し、その極性が互いに異なる。回転子61は、固定子64で発生した磁束が磁石615,616に作用して回転する。
【0123】
回転子62は、方向91に沿った回転軸92を中心に回転可能であり、方向91に関して第2層2と反対側から第3層3と対向する第2基体62aを有する。この内容は、第2基体62aが第1層1と反対側から第2層2に対向すると把握することができる。第2基体62a上には、空隙S2を介して第3層3と対向して複数の磁石625,626が配置される。具体的には、磁石626は、回転軸92に対して磁石625とは反対側に位置する。磁石625,626は、第3層3と対向する面において磁極を有し、その極性が互いに異なる。第2の磁性材62は、固定子64で発生した磁束が磁石625,626に作用して回転する。
【0124】
第1基体61a及び第2基体62aの少なくとも一方において磁性材を採用することが望ましい。当該磁性材はヨークとして機能し、駆動効率が高まるからである。そして、基体61a,62aに磁性材を採用したとしても、第2の実施の形態で説明したと同様の理由から鉄損は低減される。
【0125】
上述したモータによれば、固定子64で巻かれる巻線A31,A32,B31,B32,C31,C32の各々は分布巻であるので、これらに電流を流すことで発生する磁束には、高周波成分が顕著には含まれず、以って当該モータの振動や駆動時の騒音が低減される。
【0126】
回転子61が基体61aを含まない場合であっても良い。この場合、磁石615,616に代えて、例えば複数の磁極が着磁された円盤状の磁石が採用できる。当該磁石への着磁では、例えば当該磁石の固定子64側の面からのみ磁束が流れるように磁極が形成される。回転子62についても同様に基体62aを含まない態様であっても良い。
【0127】
第2の実施の形態で説明したと同様に、回転子61や回転子62が磁石を含まない場合であっても良い。しかしながら、同実施の形態で説明したように、回転子61や回転子62には磁石を配置する方が望ましい。
【0128】
更には、回転子61,62のいずれにも磁石を配置することが、回転子61,62を回転させる際の駆動出力がさらに高まる点で特に望ましい。そして、磁束が層1〜3を方向91に沿って貫くので、磁石615,616,625,626を例えば次のように配置することで、回転子61,62をより効率良く回転させることができる。
【0129】
つまり、磁石625は磁石615に、磁石626は磁石616に、それぞれ固定子63を介して対向する。そして、対向した磁石は、互いに極性が異なる磁極を有する。
【0130】
図9では方向91に沿って見て磁石615と磁石625とがほぼ一致して重なり合っているが、磁石615の一部と磁石625の一部とが重なり合っている態様であってもよい。この態様によれば、コギングトルクが低減される。ただし、回転子61,62を回転させるためのトルクが低減しないように、方向91から見た磁石615と磁石625との重なりを調節することが望ましい。磁石616と磁石626との位置関係についても同様である。
【0131】
巻線A31,A32,B31,B32,C31,C32に例えば3相電流を流すことで、以下のように固定子64において磁束を発生させることができる。
【0132】
図12は、巻線A31,A32,B31,B32,C31,C32に3相電流が流された態様が示されている。具体的には、巻線A31,A32にW相電流が、巻線B31,B32にV相電流が、巻線C31,C32にU相電流が、それぞれ流されている。巻線A31,B31,C31に流れる電流はいずれも、第3層3に対して第1層とは反対側から見て、反時計回りに流れる方向が例えば正とされる。以下では、これらの巻線A31,B31,C31に流れる電流を、W-相電流、V-相電流、U-相電流とそれぞれ称する。一方、巻線A32,B32,C32に流れる電流の方向は、巻線A31,B31,C31とは反対方向が正とされる。以下では、これらの巻線A31,B31,C31に流れる電流を、W+相電流、V+相電流、U+相電流とそれぞれ称する。
【0133】
第1の磁性体311には、巻線A31,B31,C32が巻回されるので、W-相電流、V-相電流及びU+相電流によって発生した磁束の重畳したものが貫かれる。当該磁束は、W-相電流、V-相電流及びU+相電流を重畳した電流(以下では特にW-相電流とV-相電流とを重畳した電流をV-+W-相電流という)により発生すると把握することができる。V-+W-相電流はU+相電流に一致するので、第1の磁性体311には、U+相電流により発生した磁束に対して、大きさが2倍の磁束が貫かれる。図12では、磁性体311に符号U+,V-+W-を付すことで、この内容を示しており、他の相についても同様である。
【0134】
第2の磁性体312には、巻線A31,B32,C32が巻回されるので、W-相電流、V+相電流及びU+相電流によって発生した磁束の重畳したもの、つまりW-相電流、V+相電流及びU+相電流を重畳した電流(以下では特にU+相電流とV+相電流とを重畳した電流をU++V+相電流という)により発生する磁束が貫かれる。U++V+相電流はW-相電流に一致するので、第2の磁性体312には、W-相電流により発生した磁束に対して、大きさが2倍の磁束が貫かれる。
【0135】
第3の磁性体313には、巻線A31,B32,C31が巻回されるので、W-相電流、V+相電流及びU-相電流によって発生した磁束の重畳したもの、つまりW-相電流、V+相電流及びU-相電流を重畳した電流(以下では特にW-相電流とU-相電流とを重畳した電流をW-+U-相電流という)により発生する磁束が貫かれる。W-+U-相電流はV+相電流に一致するので、第3の磁性体313には、V+相電流により発生した磁束に対して、大きさが2倍の磁束が貫かれる。
【0136】
第4の磁性体314には、巻線A32,B32,C31が巻回されるので、W+相電流、V+相電流及びU-相電流によって発生した磁束の重畳したもの、つまりV+相電流、W+相電流及びU-相電流を重畳した電流(以下では特にV+相電流とW+相電流とを重畳した電流をV++W+相電流という)により発生する磁束が貫かれる。V++W+相電流はU-相電流に一致するので、第4の磁性体314には、U-相電流により発生した磁束に対して、大きさが2倍の磁束が貫かれる。
【0137】
第5の磁性体315には、巻線A32,B31,C31が巻回されるので、W+相電流、V-相電流及びU-相電流によって発生した磁束の重畳したもの、つまりW+相電流、V-相電流及びU-相電流を重畳した電流(以下では特にU-相電流とV-相電流とを重畳した電流をU-+V-相電流という)により発生する磁束が貫かれる。U-+V-相電流はW+相電流に一致するので、第5の磁性体315には、W+相電流により発生した磁束に対して、大きさが2倍の磁束が貫かれる。
【0138】
第6の磁性体316には、巻線A32,B31,C32が巻回されるので、W+相電流、V-相電流及びU+相電流によって発生した磁束の重畳したもの、つまりW+相電流、V-相電流及びU+相電流を重畳した電流(以下では特にW+相電流とU+相電流とを重畳した電流をW++U+相電流という)により発生する磁束が貫かれる。W++U+相電流はV-相電流に一致するので、第6の磁性体316には、V-相電流により発生した磁束に対して、大きさが2倍の磁束が貫かれる。
【0139】
図13(a)は、U+相電流、V+相電流及びW+相電流のそれぞれの波形を示す。図13(b)は、U-相電流、V-相電流及びW-相電流のそれぞれの波形を示す。U+相電流、W-相電流、V+相電流、U-相電流、W+相電流、V-相電流は、この順にそれぞれ電気角が60度ずつずれている。これにより、固定子64の第1層1側及び第3層3側のそれぞれの表面において、回転軸92の周りで滑らかに変化する磁束が生じる。よって、発生する磁束には高調波成分が顕著に含まれず、以って騒音や振動が防止される。
【0140】
本実施の形態では、極対数が1、磁性体の数が6であるモータについて、3相電流を流した態様が具体的に示された。一般的には、極対数P、磁性体の数が2m・P・F(mは自然数を表す)であるモータにおいて、巻線をF段かつ分布巻で積層することができる。よって、当該巻線にF相電流を流すことで、モータの駆動の効率及び出力を高めることができる。
【0141】
例えば、P=1、m=2、F=3であるモータの固定子65が図14に示されている。固定子65は、磁性体411〜422(図14(d))、巻線A41,A42(同図(c))、巻線B42,B42(同図(b))及び巻線C41,C42(同図(a))を備える。
【0142】
磁性体411〜422と巻線A41,A42,B42,B42,C41,C42とを次のように把握すれば、固定子65は、図10で示される固定子64について上述した第1乃至第6の磁性他311〜316と巻線A31,A32,B31,B32,C31,C32との関係と同様の関係を有する。
【0143】
つまり、磁性体412を第1の磁性体311、磁性体414を第2の磁性体312、磁性体416を第3の磁性体313、磁性体418を第4の磁性体314、磁性体420を第5の磁性体315、磁性体422を第6の磁性体316と把握する。巻線A41,A42を巻線A31,A32、巻線B41,B42を巻線B31,B32、巻線C41,C42を巻線C31,C32と把握する。
【0144】
さらに固定子65においては、磁性体と巻線とが次の関係を有する。つまり、磁性体411,417は、巻線A41,A42のいずれにも巻回されない。磁性体413,419は、巻線B41,B42のいずれにも巻回されない。磁性体415,421は、巻線C41,C42のいずれにも巻回されない。
【0145】
よって固定子65によれば、各相の電流によって生じる磁束は固定子64と比較して、より多くの磁性体によって空間的に分割されるので、固定子65で発生する磁束が回転軸92の周りで、より滑らかに変化する。具体的には、磁性体411〜422を貫く磁束は、この順に電気角が30度ずつずれている。
【0146】
図15は、インバータを用いて巻線に3相電流を流す態様が示されている。インバータ8は、入力された直流電圧Vを所望の交流電圧へと変換し、これを巻線L1〜L6に印加することで、例えば巻線L1,L2にU相電流、巻線L3,L4にV相電流、巻線L5,L6にW相電流を流す。第2の実施の形態で説明したモータの場合には、巻線L1,L2に巻線A12,B23が、巻線L3,L4に巻線A13,B21が、巻線L5,L6には巻線A11,B22がそれぞれ採用される。第3の実施の形態で説明したモータの場合には、巻線L1,L2に巻線C31,C32が、巻線L3,L4に巻線B31,B32が、巻線L5,L6には巻線A31,A32がそれぞれ採用される。
【0147】
第2及び第3の実施の形態で説明したモータのいずれも、例えば圧縮機に搭載することができる。例えば図16には、第2の実施の形態にかかるモータを搭載した圧縮機の断面図が示されている。
【0148】
圧縮機は、筒状の筐体、吸入管71及び吐出管72を備える。吸入管71は、例えば筐体の側面に接続される。吐出管72は、モータに対して吸入管71とは反対側に位置する。
【0149】
当該筐体内には、圧縮部74、モータ及びバランスウェイト73a,73bを有する。モータは、その回転軸92が筐体が延在する方向に沿って延びる。バランスウェイト73a,73bは、固定子63とは反対側の回転子61,62の面上にそれぞれ載置される。
【0150】
吸入管71から吸入された冷媒は、圧縮部74においてモータの駆動により圧縮される。圧縮された冷媒は、吐出管72から排出される。
【0151】
このような圧縮機によれば、例えば冷媒を効率良く圧縮することができる。しかも、固定子63と回転子61,62との間の空隙が回転軸92に対して垂直であるので、圧縮機内に存在する潤滑油などの油が吐出管72から排出されることや、油が攪拌されることが低減される。
【0152】
また、回転子61,62に付着した油は、回転子61,62が回転した際に遠心力によって圧縮機の側壁へと移動する。よって、吐出管72をモータに対して鉛直上方に設けた場合には、側壁に沿って油が鉛直下方へと移動し、以って吐出管72側へと油が移動することが妨げられる。
【0153】
さらには、バランスウェイト73a,73bは回転子61,62の表面に載置されるので、バランスウェイト73a,73bの回転軸92方向への厚みを小さくすることができ、以って圧縮機が小型化される。
【0154】
上述したいずれの実施の形態においても、磁性体には例えば鉄心が採用できる。そして、鉄心として圧粉鉄心を採用することが望ましい。これは、磁束が圧粉鉄心内をいずれの方向に流れても圧粉鉄心の鉄損は小さく、以って回転軸92方向に電磁鋼板等を積層した場合に比べ、鉄損が顕著に低減するからである。しかも、鉄心の形状が複雑であっても形成しやすく、また鉄心を形成する際にその密度を均一にしやすい。
【符号の説明】
【0155】
1 第1層
2 第2層
3 第3層
11〜13 第1の磁心
21〜23 第2の磁心
61 第1の回転子
62 第2の回転子
61a 第1基体
62a 第2基体
63,64 固定子
91 方向
92 回転軸
111,121,131,311 第1の磁性体
112,122,132,312 第2の磁性体
113,123,133,313 第3の磁性体
211,221,231,314 第4の磁性体
212,222,232,315 第5の磁性体
213,223,233,316 第6の磁性体
611〜616,621〜626 磁石
631 コア
A11〜A13,B21〜B23,A31,A32,B31,B32,C31,C32 巻線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1層(1)に沿って配置され相互に重ならない一対の巻線(A31,A32)と、
前記第1層に対して積層される第2層(2)に沿って配置される相互に重ならない一対の巻線(B31,B32)と、
前記第2層に対して前記第1層とは反対側から積層される第3層(3)に沿って配置される相互に重ならない一対の巻線(C31,C32)と、
前記第1層乃至第3層が積層される方向(91)に沿って、いずれも延在する第1乃至第6の磁性体(311〜316)と
を備え、
前記第1の磁性体(311)は、前記方向から見て、前記第1層(1)の一の前記巻線(A31)と前記第2層(2)の一の前記巻線(B31)とのいずれもが巻回され、
前記第2の磁性体(312)は、前記方向から見て、前記第2層の他の前記巻線(B32)と前記第3層の一の巻線(C32)とのいずれもが巻回され、
前記第3の磁性体(313)は、前記方向から見て、前記第1層の前記一の前記巻線(A31)と前記第3層(3)の他の前記巻線(C31)とのいずれもが巻回され、
前記第4の磁性体(314)は、前記方向から見て、前記第1層の他の前記巻線(A32)と前記第2層の前記他の前記巻線(B32)とのいずれもが巻回され、
前記第5の磁性体(315)は、前記方向から見て、前記第2層の前記一の前記巻線(B31)と前記第3層の前記他の前記巻線(C31)とのいずれもが巻回され、
前記第6の磁性体(316)は、前記方向から見て、前記第1層の前記他の前記巻線(A32)と前記第3層の前記一の前記巻線(C32)とのいずれもが巻回される、電機子。
【請求項2】
前記巻線(A31,A32,B31,B32,C31,C32)は、それぞれ個別に絶縁体によって囲まれる、請求項1記載の電機子。
【請求項3】
前記巻線(A31,A32,B31,B32,C31,C32)は平角線である、請求項1または請求項2記載の電機子。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の電機子と、
前記電機子を固定子(64)とし、前記方向(91)に沿った回転軸(92)を中心に回転可能な第1の回転子(61)と
を備え、
前記第1の回転子は、前記方向に関して前記第2層(2)と反対側から前記第1層(1)と対向して配置される複数の第1磁石(615,616)を有する、モータ。
【請求項5】
前記巻線(A31,A32,B31,B32,C31,C32)に3相電流を流すことを特徴とする、請求項4記載のモータ。
【請求項6】
前記第1の回転子(61;61)は、前記方向(91)に関して前記第2層(2)と反対側から前記第1層(1)と対向する第1基体(61a;61a)を更に有し、
前記第1磁石(611〜614;615,616)は前記第1基体上に配置される、請求項4及び請求項5のいずれか一つに記載のモータ。
【請求項7】
前記第1基体(61a)が磁性材からなることを特徴とする、請求項6記載のモータ。
【請求項8】
前記第1の回転子(61)と共に、前記回転軸(92)を中心に回転可能な第2の回転子(62;62)
を更に備え、
前記第2の回転子は、前記方向(91)に関して前記第1層(1)と反対側から前記第2層(2)と対向して配置される複数の第2磁石(621〜624;625,626)を有する、請求項4乃至請求項7のいずれか一つに記載のモータ。
【請求項9】
前記第2の回転子(62;62)は、前記方向(91)に関して前記第1層(1)と反対側から前記第2層(2)と対向する第2基体(62a;62a)を更に有し、
前記第2磁石(621〜624;625,626)は前記第2基体上に配置される、請求項8記載のモータ。
【請求項10】
前記第2基体(62a)が磁性材からなることを特徴とする、請求項9記載のモータ。
【請求項11】
請求項4乃至請求項10のいずれか一つに記載のモータを搭載することを特徴とする、圧縮機。
【請求項12】
いずれも一の方向(91)に延在する第1乃至第6の磁性体(311〜316)と、
前記一の方向に垂直な面に沿って配置され、いずれも対をなす第1巻線乃至第3巻線と
を備えるコアを製造する方法であって、
(a)前記第1乃至前記第3の巻線の各々の対を、この順に前記一の方向に沿って積み重ねる工程と、
(b)前記第1乃至第6の磁性体を、所定の関係で前記第1巻線乃至前記第3巻線に嵌め込む工程と
を備え、
前記所定の関係では、
前記第1の磁性体(311)は、一の前記第1巻線(A31)と一の前記第2巻線(B31)とのいずれにも嵌め込まれ、
前記第2の磁性体(312)は、他の前記第2巻線(B32)と一の前記第3巻線(C32)とのいずれにも嵌め込まれ、
前記第3の磁性体(313)は、前記一の前記第1巻線(A31)と他の前記第3巻線(C31)とのいずれにも嵌め込まれ、
前記第4の磁性体(314)は、前記他の前記第1巻線(A32)と前記他の前記第2巻線(B32)とのいずれにも嵌め込まれ、
前記第5の磁性体(315)は、前記一の前記第2巻線(B31)と前記他の前記第3巻線(C31)とのいずれにも嵌め込まれ、
前記第6の磁性体(316)は、前記他の前記第1巻線(A32)と前記一の前記第3巻線(C32)とのいずれにも嵌め込まれる、電機子の製造方法。
【請求項13】
前記第1巻線乃至前記第3巻線(A31,A32,B31,B32,C31,C32)がそれぞれ個別に絶縁体によって囲まれることを特徴とする、請求項12記載の電機子の製造方法。
【請求項14】
前記第1巻線乃至前記第3巻線(A31,A32,B31,B32,C31,C32)が平角線であることを特徴とする、請求項12または請求項13記載の電機子の製造方法。
【請求項15】
請求項12乃至請求項14のいずれか一つに記載の電機子の製造方法と、
(c−1)複数の第1磁石(615,616)を、前記方向(91)に関して前記第2巻線と反対側から前記第1巻線(A31,A32)に対向させ、前記方向に沿った回転軸を中心に回転可能に配置する工程と
を備える、モータの製造方法。
【請求項16】
前記巻線(A31,A32,B31,B32,C31,C32)に3相電流が流されることを特徴とする、請求項15記載のモータの製造方法。
【請求項17】
前記工程(c−1)では、第1基体(61a;61a)上に前記第1磁石(611〜614;615,616)が配置され、
前記第1基体は、前記方向(91)に関して前記第2巻線(B31,B32)と反対側から前記第1巻線(A31,A32)に対向し、前記方向に沿った回転軸を中心に回転可能である、請求項15及び請求項16のいずれか一つに記載のモータの製造方法。
【請求項18】
前記第1基体(61a)が磁性材からなることを特徴とする、請求項17記載のモータの製造方法。
【請求項19】
(c−2)複数の第2磁石(621〜624;625,626)を、前記方向(91)に関して前記第1巻線(A31,A32)と反対側から前記第2巻線(B31,B32)に対向させ、前記第1磁石(611〜614;615,616)と共に回転可能に配置する工程
を更に備える、請求項15乃至請求項18のいずれか一つに記載のモータの製造方法。
【請求項20】
前記工程(c−2)では、第2基体(62a;62a)上に前記第2磁石(621〜624;625,626)が配置され、
前記第2基体は、前記方向(91)に関して前記第1巻線(A31,A32)と反対側から前記第2巻線(B31,B32)に対向し、前記第1基体(61a;61a)と共に回転可能である、請求項19記載のモータの製造方法。
【請求項21】
前記第2基体(62a)が磁性材からなることを特徴とする、請求項20記載のモータの製造方法。
【請求項22】
請求項15乃至請求項21のいずれか一つに記載のモータの製造方法によって製造される前記モータを、圧縮機に搭載することを特徴とする、圧縮機の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−24422(P2011−24422A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248386(P2010−248386)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【分割の表示】特願2004−376559(P2004−376559)の分割
【原出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】