説明

電気ケトル

【課題】 沸騰を検知後にヒータを停止し、液体の沸騰が収まった後、沸きあがりを報知することで、沸騰した液体が吹き零れることがないようにした電気ケトルを提供すること。
【解決手段】上方が開口し底部に加熱ヒータが配置されて所定量の液体が収容される電気ケトル本体と、電気ケトル本体の開口を覆う開閉自在な蓋体と、前記加熱ヒータを制御する制御手段と、液体の沸騰状態を検知するサーミスタとを有し、前記電気ケトル本体の側壁にハンドルを設けて、前記ハンドル内に前記制御手段を収納した電気ケトルにおいて、電気ケトル本体に収納された液体が沸騰してから所定時間経過後に、アラームを鳴動させ、沸騰したことを報知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を加熱する電気ケトルに係わり、詳しくは、沸騰の検知後に加熱ヒータを停止し、所定時間後に沸騰状態の収束を報知するようにした電気ケトルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から電気ケトルは、一般的に持ち運びが容易で手軽にお湯等を沸かすことができるものとして広く普及している。この電気ケトルは、通常、所定量の水等を入れて加熱する加熱器を有する電気ケトル本体と、この電気ケトル本体の加熱器へ電力を供給する外部電源コードが接続された基台とを有し、この基台に電気ケトル本体をセットし、電源スイッチをオンすることによって、お湯など沸かすことが出来る構成となっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、ケトルを手で握る部分となるハンドルにコントロールパネルが収容されて、温度制御をするようにした電気ケトルも開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】実用新案登録第3097275号公報
【特許文献2】特開平10−157号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電気ケトルのサーミスタには、特許文献2に見られるように、温度を検知してからユーザに沸騰状態を知らせるアラームが一般的に用いられている。この電気ケトルでは、電源スイッチがオンされ、ヒータが発熱して湯沸しを行い、やがて湯が沸騰温度に達する。その状態で注湯すると、熱湯が注ぎ口から外へ吹き零れて、周囲を汚すとともに火傷する等の恐れがある。
【0005】
本発明は、このような従来技術が抱える課題を解決するためになされたもので、本発明の目的は沸騰を検知してから加熱ヒータを停止し、所定時間経過してから容器内の沸騰が収まったことを報知することによって、沸騰した液体が飛散り、その液体により火傷等が生じることを防止する電気ケトルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本願発明の請求項1の電気ケトルは、上方が開口し底部に加熱ヒータを配置して液体を収容する電気ケトル本体と、前記電気ケトル本体の開口を覆う蓋体と、前記液体の温度を検知する温度検出手段と、該温度検出手段の検知出力により前記加熱ヒータを制御する制御手段とを備えた電気ケトルにおいて、前記液体が沸騰したことを検知した直後に前記加熱ヒータの加熱を停止し、更に所定時間経過後に沸騰状態の収束を報知することを特徴とする。
【0007】
また、本願発明の請求項2の電気ケトルは、請求項1に記載の電気ケトルで、前記報知タイミングを容器内の液体量に応じて変更することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電気ケトルは、上記の構成を備えることにより、以下の優れた効果を奏する。即ち、請求項1の発明によれば、沸騰を検知した直後に加熱ヒータを停止し、沸騰が収まった後、速やかにブザー、ランプ等のアラームを鳴動・点滅させ、周囲に沸騰の収束を報知し、安全な状態で湯を注ぐことが出来る。
【0009】
請求項2の発明によれば、電気ケトル本体に収納された液体量に応じ、ケトル本体内の定格水位が標準水位より少ない場合は、周囲に沸騰の収束を報知するタイミングを標準水位の場合に比べて早くし、ケトル本体内の定格水位が標準水位より多いときは、周囲への沸騰の収束を報知するタイミングを標準水位の場合と比べて遅くすることを可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の最良の実施形態を説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための電気ケトルを例示するものであって、本発明をこの電気ケトルに特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものも等しく適応し得るものである。
【実施例】
【0011】
図1〜図5を参照して、本発明の実施形態に係る電気ケトルを説明する。なお、図1は本発明の実施形態に係る電気ケトルを示し側面図である。図2は図1のA―A線の断面図である。図3は、本発明の実施形態に係る電気ケトル内の時間経過に伴う温度特性を示すタイムチャート、図4は、電気ケトル本体にある液体の湯沸し時間と報知までの時間を表すグラフ、図5は本実施例の動作を説明するためのフローチャートである。
【0012】
電気ケトル1は、図1、図2に示すように、上方が開口し底部に加熱ヒータ板(加熱ヒータ)2が配置されて所定量の水などの液体が収容される電気ケトル本体3と、この電気ケトル本体3が載置される基台4と、電気ケトル本体3の上方の開口5を覆う開閉自在な蓋本体6とを有し、電気ケトル本体3の側壁部に半円リング型のハンドル7を設けた構成となっている。
【0013】
電気ケトル本体3には、開口5の近傍の内壁にあって、定格水位ライン(MAX)の上方にサーミスタからなる温度検出手段(温度センサ)8が装着されている。この定格水位ラインは、このライン以下の水が収容された場合には、加熱沸騰して水表面が波立っても上方の開口5から熱湯が吹き零れない高さに設定されている。
【0014】
また、ハンドル7は、このハンドル7を構成する部材内に、温度検出手段8の検出値を入力して加熱ヒータ2を制御する制御手段9が収納されており、温度検出手段8と制御手段9とは、図示しないがリード線で接続されるとともに、両部材間に蒸気の侵入を阻止する隔離部材P1〜P3が装着されている。これらの隔離部材P1〜P3は、耐熱性及び弾性を有するパッキン部材で形成されている。また、このハンドル7は、半円リング型のハンドル部材の内側下方に加熱ヒータ2への通電をオン・オフする電源スイッチ10が配設されている。蓋本体6は、バネ自動開閉機構が付設されて、このバネ自動開閉機構をリリースする操作ボタン11がハンドル7の外側頂部付近に配設されている。
【0015】
この電気ケトル本体3は、上記の構成を備えることにより、以下の特徴を有するものとなっている。すなわち、温度検出手段8にサーミスタが使用されているので、従来技術のバイメタルセンサのように機械的な可動部分が無くなり、蒸気の侵入を阻止するシール構造が簡単になる。したがって、制御手段9が蒸気の影響を受けることが無くなり、制御手段9の誤動作或いは故障などを防止できる。また、温度検出手段8は定格水位ラインの上方に装着されているので、この温度検出手段8によって、液体が蒸発する蒸気温度及び温度検出手段8が液体に浸った場合に液体の沸騰状態を検知することができる。なお、この温度検出手段8は、開口5近傍の内壁に装着されているので、従来技術のように、容器底部の加熱ヒータ2に近い箇所に設けたものと比べて、電気ケトル本体3内の温度検知が正確になる。その結果、外部への熱湯の吹き零れを防止することが可能になる。又、蓋本体6にはバネ自動開閉機構が付設されているので、操作ボタン11の操作により、片手で簡単に蓋本体6を開くことが出来る。
【0016】
これらの特徴及びその他の特徴は、以下、個々の部品説明で述べる。
【0017】
電気ケトル本体3は、上方及び下方が開口5、開口部12で開口し、所定の直径を有する筒状体13と、この筒状体13の側壁14に前述のハンドル7を備えた耐熱性を有する樹脂成型体で形成されている。この電気ケトル本体3は、下方の開口部12には加熱ヒータ板2がシールパッキン15を介在して液密に固定されている。上方の開口5は、その一端に注出口16が形成され、他端のハンドル7の近い箇所に温度検出手段8が装着される装着室17が形成されている。
【0018】
また、ハンドル7には、図2に示すように、下方のU字溝7a内、すなわち、基台4に近い位置に前記電源スイッチ10が設けられている。この電源スイッチ10の操作部18は、ハンドル本体7bの内側に設けた小孔7cから突出している。
【0019】
電源スイッチ10がハンドル本体7bの下方内側に配設されているので、従来技術のようなハンドル頂部に露出させたものと比べて、障害物が触れる機会が少なくなり、障害物が触れて電源スイッチ10がオンされて空焚きなどが発生することがなく安全性が向上する。
【0020】
更に、ハンドル本体7bは、U字溝7a内にサーミスタ8からの検出値を入力して加熱ヒータ2を制御する制御手段9が収容されている。この制御手段9は、図示しないがマイクロコンピュータ及びメモリなどを有し、メモリには、蒸気温度が所定値になったときに、加熱ヒータ2への通電を停止させる値(例えば85℃)を記憶している。この値は、液体の沸騰温度より低い値に設定されている。この値を設定して置くことにより、制御手段9は、検知された蒸気温度が液体の沸騰に相当する値に達したときに、加熱ヒータ2への加熱を停止させる制御を行うので、液体を沸騰温度に加熱することができる。
【0021】
温度センサ8と制御手段9とは、図示しないがリード線で接続されている。ハンドル7が形成された側壁14面には、細長の窓孔が形成されて、この窓孔に水量確認用の光透過性の部材からなる計量メモリ板19が装着されている。この箇所に計量メモリ板19を設けることにより、計量メモリが目立たなくなり、デザイン性がよくなる。
【0022】
装着室17は、定格水位ラインより上方に位置しているので、この装着室17に取付けられた温度検出手段8によって、蒸気温度及び液体温度を検知できる。すなわち、定格水位ラインを超えた水が収容されたときに、サーミスタ8の温度検知部が水に浸って水温を検知することができる。なお、サーミスタ8は、電気ケトル本体3に設けたが、蓋本体6に取付けてもよい。符号8Aは蓋本体6にサーミスタ8を取付けた場合を示している。
【0023】
蓋本体6は、図2に示すように、上方が開口し浅底で電気ケトル本体3の上方開口5を覆う大きさの蓋体20と、この蓋体20の開口5を覆う化粧カバー21とで構成されている。
【0024】
電気ケトル本体3に装着される加熱ヒータ板2について、図2を参照して説明する。
【0025】
下方の開口部12には、図2に示すように、加熱ヒータ板2がシールパッキン15を介在して液密に固定される。すなわち、筒状体13の内壁面に複数本の突起部22が形成されて、加熱ヒータ板2が下方の開口部12から嵌め込んで、加熱ヒータ板2を各突起部22のそれぞれの下端部に接触させながら、この開口部12内に押えリング23を嵌め込むことによって固定される。また、各突起部22の上端部が定格水位ラインの目安となっている。加熱ヒータ2は、この加熱ヒータ2の周囲にシールパッキン15を介在させて、不図示の環状固定部材で固定される。加熱ヒータ板2は、所定の厚さを有するステンレス製板にシーズヒータ(図示省略)が装着されたものとなっている。このシーズヒータは電気コネクタ24に接続されている。下方の開口部12は、底カバー25で覆蓋される。電気コネクタ24は、電気ケトル本体3が基台4上に載置されたときに、基台4に設けた電気コネクタ26に接続されるようになっている。
【0026】
以下、この電気ケトル内部に注がれた液体がヒータによって温められ沸騰が始まり、沸騰が収まった後、使用者に液体が適温となることを報知するまでの電気ケトル本体3の動作を図3、図4、図5を参照して説明する。
【0027】
図3は、本発明の実施形態に係る電気ケトル内の時間経過に伴う温度特性を示すタイムチャートである。時間が経過するにつれ、蒸気温度は除除に上昇する。液体の温度が沸点に近づくと、蒸気温度は急激に上昇する。この時、電気ケトル本体3内の液体は、沸騰状態であり、蒸気温度は85℃近傍を示す。その後、加熱ヒータへの通電を停止(OFF)すると、電気ケトル本体3内の液体は沈静し、蒸気温度は下がり始める。
【0028】
図4は、電気ケトル本体3内にある液体の湯沸し時間と、加熱ヒータを停止してからアラームによる報知を開始するまでの時間を表す。縦軸は加熱ヒータ停止後にアラームによる報知までの時間を表し、横軸は電気ケトル本体3内部の液体が沸騰するまでに要する時間(湯沸し時間)を表す。図4によると、液体の量が少ない場合(200cc未満)では、電気ケトル本体3内の液体は3分未満で沸点に達する。この時、加熱ヒータを停止後にアラームの報知までに要する時間は、3秒である。又、液体量が標準(200cc以上800cc未満)であれば、沸点に達するまでの時間は3分以上から5分未満である。この際、加熱ヒータが停止後にアラーム報知までに要する時間は、5秒である。更に、液体量が多い場合(800cc以上)であれば、沸点に達するまで5分以上要する。この際、加熱ヒータが停止してから、アラーム報知までに要する時間は10秒となる。
【0029】
次に、本実施例装置の動作を図5に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0030】
まずS1ステップにて、電気ケトル本体3の筒状体13内に注水を行う。
【0031】
続いてS2ステップにて、電源スイッチ10の押下(ON)がされると、制御手段9は、この信号を検出する。
【0032】
S3ステップにて、制御手段9は加熱ヒータ2を起動(ON)する。
【0033】
S4ステップにて、制御手段9は、電気ケトル本体3内の液体が沸騰(温度検出手段8が85℃を検出)するまでの時間の計測を開始する。
【0034】
S5ステップでは、制御手段9は、温度センサ8近傍の蒸気温度が85℃であるか否かを判定する。ケトル内部の液体は沸騰状態となると、温度センサ8近傍の蒸気温度は85℃近辺となる。この温度センサ8近傍の蒸気温度が85℃となったことを制御手段9が検出すると、S6ステップへ処理を進める。蒸気温度が85℃でない場合は、S5ステップの処理を繰り返す。
【0035】
続いて、S6ステップにて、ケトル内部の液体が沸騰すると、S7ステップへ処理を進める。
【0036】
S7ステップでは、電気ケトル本体3内の液体の湯沸し時間の計測を終了して、S8ステップへ処理を進める。
【0037】
S8ステップでは、制御手段9は加熱ヒータ2を停止(OFF)させ、その後S9ステップへ処理を進める。
【0038】
S9ステップでは、制御手段9は、メモリに格納されている湯沸し時間(t1)を読出し、加熱ヒータ2が停止後、電気ケトル本体3内の蒸気温度が下がり始め、液体が煮立った状態(沸騰状態)が収束するまでの時間を判定する。ここで制御手段9は、電気ケトル本体3内の液体が沸騰するまでの時間が5分以上の要した場合は、定格水位ラインと比べて、液体の量が多い(800cc以上)と判定する。また電気ケトル本体3内の液体の沸騰までの時間が3分以上5分未満であれば、制御手段9は、液体の量が定格水位ラインと比べて標準(200cc以上800cc未満)と判定する。更に、電気ケトル本体3内の液体の沸騰までの時間が3分未満ならば、液体の量が定格水位ラインと比べて少ない(200cc未満)と判定する。この後、S10ステップへ処理を進める。
【0039】
S10ステップでは、制御手段9は、S9ステップで判定した液体の量に応じて、電気ケトル本体3内の液体の沸き上がりをアラームで報知する。具体的には、制御手段9は、S9ステップにて液体の量が多いと判定した場合は、電気ケトル本体3内部の液体が煮え立った状態から除除に沈静されていると予測される10秒経過後にアラーム報知を行う。又、制御手段9は、S9ステップにて液体の量が標準と判定した場合は、加熱ヒータ停止してから5秒経過後にアラーム報知を行う。更に、制御手段9は、S9ステップにて液体の量が少ないと判定した場合は、加熱ヒータを停止してから3秒経過後にアラーム報知を行う。
【0040】
このように、本発明によれば、制御手段9がケトル内部の液体量に応じて、ケトル内部の沸騰を検出後、暫く時間が経過し、液体が適温になった状態を周囲の使用者等に知らせることが出来る。これによって、沸騰した液体がケトルの注ぎ口から外へ吹き溢れて周囲を汚すとか、火傷するといった危険性を低下させ、安全かつ快適な使用環境を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1は本発明の実施形態に係る電気ケトルの側面図である。
【図2】図2は図1のA―A線の断面図である。
【図3】図3は本発明の実施形態に係る電気ケトル内の時間経過に伴う温度特性を示すタイムチャートである。
【図4】図4は、電気ケトル本体にある液体の湯沸し時間と報知までの時間を表すグラフである。
【図5】図5は、本実施例の動作を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0042】
1・・電気ケトル、2・・加熱ヒータ板(加熱ヒータ)、3・・電気ケトル本体、4・・基台、5・・開口、6・・蓋本体、7・・ハンドル、7a・・U字構、7b・・ハンドル本体、7c・・小孔、8・・温度検出手段(サーミスタ、温度センサ)、9・・制御手段、10・・電源スイッチ、11・・操作ボタン、12・・開口部、13・・筒状体、14・・側壁、15・・シールパッキン、16・・注出口、17・・装着室、18・・操作部、19・・計量メモリ板、20・・・蓋体、21・・化粧カバー、22・・突起部、23・・押えリング、24・・電気コネクタ、25・・底カバー、26・・電気コネクタ、MAX・・定格水位ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方が開口し底部に加熱ヒータを配置して液体を収容する電気ケトル本体と、前記電気ケトル本体の開口を覆う蓋体と、前記液体の温度を検知する温度検出手段と、該温度検出手段の検知出力により前記加熱ヒータを制御する制御手段とを備えた電気ケトルにおいて、
前記液体が沸騰したことを検知した直後に前記加熱ヒータの加熱を停止し、更に所定時間経過後に沸騰状態の収束を報知することを特徴とする電気ケトル。
【請求項2】
前記報知タイミングを容器内の液体量に応じて変更することを特徴とする請求項1記載の電気ケトル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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