説明

電気コネクタ組立体

【課題】中間コネクタの電源端子がその両端で接触接続される両相手コネクタの受入端子を、互いに独立させかつ周方向のどの角度位置でも同じモードのフローティングが行える電気コネクタ組立体を提供することを課題とする。
【解決手段】第一取付コネクタ30と第二取付コネクタ50を接続する中間コネクタ10を有し、該中間コネクタが直状の電源端子21を備え、上記第一取付コネクタと第二取付コネクタが上記電源端子の対応端部を受け入れる第一受入端子31と第二受入端子51を備え、第一受入端子31と電源端子21のいずれか一方と、そして第二受入端子51と電源端子21のいずれか一方がそれぞれ電源端子21の軸線まわりの周方向での任意角度位置での電源端子の傾きと半径方向の移動を許容可能に半径方向で弾性変形可能な金属製の弾性筒状部材35;37を有し、該弾性筒状部材が周面で電源端子と第一及び第二受入端子と弾性接触する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気コネクタ組立体、特に、電源端子を有する電気コネクタ組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電気コネクタ組立体としては、例えば、特許文献1に開示されているコネクタ組立体が知られている。
【0003】
この特許文献1のコネクタ組立体は、回路基板に取り付けられ相手コネクタと、他の回路基板に取り付けられた他の相手コネクタとを接続する中間コネクタとを有している。両方の相手コネクタは、嵌合方向に延びるピン状の固定コンタクト(端子)がコネクタの嵌合方向に対して直角な面で行そして列をなす複数位置に植設されている。これに対し、中間コネクタは、金属帯をその板厚方向に屈曲成形して該板厚方向に弾性変形可能な可動コンタクトが設けられている。一つの可動コンタクトは、一つの固定コンタクトを挟圧保持するように板厚方向に対向するようにして対をなして設けられた二つのばね片を、上記嵌合方向での中間位置で、連結部により連結して一体化して両ばね片の間隔を一定に保っている。この可動コンタクトの一対のばね片は上記連結部を基部とする片持ち梁状をなし、それぞれの相手コンタクト側となる両方の自由端側に、局部的に間隔を狭めた接触部を形成し、対向する一対の接触部で、弾性撓み変形して、相手コネクタの固定コンタクトを受け入れ挟圧するようになっている。
【0004】
このような特許文献1のコネクタ組立体では、両相手コネクタと中間コネクタとが接続されている状態で、両相手コネクタは、上記嵌合方向に対して直角な面内での異なる二方向で、中間コネクタに対して、許容範囲内でそれぞれ相対移動可能である。
【0005】
この二方向の移動は、第一には、中間コネクタの可動コンタクトのばね片の板厚方向であり、固定コンタクトに圧せられた際の可動コンタクトの板厚方向での弾性変形により可能となり、第二にはばね片の板面方向であり、固定コンタクトが可動コンタクトのばね片の板面に沿って摺動することで可能となる。
【0006】
かくして、特許文献1のコネクタ組立体は、二つの相手コネクタ同士は、嵌合方向に対して直角な面内での二方向で相手コネクタ同士の位置のずれによる影響を吸収する、いわゆるフローティングが上記二方向で可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−060732
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の中間コネクタにあっては、可動コンタクトが金属帯をその板厚方向に屈曲して形成されていること、板厚方向で対向する一対のばね片が連結部で連結されていること、さらには、上下のばね片が一部材としてつながっていることに起因して、いくつかの点で改善の余地を残している。
【0009】
第一には、接触部が板厚方向にのみ屈曲されて形成されている結果、上述の二方向でのフローティングのうち一方は板厚方向での弾性変形、そして他方が板厚面方向での摩擦力を伴う摺動として得られるものであり、この二つの方向でのフローティングによる移動のモード、すなわち、固定コンタクトと可動コンタクトとの間で作用する力が上記二つの方向の一方では弾性力そして他方では摩擦力であって異質であるということである。その結果、両コネクタが同一直線方向にずれた場合であってもそのずれの方向によって、変位量や接触圧が異なることにより、ずれによる影響の吸収能力に差が出るという事態が生ずる。換言すれば、例えば、弾性変形する方向ではその変形量に比例した接圧となり、変形量によって接圧は大きくもなり小さくもなるが、摺動方向では、摺動による移動量に係らず、移動した位置での接触部がもともと受けている初期弾性力であって一定した接圧であるということになる。
【0010】
第二には、ばね片は板厚方向にしか屈曲されていないので、固定コンタクトに対する接触部位が直線であり、その接触線の長さは、四角形断面をなしている固定コンタクトの該四角形の一辺の長が最大となり、接触線の長さは十分とは言えない。ましてや、固定コンタクトが円形断面ならば、接触部位は点となってしまう。
【0011】
第三には、上述のごとく、上下のばね片が一体なので、上記二方向のフローティングでのモードの差異から、二つの相手コネクタ同士が同一直線方向でなく互いに異なる方向にずれた場合にも、両相手コネクタ同士間で上記ずれによる影響の吸収能力に差を生ずる。
【0012】
第四には、上下のばね片が一体なので、上下のばね片は互いに拘束し合って剛性が高くなっており、弾性変形方向では、接圧は大きいものの弾性変形量(移動量)が小さく、又、弾性変位に独立性がない。
【0013】
本発明は、このような事情に鑑み、中間コネクタの電源端子がその両端で接触接続される両相手コネクタの受入端子を、互いに独立させかつ周方向のどの角度位置でも同じモードのフローティングが行える電気コネクタ組立体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る電気コネクタ組立体は、第一の回路部材に取り付けられる第一取付コネクタと、第二の回路部材に取り付けられ第二取付コネクタと、第一取付コネクタと第二取付コネクタの間に介在して第一取付コネクタと第二取付コネクタを接続する中間コネクタとを有し、該中間コネクタが直状の電源端子を備え、上記第一取付コネクタと第二取付コネクタが上記電源端子の対応端部を受け入れて該対応端部の周面と接触する第一受入端子と第二受入端子をそれぞれ備える。
【0015】
かかる電気コネクタ組立体において、本発明は、第一受入端子と電源端子のいずれか一方と、そして第二受入端子と電源端子のいずれか一方がそれぞれ電源端子の軸線まわりの周方向での任意角度位置で電源端子が傾きを生ずること及び半径方向に移動することを許容可能に半径方向で弾性変形可能な金属製の弾性筒状部材を有しており、該弾性筒状部材が周面で電源端子と第一受入端子もしくは第二受入端子との間で弾性変形状態のもとに接触することを特徴としている。
【0016】
本発明は、剛性を有する直状の電源端子の両端に対応してそれぞれ独立して配設された弾性筒状体を介して、中間コネクタの電源端子と第一取付コネクタの第一受入端子そして第二取付コネクタの第二受入端子とが接触する。このように、第一受入端子と電源端子の一端との間そして第二受入端子と電源端子の他端との間における弾性筒状部材同士が独立して設けられているので、第一取付コネクタと第二取付コネクタは、互いに影響を受けずにフローティングが可能となる。また、上記弾性筒状部材は、筒状であって周方向のどの角度位置でも半径方向で同一弾性特性を示し、上記周方向の角度位置に係らず同一変形をもたらし、フローティングも同一モードとなる。
【0017】
本発明において、弾性筒状部材は、金属板を筒状に形成して作ることができ、例えば、周方向の複数位置に軸線方向に延びるスリットが軸線方向両端部の間で形成され、軸線方向中間部が軸線方向両端部よりも小径となる環状くびれ部を有している形状をなし、第一受入端子と第二受入端子に収容可能となっているようにすることができる。かかる弾性筒状部材は、金属板を筒状に丸めたときに生ずる周方向での側縁部同士は、そのまま隙間をもって当接可能に分離状態としておいてもよいし、あるいは溶接等で結合してもよいし、あるいは間隔をもっていてもよいし、さらには互いに重なっていてもよい。弾性変位は、上記環状くびれで最大となる。
【0018】
本発明において、第一受入端子と第二受入端子は、弾性筒状部材を収容する収容孔が形成されており、該収容孔の内周部に弾性筒状部材のくびれ部の外周面の拡径を規制する規制部を有していることが好ましい。この規制部を設けることにより、上記収容部に収容された弾性筒状部材における過度な弾性変形を阻止できる。
【0019】
本発明において、弾性筒状部材は、金属板を筒状に形成して作られており、周方向の複数位置に軸線方向に延びるスリットが軸線方向両端部の間で形成され、軸線方向中間部が軸線方向両端部よりも大径となる環状膨出部を有している形状をなし、電源端子の両端部の外周面に嵌着可能とすることもできる。この場合、電源端子は、弾性筒状部材が嵌着される嵌着外周面が形成されており、該嵌着外周面に弾性筒状部材の環状膨出部の内周面の縮径を規制する規制部を有していることが好ましい。
【0020】
この規制部は上記環状膨出部に当接して弾性筒状部材の過度な弾性変形を阻止する。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、以上のように、中間コネクタの直状の電源端子の両端にそれぞれ接続される相手コネクタの受入端子同士を互いに独立するように設け、それぞれの受入端子と電源端子の端部とのいずれか一方に、筒状弾性部材を配することで、周方向でのどの角度位置でも同一フローティング量を得ることとしたので、両相手コネクタと中間コネクタの間で、十分なフローティング量と十分な端子間の接圧を確保できると共に、上述のどの角度位置でも同じ接続特性を得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態としての電気コネクタ組立体の斜視図であり、(A)は中間コネクタ、第一そして第二コネクタの接続前、(B)は接続後を示す。
【図2】電源端子配列方向に対し直角方向での、図1(A)に対応する状態での縦断面図である。
【図3】電源端子配列方向での、図1(A)に対応する状態での縦断面図である。
【図4】図4(A)は図2そして図3における第一受入端子とその周辺を拡大して示す断面図であり、図4(B)は第一受入端子に収められる弾性筒状部材のみを抽出して示す斜視図である。
【図5】図1ないし図3の電気コネクタ組立体の接続後を示し、(A)は電源端子配列方向に対して直角な方向な面での縦断面図であり、(B)は電源端子配列方向の面での縦断面図である。
【図6】図5に対応する図で、第一そして第二取付コネクタが互いにずれて電源端子が傾いたときを示す図である。
【図7】本発明の他の実施形態を、各コネクタの接続前の状態で示す縦断面図である。
【図8】図7の中間コネクタの電源端子と弾性筒状部材のみを取り出して示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面にもとづき、本発明の実施の形態を説明する。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態の電気コネクタ組立体の外観、図2、図3そして図5はその縦断面図であり、図1(A)、図2そして図3は、中間コネクタ10、該中間コネクタ10に対する相手コネクタとなる第一そして第二取付コネクタ30,50の接続前を、そして図1(B)と図5は接続後を示している。
【0025】
図1において、中間コネクタ10は、電気絶縁材料から作られ上下方向に貫通空間が形成された略四角筒外形のハウジング11と、該ハウジング11に支持され上記貫通空間内で上下方向に延びる直状の金属ピン体をなす二本の電源端子21とを有している。電源端子21は一例として、二本の場合を図示したが、その本数には限定がなく一本でも三本以上でもよく、また、その配列は単列でも、行をなす複列でもよい。
【0026】
各電源端子21は、剛体として作られていて、横断面が円形をなすピン状の本体部22と下部にて半径外方に張り出す環状のフランジ部23とを有している。本体部22の上下端は、後述の相手コネクタたる第一そして第二取付コネクタ30,50との嵌合に好適なように丸味をもって形成され、フランジ部23は、下方に向け拡がる円錐状の周面23Aを有している。かかる電源端子21は、ハウジング11の上下方向寸法より長く、ハウジング11で支持された際に、該電源端子21の上下端がハウジング11の上下端からそれぞれ突出する長さとなっている。この電源端子は、一例としてハウジング11の上下端から突出しているが、没入していてもよく、その場合には、相手コネクタたる第一そして第二取付コネクタの端子が進入してくる。
【0027】
上記電源端子21を支持する四角筒外形の上記ハウジング11は、横断面が二本の電源端子21の配列方向に長い長方形をなしており、上下端部に後述の四角筒外形の第一そして第二取付コネクタ30,50を受け入れる空間をなす受入部12,13がそれぞれ形成されている。上下方向で、上記二つの受入部12,13の間には、端子貫通部14が形成されている。該端子貫通部14は、上記二本の電源端子21の配列方向では、図3に見られるように、中実壁部15に形成された孔状であり、その内壁面と各電源端子21との間に隙間を有し、上記配列方向に対し直角方向では、図2に見られるように、薄壁16の間に形成された孔状であり、この薄壁16の内面と各電源端子21との間に隙間を有している。この薄壁16の背後は、側壁17との間に空間16Aが形成されている。
【0028】
上記端子貫通部14の下部分には、図3に見られるような凹状部14Aが形成されており、図3にて電源端子21のフランジ部23の上面が下方の凹状部14Aの底部と当接するようになっていると共に、図2に見られるようにハウジング11の側壁17の中間部で上記フランジ部23に対応する位置よりも上方から下方に延びる弾性腕18が設けられていて、該弾性腕18の下端の鉤部18Aが上記フランジ部23の下面に係止するようになっている。かくして、上記フランジ部23は、その一つの直径線方向位置で上面が上記凹状部14Aの底部及び薄壁16の端部で、そして上記一つの直径線方向に対して直角方向をなす直径線方向位置で下面が上記弾性腕18の鉤部18Aにて保持されることで、上記電源端子21は上下方向で位置決めされている。かかる電源端子21は、ハウジング11の端子貫通部14へ下方から挿入されたとき、挿入過程でフランジ部23の円錐状の周面23Aにて鉤部18Aに当接して両弾性腕18を押し拡げるように弾性変形せしめて挿入が続行され、上記フランジ部23の上面が凹状部14Aの底部に当接した時点で上記鉤部18Aがフランジ部23から外れて両弾性腕18の弾性変形が原形に向け解除もしくは減じて、上記フランジ部23の下面に鉤部18Aが係止して、フランジ部23が上下面で挟持される。
【0029】
図2で見られる位置では、ハウジング11は、薄壁16と側壁17の間の空間16Aと連通する窓部17A(図1(A),(B)参照)が側壁17に形成されていると共に、上記弾性腕18の側方で側壁17に窓部17Bが形成されている。該窓部17A,17Bは、外部からの空気を流通させて、電源端子21での発熱を放散させるようになっている。
【0030】
ハウジング11には、上記窓部17A,17Bが形成されている側壁17の外面に、図1(A),(B)に見られるように、上下に延びる溝部19が形成されており、該溝部19の下部に、弾性変位可能なロック腕19Aが下方に延びその下端に釦部19Bが設けられていて、外部からの操作によりこの釦部19Bに形成された鉤部19B−1が、後述の第一取付コネクタ30の対応係止部44Aの下面に対し内側から係止そしてその解除が可能となっている。
【0031】
次に、相手コネクタとしての第一そして第二取付コネクタ30,50の両者は、図面での説明上、上下方向で異なる位置にあるため、符号30,50で区別しているが、全く同じ構成なので、以下、下方に位置する第一取付コネクタ30について説明し、上方に位置する第二取付コネクタ50については、第一取付コネクタ30と同一部位に50番台の符号を付すことでその説明を省略する。上記第一そして第二取付コネクタ30,50は、回路部材として、同様の形態の第一そして第二回路基板P1,P2にそれぞれ取り付けられる。
【0032】
上記第一取付コネクタ30は、図2そして図3に見られるように、金属製で有底円筒状の第一受入端子31と、これを保持する電気絶縁材製のハウジング41と、上記第一受入端子31内に収められた金属製の弾性筒状部材35とを有しており、該当部分が拡大して図4(A)に示されている。したがって、図1〜3では、図4(A)における第一取付コネクタ30を上下反転すると第二取付コネクタ50と同じ向きになる。
【0033】
第一受入端子31は図4(A)にて上方に開口した円筒内面をもつ収容孔32が形成され、外周面は、開口側そして底部側、共に円筒外面をなし、開口側円筒外面31Aが底部側円筒外面31Bよりも小さな外径に形成され、両者の境界位置に両者よりも外径の大きい環状突部31Cを有している。上記開口側円筒外面31Aには係止突起31A−1が形成されている。上記収容孔32は、底部側に段状の環状当接部32Bが形成されており、内周面には、軸線方向の中間位置に向け内径を若干小さくするようにテーパ状をなしていて上記中間位置で最小内径部となる規制部32Aを形成している。該規制部32Aそしてその近傍は、弾性筒状部材35の過度な弾性拡径変形を阻止する。
【0034】
上記第一受入端子31の収容孔32に収容される弾性筒状部材35は、図4(B)に見られるように、金属板にスリット36を形成した後にこれを円筒状に丸める成形を施して形成されている。上記スリット36は、周方向の複数位置に、弾性筒状部材35の軸線方向両端部の間で軸線方向に延びて形成されている。軸線方向両端部(周縁)は、スリットが及んでいないのでリング状をなしている。かかる弾性筒状部材35は、軸線方向中間位置に向け縮径加工を受けており、上記中間位置で環状くびれ部35Aを形成している。このように形成される弾性筒状部材35は、金属板にスリット36を形成後に環状くびれ部35Aを有するようにして円筒状に丸められる際、周方向で突き合わせられる当接部が隙間をもって当接可能に分離したままでも、あるいは互いに溶接等で接合されても良い。かかる弾性筒状部材35は、一時的に弾性縮径した状態で収容孔32に収められる。この弾性筒状部材35は、第一受入端子31の収容孔32に収容された後は、弾性力で原形に向け拡径して収容孔32の内面に弾性接触し、軸線方向では一端の周縁が、該収容孔32の底部側の環状当接部32Bに当接して位置が定められる。
【0035】
上記第一受入端子31を保持するハウジング41は、図3に見られるように、上記第一受入端子31の底部側円筒外面31Bの範囲を収めて該第一受入端子31を保持する保持孔42が二箇所に形成されており、各保持孔42でそれぞれ同様に、第一受入端子31を保持している。ハウジング41は、図2そして図3に見られるように、保持孔42の底部側で該保持孔42の周縁部に、半径方向内方に突出する内側環状突部43を有し、保持孔42の開口側で該ハウジング41の外周面から突出する外側環状突部44を有している。上記内側環状突部43の内周縁は電源端子21が突入できる内径となっている。該外側環状突部44は、中間コネクタ10のハウジング11に設けた弾性変位可能な釦部19Bと周方向で一致する部分が門型にもち上がって既出の対応係止部44Aを形成しており(図1(A)参照)、該対応係止部44Aの下面に釦部19Bの鉤部19B−1が内側から係止する。かかるハウジング41に対し、上記第一受入端子31がその開口側円筒外面31Aで上記保持孔42へ圧入されて、開口側円筒外面31Aに形成された係止突起31A−1が保持孔42の内面に喰い込んで抜けが防止される。かくして、ハウジング41で保持された第一受入端子31の、底部側円筒外面31Bの範囲が該ハウジング41の保持孔42よりも突出し、かつ、ハウジング41の第一回路基板P1への取付面よりも突出した状態で第一取付コネクタ30が形成される。
【0036】
かかる第一取付コネクタ30は、第一回路基板P1に取り付けられる。第一回路基板P1は、第一受入端子31の底部側円筒外面32Bが貫通しない程度に進入するスルーホールP1−1が形成されており、該スルーホールP1−1の内面と第一回路基板P1の両面そして内部に形成された回路層P1−2が導通して設けられている。したがって、上記第一受入端子31の底部側円筒外面32BがスルーホールP1−1の内周面と僅かな隙間が形成され、この隙間に半田がなされて、第一受入端子31は回路層P1−2と電気的に接続され、第一回路基板P1への取付けがなされる。
【0037】
第二取付コネクタ50も、第一取付コネクタ30と同様に構成され、かつ同様に第二回路基板P2に接続かつ取り付けられる。
【0038】
このようにして構成される、第一そして第二取付コネクタ30,50そして中間コネクタ10とは、次の要領で使用される。
【0039】
先ず、図2そして図3のごとく、第一回路基板P1に取り付けられた第一取付コネクタ30を、該第一取付コネクタ30が上向きとなるように位置せしめ、ロック腕19Aの釦部19Bを下方に位置するようにして中間コネクタ10を上記第一取付コネクタ30の上方から降下せしめ、該中間コネクタ10の電源端子21の下端側を第一取付コネクタ30の第一受入端子31内の弾性筒状部材35内に挿入させる。挿入をさらに進行させると、上記電源端子21の下端側は、弾性筒状部材35の環状くびれ部35Aを弾性拡径させながら所定位置に達する。弾性拡径した弾性筒状部材35は、電源端子21の下端側の外周面と弾性接触するとともに、第一受入端子31の収容孔32の内周面に対してその弾性接触圧を増大する。電源端子21の下端側が上記所定位置まで挿入されると、その時点で、中間コネクタ10のロック腕19Aの釦部19Bの鉤部19B−1が第一取付コネクタ30の外側環状突部44に形成された対応係止部44Aの下面に対し内側から係止し合って、中間コネクタ10は第一取付コネクタ30から外れなくなる。中間コネクタ10を外したいときは、上記釦部19Bを押圧して鉤部での係止を解除して、そのまま中間コネクタ10を上方にもち上げる。
【0040】
次に、第二回路基板P2に取り付けられている第二取付コネクタ50を、該第二取付コネクタ50が下向きとなるようにして、第一取付コネクタ30に接続されている中間コネクタ10に向け降下せしめ、中間コネクタ10の電源端子21の上端側が第二取付コネクタ50の第二受入端子51内の弾性筒状部材55内に受け入れる。かくして、中間コネクタ10は、上記第一取付コネクタ30に対するときと同様にして、第二取付コネクタ50に対しても接続される。この場合、中間コネクタ10は第二取付コネクタ50の外側環状突部54と係止し合う釦部を有していないので、第二取付コネクタ50は、上方にもち上げるだけで、中間コネクタ10との接続から開放される。このようにして、第一取付コネクタ30と第二取付コネクタ50は、上記中間コネクタ10を介して接続される(図5(A),(B)参照)。
【0041】
このように、中間コネクタ10を介して接続された第一取付コネクタ30と第二取付コネクタ50が、第一回路基板P1と第二回路基板P2の水平方向にずれる外力を受けたときに、これらの回路基板と共に、ずれようとする。この場合には、図6に見られるように、ずれが生じる前における電源端子21の当初の正規中心線Xが軸線X−1の方に傾くようになる。この傾きは、第一取付コネクタ30の弾性筒状部材35と第二取付コネクタ50の弾性筒状部材55の半径方向の弾性変位により可能となる。両弾性筒状部材35,55の弾性変位は、電源端子21の周方向におけるどの角度位置においても可能であり、同一力を受ければどの角度位置でも同一変位量であり、しかも、両弾性筒状部材35,55に互いに独立して弾性変位する。弾性筒状部材35,55は、周方向では、ずれが生じる角度位置で弾性変位量が最も大きく生ずるが、軸線方向では、それらの環状くびれ部35A,55Aの位置で弾性変位量が最も大きくなる。この環状くびれ部35A,55Aは、傾きが生ずる前には電源端子21との間の接触線は円をなしているが、傾きが生じた状態では、その傾きにより接触線は楕円となる。しかしながら、図4(B)のごとく、周方向の複数位置にスリット36,56が形成されている弾性筒状部材35,55は、スリット36同士間の細帯状部分35B,55Bがその板厚方向である半径方向に弾性変位しているので、電源端子21に反力として作用する弾性力(圧力)は、どの細帯状部分35B,55Bでも電源端子21の軸線X−1に向って半径方向に作用する。上記傾きは、電源端子21と端子貫通部14との間の隙間の大きさが位置によって変わるように生ずるが、その傾きの中心は、下側の弾性筒状部材35の環状くびれ部35Aとの接触面に位置する。上記弾性筒状部材35は、その変位量が過度にならないように、第一受入端子31の収容孔32に形成された規制部32Aにより規制を受ける。弾性筒状部材55においても同様である。
【0042】
弾性筒状部材35は、図1ないし図6の実施形態では、第一そして第二取付コネクタ30,50に設けられていたが、本発明では、これに限定されず中間コネクタ10に設けることとしてもよい。図7の形態においては、弾性筒状部材37は、中間コネクタ10の電源端子21に取り付けられている。該電源端子21は、両端部に弾性筒状部材37の装着のために凹状に細く形成された凹状支持面24を有している。該凹状支持面24は、該凹状支持面24の軸線方向中央部に向けゆるく直径を増大するテーパーをなし、最大直径位置で規制部24Aを形成している。一方、該凹状支持面24に装着される弾性筒状部材
37は、図8に見られるように、スリット36が形成された金属板を円筒状に丸めて形成されている点では図4(A),(B)のものと同じであるが、テーパが中央位置で最大径をなし、該最大径位置で環状膨出部38を形成している点で図4(A),(B)のものとは相違している。該環状膨出部38は、弾性拡径することで上記凹状支持面24に装着され、その縮径方向となる復元弾性力で該凹状支持面24に接圧をもって支持される。この状態で、上記環状膨出部38の外径は、軸方向で上記凹状支持面24の両側に位置する電源端子21の本体部22部分の外径よりも大きくなっている。
【0043】
このように上記電源端子21の凹状支持面24で支持された弾性筒状部材37は、電源端子21の両端部が第一取付コネクタ30の第一受入端子31内そして第二取付コネクタ50の第二受入端子51内にそれぞれ収容されて接続されると、電源端子21と第一受入端子31そして第二受入端子51との間で弾性変位にもとづく弾性力を生じ、電源端子21と第一受入端子31そして第二受入端子51とを電気的に接続する。この弾性筒状部材37の上記弾性変位は縮径方向に生ずるが、その変位量は過度にならないように、電源端子21の凹状支持面24に形成された上記規制部24Aで規制を受ける。このように、弾性筒状部材37の弾性変位により、図1ないし図6の実施形態と同様の原理で、電源端子21の軸線まわりの周方向の任意の角度位置で、電源端子21と両取付コネクタ30,50との間での相対的な半径方向の移動そして傾きを許容するようになる。
【0044】
本発明において、弾性筒状部材は、電源端子の両端部で同じ形態のものが用いられている必要はない。すなわち、電源端子の一端部で図1ないし図6の形態の弾性筒状部材、そして他端部で図7そして図8の形態の弾性筒状部材を用いてもよい。
【0045】
本発明において、図示の形態では電源端子のみを有するコネクタとして示したが、電源端子に併せて信号端子を備えていてもよいし、信号端子を有する他のコネクタと併用してもよい。
【0046】
さらには、弾性筒状部材は、図示の形態に限らず、略円筒体をなし、周方向のどの角度位置でも同じ弾性変位量を得られる導電体ならば良い。
【符号の説明】
【0047】
10 中間コネクタ 36 スリット
21 電源端子 37 弾性筒状部材
24A 規制部 38 環状膨出部
30 第一取付コネクタ 50 第二取付コネクタ
31 第一受入端子 51 第二受入端子
32 収容孔 52 収容孔
32A 規制部 P1 第一回路部材
35 弾性筒状部材 P2 第二回路部材
35A 環状くびれ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の回路部材に取り付けられる第一取付コネクタと、第二の回路部材に取り付けられ第二取付コネクタと、第一取付コネクタと第二取付コネクタの間に介在して第一取付コネクタと第二取付コネクタを接続する中間コネクタとを有し、該中間コネクタが直状の電源端子を備え、上記第一取付コネクタと第二取付コネクタが上記電源端子の対応端部を受け入れて該対応端部の周面と接触する第一受入端子と第二受入端子をそれぞれ備える電気コネクタ組立体において、
第一受入端子と電源端子のいずれか一方と、そして第二受入端子と電源端子のいずれか一方がそれぞれ電源端子の軸線まわりの周方向での任意角度位置で電源端子が傾きを生ずること及び半径方向に移動することを許容可能に半径方向で弾性変形可能な金属製の弾性筒状部材を有しており、該弾性筒状部材が周面で電源端子と第一受入端子もしくは第二受入端子との間で弾性変形状態のもとに接触することを特徴とする電気コネクタ組立体。
【請求項2】
弾性筒状部材は、金属板を筒状に形成して作られており、周方向の複数位置に軸線方向に延びるスリットが軸線方向両端部の間で形成され、軸線方向中間部が軸線方向両端部よりも小径となる環状くびれ部を有している形状をなし、第一受入端子と第二受入端子に収容可能となっていることとする請求項1に記載の電気コネクタ組立体。
【請求項3】
第一受入端子と第二受入端子は、弾性筒状部材を収容する収容孔が形成されており、該収容孔の内周部に弾性筒状部材のくびれ部の外周面の拡径を規制する規制部を有していることとする請求項2に記載の電気コネクタ組立体。
【請求項4】
弾性筒状部材は、金属板を筒状に形成して作られており、周方向の複数位置に軸線方向に延びるスリットが軸線方向両端部の間で形成され、軸線方向中間部が軸線方向両端部よりも大径となる環状膨出部を有している形状をなし、電源端子の両端部の外周面に嵌着可能となっていることとする請求項3に記載の電気コネクタ組立体。
【請求項5】
電源端子は、弾性筒状部材が嵌着される嵌着外周面が形成されており、該嵌着外周面に弾性筒状部材の環状膨出部の内周面の縮径を規制する規制部を有していることとする請求項4に記載の電気コネクタ組立体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−93124(P2013−93124A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232903(P2011−232903)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(390005049)ヒロセ電機株式会社 (383)
【Fターム(参考)】