説明

電気ポット

【課題】省エネレベルの優劣を明瞭にし、ユーザーの使い勝手を向上させた電気ポットを提供する。
【解決手段】湯沸しおよびまほうびん保温が可能な内容器と、該加熱手段に対する電源をON,OFF制御することにより、上記内容器内の湯を所定の温度に保温する保温加熱制御手段とを備え、省エネ性能を異にする複数の省エネ保温機能と該複数の省エネ保温機能の内の何れかの省エネ保温機能を選択する選択スイッチと、複数の省エネ保温機能の内で最も省エネ性能の高い省エネ保温機能を優先して選択する優先選択スイッチとから構成し、最も省エネ性能が高い省エネ保温機能以外の省エネ保温機能が選択されている状態で、上記優先選択スイッチが操作された時には、該最も省エネ性能の高い省エネ保温機能以外の省エネ保温機能から上記最も省エネ性能の高い省エネ保温機能に移行するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、省エネ性能を異にする複数の省エネ保温機能を備えた電気ポットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近では、湯を入れる内容器を、例えば真空二重壁構造又は断熱材介装構造とすることにより、断熱機能を高くして、保温性能、省エネ性能を向上させた電気ポットが多く提供されるようになっている(特許文献1参照)。
【0003】
このような電気ポットの場合、例えば「通常保温保温機能」と「まほうびん保温保温機能」の2つの保温保温機能がある。通常保温保温機能では保温ヒータを完全にOFFにするのではなく、例えば1分間ONにした後、5分間OFFにする等の湯の冷めない範囲でのON,OFF制御を繰り返し、可能な限り合計のOFF時間を長くすることによって、省エネを図りながら、所望の設定温度での保温を行っている。一方、まほうびん保温保温機能では、基本的に保温ヒータをOFFにし、最大の省エネ効果を得るようにしている。
【0004】
そして、そのような場合において、例えばまほうびん保温選択専用スイッチと保温選択スイッチとを別々に設け、例えば保温選択スイッチで98度保温、90度保温、80度保温等所望の設定温度を選択できるようにする一方、まほうびん保温選択専用スイッチで、まほうびん保温のみを専用で選択できるようにしたものもある(特許文献2参照)
また、上記のような「通常保温保温機能」と「まほうびん保温保温機能」の2つの保温保温機能に加えて、「通常保温保温機能」よりも低い省エネ温度で保温する「低温保温保温機能」を設け、これを第1の省エネ保温機能、上記「まほうびん保温保温機能」を第2の省エネ保温機能として、沸とう終了後、通常保温保温機能に移行してから所定時間以上何らの操作もなされなかった時には、先ず上記第1の省エネ保温機能に移行し、該第1の省エネ保温機能において、なお所定時間以上何らの操作もなされなかった場合には、第2の省エネ保温機能に移行させるようにしたものもある(特許文献3参照)。
【0005】
また、1日24時間の内の各家庭で湯を必要とする時間帯を実際の給湯実績を基に学習記憶させ、同学習記憶した湯の必要な時間帯に合わせて、電気ポット(マイコン制御部)が自動的に湯沸しヒータ、保温ヒータのON状態とOFF状態とを切り替え、起床時6:00から就寝時23:00および就寝中間のトータルの消費電力が最も少なくなるように、上述のまほうびん保温機能(保温ヒータのOFFによる断熱保温機能)を活かした消費電力の少ない効率的な加熱保温制御を実現するようにした学習タイプのものもある(特許文献4参照)。
【0006】
さらに、これら省エネ保温機能に、節電タイマーによる省エネ保温機能(設定時間内は保温ヒータをOFF)を付加したものなどもある。
【0007】
【特許文献1】特開2002−153381号公報
【特許文献2】特開2007−229143号公報
【特許文献3】特開2003−190017号公報
【特許文献4】特開2004−305557号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、上記のように1台の電気ポットで省エネ性能を異にする複数の省エネ保温機能がある場合、どの省エネ保温機能が最も省エネ性能が高いのか、各省エネ保温機能相互間の省エネレベルの差が分かりづらくなる。特に1日のライフスタイルに合わせて24時間トータルで省エネ性能を実現する学習タイプ(特許文献4)の場合、ヒータのON時間とOFF時間が共にあるので、その省エネ度合を感覚的に把握するのが困難である。
【0009】
もちろん、まほうびん保温選択専用スイッチと保温選択スイッチとを設け、保温選択スイッチで98度保温、90度保温、80度保温の通常の保温機能を選択できるようにする一方、まほうびん保温選択専用スイッチで、まほうびん保温機能を選択できるようにしたもの(特許文献4)では、まほうびん保温選択専用スイッチをON操作することにより、実際に最も省エネ度合の高い「まほうびん保温」機能を選ぶことができるが、この場合の2つの保温機能は相互に省エネ性能の違いを基準とした優先関係を持っているわけではなく、単に当該スイッチで何れかの保温機能が選択されると、その機能へ移行するというだけのものである。
【0010】
本願発明は、このような事情に基いてなされたもので、省エネ性能を異にする複数の省エネ保温機能を設けるとともに、それら複数の省エネ保温機能の内の何れかを選択する選択スイッチを、上記省エネ性能の異なる複数の省エネ保温機能の内で最も省エネ性能の高い省エネ保温機能をその他の省エネ保温機能に優先して選択する優先選択スイッチとその他の省エネ保温機能を選択する選択スイッチとで構成することにより、最も省エネ性能の高い省エネ保温機能以外の所定の省エネ保温機能が選択されている状態において、上記優先選択スイッチが操作された時には、常に最も省エネ性能の高い省エネ保温機能が優先して選択されるようにした電気ポットを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願各発明は、上記の目的を達成するために、次のような課題解決手段を備えて構成されている。
【0012】
(1) 請求項1の発明
この発明の課題解決手段は、湯沸しおよびまほうびん保温が可能な内容器と、該内容器内の湯を加熱する加熱手段と、該加熱手段に対する電源をON,OFF制御することにより、上記内容器内の湯を所定の温度に保温する保温加熱制御手段とを備えてなる電気ポットであって、省エネ性能を異にする複数の省エネ保温機能と該複数の省エネ保温機能の内の何れかの省エネ保温機能を選択する選択スイッチを設ける一方、同選択スイッチを、上記複数の省エネ保温機能の内で最も省エネ性能の高い省エネ保温機能を他の省エネ保温機能に優先して選択する優先選択スイッチとその他の省エネ保温機能を選択する選択スイッチとから構成し、最も省エネ性能が高い省エネ保温機能以外の省エネ保温機能が選択されている状態において、上記優先選択スイッチが操作された時には、該最も省エネ性能の高い省エネ保温機能以外の省エネ保温機能から上記最も省エネ性能の高い省エネ保温機能に移行するようにしたことを特徴としている。
【0013】
このような構成によると、最も省エネ性能が高い省エネ保温機能以外の省エネ保温機能が選択されている状態において、上記優先選択スイッチが操作された時には、該最も省エネ性能の高い省エネ保温機能以外の省エネ保温機能から上記最も省エネ性能の高い省エネ保温機能に移行するので、ユーザーは、最も省エネ性能が高く、経済的な省エネ保温機能での保温を簡単かつ容易に選ぶことができるようになる。
【0014】
したがって、省エネ保温を行う場合の電気ポットの使い勝手が向上する。
【0015】
(2) 請求項2の発明
この発明の課題解決手段は、上記請求項1の発明の構成において、最も省エネ性能が高い省エネ保温機能以外の省エネ保温機能から最も省エネ性能が高い省エネ保温機能に移行するに際しては、当該移行前の省エネ保温機能の保温データを記憶手段に記憶させた上で移行するようにしたことを特徴としている。
【0016】
このように、最も省エネ性能が高い省エネ保温機能以外の省エネ保温機能から最も省エネ性能が高い省エネ保温機能に移行するに際しては、当該移行前の省エネ保温機能の保温データを記憶手段に記憶させた上で移行させるようにすると、まほうびん保温が解除された時には、何らの新たな操作をすることなく、同記憶手段に記憶されている元の省エネ保温機能に自動的に復帰して保温することができる。
【0017】
(3) 請求項3の発明
この発明の課題解決手段は、上記請求項1又は2の発明の構成において、最も省エネ性能が高い省エネ保温機能が選択されている状態においては、優先選択スイッチ以外の選択スイッチがON操作されても、保温機能の変更がなされないようにしたことを特徴としている。
【0018】
このように、少なくとも最も省エネ性能が高い省エネ保温機能が選択されている状態においては、仮に上述の優先選択スイッチ以外の他の省エネ選択スイッチがON操作されても、保温機能の変更がなされないようにすると、最も省エネ性能の高い省エネ保温機能を選択する優先選択スイッチの優先性が一層確実に認識されるようになり、ユーザーに対するアピール度も高くなる。
【0019】
(4) 請求項4の発明
この発明の課題解決手段は、上記請求項1,2又は3の発明の構成において、最も省エネ性能の高い省エネ保温機能は、保温ヒータに対して電源の供給が停止されるまほうびん保温機能であることを特徴としている。
【0020】
まほうびん保温は、保温ヒータに対して電源の供給が停止されることから最も省エネ性能の高い省エネ保温機能であり、最も消費電力が少なくて済むので、上述した最も省エネ性能が高い省エネ保温機能として最適である。
【発明の効果】
【0021】
以上の結果、本願発明の電気ポットによると、まほうびん保温機能等省エネ性能の異なる複数の省エネ保温機能間の省エネレベルの優劣が明瞭になり、省エネ保温機能選択時のユーザーの使い勝手を可及的に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、添付の図面を参照して、本願発明の最良の実施の形態に係る電気ポットの構成と作用について説明する。
【0023】
(電気ポット本体部の構成)
先ず図1ないし図3には、同本願発明の最良の実施の形態に係る電気ポットの本体および要部の構成が示されている。
【0024】
この電気ポットは、図1に示すように、貯湯用の内容器3を備えた容器本体1と、該容器本体1の上部側開口部を開閉する蓋体2と、上記内容器3を湯沸し時において加熱する加熱手段である湯沸しヒータ4Aと、上記内容器3を保温時において加熱する加熱手段である保温ヒータ4Bと、上記内容器3内の湯を外部へ給湯するための給湯通路5と、該給湯通路5の途中に設けられた給湯流量計測用の流量センサ80と、AC電源が接続されている状態において上記給湯通路5を介して上記内容器3内の湯を外部に送り出す電動給湯ポンプ6と、AC電源が接続されていない状態において上記給湯通路5を介して内容器3内の湯を外部に送り出すエア式の手動給湯ポンプ18とを備えて構成されている。
【0025】
上記容器本体1は、外側面部を構成する合成樹脂製の筒状の外ケース7と、内側面部を構成する上記内容器3と、上記外ケース7と内容器3とを上部側で一体に結合固定する合成樹脂製の環状の肩部材8と、底面部を構成する合成樹脂製の皿状の底部材9とからなっている。
【0026】
上記内容器3は、ステンレス製の有底円筒形状の内筒10と同じくステンレス製の円筒形状の外筒11との間に真空断熱空間を設けた保温性能の高い真空二重構造(まほうびん構造)からなっており、その底部には、外周部を除いて上記内筒10の底面部のみにより構成された1枚板部3aが形成されている。該1枚板部3aは若干上方に高く突出して成形されていて、その下面側には、上記湯沸しヒータ4Aと保温ヒータ4B(例えば雲母板にワット数の異なる2組の発熱体を保持させたマイカヒータよりなる)が取り付けられている。
【0027】
上記内容器3の上端部には、上記内筒10側の上端部を中心軸方向に向けて絞り加工したヒートキープ構造の小径の給水口3bが形成されている。また符号12は、上記内容器3の温度(換言すれば、内容器3内の湯の温度)を検出する湯温検出手段として作用する底センサ(湯温センサ)であり、サーミスタよりなっている。さらに、符号13は上記内容器3の満水位を表示する凸状の満水位表示部である。
【0028】
上記蓋体2は、合成樹脂製の上板14と該上板14に対して外周縁が結合された合成樹脂製の下板15とからなっており、上記肩部材8の後部に設けられたヒンジ受け16に対してヒンジピン17を介して上下方向に開閉自在且つ着脱自在に支持されている。
【0029】
この蓋体2には、AC電源が接続されていない状態でも「まほうびん機能」による保温が可能であり、同状態でも上記給湯通路5を介して外部への給湯が可能なように、手動押圧操作により圧縮作動されるエア式の手動給湯ポンプ18が配設されている。該手動給湯ポンプ18は、上記蓋体2の略中央部に形成された円筒部19内に配設されたベローズタイプのものとされており、押圧カバー20Aと押圧板20Bを介して蛇腹構造のベローズ20Cを下方に押圧操作することにより、ベローズ20C内の加圧空気20Dが空気吹込口を介して内容器3内に吹き込まれ、該加圧空気の吹き込み圧力によって内容器3内のお湯が給湯通路5を介して外部へ押し出されるようになっている。また、20Eはベローズ20Cの上方への復元バネ、15Aは下板15側のベローズ支持板である。なお、符号21a〜21dは、下方から上方に向けて相互に連通した蓋体2の蒸気排出通路、22は同蒸気排出通路21a〜21dの蒸気導出部21a側途中に配設された転倒止水弁である。
【0030】
上記蓋体2における下板15の下面には、金属製の内カバー部材23が固定されており、該内カバー部材23の外周縁には、上記蓋体2の閉蓋時において上記内容器3の給水口3bの上面に圧接される耐熱ラバー製のシールパッキン24が設けられている。
【0031】
上記給湯通路5の上流端側である上記内容器3の下部位置には、内容器3側湯導入筒6a、給湯ポンプ側湯吸入口6bを介して直流型の電動給湯ポンプ6が配設されており、この給湯通路5においては上記湯導入筒6aを介して湯吸入口6bより吸入された湯が当該電動給湯ポンプ6のポンピング作用により、その吐出口6cから吐出され、同給湯通路5の直管部5bを経て、上記流量センサ80内の流量検出通路を通り、転倒止水弁側連結パイプ5cから外部への湯注出口5dに導かれる。
【0032】
さらに、符号35は、後述する各種スイッチ類の操作キー面や液晶表示装置の表示部を備えた操作パネル部、51aは、後述するマイコン制御部60や各種スイッチ類38〜41,43,44、液晶表示装置47の駆動部やマイコン制御ユニット60等を備えたマイコン基板、51は、液晶表示装置47の支持部材、50は、上記電動給湯ポンプ6の駆動回路や湯沸しヒータ4A、保温ヒータ4Bの加熱制御回路、安定化直流電源回路等を備えた電源基板である。
【0033】
上記操作パネル部35には、図2に示されるように、給湯時における押圧操作面38aを備えたレバー式の給湯スイッチ38、給湯時の給湯ロック解除スイッチ39、給湯ロック解除表示用LED39a、再沸騰・カルキ抜きスイッチ40、省エネコース選択/設定温度復帰スイッチ41、保温選択スイッチ43、「まほうびん保温」コースを、保温選択スイッチ43による通常保温モードや省エネコース選択/設定温度復帰スイッチ41による省エネ保温コースに優先して設定する「まほうびん保温」優先選択スイッチ44、再沸騰表示用LED45、保温動作表示用LED46、液晶表示装置47(液晶表示面47a)等が設けられている。
【0034】
なお、この実施の形態の場合、上記保温選択スイッチ43は、スクリーニング操作による通常保温モード選択設定機能と設定保温温度(98度・90度・85度・80度)設定機能との2つの機能を兼ねている。
【0035】
上記液晶表示装置47には、例えば時刻/時間・分/保温設定温度指示(三角マーク)/省エネモードコース指示(三角マーク)・学習コース指示(三角マーク)・節電タイマーコース指示(三角マーク)・まほうびん保温コース指示(三角マーク)等の所要の情報表示を行う液晶表示面47aが設けられており、低消費電力で各種の必要な情報(選択設定状態/動作状態)の表示がなされるようになっている(後述する図5の(a)〜(d)の表示を参照)。
【0036】
また、必要に応じて上記電動給湯ポンプ6の給湯制御に使用される流量センサ80は、例えば回転支軸81の外周に螺旋状の回転スクリュー羽根82を設けるとともに、同スクリュー羽根82を図示しない発光部および受光部間に設置したものよりなっていて、スクリュー羽根82部分を給湯通路5の直管部5bの途中に透明な嵌合筒83を介して嵌合固定して支持している。
【0037】
(制御回路部の構成)
次に図3は、上記構成の電気ポット本体における制御回路部の構成を示す電気回路図である。
【0038】
図3中、先ず符号52はAC電源、4Aは湯沸しヒータ、4Bは保温ヒータ、60はマイコン制御部、63は電源電圧のゼロクロス検出回路、64は平滑コンデサ、6は電動給湯ポンプ(およびポンプ駆動路)、RSは湯沸しヒータ4A作動用の電源スイッチ(リレースイッチ)、RLは同電源スイッチRS駆動用の電源リレー(リレーコイル等リレー駆動回路)、53は保温ヒータ4B作動用のトライアック、57は同トライアック53駆動用のトランジスタ、61は上記電動給湯ポンプ6の出湯防止回路、62は上述の給湯スイッチ38のONを条件として給湯状態を検知する給湯検知回路である。
【0039】
また符号65は、上記AC電源52がOFFされた「まほうびん保温」中に定電圧電源からの電源に代えてマイコン制御ユニット60等作動用の直流定電圧電源として使用される充電可能な大容量の電気二重層コンデンサであり、アース側の充電スイッチ回路66とともに、上記電源リレーRLと並列に接続されている(図示の例では1個だが、必要に応じて2個並列に設けることも可能である)。
【0040】
さらに符号67は、放電電圧検出回路であり、上記電気二重層コンデンサ65の電圧が規定値以下になったことを検出してマイコン制御部60に入力するようになっている。
【0041】
上記湯沸しヒータ4Aは、例えば上記マイコン制御部60から湯沸しヒータON信号が出力されると、先ず上記電源リレーRLが作動され、それに対応して電源スイッチRSがONになることにより駆動される。
【0042】
また、上記保温ヒータ4Bは、上記マイコン制御部60から、保温ヒータON信号が出力されると、上記トランジスタ57がONになり、トライアック53がトリガーされて駆動される。
【0043】
さらに、上記電動給湯ポンプ6は、そのアース側ライン中に挿入された上記給湯スイッチ38がON操作されると、上記給湯検知回路62を介してマイコン制御部60に同給湯スイッチ38のON信号が入力され、それに応じてマイコン制御部60が上記保温ヒータ4BをOFFにするとともに、上記マイコン制御部60から所定のデューティー比のパルス電圧信号が出力されて、所定のデューティー比で適切に回転駆動される。
【0044】
また、上記マイコン制御部60には、図示しないが定電圧電源部(本来の動作電源)を介して所定の定電圧が供給されるようになっている。
【0045】
また、上記マイコン制御部60には、さらに液晶表示部47、保温動作表示用LED45、給湯ロック解除表示用LED46等の各種表示部や給湯スイッチ38、再沸騰・カルキ抜きスイッチ40、給湯ロック解除スイッチ39、省エネコース選択/設定温度復帰スイッチ41、保温選択スイッチ43、まほうびん保温優先選択スイッチ44等の各種操作部(スイッチ回路)や温度検知手段12、流量センサ80などの各種センサー部(センサ回路)、AC電源ONの通常時におけるマイコン作動用の第1のクロック周波数発振器(4MHz)58、まほうびん保温時(AC電源OFFの省エネ時)におけるマイコン作動用の第2のクロック周波数発振器(32.768KHz)59、EEPROM(記憶手段)等が、各々入出力ポートを介して接続されている。
【0046】
さらに上記回路では、沸騰動作時及び保温動作時等における上記保温ヒータ4BのON時に本来のチョッパー電源回路を用いて上述の電気二重層コンデンサ65に充電を行う一方、保温ヒータ4BのOFF時には同チョッパー電源回路をマイコン制御により停止させ、上記電気二重層コンデンサ65の放電電荷によってマイコンや表示部を動作させるようになっており、それによって可及的に「まほうびん保温」時の待機電力を節約するようにしている。一例として、上記電気二重層コンデンサ65の耐圧は5.5V(MAX)であり、耐圧を上げるためには直列接続を行えばよいが、そのようにすると合成容量が低下するので、5.5V(MAX)にて充電するようにしている。
【0047】
この場合、上記電気二重層コンデンサ65の充電制御は、例えば2F(ファラッド)のものの場合、充電に約2分間程度必要で、2分間の充電後にマイコン動作電源として15分間程度動作させることが可能であるとすると、2分+15分=合計17分を1サイクルとして、2分間のみチョッパー電源回路をONとして、その間に充電を行い、その後の15分間は本来の動作電源OFFで「まほうびん保温」を継続することができる。
【0048】
したがって、トータルとして相当な消費電力の低減効果を実現することができる。
【0049】
また上記回路では、「まほうびん保温」中でない通常の保温モード(所望設定温度での保温)の場合は、第1のクロック周波数発振器58を使用して第1のクロック周波数4MHzで動作させているが、「まほうびん保温」に移行すると、第1のクロック周波数4MHzから相当に遅い第2のクロック周波数発振器59の第2のクロック周波数32.768KHzへの切り替えを行い、それによって可及的にマイコンの消費電力を低減するようにしている。
【0050】
一方、上記のように電気二重層コンデンサ65を設けると、その容量特性のために、電源投入時等に電源の立ち上がり時間が長くなり、ユーザーのスイッチ操作に対する反応が遅くなる問題が生じる。そこで、上記の回路では、そのような電源の立ち上がり時には、並列に設けた通常の電解コンデンサ68の小さな静電容量にて速やかに電源を立ち上げ、その後動作が安定した後に、上記電気二重層コンデンサ65の方へ充電するようにしている。
【0051】
また、上記の回路では、上記電気二重層コンデンサ65の電荷が所定レベル以下に減少してしまい、それによってマイコンがリセットしてしまわないように放電電圧検出回路67を設けており、それにより上記電気二重層コンデンサ65が所定の規定電圧以下まで放電した場合には、自動的に上記充電スイッチ回路66を動作させて5.5Vまで充電を開始させるようしている。
【0052】
このように、以上の回路では放電電圧検出回路67により、電気二重層コンデンサ65の放電電位が所定の基準値まで下がると、自動的に充電されるようになっているが、何らかの事情で、電気二重層コンデンサ65が、次の充電までに放電してしまったような時には、さらに次のような対応を採ることもできる。
【0053】
(1) リセットが働き、湯温が高い時には通常保温を実行する。
【0054】
(2) 湯温が低い時には、通常の湯沸しを実行する。
【0055】
このようにすると、万一の充電前の放電でも、通常の工程の実行が可能となる。
【0056】
さらに、従来は、給湯ロック解除スイッチ39を操作することなく給湯スイッチ38が操作され、電動給湯ポンプ6に駆動電圧が印加された場合、保温ヒータ4Bを強制的に駆動することによって電動給湯ポンプ6に電圧が印加されないようにしていたが、上述のように本実施の形態では、マイコンのクロック周波数が通常時の第1のクロック周波数4MHz(通常モード)からまほうびん保温時の第2のクロック周波数32.768KHz(低消費電力モード)に切り替えられるようになっている。したがって、同切り替えられた時に、上記給湯スイッチ38のON操作時から保温ヒータ4Bの強制駆動時まで時間遅れが発生し、そのままでは出湯に対する保護ができない。
【0057】
したがって、その対策として、以上の回路では上述のようにハード的に出湯防止回路61を設けており、それによって上記ロック解除スイッチ39のON信号が入力されると、その後にマイコンにより同出湯防止回路61の出湯防止機能を解除するようにしている。
【0058】
(この実施の形態における省エネ保温機能)
この実施の形態の場合、上記まほうびん保温優先選択スイッチ44で優先的に設定される図5(a)の「まほうびん保温」コース、同「まほうびん保温コース」中において、ONタイマー機能が組み合わされる図5(d)の「節電タイマー」コース、上記省エネコース選択/設定温度復帰スイッチ41で選択される図5の(b)〜(c)の各種省エネコース(まほうびん保温以外の通常の省エネコース)が採用されている。
【0059】
(a) 「まほうびん保温」コース:
保温ヒータ4Bへの電源をOFFにし、真空二重壁構造の「まほうびん保温」状態で保温する最も省エネ性能が高いコース
(b) 「学習」コース:
毎日の電気ポット給湯実績(使用実績)を学習記憶し、同学習記憶した給湯実績に応じて湯沸しヒータ4A、保温ヒータ4BをON,OFFし、1日24時間トータルでの省エネを図るコース
この省エネ保温機能では、例えば図4のタイムチャートに示すように、当該ユーザーの家庭における実際の給湯実績に基づき、1日24時間の内の実際に湯を必要とする時間帯に合わせて、電気ポット(マイコン制御部60)が自動的に湯沸しヒータ4A、保温ヒータ4BのON状態とOFF状態とを切り替え、起床時6:00から就寝時23:00および就寝中間のトータルの消費電力が最も少なくなるように、上述のまほうびん保温機能(保温ヒータ4BのOFFによる断熱保温機能)を活かした消費電力の少ない効率的な加熱保温制御を実現する。
【0060】
(c) 経時コース(経時的な低温化コース):
非給湯時間が長くなればなるほど、順次設定保温温度を低くして行って省エネを図るコース
例えば沸とう後、蒸気出し制御を行うことなく設定温度85度での保温モードに移行して、その後所定時間以上何らの操作もなされなかった時には、例えば設定温度80度での保温モードに移行し、該設定温度80度での保温モードにおいて、なお所定時間以上何らの操作もなされなかった場合には、さらに低い設定温度70度での保温モードに移行させる。
【0061】
(d) 節電タイマーコース:
上記(a)の「まほうびん保温」中において、タイマー設定を行い、同タイマーにより設定された予定時間になると、定期的に湯沸しヒータ4A、保温ヒータ4Bを所定時間内ONにし、湯を沸とうさせた後に、再び同ヒータ4A,4BをOFFにするコース
これら図5の(a)〜(d)の各省エネコースは、同図5の(a)〜(d)の順に省エネ性能が大から小になるように格付けされている。
【0062】
(まほうびん保温選択時の動作)
ところで、本実施の形態では、上記のように、保温選択スイッチ43、省エネコース選択/設定温度復帰選択スイッチ41とは別に、同省エネコース選択/設定温度復帰スイッチ41による図5(b)〜(d)の省エネコース選択中に電源OFFの「まほうびん保温」コースを優先して選択設定する専用のまほうびん保温選択スイッチ44が設けられており、省エネコース選択/設定温度復帰スイッチ41による省エネコース保温中に、同まほうびん保温選択スイッチ44を押すと、上記図5(b)〜(d)の省エネコースから「まほうびん保温」工程へすぐに移行する。他方、湯沸し中に予じめまほうびん保温選択スイッチ44を押しておくと、湯沸し工程終了後に通常の保温工程に優先して「まほうびん保温」工程へ移行し、「まほうびん保温」を行うようになっている(図5(a)参照)。
【0063】
このような構成にすると、ユーザーは、いつでも、「まほうびん保温」を選択できるし、通常の省エネコースでの保温より省エネ性能が大きい「まほうびん保温」の方が優先されるために、可及的に省エネ性能が向上する。
【0064】
また、本実施の形態における上記マイコン制御部60は、上記図5(b)〜(d)に示す最も省エネ性能が大きい「まほうびん保温」コース以外の通常の省エネコースとその時の選択設定温度とを記憶する記憶手段(EEPROM)を持っていて、上記図5(b)〜(d)の省エネコースから図5(a)の「まほうびん保温」コースに移行する際には、同記憶手段(EEPROM)に当該それまでの省エネコースとその時の設定温度とを記憶するようになっている。そして、「まほうびん保温」中において、まほうびん保温選択スイッチ44が押され、「まほうびん保温」が解除された時には、同記憶手段(EEPROM)に記憶されている元の省エネコース(まほうびん保温を選択する直前まで実行されていた省エネコース)に自動的に復帰して保温するようになっている。
【0065】
(まほうびん保温コース優先制御)
上述のように、相互に省エネ性能が異なる複数の省エネ保温機能を搭載する電気ポットでは、省エネ度合いが高い順にコース選択の優先順位をつけてやることで、複数の省エネ保温機能の各々を分かりやすく使いこなせ、また製品メーカーとしても、省エネ機能に特化した電気ポットとして、環境へも配慮した商品としてアピールすることができる。
【0066】
そこで、この実施の形態では、制御的にも、そのような優先順位を確保するために、例えば図6のフローチャートに示すような「まほうびん保温」優先制御システムを有して構成されている。
【0067】
この制御は、湯沸し終了後保温工程に入ると同時に開始され、保温期間中は所定の周期で何回も繰り返される。
【0068】
すなわち、同制御が開始されると、先ず最初に現在の各種操作スイッチの操作状態(操作キーのON操作状態)のデータがマイコン制御部60内に入力される(ステップS1)。
【0069】
次に、同入力されたデータを基にして、上述した「まほうびん保温」コースを選択するためのまほうびん保温選択スイッチ(その操作キー)44が今回ONされたか否かを判定する(ステップS2)。
【0070】
その結果、NOの場合は同選択スイッチ44のON判定を繰り返すが、YESの時は、さらに現在の保温状態が、上述した省エネコース選択/設定温度復帰スイッチ41で選択された図5の(b)〜(d)に示す省エネコース中の何れかの省エネコースが選択されている省エネコース選択中であるか否かを判定する(ステップS3)。
【0071】
そして、その判定結果がYESの時には、直ちに当該省エネコース選択/設定温度復帰スイッチ41で選択されている省エネコースを解除し(ステップS4)、同解除された省エネコースのコース名と設定温度等必要なデータを上記記憶手段(EEPROM)に記憶する(ステップS5,S6)。
【0072】
その上で「まほうびん保温」に移行して「まほうびん保温」を実行する(ステップS7)。この「まほうびん保温」実行中は、例えば図5(a)に示すように、その時の湯温(例えば90度)とともに、まほうびん保温状態であること(三角マーク)、ヒータがOFFであることをそれぞれ表示して、その省エネ性能が最大であることをアピールする。
【0073】
その後、同「まほうびん保温」実行中において再度各種操作スイッチ(その操作キー)のON操作状態を入力して(ステップS8)、まほうびん保温選択スイッチ44が再操作されて「まほうびん保温」の選択が解除されたか否かを判定する(ステップS9)。そして、「まほうびん保温」が解除されたYESの時は、さらに「まほうびん保温」が選択される前の上記省エネコースのコース名および設定温度の記憶データがあるか否かを判定し(ステップS10)、同記憶データがあるYESの時は、当該記憶されている省エネコースでの保温制御に復帰し、同省エネコースでの保温制御を実行する(ステップS11,S12)。
【0074】
他方、上記「まほうびん保温」が解除されなかったステップS9でNOの時は、そのまま「まほうびん保温」を継続するし、「まほうびん保温」が解除されて、ステップS9でYESであっても省エネコースの記憶データがないステップS10でNOの時は、例えば通常の保温制御に戻り、同状態で再び「まほうびん保温」が選択されたか否かの判定に移る(ステップS1,S2にリターン)。
【0075】
以上のように、この実施の形態では、図5の(b)〜(d)の通常の省エネコースを選択中に省エネ性能が最も大きい「まほうびん保温」を選択すると、同それまでの省エネコース(図5の(b)〜(d))を解除し、図5(a)の「まほうびん保温」の選択を優先する(まほうびん保温が最大の省エネ機能のものであることから、「通常の省エネコース選択中にまほうびん保温を選択した!」=「ユーザーは、もっと省エネをしたいと考えている!」と判断し、それまでの省エネコースを直ちに解除し、まほうびん保温が設定される)。
【0076】
しかも、そのようにして「まほうびん保温」が選択されている時には、ユーザーが同まほうびん保温選択スイッチ44を再操作して明確に「まほうびん保温」を解除する意思を示さない限り、例えば省エネコース選択/設定温度復帰スイッチ41を押しても、「経時コース」や「学習コース」は選択できないようになっている。
【0077】
一方、通常の省エネコースを選択中に「まほうびん保温」が選択され、同省エネコースが解除されて「まほうびん保温」が設定された後に、再び上記まほうびん保温選択スイッチ44が押されると、それはユーザーによる明確な解除意思であるとして「まほうびん保温」が解除されるが、そのようにして「まほうびん保温」が解除された場合には、「まほうびん保温」が設定される前に選択されていた省エネコースでの保温に復帰するようにしている。
【0078】
例えば98度の保温温度選択状態で図5(b)の「学習コース」が解除され、図5(a)の「まほうびん保温」が設定されたとすると、その時、それまで設定されていた「98度保温設定」と「学習コース」をマイコン制御部60や記憶手段(EEPROM)に記憶させておく。そして、その後、上述のようにして「まほうびん保温」が解除されると、同記憶手段(EEPROM)に記憶されている「98度保温設定」、「学習コース」に復帰する。
【0079】
なお、上述のように省エネコース選択/設定温度復帰スイッチ41に対してまほうびん保温選択スイッチ44は省エネ性に優れているという点で優先権を有しているが、保温選択スイッチ43に対しては対等の関係にある。従って、両者の間では押された方の機能が選択される。
【0080】
また、上述の構成では、「まほうびん保温」選択中は、省エネ度合いの低い選択キーでの移行はしないとしているが、省エネ度合いの低い選択キーを押した場合にも、そのキーの操作自体は受け付け、また表示もするが、制御に関しては、「まほうびん保温」の制御を優先させるというようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本願発明の最良の実施の形態の電気ポット本体部分の構成を示す側方から見た縦断面図である。
【図2】同電気ポット本体の操作パネル部分の平面図である。
【図3】同電気ポット本体部分の制御回路図である。
【図4】同電気ポットの学習コース選択時の1日を通した基本的な保温制御パターンを示す図である。
【図5】同電気ポットの液晶表示部における各種省エネコース(a)〜(d)の表示例を示す図である。
【図6】同電気ポットのまほうびん保温選択スイッチを用いたまほうびん保温モード移行制御および同制御解除制御ルーチンのフローチャートである。
【符号の説明】
【0082】
1は容器本体、2は蓋体、3は内容器、4Aは湯沸しヒータ、4Bは保温ヒータ、5は給湯通路、6は電動給湯ポンプ、7は外ケース、10は内筒、11は外筒、12は温度センサ、18は手動給湯ポンプ、41は省エネコース選択/設定温度復帰スイッチ、43は保温選択スイッチ、44はまほうびん保温選択スイッチ、60はマイコン制御部である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯沸しおよびまほうびん保温が可能な内容器と、該内容器内の湯を加熱する加熱手段と、該加熱手段に対する電源をON,OFF制御することにより、上記内容器内の湯を所定の温度に保温する保温加熱制御手段とを備えてなる電気ポットであって、省エネ性能を異にする複数の省エネ保温機能と該複数の省エネ保温機能の内の何れかの省エネ保温機能を選択する選択スイッチを設ける一方、同選択スイッチを、上記複数の省エネ保温機能の内で最も省エネ性能の高い省エネ保温機能を他の省エネ保温機能に優先して選択する優先選択スイッチとその他の省エネ保温機能を選択する選択スイッチとから構成し、最も省エネ性能が高い省エネ保温機能以外の省エネ保温機能が選択されている状態において、上記優先選択スイッチが操作された時には、該最も省エネ性能の高い省エネ保温機能以外の省エネ保温機能から上記最も省エネ性能の高い省エネ保温機能に移行するようにしたことを特徴とする電気ポット。
【請求項2】
最も省エネ性能が高い省エネ保温機能以外の省エネ保温機能から最も省エネ性能が高い省エネ保温機能に移行するに際しては、当該移行前の省エネ保温機能の保温データを記憶手段に記憶させた上で移行するようにしたことを特徴とする請求項1記載の電気ポット。
【請求項3】
最も省エネ性能が高い省エネ保温機能が選択されている状態においては、優先選択スイッチ以外の選択スイッチがON操作されても、保温機能の変更がなされないようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載の電気ポット。
【請求項4】
最も省エネ性能の高い省エネ保温機能は、保温ヒータに対して電源の供給が停止されるまほうびん保温機能であることを特徴とする請求項1,2又は3記載の電気ポット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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