説明

電気ワイヤ又は電気ケーブルの製造に本質的に用いられる熱加硫性ポリオルガノシロキサン組成物

本発明は、熱で加硫させてシリコーンエラストマーにすることができるポリオルガノシロキサン組成物であって、塩浴を用いた加硫方法に従う電線又はケーブルの製造の分野において有用であるものに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱で加硫させてシリコーンエラストマーにすることができる熱加硫性ポリオルガノシロキサン組成物、即ち、一般的に100℃〜200℃の範囲、必要に応じて250℃までに及ぶ材料温度において加硫性(即ち加硫可能)であるポリオルガノシロキサン組成物に関する。
【0002】
本発明はまた、特に火に対して保護された電気ワイヤ又は電気ケーブルの組成中に構造中に入れられる一次(primary)外被又は一次絶縁体を押出によって製造するために、これらの組成物を使用することにも関する。
【背景技術】
【0003】
用語「火に対して保護された電気ワイヤ又は電気ケーブル」とは、少なくとも灰分凝集及び煙不透明性に関して火中における高品質挙動を保証しなければならない電気ワイヤ又は電気ケーブルの定義と理解される。火に対して保護された電気ワイヤ又は電気ケーブルが示すべき特徴は、多くの国において法的規制の主題となっており、厳しい基準が確立されている
【0004】
電気ケーブルは、公知の従来技術に従えば、1以上のモノコンダクター(単線導体)(monoconductor)(一般的にCu又はAlをベースとするもの)のそれぞれがシリコーンエラストマーをベースとする1以上の同軸層から作られた一次外被又は一次絶縁体によって保護されて成る。この外被又はこれらの外被(複数のモノコンダクターを有するケーブルの場合)の周りに、1以上の充填(増量)用(remplissage)要素(部材)(element)及び/又は1以上の補強用要素(特にガラス繊維及び/又は無機繊維をベースとするもの)が設けられる。次いで1以上のシース(鞘状被覆、鎧装)を含むことができる外側シースが設けられる。複数のモノコンダクターを有する電気ケーブルの場合、(それぞれがその一次絶縁体を備えた)これらのモノコンダクターの周りに配置される充填用要素(群)及び補強用要素(群)がすべてのモノコンダクターに共通の外被を構成する。ケーブルの構造中に入れられるシリコーンは本質的に一次絶縁体(群)を構成する材料であるが、これは、充填用要素(群)及び/若しくは補強用要素(群)(複数のモノコンダクターを有するケーブルの場合の共通の外被を構成する)中に、並びに/又は外側シース(群)中に、様々な割合で存在させることもできる。
【0005】
それぞれのモノコンダクターの一次外被又は一次絶縁体を構成するシリコーンエラストマーをベースとする同軸層の数、及び各層の壁の厚さは、規格の規定に従って機能を維持するために課される要件に本質的に依存するだろう。一般的には、それぞれが好適態様において少なくとも0.5mm、好ましくは少なくとも0.8mmの厚さを有する1又は2つの層を用いることによってこのような機能を達成するのが望ましい。
【0006】
満たされなければならない耐火性試験に関する重要な規格は、国際規格CEI 1034, part 1及び2(CEIは、Commission Electrotechnique Internationaleの略号である)であり、これは所定の条件下において電気ケーブルを燃焼させることによって放出される煙の不透明性の尺度に関する。この試験においては、所定の条件下に設定されたアルコール炎の作用下でケーブル断片を燃焼させることによって生じる煙によって曇らせた27m3の小さいチャンバー中で、光透過度を測定する。
【0007】
熱で加硫させてシリコーンエラストマーにすることができるポリオルガノシロキサン組成物は、誘電特性に優れ、低温及び高温において熱安定性であり、使用時の大気条件又は環境条件に対して耐性があり、そして弾性があるという理由で、ケーブルの製造及び電力ケーブル付属品の製造においてすでに広く用いられている。
【0008】
これらは通常、特に架橋用過酸化物によって架橋される。今日まで用いられてきた多くの過酸化物では、押出法又は共押出によってケーブルを製造することはできなかった。何故ならば、このような操作の温度は100〜120℃程度であることがよくあり、従って配合物の時期尚早の熱硬化をもたらすからである。ある種の有機過酸化物、特に例えば過酸化ジクミル(ビス(1−メチル−1−フェニルエチルペルオキシド))のようなアラルキルペルオキシドは、この押出又は共押出を時期尚早の熱硬化(「スコーチ」と称される)なしに実施することを可能にする。しかしながら、このようなタイプのペルオキシドを使用すると、触媒の熱分解により、特に工業的観点から興味深い温度範囲において、非常に揮発性の高い気体状物質が放出され、これが押出欠陥を生み出し、塩浴中での加硫の際に導体材料の周りの架橋したシリコーンエラストマーに多孔性をもたらすという欠点を示す。
【0009】
従来電気ケーブル産業用に提供されてきたアラルキルペルオキシドを含み且つ熱加硫してシリコーンエラストマーにすることができるポリオルガノシロキサン組成物は、特に製造の点、並びに押出(又は共押出)及び塩浴中での加硫によるケーブルの製造方法における斯かる組成物の用途の点で、完全に満足できるものではなかった。
【0010】
従って、電気ケーブル産業には、塩浴を用いる加硫方法において例えば過酸化ジクミルのようなアラルキルペルオキシドで触媒される熱加硫性シリコーン組成物を用いた場合のこれらの多孔性の問題点を解消することについて、強い要望が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の1つの目的は、良好な耐燃焼性を有しつつ、アニーリングされていない状態においてアニーリングされた状態におけるような良好な機械的特性を有し、押出(又は熱可塑性ポリマーとの共押出)及び塩浴中での加硫の後に電気ケーブルが製造された時に分解を示さない熱加硫性ポリオルガノシロキサン組成物を開発することにある。「分解」とは、導体材料の周りの架橋したシリコーンエラストマーにおける多孔性及び/又は押出欠陥を意味するものとする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
過酸化ジクミルのようなアラルキルペルオキシドによって触媒され、熱加硫させることによって電気ワイヤ又は電気ケーブルの製造の分野において用いることができるシリコーンエラストマーにすることができるポリオルガノシロキサン組成物であって、押出(又は熱可塑性ポリマーとの共押出)及び塩浴中での加硫によって電気ケーブルを製造した時の分解の問題を示さないものが見出され、これが本発明の第1の主題を構成する。
【0013】
さらに、これらの組成物は良好な機械的特性並びに良好な火中挙動及び煙不透明性を有するシリコーンエラストマーをもたらす。
【0014】
より正確には、本発明はその第1の主題として、次のもの:
・少なくとも1種のポリオルガノシロキサンガム(a)100重量部;
・補強用フィラー(群)(b)15〜100部;
・アラルキル有機過酸化物、好ましくは過酸化ジクミル0.2〜8部;
・酸化亜鉛(d)0.2〜10部;
・酸化カルシウム(e)0.1〜15部;
・補助添加剤(群)(f)0〜15部;
・成分(g){白金金属(元素状)の重量で表わして}0.0001〜0.02部(即ち10ppm〜200ppm);
・充填用フィラー(群)10〜100部;及び
・ウォラストナイト類に属する種(j)0.5〜10部:
から成り、熱加硫させてシリコーンエラストマーにすることができるポリオルガノシロキサン組成物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に従う組成物は例えば、ビニル基を好ましくは0〜4重量%、さらにより一層好ましくは0.01〜3重量%含有する少なくとも1種のポリオルガノシロキサンポリマー(a)を含む。これらのポリオルガノシロキサンポリマー(a)が25℃において50000〜1000000mPa・sの範囲の粘度を有する時、これらはオイルと称されるが、しかしそれらの粘度が1000000mPa・s超である場合にはガムと称される。本発明に従う組成物において、前記ポリオルガノシロキサンポリマーはオイルであってもガムであってもそれらの混合物であってもよい。これらのポリオルガノシロキサンポリマーは、ジオルガノポリシロキサン鎖が式R2SiOの活性基から本質的に成る線状ポリマーであって、この鎖の各末端が式R3SiO0.5の活性基及び/又は式OR'の基でブロックされたものである。これらの式中、
・記号Rは同一であっても異なっていてもよく、アルキル基(例えばメチル、エチル、プロピル、オクチル、オクタデシル等)、アリール基(例えばフェニル、トリル、キシリル等)、アラルキル基(例えばベンジル、フェニルエチル等)、シクロアルキル及びシクロアルケニル基(例えばシクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロヘキセニル基等)、アルケニル基(例えばビニル、アリル基等)、アルカリール基、シアノアルキル基(例えばシアノエチル基等)、ハロアルキル、ハロアルケニル及びハロアリール基(例えばクロロメチル、3,3,3−トリフルオロプロピル、クロロフェニル、ジブロモフェニル又はトリフルオロメチルフェニル基)のような一価炭化水素基を表わし、
・記号R'は水素原子、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基又はβ−メトキシエチル基を表わす。
【0016】
好ましくは、R基の少なくとも60%がメチル基を表わす。しかしながら、ジオルガノポリシロキサン鎖に沿ってR2SiO以外の活性基、例えば式RSiO1.5及び/又はSiO2の活性基が最大2%の割合で少量存在することは、除外されない(これらの百分率はケイ素100原子についてのT及び/又はQ活性基の数を表わす)。
【0017】
式R2SiO及びR3SiO0.5の活性基並びに式OR'の基の具体例としては、次の式のものを挙げることができる。
(CH3)2SiO、CH3(CH2=CH)SiO、CH3(C65)SiO、(C65)2SiO、CH3(C25)SiO、(CH3CH2CH2)CH3SiO、CH3(n−C37)SiO、(CH3)3SiO0.5、(CH3)2(CH2=CH)SiO0.5、CH3(C65)2SiO0.5、CH3(C65)(CH2=CH)SiO0.5、OH、−OCH3、−OC25、−O−n−C37、−O−イソC37、−O−n−C49、−OCH2CH2OCH3
【0018】
これらのオイル及びガムは、シリコーン製造業者により販売されているか、又は既知の技術に従って操作することによって製造することができる。
【0019】
補強用フィラー(b)は、シリカ、アルミナ又はそれら2種の混合物から成る。用いることができるシリカとしては、微細な粒子寸法(多くの場合0.1μm以下)及び高い比表面積対重量の比(一般的に50m2/g〜300m2/g超の範囲)によって特徴付けられるものが挙げられる。このタイプのシリカは商品として入手できる物質であり、シリコーンゴム製造の分野においてよく知られている。これらのシリカは、熱によって調製したもの(燃焼シリカ若しくはヒュームドシリカと称される)又は湿式法によって調製したもの(沈降シリカ)であることができ、通常用いられる有機ケイ素化合物で処理されていてもよいし、処理されていなくてもよい。化学的性状及び調製方法は本発明の目的にとって重要なことではなく、そのシリカが最終エラストマー中で補強作用を発揮できればよい。もちろん、様々なシリカの混合物(coupages)を用いることもできる。用いることができるアルミナとしては、高分散性アルミナを用いるのが有利であり、これは周知の態様でドープされていてもよいし、ドープされていなくてもよい。もちろん、様々なアルミナの混合物を用いることもできる。このようなアルミナの非限定的な例としては、Baikowski社からのアルミナA 125、CR 125及びD 65CRを挙げることができる。好ましくは、用いられる補強用フィラーは、単独の燃焼シリカ又はアルミナと混合された燃焼シリカである。
【0020】
アラルキル有機過酸化物(c)に関しては、これは例えば過酸化ジ−t−ブチル又は過酸化ジクミルから成ることができる。
【0021】
好ましい方法に従えば、アラルキル有機過酸化物(c)は過酸化ジクミルである。
【0022】
アラルキル有機過酸化物(c)の選択は、実際上、エラストマーを加硫させるために用いられる方法に依存する。
【0023】
本発明に従う組成物の成分(d)を構成する酸化亜鉛は、白色又は僅かに黄ばんだ粉末である。
【0024】
成分(g)の白金は、金属白金の形(元素状)にあってもよく;また、特にクロロ白金酸(例えばヘキサクロロ白金酸H2PtCl6)の形にあってもよく;また、白金と有機物質との錯体、特に白金とビニルオルガノシロキサンとの錯体(例えばKarstedt錯体)、式(PtCl2,オレフィン)2及びH(PtCl3,オレフィン)のもののような錯体(ここで、オレフィンはエチレン、プロピレン、ブチレン、シクロヘキセン又はスチレンを表わす)並びに塩化白金とシクロプロパンとの錯体等の形にあってもよい。
【0025】
充填用フィラー(i)は、より一般的には結晶質シリカである。このようなフィラーは多くの場合0.1μm超の粒子寸法を有する。これらのフィラー(i)はより特定的には石英粉末及びケイ藻土シリカによって代表される。もちろん、様々な結晶質シリカの混合物を用いることもできる。充填用フィラー(i)は、石英粉末であるのが好ましい。
【0026】
本発明に従う組成物はまた、ウォラストナイト類に属する少なくとも1種の無機種を必須成分として含有する。このウォラストナイト類には、次の無機種が含まれる:メタケイ酸カルシウム(CaSiO3)又はウォラストナイト;カルシウム及びナトリウム混合メタケイ酸塩(NaCa2HSi39)又はペクトライト;カルシウム及びマンガン混合メタケイ酸塩[CaMn(SiO3)2]又はバスタマイト。もちろん、これらの様々な種の混合物を用いることもできる。用いられる成分(j)は、ウォラストナイトであるのが好ましい。ウォラストナイトは、ウォラストナイト自体(化学者はこれはα−CaSiO3と示す)、即ち一般に天然の状態で見出される形;及びシュード(擬)ウォラストナイト又はβ−CaSiO3の形:の2つの形で存在する。α−CaSiO3ウォラストナイトを用いるのがより一層好ましい。
【0027】
上記の必須成分(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(g)、(i)及び(j)に加えて、本発明に従う組成物には、1種以上の補助添加剤(f)、特に、「耐構造化用物質」と称される少なくとも1種の物質(f1);及び/又は少なくとも1種のポリオルガノシロキサン樹脂(f2);及び/又は少なくとも1種の安定剤(f3);及び/又は少なくとも1種のカップリング剤(f4);及び/又は着色された電気ワイヤや電気ケーブルを製造するための少なくとも1種の顔料(f5);及び/又は少なくとも1種のホウ素含有化合物(f6)のような補助添加剤(f)を随意に含有させることができる。
【0028】
本発明に従う組成物を調製するためには、シリコーンエラストマー産業においてよく知られた装置によって各種成分を緊密に混合する。これらは任意の順序で添加される。しかしながら、最初にポリオルガノシロキサン(a)中に構成成分を例えば下記の順序で分散させるのが有利である:随意としての添加剤(f3)及び(f6)、次いで充填用フィラー(i)、次いでウォラストナイト類の種(j)、次いで酸化亜鉛(d)、次いでPtをベースとする成分(g)、次いで随意としての添加剤(群)(f1)、(f2)及び(f4)、次いで補強用フィラー(b)(複数回で);そして次いでこの混合物に所望の量の触媒(c)及び随意としての添加剤(f5)を添加する。
【0029】
本発明はさらに、第2の主題として、特に火に対して保護された電気ワイヤ又は電気ケーブルの構造中に入れられるモノコンダクター用の一次外被又は一次絶縁体を製造するために、前記のポリオルガノシロキサン組成物を使用することに関する。
【0030】
本発明は、第3の主題として、本発明に従う前記の熱加硫性ポリオルガノシロキサンを架橋させることによって得ることができるシリコーンエラストマーに関する。
【0031】
本発明は、最後の主題として、火に対して保護された電気ワイヤ又は電気ケーブルの構造中に入れられるモノコンダクター(群)用の一次外被又は一次絶縁体を製造するための前記の本発明に従う組成物の使用であって、各モノコンダクターの周りに前記組成物を付着させ、押出又は熱可塑性ポリマーとの共押出を行い、次いで塩浴中で100℃〜200℃の範囲の材料温度で架橋させてシリコーンエラストマーにすることから成る、前記使用に関する。
【0032】
このような使用の枠内で、各モノコンダクターの周りへの本発明に従う組成物の付着は、通常の方法に従って、特に押出法によって、実施することができる。こうして得られた付着物を次いで塩浴中で加熱することによって架橋させて、シリコーンエラストマーから作られた一次絶縁体を形成させる。加熱時間はもちろん材料の温度によって変化する。この時間は一般的に、100℃〜120℃において数分〜数分少々の程度、180〜200℃においては数秒程度である。例えばクロスヘッドを備えたタンデム式押出又は共押出によって複数の層を同時に付着させることも可能である。
【実施例】
【0033】
本発明のその他の詳細及び利点は、以下の単に指標として与えた実施例を見ればより一層明らかになるだろう。
【0034】
例1及び比較例A
【0035】
(1)比較例A(欧州特許公開第1238014号公報)
【0036】
以下のものをZアーム式ドウミキサー中で周囲温度(23℃)において2時間混合した:
・33.0部の、両末端をトリメチルシロキシ活性基でブロックされ、鎖中に720ppmのVi基を含有し、25℃において2千万mPa・sの粘度を有するポリ(ジメチル)(メチルビニル)シロキサンであるポリオルガノシロキサン(a);
・67.0部の、両末端をジメチルビニルシロキシ活性基でブロックされ、120ppmのVi基を含有し、25℃においてにおいて2千万mPa・sの粘度を有するポリジメチルシロキサンであるポリオルガノシロキサン(a);
・0.27部の酸化カルシウム(f3);
・0.049部のオクタン酸鉄(f3);
・2.96部のCe(OH)4(f3);
・79.1部の石英粉末(i)(フランス国パリ所在のSifraco社よりE600の名称で販売されているもの);
・3.30部のウォラストナイトα−CaSiO3(j);
・9.95部の白雲母タイプのマイカ(d);
・4.85部の酸化亜鉛(e);
・0.0061部の白金金属(g){ジビニルテトラメチルジシロキサン中の溶液の形で提供され、ジビニルテトラメチルジシロキサンを配位された白金10重量%を有する白金錯体(Karstedt錯体)};
・3.64部の燃焼TiO2(h);
・2.91部の、両末端をジメチルヒドロキシシロキシ活性基でブロックされ、9重量%のOHを含有し、25℃において50mPa・sの粘度を有するポリジメチルシロキサンオイル(f1);
・1.70部の、両末端をメチルビニルヒドロキシシロキシ活性基でブロックされ、9重量%のOH及び鎖中における3重量%のVi基を含有し、25℃において25mPa・sの粘度を有するポリ(メチルビニル)シロキサンオイル(f1);
・18.44部の、D4(オクタメチルシクロテトラシロキサン)で処理された200m2/gの比表面積を有する燃焼シリカ(b);
・14.56部の、150m2/gの比表面積を有する燃焼シリカ(b)。
【0037】
上で得られた混合物を次いで2本ロール式ブレンダーを用いて加工し、次いでこれに3部の過酸化2,4−ジクロロベンゾイル(c)を添加した。
【0038】
(2i)前記ブレンダーで得られた均質物の一部分を、電気ケーブルの製造に用いた。このケーブルの製造は標準的な構成を有するものであり、銅モノコンダクターの周りにシリコーンエラストマー+熱可塑性ポリマーから作られた一次外被又は一次絶縁体が押出成形されて成るケーブルを製造し、次いでこれを塩浴中で当業者に周知の操作手順に従って加硫させることから成る。
【0039】
得られたケーブルは、多孔性及び押出欠陥を有していた。
【0040】
(2)本発明に従う組成物(すべての部は重量によって与えられる)
【0041】
以下のもの(組成物100重量部について)をZアーム式ドウブレンダー中で周囲温度(23℃)において2時間ブレンドした:
・45.08重量部の、両末端をトリメチルシロキシ活性基でブロックされ、鎖中に360ppmのビニル基を含有し、25℃において2千万mPa・sの粘度を有するポリ(ジメチル)(メチルビニル)シロキサンであるポリオルガノシロキサン(a1);
・4.53部の、両末端をジメチルビニルシロキシ活性基でブロックされ、120ppmのVi基を含有し、25℃においてにおいて2千万mPa・sの粘度を有するポリジメチルシロキサンであるポリオルガノシロキサン(a2);
・3.03部の酸化カルシウム(e);
・0.018部のオクタン酸鉄(f3);
・17.65部の石英粉末(i)(フランス国パリ所在のSifraco社よりE600の名称で販売されているもの);
・2.26部のウォラストナイトα−CaSiO3(j);
・1.81部の酸化亜鉛(d);
・0.68部の、ジビニルテトラメチルジシロキサン+(ジビニルテトラメチルジシロキサンを配位された白金10重量%を有する白金錯体)の溶液(Karstedt錯体)(白金金属(g)0.001部に等しい);
・1.76部の、両末端をジメチルヒドロキシシロキシ活性基でブロックされ、9重量%のOHを含有し、25℃において50mPa・sの粘度を有するポリジメチルシロキサンオイル(f1);
・1.32部の、両末端をメチルビニルヒドロキシシロキシ活性基でブロックされ、9重量%のOH及び鎖中における3重量%のVi基を含有し、25℃において25mPa・sの粘度を有するポリ(メチルビニル)シロキサンオイル(f2);
・13.68部の、D4(オクタメチルシクロテトラシロキサン)で処理された200m2/gの比表面積を有する燃焼シリカ(b1);
・7.08部の、150m2/gの比表面積を有する燃焼シリカ(b2)。
【0042】
上で得られた混合物を次いで2本ロール式ブレンダーを用いて加工し、次いでこれに1.1部のPerkadox-BC-FF(登録商標)(過酸化ジクミル又はビス(1−メチル−1−フェニルエチル)ペルオキシド)を添加した。
【0043】
(3)組成物の特徴付け
【0044】
(i)前記ブレンダーで得られた均質物の一部分を、ポリオルガノシロキサン組成物の熱加硫によって得られるシリコーンエラストマーの機械的特性を測定するために用いた。これを行うために、この目的のために選んだ均質物の部分を次いで115℃において8分間加硫させ、厚さ2mmのシートを得ることが可能な好適な成形型を用いて加工した。こうして、アニーリングされていない状態(NA)のシートが得られた。このシートの一部分を次いで200℃において4時間のアニーリング及び200℃において10日間のエージングに付した。次いでこれらのすべてのシートからサンプルを採取し、次の特性を測定した。
【0045】
・DIN 53505規格に従うショアーA硬度(SAH)
・AFNOR NF T 46002規格に従う破壊強度(B/S)(MPa)
・AFNOR NF T 46002規格に従う破断点伸び(E/B)(%)
・AFNOR NF T 46002規格に従う100%弾性率(EM)(MPa)。
【0046】
結果を下記の表1に示す。
【表1】

【0047】
(2i)前記ブレンダーで得られた均質物の別の一部分を、電気ケーブルの製造に用いた。このケーブルの製造は標準的な構成によるものであり、銅モノコンダクターの周りにシリコーンエラストマー+熱可塑性ポリマーから作られた一次外被又は一次絶縁体が押出成形されて成るケーブルを製造し、次いでこれを塩浴中で当業者に周知の操作手順に従って加硫させることから成る。
【0048】
得られたケーブルは多孔性がなく、押出欠陥を何ら示さず、火に関するIEC 60331規格並びに煙不透明性についての規格(IEC 61034及びBS 7622)を満たしていた。さらに、このシリコーン組成物及びシリコーン絶縁体は、200℃において10日間のエージングの前後の機械的特性に関してNFC 32102規格を満たしていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱で加硫させてシリコーンエラストマーにすることができるポリオルガノシロキサン組成物であって、
・少なくとも1種のポリオルガノシロキサンガム(a)100重量部;
・補強用フィラー(群)(b)15〜100部;
・有機過酸化物(c)、好ましくはアラルキル有機過酸化物、より一層好ましくは過酸化ジクミル0.2〜8部;
・酸化亜鉛(d)0.2〜10部;
・酸化カルシウム(e)0.1〜15部;
・補助添加剤(群)(f)0〜15部;
・成分(g){白金金属(元素状)の重量で表わして}0.0001〜0.02部(即ち10ppm〜200ppm);
・充填用フィラー(群)(i)10〜100部;及び
・ウォラストナイト類に属する種(j)0.5〜10部:
より成る、前記ポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項2】
前記成分(a)がビニル基0〜4重量%を含有し且つ25℃において100万mPa・s超の粘度を有する少なくとも1種のポリオルガノシロキサンポリマーから成ることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記成分(b)がシリカ、アルミナ又はこれら2種の混合物から成ることを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記成分(i)が少なくとも1種の結晶質シリカから成ることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
成分(j)がメタケイ酸カルシウム(CaSiO3)又はウォラストナイト;カルシウム及びナトリウム混合メタケイ酸塩又はペクトライト(NaCa2HSi39);カルシウム及びマンガン混合メタケイ酸塩[CaMn(SiO3)2]又はバスタマイトから選択される少なくとも1種のより成る群から選択されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
前記の随意としての成分(f)を用いる場合にこの成分(f)が「耐構造化用」物質(f1);及び/又は少なくとも1種のポリシロキサン樹脂(f2);及び/又は少なくとも1種の安定剤(f3);及び/又は少なくとも1種のカップリング剤(f4);及び/又は少なくとも1種の着色顔料(f5);及び/又は少なくとも1種のホウ素含有化合物(f6)より成る群から選択されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の熱加硫性ポリオルガノシロキサン組成物を架橋させることによって得られるシリコーンエラストマー。
【請求項8】
火に対して保護された電気ケーブル又は電気ケーブルの組成中に入れられるモノコンダクター用の一次外被又は一次絶縁体を製造するための請求項1〜6のいずれかに記載の組成物の使用であって、
各モノコンダクターの周りに前記組成物を付着させ、押出又は熱可塑性ポリマーとの共押出を行い、次いで塩浴中で100℃〜200℃の範囲の材料温度で架橋させてシリコーンエラストマーにすることから成る、前記使用。

【公表番号】特表2010−513588(P2010−513588A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−540813(P2009−540813)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【国際出願番号】PCT/FR2007/002042
【国際公開番号】WO2008/087283
【国際公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(507421304)ブルースター・シリコーン・フランス・エスアエス (62)
【氏名又は名称原語表記】BLUESTAR SILICONES FRANCE SAS
【住所又は居所原語表記】21,AVENUE GEORGES POMPIDOU F−69486 LYON CEDEX 03 FRANCE
【Fターム(参考)】