電気二重層キャパシタのキャパシタセルの分担電圧推定方法、耐電圧設定・管理方法、および電気二重層キャパシタ
【課題】電気二重層キャパシタの各セルの分担電圧を高い精度で推定する。
【解決手段】キャパシタセルの課電履歴電圧によって変化する漏れ抵抗の変化特性を求めておく(S1)。各キャパシタセルの漏れ抵抗を測定する(S2)。測定した漏れ抵抗と漏れ抵抗の変化特性を基に各キャパシタセルのn時間後の漏れ抵抗を推定する(S3)。この推定した漏れ抵抗の比を基に各キャパシタセルの分担電圧を推定する(S4)。
分担電圧推定方法を基に耐電圧を設定および管理する電気二重層キャパシタの耐電圧設定・管理方法、および分担電圧推定方法を基にして分担電圧のバラツキを小さくした組成構造のキャパシタセルをもつ電気二重層キャパシタを含む。
【解決手段】キャパシタセルの課電履歴電圧によって変化する漏れ抵抗の変化特性を求めておく(S1)。各キャパシタセルの漏れ抵抗を測定する(S2)。測定した漏れ抵抗と漏れ抵抗の変化特性を基に各キャパシタセルのn時間後の漏れ抵抗を推定する(S3)。この推定した漏れ抵抗の比を基に各キャパシタセルの分担電圧を推定する(S4)。
分担電圧推定方法を基に耐電圧を設定および管理する電気二重層キャパシタの耐電圧設定・管理方法、および分担電圧推定方法を基にして分担電圧のバラツキを小さくした組成構造のキャパシタセルをもつ電気二重層キャパシタを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数のキャパシタセルを直列接続した電気二重層キャパシタの各キャパシタセルの分担電圧推定方法、この推定方法を基に耐電圧を設定・管理する電気二重層キャパシタ、およびこの推定方法を基にした組成構造をもつ電気二重層キャパシタに関する。
【背景技術】
【0002】
電気二重層キャパシタは分極性電極に電解質中のアニオン、カチオンを正極、負極表面に物理吸着させて竈気を蓄えることを原理としている。
【0003】
現在の電気二重層キャパシタ(以後キャパシタと呼称する)は、平板状の活性炭電極、集電極を用意し、イオンが通過可能なセパレータを挟んだ「積層型」である。活性炭電極、集電極の外周部には内部の電解質が漏れ出さないように、シールを行うためのパッキンを挟んでいる。このパッキンは同時に積層間での絶縁も兼ねている。キャパシタの組立を行う際には、必要な耐電圧分のセルをパッキンと交互に積み重ね(単セル耐電圧2.5V程度)、最後にエンドプレートで締め付けることにより密閉構造を保っている。
【0004】
積層型キャパシタユニットは、金属電極端面の集電極にリード線を取り付ければユニット内で直列接続となり、(単セル耐電圧)×(積層数)だけの耐電圧を持つことになる。この積層型キャパシタユニットは、一般的な巻き取り方式を用いた同一容量のキャパシタと比較してケーブル等を必要とせず、コンパクトに耐電圧を高く設計できるため設置面積を小さくすることができる。
【0005】
現在のキャパシタの製造方法は、活性炭電極、セパレータ、集電極、パッキン等を交互に積み重ね、各セル間でシールをとった後にユニット内に電解液を導入し、活性炭電極、セパレータに電解質を含浸させている。電解液導入の際には、キャパシタユニットの一カ所に電解液導入口を設けこの一カ所から各セルを仕切る分極基材の孔を介して全てのセルに電解質が行き渡るようにしている。
【0006】
この種のキャパシタは、その等価回路が一般のコンデンサの等価回路と同様に、静電容量成分と内部抵抗成分の直列接続に、漏れ抵抗成分が並列接続された構成になることから、特性評価方法としては電圧を印加したときの漏れ抵抗を測定する方法がある。実際の測定方法は、キャパシタに電圧課電し、そのときに流れる電流(漏れ電流)から漏れ抵抗を求める方法が採用される(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
この特許文献1では、キャパシタを設定電圧まで充電した後、この設定電圧を保つよう充電電圧制御を行い、この状態で流れる定常電流を計測し、この定常電流に基づいた漏れ電流(漏れ抵抗)の大小で評価する。この評価方法は短時間で測定できる。
【特許文献1】特開2003−133189号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
(1)キャパシタセルの電圧配分と漏れ抵抗の関係
キャパシタを長期課電したときの各セルの電圧配分は、一般的に個々のキャパシタセルの静電容量と漏れ抵抗比によって決まると言われている。キャパシタセルの分担電圧にバラツキが発生する要因を、図7に2キャパシタセル直列接続の等価回路図と、各成分(静電容量成分、内部抵抗成分、漏れ抵抗成分)の差異による電圧配分の違いを示す。2つのキャパシタセルでの電圧配分は、充放電時には、静電容量、内部抵抗の差異により電圧ばらつきが発生するが、長期課電時においては漏れ抵抗が最も大きな要因になると言われている。
【0009】
十分に緩和充電されたキャパシタのフロート状態(自己放電状態)は、図8で示した等価回路に見立てることができる。このときキャパシタ自体の内部抵抗は漏れ抵抗Rに対してほとんど無視できるほど小さいので単純なRCの並列接続回路と考えることができる。キャパシタの初期電圧をEとした場合、放置時間t秒後のキャパシタ電圧ec(t)は下記の式(1)で示される。
【0010】
ec(t)=E(1−exp(−t/RC)) …(1)
この自己放電試験を行うことで放置時間に対する電圧低下の関係を測定することにより、式(1)の漏れ抵抗R以外のパラメータ(初期電圧E、静電容量C)が判明するので、漏れ抵抗Rを求めることができる。
【0011】
(2)キャパシタの放電試験による漏れ抵抗測定
キャパシタの漏れ抵抗Rを推定するには、十分緩和充電されたキャパシタを自己放電させ、電圧変化を測定し、式(1)の時定数RCを求めればよい。そこで、キャパシタセルを44直列接続したキャパシタを24h以上充電後、そのまま自己放電させてみた。このときの各キャパシタセルの電圧保持率を図9に示す。
【0012】
このときの放置時間と電圧保持率の関係を指数回帰し、係数の自然対数をマイナス逆数にすると図10に示す各セルの時定数(RC)が求まる。ここで求めた時定数の単位を秒に直し、既知の静電容量で除すると、図11に示す各キャパシタセルの漏れ抵抗Rが求まる。さらに、各キャパシタセルの漏れ抵抗Rについて全体の平均値を0%としたときの各キャパシタセルのバラツキを図12に示す。
【0013】
一般論で言えば、直列に接続したキャパシタセルの各電圧は、漏れ抵抗Rのバラツキ率でおおよそ分担するはずである。図13にセル基準電圧を2.27Vとした時の推定電圧分担を示す。この考え方によればセル最大電圧は2.7V近くに達し、最低では1.8V程度となるはずである。しかし、実際には図14に示したように、長期課電を行って収束したセル電圧値と推定値の間には大きな隔たりがある。実際のセル電圧のバラツキは漏れ抵抗Rのバラツキ範囲よりも小さい範囲で収束し、同様の構成部品を用いたキャパシタの場合はほぼ例外なく同じ結果が得られ、何らかのパラメータ(要因)が他に存在することが分かる。
【0014】
以上のように、キャパシタセルを直列に接続した場合、直列接続キャパシタセル間の分担電圧は実際に長時間電圧印加を行わないとどのような範囲に収まるか分からず、短時間で電圧範囲を正確に推定することができないと言うのが現状である。
【0015】
前述した通り、キャパシタセルの耐電圧はおよそ2.5〜2.7V程度であり、漏れ抵抗のばらつき状態によってはこの電圧をオーバーすることも考えられる。このような理由から直列に接続したキャパシタセルは一部で分担電圧が大きくなり、急激な内部抵抗増加が生じ不良品となる可能性がある。
【0016】
本発明の目的は、多数のキャパシタセルを直列接続した電気二重層キャパシタの各セルの分担電圧を高い精度で推定できる電気二重層キャパシタセルの分担電圧推定方法、およびこの推定方法を基にした組成構造をもつ電気二重層キャパシタ、さらにこの推定方法を基に耐電圧を定めた電気二重層キャパシタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、直列接続キャパシタセルの分担電圧を収束させる要因として、キャパシタセルの課電履歴電圧によってその漏れ抵抗が変化することを見いだし、この漏れ抵抗の変化特性を基に各キャパシタセルのn時間後の漏れ抵抗を推定、さらには各キャパシタセルの漏れ抵抗比を基に各キャパシタセルの分担電圧を推定することにより、各キャパシタセルの漏れ抵抗を初期に1回だけ測定するのみで各キャパシタセルのn時間後の分担電圧を高い精度で推定できる分担電圧推定方法、およびこの分担電圧推定方法を基に耐電圧を設定および管理する電気二重層キャパシタの耐電圧設定・管理方法、さらにこの分担電圧推定方法を基にして分担電圧のバラツキを小さくした組成構造のキャパシタセルをもつ電気二重層キャパシタを提案するもので、以下の方法、装置を特徴とする。
【0018】
(1)多数のキャパシタセルを直列接続した電気二重層キャパシタにおける各キャパシタセルの分担電圧推定方法であって、
キャパシタセルの課電履歴電圧によって変化する漏れ抵抗の変化特性を求めておく過程と、各キャパシタセルの漏れ抵抗を測定する過程と、前記測定した漏れ抵抗と前記漏れ抵抗の変化特性を基に各キャパシタセルのn時間後の漏れ抵抗をそれぞれ推定する過程と、この推定した各キャパシタセルの漏れ抵抗の比を基に各キャパシタセルの分担電圧を推定する過程とを有することを特徴とする。
【0019】
(2)多数のキャパシタセルを直列接続した電気二重層キャパシタの耐電圧設定・管理方法であって、
キャパシタセルの課電履歴電圧によって変化する漏れ抵抗の変化特性を求めておく過程と、各キャパシタセルの漏れ抵抗を測定する過程と、前記測定した漏れ抵抗と前記漏れ抵抗の変化特性を基に各キャパシタセルのn時間後の漏れ抵抗をそれぞれ推定する過程と、この推定した各キャパシタセルの漏れ抵抗の比を基に各キャパシタセルの分担電圧を推定する過程と、この推定した各キャパシタセルの分担電圧を基に電気二重層キャパシタの耐電圧を設定および管理する過程とを有することを特徴とする。
【0020】
(3)多数のキャパシタセルを直列接続した電気二重層キャパシタであって、
前記キャパシタセルは、課電履歴電圧が高くなるほど漏れ抵抗値が低下する度合いが大きくなる電解質塩を用いた組成構造としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
以上のとおり、本発明によれば、以下の効果がある。
【0022】
・課電履歴電圧に対する漏れ抵抗の変化特性を加味することで、直列接続キャパシタセルの漏れ抵抗を1回測定するだけで、各キャパシタセルの分担電圧を高い精度で推定することができる。
【0023】
・計算により分担電圧の推定が可能となることで、直列接続したキャパシタセルの耐電圧を越えない耐電圧設定および管理ができ、電気二重層キャパシタの信頼性を高めることができる。
【0024】
・キャパシタセルの組成構造として、課電履歴電圧が高くなるほど漏れ抵抗値が低下する度合いが大きくなる電解質塩を用いることで、直列接続キャパシタセルの分担電圧のバラツキを小さくすることができ、各キャパシタセルの耐電圧を越えることなく全体に印加する電圧を高く設定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(実施形態1)
本実施形態は、直列接続キャパシタセルの分担電圧を収束させる要因として、課電履歴電圧に対する漏れ抵抗の変化について着目し、これを基に各キャパシタセルの分担電圧を高い精度で推定するもので、図1に推定手順を示すように、(S1)キャパシタセルの課電履歴電圧によって変化する漏れ抵抗の変化特性を求めておく過程と、(S2)各キャパシタセルの漏れ抵抗を測定する過程と、(S3)測定した漏れ抵抗と漏れ抵抗の変化特性を基に各キャパシタセルのn時間後の漏れ抵抗を推定する過程と、(S4)この推定した漏れ抵抗の比を基に各キャパシタセルの分担電圧を推定する過程とからなる分担電圧推定方法とする。
【0026】
本実施形態を立証する実験として、3つのキャパシタセルのサンプルに60℃環境下で2.3V,2.5V,2.7Vの電圧を印加し、800時間経過後に完全放電を行い、その後に25℃環境下で各サンプルを2.3V/2時間充電を行い、そのときの各サンプルの漏れ抵抗を測定した。
【0027】
当初は、課電履歴電圧が高ければ、自己放電は少なくなるものと考えていたが、実際には図2に示したように、課電履歴電圧が高かった順に自己放電が大きく、下記の表1に示した漏れ抵抗で比較すると、課電履歴電圧が2.5Vのサンプルでは課電履歴電圧が2.3Vのサンプルの79%、課電履歴電圧が2.7Vのサンプルでは課電履歴電圧が2.3Vの58%と、課電履歴電圧が高かったキャパシタセルは漏れ抵抗が大幅に小さくなり、これに伴い自己放電が大きくなることが判明した。
【0028】
【表1】
【0029】
この関係をグラフ化すると、図3に示すようになり、ほぼ直線(一次式)の関係が得られる。もっと広い電圧範囲で見た場合は、直線関係でなくなる可能性もあるが、通常の使用電圧範囲ではほぼリニアな関係であると捉えられ、課電履歴電圧が2.3Vのサンプルを基準とすると、各サンプルの漏れ抵抗比率には下記の式(2)の関係が得られる。
【0030】
漏れ抵抗比率=−1.05×課電履歴電圧(V)+3.416 …(2)
次に、前項の試験結果から得られた漏れ抵抗の変異を加味して直列接続キャパシタセルの電圧分担の推定を試みた。
【0031】
キャパシタセルの初期電位をE0とした場合、フロート時(自己放電時)t秒後のセル電圧は、先に示した式(1)から推定できるが、この式中の漏れ抵抗Rについて、式(2)の要因を入れて漏れ抵抗値を補正する。50時間後のn番目のセル電圧をF50(n)とした場合、式(1)の漏れ抵抗Rを式(2)の漏れ抵抗比率で補正した下記の式(3)で示される。
【0032】
F50(n)=E0×(1−exp(−50×3600/R(n)×(−1.05×E0+3.416)×C …(3)
式(3)を用い、n個の直列キャパシタセルの50時間後の電圧を全て推定する。50時間後の全直列セル電圧総和(ΣF50)を初期電圧の総和(n×E0)から差し引いた平均電圧低下分をVP50とすると、下記の式(4)になる。
【0033】
VP50=(n×E0−ΣF50(n))/n …(4)
50時間後のキャパシタセル電圧をE50(n)とすると、下記の式(5)で示すことができる。
【0034】
E50(n)=F50(n)+VP50 …(5)
式(3)、(4)、(5)の要領で100時間後のセル電圧E100を推定すると以下の式に従って求めることができる。
【0035】
F100(n)=E50(n)×(1−exp(−50×3600/R(n)×(−1.05×E50(n)+3.416)×C
VP100=(n×E50(n)−ΣF100(n))/n
E100(n)=F100(n)+VP100
これを反復計算させ、課電時間に対するセル電圧を推定した結果を図4に示す。今回の試験では50時間毎に反復計算を行ったが、時間区分をより狭くすればより精度は向上すると考えられる。図4の結果から、キャパシタセル電圧は2.37V〜2.10Vの間で約2000時間後に拡散が止まり、一定の範囲で推移することが分かる。
【0036】
無限大時間後の各セル平均分担電圧逸脱率と、平均漏れ抵抗逸脱率を比較して図5に推定分担電圧と実測の分担電圧として示した。平均分担電圧の逸脱率のバラツキは非常に小さくなり、漏れ抵抗のバラツキの1/3〜1/4程度に収束する結果を得た。これは実測値と極めて近い結果である。セル電圧の絶対値、バラツキ範囲とも推定値と良く一致していることが分かる。他のキャパシタでも同様の推定を行ったが全て計算結果と実測値は極めてよく一致することが確認できた。
【0037】
以上のことから、本実施形態では、直列接続したキャパシタセルの課電履歴電圧による漏れ抵抗の変化に着目し、この漏れ抵抗の変化を加味して各キャパシタセルのn時間後の漏れ抵抗の変化を推定し、この推定値を基に各キャパシタセルのn時間後の分担電圧を求めることにより、各キャパシタセルの漏れ抵抗を初期に1回だけ測定するのみで各キャパシタセルのn時間後の分担電圧を高い精度で推定する。
【0038】
この分担電圧の推定方法を採用することにより、電気二重層キャパシタを構成する各キャパシタセルの一部の分担電圧が大きくなり、急激な内部抵抗増加が生じ、電気二重層キャパシタの製品自体が不良品となる可能性を回避することができる。換言すれば、信頼性の高い電気二重層キャパシタの製造に寄与できる。
【0039】
また、本実施形態による分担電圧推定方法を基にして電気二重層キャパシタの耐電圧設定および管理を行うことにより、信頼性の高い電気二重層キャパシタを提供することができる。
【0040】
(実施形態2)
本実施形態では、キャパシタセルに印加される電圧(課電履歴電圧)と自己放電特性の変化についてキャパシタセルを構成する部品の何に依存しているのかを調べた。その結果、電解液中の電解質塩の種類により、前記の図3における課電履歴電圧に対する漏れ抵抗比の傾きが大きく現れることが判明した。
【0041】
図6ではPC溶媒にEMI(イミダゾウリウム塩)を2.5mol/L配合した電解液での関係図を示した。4級アンモニウム塩では2.5V課電時の漏れ抵抗が2.3V課電時の79%であったのに対して、EMIでは56%であり、下記の式(6)で示すように漏れ抵抗比の傾きが2倍程度大きくなる。
【0042】
漏れ抵抗比率=−1.8×キャパシタ電圧(V)+5.12 …(6)
実施形態1による実験と計算によれば、電圧の分担範囲は4級アンモニウム塩を使用した場合の約1/6で収束し、キャパシタを直列接続で構成するには好適であることが分かった。
【0043】
このように、課電履歴電圧が高くなると急激に漏れ抵抗比が大きくなるような電解質塩を用いることで、直列接続したキャパシタセルの電圧分担のバラツキ範囲はより小さくなり、特定のキャパシタセルが耐電圧を越える危険性が小さくなり、信頼性が向上する。又、直列接続キャパシタセル全体に印加する電圧を高めて各キャパシタセルの基準電圧自体も向上させることができる。
【0044】
したがって、本実施形態は、イミダゾリウム塩など、課電履歴電圧が高くなるほど漏れ抵抗値が低下する度合いが大きくなる電解質塩を用いた組成構造のキャパシタセルを直列接続した電気二重層キャパシタを提案するものであり、この構成により直列接続キャパシタセルの分担電圧バラツキを小さくした電気二重層キャパシタを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施形態を示す分担電圧推定手順図。
【図2】キャパシタセルの課電電圧履歴の差異による自己放電カーブ。
【図3】キャパシタセルの漏れ抵抗比率の差異。
【図4】キャパシタセルの漏れ抵抗変更を加味した分担電圧推定。
【図5】実測値と推定値の分担電圧比較。
【図6】EMI電解質での課電履歴と漏れ抵抗比率。
【図7】直列接続キャパシタセルの電圧分担要因の説明図。
【図8】キャパシタセルの自己放電の等価回路。
【図9】キャパシタセルの自己放電状態における電圧保持率。
【図10】キャパシタセルの自己放電カーブからの時定数推定値。
【図11】キャパシタセルの時定数からの漏れ抵抗推定値。
【図12】キャパシタセルの漏れ抵抗平均逸脱率。
【図13】キャパシタセルの漏れ抵抗比からの分担電圧推定値。
【図14】キャパシタセルの実測値と推定値の電圧分担比較。
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数のキャパシタセルを直列接続した電気二重層キャパシタの各キャパシタセルの分担電圧推定方法、この推定方法を基に耐電圧を設定・管理する電気二重層キャパシタ、およびこの推定方法を基にした組成構造をもつ電気二重層キャパシタに関する。
【背景技術】
【0002】
電気二重層キャパシタは分極性電極に電解質中のアニオン、カチオンを正極、負極表面に物理吸着させて竈気を蓄えることを原理としている。
【0003】
現在の電気二重層キャパシタ(以後キャパシタと呼称する)は、平板状の活性炭電極、集電極を用意し、イオンが通過可能なセパレータを挟んだ「積層型」である。活性炭電極、集電極の外周部には内部の電解質が漏れ出さないように、シールを行うためのパッキンを挟んでいる。このパッキンは同時に積層間での絶縁も兼ねている。キャパシタの組立を行う際には、必要な耐電圧分のセルをパッキンと交互に積み重ね(単セル耐電圧2.5V程度)、最後にエンドプレートで締め付けることにより密閉構造を保っている。
【0004】
積層型キャパシタユニットは、金属電極端面の集電極にリード線を取り付ければユニット内で直列接続となり、(単セル耐電圧)×(積層数)だけの耐電圧を持つことになる。この積層型キャパシタユニットは、一般的な巻き取り方式を用いた同一容量のキャパシタと比較してケーブル等を必要とせず、コンパクトに耐電圧を高く設計できるため設置面積を小さくすることができる。
【0005】
現在のキャパシタの製造方法は、活性炭電極、セパレータ、集電極、パッキン等を交互に積み重ね、各セル間でシールをとった後にユニット内に電解液を導入し、活性炭電極、セパレータに電解質を含浸させている。電解液導入の際には、キャパシタユニットの一カ所に電解液導入口を設けこの一カ所から各セルを仕切る分極基材の孔を介して全てのセルに電解質が行き渡るようにしている。
【0006】
この種のキャパシタは、その等価回路が一般のコンデンサの等価回路と同様に、静電容量成分と内部抵抗成分の直列接続に、漏れ抵抗成分が並列接続された構成になることから、特性評価方法としては電圧を印加したときの漏れ抵抗を測定する方法がある。実際の測定方法は、キャパシタに電圧課電し、そのときに流れる電流(漏れ電流)から漏れ抵抗を求める方法が採用される(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
この特許文献1では、キャパシタを設定電圧まで充電した後、この設定電圧を保つよう充電電圧制御を行い、この状態で流れる定常電流を計測し、この定常電流に基づいた漏れ電流(漏れ抵抗)の大小で評価する。この評価方法は短時間で測定できる。
【特許文献1】特開2003−133189号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
(1)キャパシタセルの電圧配分と漏れ抵抗の関係
キャパシタを長期課電したときの各セルの電圧配分は、一般的に個々のキャパシタセルの静電容量と漏れ抵抗比によって決まると言われている。キャパシタセルの分担電圧にバラツキが発生する要因を、図7に2キャパシタセル直列接続の等価回路図と、各成分(静電容量成分、内部抵抗成分、漏れ抵抗成分)の差異による電圧配分の違いを示す。2つのキャパシタセルでの電圧配分は、充放電時には、静電容量、内部抵抗の差異により電圧ばらつきが発生するが、長期課電時においては漏れ抵抗が最も大きな要因になると言われている。
【0009】
十分に緩和充電されたキャパシタのフロート状態(自己放電状態)は、図8で示した等価回路に見立てることができる。このときキャパシタ自体の内部抵抗は漏れ抵抗Rに対してほとんど無視できるほど小さいので単純なRCの並列接続回路と考えることができる。キャパシタの初期電圧をEとした場合、放置時間t秒後のキャパシタ電圧ec(t)は下記の式(1)で示される。
【0010】
ec(t)=E(1−exp(−t/RC)) …(1)
この自己放電試験を行うことで放置時間に対する電圧低下の関係を測定することにより、式(1)の漏れ抵抗R以外のパラメータ(初期電圧E、静電容量C)が判明するので、漏れ抵抗Rを求めることができる。
【0011】
(2)キャパシタの放電試験による漏れ抵抗測定
キャパシタの漏れ抵抗Rを推定するには、十分緩和充電されたキャパシタを自己放電させ、電圧変化を測定し、式(1)の時定数RCを求めればよい。そこで、キャパシタセルを44直列接続したキャパシタを24h以上充電後、そのまま自己放電させてみた。このときの各キャパシタセルの電圧保持率を図9に示す。
【0012】
このときの放置時間と電圧保持率の関係を指数回帰し、係数の自然対数をマイナス逆数にすると図10に示す各セルの時定数(RC)が求まる。ここで求めた時定数の単位を秒に直し、既知の静電容量で除すると、図11に示す各キャパシタセルの漏れ抵抗Rが求まる。さらに、各キャパシタセルの漏れ抵抗Rについて全体の平均値を0%としたときの各キャパシタセルのバラツキを図12に示す。
【0013】
一般論で言えば、直列に接続したキャパシタセルの各電圧は、漏れ抵抗Rのバラツキ率でおおよそ分担するはずである。図13にセル基準電圧を2.27Vとした時の推定電圧分担を示す。この考え方によればセル最大電圧は2.7V近くに達し、最低では1.8V程度となるはずである。しかし、実際には図14に示したように、長期課電を行って収束したセル電圧値と推定値の間には大きな隔たりがある。実際のセル電圧のバラツキは漏れ抵抗Rのバラツキ範囲よりも小さい範囲で収束し、同様の構成部品を用いたキャパシタの場合はほぼ例外なく同じ結果が得られ、何らかのパラメータ(要因)が他に存在することが分かる。
【0014】
以上のように、キャパシタセルを直列に接続した場合、直列接続キャパシタセル間の分担電圧は実際に長時間電圧印加を行わないとどのような範囲に収まるか分からず、短時間で電圧範囲を正確に推定することができないと言うのが現状である。
【0015】
前述した通り、キャパシタセルの耐電圧はおよそ2.5〜2.7V程度であり、漏れ抵抗のばらつき状態によってはこの電圧をオーバーすることも考えられる。このような理由から直列に接続したキャパシタセルは一部で分担電圧が大きくなり、急激な内部抵抗増加が生じ不良品となる可能性がある。
【0016】
本発明の目的は、多数のキャパシタセルを直列接続した電気二重層キャパシタの各セルの分担電圧を高い精度で推定できる電気二重層キャパシタセルの分担電圧推定方法、およびこの推定方法を基にした組成構造をもつ電気二重層キャパシタ、さらにこの推定方法を基に耐電圧を定めた電気二重層キャパシタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、直列接続キャパシタセルの分担電圧を収束させる要因として、キャパシタセルの課電履歴電圧によってその漏れ抵抗が変化することを見いだし、この漏れ抵抗の変化特性を基に各キャパシタセルのn時間後の漏れ抵抗を推定、さらには各キャパシタセルの漏れ抵抗比を基に各キャパシタセルの分担電圧を推定することにより、各キャパシタセルの漏れ抵抗を初期に1回だけ測定するのみで各キャパシタセルのn時間後の分担電圧を高い精度で推定できる分担電圧推定方法、およびこの分担電圧推定方法を基に耐電圧を設定および管理する電気二重層キャパシタの耐電圧設定・管理方法、さらにこの分担電圧推定方法を基にして分担電圧のバラツキを小さくした組成構造のキャパシタセルをもつ電気二重層キャパシタを提案するもので、以下の方法、装置を特徴とする。
【0018】
(1)多数のキャパシタセルを直列接続した電気二重層キャパシタにおける各キャパシタセルの分担電圧推定方法であって、
キャパシタセルの課電履歴電圧によって変化する漏れ抵抗の変化特性を求めておく過程と、各キャパシタセルの漏れ抵抗を測定する過程と、前記測定した漏れ抵抗と前記漏れ抵抗の変化特性を基に各キャパシタセルのn時間後の漏れ抵抗をそれぞれ推定する過程と、この推定した各キャパシタセルの漏れ抵抗の比を基に各キャパシタセルの分担電圧を推定する過程とを有することを特徴とする。
【0019】
(2)多数のキャパシタセルを直列接続した電気二重層キャパシタの耐電圧設定・管理方法であって、
キャパシタセルの課電履歴電圧によって変化する漏れ抵抗の変化特性を求めておく過程と、各キャパシタセルの漏れ抵抗を測定する過程と、前記測定した漏れ抵抗と前記漏れ抵抗の変化特性を基に各キャパシタセルのn時間後の漏れ抵抗をそれぞれ推定する過程と、この推定した各キャパシタセルの漏れ抵抗の比を基に各キャパシタセルの分担電圧を推定する過程と、この推定した各キャパシタセルの分担電圧を基に電気二重層キャパシタの耐電圧を設定および管理する過程とを有することを特徴とする。
【0020】
(3)多数のキャパシタセルを直列接続した電気二重層キャパシタであって、
前記キャパシタセルは、課電履歴電圧が高くなるほど漏れ抵抗値が低下する度合いが大きくなる電解質塩を用いた組成構造としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
以上のとおり、本発明によれば、以下の効果がある。
【0022】
・課電履歴電圧に対する漏れ抵抗の変化特性を加味することで、直列接続キャパシタセルの漏れ抵抗を1回測定するだけで、各キャパシタセルの分担電圧を高い精度で推定することができる。
【0023】
・計算により分担電圧の推定が可能となることで、直列接続したキャパシタセルの耐電圧を越えない耐電圧設定および管理ができ、電気二重層キャパシタの信頼性を高めることができる。
【0024】
・キャパシタセルの組成構造として、課電履歴電圧が高くなるほど漏れ抵抗値が低下する度合いが大きくなる電解質塩を用いることで、直列接続キャパシタセルの分担電圧のバラツキを小さくすることができ、各キャパシタセルの耐電圧を越えることなく全体に印加する電圧を高く設定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(実施形態1)
本実施形態は、直列接続キャパシタセルの分担電圧を収束させる要因として、課電履歴電圧に対する漏れ抵抗の変化について着目し、これを基に各キャパシタセルの分担電圧を高い精度で推定するもので、図1に推定手順を示すように、(S1)キャパシタセルの課電履歴電圧によって変化する漏れ抵抗の変化特性を求めておく過程と、(S2)各キャパシタセルの漏れ抵抗を測定する過程と、(S3)測定した漏れ抵抗と漏れ抵抗の変化特性を基に各キャパシタセルのn時間後の漏れ抵抗を推定する過程と、(S4)この推定した漏れ抵抗の比を基に各キャパシタセルの分担電圧を推定する過程とからなる分担電圧推定方法とする。
【0026】
本実施形態を立証する実験として、3つのキャパシタセルのサンプルに60℃環境下で2.3V,2.5V,2.7Vの電圧を印加し、800時間経過後に完全放電を行い、その後に25℃環境下で各サンプルを2.3V/2時間充電を行い、そのときの各サンプルの漏れ抵抗を測定した。
【0027】
当初は、課電履歴電圧が高ければ、自己放電は少なくなるものと考えていたが、実際には図2に示したように、課電履歴電圧が高かった順に自己放電が大きく、下記の表1に示した漏れ抵抗で比較すると、課電履歴電圧が2.5Vのサンプルでは課電履歴電圧が2.3Vのサンプルの79%、課電履歴電圧が2.7Vのサンプルでは課電履歴電圧が2.3Vの58%と、課電履歴電圧が高かったキャパシタセルは漏れ抵抗が大幅に小さくなり、これに伴い自己放電が大きくなることが判明した。
【0028】
【表1】
【0029】
この関係をグラフ化すると、図3に示すようになり、ほぼ直線(一次式)の関係が得られる。もっと広い電圧範囲で見た場合は、直線関係でなくなる可能性もあるが、通常の使用電圧範囲ではほぼリニアな関係であると捉えられ、課電履歴電圧が2.3Vのサンプルを基準とすると、各サンプルの漏れ抵抗比率には下記の式(2)の関係が得られる。
【0030】
漏れ抵抗比率=−1.05×課電履歴電圧(V)+3.416 …(2)
次に、前項の試験結果から得られた漏れ抵抗の変異を加味して直列接続キャパシタセルの電圧分担の推定を試みた。
【0031】
キャパシタセルの初期電位をE0とした場合、フロート時(自己放電時)t秒後のセル電圧は、先に示した式(1)から推定できるが、この式中の漏れ抵抗Rについて、式(2)の要因を入れて漏れ抵抗値を補正する。50時間後のn番目のセル電圧をF50(n)とした場合、式(1)の漏れ抵抗Rを式(2)の漏れ抵抗比率で補正した下記の式(3)で示される。
【0032】
F50(n)=E0×(1−exp(−50×3600/R(n)×(−1.05×E0+3.416)×C …(3)
式(3)を用い、n個の直列キャパシタセルの50時間後の電圧を全て推定する。50時間後の全直列セル電圧総和(ΣF50)を初期電圧の総和(n×E0)から差し引いた平均電圧低下分をVP50とすると、下記の式(4)になる。
【0033】
VP50=(n×E0−ΣF50(n))/n …(4)
50時間後のキャパシタセル電圧をE50(n)とすると、下記の式(5)で示すことができる。
【0034】
E50(n)=F50(n)+VP50 …(5)
式(3)、(4)、(5)の要領で100時間後のセル電圧E100を推定すると以下の式に従って求めることができる。
【0035】
F100(n)=E50(n)×(1−exp(−50×3600/R(n)×(−1.05×E50(n)+3.416)×C
VP100=(n×E50(n)−ΣF100(n))/n
E100(n)=F100(n)+VP100
これを反復計算させ、課電時間に対するセル電圧を推定した結果を図4に示す。今回の試験では50時間毎に反復計算を行ったが、時間区分をより狭くすればより精度は向上すると考えられる。図4の結果から、キャパシタセル電圧は2.37V〜2.10Vの間で約2000時間後に拡散が止まり、一定の範囲で推移することが分かる。
【0036】
無限大時間後の各セル平均分担電圧逸脱率と、平均漏れ抵抗逸脱率を比較して図5に推定分担電圧と実測の分担電圧として示した。平均分担電圧の逸脱率のバラツキは非常に小さくなり、漏れ抵抗のバラツキの1/3〜1/4程度に収束する結果を得た。これは実測値と極めて近い結果である。セル電圧の絶対値、バラツキ範囲とも推定値と良く一致していることが分かる。他のキャパシタでも同様の推定を行ったが全て計算結果と実測値は極めてよく一致することが確認できた。
【0037】
以上のことから、本実施形態では、直列接続したキャパシタセルの課電履歴電圧による漏れ抵抗の変化に着目し、この漏れ抵抗の変化を加味して各キャパシタセルのn時間後の漏れ抵抗の変化を推定し、この推定値を基に各キャパシタセルのn時間後の分担電圧を求めることにより、各キャパシタセルの漏れ抵抗を初期に1回だけ測定するのみで各キャパシタセルのn時間後の分担電圧を高い精度で推定する。
【0038】
この分担電圧の推定方法を採用することにより、電気二重層キャパシタを構成する各キャパシタセルの一部の分担電圧が大きくなり、急激な内部抵抗増加が生じ、電気二重層キャパシタの製品自体が不良品となる可能性を回避することができる。換言すれば、信頼性の高い電気二重層キャパシタの製造に寄与できる。
【0039】
また、本実施形態による分担電圧推定方法を基にして電気二重層キャパシタの耐電圧設定および管理を行うことにより、信頼性の高い電気二重層キャパシタを提供することができる。
【0040】
(実施形態2)
本実施形態では、キャパシタセルに印加される電圧(課電履歴電圧)と自己放電特性の変化についてキャパシタセルを構成する部品の何に依存しているのかを調べた。その結果、電解液中の電解質塩の種類により、前記の図3における課電履歴電圧に対する漏れ抵抗比の傾きが大きく現れることが判明した。
【0041】
図6ではPC溶媒にEMI(イミダゾウリウム塩)を2.5mol/L配合した電解液での関係図を示した。4級アンモニウム塩では2.5V課電時の漏れ抵抗が2.3V課電時の79%であったのに対して、EMIでは56%であり、下記の式(6)で示すように漏れ抵抗比の傾きが2倍程度大きくなる。
【0042】
漏れ抵抗比率=−1.8×キャパシタ電圧(V)+5.12 …(6)
実施形態1による実験と計算によれば、電圧の分担範囲は4級アンモニウム塩を使用した場合の約1/6で収束し、キャパシタを直列接続で構成するには好適であることが分かった。
【0043】
このように、課電履歴電圧が高くなると急激に漏れ抵抗比が大きくなるような電解質塩を用いることで、直列接続したキャパシタセルの電圧分担のバラツキ範囲はより小さくなり、特定のキャパシタセルが耐電圧を越える危険性が小さくなり、信頼性が向上する。又、直列接続キャパシタセル全体に印加する電圧を高めて各キャパシタセルの基準電圧自体も向上させることができる。
【0044】
したがって、本実施形態は、イミダゾリウム塩など、課電履歴電圧が高くなるほど漏れ抵抗値が低下する度合いが大きくなる電解質塩を用いた組成構造のキャパシタセルを直列接続した電気二重層キャパシタを提案するものであり、この構成により直列接続キャパシタセルの分担電圧バラツキを小さくした電気二重層キャパシタを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施形態を示す分担電圧推定手順図。
【図2】キャパシタセルの課電電圧履歴の差異による自己放電カーブ。
【図3】キャパシタセルの漏れ抵抗比率の差異。
【図4】キャパシタセルの漏れ抵抗変更を加味した分担電圧推定。
【図5】実測値と推定値の分担電圧比較。
【図6】EMI電解質での課電履歴と漏れ抵抗比率。
【図7】直列接続キャパシタセルの電圧分担要因の説明図。
【図8】キャパシタセルの自己放電の等価回路。
【図9】キャパシタセルの自己放電状態における電圧保持率。
【図10】キャパシタセルの自己放電カーブからの時定数推定値。
【図11】キャパシタセルの時定数からの漏れ抵抗推定値。
【図12】キャパシタセルの漏れ抵抗平均逸脱率。
【図13】キャパシタセルの漏れ抵抗比からの分担電圧推定値。
【図14】キャパシタセルの実測値と推定値の電圧分担比較。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数のキャパシタセルを直列接続した電気二重層キャパシタにおける各キャパシタセルの分担電圧推定方法であって、
キャパシタセルの課電履歴電圧によって変化する漏れ抵抗の変化特性を求めておく過程と、各キャパシタセルの漏れ抵抗を測定する過程と、前記測定した漏れ抵抗と前記漏れ抵抗の変化特性を基に各キャパシタセルのn時間後の漏れ抵抗をそれぞれ推定する過程と、この推定した各キャパシタセルの漏れ抵抗の比を基に各キャパシタセルの分担電圧を推定する過程とを有することを特徴とする電気二重層キャパシタのキャパシタセルの分担電圧推定方法。
【請求項2】
多数のキャパシタセルを直列接続した電気二重層キャパシタの耐電圧設定・管理方法であって、
キャパシタセルの課電履歴電圧によって変化する漏れ抵抗の変化特性を求めておく過程と、各キャパシタセルの漏れ抵抗を測定する過程と、前記測定した漏れ抵抗と前記漏れ抵抗の変化特性を基に各キャパシタセルのn時間後の漏れ抵抗をそれぞれ推定する過程と、この推定した各キャパシタセルの漏れ抵抗の比を基に各キャパシタセルの分担電圧を推定する過程と、この推定した各キャパシタセルの分担電圧を基に電気二重層キャパシタの耐電圧を設定および管理する過程とを有することを特徴とする電気二重層キャパシタの耐電圧設定・管理方法。
【請求項3】
多数のキャパシタセルを直列接続した電気二重層キャパシタであって、
前記キャパシタセルは、課電履歴電圧が高くなるほど漏れ抵抗値が低下する度合いが大きくなる電解質塩を用いた組成構造としたことを特徴とする電気二重層キャパシタ。
【請求項1】
多数のキャパシタセルを直列接続した電気二重層キャパシタにおける各キャパシタセルの分担電圧推定方法であって、
キャパシタセルの課電履歴電圧によって変化する漏れ抵抗の変化特性を求めておく過程と、各キャパシタセルの漏れ抵抗を測定する過程と、前記測定した漏れ抵抗と前記漏れ抵抗の変化特性を基に各キャパシタセルのn時間後の漏れ抵抗をそれぞれ推定する過程と、この推定した各キャパシタセルの漏れ抵抗の比を基に各キャパシタセルの分担電圧を推定する過程とを有することを特徴とする電気二重層キャパシタのキャパシタセルの分担電圧推定方法。
【請求項2】
多数のキャパシタセルを直列接続した電気二重層キャパシタの耐電圧設定・管理方法であって、
キャパシタセルの課電履歴電圧によって変化する漏れ抵抗の変化特性を求めておく過程と、各キャパシタセルの漏れ抵抗を測定する過程と、前記測定した漏れ抵抗と前記漏れ抵抗の変化特性を基に各キャパシタセルのn時間後の漏れ抵抗をそれぞれ推定する過程と、この推定した各キャパシタセルの漏れ抵抗の比を基に各キャパシタセルの分担電圧を推定する過程と、この推定した各キャパシタセルの分担電圧を基に電気二重層キャパシタの耐電圧を設定および管理する過程とを有することを特徴とする電気二重層キャパシタの耐電圧設定・管理方法。
【請求項3】
多数のキャパシタセルを直列接続した電気二重層キャパシタであって、
前記キャパシタセルは、課電履歴電圧が高くなるほど漏れ抵抗値が低下する度合いが大きくなる電解質塩を用いた組成構造としたことを特徴とする電気二重層キャパシタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−24589(P2006−24589A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−198811(P2004−198811)
【出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】
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