説明

電気二重層キャパシタ用電極シートの製造方法

【課題】 MD方向及びTD方向ともに厚みが均一で、電極密度のばらつきが小さい、電気化学素子電極用シートを製造する方法を提供することにある。
【解決手段】 電極材料を、粉体貯留槽およびフィーダーを有し該粉体貯留槽に超音波による振動が付与される粉体供給機によって、略水平に配置された一対のプレス用ロールまたはベルトに連続的に供給し、このプレス用ロールまたはベルトで該電極材料をシート状成形体に成形する工程を含む電気化学素子電極用シートの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池や電気二重層キャパシタなどの電気化学素子に、特に電気二重層キャパシタに好適に用いられる電気化学素子電極(本明細書では単に「電極」と言うことがある。)用シートの製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
小型で軽量、且つエネルギー密度が高く、更に繰り返し充放電が可能なリチウムイオン二次電池や電気二重層キャパシタなどの電気化学素子は、その特性を活かして急速に需要を拡大している。リチウムイオン二次電池は、エネルギー密度が比較的に大きいことから携帯電話やノート型パーソナルコンピュータなどの分野で利用され、電気二重層キャパシタは、急激な充放電が可能なので、パソコン等のメモリバックアップ小型電源として利用されている。更に、電気二重層キャパシタは電気自動車用の大型電源としての利用が期待されている。一方、高いエネルギー密度と充放電速度の両立を目指し、正極、負極の2つの電極のうち、一方にファラデー反応電極、もう一方に非ファラデー反応電極を使用するハイブリッドキャパシタも開発が進められている。また、金属酸化物や導電性高分子の表面の酸化還元反応(疑似電気二重層容量)を利用するレドックスキャパシタもその容量の大きさから注目を集めている。これら電気化学素子には、用途の拡大や発展に伴い、低抵抗化、高容量化、機械的特性の向上など、より一層の特性の改善が求められている。そのようななかで、電気化学素子の性能を向上させるために、電気化学素子電極を形成する方法についても様々な改善が行われている。
【0003】
電気化学素子電極は、例えば、電極活物質等を含有する電極材料をシート状に形成し、このシート(活物質層)を集電体に圧着することによって得ることができる。
このシート状成形体を得るために、特許文献1には、炭素微粉、導電性助材及びバインダーからなる原料を混合、混練して混練物とし、次いでこの混練物をロールプレスで所定の厚さのシート状成形体とする方法が記載されている。具体的には、図1に示すような、一対のロール1と仕切板4で形成された空間に混練物3を貯留し、該一対のロールで該混練物をプレス成形してシート状成形体2を得る製造装置を用いている。
【0004】
また、特許文献2には、活性炭粉末、カーボンブラックおよびバインダーを摩砕しつつ混練して粉末材料を得、これを垂直式スクリューフィーダーによって圧延ロールに供給してシート状の分極性電極とする方法が開示されている。そして、垂直式スクリューフィーダーによる押し込み圧力を調整することにより、圧延ロールへの粉末材料のくい込み量を制御すると記載されている。
【0005】
しかしながら、これらの製造方法で得られる電極用シートは、膜厚の均一性が劣り、電極密度のばらつきが大きいものであった。特に、幅方向(TD方向)のばらつきが大きく改良が必要であった。
【0006】
【特許文献1】特開2001−230158号公報
【特許文献2】特開平4−67610号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、長さ方向(MD方向)及びTD方向ともに厚みが均一で、電極密度のばらつきが小さい、電気化学素子電極用シートを製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、ロールに供給される電極材料が、嵩密度の均一性が低く、その結果、電極材料の供給量にむらが生じることに気づいた。そこで本発明者らは、電極材料の供給に用いるフィーダーの粉体貯留槽に、超音波による振動を付与し、このフィーダーで電極材料を一対のロールに供給することによって、膜厚が均一で、電極密度のばらつきが小さい、電気化学素子電極用シートが得られることを見出した。また、該粉体貯留槽を減圧することによって、電極材料の嵩密度を高くかつ均一にでき、均一な膜厚でかつ高容量の電気化学素子を得ることのできる電気化学素子電極用シートが得られることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0009】
かくして本発明によれば、電極材料を、粉体貯留槽およびフィーダーを有し該粉体貯留槽に超音波による振動が付与される粉体供給機によって、略水平に配置された一対のプレス用ロールまたはベルトに連続的に供給し、このプレス用ロールまたはベルトで該電極材料をシート状成形体に成形する工程を含む電気化学素子電極用シートの製造方法が提供される。
【0010】
前記振動の周波数は1〜50kHzであることが好ましい。
前記粉体貯留槽の圧力は0.05MPa以下であることが好ましい。
前記フィーダーは押送式のフィーダーであることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電気化学素子電極用シートの製造方法によれば、MD方向及びTD方向ともに膜厚が均一で、電極密度が高くかつばらつきが小さい、電気化学素子電極用シートが得られる。その結果、電気抵抗が小さく、大きな容量を得ることができる電極を大量に効率よく製造でき、二次電池や電気二重層キャパシタの製造コストを大幅に低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の電気化学素子電極用シートの製造方法は、電極材料を、粉体貯留槽およびフィーダーを有し該粉体貯留槽に超音波による振動が付与される粉体供給機によって、略水平に配置された一対のプレス用ロールまたはベルトに連続的に供給し、このプレス用ロールまたはベルトで電極材料をシート状成形体に成形する工程を含むものである。
【0013】
本発明に用いる電極材料は、電気化学素子電極を得るために使用されるものであり、具体的には、少なくとも電極活物質および結着剤を含有し、必要に応じさらに導電材、溶解型樹脂などを含有する。
電極活物質は、電気化学素子の種類によって適宜選択される。リチウムイオン二次電池の正極用の電極活物質としては、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiMn、LiFePO、LiFeVOなどのリチウム含有複合金属酸化物;TiS、TiS、非晶質MoSなどの遷移金属硫化物;Cu、非晶質VO・P、MoO、V、V13などの遷移金属酸化物;が例示される。さらに、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレンなどの導電性高分子が挙げられる。
【0014】
リチウムイオン二次電池の負極用の電極活物質としては、例えば、アモルファスカーボン、グラファイト、天然黒鉛、メゾカーボンマイクロビーズ(MCMB)、及びピッチ系炭素繊維などの炭素質材料;ポリアセン等の導電性高分子などが挙げられる。これらの電極活物質は、電気化学素子の種類に応じて、単独でまたは二種類以上を組み合わせて使用することができる。電極活物質を組み合わせて使用する場合は、平均粒径又は粒径分布の異なる二種類以上の電極活物質を組み合わせて使用してもよい。
【0015】
リチウムイオン二次電池の電極に使用する電極活物質は球形の粒子に整粒されたものが好ましい。粒子の形状が球形であると、電極成形時により高密度な電極が形成できる。また、重量平均粒子径1μm程度の細かな粒子と重量平均粒径3〜8μmの比較的大きな粒子の混合物や、0.5〜8μmにブロードな粒径分布を持つ粒子が好ましい。粒径が50μm以上の粒子は篩い分けなどにより除去して用いるのが好ましい。電極活物質のASTM D4164で規定されるタップ密度は特に制限されないが、正極では2g/cm以上、負極では0.6g/cm以上のものが好適に用いられる。
【0016】
電気二重層キャパシタ用の電極活物質としては、通常、炭素の同素体が用いられる。電気二重層キャパシタ用の電極活物質は、同じ重量でもより広い面積の界面を形成することが可能なもの、すなわち比表面積の大きいものが好ましい。具体的には、比表面積が30m/g以上、好ましくは500〜5,000m/g、より好ましくは1,000〜3,000m/gであることが好ましい。炭素の同素体の具体例としては、活性炭、ポリアセン、カーボンウィスカ及びグラファイト等が挙げられ、これらの粉末または繊維を使用することができる。電気二重層キャパシタ用の好ましい電極活物質は活性炭であり、具体的にはフェノール系、レーヨン系、アクリル系、ピッチ系、又はヤシガラ系等の活性炭を挙げることができる。これら炭素の同素体は、電気二重層キャパシタ用電極活物質として、単独でまたは二種類以上を組み合わせて使用することができる。炭素の同素体を組み合わせて使用する場合は、平均粒径又は粒径分布の異なる二種類以上の炭素の同素体を組み合わせて使用してもよい。
【0017】
また、黒鉛類似の微結晶炭素を有し、その微結晶炭素の層間距離が拡大された非多孔性炭素を電極活物質として用いることができる。このような非多孔性炭素は、多層グラファイト構造の微結晶が発達した易黒鉛化炭を700〜850℃で乾留し、次いで苛性アルカリと共に800〜900℃で熱処理し、さらに必要に応じ加熱水蒸気により残存アルカリ成分を除くことで得られる。
電気二重層キャパシタ用の電極活物質として、重量平均粒子径が0.1〜100μm、好ましくは1〜50μm、更に好ましくは5〜20μmの粉末を用いると、電気二重層キャパシタ用電極の薄膜化が容易で、静電容量も高くできるので好ましい。
【0018】
導電材は、導電性を有し、電気二重層を形成し得る細孔を有さない粒子状の炭素の同素体からなり、電気化学素子電極の導電性を向上させるものである。導電材の重量平均粒子径は、電極活物質の重量平均粒子径よりも小さいことが好ましく、通常0.001〜10μm、好ましくは0.05〜5μm、より好ましくは0.01〜1μmの範囲である。導電材の粒径がこの範囲にあると、より少ない使用量で高い導電性が得られる。導電材の具体例としては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、及びケッチェンブラック(アクゾノーベル ケミカルズ ベスローテン フェンノートシャップ社の登録商標)などの導電性カーボンブラック;天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛;が挙げられる。これらの中でも、導電性カーボンブラックが好ましく、アセチレンブラックおよびファーネスブラックがより好ましい。これらの導電材は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
導電材の量は、電極活物質100重量部に対して、通常0.1〜50重量部、好ましくは0.5〜15重量部、より好ましくは1〜10重量部の範囲である。導電材の量がこの範囲にある電極を使用すると電気化学素子の容量を高く且つ内部抵抗を低くすることができる。
【0020】
本発明に使用される結着剤は、結着力を有する化合物であれば特に制限はないが、分散型結着剤が好ましい。分散型結着剤とは、溶媒に分散する性質のある結着剤であり、例えば、フッ素系重合体、ジエン系重合体、アクリレート系重合体、ポリイミド、ポリアミド、ポリウレタン等の高分子化合物が挙げられ、より好ましくはフッ素系重合体、ジエン系重合体、及びアクリレート系重合体が挙げられる。これら結着剤は単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
フッ素系重合体はフッ素原子を含む単量体単位を含有する重合体である。フッ素系重合体中のフッ素を含有する単量体単位の割合は通常50重量%以上である。フッ素系重合体の具体例としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素樹脂が挙げられ、ポリテトラフルオロエチレンが好ましい。
【0022】
ジエン系重合体は、共役ジエンの単独重合体もしくは共役ジエンを含む単量体混合物を重合して得られる共重合体、またはそれらの水素添加物である。前記単量体混合物における共役ジエンの割合は通常40重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上である。ジエン系重合体の具体例としては、ポリブタジエンやポリイソプレンなどの共役ジエン単独重合体;カルボキシ変性されていてもよいスチレン・ブタジエン共重合体(SBR)などの芳香族ビニル・共役ジエン共重合体;アクリロニトリル・ブタジエン共重合体(NBR)などのシアン化ビニル・共役ジエン共重合体;水素化SBR、水素化NBRなどが挙げられる。
【0023】
アクリレート系重合体は、アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルの単独重合体またはこれらを含む単量体混合物を重合して得られる共重合体である。前記単量体混合物におけるアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルの割合は通常40重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上である。アクリレート系重合体の具体例としては、アクリル酸2−エチルヘキシル・メタクリル酸・アクリロニトリル・エチレングリコールジメタクリレート共重合体、アクリル酸2−エチルヘキシル・メタクリル酸・メタクリロニトリル・ジエチレングリコールジメタクリレート共重合体、アクリル酸2−エチルヘキシル・スチレン・メタクリル酸・エチレングリコールジメタクリレート共重合体、アクリル酸ブチル・アクリロニトリル・ジエチレングリコールジメタクリレート共重合体、およびアクリル酸ブチル・アクリル酸・トリメチロールプロパントリメタクリレート共重合体などの架橋型アクリレート系重合体;エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、およびエチレン・メタクリル酸エチル共重合体などのエチレンとアクリル酸(またはメタクリル酸)エステルとの共重合体;上記エチレンとアクリル酸(またはメタクリル酸)エステルとの共重合体にラジカル重合性単量体をグラフト重合させたグラフト重合体;などが挙げられる。なお、上記グラフト重合体に用いられるラジカル重合性単量体としては、例えば、メタクリル酸メチル、アクリロニトリル、メタクリル酸などが挙げられる。その他に、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体などが結着剤として使用できる。
【0024】
これらの中で、集電体との結着性や表面平滑性に優れた活物質層が得られ、また、高静電容量で且つ低内部抵抗の電気化学素子用電極が製造できるという観点から、ジエン系重合体および架橋型アクリレート系重合体が好ましく、架橋型アクリレート系重合体が特に好ましい。
【0025】
結着剤は、その形状によって特に制限はないが、結着性が良く、また、作成した電極の静電容量の低下や充放電の繰り返しによる劣化を抑えることができるため、粒子状であることが好ましい。粒子状の結着剤としては、例えば、ラテックスのごとき分散型結着剤の粒子が水に分散した状態のものや、このような分散液を乾燥して得られる粉末状のものが挙げられる。
【0026】
また、結着剤は、2種以上の単量体混合物を段階的に重合することにより得られるコアシェル構造を有する粒子であっても良い。コアシェル構造を有する結着剤は、第一段目の重合体を与える単量体をまず重合しシード粒子を得、このシード粒子の存在下に、第二段目となる重合体を与える単量体を重合することにより製造することが好ましい。
【0027】
上記コアシェル構造を有する結着剤のコアとシェルの割合は、特に限定されないが、質量比でコア部:シェル部が通常50:50〜99:1、好ましくは60:40〜99:1、より好ましくは70:30〜99:1である。コア部及びシェル部を構成する高分子化合物は上記の高分子化合物の中から選択できる。コア部とシェル部は、その一方が0℃未満のガラス転移温度を有し、他方が0℃以上のガラス転移温度を有するものであることが好ましい。また、コア部とシェル部とのガラス転移温度の差は、通常20℃以上、好ましくは50℃以上である。
【0028】
粒子状の結着剤は、その数平均粒子径によって格別な限定はないが、通常は0.0001〜100μm、好ましくは0.001〜10μm、より好ましくは0.01〜1μmの数平均粒径を有するものである。結着剤の数平均粒子径がこの範囲であるときは、少量の結着剤の使用でも優れた結着力を活物質層に与えることができる。ここで、数平均粒子径は、透過型電子顕微鏡写真で無作為に選んだ結着剤粒子100個の径を測定し、その算術平均値として算出される個数平均粒径である。粒子の形状は球形、異形、どちらでもかまわない。
【0029】
この結着剤の使用量は、電極活物質100重量部に対して、通常は0.1〜50重量部、好ましくは0.5〜20重量部、より好ましくは1〜10重量部の範囲である。
【0030】
電極材料には上記の他に溶解型樹脂を含有していることが好ましい。溶解型樹脂とは、溶媒に溶解する樹脂であり、好適には後述する分散液の調製時に溶媒に溶解させて用いられて、電極活物質、導電材等を溶媒に均一に分散させる作用を有するものである。溶解型樹脂としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース系ポリマー、ならびにこれらのアンモニウム塩またはアルカリ金属塩;ポリアクリル酸(またはメタクリル酸)ナトリウムなどのポリアクリル酸(またはメタクリル酸)塩;ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド;ポリビニルピロリドン、ポリカルボン酸、酸化スターチ、リン酸スターチ、カゼイン、各種変性デンプン、キチン、キトサン誘導体などが挙げられる。これらの溶解型樹脂は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。中でも、セルロース系ポリマーが好ましく、カルボキシメチルセルロースまたはそのアンモニウム塩もしくはアルカリ金属塩が特に好ましい。溶解型樹脂の使用量は、格別な限定はないが、電極活物質100重量部に対して、通常は0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部、より好ましくは0.8〜2重量部の範囲である。
【0031】
電極材料には、さらに必要に応じてその他の添加剤を含有していてもよい。その他の添加剤としては、例えば、界面活性剤がある。界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性、ノニオン性、ノニオニックアニオンなどの両性の界面活性剤が挙げられるが、中でもアニオン性若しくはノニオン性の界面活性剤で熱分解しやすいものが好ましい。界面活性剤の量は、格別な限定はないが、電極活物質100重量部に対して0〜50重量部、好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは0.5〜5重量部の範囲である。
【0032】
本発明で好適に用いられる電極材料は上記成分を複合して含有する粒子形状のもの(以下、複合粒子ということがある。)である。この複合粒子は、通常、電極活物質、導電材、結着剤を少なくとも含有し、前記電極活物質及び導電材が結着剤によって結着されてなるもので構成されている。
本発明に用いる複合粒子は、その重量平均粒子径が、通常は0.1〜1000μm、好ましくは5〜500μm、より好ましくは10〜100μmの範囲である。
【0033】
本発明に用いる複合粒子は、その製造方法によって特に制限はなく、噴霧乾燥造粒法、転動層造粒法、圧縮型造粒法、攪拌型造粒法、押出し造粒法、破砕型造粒法、流動層造粒法、流動層多機能型造粒法、および溶融造粒法などの公知の造粒法が挙げられる。中でも噴霧乾燥造粒法、転動層造粒法および攪拌型造粒法を使用すると均一性の高い球状の粒子を得られるため好ましく、噴霧乾燥造粒法が特に好ましい。
【0034】
噴霧乾燥造粒法は、電極活物質と、結着剤と、必要に応じてその他の成分とを溶媒中で混合して分散液とする工程、および、該分散液を噴霧乾燥して複合粒子を形成する工程を含む。具体的には、複合粒子の形成工程で、上記分散液を噴霧乾燥機を使用してアトマイザから噴霧し、噴霧された分散液を乾燥塔内部で乾燥することで、分散液中に含まれる電極活物質、結着剤およびその他の成分からなる球状の複合粒子が形成される。
【0035】
分散液を得るために用いる溶媒は特に限定されないが、上記の溶解型樹脂を用いる場合には、溶解型樹脂を溶解可能な溶媒が好適に用いられる。具体的には、通常水が用いられるが、有機溶媒を用いることもできる。有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコールなどのアルキルアルコール類;アセトン、メチルエチルケトンなどのアルキルケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジグライム等のエーテル類;ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン等のアミド類;ジメチルスルホキサイド、スルホラン等のイオウ系溶剤;などが挙げられるが、アルコール類が好ましい。
【0036】
本発明に用いられる粉体供給機は、粉体貯留槽およびフィーダーを有し、電極材料をプレス用ロールまたはベルトに連続的に供給できるものである。粉体貯留槽は電極材料を貯留しフィーダーに供給できる構造を有し、さらに超音波による振動を付与できる手段を具備する。また、粉体貯留槽はその内部を減圧できる手段を有することが好ましい。さらに粉体貯留槽は、加温手段を有することが好ましい。
【0037】
フィーダーは、電極材料を連続的に供給できる構造を有するものであれば特に限定されないが、定量性に優れるものが好ましい。具体的には、かかるフィーダーを用いて電極材料を連続的に供給し、一定間隔で供給量を複数回測定し、その測定値の平均値mと標準偏差σから求められるCV値(=σ/m×100)が好ましくは4以下、より好ましくは2以下である。
【0038】
フィーダーとしては、機器の回転や往復運動などにより電極材料を強制的に送り出す押送式フィーダー、エンドレスベルト式フィーダー、電気または電磁気などにより電極材料を振動させて搬送する振動式フィーダー、気流により電極材料を搬送する流動式フィーダーなどが使用できる。中でも、押送式フィーダーが好ましい。
【0039】
押送式フィーダーとしては、具体的には、翼付ロータの回転によるロータリーフィーダー、ロールの回転によるロールフィーダー、円盤の回転によるテーブルフィーダー、スクリューの回転によるスクリューフィーダーなどが挙げられる。中でも、定量性に優れるので、ロータリーフィーダーおよびスクリューフィーダーがより好ましい。
【0040】
本発明の製造方法では、上記粉体供給機の粉体貯留槽に超音波による振動を付与し、この粉体供給機によって、前記電極材料を略水平に配置された一対のプレス用ロール又はベルトに供給し、このプレス用ロール又はベルトで電極材料をシート状成形体に成形する。粉体貯留槽に超音波による振動を付与することで、粉体貯留槽内の電極材料の嵩密度を均一にできるので、膜厚が均一で電極密度のばらつきが小さい電気化学素子電極用シート(以下、単に「電極用シート」ということがある。)を得ることができる。
【0041】
図2は粉体供給機10によって一対のプレス用ロール1に電極材料3を供給し、供給された電極材料をプレス用ロールでプレスしてシート状成形体を得ているところを示している。この粉体供給機は、粒子状の電極材料3を収容する粉体貯留槽11と、収容した電極材料を下部からプレス用ロールに供給するように構成されたロータリーフィーダー12を有している。粉体貯留槽には、超音波発振機21と振動子22からなる超音波振動付与装置により超音波による振動が付与され、かつ、図示しない真空ポンプにより槽内が減圧されている。ロータリーフィーダーには、図示しない流量計と調節計を備え、フィードバック自動制御回路により供給量が自動的に調整されるようになっている。また、図2ではプレス用ロールの一方のみに電極材料を供給しているが、一対のプレス用ロールの双方に粉体供給機を備え、両方のプレス用ロールに電極材料を供給してもよい。図2のプレス用ロールはプレス用ベルトに置き換えることができる。
【0042】
超音波による振動の周波数は、通常1〜50kHz、好ましくは10〜40kHz、より好ましくは15〜35kHzである。超音波による振動の出力は、通常0.5〜5kW、好ましくは1〜3kW、より好ましくは1.5〜2.5kWである。周波数および出力がこの範囲であると、電極材料の嵩密度が高くなり充填性に優れ、密度の高い電極が得られる。
【0043】
粉体貯留槽は、槽内が減圧されていることが好ましい。槽内を減圧することで、槽内の電極材料の嵩密度を高く、かつより均一にできるので、電極密度が高い電極用シートを容易に成形することができる。また、電極材料中の空気が少なくなるので、得られる電極用シートの酸化が抑制できる。粉体貯留槽内の圧力は、絶対圧で、好ましくは0.001〜0.05MPa、より好ましくは0.01〜0.04MPaである。
【0044】
供給される電極材料の温度は、通常20℃〜160℃、好ましくは40〜160℃、より好ましくは70〜140℃である。この温度範囲にある電極材料を用いると、プレス用ロール又はベルトの表面で電極材料の滑りがなく、電極材料が連続的かつ均一にプレス用ロール又はベルトに供給されるので、膜厚が均一で、電極密度のばらつきが小さい、電気化学素子電極用シートを得ることができる。
【0045】
成形時の温度は、通常0〜200℃であり、結着剤の融点またはガラス転移温度より高いことが好ましく、融点またはガラス転移温度より20℃以上高いことがより好ましい。ロールを用いる場合の成形速度は、通常0.1〜20m/分、好ましくは1〜10m/分である。またプレス用ロール間のプレス線圧は、通常0.2〜30kN/cm、好ましくは0.5〜10kN/cmである。ベルトを用いる場合の成形速度は、通常1〜15m/分、好ましくは5〜10m/分である。またプレス用ベルト間の圧力は、通常5〜50MPa、好ましくは10〜30MPaである。
【0046】
本発明の製造方法においては、さらに、シート状集電体を一対のプレス用ロールまたはベルトに供給し、このプレス用ロールまたはベルトで電極材料をシート状成形体に成形するとともにシート状集電体に圧着させてもよい。本発明に使用されるシート状集電体は、その材料としては、例えば、金属、炭素、導電性高分子などを用いることができ、好適には金属が用いられる。集電体用金属としては、通常、アルミニウム、白金、ニッケル、タンタル、チタン、ステンレス鋼、その他の合金等が使用される。これらの中で導電性、耐電圧性の面からアルミニウムまたはアルミニウム合金を使用するのが好ましい。また、高い耐電圧性が要求される場合には特開2001−176757号公報等で開示される高純度のアルミニウムを好適に用いることができる。集電体は、フィルムまたはシート状であり、その厚みは、使用目的に応じて適宜選択されるが、通常1〜200μm、好ましくは5〜100μm、より好ましくは10〜50μmである。
【0047】
本発明の製造方法では、電極材料をプレス用ロール又はベルトに供給した後、このプレス用ロール又はベルト表面で電極材料が転がらないようにする手段で電極材料を定着させることが好ましい。
プレス用ロール又はベルト表面で電極材料が転がらないようにする手段としては、プレス用ロール又はベルト表面の温度を高くし電極材料を熱融着させる手段、プレス用ロール又はベルト表面でコロナ放電などを行って帯電させ、電極材料を帯電付着させる手段、および電極材料が散布された直後にプレス用ロール又はベルトにカバーシート(カバーシートとしてシート状集電体を用いると好ましい。)を被せて電極材料を抑える手段、などが挙げられる。
【0048】
成形した成形体の厚みのばらつきを無くし、密度を上げて高容量化をはかるために、必要に応じて更に後加圧を行っても良い。後加圧の方法は、ロールによるプレス工程が一般的である。ロールプレス工程では、2本の円柱状のロールをせまい間隔で平行に上下にならべ、それぞれを反対方向に回転させて、その間に電極をかみこませ加圧する。ロールは加熱又は冷却等、温度調節しても良い。
【実施例】
【0049】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例における部および%は、特に断りのない限り重量基準である。
【0050】
電気化学素子電極用シートの各特性は、下記の方法に従い測定した。
(1)電極密度
シート状成形体を40mm×60mmの大きさに切り出し、その重量と体積を測定し、集電体部分を除いた電極密度を計算した。
(2)電極厚さ及びばらつき
電極用シートの厚さ測定は明産社製接触式ウェブ厚さ計RC−101型を用い、0.5mm間隔で20点の電極厚さを測定し平均値とばらつきを求めた。
【0051】
実施例1
電極活物質(比表面積2000m/g及び重量平均粒子径5μmの活性炭)100部、導電材(アセチレンブラック「デンカブラック粉状」:電気化学工業(株)製)5部、分散型結着剤(数平均粒子径0.15μm、ガラス転移温度−40℃の架橋型アクリレート系重合体の40%水分散体「AD211」:日本ゼオン(株)製)7.5部、溶解型樹脂(カルボキシメチルセルロースの1.5%水溶液「DN−800H」:ダイセル化学工業(株)製)93.3部、及びイオン交換水231.8部を「T.K.ホモミクサー」(特殊機化工業(株)製)で攪拌混合して、固形分25%のスラリーを得た。次いで、スラリーをスプレー乾燥機を用いて150℃の熱風で噴霧乾燥し、重量平均粒子径50μmの球状の複合粒子として電極材料を得た。この複合粒子の重量平均粒径は、粉体測定装置(パウダテスタPT−R:ホソカワミクロン(株)製)を用いて測定した。
【0052】
得られた電極材料を減圧可能な粉体貯留槽とロータリーフィーダーを備えた粉体供給機(ストップレス式ユニバーサル・フィーダー、ロータリー型RO定量フィーダー:三協パイオテク(株)製)の粉体貯留槽に入れ、槽内の圧力を0.03MPaとした。次いで、超音波振動子((株)オステム製)の発振機を粉体貯留槽に取り付け、周波数15KHz、出力1.5kwで発振させた。
【0053】
この粉体供給機を用い、電極材料を供給速度190g/分で、ロールプレス機のプレス用ロール(ロール温度120℃、プレス線圧4kN/cm)に供給した。成形速度0.13m/秒で加圧成形し、平均厚さ390μm、平均密度0.57g/cmのシート状成形体を得た。MD方向の厚さばらつきはσn−1=5.62、TD方向の厚さばらつきはσn−1=4.38であった。
【0054】
実施例2
電極材料の供給を、垂直式スクリューフィーダーを併用して行う他は、実施例1と同様にして成形を行った。すなわち、実施例1で用いた粉体供給機から供給される電極材料を垂直式スクリューフィーダーに供給し、この垂直式スクリューフィーダーからロールプレス機のプレス用ロールに供給した。得られたシート状成形体の平均厚さは387μm、平均密度は0.57g/cmであり、MD方向の厚さばらつきはσn−1=5.54、TD方向の厚さばらつきはσn−1=4.23であった。
【0055】
比較例1
超音波による振動を付与しないこと以外は実施例1と同様にして成形したところ、供給した電極材料の一部がロールにくい込まずにロール上で滞留した。得られたシート状成形体の平均厚さは360μm、平均密度は0.53g/cmであり、MD方向の厚さばらつきはσn−1=8.75、TD方向の厚さばらつきはσn−1=7.98であった。
【0056】
比較例2
超音波による振動を付与しないこと以外は実施例2と同様にして成形したところ、供給した電極材料の一部がロールにくい込まずにロール上で滞留した。得られたシート状成形体の平均厚さは372μm、平均密度は0.55g/cmであり、MD方向の厚さばらつきはσn−1=7.45、TD方向の厚さばらつきはσn−1=6.53であった。
【0057】
以上の実施例および比較例より、本発明の製造方法にしたがって製造した実施例1〜2のシート状成形体は、MD方向及びTD方向共に厚さばらつきが小さく、高密度であることがわかる。特に、TD方向の厚さばらつきが改善されている。これに対して、従来の方法にしたがって製造した比較例1〜2のシート状成形体は、厚さばらつきが大きく、密度が低いことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の電気化学素子電極用シートの製造方法を用いると、膜厚が均一で、電極密度のばらつきが小さい、電気化学素子電極用シートを容易に得ることができる。この電気化学素子電極用シートは、パソコンや携帯端末等のメモリのバックアップ電源、パソコン等の瞬時停電対策用電源、電気自動車又はハイブリッド自動車への応用、太陽電池と併用したソーラー発電エネルギー貯蔵システム、電池と組み合わせたロードレベリング電源等の様々な用途に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】従来の電極用シートの製造装置の一例を示す図。
【図2】本発明の電極用シートの製造装置の一例を示す図。
【符号の説明】
【0060】
1:プレス用ロール
2:電気化学素子電極用シート
3:電極材料
4:仕切板
10:粉体供給機
11:ロータリーフィーダー
12:粉体貯留槽
21:超音波発振機
22:振動子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極材料を、粉体貯留槽およびフィーダーを有し該粉体貯留槽に超音波による振動が付与される粉体供給機によって、略水平に配置された一対のプレス用ロールまたはベルトに連続的に供給し、このプレス用ロールまたはベルトで該電極材料をシート状成形体に成形する工程を含む電気化学素子電極用シートの製造方法。
【請求項2】
前記振動の周波数が1〜50kHzである請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記粉体貯留槽の圧力を0.05MPa以下とすることを特徴とする請求項1または2記載の製造方法。
【請求項4】
前記フィーダーが押送式のフィーダーである請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−95839(P2007−95839A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−280807(P2005−280807)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】