説明

電気伝導度検出器

【課題】 分離カラムから溶出した液に含まれるイオン濃度に対する出力直線性がよく、かつ測定セル容量が小さい電気伝導度検出器を提供すること。
【解決の手段】 平行に設置した二つの作用電極と、前記二つの作用電極と平行、かつ挟まれる位置に設置した二つの測定電極と、前記二つの作用電極の間を埋める絶縁体と、前記二つの作用電極および前記二つの測定電極と接触するように設置した液体を流すための流路とを備え、かつ前記測定電極への電流の出入りが極めて少ない測定セルを有した電気伝導度検出器により、前記課題を解決することができた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気伝導度検出器、特に液体クロマトグラフィーで用いられる電気伝導度検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフィーのうちイオンクロマトグラフィーは、主として無機の陽イオン、無機の陰イオン、有機酸またはアミン類の分離定量に用いられる方法であり、分離カラムにより保持時間差をもって溶出されたイオンは、通常電気伝導度検出器によって溶出されたイオン量を測定する。
【0003】
イオンクロマトグラフィーの分析時間は、カラム分離剤の高性能化や、システム全体の高耐圧化により短縮されているものの、溶出されたイオンの検出に用いる電気伝導度検出器は出力の直線性が低いため、検量線の作成に多くの既知濃度試料による測定が必要である。そのため、前記分離剤やシステムによる分析時間短縮のメリットを活かしきれない。よって、イオンクロマトグラフィーのさらなる分析時間の短縮には、溶出したイオン濃度に対する出力直線性がよく、かつセル容量が小さい電気伝導度検出器が必要である。
【0004】
電気伝導度検出器は通常、平行に設置した二つの電極(11)間に分離カラムから溶出された液が流れる構造からなる測定セル(10)を有しており、前記二つの電極間に電圧を印加したときの電流値を電気伝導度として測定する(図1)。このとき、電極間に直流電圧を印加すると電極周辺で分極が起こり溶液の電気伝導度を正しく検出することができないため、通常は1kHz程度の交流電圧を印加する交流インピーダンス法にて測定する。分離カラムから溶出された液のインピーダンスは溶出液中のイオン濃度に関係するため、交流インピーダンス法では前記関係を利用してイオン濃度を測定する。
【0005】
通常用いられる二つの電極からなる測定セルを有した電気伝導度検出器(図1)では、測定されるインピーダンスは、移動相の電気伝導度によるインピーダンスの他に、電極/電解質界面インピーダンスに依存する。前記界面インピーダンスはイオン濃度が高いほどその割合が増えるため、測定応答性が低下し、検量線の直線性低下の原因となった。
【0006】
電極/電解質界面インピーダンスの影響を低減する方法として、二つの作用電極(12)と二つの測定電極(13)からなる測定セル(図2)を用いる方法があり、前記測定セルを液体クロマトグラフィー用電気伝導度検出器に適用することで、測定電極への電流の出入りが減るため、前記界面インピーダンスの影響を低減することができる(特許文献1)。しかしながら、特許文献1の測定セルを用いても、前記測定電極(13)への電流の出入(70)が存在するため(図2)、イオン濃度によって電流が流れる経路が変化する。
【0007】
また、微量分析および/または高感度分析を行なうことを目的に、特許文献1の測定セル容量を小さくしようとした場合、以下のような問題があった。流路の内径を狭くすることでセル容量を小さくしようとした場合、作用電極(12)、測定電極(13)、ならびに作用電極(12)−測定電極(13)間または測定電極(13)−測定電極(13)間にある絶縁体(14)を貫通する、分離カラムから溶出された液が流れる流路(15)の中心位置合わせが難しくなり、測定セル内部でピークが拡がる問題があった。また、電極(12、13)間隔を狭くすることでセル容量を小さくしようとした場合、測定電極(13)間の長さが短くなることによる、電極/電解質界面インピーダンスの影響の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭57−189052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、分離カラムから溶出した液に含まれるイオン濃度に対する出力直線性がよく、かつ測定セル容量が小さい液体クロマトグラフィー用電気伝導度検出器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を鑑みてなされた本発明は、以下の発明を包含する:
第一の発明は、
平行に設置した二つの作用電極と、
前記二つの作用電極と平行、かつ挟まれる位置に設置した二つの測定電極と、
前記二つの作用電極の間を埋める絶縁体と、
前記二つの作用電極および前記二つの測定電極と接触するように設置した、液体を流すための流路と、
を備えた測定セルを有した液体クロマトグラフィー用電気伝導度検出器において、
前記測定電極への電流の出入りが極めて少ないことを特徴とする、液体クロマトグラフィー用電気伝導度検出器である。
【0011】
第二の発明は、
平行に設置した二つの作用電極と、
前記二つの作用電極と平行、かつ挟まれる位置に設置した二つの測定電極と、
前記二つの作用電極の間を埋める絶縁体と、
前記二つの作用電極および前記二つの測定電極と接触するように設置した、液体を流すための流路と、
を備えた測定セルを有した液体クロマトグラフィー用電気伝導度検出器において、
前記測定セルにおける、前記測定電極と流路との接触領域の長さが、前記二つの測定電極の間隔および/または流路の内径と比較し十分に短いことを特徴とする、液体クロマトグラフィー用電気伝導度検出器である。
【0012】
第三の発明は、
平行に設置した二つの作用電極と、
前記二つの作用電極と平行、かつ挟まれる位置に設置した二つの平板測定電極と、
前記作用電極と測定電極との間を埋める二つの絶縁体と、
前記二つの平板測定電極の間を埋める絶縁体と、
前記二つの作用電極、前記二つの平板測定電極、および前記三つの絶縁体を貫通する、液体を流すための流路と、
を備えた測定セルを有した液体クロマトグラフィー用電気伝導度検出器において、
前記測定セルにおける、前記平板測定電極と流路との接触領域の長さが、前記二つの平板測定電極の間を埋める絶縁体と流路との接触領域の長さおよび/または前記流路の内径より十分に短いことを特徴とする、液体クロマトグラフィー用電気伝導度検出器である。
【0013】
第四の発明は、前記平板測定電極と流路との接触領域の長さが、前記二つの平板測定電極の間を埋める絶縁体と流路との接触領域の長さおよび/または前記流路の内径の1/5以下であることを特徴とする、第三の発明に記載の電気伝導度検出器である。
【0014】
第五の発明は、
平行に設置した二つの作用電極と、
前記二つの作用電極と平行、かつ挟まれる位置に設置した二つの棒状または針状測定電極と、
前記二つの作用電極の間を埋める絶縁体と、
前記二つの作用電極および前記絶縁体を貫通し、かつ前記二つの測定電極の一端と接触可能な、液体を流すための流路と、
を備えた測定セルを有した液体クロマトグラフィー用電気伝導度検出器において、
前記測定セルにおける、前記測定電極の外径が前記測定電極間の間隔および/または前記流路の内径に対して十分に短いことを特徴とする、液体クロマトグラフィー用電気伝導度検出器である。
【0015】
第六の発明は、前記二つの作用電極の外側に、片側に一つまたは両側に一対の電極をさらに設置した測定セルを有した、第二から第五の発明に記載の電気伝導度検出器である。
【0016】
第七の発明は、前記二つの測定電極間に位置する絶縁体の外表面に、一つまたは二つの電極をさらに設置した測定セルを有した、第二から第六の発明に記載の電気伝導度検出器である。
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0018】
本発明の電気伝導度検出器用測定セルにおける作用電極の形状は、液体が流れる流路が貫通する形状であれば特に限定はなく、一例として他の配管と接続するためのジョイントを含むブロック形状からなる作用電極をあげることができる。また、測定電極の形状についても特に限定されないが、一般的には厚さが一定で貫通孔が開いた平板電極、外径が一定の棒状電極、一端が針状になった針状電極などが用いられる。
【0019】
本発明の電気伝導度検出器用測定セルにおける作用電極および測定電極の材質は、導電性を有し、かつ液体クロマトグラフィーで用いる移動相に対して耐性を有する材質であればよく、ステンレス鋼、金、白金などを例示できる。また、本発明の電気伝導度検出器用測定セルにおける絶縁体の材質は、絶縁性を有し、かつ液体クロマトグラフィーで用いる移動相に対して耐性を有する材質であればよく、一般にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などが用いられる。
【0020】
次に、本発明における二つの測定電極と流路との接触領域の長さについて説明する。測定電極として平板電極を用いたときは、測定電極を流路が貫通した部分における、液体が流れる方向に対する長さのことをいい、前記電極の平面と前記液体が流れる方向とが直交する場合は、前記電極の厚さがそのまま接触領域の長さとなる。測定電極として棒状または針状電極を用いたときは、前記電極と流路とが接触した部分における前記液体の流れる方向に対する長さのことをいい、前記電極の軸と前記液体が流れる方向とが直交する場合は、前記電極と接触する部分の外径がそのまま接触領域の長さとなる。
【0021】
接触領域の長さは短いほどよく、特に二つの測定電極の間隔および/または流路の内径と比較し十分に短いと、特許文献1で開示の従来の測定セルと比較し測定電極間への電流の出入りを低減させることができる。特に、測定電極として平板電極を用いたときは、前記接触領域の長さが前記電極間を埋める絶縁体と流路との接触領域の長さおよび/または前記電極を貫通する流路の内径に対して1/5以下であると、測定電極として棒状または針状電極を用いたときは、前記電極の外径が前記電極間の間隔および/または前記電極と接触する流路の内径に対して1/5以下であると、測定電極間への電流の出入りをさらに低減させることができるため、好ましい。
【0022】
本発明の電気伝導度検出器用測定セルの別の態様として、測定セルのうち二つの測定電極が、流路の液体が流れる方向に対して窪んだ位置に配置されている測定セルをあげることができる。前記測定セルの例として、測定電極が平板電極の場合は、平板測定電極を貫通する流路の内径を前記二つの平板測定電極の間を埋める絶縁体の貫通する流路の内径より大きくした測定セルを、測定電極が棒状または針状電極の場合は、液体が流れる流路(主流路)から分岐し、かつ前記測定電極と接触する枝流路を備えた測定セルをあげることができる。
【0023】
本発明の電気伝導度検出器用測定セルのさらに別の態様として、
平行に設置した二つの作用電極と、
前記二つの作用電極と平行、かつ挟まれる位置に設置した二つの測定電極と、
前記二つの作用電極の間を埋める絶縁体と、
前記二つの作用電極および前記二つの測定電極と接触するように設置した液体を流すための流路を備え、
前記二つの測定電極が、前記流路の液体が流れる方向に対して窪んだ位置に設置しており、
前記測定電極と流路との接触領域の長さが、前記二つの測定電極の間隔および/または前記絶縁体を貫通する流路の内径より十分に短い電気伝導度検出器用測定セルがあげられる。
【0024】
なお、本発明の電気伝導度検出器用測定セルにおいて、二つの作用電極の外側に、片側に一つまたは両側に一対の電極をさらに設置する、および/または二つの測定電極間に位置する絶縁体の外表面に、一つまたは二つの電極をさらに設置して所定の電圧を加えると、流路以外を流れる漏れ電流の影響を低減することができるため、さらに好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明の液体クロマトグラフィー用電気伝導度検出器は、二つの作用電極と二つの測定電極を備え、かつ前記測定電極への電流の出入りが極めて少ない測定セルを有していることを特徴としており、従来の二つの作用電極と二つの測定電極を備えた測定セルと比較し、イオン濃度変化による電流経路の変化が低減している。したがって、従来の二つの作用電極と二つの測定電極を備えた測定セルと比較し、高濃度イオン溶液を測定した場合の出力直線性が向上し、結果として検量線の直線性が向上した電気伝導度検出器を提供することができる。
【0026】
また本発明の電気伝導度検出器は、液体を流すための流路を短くしても検量線の直線性が低下しないため、流路の内径を狭くすることなく、測定セルを小型化することができる。よって、測定セル内部でピークが拡がる問題がなく、微量かつ高感度な分析が可能な電気伝導度検出器を提供することができる。
【0027】
さらに、前記測定セルの有する二つの作用電極の外側に、片側に一つまたは両側に一対の電極をさらに設置したり、前記測定セルの有する二つの測定電極間に位置する絶縁体の外表面に、一つまたは二つの電極をさらに設置したりすると、流路以外を流れる漏れ電流の影響を低減することができるため、さらに高感度/高精度な分析が可能な電気伝導度検出器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】二つの電極を備えた測定セルを有した、従来の電気伝導度検出器の模式図。
【図2】二つの作用電極および二つの測定電極を備えた、従来の電気伝導度検出器に用いる測定セルの模式図(特許文献1)。
【図3】本発明の電気伝導度検出器の一態様を示す図。
【図4】本発明の電気伝導度検出器の一態様を示す図。
【図5】本発明の電気伝導度検出器の一態様を示す図。
【図6】本発明の電気伝導度検出器の一態様を示す図。
【図7】図3または図1の検出器を用いてKCl水溶液を測定した結果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面に基づき本発明をさらに詳細に説明する。
【0030】
本発明の電気伝導度検出器の第一の態様を図3に示す。
【0031】
図3に示す検出器のうち測定セル(10)は、二つの作用電極(12)と二枚の平板測定電極(13)を備えており、作用電極(12)と測定電極(13)の間、および二枚の測定電極(13)の間は絶縁体(14)で埋められている。二つの作用電極(12)のうちの一つは分離カラムから溶出した液が流れる配管と接続するためのジョイントを含んだブロック形状をしており、もう一つは測定セル(10)を通過した分離カラムから溶出した液を廃液タンク、または別の分析装置/分析カラム等に流すための配管と接続するためのジョイントを含んだブロック形状をしている。二つの作用電極(12)には分離カラムから溶出した液を流すための流路(15)を備えており、前記流路(15)は二つの作用電極(12)、二枚の測定電極(13)および絶縁体(14)を同軸方向に貫通するように設置し、分離カラムから溶出した液が測定セル(10)内に流れるようにする。二枚の測定電極(13)は、分離カラムから溶出した液が流れる方向と直交する方向に設置している。なお、図3における測定電極(13)は流路(15)との接触領域が小さいほど好ましく、測定電極(13)と流路(15)との接触領域の長さ、すなわち測定電極(13)で使用する平板の厚さが0.1mm以下とすると特に好ましい。
【0032】
図3に示す検出器のうち、差動アンプ(20)および電流検出アンプ(50)は、測定セル(10)を流れる、分離カラムから溶出した液に対し、入力インピーダンスが十分高いアンプ、例えばインスツルメンテーションアンプを使用すればよい。
【0033】
図3に示す検出器のうち、電圧発振部(30)は、電気伝導度が測定可能であれば特に制限はないが、周波数1kHz程度の正弦波発信回路を用いると、測定セル(10)を流れる、分離カラムから溶出した液の分極の影響が低減可能なため好ましい。なお、電圧発振部(30)の発振振幅は測定電極間の電位差が一定となるようにフィードバックすることで、電流検出器抵抗(40)の端子間電圧は電解液の電気伝導度に比例した値となる。
【0034】
本発明の電気伝導度検出器の第二の態様を図4に示す。なお、図4のうち測定セル(10)以外の構成は図3の検出器と同様である。
【0035】
図4に示す検出器のうち測定セル(10)は、二つの作用電極(12)と二本の針状測定電極(13)を備えており、二つの作用電極(12)の間は絶縁体(14)で埋められており、測定電極(13)も前記絶縁体(14)で覆われている。二つの作用電極(12)のうちの一つは分離カラムから溶出した液が流れる配管と接続するためのジョイントを含んだブロック形状をしており、もう一つは測定セル(10)を通過した分離カラムから溶出した液を廃液タンク、または別の分析装置/分析カラム等に流すための配管と接続するためのジョイントを含んだブロック形状をしている。二つの作用電極(12)には分離カラムから溶出した液を流すための流路(15)を備えており、前記流路(15)は二つの作用電極(12)および絶縁体(14)を同軸方向に貫通するように設置することで、分離カラムから溶出した液が測定セル(10)内に流れるようにする。また、前記流路(15)と二本の測定電極(13)の一端とが接触するように設置する。二本の測定電極(13)は、その軸が分離カラムから溶出した液が流れる方向と直交するように設置する。なお、図4における測定電極(13)は接触領域の長さが小さいほど好ましく、測定電極(13)と流路(15)との接触面積が0.01mm以下とすると特に好ましい。
【0036】
本発明の電気伝導度検出器の第三の態様を図5に示す。なお、図5のうち測定セル(10)以外の構成は図3の検出器と同様である。
【0037】
図5に示す検出器のうち測定セル(10)は、二つの作用電極(12)と二枚の平板測定電極(13)を備えており、作用電極(12)と測定電極(13)の間、および二枚の測定電極(13)の間は絶縁体(14)で埋められている。二つの作用電極(12)のうちの一つは分離カラムから溶出した液が流れる配管と接続するためのジョイントを含んだブロック形状をしており、もう一つは測定セル(10)を通過した分離カラムから溶出した液を廃液タンク、または別の分析装置/分析カラム等に流すための配管と接続するためのジョイントを含んだブロック形状をしている。二つの作用電極(12)には分離カラムから溶出した液を流すための流路(15)を備えており、前記流路(15)は二つの作用電極(12)、二枚の測定電極(13)および絶縁体(14)を貫通するように設置し、分離カラムから溶出した液が測定セル(10)内に流れるようにする。二枚の測定電極(13)は、分離カラムから溶出した液が流れる方向と直交する方向に設置している。二枚の測定電極(13)を貫通する流路(15)の内径は、作用電極(12)と測定電極(13)の間および二枚の測定電極(13)の間を埋める絶縁体を貫通する流路(15)の内径よりも大きくしている。前記構成により、従来の二つの作用電極と二つの測定電極を備えた測定セルと比較し、個々の測定電極(13)への電流の出入が低減するため、イオン濃度変化による電流経路の変化を低減させることができる。なお、図5における測定電極(13)を貫通する流路(15)の内径が前記二枚の測定電極(13)の間を埋める絶縁体(14)を貫通する流路(15)の内径より測定電極(13)で使用する平板の厚さの1/2以上大きいと、より好ましい。さらに、図5における測定電極(13)は流路(15)との接触領域が小さいほど好ましく、測定電極(13)と流路(15)との接触領域の長さ、すなわち測定電極(13)で使用する平板の厚さが0.1mm以下とすると特に好ましい。
【0038】
本発明の電気伝導度検出器の第四の態様を図6に示す。なお、図6のうち測定セル(10)以外の構成は図3の検出器と同様である。
【0039】
図6に示す検出器のうち測定セル(10)は、二つの作用電極(12)と二本の針状測定電極(13)を備えており、二つの作用電極(12)の間は絶縁体(14)で埋められており、測定電極(13)も前記絶縁体(14)で覆われている。二つの作用電極(12)のうちの一つは分離カラムから溶出した液が流れる配管と接続するためのジョイントを含んだブロック形状をしており、もう一つは測定セル(10)を通過した分離カラムから溶出した液を廃液タンク、または別の分析装置/分析カラム等に流すための配管と接続するためのジョイントを含んだブロック形状をしている。二つの作用電極(12)には分離カラムから溶出した液を流すための主流路(15)を備えており、主流路(15)は二つの作用電極(12)および絶縁体(14)を貫通するように設置することで、分離カラムから溶出した液が測定セル(10)内を流れるようにする。また、二本の測定電極(13)の一端と主流路(15)とを接続するための枝流路(16)も備えている。二本の測定電極(13)および前記枝流路(16)の軸は、前記主流路(15)の軸と直交するように設置する。前記構成により、従来の二つの作用電極と二つの測定電極を備えた測定セルと比較し、個々の測定電極(13)への電流の出入が低減するため、イオン濃度変化による電流経路の変化を低減させることができる。なお、図6における枝流路(16)の長さが、測定電極(13)の外径の1/2以上あると、より好ましい。さらに、図6における測定電極(13)は接触領域の長さが小さいほど好ましく、測定電極(13)と流路(15)との接触面積が0.01mm以下とすると特に好ましい。
【実施例】
【0040】
以下、実施例に基づいて、本発明をさらに詳細に説明するが、これらは本発明の一実施形態であり、本発明を限定するものではない。
【0041】
実施例1
図3に示す電気伝導度検出器を用いて、様々な濃度のKCl水溶液を測定した。
【0042】
図3に示す検出器のうち、作用電極(12)および平板測定電極(13)の材質は316ステンレス鋼(SUS316)を、絶縁体(14)の材質はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)とした。二枚の測定電極(13)の間を埋める絶縁体(14)の厚さは1.0mm、作用電極(12)と測定電極(13)との間を埋める絶縁体(14)の厚さは0.2mmとした。作用電極(12)、測定電極(13)および絶縁体(14)を貫通する流路(15)の内径は0.8mmとした。電圧発振部(30)は、周波数1kHzの正弦波を測定電極(13)間の振幅が常に1V一定となるように出力した。
【0043】
前記検出器において、二枚の測定電極(13)の厚さを0.012mm、0.1mm、0.2mm、0.5mm、1.0mmとした測定セル(10)、および図1に示す二つの電極からなる測定セルを用いて、既知濃度のKCl溶液を測定セル(10)に流した場合の検出器出力を測定した。
【0044】
上記測定セルを用いたときの、KCl水溶液濃度と検出器出力との関係をプロットしたときの結果を図7に示す。なお、図7において横軸はKCl濃度(mM)を、縦軸は検出器出力を1mMの出力が1となるように規格化した値を示す。二つの電極からなる測定セル(図7の2極電極、図1の10)よりも、二つの参照電極と二つの測定電極からなる測定セル(図7の4極電極、図3の10)のほうがKCl濃度に対する検出器出力の直線性が良好であった。また、測定電極(13)の厚さを薄くするほど、KCl濃度に対する検出器出力の直線性が良好であり、特に測定電極(13)の厚さが、二枚の測定電極(13)の間を埋める絶縁体(14)の厚さおよび/または流路(15)の内径の1/5以下のとき(0.2mm以下)が良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の液体クロマトグラフィー用電気伝導度検出器は、従来の検出器と比較し、イオン濃度変化による電流経路の変化が低減している。その結果、高濃度イオン溶液を測定した場合の出力直線性が向上し、結果として検量線の直線性が向上した電気伝導度検出器を提供することができる。また、本発明の電気伝導度検出器は、流路の内径を狭くすることなく、測定セルを小型化することができる。以上より、前記装置を用いることでイオンクロマトグラフィーの微量かつ高感度な分析が可能となる。
【符号の説明】
【0046】
10 測定セル
11 電極
12 作用電極
13 測定電極
14 絶縁体
15 流路
20 差動アンプ
30 電圧発振部
40 電流検出抵抗
50 電流検出アンプ
60 電圧検出部
70 電気力線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行に設置した二つの作用電極と、
前記二つの作用電極と平行、かつ挟まれる位置に設置した二つの測定電極と、
前記二つの作用電極の間を埋める絶縁体と、
前記二つの作用電極および前記二つの測定電極と接触するように設置した、液体を流すための流路と、
を備えた測定セルを有した液体クロマトグラフィー用電気伝導度検出器において、
前記測定電極への電流の出入りが極めて少ないことを特徴とする、液体クロマトグラフィー用電気伝導度検出器。
【請求項2】
平行に設置した二つの作用電極と、
前記二つの作用電極と平行、かつ挟まれる位置に設置した二つの測定電極と、
前記二つの作用電極の間を埋める絶縁体と、
前記二つの作用電極および前記二つの測定電極と接触するように設置した、液体を流すための流路と、
を備えた測定セルを有した液体クロマトグラフィー用電気伝導度検出器において、
前記測定セルにおける、前記測定電極と流路との接触領域の長さが、前記二つの測定電極の間隔および/または流路の内径と比較し十分に短いことを特徴とする、液体クロマトグラフィー用電気伝導度検出器。
【請求項3】
平行に設置した二つの作用電極と、
前記二つの作用電極と平行、かつ挟まれる位置に設置した二つの平板測定電極と、
前記作用電極と測定電極との間を埋める二つの絶縁体と、
前記二つの平板測定電極の間を埋める絶縁体と、
前記二つの作用電極、前記二つの平板測定電極、および前記三つの絶縁体を貫通する、液体を流すための流路と、
を備えた測定セルを有した液体クロマトグラフィー用電気伝導度検出器において、
前記測定セルにおける、前記平板測定電極と流路との接触領域の長さが、前記二つの平板測定電極の間を埋める絶縁体と流路との接触領域の長さおよび/または前記流路の内径より十分に短いことを特徴とする、液体クロマトグラフィー用電気伝導度検出器。
【請求項4】
前記平板測定電極と流路との接触領域の長さが、前記二つの平板測定電極の間を埋める絶縁体と流路との接触領域の長さおよび/または前記流路の内径の1/5以下であることを特徴とする、請求項3に記載の電気伝導度検出器。
【請求項5】
平行に設置した二つの作用電極と、
前記二つの作用電極と平行、かつ挟まれる位置に設置した二つの棒状または針状測定電極と、
前記二つの作用電極の間を埋める絶縁体と、
前記二つの作用電極および前記絶縁体を貫通し、かつ前記二つの測定電極の一端と接触可能な、液体を流すための流路と、
を備えた測定セルを有した液体クロマトグラフィー用電気伝導度検出器において、
前記測定セルにおける、前記測定電極の外径が前記測定電極間の間隔および/または前記流路の内径に対して十分に短いことを特徴とする、液体クロマトグラフィー用電気伝導度検出器。
【請求項6】
前記二つの作用電極の外側に、片側に一つまたは両側に一対の電極をさらに設置した測定セルを有した、請求項2から5に記載の電気伝導度検出器。
【請求項7】
前記二つの測定電極間に位置する絶縁体の外表面に、一つまたは二つの電極をさらに設置した測定セルを有した、請求項2から6に記載の電気伝導度検出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−13044(P2011−13044A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−156253(P2009−156253)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】