説明

電気光学素子及びその製造方法、並びに、電気光学素子を用いた光偏向装置

【課題】偏向光の偏向角の増大を図りつつ偏向光の解像点数を高めることができる電気光学素子及びその製造方法並びに光偏向装置を提供する。
【解決手段】電気光学材料からなる光導波層11は、屈折率を電気的に制御可能な少なくとも一つの屈折プリズムが形成された第一の領域101と、光導波層11を伝播する光に対する回折を電気的に制御可能な回折格子が形成された第二の領域とを有する。上部電極12及び下部電極13は、第一の領域101における屈折プリズムと第二の領域102における回折格子とに対し、互いに独立に電圧を印加可能に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学材料を用いた電気光学素子及びその製造方法、並びに、その電気光学素子を用いた光偏向装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
物質に電界を印加することによってその屈折率が変化する効果は電気光学効果(EO効果)と呼ばれる。この電気光学効果は、光通信で用いられる強度変調器や、レーザー発進のパルス動作を得るためのQスイッチ素子、また光の進行方向を制御する光偏向器などに用いられている。
【0003】
電気光学効果による屈折率nの変化Δnは、1次のポッケルス効果の場合、次式(1)式で与えられる。ここで、rijは電気光学定数(ポッケルス定数)、Vは印加電圧、dは電圧を印加する電極の間隔である。
【数1】

【0004】
電気光学効果を発生させる強誘電体材料としては、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、タンタル酸リチウム(LiTaO)、KTP(KTiOPO)、SBN、KTNなどの電気光学材料が挙げられる。これらの電気光学材料は安価でロバスト性が高く、光変調器や光偏向素子などに応用されている。特に、電気光学効果は原理的に応答速度が極めて速いため、電気光学効果を利用した光偏向素子は高速なビーム走査に有効である。また、電気光学材料(EO材料)に印加する電圧に応じて走査角度を任意に制御できるため、光ビームに対して瞬時に所望の偏向角度を与えることができる。
【0005】
従来、電気光学素子を用いた光偏向素子において偏向角を大きく取るため、電気光学材料にプリズム型の分極反転領域(以下「プリズム領域」という。)を形成し、そのプリズム領域に電圧を印加することにより各プリズム領域とその周囲との間での屈折率差を大きくし、偏向角を増加させるプリズムドメイン反転光偏向素子が提案されている(例えば、非特許文献1、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来のプリズム型の分極反転領域を形成した光偏向素子は、他のポリゴンミラーやMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラーなどの光偏向素子と比べて解像点数(=偏向角/ビーム広がり角)が小さいという問題点がある。例えば、汎用的なポリゴンミラーの解像点数は10000点程度であるが、特許文献1に記載されている電気光学素子(光偏向素子)の解像点数は100点程度である。
【0007】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、偏向光の偏向角の増大を図りつつ偏向光の解像点数を高めることができる電気光学素子及びその製造方法並びに光偏向装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、電気光学材料からなる光導波層と、前記光導波層の上面及び下面それぞれに形成された上部電極及び下部電極とを備え、前記光導波層を光が伝播可能な電気光学素子であって、前記光導波層は、屈折率を電気的に制御可能な少なくとも一つの屈折プリズムが形成された第一の領域と、該光導波層を伝播する光に対する回折を電気的に制御可能な回折格子が形成された第二の領域とを有し、前記上部電極及び下部電極は、前記第一の領域における屈折プリズムと、前記第二の領域における回折格子とに対し、互いに独立に電圧を印加可能に形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、光導波層に入射してきた光を、第2の領域の回折格子でビームの広がりを抑えながら回折するとともに第1の領域の屈折プリズムで屈折させて偏向することができるので、偏向光の偏向角の増大を図りつつ偏向光の解像点数を高めることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る光偏向素子(電気光学素子)の概略構成例を示す斜視図。
【図2】光偏向素子の概略構成平面図。
【図3】他の構成例に係る光偏向素子の概略構成平面図。
【図4】更に他の構成例に係る光偏向素子の概略構成平面図。
【図5】同光偏向素子のホーン型の分極反転プリズム領域の拡大図。
【図6】更に他の構成例に係る光偏向素子の概略構成平面図。
【図7】同光偏向素子のブレーズ型回折格子の模式図。
【図8】同ブレーズ型回折格子における光の波長と光回折効率との関係を示すグラフ。
【図9】更に他の構成例に係る光偏向素子の概略構成平面図。
【図10】導波路型の光偏向素子(電気光学素子)の全体構成の一例を示す斜視図。
【図11】導波路型の光偏向素子(電気光学素子)を用いた光偏向装置の一例を示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る電気光学素子としての光偏向素子の概略構成例を示す斜視図である。本実施形態に係る光偏向素子10は、電気光学材料である強誘電体からなる光導波層11と、光導波層11の上面及び下面それぞれに形成された上部電極(上部電極層)12(121、122)及び下部電極(下部電極層)13と、上部電極12(121、122)と下部電極13との間に所定の電圧を印加する電源15とを備えている。
【0012】
図2は、光導波層に複数の屈折プリズムを有する構成例に係る光偏向素子の平面図である。図示のように、光偏向素子10の光導波層11は、屈折率を電気的に変化させるように制御可能な少なくとも一つの屈折プリズムが形成された第一の領域101と、光導波層11を伝播する光に対する回折を電気的に制御可能な回折格子114が形成された第二の領域102とを有する。本例では、第一の領域101に、複数(図示の例では3つ)の屈折プリズム110A、110B、110Cが光伝播方向に並ぶように形成されている。
【0013】
上部電極12は、第一の領域101の複数の屈折プリズム110A〜110Cそれぞれに電圧を印加するための複数の第一の上部電極121と、第二の領域102の回折格子120に電圧を印加するための第二の上部電極122とで構成されている。上部電極121、122それぞれと下部電極13との間に所定の直流電圧または交流電圧からなる信号を印加すると、光導波層11を構成する電気光学材料の結晶内部の電圧が印加された部分に1次の電気光学効果(EO効果)が発現し、その部分の屈折率が変化する。ここで、第一の領域101の上部電極121の形状をプリズム形状にしておくことで、結晶内に擬似的なプリズムを形成することができるため、伝播する光が第一の領域101で屈折する。さらに、第二の領域102の上部電極122の形状を矩形周期形状にすることで、結晶内に擬似的な回折格子114を形成することができるため、伝播する光が第二の領域102で回折する。以上の結果、出射光を第一の領域101における屈折および第二の領域102における回折によって偏向させることができる。
【0014】
光導波層11を構成する電気光学材料としてはは、ニオブ酸リチウム(LiNbO),タンタル酸リチウム(LiTaO),KTP,SBN,KTN,KTNなどを用いることができる。これらの電気光学材料は強誘電体であり、外部電場を加えなくても分極した自発分極を有している。これらの強誘電体からなる電気光学材料のうち、本実施形態の電気光学素子の光導波層11には、光損傷耐性の高い酸化マグネシウム添加二オブ酸リチウム(MgO:LiNbO)を用いている。酸化マグネシウム添加二オブ酸リチウムは、酸化マグネシウム(MgO)を所定濃度で添加して作製した二オブ酸リチウムの結晶である。酸化マグネシウム添加ニオブ酸リチウムの酸化マグネシウム濃度は例えば4.5mol%〜5.5mol%の範囲が好ましいが、その中でも5mol%が好適である。この酸化マグネシウム添加二オブ酸リチウムの単結晶は、例えば、引き上げ法、ブリッジマン法、フローティングゾーン法などの結晶育成方法により、ニオブ酸リチウムの融液に上記所定濃度の範囲で酸化マグネシウム(MgO)を加えて育成することができる。このように育成された酸化マグネシウム添加二オブ酸リチウムの単結晶のインゴットを所定の結晶面で板状に切断することにより、酸化マグネシウム添加二オブ酸リチウムの基板を得ることができる。
【0015】
次に、電気光学効果(EO効果)を利用した具体的な光ビーム偏向素子の動作原理をより詳細に説明する。電気光学材料の表面および裏面に、電界を形成するための1対の電極(上部電極、下部電極)が互いに対向させて配置される。この1対の電極(上部電極、下部電極)を通じて所定の電圧を印加すると、電気光学材料の分極軸に平行な電界が形成され、電気光学効果により、その電界形成部分の屈折率が変化する。ポッケルス効果による屈折率変化を利用する場合、電気光学材料の屈折率nの変化量Δnは、前述のとおり、次式(1)式で与えられる。ここで、rijは電気光学定数(ポッケルス定数)、Vは印加電圧、dは電圧を印加する電極の間隔である。
【数2】

【0016】
光ビームが伝播する第一の領域101に形成される上部電極121の形状すなわち光導波層11の厚さ方向に直交する断面における上部電極121の形状は、正三角形である。この正三角形の上部電極121は、光導波層11内に屈折プリズムを形成するために用いられるので、「プリズム電極」と呼ばれる場合もある。この正三角形の上部電極(プリズム電極)121を光伝播方向に複数形成すると、出射光の偏向角は各上部電極121に対応する分極反転領域での屈折角の足し合わせとなるため、出射光Loutの偏向角を増加させることが可能である。また、上記複数の三角形の上部電極121に電圧を印加すると、各上部電極121と下部電極13との間に形成される複数の屈折率変化領域それぞれの断面も三角形状となる。この複数の屈折率変化領域それぞれが光導波層11を伝播する光ビームに対して屈折プリズムとして機能する。すなわち、屈折率変化領域である屈折プリズムを光が伝播するにしたがって、光ビームは図中のX軸方向に偏向角を与えられる。光偏向素子10から出力される光ビーム(レーザビーム)が与えられる偏向角θは、光導波層11に用いる電気光学材料の屈折率変化量Δnに比例し、次式(2)で表される。ここで、Lは複数の屈折プリズムの全体の長さ、Dはプリズム幅である。
【数3】

【0017】
上記式(1)および式(2)より、光偏向素子10から出射される光の偏向角θは印加電圧に比例する。したがって、光偏向素子の電極に印加する印加電圧を制御することにより、任意の偏向角θに光ビーム(レーザビーム)を偏向して出力させることができる。
【0018】
一方、光ビームが伝播する第二の領域102では、回折格子を形成するため、上部電極122の形状が、複数の矩形が所定の周期(以下、「矩形周期」という。)で並んだ矩形周期形状になっている。この回折格子の回折角度θは、次式(3)で示すブラッグ回折式で与えられる。ここで、dは矩形周期であり、回折角度θは矩形周期と波長λに依存する。
【数4】

【0019】
図3は、光導波層に複数の屈折プリズムを有する他の構成例に係る光偏向素子の概略構成例を示す平面図である。電気光学材料は一般的にその分極軸を制御することが可能である。本構成例では、複数(本例では三つ)のプリズム形状の分極反転領域かなる分極反転プリズム領域を持たせている。そして、この分極反転プリズム領域の全体を覆った上部電極121’を通じて光偏向素子10に所定の電圧を印加することにより、電気光学材料からなる光導波層11内に複数のプリズム状の屈折率変化領域である屈折プリズム110A〜110Cを形成することができる。上記分極反転プリズム領域とその周辺の他の領域で屈折率変化の符号が異なることから、電気光学材料からなる光導波層11内に複数の屈折プリズムが備わることと同じ効果が発現する。光偏向素子10の入射端面10Aから入力された光ビームLinの伝播方向は、複数の屈折プリズム110A〜110CによってX軸方向に傾けられ、偏向した光ビームLoutが、光偏向素子10の出射端10Bから出力される。
【0020】
図3の構成例の場合、電気光学材料の分極反転によって屈折率変化の符号が反転することにより、屈折率nの変化量Δnは、前述の図2で示したプリズム状電極121を形成した場合の屈折率変化量の2倍となり、光偏向素子10からの出射角(偏向角)θは、次式(4)で与えられる。
【数5】

【0021】
また、第二の領域102においても、光回折効率の観点から、厚さ方向と直交する断面における形状が矩形(短冊形状)である複数の分極反転領域が光伝播方向と直交する方向に所定の周期で並んだ回折格子115を形成し、それを覆うように上部電極122を形成するのが好ましい。
【0022】
次に、図3の光偏向素子10における光導波層11を構成する電気光学材料内で分極反転領域を形成する方法について説明する。
上記酸化マグネシウム添加二オブ酸リチウム等の強誘電体は、前述のように外部電場を加えなくても分極した自発分極を有している。一般に、強誘電体において分極の方向が一方向に揃った領域を「分域」(ドメイン)という。特に、一つの強誘電体の結晶が全体にわたって一方向に分極している結晶構造を「単分域構造」といい、一つの強誘電体の結晶の中に分極の方向が互いに異なる複数の分域が存在している結晶構造を「多分域構造」という。例えば、本実施形態に係る電気光学素子10の光導波層11に用いる強誘電体の結晶基板は、分極反転領域を形成する前の状態では基板全体にわたって分極方向が一方向に揃った単分域構造をしている。一方、分極反転領域を形成した後の状態では、基板中に形成された分極反転領域とその周囲の領域は分極方向が互いに異なる別々の分域を形成し、結晶基板は多分域構造になる。一般に、分極方向が互いに異なる二つの分域の境界は、「分域壁」(ドメイン壁)と呼ばれる。
【0023】
図3では、紙面手前側の方向が結晶のZ軸になっている。一様に分極している単分域構造の強誘電体の一部に所定の電界を印加し、その分極を反転させた分極反転領域を形成する場合、まず分極が反転した小さなサイズの分域が反転核として発生する。この反転核は結晶面で囲まれた形状をしている。そして、反転核として発生した分域が、周囲との境界にある分域壁に対して垂直方向に広がり、最終的に、電界が印加された領域の全体が、その電界によって分極反転した一つの分域である分極反転領域になる。
【0024】
より具体的には、上記光導波層11における分極反転領域110A〜110Cは、例えば、以下の(1)〜(3)に示す分極反転プロセスで形成することができる。
(1)酸化マグネシウム添加ニオブ酸リチウムの結晶からなる電気光学基板(例えば、株式会社山寿セラミックス製の直径φ3mmのZ板,厚さ:t=300μm)の+Z面(上面)に、スピンコーティングにより、厚さ2μmのフォトレジスト膜を作製する。
(2)フォトリソグラフィーにより、正三角形の分極反転領域110A〜110Cに対応する部分に、フォトレジスト膜の開口を形成したレジストパターンを形成する。このレジストパターンは、光入射面及び光出射面に対応する2つの辺が酸化マグネシウム添加ニオブ酸リチウムの結晶面(X面)と平行になるように形成される。
(3)直接電界印加法により、酸化マグネシウム添加ニオブ酸リチウム結晶に分極反転領域を形成する。具体的な手順としては、例えば、次にa〜dのように行う。
a.結晶を分極反転用の冶具に取り付けて、結晶の上下面(±Z面)を液体電極で浸す。結晶の周囲に液体電極が漏れると結晶に正確な電圧がかからないため、結晶の周囲を絶縁油(フロリナートに浸し、上下面が導通しないようにする。
b.反転核の発生確率を上げるために結晶の温度を所定温度(例えば、45℃)に上げる。
c.+Z面の液体電極をHOT側の電極、−Z面の液体電極をGND側の電極として電圧発生源を接続し、酸化マグネシウム添加ニオブ酸リチウムの抗電界に対応する電圧を結晶に印加する。
d.電圧印加中は結晶に流れる電流を計測しておく。酸化マグネシウム添加ニオブ酸リチウムの自発分極は0.78μC/mmであることが一般的に知られており、この値と所望の分極反転面積から分極反転時に流れる流入電荷量を決定できる。計測した電流を積分して流入電荷量をリアルタイムで算出していき、それが所望の値を超えたら電圧をOFFにする。
以上により、基板内に正三角形の分極反転領域110A〜110Cが形成され、光導波層11として用いることができる。
【0025】
なお、上記直接電界印加法では、上記レジストパターンの開口の端縁から外側に所定距離だけ外側に広がった分極反転領域110A〜110Cが形成される結果が得られた。例えば、酸化マグネシウム添加ニオブ酸リチウムの電気光学基板の4つのサンプルについて、分極反転領域110を作製したときの上記レジストパターンの開口の端縁からの広がり量を測定したところ、平均で約30μm程度の外側に広がっていた。そこで、上記直接電界印加法によって形成される分極反転領域110の広がり量を予め実験等で測定し、上記レジストパターンの開口を、上記測定した広がり量に対応させて設定した所定サイズだけ所望の目標形状よりも小さく作製するのが望ましい。例えば、上記レジストパターンの開口を、30μmだけ内側に小さくして作製するのが好ましい。
【0026】
また、上記直接電界印加法によりプリズム型の分極反転領域からなる屈折プリズム110A〜110Cを精度良く作製するために、始めにスパイク電界をかけて反転核を均一に発生させ、続けて一定電界をかけることで反転核の分域壁を広げるのが好ましい。具体的には9kV/mmのスパイク電界を所定時間(例えば5m秒)印加し、その後、続けて5.5kV/mmの一定電界を所定時間(例えば5秒)印加する。これにより、分極反転領域110A〜110Cの分極未反転領域との境界に位置する光入射面及び光出射面の面形状が平面になり、光入射面及び光出射面とが交差する頂角はシャープになる結果が得られた。
【0027】
図4は光導波層に複数の屈折プリズムを有する更に他の構成例に係る光偏向素子の概略構成平面図であり、図5は、同光偏向素子のホーン型の分極反転プリズム領域111の拡大図である。本例では、光偏向素子10の光導波層11に形成される複数の屈折プリズム(分極反転領域)111−1、111−2、111−3、・・・のサイズを、光の伝播方向について光入射側から段階的に大きくしたホーン型の分極反転領域111を備えている。複数の屈折プリズム(分極反転領域)のサイズを光入射側から段階的に大きくしていく(ホーン型)に形成することで、光の偏向角をより大きくすることが可能である。非特許文献2によると、光の進行距離をz、入射側のプリズム幅をD、最大屈折変化量をΔnmax、屈折率をnとした場合、プリズム幅D(z)は、次式(5)から求めることができる。
【数6】

【0028】
また、このときの外部偏向角θ(z)は、次式(6)で与えられる。
【数7】

【0029】
図4、5の構成例では、例えば、D=0.5mm、Δnmax=3.83×10−3、屈折率n=2.203、プリズム長L=20mmとして、上記式(5)及び(6)からプリズム幅D(z)を逐次計算によって計算すると、光出射側の屈折プリズムの幅は1.56mmとなっている。上記式(5)及び(6)によって求めたプリズム幅は、2つの包絡線111G,111H間の距離(図4参照)で表すことができる。このホーン型の分極反転領域を作製するには、この2つの包絡線110g,110hから、正三角形の分極反転領域110−1,110−2,110−3,・・・のように、入射側から正三角形のサイズを順次決めていき、隙間無く分極反転領域を形成していくのが好ましい。
【0030】
図6は、ブレーズ型の回折格子を備えた更に他の構成例に係る光偏向素子の概略構成平面図である。光回折効率を最大にするために、回折格子116の構造をブレーズ型にするのが好ましい。ブレーズ型の回折格子116の光回折効率η及び位相φはそれぞれ、次の式(7)及び式(8)で与えられる。
【数8】

【数9】

【0031】
図7はブレーズ型回折格子116の模式図である。本例のブレーズ型回折格子116は、厚さ方向と直交する断面における形状が直角三角形である複数の分極反転領域116aが、光伝播方向と直交する方向に所定の周期で並ぶように形成されている。この複数の分極反転領域116aからなるブレーズ型回折格子116の光伝播方向における側端面の断面形状は、鋸歯状になっている。図7において、hは光伝播方向のブレーズ長であり、dは光伝播方向と直交する方向のブレーズの周期(矩形周期)である。本例では、光の波長λ=532nmで1次回折の光回折効率が1になるように、ブレーズ長hと矩形周期dを設定している(図8参照)。
【0032】
図9は、更に他の構成例に係る光偏向素子の概略構成平面図である。本例の光偏向素子10の光導波層11は、前述のホーン型の分極反転プリズム領域111を有する第一の領域101及びブレーズ型の回折格子116を有する第二の領域102のほか、ブレーズ型の回折格子117を有する第三の領域103を備えている。第三の領域103の回折格子117の鋸歯状の断面形状は、第二の領域102の回折格子116の鋸歯状の断面形状と、光伝播方向に対して対称になっている。つまり、第三の領域103の回折格子117の鋸歯形状は、光導波層11の厚さ方向及び光伝播方向の両方に平行な面に関して、第二の領域102の回折格子116の鋸歯形状と対称になっている。
【0033】
図9の光偏向素子10において、各領域101、102、103の電極への電圧印加と光の偏向による光走査との関係は、次のようになる。
例えば、第一の領域101の電極121’への電圧印加をONにした状態で、第二の領域102の電極122及び第三の領域103の電極123への電圧印加をOFFにした場合は、第一の領域101のホーン型の分極反転プリズム領域111によって入射光Linを屈折させて光走査を行なうことができる(第一の光走査工程)。
また、第一の領域101の電極121’への電圧印加をONにした状態で、第二の領域102の電極122への電圧印加をONにし、第三の領域103の電極123への電圧印加をOFFにした場合は、第二の領域102の回折格子116によって図中+X方向に回折した光を、第一の領域101の分極反転プリズム領域111によって屈折させて走査することができる(第二の光走査工程)。
また、第一の領域101の電極121’への電圧印加をONにした状態で、第二の領域102の電極122への電圧印加をOFFにし、第三の領域103の電極123への電圧印加をONにした場合は、第三の領域103の回折格子117によって図中−X方向に回折した光を、第一の領域101の分極反転プリズム領域111によって屈折させて走査することができる(第三の光走査工程)。
以上の3つの光走査工程をシーケンシャルに行なうことによって、従来の電気光学材料の結晶を用いた光偏向素子よりも解像点数を増大させることができる。
【0034】
図10は、上記構成の光導波層11を用いて構成した導波路型電気光学素子の概略構成を示す斜視図である。光導波層11を導波路構造にすることで、バルク型よりも低電圧で駆動させることができる。その結果、光偏向機能を有する電気光学素子を用いた光偏向器の消費電力を低減させることができる。
【0035】
図10において、導波路型電気光学素子20は、コア層21、上部クラッド層22、下部クラッド層23、上部電極24、下部電極25、接着層26、支持基板27、引き出し電極28等から構成され、実施例として以下に示すように作製した。
【0036】
[下部クラッド層及び下部電極の作製]
導波光の光損失を低減させるため、コア層21の上下面には、コア層21よりも屈折率の低いクラッド層22、23を形成するのが好ましい。上部クラッド層22及び下部クラッド層23の材料としては、SiO、TaO5、TIO、Si、AlO3、HfO等の誘電体が好適である。上部電極24及び下部電極25の電極材料として、Au、Pt、Ti、Al、Ni、Crなどの金属材料の他に、ITOなどの透明電極が好ましい。
実際に作製した実施例では、下部クラッド層23はTa2O5を1μmの厚さにスパッタ法で製膜し、続けて下部電極25としてTiを200nmの厚さに製膜した。
【0037】
[接着及び薄膜化]
下部電極25を作製した後、接着剤を用いて下部電極25と支持基板27との接着を行う。接着層26は面精度が1μm以下となる均一な厚みである。その後、研磨によるコア層21の薄膜化を行った。支持基板27はコア層21に用いる材料と熱膨張係数が等しい基板が好ましい。熱膨張係数が異なる材料を用いると、接着後に熱膨張が発生した際、コア層21に内部応力による歪みが生じて、クラックが発生する原因になる。
実際に作製した実施例では、接着層26にはUV硬化性の樹脂接着剤を用い、支持基板27には厚さ300μmのニオブ酸リチウム基板を用いて接着を行った。その後、研磨によって300μmの厚さから10μmのコア層21を作製した。
ニオブ酸リチウムのX軸方向の熱膨張率は1.54×10−5/Kであり、SUS303の熱膨張率は1.46×10−5/Kである。そのため、熱膨張率がほぼ等しいため、支持基板27にSUS303を使用することも可能である。
接着剤による支持基板27の貼り付け以外に、支持基板27に金属材料を用いて、下部電極25と支持基板27とを直接接合することも可能である。
【0038】
[上部クラッド層及び上部電極の作製]
研磨の後、上部クラッド層22と上部電極24を作製する。製膜方法は下部クラッド層23及び下部電極25と同じ方法である。
上部電極24は上部クラッド層22上の全面に作製するよりは、上部電極22の面積は光偏向器として機能する範囲でできるだけ小さい方が望ましい。電気光学素子の光偏向器では、静電容量と駆動動作周波数はトレードオフの関係になるため、静電容量が小さいほど低電力での高周波動作が可能となるためである。よって、上部電極24は、屈折率を変化させる領域すなわち光が偏向して透過する領域のみに作製するのが好適である。
実際に作製した実施例では、上部クラッド層22は、Taを1μmの厚さにスパッタ法で製膜し、続けて上部電極24は、Tiを200nmの厚さにスパッタ法で製膜した。
【0039】
[下部引き出し電極]
下部電極25との導通を取るため、上部電極面の端に引き出し電極28を作製し、それを導電性材料で埋める。これによって、支持基板27の面積をコア層21の面積よりも大きくすることなく下部電極の取り出しが可能となり、導波路型電気光学素子の小型化が可能となる。
実際に作製した実施例では、上部電極24と側端部との間に、引き出し電極28として深さ30μmのV溝をダイシングソーにより形成した。そのV溝をTiで製膜し、引き出し電極28を作製した。なお、引き出し電極形成手段として、ドライエッチング法やエキシマアブレーション等も好適である。
【0040】
図10の導波路型電気光学素子20を作製した後、その導波路型電気光学素子20の動作を確認したところ、正常に電流が流れて動作し、ビーム歪が抑制され、入出射光ともに同じビームプロファイルとなって光偏向されていることを確認できた。
【0041】
図11は上記構成の導波路型電気光学素子を用いた光偏向装置の一例を示す概略構成図である。光偏向装置41は、光源42と入射光学系43と光偏向素子(電気光学素子)44と出射光学系45と駆動装置46とを備えている。光源42は安価でロバスト性の高い半導体レーザーからなるのが好ましい。入射光学系43は電気光学素子44が導波路型の場合は光利用効率が高く結合させるために、導波路と入射レンズのNAを一致させるのが好ましい。出射光学系45は出射光をコリメートするためのレンズと、必要に応じて、偏向角を拡大するための凸凹レンズを用いるのが好ましい。駆動装置46は、光源42及び導波路型電気光学素子44を駆動させるための駆動回路、バッテリー、信号発生器等からなり、光偏向装置41の解像点数と駆動周波数、光出射パワーを決定する。
【0042】
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様A)
電気光学材料からなる光導波層11と、光導波層11の上面及び下面それぞれに形成された上部電極12(121、121’、122)及び下部電極13とを備え、光導波層11を光が伝播可能な電気光学素子であって、光導波層11は、屈折率を電気的に制御可能な少なくとも一つの屈折プリズム110A〜110Cが光伝播方向に並ぶように形成された第一の領域101と、光導波層11を伝播する光に対する回折を電気的に制御可能な回折格子14が形成された第二の領域102とを有し、上部電極12(121、121’、122)及び下部電極13は、第一の領域101における複数の屈折プリズム110A〜110Cと、第二の領域102における回折格子14とに対し、互いに独立に電圧を印加可能に形成されている。これによれば、上記実施形態について説明したように、光導波層11の第一の領域101における上部電極12(121、121’、122)と下部電極13との間の所定の電圧を印加することにより、その第一の領域101に形成された複数の屈折プリズム110A〜110Cそれぞれの屈折率を制御する。この屈折率が制御された複数の屈折プリズム110A〜110Cに光を通過させることにより、所定の偏向角で光を偏向させることができる。更に、光導波層11の第二の領域102における上部電極122と下部電極13との間の所定の電圧を印加することにより、その第二の領域102に形成された回折格子115、116、117によって回折される光の回折を制御する。このように光導波層11に入射してきた光を、第2の領域102の回折格子115、116、117でビームの広がりを抑えながら回折するとともに第1の領域101の屈折プリズム110A〜110Cで屈折させて偏向することができるので、偏向光の偏向角の増大を図りつつ偏向光の解像点数を高めることができる。
(態様B)
上記態様Aにおいて、光導波層11は強誘電体材料で構成され、屈折プリズム110A〜110C及び回折格子114(115、116)はそれぞれ、強誘電体材料の分極反転した分極反転領域で形成されている。これによれば、屈折プリズム110A〜110Cにおける屈折率変化量及び光偏向素子10からの出射角(偏向角)θを、プリズム状電極121を形成した場合に比してほぼ2倍にすることができ光の偏向角をより大きくすることができる。更に、回折格子114(115、116)の分極反転領域とその周辺の領域との間の屈折率差を大きくすることができるため、回折格子114(115、116)による光回折効率を高めることができる。
(態様C)
上記態様A又は態様Bにおいて、第一の領域101は屈折プリズムが複数形成され、光導波層11の厚さ方向と直交する断面における複数の屈折プリズムそれぞれの形状は正三角形であり、その断面における光入射側から第n+1番目(n:自然数)の屈折プリズムの面積は第n番目の屈折プリズムの面積よりも大きい。これによれば、複数の屈折プリズムをホーン型に形成し、偏向角を更に大きくすることができる。
(態様D)
上記態様A、態様B又は態様Cにおいて、光導波層11の厚さ方向と直交する断面における回折格子116、117の形状は直角三角形である。これによれば、回折格子116、117の光伝播方向における側端面の断面形状を鋸歯状にすることができ、回折格子116、117による光回折効率を更に高めることができる。
(態様E)
上記態様A、態様B、態様C又は態様Dにおいて、前記電気光学材料は、ニオブ酸リチウム、酸化マグネシウム添加二オブ酸リチウム又はタンタル酸リチウムである。これによれば、安価でロバスト性が高い電気光学素子(光偏向素子)を形成することができる。
(態様F)
上記態様A、態様B、態様C、態様D又は態様Eにおいて、光導波層11は、その光導波層11を伝播する光に対する回折を電気的に制御可能な回折格子117が形成された第三の領域103を、更に有し、その第三の領域103の回折格子117の形状は、光導波層11の厚さ方向と光伝播方向とに平行な面に関して、第二の領域102の回折格子116の形状と対称な形状であり、上部電極121、122、123及び下部電極13は、第一の領域101における複数の屈折プリズムと、第二の領域102における回折格子116と、第三の領域103における回折格子117とに対し、互いに独立に電圧を印加可能に形成されている。これによれば、各領域101、102、103の電極に印加する電圧を互いに独立に制御することにより、回折格子116、117による回折を伴わない第一の光偏向と、回折格子116による+X方向の回折を伴う第二の光偏向と、回折格子117による−X方向の回折を伴う第三の光偏向とをシーケンシャルに行うことができる。よって、解像点数をさらに増大させることができる。
(態様G)
上記態様A、態様B、態様C、態様D、態様E又は態様Fにおいて、支持基板27と、下部電極25と支持基板27との間に形成された接着層26とを更に備え、光導波層11は、コア層21と、そのコア層21と上部電極24及び下部電極25との間それぞれに形成されたクラッド層22、23とを有するように形成されている。これによれば、光導波層11を導波路構造にすることで、バルク型よりも低電圧で駆動させることができる。その結果、光偏向機能を有する電気光学素子を用いた光偏向器の消費電力を低減させることができる。また、コア層21の下面に下部電極25を形成した後、その下部電極25と支持基板27とを接着層26で接着し、上面側にコア層21を研磨などで容易に薄膜化することができる。
(態様H)
上記態様A、態様B、態様C、態様D、態様E、態様F又は態様Gの光偏向素子(電気光学素子)10の製造方法であって、強誘電体材料からなる基板の上面及び下面の少なくとも一方の面に、前記屈折プリズム及び回折格子それぞれを構成する複数の分極反転領域110A〜110Cの形状に対応する開口を有するレジストパターンを形成し、そのレジストパターンを介して基板に電界を印加する直接電界印加法により、その基板に複数の分極反転領域110A〜110Cを形成し、複数の分極反転領域110A〜110Cを形成した基板を光導波層11とし、その光導波層11の上面及び下面それぞれに電極を形成する。これによれば、光導波層11に所望の形状の複数の分極反転領域110A〜110Cを精度よく形成することができる。
(態様I)
光源42と、光源42から入射される光を偏向可能な電気光学素子と、電気光学素子の光入射側及び光出射側の少なくとも一方に設けられた光学系43、45と、光源42及び電気光学素子を駆動する駆動手段としての駆動装置46とを備えた光偏向装置であって、前記電気光学素子として、上記態様A、態様B、態様C、態様D、態様E、態様F、態様G又は態様Hの光偏向素子(電気光学素子)10を用いる。これによれば、偏向光の偏向角の増大を図りつつ偏向光の解像点数を高めることができる。
【符号の説明】
【0043】
10 電気光学素子
10a 光入射面
10b 光出射面
11 光導波層
12 上部電極
13 下部電極
15 電源
20 導波路型電気光学素子
21 コア層
22 上部クラッド層
23 下部クラッド層
24 上部電極
25 下部電極
26 接着層
27 支持基板
28 引き出し電極
41 光偏向装置
42 光源
43 入射光学系
44 光偏向素子(電気光学素子)
45 出射光学系
46 駆動装置
101 第一の領域
102 第二の領域
103 第三の領域
110(110A〜110C) 屈折プリズム
111 ホーン型の分極反転プリズム領域
111−1、111−2、111−3、・・・屈折プリズム(分極反転領域)
114〜117 回折格子
116a 回折格子の分極反転領域
121 上部電極(プリズム電極)
121’ 上部電極
122、123 上部電極
Lin 入射光
Lout 出射光
【先行技術文献】
【特許文献】
【0044】
【特許文献1】特開平9−146128号公報
【非特許文献】
【0045】
【非特許文献1】David A. Scrymgeour et al., Applied Optics, Vol.40, No.34 (Dec. 2001)
【非特許文献2】Yi Chiu ,et al, Journal of Lightwave Technology, VOL 17, No.1 (Jan 1999)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気光学材料からなる光導波層と、前記光導波層の上面及び下面それぞれに形成された上部電極及び下部電極とを備え、前記光導波層を光が伝播可能な電気光学素子であって、
前記光導波層は、屈折率を電気的に制御可能な少なくとも一つの屈折プリズムが形成された第一の領域と、該光導波層を伝播する光に対する回折を電気的に制御可能な回折格子が形成された第二の領域とを有し、
前記上部電極及び下部電極は、前記第一の領域における複数の屈折プリズムと、前記第二の領域における回折格子とに対し、互いに独立に電圧を印加可能に形成されていることを特徴とする電気光学素子。
【請求項2】
請求項1の電気光学素子において、
前記光導波層は強誘電体材料で構成され、
前記屈折プリズム及び前記回折格子はそれぞれ、前記強誘電体材料の分極反転した領域で形成されていることを特徴とする電気光学素子。
【請求項3】
請求項1又は2の電気光学素子において、
前記第一の領域は、前記屈折プリズムが複数形成され、
前記光導波層の厚さ方向と直交する断面における前記複数の屈折プリズムそれぞれの形状は正三角形であり、該断面における光入射側から第n+1番目(n:自然数)の屈折プリズムの面積は第n番目の屈折プリズムの面積よりも大きいことを特徴とする電気光学素子。
【請求項4】
請求項1、2又は3の電気光学素子において、
前記光導波層の厚さ方向と直交する断面における前記回折格子の形状は直角三角形であることを特徴とする電気光学素子。
【請求項5】
請求項1、2、3又は4の電気光学素子において、
前記電気光学材料は、ニオブ酸リチウム、酸化マグネシウム添加二オブ酸リチウム又はタンタル酸リチウムであることとする電気光学素子。
【請求項6】
請求項1、2、3、4又は5の電気光学素子において、
前記光導波層は、その光導波層を伝播する光に対する回折を電気的に制御可能な回折格子が形成された第三の領域を、更に有し、
前記第三の領域の回折格子の形状は、前記光導波層の厚さ方向と光伝播方向とに平行な面に関して、前記第二の領域の回折格子の形状と対称な形状であり、
前記上部電極及び下部電極は、前記第一の領域における屈折プリズムと、前記第二の領域における回折格子と、前記第三の領域における回折格子とに対し、互いに独立に電圧を印加可能に形成されていることを特徴とする電気光学素子。
【請求項7】
請求項1、2、3、4、5又は6の電気光学素子において、
支持基板と、前記下部電極と前記支持基板との間に形成された接着層と、を更に備え、
前記光導波層は、コア層と、そのコア層と前記上部電極及び前記下部電極との間それぞれに形成されたクラッド層とを有するように形成されていることを特徴とする電気光学素子。
【請求項8】
請求項1、2、3、4、5、6又は7の電気光学素子の製造方法であって、
強誘電体材料からなる基板の上面及び下面の少なくとも一方の面に、前記屈折プリズム及び回折格子それぞれを構成する複数の分極反転領域の形状に対応する開口を有するレジストパターンを形成する工程と、
前記レジストパターンを介して前記基板に電界を印加する直接電界印加法により、その基板に前記複数の分極反転領域を形成する工程と、
前記複数の分極反転領域を形成した前記基板を前記光導波層とし、その光導波層の上面及び下面それぞれに電極を形成する工程と、を含むことを特徴とする電気光学素子の製造方法。
【請求項9】
光源と、前記光源から入射される光を偏向可能な電気光学素子と、前記電気光学素子の光入射側及び光出射側の少なくとも一方に設けられた光学系と、前記光源及び前記電気光学素子を駆動する駆動手段と、を備えた光偏向装置であって、
前記電気光学素子として、請求項1、2、3、4、5、6又は7の電気光学素子を用いたことを特徴とする光偏向装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−44762(P2013−44762A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180176(P2011−180176)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】