説明

電気光学装置、防塵用基板、及び電子機器

【課題】埃などが光学変調領域に対応する領域に付着することに起因して、表示品質が影
響を受けることを抑制することができる電気光学装置、防塵用基板、及び電子機器を提供
する。
【解決手段】電気光学装置は、電気光学素子と、該電気光学素子に貼り合わされた防塵用
基板とを備えた電気光学装置であって、前記防塵用基板は、前記電気光学素子と対向する
面の反対側の面に、複数の突起が設けられている。複数の突起は、防塵用基板における前
記電気光学素子と対向する面の反対側の面に設けられている。突起は、防塵用基板の面に
立設されており、防塵用基板の面に垂直な断面の少なくとも一つの断面における断面形状
が、楔形である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学素子を備える電気光学装置、及び電気光学素子の一方の面に配置さ
れた防塵用基板、並びに電気光学装置を備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、光源から出射された光束を画像情報などに応じて変調する液晶パネルなどの
電気光学素子を備える液晶装置などの電気光学装置が知られている。液晶装置は、例えば
、情報機器における表示装置や、投射型表示装置におけるライトバルブなどとして用いら
れている。
このような表示装置においては、表示面に埃などが付着すると、表示面に表示画像とは
異なる点などが視認され、表示品質が劣化する。特に、液晶プロジェクターなどの投射型
表示装置のように、液晶パネルの表示領域が拡大されて表示画面となる装置においては、
埃などが拡大された像となって表示画面に表示されてしまうため、表示品質に及ぼす影響
が大きくなる。
【0003】
特許文献1には、帯電防止材料を含むコーティング部材を備えることで、帯電した埃が
静電気によって液晶パネルに付着することを抑制する電気光学装置及び投射型表示装置が
開示されている。
また、液晶プロジェクターなどの投射型表示装置においては、液晶パネルの表示面に直
接埃が付着することを防止するために、防塵部材を設けることが行われている。防塵部材
を設けることで、埃などが付着しても、当該埃は防塵部材に付着するため、当該埃などの
位置が投射レンズの焦点位置から離れていることにより、明確には視認され難くくするこ
とができる。しかし、防塵部材の面に埃が付着した場合でも、付着した埃などの像は、焦
点がずれてぼやけた像として僅かながら視認されるため、防塵部材にも埃などは付着しな
いことが好ましい。特許文献2には、防塵部材の表面に摩擦係数が小さいフッ素樹脂コー
ティングを施すことで、埃などが付着し難くする、液晶パネルブロック及び液晶プロジェ
クター装置が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−279942号公報
【特許文献2】特開2007−25153号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に開示されたように摩擦係数を小さくしても、浮遊して気流
に乗り、装置の内部を流動してきた埃などは摩擦によって帯電することが多いため、静電
気によって付着することがあった。また、特許文献1に開示されたような帯電防止材料を
有効ならしめるためには、帯電防止材料から放電するための放電経路を形成する必要があ
り、装置が複雑になるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形
態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例にかかる電気光学装置は、電気光学素子と、該電気光学素子に貼
り合わされた防塵用基板とを備えた電気光学装置であって、前記防塵用基板は、前記電気
光学素子と対向する面の反対側の面に、複数の突起が設けられていることを特徴とする。
【0008】
この電気光学装置によれば、防塵用基板に複数の突起が形成されている。突起が存在す
ることで、平坦な面にくらべて、防塵用基板に対して埃などが接触することができる面積
が小さくなる。これにより、防塵用基板の面に埃などが付着することを抑制することがで
きる。電気光学素子から出射される光束が透過する領域の面に埃などが付着することを抑
制することができるため、表示装置においては、埃などが付着することで表示品質が劣化
することを抑制することができる。電気光学素子に接近することを防塵用基板によって阻
止される埃などは、防塵用基板における電気光学素子と対向する面の反対側の面に接触す
る可能性が高い。この面に突起を形成することによって、防塵用基板において埃などが接
触する可能性が高い面を、埃などが付着し難い面にすることができる。
【0009】
[適用例2]上記適用例にかかる電気光学装置において、前記防塵用基板は、前記電気
光学素子に対して、前記電気光学素子における光束の入射側及び出射側に配設されている
ことが好ましい。
【0010】
この電気光学装置によれば、防塵用基板が、電気光学素子に対して、光束の入射側及び
出射側に配設されていることで、防塵用基板によって確実に、電気光学素子が周囲から影
響を及ぼされることから保護することができる。
【0011】
[適用例3]上記適用例にかかる電気光学装置において、前記防塵用基板は、前記電気
光学素子に対して、前記電気光学素子における光束の出射側に配設されていることが好ま
しい。
【0012】
この電気光学装置によれば、防塵用基板は、電気光学素子における光束の出射側に配設
されている。電気光学装置は、例えば投射型の表示装置における電気光学装置であって、
投射型の表示装置においては、電気光学装置に近接して投射用の光学系が配設されること
が多い。大気中に浮遊する埃などは、近接して配設された電気光学装置と光学系との間を
流動する際に電気光学装置に接触し易いが、防塵用基板を出射側に配設することで、接触
した埃などが付着することを抑制することができる。
電気光学装置は、例えば表示面が直接観察される表示装置における電気光学装置であっ
て、光束の出射側が観察される表示面となる。防塵用基板を出射側に配設することで、観
察される面に埃などが付着することを抑制することができる。
【0013】
[適用例4]上記適用例にかかる電気光学装置において、前記複数の突起におけるそれ
ぞれの突起の高さ、及びそれぞれの前記突起間の配設ピッチは、前記電気光学素子に入射
する入射光の波長より小さいことが好ましい。
【0014】
この電気光学装置によれば、高さが入射光の波長より小さい突起が、入射光の波長より
小さい配設ピッチで配置される。光学素子や電気光学装置を構成し、光束が透過する部材
は、ガラスなどで形成されており、大気とは異なる屈折率を有している。ガラスなどと大
気との境界面で屈折率が大きく変化することに起因して、光が反射する。多数の突起を設
けることで、突起の高さの範囲で、屈折率を徐々に変化させることができる。このように
することにより、突起の高さおよび配設ピッチより長い波長の光は、境界面で反射され難
くなることが知られている。入射光の波長より小さい突起が、入射光の波長より小さい配
設ピッチで配置されていることで、入射する光が反射されることを抑制することができる

【0015】
[適用例5]上記適用例にかかる電気光学装置において、前記複数の突起におけるそれ
ぞれの突起の高さ、及びそれぞれの前記突起間の配設ピッチは、430nm未満であるこ
とが好ましい。
【0016】
この電気光学装置によれば、高さが430nmより小さい突起が、430nmより小さ
い配設ピッチで配置される。光学素子や電気光学装置を構成し、光束が透過する部材は、
ガラスなどで形成されており、大気とは異なる屈折率を有している。ガラスなどと大気と
の境界面で屈折率が大きく変化することに起因して、光が反射する。多数の突起を設ける
ことで、突起の高さの範囲で、屈折率を徐々に変化させることができる。このようにする
ことにより、突起の高さおよび配設ピッチより長い波長の光は、境界面で反射され難くな
ることが知られている。
電気光学装置で扱われることが多い光の3原色の中で、波長が最も短い青色の波長は、
概ね430nmである。430nmより小さい突起が、430nmより小さい配設ピッチ
で配置されていることで、光の3原色の光が反射されることを抑制することができる。
【0017】
[適用例6]上記適用例にかかる電気光学装置において、前記複数の突起におけるそれ
ぞれの突起の高さ、及びそれぞれの前記突起間の配設ピッチは、可視光の波長より小さい
ことが好ましい。
【0018】
この電気光学装置によれば、高さが可視光の波長より小さい突起が、可視光の波長より
小さい配設ピッチで配置される。光学素子や電気光学装置を構成し、光束が透過する部材
は、ガラスなどで形成されており、大気とは異なる屈折率を有している。ガラスなどと大
気との境界面で屈折率が大きく変化することに起因して、光が反射する。多数の突起を設
けることで、突起の高さの範囲で、屈折率を徐々に変化させることができる。このように
することにより、突起の高さおよび配設ピッチより長い波長の光は、境界面で反射され難
くなることが知られている。可視光の波長より小さい突起が、可視光の波長より小さい配
設ピッチで配置されていることで、可視光が反射されることを抑制することができる。
【0019】
[適用例7]上記適用例にかかる電気光学装置において、前記複数の突起におけるそれ
ぞれの突起の高さ、及びそれぞれの前記突起間の配設ピッチは、380nm未満であるこ
とが好ましい。
【0020】
この電気光学装置によれば、高さが380nmより小さい突起が、380nmより小さ
い配設ピッチで配置される。光学素子や電気光学装置を構成し、光束が透過する部材は、
ガラスなどで形成されており、大気とは異なる屈折率を有している。ガラスなどと大気と
の境界面で屈折率が大きく変化することに起因して、光が反射する。多数の突起を設ける
ことで、突起の高さの範囲で、屈折率を徐々に変化させることができる。このようにする
ことにより、突起の高さおよび配設ピッチより長い波長の光は、境界面で反射され難くな
ることが知られている。
人間が知覚できる光の範囲は、波長が概ね380nm以上の光である。380nmより
小さい突起が、380nmより小さい配設ピッチで配置されていることで、人間が知覚で
きる光が反射されることを抑制することができる。
【0021】
[適用例8]上記適用例にかかる電気光学装置において、前記突起は、前記防塵用基板
の面に立設されており、前記防塵用基板の面に垂直な断面の少なくとも一つの前記断面に
おける断面形状が、楔形であることが好ましい。
【0022】
この電気光学装置によれば、突起は、立設されている面に垂直な方向の断面において楔
形の断面形状を有している。光学素子や電気光学装置を構成し、光束が透過する部材は、
ガラスなどで形成されており、大気とは異なる屈折率を有している。ガラスなどと大気と
の境界面で屈折率が大きく変化することに起因して、光が反射する。突起が、立設されて
いる面に垂直な方向の断面において楔形の断面形状を有していることで、面に水平な方向
の断面においては、立設されている面からの距離によって、突起の部分が占める面積が徐
々に変化する。これにより、突起の高さの範囲で、屈折率を徐々に変化させることができ
る。屈折率を徐々に変化させることで、防塵用基板の面で屈折率が大きく変化することに
起因して光が反射することを抑制することができる。
【0023】
[適用例9]上記適用例にかかる電気光学装置において、前記楔形の先端が円弧で構成
されていることが好ましい。
【0024】
この電気光学装置によれば、突起の先端が曲面になっている。先端が曲面であることに
より、先端が尖った形状である場合にくらべて、突起における先端の強度を強くすること
ができる。
【0025】
[適用例10]上記適用例にかかる電気光学装置において、前記突起は、前記防塵用基
板の面に立設された球冠であることが好ましい。
【0026】
この電気光学装置によれば、突起の形状は、球冠である。光学素子や電気光学装置を構
成し、光束が透過する部材は、ガラスなどで形成されており、大気とは異なる屈折率を有
している。ガラスなどと大気との境界面で屈折率が大きく変化することに起因して、光が
反射する。突起の形状が球冠であることで、突起が立設されている面に水平な方向の断面
においては、立設されている面からの距離によって、突起の部分が占める面積が徐々に変
化する。これにより、突起の高さの範囲で、屈折率を徐々に変化させることができる。屈
折率を徐々に変化させることで、防塵用基板の面で屈折率が大きく変化することに起因し
て光が反射することを抑制することができる。突起の表面が曲面であるため、角がある形
状にくらべて、突起の強度を強くすることができる。
【0027】
[適用例11]上記適用例にかかる電気光学装置において、前記突起は、前記防塵用基
板の面に立設されており、先端側が球冠形状の円柱、角柱、円錐、又は角錐であることが
好ましい。
【0028】
この電気光学装置によれば、突起は、先端側が球冠形状の円柱、角柱、円錐、又は角錐
である。光学素子や電気光学装置を構成し、光束が透過する部材は、ガラスなどで形成さ
れており、大気とは異なる屈折率を有している。ガラスなどと大気との境界面で屈折率が
大きく変化することに起因して、光が反射する。突起の形状が、先端側が球冠形状の円柱
、角柱、円錐、又は角錐であることで、突起が立設されている面に水平な方向の断面にお
いては、立設されている面からの距離によって、突起の部分が占める面積が徐々に変化す
る。これにより、突起の高さの範囲で、屈折率を徐々に変化させることができる。屈折率
を徐々に変化させることで、防塵用基板の面で屈折率が大きく変化することに起因して光
が反射することを抑制することができる。
【0029】
[適用例12]上記適用例にかかる電気光学装置において、前記複数の突起は、前記防
塵用基板の面における、前記電気光学素子が備える光学変調領域に対応する領域に配設さ
れていることが好ましい。
【0030】
この電気光学装置によれば、突起は、電気光学素子が備える光学変調領域に対応する領
域にのみ配設されている。ここで、光学変調領域は、電気光学装置において、電気信号に
従って光を変調させることが実行される領域である。例えば、液晶表示装置において、制
御信号に従って制御されることによって、光を透過させる又は遮断する画素が配設された
画素領域である。したがって、光学変調領域に対応する領域は、埃などが付着したり、光
が反射したりすることを抑制することが、電気光学装置による表示品質などを向上させる
ことに寄与する領域である。当該領域にのみ突起を形成することで、不要な突起を構成す
ることを抑制して、効率良く突起を形成することができる。
【0031】
[適用例13]上記適用例にかかる電気光学装置において、前記電気光学素子、又は前
記電気光学素子及び前記防塵用基板を保持する保持ケースをさらに備え、前記保持ケース
は、前記電気光学素子又は前記防塵用基板における前記突起が形成されていない部分に当
接して前記電気光学素子又は前記防塵用基板を保持していることが好ましい。
【0032】
この電気光学装置によれば、電気光学素子又は防塵用基板は、突起が形成されていない
部分において、保持ケースに支持される。これにより、突起が保持ケースに当接すること
で、微小な突起が損傷することを抑制することができる。
【0033】
[適用例14]本適用例にかかる防塵用基板は、電気光学装置が備える電気光学素子に
貼り合わされた防塵用基板であって、前記防塵用基板における前記電気光学素子と対向す
る面の反対側の面に、複数の突起を設けたことを特徴とする。
【0034】
この防塵用基板によれば、基板面に突起が形成されている。突起が存在することで、平
坦な面にくらべて、防塵用基板に対して埃などが接触することができる面積が小さくなる
。これにより、防塵用基板の面に埃などが付着することを抑制することができる。
電気光学素子に接近することを防塵用基板によって阻止される埃などは、防塵用基板に
おける電気光学素子と対向する面の反対側の面に接触する可能性が高い。この面に突起を
形成することによって、防塵用基板において埃などが接触する可能性が高い面を、埃など
が付着し難い面にすることができる。
【0035】
[適用例15]上記適用例にかかる防塵用基板において、前記複数の突起におけるそれ
ぞれの突起の高さ、及びそれぞれの前記突起間の配設ピッチは、前記電気光学素子に入射
する入射光の波長より小さいことが好ましい。
【0036】
この防塵用基板によれば、防塵用基板に、高さが入射光の波長より小さい突起が、入射
光の波長より小さい配設ピッチで配置される。防塵用基板は、ガラスなどで形成されてお
り、大気とは異なる屈折率を有している。ガラスなどと大気との境界面で屈折率が大きく
変化することに起因して、光が反射する。多数の突起を設けることで、突起の高さの範囲
で、屈折率を徐々に変化させることができる。このようにすることにより、突起の高さお
よび配設ピッチより長い波長の光は、境界面で反射され難くなることが知られている。入
射光の波長より小さい突起が、入射光の波長より小さい配設ピッチで配置されていること
で、入射する光が反射されることを抑制することができる。
【0037】
[適用例16]上記適用例にかかる防塵用基板において、前記複数の突起におけるそれ
ぞれの突起の高さ、及びそれぞれの前記突起間の配設ピッチは、430nm未満であるこ
とが好ましい。
【0038】
この防塵用基板によれば、防塵用基板に、高さが430nmより小さい突起が、430
nmより小さい配設ピッチで配置される。防塵用基板は、ガラスなどで形成されており、
大気とは異なる屈折率を有している。ガラスなどと大気との境界面で屈折率が大きく変化
することに起因して、光が反射する。多数の突起を設けることで、突起の高さの範囲で、
屈折率を徐々に変化させることができる。このようにすることにより、突起の高さおよび
配設ピッチより長い波長の光は、境界面で反射され難くなることが知られている。
電気光学装置で扱われることが多い光の3原色の中で、波長が最も短い青色の波長は、
概ね430nmである。430nmより小さい突起が、430nmより小さい配設ピッチ
で配置されていることで、光の3原色の光が反射されることを抑制することができる。
【0039】
[適用例17]上記適用例にかかる防塵用基板において、前記複数の突起におけるそれ
ぞれの突起の高さ、及びそれぞれの前記突起間の配設ピッチは、可視光の波長より小さい
ことが好ましい。
【0040】
この防塵用基板によれば、防塵用基板に、高さが可視光の波長より小さい突起が、可視
光の波長より小さい配設ピッチで配置される。防塵用基板は、ガラスなどで形成されてお
り、大気とは異なる屈折率を有している。ガラスなどと大気との境界面で屈折率が大きく
変化することに起因して、光が反射する。多数の突起を設けることで、突起の高さの範囲
で、屈折率を徐々に変化させることができる。このようにすることにより、突起の高さお
よび配設ピッチより長い波長の光は、境界面で反射され難くなることが知られている。可
視光の波長より小さい突起が、可視光の波長より小さい配設ピッチで配置されていること
で、可視光が反射されることを抑制することができる。
【0041】
[適用例18]上記適用例にかかる防塵用基板において、前記複数の突起におけるそれ
ぞれの突起の高さ、及びそれぞれの前記突起間の配設ピッチは、380nm未満であるこ
とが好ましい。
【0042】
この防塵用基板によれば、防塵用基板に、高さが380nmより小さい突起が、380
nmより小さい配設ピッチで配置される。防塵用基板は、ガラスなどで形成されており、
大気とは異なる屈折率を有している。ガラスなどと大気との境界面で屈折率が大きく変化
することに起因して、光が反射する。多数の突起を設けることで、突起の高さの範囲で、
屈折率を徐々に変化させることができる。このようにすることにより、突起の高さおよび
配設ピッチより長い波長の光は、境界面で反射され難くなることが知られている。
人間が知覚できる光の範囲は、波長が概ね380nm以上の光である。380nmより
小さい突起が、380nmより小さい配設ピッチで配置されていることで、人間が知覚で
きる光が反射されることを抑制することができる。
【0043】
[適用例19]上記適用例にかかる防塵用基板において、前記突起は、前記防塵用基板
の面に立設されており、前記防塵用基板の面に垂直な断面の少なくとも一つの前記断面に
おける断面形状が、楔形であることが好ましい。
【0044】
この防塵用基板によれば、突起は、立設されている面に垂直な方向の断面において楔形
の断面形状を有している。光学素子や電気光学装置を構成し、光束が透過する部材は、ガ
ラスなどで形成されており、大気とは異なる屈折率を有している。ガラスなどと大気との
境界面で屈折率が大きく変化することに起因して、光が反射する。突起が、立設されてい
る面に垂直な方向の断面において楔形の断面形状を有していることで、面に水平な方向の
断面においては、立設されている面からの距離によって、突起の部分が占める面積が徐々
に変化する。これにより、突起の高さの範囲で、屈折率を徐々に変化させることができる
。屈折率を徐々に変化させることで、防塵用基板の面で屈折率が大きく変化することに起
因して光が反射することを抑制することができる。
【0045】
[適用例20]上記適用例にかかる防塵用基板において、前記楔形の先端が円弧で構成
されていることが好ましい。
【0046】
この防塵用基板によれば、突起の先端が曲面になっている。先端が曲面であることによ
り、先端が尖った形状である場合にくらべて、突起における先端の強度を強くすることが
できる。
【0047】
[適用例21]上記適用例にかかる防塵用基板において、前記突起は、前記防塵用基板
の面に立設された球冠であることが好ましい。
【0048】
この防塵用基板によれば、突起の形状は、球冠である。光学素子や電気光学装置を構成
し、光束が透過する部材は、ガラスなどで形成されており、大気とは異なる屈折率を有し
ている。ガラスなどと大気との境界面で屈折率が大きく変化することに起因して、光が反
射する。突起の形状が球冠であることで、突起が立設されている面に水平な方向の断面に
おいては、立設されている面からの距離によって、突起の部分が占める面積が徐々に変化
する。これにより、突起の高さの範囲で、屈折率を徐々に変化させることができる。屈折
率を徐々に変化させることで、防塵用基板の面で屈折率が大きく変化することに起因して
光が反射することを抑制することができる。突起の表面が曲面であるため、角がある形状
にくらべて、突起の強度を強くすることができる。
【0049】
[適用例22]上記適用例にかかる防塵用基板において、前記突起は、先端側が球冠形
状の円柱、角柱、円錐、又は角錐であることが好ましい。
【0050】
この防塵用基板によれば、突起は、先端側が球冠形状の円柱、角柱、円錐、又は角錐で
ある。光学素子や電気光学装置を構成し、光束が透過する部材は、ガラスなどで形成され
ており、大気とは異なる屈折率を有している。ガラスなどと大気との境界面で屈折率が大
きく変化することに起因して、光が反射する。突起の形状が、先端側が球冠形状の円柱、
角柱、円錐、又は角錐であることで、突起が立設されている面に水平な方向の断面におい
ては、立設されている面からの距離によって、突起の部分が占める面積が徐々に変化する
。これにより、突起の高さの範囲で、屈折率を徐々に変化させることができる。屈折率を
徐々に変化させることで、防塵用基板の面で屈折率が大きく変化することに起因して光が
反射することを抑制することができる。
【0051】
[適用例23]上記適用例にかかる防塵用基板において、前記複数の突起は、前記防塵
用基板及び前記電気光学素子が前記電気光学装置に配設された状態において、前記防塵用
基板における前記電気光学素子が備える光学変調領域に対応する領域に配設されているこ
とが好ましい。
【0052】
この防塵用基板によれば、突起は、電気光学素子が備える光学変調領域に対応する領域
にのみ配設されている。ここで、光学変調領域は、電気光学装置において、電気信号に従
って光を変調させることが実行される領域である。例えば、液晶表示装置において、制御
信号に従って制御されることによって、光を透過させる又は遮断する画素が配設された画
素領域である。したがって、光学変調領域に対応する領域は、埃などが付着したり、光が
反射したりすることを抑制することが、電気光学装置による表示品質などを向上させるこ
とに寄与する領域である。当該領域にのみ突起を形成することで、不要な突起を構成する
ことを抑制して、効率良く突起を形成することができる。
【0053】
[適用例24]本適用例にかかる電子機器は、上記適用例にかかる電気光学装置、又は
上記適用例にかかる防塵用基板を備えることを特徴とする。
【0054】
この電子機器によれば、電気光学素子から出射される光束が透過する領域を含む面に、
埃などが付着し難い電気光学装置、又は埃などが付着し難い防塵用基板を備える。このこ
とから、電気光学素子から出射される光束が透過する領域に埃などが付着し難い電子機器
を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0055】
以下、電気光学装置、防塵用基板、及び電子機器の好適な実施の形態について、図面を
参照して説明する。
実施形態は、電気光学素子を備える電気光学装置の一実施形態としての、液晶パネルを
備える液晶光変調装置(液晶ライトバルブ)、及び電気光学装置を備える電子機器として
の投射型表示装置を例に、また、有機EL(有機エレクトロルミネッセンス(Organic El
ectro Luminescence))装置を備える有機EL表示装置、及び有機EL表示装置を備える
情報機器を例に、説明する。
なお、以下の説明において参照する図面では、図示の便宜上、部材又は部分の縦横の縮
尺を実際のものとは異なるように表す場合がある。
【0056】
(第一の実施形態)
最初に、電気光学装置、防塵用基板、及び電子機器の一実施形態である第一の実施形態
について、説明する。本実施形態は、電気光学素子を備える電気光学装置の一実施形態と
しての、液晶パネルを備える液晶光変調装置(液晶ライトバルブ)、及び電気光学装置を
備える電子機器としての投射型表示装置を例に説明する。
【0057】
<投射型表示装置>
最初に、投射型表示装置について、図1を参照して説明する。投射型表示装置は、光源
から出射される光束を画像情報に応じて変調して光学像を形成し、形成した光学像をスク
リーン上に拡大投射するものである。図1は、投射型表示装置の概略構成を示す模式図で
ある。
図1に示すように、投射型表示装置10は、光源装置11と、色分離光学装置12と、
リレー光学装置14と、光学変調装置16と、投射光学装置17とを備えている。
【0058】
光源装置11は、光変調装置(液晶パネル)の画像形成領域を略均一に照明するための
光学系であり、光束を出射する光源ランプ21と、リフレクター22と、光源レンズ群2
3とを備えている。光源ランプ21から放射状に出射された光束は、リフレクター22に
よって一定の位置に収束される。光源レンズ群23は、複数のレンズやレンズアレイを有
し、リフレクター22によって収束される光束を光軸に平行な平行光にする。
【0059】
色分離光学装置12は、光源装置11から出射された光束を分光する装置である。投射
型表示装置10は3色のカラー表示を行う装置であり、色分離光学装置12は、光源装置
11から出射された光束を、赤色と緑色と青色との3色に分光する。色分離光学装置12
は、ダイクロイックミラー24a及びダイクロイックミラー24bを備えている。ダイク
ロイックミラー24aは、赤色光を透過させると共に、緑色光及び青色光を反射して、緑
色光及び青色光の光軸の方向を、光源装置11から出射された光束の光軸の方向に略垂直
な方向に変換する。ダイクロイックミラー24bは、青色光を透過させると共に、緑色光
を反射して、緑色光の光軸の方向を、光源装置11から出射された光束の光軸の方向と略
平行な方向であって光源装置11から出射された光束と同じ方に進む方向に変換する。
【0060】
リレー光学装置14は、入射側レンズ31、リレーレンズ32、及び反射ミラー33a
,33b,33cを備え、色分離光学装置12で分離された色光をそれぞれの液晶光変調
装置41まで導く機能を有している。
【0061】
ダイクロイックミラー24aを通過した赤色光は、反射ミラー33aによって、ダイク
ロイックミラー24aに反射された緑色光及び青色光と同じ方向に反射されて、光学変調
装置16が備える液晶光変調装置41Rに入射する。ダイクロイックミラー24bで反射
された緑色光は、そのまま光学変調装置16が備える液晶光変調装置41Gに入射する。
ダイクロイックミラー24bを透過した青色光は、入射側レンズ31を通過して反射ミ
ラー33bによって反射され、リレーレンズ32を通過して反射ミラー33cによって反
射され、もう1個のリレーレンズ32を通過して、光学変調装置16が備える液晶光変調
装置41Bに入射する。反射ミラー33bによって反射された青色光は、光軸の方向が、
ダイクロイックミラー24aを通過した赤色光の光軸の方向、及び液晶光変調装置41G
に入射する緑色光の光軸の方向と平行であって、光の進む方向が同一である。
反射ミラー33cによって反射された青色光の光軸の方向は、光軸の方向が、反射ミラ
ー33aによって、反射された赤色光の光軸の方向、及びダイクロイックミラー24aに
反射された緑色光及び青色光の光軸の方向に平行であり、光の進む方向が反対方向である
。赤色光、緑色光及び青色光の光軸は、同一平面内にあり、当該平面内において方向が変
えられている。従って、液晶光変調装置41Rに入射する赤色光と液晶光変調装置41B
に入射する青色光とは、光軸の位置及び方向は略同一であり、光の進む方向が反対になっ
ている。
【0062】
光学変調装置16は、色分離光学装置12から出射される3色の色光を画像情報に応じ
てそれぞれ変調し、変調した各色光を合成して画像光(カラー画像)を形成する。光学変
調装置16は、液晶光変調装置41と、入射側偏光板46と、出射側偏光板47と、クロ
スダイクロイックプリズム48とを備えている。
液晶光変調装置41としては、上記したように、赤色光用の液晶光変調装置41R、緑
色光用の液晶光変調装置41G、及び青色光用の液晶光変調装置41Bを備えている。液
晶光変調装置41は、液晶パネル42と、液晶パネル42を保持する実装ケース43とを
備えている。それぞれの液晶光変調装置41の光束入射側には、入射側偏光板46が配設
されている。液晶光変調装置41の光束出射側には、それぞれ出射側偏光板47が配設さ
れている。
クロスダイクロイックプリズム48は、色光毎に変調されて出射側偏光板47から出射
された変調光を合成して画像光(カラー画像)を形成する光学素子である。
【0063】
入射側偏光板46は、図示省略した偏光変換素子によって偏光方向が略一方向に揃えら
れた各色光が入射され、入射された光束のうち、偏光変換素子で揃えられた光束の偏光軸
と略同一方向の偏光軸を有する光束のみ透過させ、その他の光束を吸収するものである。
入射側偏光板46は、例えば、サファイアガラスまたは水晶等の透光性基板上に偏光膜が
貼付された構成を有している。
【0064】
液晶光変調装置41を構成する液晶パネル42は、一対の透明なガラス、石英等からな
る基板間に電気光学物質である液晶が密閉封入された構成を有する。液晶パネル42は、
制御装置からの駆動信号に応じて、液晶の配向状態が制御され、入射側偏光板46から出
射された偏光光束の偏光方向を変調する。液晶パネル42は、液晶光変調装置41を構成
する実装ケース43に保持されている。液晶パネル42を保持する実装ケース43の具体
的な構成については後述する。
【0065】
出射側偏光板47は、入射側偏光板46と同様の構成を有し、液晶光変調装置41から
出射された光束のうち、入射側偏光板46における光束の透過軸と直交する偏光軸を有す
る光束のみ透過させ、その他の光束を吸収するものである。
【0066】
クロスダイクロイックプリズム48は、出射側偏光板47から出射された色光毎に変調
された変調光を合成して画像光(カラー画像)を形成する光学素子である。このクロスダ
イクロイックプリズム48は、4つの直角プリズムを貼り合わせた平面視正方形の形状を
なし、直角プリズム同士を貼り合わせた界面には、2つの誘電体多層膜が形成されている
。これら誘電体多層膜は、投射光学装置17が有する投射レンズ49と対向する側(緑色
光側)に配置された出射側偏光板47を介した色光を透過し、残りの2つの出射側偏光板
47(赤色光側及び青色光側)を介した各色光を反射する。このようにして、各入射側偏
光板46、液晶光変調装置41、及び各出射側偏光板47によって変調された各色光が合
成されてカラー画像が形成される。
【0067】
合成された光は、クロスダイクロイックプリズム48の投射レンズ49に対向する面か
ら出射されて、投射レンズ49によってスクリーン19上に投射され、スクリーン19上
にカラー画像が表示される。
【0068】
<液晶パネル>
次に、液晶パネル42について、図2を参照して説明する。図2は、液晶パネルの構造
を示す模式図である。図2(a)は、液晶パネルについて、各構成要素と共に対向基板側
から見た平面図であり、図2(b)は、図2(a)にH−Hで示した断面における断面形
状を示す概略断面図である。
本実施形態に係る液晶パネルは、電気光学素子の一例である駆動回路内蔵型のTFTア
クティブマトリクス駆動方式の液晶パネルである。
【0069】
図2に示したように、液晶パネル42は、TFTアレイ基板55と対向基板57とが対
向配置されている。TFTアレイ基板55と対向基板57との間に液晶層50が封入され
ており、TFTアレイ基板55と対向基板57とは、画像表示領域42Aの周囲に位置す
るシール領域に設けられたシール材52により相互に接着されている。
【0070】
シール材52は、TFTアレイ基板55と対向基板57とを貼り合わせるための、例え
ば紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂等からなり、製造プロセスにおいてTFTアレイ基板55
上に塗布された後、紫外線照射、加熱等により硬化させられたものである。シール材52
の中には、TFTアレイ基板55と対向基板57との間隔(基板間ギャップ)を所定値と
するためのグラスファイバ或いはガラスビーズ等のギャップ材が散布されている。
【0071】
シール材52が配置されたシール領域の内側に並行して、画像表示領域42Aの額縁領
域を規定する遮光性の額縁遮光膜53が、対向基板57側に設けられている。但し、この
ような額縁遮光膜53の一部又は全部は、TFTアレイ基板55側に内蔵遮光膜として設
けてもよい。
【0072】
画像表示領域42Aの周辺に広がる領域のうち、シール材52が配置されたシール領域
の外側に位置する領域には、データ線駆動回路61及び外部回路接続端子62がTFTア
レイ基板55の一辺に沿って設けられている。また、走査線駆動回路64は、この一辺に
隣接する2辺に沿い、且つ、上述した額縁遮光膜53に覆われるようにして設けられてい
る。更に、このように画像表示領域42Aの両側に設けられた二つの走査線駆動回路64
間をつなぐため、TFTアレイ基板55の残る一辺に沿い、且つ、額縁遮光膜53に覆わ
れるようにして複数の配線65が設けられている。
【0073】
対向基板57の4つのコーナー部には、TFTアレイ基板55と対向基板57との間の
導通端子として機能する上下導通材66が配置されている。他方、TFTアレイ基板55
にはこれらのコーナーに対向する領域において、上下導通端子が配設されている。これら
の構成により、TFTアレイ基板55と対向基板57との間で電気的な導通をとることが
できる。
【0074】
図2(b)に示すように、TFTアレイ基板55上には、画素スイッチング用のTFT
や走査線、データ線等の配線が形成された後の画素電極69上に、図示しない配向膜が形
成されている。他方、対向基板57上には、対向電極67の他、格子状又はストライプ状
の遮光膜68、更には最上層部分に図示しない配向膜が形成されている。また、液晶層5
0は、例えば一種又は数種類のネマティック液晶を混合した液晶からなり、これら一対の
配向膜間で、所定の配向状態をとる。
光束は、対向基板57に入射し、液晶を通過して光変調されて、TFTアレイ基板55
から出射される。対向基板57における光束が入射する面を、入射側表面57aと表記し
、TFTアレイ基板55における光束が出射される面を、出射側表面55aと表記する。
【0075】
なお、図2に示したTFTアレイ基板55上には、これらのデータ線駆動回路61、走
査線駆動回路64等に加えて、他の回路を形成してもよい。他の回路として、画像信号線
上の画像信号をサンプリングしてデータ線に供給するサンプリング回路、複数のデータ線
に所定電圧レベルのプリチャージ信号を画像信号に先行して各々供給するプリチャージ回
路、製造途中や出荷時の当該電気光学装置の品質、欠陥等を検査するための検査回路等を
形成してもよい。
【0076】
<液晶光変調装置>
次に、液晶光変調装置41の構成について、図3及び図4を参照して説明する。最初に
、液晶光変調装置41を構成する主要な要素について説明する。図3は、液晶光変調装置
を構成する主要要素を示す分解斜視図である。
【0077】
図3に示すように、液晶光変調装置41は、本発明に係る電気光学装置の一例であり、
上述した液晶パネル42と、実装ケース43と、フレキシブル配線基板(Flexible Print
ed Circuits、以降「FPC」と表記する。)45と、を有している。
FPC45は、液晶パネル42の外部回路接続端子62の部分で、液晶パネル42に電
気的に接続されている。液晶パネル42における、変調される光が入射する側の対向基板
57の入射側表面57aと、入射した光が液晶を通過して光変調されて出射される側のT
FTアレイ基板55の出射側表面55aとには、防塵用基板としての入射側防塵ガラス7
6又は出射側防塵ガラス77がそれぞれ接着固定され一体となっている。入射側防塵ガラ
ス76及び出射側防塵ガラス77は、投射型表示装置10において液晶光変調装置41に
表示された画像を投射する際に、液晶パネル42の表面に付着した異物等が映像として映
し出されないように焦点をずらすため、およそ1.0〜2.0mmの厚みを有している。
【0078】
実装ケース43は、保持部材としてのケースプレート71と、ケースカバー72と、ケ
ース止め73とを有している。
ケースプレート71は、液晶パネル42を収容する凹部を有する筐体であり、液晶パネ
ル42(出射側防塵ガラス77の出射側表面77a)の画像表示領域42Aの周辺領域を
支持する額縁領域71bを有している。額縁領域71bには、液晶パネル42の画像表示
領域42Aに対応した大きさの開口部71aが設けられている。
額縁領域71bの外周には、側壁71c、2個所の側壁71d、及び側壁71eが形成
されている。側壁71c、及び側壁71eの両端には、液晶光変調装置41を投射型表示
装置10に取り付けるための取付孔71hが設けられている。また、側壁71eの中央側
には、収容される液晶パネル42に接続されたフレキシブル配線基板(FPC)45を支
持する切り欠き部71gが設けられている。側壁71cの中央には、円柱状の突起71j
が設けられている。
【0079】
ケースカバー72は、ケースプレート71と協働して液晶パネル42を収容する凹部を
有する筐体において、取付孔71hに対応する位置である四隅が切り欠かれた形状を有し
ている。ケースカバー72は、液晶パネル42(入射側防塵ガラス76の入射側表面76
a)の画像表示領域42Aの周辺領域を支持する額縁領域72bを有している。額縁領域
72bには、液晶パネル42の画像表示領域42Aに対応した大きさの開口部72aが形
成されている。ケースカバー72には、額縁領域72bを囲うように側壁72c、2個所
の側壁72d、及び側壁72eが形成されている。2個所の側壁72dの外側(額縁領域
72bの反対側)の側面には、略三角柱状に突起したフック部72fがそれぞれ設けられ
ている。
【0080】
ケース止め73は、側面視略コの字型の形状をしており、ケースプレート71と当接す
る面に、液晶パネル42の画像表示領域42Aに対応した大きさの開口部73aを有して
いる。また折り曲げられた両端の側壁73bの突出部に、ケースカバー72のフック部7
2fに対応した大きさのフック開口73cを有している。
【0081】
次に、組立てられた状態の液晶光変調装置41について、図4を参照して説明する。図
4は、液晶光変調装置の概略形状を示す図である。図4(a)は、液晶光変調装置の概略
形状を示す外観斜視図であり、図4(b)は、図4(a)にA−Aで示した断面における
液晶光変調装置の断面形状を示す断面図である。
【0082】
図4に示すように、液晶パネル42が、入射側防塵ガラス76や出射側防塵ガラス77
と共に、ケースカバー72とケースプレート71とに挟持されて、実装ケース43に保持
されている。一端が液晶パネル42に接続されたFPC45は、中間を切り欠き部71g
の部分で支持されて、もう一端側が、実装ケース43の外部に出ている。
【0083】
実装ケース43に保持された液晶パネル42は、画像表示領域42Aが、開口部71a
と開口部72aと開口部73aとに臨む状態で保持されており、開口部72aから入射し
た光束は、画像表示領域42Aを透過して変調され、開口部71a及び開口部73aから
出射される。光束が入射する側の入射側表面57a及び光束が出射する側の出射側表面5
5aは、入射側防塵ガラス76又は出射側防塵ガラス77によって雰囲気から隔絶されて
いる。入射側防塵ガラス76の入射側表面76a及び出射側防塵ガラス77の出射側表面
77aの開口部71a又は開口部72aに臨む領域が雰囲気に接している。
【0084】
<防塵ガラスの表面形状>
次に、入射側防塵ガラス76及び出射側防塵ガラス77の表面形状について、図5を参
照して説明する。図5は、入射側防塵ガラスの表面の状態を示す説明図である。図5(a
)は、入射側防塵ガラスの平面図であり、図5(b)は、入射側防塵ガラスの表面の拡大
平面図であり、図5(c)は、入射側防塵ガラスの表面部分の拡大断面図である。
【0085】
図5(a)に示すように、入射側防塵ガラス76は、入射側表面76aの略全面に突起
79が形成されている。図5(b)及び(c)に示すように、突起79は、円錐形状を有
し、入射側表面76aに密集して立設されている。突起79の高さH及び配設ピッチPは
、430nmより小さくなっている。430nmは、投射型表示装置10において液晶光
変調装置41を用いて変調される赤色光、緑色光、及び青色光の中で最も波長が短い青色
光の波長である。突起79を構成する材料は、アクリル系の樹脂や、シリコン系樹脂や、
入射側防塵ガラス76と同じ石英ガラスなどが用いられる。
出射側防塵ガラス77における出射側表面77aにも、出射側表面77aの略全面に、
突起79と同様の突起が形成されている。
【0086】
<防塵ガラスの他の表面形状>
次に、上述した入射側防塵ガラス76又は出射側防塵ガラス77とは異なる表面形状を
有する防塵ガラスの構成について、図6及び図7を参照して説明する。図6及び図7は、
防塵ガラスの表面の状態を示す説明図である。図6(a)は、防塵ガラスの平面図であり
、図6(b)は、防塵ガラスの表面の拡大平面図であり、図6(c)は、防塵ガラスの表
面部分の拡大断面図である。
【0087】
図6(a)に示すように、防塵ガラス81は、表面81aの周縁部分を除いた突起面領
域81bに、突起82が形成されている。突起面領域81bの平面形状及び表面81aに
おける位置は、防塵ガラス81が液晶パネルと共に実装ケースに保持された状態で、液晶
パネルの画像表示領域に対応する形状及び位置である。液晶パネルが液晶パネル42であ
れば、突起面領域81bの平面形状及び表面81aにおける位置は、防塵ガラス81が液
晶パネル42と共に実装ケース43に保持された状態で、画像表示領域42Aに対応する
形状及び位置である。
図6(b)及び(c)に示すように、突起82は、半球形状を有し、突起面領域81b
に密集して立設されている。突起82の高さH及び配設ピッチPは、430nmより小さ
くなっている。430nmは、光の三原色を用いる投射型表示装置において液晶光変調装
置を用いて変調される赤色光、緑色光、及び青色光の中で最も波長が短い青色光の波長で
ある。突起82を構成する材料は、突起79を構成する材料と同様に、アクリル系の樹脂
や、シリコン系樹脂や、防塵ガラス81と同じ石英ガラスなどが用いられる。
【0088】
図7(a)、図7(c)、及び図7(e)は、防塵ガラスの表面の拡大平面図であり、
図7(b)、図7(d)、及び図7(f)は、図7(a)、図7(c)、又は図7(e)
に示した平面図に対応する、防塵ガラスの表面部分の拡大断面図である。
図7(a)及び図7(b)に示した突起84は、防塵ガラス83の表面に延在する断面
が楔形状の壁状の突起である。突起84の高さH及び配設ピッチPは、430nmより小
さくなっている。
図7(c)及び図7(d)に示した突起86は、防塵ガラス85の表面に立設されてい
る。突起86は、六角錘形状を有し、防塵ガラス85の表面に密集して立設されている。
突起86の高さH及び配設ピッチPは、430nmより小さくなっている。
図7(e)及び図7(f)に示した突起88は、防塵ガラス87の表面に立設されてい
る。突起88は、先端が球状の円柱形状を有し、防塵ガラス87の表面に密集して立設さ
れている。突起88の高さH及び配設ピッチPは、430nmより小さくなっている。
【0089】
以下、第一の実施形態による効果を記載する。本実施形態によれば、以下の効果が得ら
れる。
(1)入射側防塵ガラス76及び出射側防塵ガラス77は、入射側表面76a又は出射
側表面77aに、突起79又は突起79と同様の突起が形成されている。突起79又は突
起79と同様の突起が存在することで、平坦な面にくらべて、入射側表面76a又は出射
側表面77aに対して埃などが接触することができる面積が小さくなる。これにより、入
射側防塵ガラス76及び出射側防塵ガラス77に埃などが付着することを抑制することが
できる。
【0090】
(2)突起79は、円錐形状を有し、突起79の高さH及び配設ピッチPは、430n
mより小さくなっている。円錐形状を有する多数の突起79を設けることで、突起79の
高さの範囲で、入射側表面76aに平行な断面における突起79の占める割合が徐々に変
化するため、屈折率を徐々に変化させることができる。このようにすることにより、突起
の高さおよび配設ピッチより長い波長の光は、境界面で反射され難くなることが知られて
いる。
投射型表示装置10で扱われる光の3原色の中で、波長が最も短い青色の波長は、概ね
430nmであって、430nmより小さい突起79などが、430nmより小さい配設
ピッチで配置されていることで、光の3原色の光が反射されることを抑制することができ
る。
【0091】
(3)防塵ガラス81は、表面81aの周縁部分を除いた突起面領域81bに、突起8
2が形成されている。突起面領域81bの平面形状及び表面81aにおける位置は、防塵
ガラス81が液晶パネルと共に実装ケースに保持された状態で、液晶パネルの画像表示領
域に対応する形状及び位置である。液晶パネルの画像表示領域は、埃などが付着したり、
光が反射したりすることを抑制することが、液晶パネルによる表示品質などを向上させる
ことに寄与する領域である。当該領域にのみ突起を形成することで、不要な突起を構成す
ることを抑制して、効率良く突起を形成することができる。
【0092】
(第二の実施形態)
次に、電気光学装置、防塵用基板、及び電子機器の一実施形態である第二の実施形態に
ついて図面を参照して、説明する。本実施形態は、電気光学素子を備える電気光学装置の
一実施形態としての、有機EL表示装置、及び電気光学装置を備える電子機器としての情
報機器を例に説明する。有機EL表示装置が、電気光学素子に相当し、電気光学装置にも
相当する。
【0093】
<有機EL表示装置の構成>
最初に、有機EL表示装置の構成について、図8、図9、及び図10を参照して説明す
る。図8は、有機EL表示装置の平面構成を示す概略正面図である。図9は、有機EL素
子の配列例を示す平面図である。
図8に示すように、有機EL表示装置300は、発光素子である複数の有機EL素子3
07を有する素子基板301と、封止基板309とを備えている。有機EL素子307は
いわゆるカラー素子であり、有機EL表示装置300は、図9に示すように、赤色素子3
07R(赤色系)、緑色素子307G(緑色系)、青色素子307B(青色系)の3色の
有機EL素子307を有している。有機EL素子307は表示領域306に配置されてお
り、当該表示領域306に画像が表示される。
【0094】
素子基板301上の3色の有機EL素子307は、図9(a)、及び図9(b)に示す
ように、例えば、透光性のない樹脂材料によって格子状のパターンに形成された隔壁31
5によって区画されてドット・マトリクス状に並んだ複数の例えば略方形状の領域に発光
層317(図10参照)などを形成することによって形成されている。
【0095】
素子基板301は、各有機EL素子307に対応した位置に、駆動素子としての複数の
スイッチング素子312(図10参照)を備えている。スイッチング素子312は、例え
ば、TFT(Thin Film Transistor)素子である。また、封止基板309よりもひとまわ
り大きく、額縁状に張り出した部分には、スイッチング素子312を駆動する2つの走査
線駆動回路部303と1つのデータ線駆動回路部304が設けられている。素子基板30
1の端子部301aには、これらの走査線駆動回路部303、又はデータ線駆動回路部3
04と外部駆動回路とを接続するためのフレキシブルな中継基板308が実装されている
。これらの走査線駆動回路部303、及びデータ線駆動回路部304は、例えば、予め素
子基板301の表面に低温ポリシリコンの半導体層を形成して構成する。
【0096】
有機EL素子307の配列としては、例えば、ストライプ配列、モザイク配列、デルタ
配列等が知られている。ストライプ配列は、図9(a)に示したように、マトリクスの縦
列が全て同色の有機EL素子307になる配列である。モザイク配列は、図9(b)に示
したように、横方向の各行ごとに有機EL素子307一つ分だけ色をずらした配列で、3
色有機EL表示装置の場合、縦横の直線上に並んだ任意の3つの有機EL素子307が3
色となる配列である。そして、図9では図示省略したデルタ配列は、有機EL素子307
の配置を段違いにし、3色有機EL表示装置の場合、任意の隣接する3つの有機EL素子
307が異なる色となる配列である。
【0097】
次に、有機EL表示装置300の有機EL素子307の構成について説明する。図10
は、有機EL表示装置の有機EL素子を含む要部の断面図である。図10に示すように、
素子基板301は、ガラス基板310と、ガラス基板310の一方の表面上に形成された
複数のスイッチング素子312と、スイッチング素子312を覆うように形成された絶縁
層311と、絶縁層311上に形成されており、導通層314aを介してスイッチング素
子312と導通している複数の画素電極314と、複数の画素電極314の間に形成され
た隔壁315と、を有する。さらに、隔壁315によって区画された領域(以降、「画素
領域321」と表記する。)の画素電極314上に形成された正孔輸送層316と、正孔
輸送層316上に積層して形成された発光層317と、発光層317および隔壁315を
覆うように設けられた対向電極318と、を有する。有機EL表示装置300は、素子基
板301の対向電極318に対向して封止基板309が配置され、対向電極318と封止
基板309との間に不活性ガス320が封入されている。隔壁315によって区画された
領域の画素電極314上に形成された正孔輸送層316、発光層317、対向電極318
が、有機EL素子307に該当する。
【0098】
画素領域321に、赤色、緑色、又は青色の光をそれぞれ発光する、赤色発光層317
R(赤色系)、緑色発光層317G(緑色系)、又は青色発光層317B(青色系)を形
成することで、赤色素子307R、緑色素子307G、又は青色素子307Bを形成する
。赤色素子307R、緑色素子307G、青色素子307Bを各1個ずつ含む有機EL素
子307の組で、画像を構成する最小単位である絵素を形成している。1絵素内の赤色素
子307R、緑色素子307G、青色素子307Bのいずれか1つ又はそれらの組合せを
選択的に発光させることにより、フルカラー表示を行う。
【0099】
<封止基板の表面形状>
次に、封止基板309の表面形状について、図11を参照して説明する。図11は、封
止基板の表面の状態を示す説明図である。図11(a)は、封止基板の平面図であり、図
11(b)は、封止基板の表面の拡大平面図であり、図11(c)は、封止基板の表面部
分の拡大断面図である。
【0100】
図11(a)に示すように、封止基板309は、表面309aの周縁部分を除いた突起
面領域324に、突起322が形成されている。表面309aは、封止基板309が有機
EL表示装置300に組み込まれた状態において、対向電極318に対向する封止基板3
09の面の反対側の面である。突起面領域324の平面形状及び表面309aにおける位
置は、封止基板309が有機EL表示装置300に組み込まれた状態において、素子基板
301における表示領域306と、平面方向において重なる部分を含む平面形状及び位置
である。
【0101】
図11(b)及び(c)に示すように、突起322は、四角錐形状を有し、表面309
aに密集して立設されている。突起322の高さH及び配設ピッチPは、430nmより
小さくなっている。430nmは、有機EL表示装置300において有機EL素子307
が出射する光の中で最も波長が短い青色素子307Bが出射する青色光の波長である。突
起322を構成する材料は、アクリル系の樹脂や、シリコン系樹脂や、封止基板309と
同じ石英ガラスなどが用いられる。
【0102】
封止基板309に形成する突起は、第一の実施形態において、図5、図6、又は図7を
参照して説明したような突起であってもよい。
封止基板309が、防塵基板にも相当する。有機EL表示装置300が、電気光学素子
に相当し、電気光学装置にも相当する。
【0103】
<情報機器>
次に、有機EL表示装置を備える情報機器の具体例について、図12を参照して説明す
る。本実施形態の情報機器は、上述した有機EL表示装置300又は有機EL表示装置3
00と同様の構成を有する有機EL表示装置を備えた情報機器である。
【0104】
図12(a)は、携帯電話の一例を示した斜視図である。図12(a)に示すように、
携帯電話600は、上述した有機EL表示装置300を有する有機EL表示部601と、
携帯電話本体602と、を備えている。
【0105】
図12(b)は、ワードプロセッサー、パーソナルコンピューターなどの携帯型情報処
理装置の一例を示した斜視図である。図12(b)に示すように、情報処理装置700は
、有機EL表示装置300と同様の構成を有する有機EL表示装置を有する有機EL表示
部702と、キーボード701などの入力部と、情報処理本体703と、を備えている。
【0106】
図12(c)は、腕時計型電子機器の一例を示した斜視図である。図12(c)に示す
ように、腕時計800は、有機EL表示装置300と同様の構成を有する有機EL表示装
置を有する有機EL表示部801と、時計本体802と、を備えている。
【0107】
図12(d)は、情報機器の一例である有機ELテレビを示す外観斜視図である。図1
2(d)に示すように、有機ELテレビ900は、表示部901と、テレビ本体902と
、を備えている。表示部901は、上述した有機EL表示装置300と同様の構成を有す
る有機EL表示装置を表示手段として搭載している。
【0108】
以下、第二の実施形態による効果を記載する。本実施形態によれば、以下の効果が得ら
れる。
(1)封止基板309は、表面309aの突起面領域324に、突起322が形成され
ている。突起322が存在することで、平坦な面にくらべて、表面309aに対して埃な
どが接触することができる面積が小さくなる。これにより、封止基板309の表面309
aに埃などが付着することを抑制することができる。
【0109】
(2)突起322は、四角錐形状を有し、突起322の高さH及び配設ピッチPは、4
30nmより小さくなっている。四角錐形状を有する多数の突起322を設けることで、
突起322の高さの範囲で、表面309aに平行な断面における突起322の占める割合
が徐々に変化するため、屈折率を徐々に変化させることができる。このようにすることに
より、突起の高さおよび配設ピッチより長い波長の光は、境界面で反射され難くなること
が知られている。
有機EL表示装置300が発光する光の3原色の中で、波長が最も短い青色の波長は、
概ね430nmであって、430nmより小さい突起322が、430nmより小さい配
設ピッチで配置されていることで、光の3原色の光が反射されることを抑制することがで
きる。
【0110】
(3)封止基板309は、表面309aの周縁部分を除いた突起面領域324に、突起
322が形成されている。突起面領域324の平面形状及び表面309aにおける位置は
、封止基板309が有機EL表示装置300に組み込まれた状態において、素子基板30
1における表示領域306と、平面方向において重なる部分を含む平面形状及び位置であ
る。表示領域306は、埃などが付着したり、光が反射したりすることを抑制することが
、有機EL表示装置300による表示品質などを向上させることに寄与する領域である。
当該領域にのみ突起を形成することで、不要な突起を構成することを抑制して、効率良く
突起を形成することができる。
【0111】
以上、添付図面を参照しながら好適な実施形態について説明したが、好適な実施形態は
、前記実施形態に限らない。実施形態は、要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加
え得ることは勿論であり、以下のように実施することもできる。
【0112】
(変形例1)前記第一の実施形態においては、液晶パネル42に対して、それぞれ突起
79のような突起を有する入射側防塵ガラス76及び出射側防塵ガラス77を備えていた
が、電気光学素子に対して、光束の入射側及び出射側の双方に防塵用基板を配設すること
は必須ではない。防塵用基板としての防塵ガラスは、入射側又は出射側のいずれか一方に
のみ設けてもよい。
また、光束の入射側及び出射側の双方の防塵用基板に突起79のような突起を形成する
ことも必須ではない。突起は、入射側又は出射側のいずれか一方の防塵用基板にのみ設け
てもよい。
【0113】
(変形例2)前記第一の実施形態においては、液晶パネル42に対して、それぞれ突起
79のような突起を有する入射側防塵ガラス76及び出射側防塵ガラス77を備えていた
が、防塵ガラスを配設して、当該防塵ガラスに突起を形成することは必須ではない。例え
ば、入射側偏光板46及び出射側偏光板47のような、入射側及び出射側に配設される偏
光板の両方又はどちらか一方の面に、突起を形成してもよい。
【0114】
(変形例3)前記実施形態においては、突起79などの高さH及び配設ピッチPは、投
射型表示装置10において液晶光変調装置41を用いて変調される赤色光、緑色光、及び
青色光の中で最も波長が短い青色光の波長である430nmより小さくなっていた。また
、突起322の高さH及び配設ピッチPは、有機EL表示装置300において有機EL素
子307が出射する光の中で最も波長が短い青色素子307Bが出射する青色光の波長で
ある430nmより小さくなっていた。しかし、電気光学装置が出射する光の波長によっ
て突起の大きさを規定することは必須ではない。突起は、可視光線の中で最も波長が短い
光の波長より小さい高さ及び配設ピッチで形成してもよい。突起を、可視光線の中で最も
波長が短い光の波長より小さい高さ及び配設ピッチで形成することにより、外部から電気
光学装置の表示部に入射した可視光が表示面で反射されることを抑制することができる。
可視光線の中で最も波長が短い光の波長は、概ね380nmである。したがって、突起は
、380nmより小さい高さ及び配設ピッチで形成してもよい。
【0115】
(変形例4)前記実施形態においては、円錐形状を有する突起79などを例示したが、
突起の形状は、実施形態において例示したような形状に限らない。例えば、頂上が球状の
円錐形状や、角錐形状であってもよい。突起の形状は、突起が形成された面に並行な断面
における突起部分が占める面積が、突起が形成された面に垂直な方向において、突起が形
成された面からの距離によって徐々に変化するような形状であればどのような形状であっ
てもよい。
【0116】
(変形例5)前記実施形態においては、突起79や突起82などは、互いに接する状態
で配設されていたが、突起を互いに接するように配設することは必須ではない。突起84
のように、互いに間隔を空けて配設してもよいし、突起の一部が重なりあう状態に配設し
てもよい。
【0117】
(変形例6)前記実施形態においては、入射側防塵ガラス76の入射側表面76aに配
設された突起79や、防塵ガラス81の突起面領域81bに配設された突起82などは、
配設されている複数の突起が略同じ高さ及び形状の突起であったが、複数の突起が同じ高
さ及び形状であることは必須ではない。複数の突起は、封止基板309の突起面領域32
4に配設された突起322のように、大きさが互いに異なる突起であってもよい。また、
突起84のような壁状の突起においては、突起の部分ごとに高さや断面形状が異なる形状
の突起であってもよい。
【0118】
(変形例7)前記第一の実施形態においては、電気光学素子の一例としての液晶パネル
42を備え、投射型の表示装置として用いられる液晶光変調装置41を電気光学装置の一
例として説明したが、液晶光変調装置は、投射型の装置に限らない。表示部に画像を表示
して、当該表示部に表示された画像を直接視認する構成の液晶表示装置であってもよい。
このような装置においては、入射側防塵ガラス76や出射側防塵ガラス77のような液晶
パネル42の表面に付着した異物等が映像として映し出されないように焦点をずらす機能
を目的の一つとする防塵ガラスが用いられることは少ないが、カバーガラスなどの防塵用
基板や、偏光板の表面などに、上述したような突起を設けることで、上述した効果と同様
の効果を得ることができる。
また、液晶素子は、透過型の液晶素子でもよいし、反射型液晶素子(エルコス(LCO
S:Liquid crystal on silicon)を用いてもよい。
【0119】
(変形例8)前記実施形態においては、電気光学素子の一例としての液晶パネル42を
備える液晶光変調装置41、及び有機EL表示装置300を電気光学装置の一例として説
明したが、上記したような突起を設けることが効果を奏する電気光学装置は液晶装置や有
機EL装置に限らない。液晶装置や有機EL装置以外の電気光学装置としては、プラズマ
型表示装置(プラズマディスプレイ(PDP: Plasma Display Panel))や、電解放出
型表示装置(電解放出型ディスプレイ(FED:Field Emission Display)(SED:Su
rface-conduction Electron-emitter Display))や、デジタルミラーデバイス(DMD
:Digital Mirror Device)装置などが挙げられる。
【0120】
(変形例9)前記第二の実施形態においては、情報機器が備える表示装置は有機EL表
示装置300を有する表示部であったが、情報機器が備える表示装置は有機EL表示装置
に限らない。表示装置は、上述した液晶表示装置や、プラズマ型表示装置や、電解放出型
表示装置や、デジタルミラーデバイス装置などであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】第一の実施形態における投射型表示装置の概略構成を示す模式図。
【図2】(a)は、液晶パネルについて、各構成要素と共に対向基板側から見た平面図。(b)は、(a)にH−Hで示した断面における断面形状を示す概略断面図。
【図3】液晶光変調装置を構成する主要要素示す分解斜視図。
【図4】(a)は、液晶光変調装置の概略形状を示す外観斜視図。(b)は、(a)にA−Aで示した断面における液晶光変調装置の断面形状を示す断面図。
【図5】(a)は、入射側防塵ガラスの平面図。(b)は、入射側防塵ガラスの表面の拡大平面図。(c)は、入射側防塵ガラスの表面部分の拡大断面図。
【図6】(a)は、防塵ガラスの平面図。(b)は、防塵ガラスの表面の拡大平面図。(c)は、防塵ガラスの表面部分の拡大断面図。
【図7】(a)、(c)、及び(e)は、防塵ガラスの表面の拡大平面図。(b)、(d)、及び(f)は、(a)、(c)、又は(e)に示した平面図に対応する、防塵ガラスの表面部分の拡大断面図。
【図8】第二の実施形態における有機EL表示装置の平面構成を示す概略正面図。
【図9】有機EL素子の配列例を示す平面図。
【図10】有機EL表示装置の有機EL素子を含む要部の断面図。
【図11】(a)は、封止基板の平面図。(b)は、封止基板の表面の拡大平面図。(c)は、封止基板の表面部分の拡大断面図。
【図12】(a)は、携帯電話の一例を示した斜視図。(b)は、ワープロ、パソコンなどの携帯型情報処理装置の一例を示した斜視図。(c)は、腕時計型電子機器の一例を示した斜視図。(d)は、情報機器の一例である有機ELテレビを示す外観斜視図。
【符号の説明】
【0122】
10…投射型表示装置、11…光源装置、12…色分離光学装置、16…光学変調装置
、17…投射光学装置、41…液晶光変調装置、42…液晶パネル、42A…画像表示領
域、46…入射側偏光板、47…出射側偏光板、55…TFTアレイ基板、57…対向基
板、71…ケースプレート、72…ケースカバー、76…入射側防塵ガラス、76a…入
射側表面、77…出射側防塵ガラス、77a…出射側表面、81,83,85,87…防
塵ガラス、81a…表面、81b…突起面領域、82,84,86,88…突起、300
…有機EL表示装置、301…素子基板、306…表示領域、307…有機EL素子、3
09…封止基板、309a…表面、322…突起、324…突起面領域、600…携帯電
話、601…有機EL表示部、700…情報処理装置、702…有機EL表示部、703
…情報処理本体、800…腕時計、801…有機EL表示部、900…有機ELテレビ、
901…表示部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気光学素子と、該電気光学素子に貼り合わされた防塵用基板とを備えた電気光学装置
であって、
前記防塵用基板は、前記電気光学素子と対向する面の反対側の面に、複数の突起が設け
られていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
前記防塵用基板は、前記電気光学素子に対して、前記電気光学素子における光束の入射
側及び出射側に配設されていることを特徴とする、請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記防塵用基板は、前記電気光学素子に対して、前記電気光学素子における光束の出射
側に配設されていることを特徴とする、請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項4】
前記複数の突起におけるそれぞれの突起の高さ、及びそれぞれの前記突起間の配設ピッ
チは、前記電気光学素子に入射する入射光の波長より小さいことを特徴とする、請求項1
乃至3のいずれか一項に記載の電気光学装置。
【請求項5】
前記複数の突起におけるそれぞれの突起の高さ、及びそれぞれの前記突起間の配設ピッ
チは、430nm未満であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の
電気光学装置。
【請求項6】
前記複数の突起におけるそれぞれの突起の高さ、及びそれぞれの前記突起間の配設ピッ
チは、可視光の波長より小さいことを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載
の電気光学装置。
【請求項7】
前記複数の突起におけるそれぞれの突起の高さ、及びそれぞれの前記突起間の配設ピッ
チは、380nm未満であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の
電気光学装置。
【請求項8】
前記突起は、前記防塵用基板の面に立設されており、前記防塵用基板の面に垂直な断面
の少なくとも一つの前記断面における断面形状が、楔形であることを特徴とする、請求項
1乃至7のいずれか一項に記載の電気光学装置。
【請求項9】
前記楔形の先端が円弧で構成されていることを特徴とする、請求項8に記載の電気光学
装置。
【請求項10】
前記突起は、前記防塵用基板の面に立設された球冠であることを特徴とする、請求項1
乃至7のいずれか一項に記載の電気光学装置。
【請求項11】
前記突起は、前記防塵用基板の面に立設されており、先端側が球冠形状の円柱、角柱、
円錐、又は角錐であることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の電気光
学装置。
【請求項12】
前記複数の突起は、前記防塵用基板の面における、前記電気光学素子が備える光学変調
領域に対応する領域に配設されていることを特徴とする、請求項1乃至11のいずれか一
項に記載の電気光学装置。
【請求項13】
前記電気光学素子、又は前記電気光学素子及び前記防塵用基板を保持する保持ケースを
さらに備え、前記保持ケースは、前記電気光学素子又は前記防塵用基板における前記突起
が形成されていない部分に当接して前記電気光学素子又は前記防塵用基板を保持している
ことを特徴とする、請求項12に記載の電気光学装置。
【請求項14】
電気光学装置が備える電気光学素子に貼り合わされた防塵用基板であって、
前記防塵用基板は、前記電気光学素子と対向する面の反対側の面に、複数の突起が設け
られていることを特徴とする、防塵用基板。
【請求項15】
前記複数の突起におけるそれぞれの突起の高さ、及びそれぞれの前記突起間の配設ピッ
チは、前記電気光学素子に入射する入射光の波長より小さいことを特徴とする、請求項1
4に記載の防塵用基板。
【請求項16】
前記複数の突起におけるそれぞれの突起の高さ、及びそれぞれの前記突起間の配設ピッ
チは、430nm未満であることを特徴とする、請求項14に記載の防塵用基板。
【請求項17】
前記複数の突起におけるそれぞれの突起の高さ、及びそれぞれの前記突起間の配設ピッ
チは、可視光の波長より小さいことを特徴とする、請求項14に記載の防塵用基板。
【請求項18】
前記複数の突起におけるそれぞれの突起の高さ、及びそれぞれの前記突起間の配設ピッ
チは、380nm未満であることを特徴とする、請求項14に記載の防塵用基板。
【請求項19】
前記突起は、前記防塵用基板の面に立設されており、前記防塵用基板の面に垂直な断面
の少なくとも一つの前記断面における断面形状が、楔形であることを特徴とする、請求項
14乃至18のいずれか一項に記載の防塵用基板。
【請求項20】
前記楔形の先端が円弧で構成されていることを特徴とする、請求項19に記載の防塵用
基板。
【請求項21】
前記突起は、前記防塵用基板の面に立設された球冠であることを特徴とする、請求項1
4乃至18のいずれか一項に記載の防塵用基板。
【請求項22】
前記突起は、先端側が球冠形状の円柱、角柱、円錐、又は角錐であることを特徴とする
、請求項14乃至18のいずれか一項に記載の防塵用基板。
【請求項23】
前記複数の突起は、前記防塵用基板及び前記電気光学素子が前記電気光学装置に配設さ
れた状態において、前記防塵用基板における前記電気光学素子が備える光学変調領域に対
応する領域に配設されていることを特徴とする、請求項14乃至22のいずれか一項に記
載の防塵用基板。
【請求項24】
請求項1乃至13のいずれか一項に記載の電気光学装置、又は請求項14乃至23のい
ずれか一項に記載の防塵用基板を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−152266(P2010−152266A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−332970(P2008−332970)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】