説明

電気光学装置及び電子機器

【課題】液晶表示装置等の電気光学装置において、電気光学パネルを好適に保持すると共に効率的な放熱を行う。
【解決手段】電気光学装置は、入射した光を反射させることにより画像を表示する表示面、該表示面の反対側に位置する背面を有する反射型の電気光学パネル(100)と、第1の材料を含んで構成されており、電気光学パネルを保持する第1保持部材(310)と、第1の材料より熱伝導率の高い第2の材料を含んで構成されており、第1保持部材と共に電気光学パネルを保持する第2保持部材(320)とを備える。本発明では特に、第1の材料及び第2の材料は、線膨張係数の差が所定の範囲内である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば液晶装置等の電気光学装置、及び該電気光学装置を備えた、例えば液晶プロジェクター等の電子機器の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電気光学装置として、例えば入射した光を画素単位で変調してから反射することにより画像を表示する反射型の電気光学パネルを有するものがある。この電気光学パネルは、実装ケースに収納された状態でプロジェクター等の各種電子機器に取り付けられることになるが、電気光学パネル及び実装ケースの線膨張係数の違いから、温度環境によっては、電気光学パネルから実装ケースから応力を受けることになってしまう場合がある。このため、例えば特許文献1では、電気光学パネルの線膨張係数に基づいて、実装ケースの線膨張係数を決定するという技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−198934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した技術では、実装ケースの材料を電気光学パネルの材料に基づいて決定することが求められるため、実装ケースの材料として選択できるものが限られ、実践上様々な不都合が生じてしまう。具体的には、電気光学パネルは、石英等の比較的線膨張係数の小さい材料を含んで構成されることが多いため、実装ケースに、熱伝導率の高いとされる線膨張係数の大きい材料を使用することできない。
【0005】
このように、上述した技術には、仮に電気光学パネルに対する実装ケースからの応力を低減することができたとしても、実装ケースに熱伝導率の高い材料を使用することで、電気光学パネルにおける放熱効果を高めることが困難であるという技術的問題点がある。
【0006】
本発明は、例えば上述した問題点に鑑みなされたものであり、電気光学パネルを好適に保持すると共に効率的な放熱を行うことが可能な電気光学装置及び電子機器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電気光学装置は上記課題を解決するために、入射した光を反射させることにより画像を表示する表示面、該表示面の反対側に位置する背面を有する反射型の電気光学パネルと、第1の材料を含んで構成されており、前記電気光学パネルを保持する第1保持部材と、前記第1の材料より熱伝導率の高い第2の材料を含んで構成されており、前記第1保持部材と共に前記電気光学パネルを保持する第2保持部材とを備え、前記第1の材料及び前記第2の材料は、線膨張係数の差が所定の範囲内である。
【0008】
本発明の電気光学装置によれば、その動作時には、電気光学パネルに対して、例えば白色ランプ等の光源から光が照射される。電気光学パネルは、例えば一対の基板間に液晶等の電気光学物質を挟持してなり、表示面に入射した光を画素単位で変調した後、Al(アルミニウム)膜等の反射膜によって反射することにより画像を表示する。各画素は、例えば表示面にマトリクス状に配置されており、走査信号を供給する走査線及び画像信号を供給するデータ線に夫々電気的に接続されている。各画素は、画像信号の電位に応じて、対向配置された液晶等の電気光学物質を制御する。
【0009】
本発明の電気光学パネルは、第1の材料を含んで構成される第1保持部材によって保持されている。また、第1の材料より熱伝導率の高い第2の材料を含んで構成される第2保持部材によって保持されている。尚、ここでの「熱伝導率」とは、電気光学パネルにおいて発生した熱を、電気光学パネルと対向する側の面から対向しない側の面に伝達する効率を表す値である。このため、第2の材料は、第1の材料より放熱効果の高い材料といえる。
【0010】
第1保持部材及び第2保持部材は、典型的には、互いに対向するように組み合わされ、実装ケースとして電気光学パネルを保持する。尚、第1及び第2保持部材は、夫々接着剤やグリスによって電気光学パネルに接着されている。また、第1保持部材と第2保持部材とが互いに接着されていてもよい。
【0011】
ここで本発明では特に、第1の材料及び前記第2の材料は、線膨張係数の差が所定の範囲内とされている。即ち、第1保持部材及び第2保持部材は、互いに線膨張係数が近い材料を含んで構成されている。尚、ここでの「所定の範囲」とは、第1保持部材及び第2保持部材が夫々膨張した際に、互いの線膨張係数の違いに起因して、電気光学パネルに不具合を生じさせてしまう程の応力が加わってしまうことを防止できるような値である。このため本発明では、例えば装置の動作によって発生した熱等で各部材が熱膨張した際に、第1保持部材及び第2保持部材の膨張度合いが互いに大きく異なってしまうことにより、電気光学パネルとの接着箇所等に無理な力がかかってしまうことを防止できる。「所定の範囲」は、例えば第1保持部材及び第2保持部材の形状や、第1保持部材及び第2保持部材と電気光学パネルとの接着構造等に基づいて設定される。
【0012】
電気光学パネルの保持部材の材料としては、電気光学パネルに線膨張係数が近く、且つ、熱伝導率が高い(即ち、放熱効果が高い)ものが好ましい。しかしながら、熱伝導率の高い材料は線膨張係数が大きくなる傾向があり、電気光学パネルに用いられる比較的線膨張係数の小さい材料(例えば、石英等)と線膨張係数を近付けるのは難しい。即ち、線膨張係数と熱伝導率の両方の条件を満たすことは難しい。尚、線膨張係数が低く熱伝導率が高い材料として、純銅や純アルミニウムが挙げられるが、これらの物質は合金等の材料と比べるとコストが大幅に増加してしまう。
【0013】
しかるに本発明では特に、第1保持部材と第2保持部材とが相異なる材料を含んで構成されているため、例えば電気光学パネルと固定される第1保持部材に、比較的線膨張係数が小さく電気光学パネルとの線膨張係数の差が小さくなるような材料を用いると共に、第2保持部材に、比較的線膨張係数が大きく熱伝導率の高い材料を用いることで、電気光学パネルの確実な保持及び高い放熱効果を両立することができる。即ち、第1保持部材及び第2保持部材の各々に求められる相異なる機能に基づいて適宜材料を決定することで、より好適な条件で電気光学パネルを保持することが可能となる。
【0014】
以上説明したように、本発明の電気光学装置によれば、電気光学パネルを好適に保持すると共に効率的な放熱を行うことができる。従って、電気光学装置の信頼性を向上させることが可能である。
【0015】
本発明の電気光学装置の一態様では、前記第1保持部材は、前記表示面側から前記電気光学パネルを保持しており、前記第2保持部材は、前記背面側から前記電気光学パネルを保持している。
【0016】
この態様によれば、第1保持部材は、例えば表示面における表示領域(即ち、画像表示に寄与する領域)を囲うように保持するフレーム状の部材であり、表示面側から電気光学パネルを保持している。第1保持部材は、保持部材としての機能だけではなく、電気光学パネルに入射する光を制限する見切り部材としての機能を有していてもよい。一方、第2保持部材は、背面側(即ち、第1保持部材とは反対側)から電気光学パネルを保持している。
【0017】
ここで特に、第2保持部材は、画像表示に寄与しない背面側に設けられているため、電気光学パネルにおいて発生した熱を放熱する機能を有することが求められる場合が多い。これに対し本態様では、第2保持部材が、第1保持部材に含まれる第1の材料より熱伝導率の高い第2の材料を含んで構成されているため、第2保持部材の放熱効果が高められている。よって、電気光学パネルにおいて発生した熱を極めて効果的に放熱でき、装置の信頼性を高めることができる。
【0018】
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記第1の材料は、前記第2の材料よりも前記電気光学パネルに線膨張係数が近い。
【0019】
この態様によれば、第1保持部材が、第2保持部材よりも電気光学パネルに線膨張係数が近い材料を含んで構成されることになる。このため、各部材が熱等によって膨張した際に、第1保持部材は、第2保持部材よりも電気光学パネルに与えるダメージが小さい。よって、第1保持部材を、第2保持部材より強固に電気光学パネル接着されるような保持部材として構成すれば、電気光学パネルをより確実に保持することができると共に、第1保持部材及び第2保持部材から電気光学パネルに与える総合的なダメージを低減することができる。
【0020】
特に、第1保持部材を見切り部材として機能させる場合には、電気光学パネルに対して固定することが求められるため、上述した効果は顕著に発揮される。
【0021】
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記第2保持部材は、前記電気光学パネルにおいて発生した熱を放熱する放熱部を有する。
【0022】
この態様によれば、第2保持部材が放熱部を有しているため、動作時に電気光学パネルで発生した熱を効率的に放熱することができる。従って、装置の信頼性をより高めることができる。
【0023】
尚、放熱部は、例えば熱伝導性の高い材料を含んで構成されると共に表面積が大きくとれるような構造とされている。また、放熱フィンを備えていてもよい。
【0024】
本発明の電子機器は上記課題を解決するために、上述した本発明の電気光学装置(但し、その各種態様も含む)を備える。
【0025】
本発明の電子機器によれば、上述した本発明に係る電気光学装置を具備してなるので、信頼性の高い投射型表示装置、テレビ、携帯電話、電子手帳、ワードプロセッサー、ビューファインダー型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダー、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルなどの各種電子機器を実現できる。また、本発明の電子機器として、例えば電子ペーパーなどの電気泳動装置等も実現することも可能である。
【0026】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施形態に係る電気光学パネルの全体構成を示す平面図である。
【図2】図1のH−H´線断面図である。
【図3】実施形態に係る電気光学パネルの画像表示領域を構成するマトリクス状に形成された複数の画素における各種素子、配線等の等価回路図である。
【図4】実施形態に係る電気光学装置の全体構成を示す斜視図である。
【図5】実施形態に係る電気光学装置の具体的な構成を示す断面図である。
【図6】フレーム及びヒートシンクに用いられる材料の熱伝導率及び線膨張係数を示す表である。
【図7】フレーム及びヒートシンクを構成する材料の組み合わせの一例を示す表(その1)である。
【図8】フレーム及びヒートシンクを構成する材料の組み合わせの一例を示す表(その2)である。
【図9】電気光学装置を適用した電子機器の一例たるプロジェクターの構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下では、本発明の実施形態について図を参照しつつ説明する。
【0029】
<電気光学パネル>
先ず、本実施形態に係る電気光学装置に備えられる反射型の電気光学パネルについて、図1から図3を参照して説明する。尚、以下の実施形態では、駆動回路内蔵型のTFT(Thin Film Transistor)アクティブマトリクス駆動方式の液晶装置を例にとる。
【0030】
本実施形態に係る電気光学パネルの全体構成について、図1及び図2を参照して説明する。ここに図1は、本実施形態に係る電気光学パネルの全体構成を示す平面図であり、図2は、図1のH−H´線断面図である。
【0031】
図1及び図2において、本実施形態に係る電気光学パネル100では、TFTアレイ基板10と対向基板20とが対向配置されている。TFTアレイ基板10は、例えば石英基板、ガラス基板等の透明基板や、シリコン基板等である。対向基板20は、例えば石英基板、ガラス基板等の透明基板である。TFTアレイ基板10と対向基板20との間には、液晶層50が封入されている。液晶層50は、例えば一種又は数種類のネマティック液晶を混合した液晶からなり、一対の配向膜間で所定の配向状態をとる。
【0032】
TFTアレイ基板10と対向基板20とは、複数の画素電極が設けられた画像表示領域10aの周囲に位置するシール領域に設けられたシール材52により、相互に接着されている。
【0033】
シール材52は、両基板を貼り合わせるための、例えば紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂等からなり、製造プロセスにおいてTFTアレイ基板10上に塗布された後、紫外線照射、加熱等により硬化させられたものである。シール材52中には、TFTアレイ基板10と対向基板20との間隔(即ち、基板間ギャップ)を所定値とするためのグラスファイバー或いはガラスビーズ等のギャップ材が散布されている。尚、ギャップ材を、シール材52に混入されるものに加えて若しくは代えて、画像表示領域10a又は画像表示領域10aの周辺に位置する周辺領域に、配置するようにしてもよい。
【0034】
シール材52が配置されたシール領域の内側に並行して、画像表示領域10aの額縁領域を規定する遮光性の額縁遮光膜53が、対向基板20側に設けられている。尚、このような額縁遮光膜53の一部又は全部は、TFTアレイ基板10側に内蔵遮光膜として設けられてもよい。
【0035】
周辺領域のうち、シール材52が配置されたシール領域の外側に位置する領域には、データ線駆動回路101及び外部回路接続端子102がTFTアレイ基板10の一辺に沿って設けられている。走査線駆動回路104は、この一辺に隣接する2辺に沿い、且つ、額縁遮光膜53に覆われるようにして設けられている。更に、このように画像表示領域10aの両側に設けられた二つの走査線駆動回路104間をつなぐため、TFTアレイ基板10の残る一辺に沿い、且つ、額縁遮光膜53に覆われるようにして複数の配線105が設けられている。
【0036】
TFTアレイ基板10上における対向基板20の4つのコーナー部に対向する領域には、両基板間を上下導通材107で接続するための上下導通端子106が配置されている。これらにより、TFTアレイ基板10と対向基板20との間で電気的な導通をとることができる。
【0037】
図2において、TFTアレイ基板10上には、駆動素子である画素スイッチング用のTFTや走査線、データ線等の配線が作り込まれた積層構造が形成される。この積層構造の詳細な構成については図2では図示を省略してあるが、この積層構造の上に、反射電極となる反射型の画素電極9aが設けられている。画素電極9aは典型的にはアルミニウムなどの光反射性の材料により、画素毎に所定のパターンで島状に形成され、入射光を反射できるように形成されている。
【0038】
画素電極9aは、対向電極21に対向するように、TFTアレイ基板10上の画像表示領域10aに形成されている。TFTアレイ基板10における液晶層50の面する側の表面、即ち画素電極9a上には、配向膜16が画素電極9aを覆うように形成されている。
【0039】
対向基板20におけるTFTアレイ基板10との対向面上には、ITO等の透明材料からなる対向電極21が複数の画素電極9aと対向するように形成されている。また、画像表示領域10aにおいてカラー表示を行うために、開口領域及び非開口領域の一部を含む領域に、図2には図示しないカラーフィルターが形成されるようにしてもよい。対向基板20の対向面上における、対向電極21上には、配向膜22が形成されている。なお、透過型の液晶装置と同様に、対向基板20上に格子状又はストライプ状に遮光膜を形成し、非開口領域を設けてもよい。
【0040】
尚、図1及び図2に示したTFTアレイ基板10上には、上述したデータ線駆動回路101、走査線駆動回路104等の駆動回路に加えて、画像信号線上の画像信号をサンプリングしてデータ線に供給するサンプリング回路、複数のデータ線に所定電圧レベルのプリチャージ信号を画像信号に先行して各々供給するプリチャージ回路、製造途中や出荷時の当該電気光学パネル100の品質、欠陥等を検査するための検査回路等を形成してもよい。
【0041】
次に、本実施形態に係る電気光学パネルの画素部の電気的な構成について、図3を参照して説明する。ここに図3は、本実施形態に係る電気光学パネルの画像表示領域を構成するマトリクス状に形成された複数の画素における各種素子、配線等の等価回路図である。
【0042】
図3において、画像表示領域10aを構成するマトリクス状に形成された複数の画素の各々には、画素電極9a及びTFT30が形成されている。TFT30は、画素電極9aに電気的に接続されており、本実施形態に係る電気光学パネル100の動作時に画素電極9aをスイッチング制御する。画像信号が供給されるデータ線6aは、TFT30のソースに電気的に接続されている。データ線6aに書き込む画像信号S1、S2、・・・、Snは、この順に線順次に供給しても構わないし、相隣接する複数のデータ線6a同士に対して、グループ毎に供給するようにしてもよい。
【0043】
TFT30のゲートには、走査線3aが電気的に接続されており、本実施形態に係る電気光学パネル100は、所定のタイミングで、走査線3aにパルス的に走査信号G1、G2、・・・、Gmを、この順に線順次で印加するように構成されている。画素電極9aは、TFT30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT30を一定期間だけそのスイッチを閉じることにより、データ線6aから供給される画像信号S1、S2、・・・、Snが所定のタイミングで書き込まれる。画素電極9aを介して電気光学物質の一例としての液晶に書き込まれた所定レベルの画像信号S1、S2、・・・、Snは、対向基板に形成された対向電極との間で一定期間保持される。
【0044】
液晶層50(図2参照)を構成する液晶は、印加される電圧レベルにより分子集合の配向や秩序が変化することにより、光を変調し、階調表示を可能とする。例えば、ノーマリーホワイトモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が減少し、ノーマリーブラックモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が増加され、全体として電気光学パネル100からは画像信号に応じたコントラストをもつ光が出射される。
【0045】
ここで保持された画像信号がリークすることを防ぐために、画素電極9aと対向電極21(図2参照)との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量70が付加されている。蓄積容量70は、画像信号の供給に応じて各画素電極9aの電位を一時的に保持する保持容量として機能する容量素子である。蓄積容量70の一方の電極は、画素電極9aと並列してTFT30のドレインに電気的に接続され、他方の電極は、定電位となるように、電位固定の容量線300に電気的に接続されている。蓄積容量70によれば、画素電極9aにおける電位保持特性が向上し、コントラスト向上やフリッカーの低減といった表示特性の向上が可能となる。
【0046】
<電気光学装置>
次に、上述した電気光学パネル100を備える電気光学装置について、図4から図8を参照して説明する。
【0047】
先ず、本実施形態に係る電気光学装置の構成について、図4及び図5を参照して説明する。ここに図4は、本実施形態に係る電気光学装置の全体構成を示す斜視図であり、図5は、本実施形態に係る電気光学装置の具体的な構成を示す断面図である。尚、図4以降の図では、図1及び図2に示した電気光学パネル100における詳細な部材を適宜省略して図示している。
【0048】
図4において、本実施形態に係る電気光学装置は、電気光学パネル100と、フレキシブル基板200と、フレーム310と、ヒートシンク320とを備えて構成されている。
【0049】
電気光学パネル100には、種々の制御信号を送るための信号配線を含むフレキシブル基板200が電気的に接続されている。フレキシブル基板200は、例えばポリイミド等の基材に信号配線等がパターニングされることによって形成されている。尚、フレキシブル基板200上には、電気光学パネル100を駆動するための駆動回路の少なくとも一部を含む駆動用ICチップ等が配置されていてもよい。フレキシブル基板200は、電気光学パネル100に接続された一端とは反対側の他端が、フレーム310及びヒートシンク320の外側に引き出されており、外部回路(図示省略)と接続されている。
【0050】
フレーム310は、本発明の「第1保持部材」の一例であり、画像表示領域10aが設けられている表示面側から、電気光学パネル100を保持する。またフレーム310は、電気光学パネル100を保持する保持部材としてだけではなく、電気光学パネル100に入射しようとする光を制限する見切り部材としても機能する。フレーム310を構成する具体的な材料については、後に詳述する。
【0051】
ヒートシンク320は、本発明の「第2保持部材」の一例であり、表示面の反対側に位置する背面側から、電気光学パネル100を保持する。ヒートシンク320は、電気光学パネル100において発生した熱を放熱するための放熱部325を有している。これにより、電気光学パネル100に熱による不具合が発生してしまうことを低減することができる。即ち、装置の信頼性を高めることができる。ヒートシンク320は、放熱効果を高めるためにも、熱伝導性の高い材料を含んで構成されることが好ましい。ヒートシンク320を構成する具体的な材料については、後に詳述する。
【0052】
フレーム310及びヒートシンク320は、接合部315において互いに接合されている。ここでの接合は、典型的には、フレーム310に設けられた凹部とヒートシンクに設けられた320の凸部とを嵌合させることによって行われるが、接着剤やネジ等を用いて行われてもよい。
【0053】
図5において、電気光学パネル100及びフレーム310は、接着剤510によって互いに接着されている。接着剤510は、電気光学パネル100の表面から側面にまで設けられている。尚、電気光学パネル100の表示面には、防塵用基板の一例である防塵ガラス400が設けられている。また、電気光学パネル100には、防塵ガラス400以外の部材が設けられていてもよい。
【0054】
電気光学パネル100及びヒートシンク320は、グリス520によって互いに接着されている。このグリス520は、例えば空気より高い熱伝導性を有しており、電気光学パネル100において発生した熱を、効率よくヒートシンク320に伝達することが可能とされている。よって、放熱部325における放熱効果を高めることができる。
【0055】
フレーム310及びヒートシンク320は、グリス530によって互いに接着されている。このように構成することで、電気光学パネル100において発生した熱のうち、フレーム310に伝達された分を、効率的にヒートシンク320に伝達することができる。よって、放熱部325における放熱効果を一層高めることができる。
【0056】
次に、電気光学パネル100の保持部材であるフレーム310及びヒートシンク320を構成する材料について、図6から図8を参照して詳細に説明する。ここに図6は、フレーム及びヒートシンクに用いられる材料の熱伝導率及び線膨張係数を示す表であり、図7及び図8は夫々、フレーム及びヒートシンクを構成する材料の組み合わせの一例を示す表である。
【0057】
図6において、フレーム310及びヒートシンク320には、銅やアルミ等の金属や、各種合金が用いられる。尚、ここに示す材料はあくまで一例であり、これら以外の材料が用いられてもよい。
【0058】
電気光学パネル100の保持部材の材料としては、電気光学パネル100に線膨張係数が近く、且つ、熱伝導率が高い(即ち、放熱効果が高い)ものが好ましい。しかしながら、図からも分かるように熱伝導率の高い材料は線膨張係数が大きくなる傾向がある。このため、フレーム310及びヒートシンク320に熱伝導率の高い材料を用いた場合に、電気光学パネル100におけるTFTアレイ基板10及び対向基板20等に用いられる比較的線膨張係数の小さい材料(例えば、石英等)と線膨張係数を近付けるのは難しい。即ち、線膨張係数と熱伝導率の両方の条件を満たすことは難しい。
【0059】
尚、純銅や純アルミ等の純粋な金属は、他の合金系の材料と比べて熱伝導率は非常に大きく、線膨張係数にはそれ程差がない。但し、純粋な金属は、他の合金系の材料と比べてコストが極めて高いため、フレーム310及びヒートシンク320の両方を純粋な金属で構成する場合、装置の製造コストが大幅に増加してしまう。
【0060】
図7において、本実施形態に係る電気光学装置では、例えばフレーム310がSUS304(ステンレス)を含んで構成されており、ヒートシンク320が純銅を含んで構成されている。この場合、フレーム310及びヒートシンク320を夫々構成する材料の線膨張係数の差は0.5×10−6/℃となる。
【0061】
このように、フレーム310及びヒートシンク320を構成する材料の線膨張係数の差が小さくなるように構成すれば、例えば熱等によって各部材が膨張した際に、フレーム310及びヒートシンク320の膨張度合いが互いに大きく異なってしまうことにで、電気光学パネル100との接着箇所等に無理な力がかかってしまうことを防止できる。逆に、線膨張係数の差が大きくなり過ぎてしまうと(例えば、6×10−6/℃以上となってしまうと)、電気光学パネル100に不具合を生じさせてしまうような応力が加わってしまう可能性が高くなることが判明している。
【0062】
これに対し、図7に示す材料を用いる場合は、上述したようにフレーム310及びヒートシンク320を夫々構成する材料の線膨張係数の差は0.5×10−6/℃となるため、膨張による電気光学パネル100へのダメージを効果的に低減することができる。
【0063】
また、フレーム310は、見切り部材として機能させるために、接着剤510によって電気光学パネル100に固定されている。このため、グリス520で接着されているヒートシンク320と比べると、電気光学パネル100に上述した応力によるダメージを与えてしまう可能性が高い。
【0064】
これに対しても、図7に示す材料を用いる場合は、フレーム310がヒートシンクより線膨張係数の小さい材料によって構成されているため、フレーム310の線膨張係数の方が、例えば石英等によって構成される電気光学パネル100の線膨張係数に近くなる。よって、電気光学パネル100に対する応力によるダメージを効率的に低減することができる。
【0065】
加えて、ヒートシンク320は、熱伝導率の極めて高い純銅を含んで構成されているため、高い放熱効果を有する。よって、装置の動作時に電気光学パネル100において発生した熱を効果的に放熱することが可能となり、装置の熱による故障や不具合を防止することができる。
【0066】
図8において、本実施形態に係る電気光学装置では、例えばフレーム310がA5052(アルミニウム合金)を含んで構成されており、ヒートシンク320が純アルミを含んで構成されていてもよい。この場合、フレーム310及びヒートシンク320を夫々構成する材料の線膨張係数の差は0.7×10−6/℃となる。
【0067】
この場合も、図7で示した場合と同様に、フレーム310及びヒートシンク320を構成する材料の線膨張係数の差を小さくすることができる。よって、電気光学パネル100に対する応力によるダメージを効率的に低減することができ、且つ、装置の動作時に電気光学パネル100において発生した熱を効果的に放熱することが可能となる。
【0068】
尚、ここでは、フレーム310の線膨張係数がヒートシンク320の線膨張係数より大きくなる場合を例にとり説明したが、フレーム310の線膨張係数がヒートシンク320の線膨張係数より小さくなるように構成することで、電気光学パネル100へのダメージをより軽減することができる。即ち、電気光学パネル100と比較的強固に接着されるフレーム310の線膨張係数を小さくすることで、電気光学パネル100へのダメージを少なくすることができる。但し、図7及び図8のように、フレーム310の線膨張係数がヒートシンク320の線膨張係数より大きくなる場合であっても、フレーム310及びヒートシンク320を構成する材料の線膨張係数の差が小さければ、電気光学パネル100には、不具合を生じさせてしまう程のダメージは加わらない。
【0069】
以上説明したように、本実施形態に係る電気光学装置によれば、電気光学パネル100を好適に保持すると共に効率的な放熱を行うことが可能となる。従って、装置の信頼性を高めることが可能である。
【0070】
<電子機器>
次に、上述した電気光学装置である液晶装置を各種の電子機器に適用する場合について説明する。ここでは、本発明に係る電子機器として、投射型液晶プロジェクターを例にとる。図9は、本実施形態に係る投射型液晶プロジェクターの図式的断面図である。
【0071】
図9において、本実施形態に係る液晶プロジェクター1100は、夫々RGB用の液晶ライトバルブ100R、100G及び100Bの3枚を用いた複板式カラープロジェクタとして構築されている。液晶ライトバルブ100R、100G及び100Bの各々は、上述した反射型の液晶装置が使用されている。
【0072】
図9に示すように、液晶プロジェクター1100では、メタルハライドランプ等の白色光源のランプユニット1102から投射光が発せられると、2枚のミラー1106、2枚のダイクロイックミラー1108及び3つの偏光ビームスプリッタ(PBS)1113によって、RGBの3原色に対応する光成分R、G及びBに分けられ、各色に対応する液晶ライトバルブ100R、100G及び100Bに夫々導かれる。尚、この際、光路における光損失を防ぐために、光路の途中にレンズを適宜設けてもよい。そして、液晶ライトバルブ100R、100G及び100Bにより夫々変調された3原色に対応する光成分は、クロスプリズム1112により合成された後、投射レンズ1114を介してスクリーン1120にカラー映像として投射される。
【0073】
尚、液晶ライトバルブ100R、100B及び100Gには、ダイクロイックミラー1108及び偏光ビームスプリッタ1113によって、R、G、Bの各原色に対応する光が入射するので、カラーフィルターを設ける必要はない。
【0074】
図9を参照して説明した電子機器の他にも、モバイル型のパーソナルコンピューターや、携帯電話、液晶テレビ、ビューファインダー型、モニタ直視型のビデオテープレコーダー、カーナビゲーション装置、ページャー、電子手帳、電卓、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた装置等が挙げられる。そして、これらの各種電子機器に、本発明の電気光学装置を適用可能なのは言うまでもない。
【0075】
本発明は、上述の実施形態で説明した反射型の液晶装置以外にも、透過型液晶装置、プラズマディスプレイ(PDP)、電解放出型ディスプレイ(FED、SED)、有機ELディスプレイ、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)、電気泳動装置等にも適用可能である。
【0076】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う電気光学装置、及び該電気光学装置を備えた電子機器もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0077】
3a…走査線、6a…データ線、9a…画素電極、10…TFTアレイ基板、10a…画像表示領域、20…対向基板、30…TFT、50…液晶層、100…電気光学パネル、101…データ線駆動回路、102…外部回路接続端子、104…走査線駆動回路、200…フレキシブル基板、310…フレーム、315…接合部、320…ヒートシンク、325…放熱部、400…防塵ガラス、510…接着剤、520,530…グリス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射した光を反射させることにより画像を表示する表示面、該表示面の反対側に位置する背面を有する反射型の電気光学パネルと、
第1の材料を含んで構成されており、前記電気光学パネルを保持する第1保持部材と、
前記第1の材料より熱伝導率の高い第2の材料を含んで構成されており、前記第1保持部材と共に前記電気光学パネルを保持する第2保持部材と
を備え、
前記第1の材料及び前記第2の材料は、線膨張係数の差が所定の範囲内である
ことを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
前記第1保持部材は、前記表示面側から前記電気光学パネルを保持しており、
前記第2保持部材は、前記背面側から前記電気光学パネルを保持している
ことを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記第1の材料は、前記第2の材料よりも前記電気光学パネルに線膨張係数が近いことを特徴とする請求項1又は2に記載の電気光学装置。
【請求項4】
前記第2保持部材は、前記電気光学パネルにおいて発生した熱を放熱する放熱部を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の電気光学装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の電気光学装置を具備してなることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−256656(P2010−256656A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−107373(P2009−107373)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】