説明

電気分解水の強酸性水とアルカリ水を混合した中和水を利用した殺菌方法。

【課題】強酸性電解水の時間経過に伴う殺菌作用の低下、低pHに由来する舌の触感不良、異臭を改善する。
【解決手段】 強酸性水電解水と強アルカリ電解水を混合して中和水電解水とする。
【効果】中和電解水は水や塩水で希釈しても次亜塩素酸イオン濃度の低下は見られず、約30倍に希釈しても殺菌能力がある。この中和電解水を農水産物の殺菌及び滅菌に利用することで安心安全な食品が確保できる。又生成能力の小さい電気分解装置でも強酸性水と強アルカリ水を混合した中和水を利用でき、投資効果を向上できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は農水産物や農水産加工物及び料理用器具類、学校や病院等の建物内に付着する細菌の殺菌或いは滅菌に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電解装置によって生成された電解水を殺菌や滅菌に利用する場合は、強酸性電解水のみを利用していた。
【0003】
図1は一般的に用いられている電解水の製造方法の概略を示している。(1)は無隔膜電解法、(2)は1隔膜2室法、(3)は2隔膜3室法を示している。本実験では(3)の2隔膜3室法にて生成した電解水を利用した。本装置は、中間室1に高濃度の電解質(NaCl)2を循環させ、陽極室3に塩素イオン4を、陰極室5にナトリウムイオン6を電気泳動させ、同時に電気分解させることにより、強酸性水7と強アルカリ性水8を生成する。
【0004】
この時生成された強酸性水の性状は、pHは3.0、次亜塩素酸イオン濃度は896μMであった。参考までに、μM(マイクロモル)とppmの関係は
ppm=1/1000×51.45×μM として計算できる。
【0005】
次に、時間経過に対する強酸性電解水の性状変化について調査した。図2は強酸性水7の次亜塩素酸イオン濃度9とpH10の変化を示し、図3は塩分濃度が3%になるように塩を添加した強酸性水18の場合の次亜塩素酸イオン濃度9とpH10の経時変化を示す。
【0006】
その結果、強酸性水7のみの場合は、pHはほとんど3前後で変化はないが、次亜塩素酸イオン濃度9は、896μMから時間の経過と供に低減し、1日後は83μM、20後は37μM、3日後は0μMになった。又、塩を添加した強酸性水18は、2時間後には次亜塩素酸イオン濃度9は約100μMと急激に低下した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
強酸性電解水を殺菌及び滅菌用として使用する場合、
(1)2日後には次亜塩素酸イオン濃度が低減し殺菌作用を失うこと。
又、塩を添加した強酸性水は、次亜塩素酸イオン濃度が急激に低下し殺菌作用を 失う。
(2)強酸性電解水のみではpHが3であるために、舌の触感や臭覚がよくないこと。
(3)強酸性電解水のみでは生成量が少なく利用できる量が少ないこと。
等の課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記のような課題を解消するために、強酸性電解水と強アルカリ性電解水を混合した中和電解水を作って、次亜塩素酸イオン濃度とpHの経時変化、及び中和電解水の希釈度と抗菌活性の関係を試験した。
【0009】
その結果、中和電解水は時間経過による次亜塩素酸イオン濃度の低下はなく、中和水のために触感や臭覚の問題もないことが判明した。又中和電解水を水又は塩水で希釈しても十分に殺菌機能を果たすことも分かった。
【発明の効果】
【0010】
本発明の結果、次のような効果が得られた。
(1)図4は中和電解水11の時間経過に対する次亜塩素酸イオン濃度9とpH10の変化を示す。中和電解水11は強酸性水7の次亜塩素酸イオン濃度の約60%であるが、時間経過に関係なく次亜塩素酸イオン濃度はほとんど低下しない。
(2)図5は中和電解水に塩を添加した塩分濃度3%の中和水19も次亜塩素酸イオン濃度9は低下しないことが判明した。
(3)図6は中和電解水を希釈した中和水濃度17に対する抗菌活性を試験した結果である。 供試菌として黄色ブドウ球菌12、大腸菌13及びサルモネラ菌14に対して、塩分濃度1.5%の中和水15と水希釈16で薄めた場合の中和水濃度17と殺菌能力の関係を表したものである。
(4)黄色ブドウ球菌12は中和電解水を塩水で希釈した場合は、中和水濃度17が3.13%まで、水希釈16は6.25%までは殺菌効果がある。大腸菌13は、塩水で希釈した場合は1.56%、水希釈は3.13%まで殺菌効果がある。又、サルモネラ菌14は、塩水で希釈した場合も水希釈した場合も3.13%まで殺菌効果があることが定量酌に判明した。尚、表の「有」は殺菌効果があることを、「無」は殺菌効果が無かったことを示す。
(5)中和電解水11のpHは8前後のため触感の問題も次亜塩素酸の臭いもほとんどなかった。
(6)電気分解装置の強酸性水7と強アルカリ性水8の生成能力は毎分1リットル程度であるが、中和電解水11を利用すると強酸性水のみの場合より60倍の殺菌作用を有する消毒液を利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
電解装置により電気分解された強酸性水と強アルカリ性水に、1%〜3%の塩水または水にて各々約60倍に希釈した後に混合して殺菌水としてタンクに貯蔵する。この中和電解水の次亜塩素酸イオン濃度は最低3日は低下しないので、夜間電力などを利用して生成すると省エネルギーとなる。
【0012】
使用用途に応じた周辺装置をシステム化する。例えば農水産物などの殺菌はポータブルの移動式タンクにポンプやシャワーを装備して使用する。食品加工工場などの厨房で使用する場合は中和電解水用配管を行いシャワー等で殺菌を行う。
【産業上の利用可能性】
【0013】
今後、ノロウイルス食中毒菌やインフルエンザ等の感染性病原菌の殺菌効果についても実験し、中和電解水の適用拡大を計る。又、農水産物の鮮度維持のための氷やシャーベット氷生成の原水としても利用する計画である。又、歯槽膿漏の防止や抑制の効果も期待できることから患者に試用してもらいその効果をテストする。
【図面の簡単な説明】
【図1】電解水の製造方法の種類
【図2】強酸性水の次亜塩素酸イオン濃度とpHの経時変化
【図3】強酸性水に3%の塩分を添加した場合の次亜塩素酸イオン濃度とpHの経時変化
【図4】中和電解水の次亜塩素酸イオン濃度とpHの経時変化
【図5】中和電解水3%の塩分を添加した場合の次亜塩素酸イオン濃度とpHの経時変化
【図6】中和電解水の濃度と抗菌活性の関係
【符号の説明】
1 中間室
2 高濃度の電解質NaCl
3 陽極室
4 塩素イオン
5 陰極室
6 ナトリウムイオン
7 強酸性水
8 強アルカリ性水
9 次亜塩素酸イオン濃度
10 pH
11 中和電解水
12 黄色ブドウ球菌
13 大腸菌
14 サルモネラ菌
15 塩分濃度1.5%の中和水
16 水希釈
17 中和水濃度
18 塩分濃度3%の強酸性水
19 塩分濃度3%の中和水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水電気分解装置にて電気分解して得られる強酸性電解水及び強アルカリ性電解水とを混合して得られる中和水およびその希釈水を利用して、食品生鮮物や料理用器具、及び病院等の部屋に付着する細菌を殺菌又は滅菌する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−218247(P2006−218247A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−64600(P2005−64600)
【出願日】平成17年2月8日(2005.2.8)
【出願人】(505085166)
【Fターム(参考)】