電気加熱式触媒の制御装置
【課題】電気加熱式触媒の電力量を制御する際に凝縮水の有無や残存量を加味させ、電気加熱式触媒の電力量をより適切に制御する技術を提供する。
【解決手段】通電により発熱して排気浄化触媒5を加熱する触媒担体4と、触媒担体4を収容するケース7と、触媒担体4とケース7との間に設けられ電気を絶縁するマット8と、を備え、ケース7の温度と内燃機関1の稼働時間とに基づいて、ケース7内に発生する凝縮水吸水量と、ケース7内から蒸発する凝縮水蒸発量と、を算出する。そして、凝縮水吸水量と凝縮水蒸発量とを用いてケース7内に残存する凝縮水残存量を算出し、凝縮水残存量に基づいて、電極6に供給する、触媒担体4に必要な総合要求電力量を変更する。
【解決手段】通電により発熱して排気浄化触媒5を加熱する触媒担体4と、触媒担体4を収容するケース7と、触媒担体4とケース7との間に設けられ電気を絶縁するマット8と、を備え、ケース7の温度と内燃機関1の稼働時間とに基づいて、ケース7内に発生する凝縮水吸水量と、ケース7内から蒸発する凝縮水蒸発量と、を算出する。そして、凝縮水吸水量と凝縮水蒸発量とを用いてケース7内に残存する凝縮水残存量を算出し、凝縮水残存量に基づいて、電極6に供給する、触媒担体4に必要な総合要求電力量を変更する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気加熱式触媒の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気加熱式触媒として、金属製触媒担体の外周面と金属製シェルの内周面との間に、電気絶縁材であって緩衝性を有する環状のマット部材を介装させる技術が開示されている(例えば特許文献1参照)。特許文献1の技術によると、マット部材によって金属製触媒担体と金属製シェルとの間に電気的な絶縁が保持されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平05−269387号公報
【特許文献2】特許第4253511号公報
【特許文献3】特開2010−174657号公報
【特許文献4】特開2008−190341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電気加熱式触媒では、内燃機関の低温始動等の繰り返しによって凝縮水が内部に発生する場合がある。電気加熱式触媒の内部に残存した凝縮水は、蒸発するまで電気加熱式触媒が電力で発熱したときの熱を奪い、電気加熱式触媒の昇温を遅らせてしまう。
【0005】
本発明の目的は、電気加熱式触媒の電力量を制御する際に凝縮水の有無や残存量を制御に加味させ、電気加熱式触媒の電力量をより適切に制御する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にあっては、以下の構成を採用する。すなわち、本発明は、
通電により発熱して触媒を加熱する発熱体と、
前記発熱体を収容するケースと、
前記発熱体と前記ケースとの間に設けられ電気を絶縁する絶縁部材と、
前記ケースの温度と内燃機関の稼働時間とに基づいて、前記ケース内に発生する凝縮水吸水量と、前記ケース内から蒸発する凝縮水蒸発量と、の少なくとも一つを算出する算出手段と、
を備えたことを特徴とする電気加熱式触媒の制御装置である。
【0007】
本発明によると、電気加熱式触媒の内部の凝縮水吸水量と凝縮水蒸発量との少なくとも一つが算出され、電気加熱式触媒への電力量を制御する際に凝縮水の有無や残存量を制御に加味させることができる。これにより、凝縮水を考慮して電気加熱式触媒の電力量をより適切に制御することができる。
【0008】
前記凝縮水吸水量と前記凝縮水蒸発量とを用いて算出される前記ケース内に残存する凝縮水残存量に基づいて、前記発熱体に必要な電力量を変更する電力量変更手段を更に備えるとよい。
【0009】
凝縮水残存量が多くなると、凝縮水を蒸発させるために電気加熱式触媒の熱がより多く用いられ、電気加熱式触媒の昇温が遅れる。本発明によると、凝縮水残存量に基づいて、発熱体に必要な電力量を変更するので、例えば、凝縮水残存量が多くなる程、発熱体に必
要な電力量を多くし発熱体の発熱量を多くすることができる。これにより、早期に凝縮水を除去することができると共に電気加熱式触媒の昇温が遅れることを回避することができる。また、凝縮水残存量に基づいて発熱体に必要な電力量を変更するので、凝縮水を蒸発させるためだけの電力量を増加させることができ、発熱体への電力量を過剰に増大させることもなく、消費電力量の過剰な増大や電気加熱式触媒の過昇温を回避することができる。
【0010】
前記発熱体が使用する使用電力量と、前記凝縮水残存量に応じた補正判定電力量を基本判定電力量に上乗せした判定電力量と、を比較して、前記発熱体への通電システムの異常を判別する通電システム異常判別手段を更に備えるとよい。
【0011】
凝縮水残存量が多くなると、凝縮水を蒸発させるために電気加熱式触媒の熱がより多く用いられ、発熱体が使用する使用電力量が多くなる。本発明によると、判定電力量が、凝縮水残存量に応じた補正電力量を基本電力量に上乗せして求められるので、凝縮水残存量が多くなることによって発熱体が使用する使用電力量が多くなったことを考慮して、通電システムの異常を判別することができる。これによって、通電システムの異常を精度良く判別することができる。
【0012】
加熱異常を検出するタイミングでの、前記触媒の温度と、前記触媒の目標温度と、を比較して、前記触媒の加熱異常を判別する加熱異常判別手段であって、前記凝縮水吸水量と前記凝縮水蒸発量とを用いて算出される前記ケース内に残存する凝縮水残存量に応じて加熱異常を検出するタイミングを変更する加熱異常判別手段を更に備えるとよい。
【0013】
凝縮水残存量が多くなると、凝縮水を蒸発させるために電気加熱式触媒の熱がより多く用いられ、触媒の温度上昇が緩やかになる。本発明によると、凝縮水残存量に応じて加熱異常を検出するタイミングを変更するので、例えば、凝縮水残存量が多くなる程、触媒の加熱異常を検出するタイミングを遅くすることができる。これにより、凝縮水残存量が多くなることによって触媒の温度上昇が緩やかになることを考慮して、触媒の加熱異常を判別することができる。これによって、触媒の加熱異常を精度良く判別することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、電気加熱式触媒の電力量を制御する際に凝縮水の有無や残存量を制御に加味させることができ、電気加熱式触媒の電力量をより適切に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例1に係る内燃機関の概略構成を示す図である。
【図2】実施例1に係るEHCの概略構成を示す図である。
【図3】実施例1に係る凝縮水残存量算出ルーチンを示すフローチャートである。
【図4】実施例1に係る凝縮水吸水量算出サブルーチンを示すフローチャートである。
【図5】実施例1に係るケース温度変化割合と凝縮水吸水量との相関関係を示すマップである。
【図6】実施例1に係る凝縮水蒸発量算出サブルーチンを示すフローチャートである。
【図7】実施例1に係るケースの温度の関数を内燃機関の稼働時間で積分する様子を示す図である。
【図8】実施例1に係る総合要求電力量算出ルーチンを示すフローチャートである。
【図9】実施例1に係る凝縮水残存量と補正要求電力量との相関関係を示すマップである。
【図10】実施例1に係る通電システム異常判別ルーチンを示すフローチャートである。
【図11】実施例1に係る加熱異常判別ルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の具体的な実施例を説明する。
【0017】
<実施例1>
図1は、本発明の実施例1に係る内燃機関の概略構成を示す図である。図1に示す内燃機関1は、気筒を4つ有する水冷式の4ストロークサイクル・ディーゼルエンジンである。内燃機関1は、ガソリンエンジン等であってもよい。内燃機関1は、車両に搭載されている。車両は、内燃機関と電気モータとを備えたハイブリッドシステムを採用した車両であってもよい。内燃機関1には、排気通路2が接続されている。内燃機関1に接続された排気通路2の途中には、電気加熱式触媒(以下、EHCという)3が配置されている。EHC3は、内燃機関1から排出された排気中の排気物質を浄化するものである。
【0018】
図2は、実施例1に係るEHCの概略構成を示す図である。図2に示すEHC3は、触媒担体4、排気浄化触媒5、電極6、ケース7、及びマット8を備えている。触媒担体4は、円柱状に形成されており、その中心軸が排気流れ方向と同じ排気通路2の中心軸と同軸となるように設置されている。触媒担体4には排気浄化触媒5が担持されている。排気浄化触媒5としては、酸化触媒、吸蔵還元型NOx触媒、選択還元型NOx触媒及び三元触媒等を例示することができる。
【0019】
触媒担体4は、通電されると自身が有する電気抵抗で発熱する材料によって形成されている。触媒担体4が、本発明の発熱体に対応する。触媒担体4の材料としては、SiCを例示することができる。触媒担体4は、排気流れ方向に延び且つ排気流れ方向と垂直な断面がハニカム状をなす複数の通路を有している。この通路に排気を流通させる。触媒担体4には、電極6が接続されている。電極6には不図示のバッテリから電力が供給される。触媒担体4は、電極6に電力が供給されると通電されるようになっている。触媒担体4が通電されると触媒担体4は発熱し、触媒担体4に担持された排気浄化触媒5を加熱して昇温させ、排気浄化触媒5の活性化を促進することができる。
【0020】
触媒担体4はケース7に収容されている。ケース7は、金属製である。ケース7を構成する金属材料としては、ステンレス鋼材を例示することができる。ケース7は、触媒担体4が内部に配置される収容部7aと、収容部7aよりも排気流れ方向上流側及び下流側で収容部7aと排気通路2とを接続するテーパ部7b,7cと、を有している。収容部7aの通路断面積は、排気通路2の通路断面積よりも大きくなっている。収容部7aの内部には、触媒担体4及びマット8が収容されている。テーパ部7b,7cは、収容部7aから離れ排気通路2に近付くに従って通路断面積が縮小するテーパ形状となっている。
【0021】
ケース7の収容部7aの内壁面と、触媒担体4の外周面と、の間には、絶縁部材としての円環状のマット8が挟み込まれている。マット8がケース7内に配置されることにより、触媒担体4がケース7内でマット8によって支持される。マット8は、電気を絶縁する電気絶縁材で構成されている。マット8を構成する材料としては、アルミナを主成分とするセラミックファイバを例示することができる。マット8は、触媒担体4の外周面に巻きつけられている。電気絶縁材のマット8が触媒担体4とケース7との間に設けられているので、触媒担体4に通電したときにその電気がマット8で絶縁されケース7へ流れてしまうことが防止されている。
【0022】
EHC3のケース外周壁面には、ケース7の温度を検出するケース温度センサ9が配置されている。ケース温度センサ9により、EHC3の壁温であるケース7の温度を検出す
ることができる。また、ケース7の排気流れ下流側のテーパ部7cには、EHC3の排気浄化触媒5を流通した排気の温度を検出する排気温度センサ10が配置されている。排気温度センサ10により、EHC3の排気浄化触媒5の床温を推定することができる。
【0023】
図1に示すように、以上述べたように構成された内燃機関1には、内燃機関1を制御するためのECU(電子制御ユニット)11が併設されている。ECU11は、内燃機関1の運転条件や運転者の要求に応じて内燃機関1の運転状態を制御するユニットである。ECU11には、ケース温度センサ9、排気温度センサ10、クランクポジションセンサ12、アクセルポジションセンサ13、外気温度センサ14等の各種センサが電気配線を介して接続され、これら各種センサの出力信号がECU11に入力されるようになっている。一方、ECU11には、EHC3の電極6が電気配線を介して接続されており、ECU11により電極6(EHC3)への電力量が制御される。
【0024】
(EHC制御)
EHC3は、排気浄化触媒5を加熱して排気浄化触媒5を早期に活性化させるために、排気浄化触媒5が低温不活性状態である内燃機関1の始動時等に電極6へ電力が供給され、触媒担体4が発熱するよう制御される。この排気浄化触媒5の早期活性化を妨げるものとして、EHC3の内部の凝縮水が存在する。凝縮水は、内燃機関の低温始動等の繰り返しによって大量に発生する。触媒担体4やマット8が凝縮水を吸水していると、電極6へ電力を供給した時に凝縮水が触媒担体4の発熱した熱を蒸発するまで奪うため、排気浄化触媒5の昇温が遅れ、排気浄化触媒5の活性化が遅くなってしまう。特に、触媒担体4がSiC製であると、SiC製の触媒担体4は吸水し易いため、マット8まで凝縮水が除去できていないと、マット8からSiC製の触媒担体4へ凝縮水が浸入してしまう。マット8はケース7と接しているため、温度上昇し難くマット8の凝縮水の蒸発が遅れるので、マット8からSiC製の触媒担体4へ凝縮水が浸入し易い。よって、SiC製の触媒担体4であると、さらに排気浄化触媒5の昇温が遅れ、排気浄化触媒5の活性化が遅くなってしまう。このように凝縮水は、EHC3の制御に悪影響を及ぼす。
【0025】
そこで、本実施例では、ケース7の温度と内燃機関1の稼働時間とに基づいて、ケース7内に発生する凝縮水吸水量と、ケース7内から蒸発する凝縮水蒸発量と、を算出するようにした。さらに算出された凝縮水吸水量と凝縮水蒸発量とを用いてケース7内に残存する凝縮水残存量を算出するようにした。そして、算出された凝縮水残存量に基づいて、電極6に供給する、触媒担体4に必要な総合要求電力量を変更するようにした。
【0026】
なお、本実施例では、ケース7の温度と内燃機関1の稼働時間とに基づいて、凝縮水吸水量と凝縮水蒸発量との両方を算出するようにしているが、本発明はこれに限られない。本発明としては、ケース7の温度と内燃機関1の稼働時間とに基づいて、凝縮水吸水量と凝縮水蒸発量とのうちいずれか一方だけを算出するものでもよい。
【0027】
具体的に本実施例では、凝縮水吸水量は、内燃機関1の稼働前から稼働中におけるケース7の温度の変化を内燃機関1の稼働時間で割ったケース温度変化割合を、予め求められたケース温度変化割合と凝縮水吸水量との相関関係を示したマップに取り込むことで、算出される。凝縮水蒸発量は、内燃機関1の稼働時のケース7の温度を関数化し、このケース7の温度の関数を内燃機関1の稼働時間で積分することで、算出される。凝縮水残存量は、前回値と、今回の凝縮水吸水量から今回の凝縮水蒸発量を差し引いた値と、の和をとることで、算出される。総合要求電力量は、ケース7の温度に応じた基本要求電力量と、凝縮水残存量を、予め求められた凝縮水残存量と補正要求電力量との相関関係を示したマップに取り込むことで算出される補正要求電力量と、の和をとることで算出され、この総合要求電力量を上回るまで電極6への電力の供給が実行される。
【0028】
本実施例によると、EHC3の内部の凝縮水吸水量と凝縮水蒸発量とが算出され、EHC3への電力量を制御する際に凝縮水残存量を制御に加味させている。これにより、凝縮水を考慮してEHC3の電力量をより適切に制御することができる。詳述すると、例えば、凝縮水残存量が多くなると、凝縮水を蒸発させるために触媒担体4の熱がより多く用いられ、排気浄化触媒5の昇温が遅れ排気浄化触媒5の活性化も遅れる。しかし本実施例によると、凝縮水残存量に基づいて、触媒担体4に必要な電力量を変更するので、例えば、凝縮水残存量が多くなる程、触媒担体4に必要な電力量を多くし触媒担体4の発熱量を多くすることができる。これにより、早期に凝縮水を除去することができると共に排気浄化触媒5の昇温が遅れることを回避することができる。また、凝縮水残存量に基づいて触媒担体4に必要な電力量を変更するので、凝縮水を蒸発させるためだけの電力量を増加させることができ、触媒担体4への電力量を過剰に増大させることもなく、消費電力量の過剰な増大や排気浄化触媒5の過昇温を回避することができる。
【0029】
(凝縮水残存量算出ルーチン)
ECU11における凝縮水残存量算出ルーチンについて、図3に示すフローチャートに基づいて説明する。図3は、凝縮水残存量算出ルーチンを示すフローチャートである。本ルーチンは、所定の時間毎に繰り返しECU11によって実行される。本ルーチンを実行するECU11が、本発明の算出手段に対応する。
【0030】
図3に示すルーチンが開始されると、S101では、凝縮水吸水量算出サブルーチンを実行する。
【0031】
図4は、凝縮水吸水量算出サブルーチンを示すフローチャートである。図4に示すサブルーチンが開始されると、S201では、外気温度が予め定めた所定温度T1よりも低いか否かを判別する。外気温度は、外気温度センサ14で検出する。S201において、肯定判定された場合には、S202へ移行する。一方、S201において、否定判定された場合には、本サブルーチンを一旦終了する。S202では、ケース7の温度が予め定めた所定温度T2よりも低いか否かを判別する。ケース7の温度は、ケース温度センサ9で検出する。S202において、肯定判定された場合には、S203へ移行する。一方、S202において、否定判定された場合には、S204へ移行する。S203では、内燃機関1が稼働停止しているか否かを判別する。内燃機関1が稼働しているか稼働停止しているかは、クランクポジションセンサ12で内燃機関1の機関回転速度を検出することにより判断する。S203において、肯定判定された場合には、S205へ移行する。一方、S203において、否定判定された場合には、S208へ移行する。S204では、内燃機関1の稼働中のケース7の温度CT1を取り込み済みか否か、を判別する。S204において、肯定判定された場合には、S205へ移行する。一方、S204において、否定判定された場合には、本サブルーチンを一旦終了する。
【0032】
S205では、ケース7の温度変化△CTを算出済みか否か、を判別する。なお、ケース7の温度変化△CTとは、内燃機関1の稼働中のケース7の温度CT1から内燃機関1の稼働前のケース7の温度CT0を差し引いた値である。S205において、肯定判定された場合には、S210へ移行する。一方、S205において、否定判定された場合には、S206へ移行する。S206では、内燃機関1の稼働前のケース7の温度CT0を取り込み済みか否か、を判別する。S206において、肯定判定された場合には、本サブルーチンを一旦終了する。一方、S206において、否定判定された場合には、S207へ移行する。S207では、内燃機関1の稼働前のケース7の温度CT0を取り込む。ケース7の温度CT0は、ケース温度センサ9で検出することができる。本ステップの後、本サブルーチンを一旦終了する。
【0033】
S208では、内燃機関1の稼働中のケース7の温度CT1を取り込む。ケース7の温
度CT1は、ケース温度センサ9で検出することができる。S209では、ケース7の温度変化△CTを算出する。ケース7の温度変化△CTは、内燃機関1の稼働中のケース7の温度CT1から内燃機関1の稼働前のケース7の温度CT0を差し引いて算出される(△CT=CT1−CT0)。本ステップの後、本サブルーチンを一旦終了する。
【0034】
S210では、ケース温度変化割合△CT/△tを算出する。ケース温度変化割合△CT/△tは、ケース7の温度変化△CTを内燃機関1の稼働時間△tで割って算出される。S211では、凝縮水吸水量を算出する。凝縮水吸水量は、ケース温度変化割合△CT/△tを、図5に示す予め求められたケース温度変化割合と凝縮水吸水量との相関関係を示したマップに取り込むことで、算出される。本ステップの後、本サブルーチンを一旦終了する。
【0035】
図4に示すサブルーチンが一旦終了されると、図3に示すルーチンのS102へ移行する。S102では、凝縮水蒸発量算出サブルーチンを実行する。
【0036】
図6は、凝縮水蒸発量算出サブルーチンを示すフローチャートである。図6に示すサブルーチンが開始されると、S301では、ケース7の温度が予め定めた所定温度T3よりも高いか否かを判別する。ケース7の温度は、ケース温度センサ9で検出する。S301において、肯定判定された場合には、S302へ移行する。一方、S301において、否定判定された場合には、本サブルーチンを一旦終了する。S302では、内燃機関1が稼働しているか否かを判別する。内燃機関1が稼働しているか稼働停止しているかは、クランクポジションセンサ12で内燃機関1の機関回転速度を検出することにより判断する。S302において、肯定判定された場合には、S303へ移行する。一方、S302において、否定判定された場合には、S304へ移行する。S303では、内燃機関1の稼働時のケース7の温度を関数化した関数f(t)を算出する。ケース温度センサ9で検出したケース7の温度を前回値と比較して増加量や減少量等から関数化する。本ステップの後、本サブルーチンを一旦終了する。
【0037】
S304では、内燃機関1の稼働履歴が存在するか否かを判別する。内燃機関1の稼働履歴は、ECU11に記録から判断する。S304において、肯定判定された場合には、S305へ移行する。一方、S304において、否定判定された場合には、本サブルーチンを一旦終了する。S305では、凝縮水蒸発量を算出する。凝縮水蒸発量は、図7に示すように、ケース7の温度の関数f(t)を内燃機関1の稼働時間で積分することで、算出される(凝縮水蒸発量V(t)=K∫f(t)dt)。本ステップの後、本サブルーチンを一旦終了する。
【0038】
図6に示すサブルーチンが一旦終了されると、図3に示すルーチンのS103へ移行する。S103では、凝縮水吸水量を更新したか否かを判別する。S103において、肯定判定された場合には、S105へ移行する。一方、S103において、否定判定された場合には、S104へ移行する。S104では、凝縮水蒸発量を更新したか否かを判別する。S104において、肯定判定された場合には、S105へ移行する。一方、S104において、否定判定された場合には、本ルーチンを一旦終了する。S105では、凝縮水残存量を算出する。凝縮水残存量は、前回値と、今回の凝縮水吸水量から今回の凝縮水蒸発量を差し引いた値と、の和をとることで、算出される。算出した凝縮水残存量は、ECU11に保存される。本ステップの後、本ルーチンを一旦終了する。
【0039】
以上の本ルーチンであると、EHC3の内部の凝縮水吸水量と凝縮水蒸発量とを算出して、凝縮水残存量を算出することができる。
【0040】
(総合要求電力量算出ルーチン)
ECU11における総合要求電力量算出ルーチンについて、図8に示すフローチャートに基づいて説明する。図8は、総合要求電力量算出ルーチンを示すフローチャートである。本ルーチンは、所定の時間毎に繰り返しECU11によって実行される。本ルーチンを実行するECU11が、本発明の電力量変更手段に対応する。
【0041】
図8に示すルーチンが開始されると、S401では、EHC3の電極6に電力を供給していないEHC3の通電中でないか否かを判別する。S401において、肯定判定された場合には、S402へ移行する。一方、S401において、否定判定された場合には、S410へ移行する。S402では、現在のケース7の温度を取り込む。ケース7の温度は、ケース温度センサ9で検出する。S403では、通電要求温度を設定する。通電要求温度とは、電極6に電力を供給して排気浄化触媒5を昇温しなければならない温度である。S404では、現在のケース7の温度が通電要求温度よりも低いか否かを判別する。S404において、肯定判定された場合には、S405へ移行する。一方、S404において、否定判定された場合には、本ルーチンを一旦終了する。S405では、通電目標温度を設定する。通電目標温度とは、排気浄化触媒5を昇温させる目標の温度である。S406では、通電必要温度差を算出する。通電必要温度差は、通電目標温度から現在のケース7の温度を差し引くことで、算出される。S407では、基本要求電力量を算出する。基本要求電力量は、通電必要温度差を、予め求められた通電必要温度差と基本要求電力量との相関関係を示したマップに取り込むことで、算出される。結局、基本要求電力量は、ケース7の温度に応じた値である。S408では、通電を開始する。つまり、電極6に電力を供給し始める。S409では、電力量積算値をクリアしておく。本ステップの後、本ルーチンを一旦終了する。
【0042】
S410では、電力量を算出する。電力量は、電力と通電時間とを掛けて算出される。S411では、電力量積算値を算出する。電力量積算値は、前回の電力量積算値と、S410で算出された電力量と、の和をとることで、算出される。S412では、補正要求電力量を算出する。補正要求電力量は、図3に示すルーチンで算出された凝縮水残存量を、図9に示す予め求められた凝縮水残存量と補正要求電力量との相関関係を示したマップに取り込むことで、算出される。S413では、総合要求電力量を算出する。総合要求電力量は、S407で算出された基本要求電力量と、S412で算出された補正要求電力量と、の和をとることで、算出される。S414では、電力量積算値が総合要求電力量を上回るか否かを判別する。S414において、肯定判定された場合には、S415へ移行する。一方、S414において、否定判定された場合には、本ルーチンを一旦終了する。S415では、通電を終了する。つまり、電極6への電力の供給を停止する。本ステップの後、本ルーチンを一旦終了する。
【0043】
以上の本ルーチンであると、凝縮水残存量を加味してEHC3の電極6へ供給する電力量を制御することができる。
【0044】
(通電システム異常判別)
EHC3では、EHC3へ供給する電力量が少なくなり過ぎてしまうことを防止するために、通電システムの異常判別が行われる。通電システムの異常判別は、一般に、EHC3の使用電力量(電力量積算値)と判定電力量とを比較して、EHC3の使用電力量が判定電力量を上回る場合に、通電が正常に行われたと判定し、EHC3の使用電力量が判定電力量を上回らない場合に、通電異常が生じたと判定する。しかしながら、EHC3の内部の凝縮水残存量が多くなると、凝縮水を蒸発させるためにEHC3の熱がより多く用いられ、使用電力量が多くなる。それにもかかわらず、判定電力量を一定値としてしまうと、凝縮水残存量が多ければ使用電力量が多いために多くの場合に通電システムの通電が正常と判定されてしまい、実際の通電システムの異常判別ができない。
【0045】
そこで、本実施例では、触媒担体4が使用する使用電力量である電力量積算値と、凝縮水残存量に応じた補正判定電力量を基本判定電力量に上乗せした判定電力量と、を比較して、EHC3の通電システムの異常を判別するようにした。
【0046】
凝縮水残存量が多くなると、凝縮水を蒸発させるためにEHC3の熱がより多く用いられ、触媒担体4が使用する使用電力量(電力量積算値)が多くなる。本実施例によると、判定電力量が、凝縮水残存量に応じた補正判定電力量を基本判定電力量に上乗せして求められるので、凝縮水残存量が多くなることによって触媒担体4が使用する使用電力量(電力量積算値)が多くなったことを考慮して、通電システムの異常を判別することができる。これによって、通電システムの異常を精度良く判別することができる。
【0047】
(通電システム異常判別ルーチン)
ECU11における通電システム異常判別ルーチンについて、図10に示すフローチャートに基づいて説明する。図10は、通電システム異常判別ルーチンを示すフローチャートである。本ルーチンは、所定の時間毎に繰り返しECU11によって実行される。本ルーチンを実行するECU11が、本発明の通電システム異常判別手段に対応する。
【0048】
図10に示すルーチンが開始されると、S501では、EHC3の電極6に電力を供給しているEHC3の通電中であるか否かを判別する。S501において、肯定判定された場合には、S502へ移行する。一方、S501において、否定判定された場合には、S508へ移行する。S502では、電力量積算値を算出する。電力量積算値は、触媒担体4が使用する使用電力量であり、例えば、図8に示すルーチンが実行されることで更新されている。S503では、通電開始時のケース7の温度と、通電目標温度と、を取り込む。通電開始時のケース7の温度と、通電目標温度とは、例えば、図8に示すルーチンが実行された際にECU11に記憶されている。S504では、基本判定電力量を算出する。基本判定電力量は、通電開始時のケース7の温度及び通電目標温度を、予め求められた通電開始時のケース7の温度及び通電目標温度と基本判定電力量との相関関係を示したマップに取り込むことで、算出される。S505では、凝縮水残存量を取り込む。凝縮水残存量は、例えば、図3に示すルーチンが実行された際に算出されている。S506では、補正判定電力量を算出する。補正判定電力量は、S505で取り込まれた凝縮水残存量を、予め求められた凝縮水残存量と補正判定電力量との相関関係を示したマップに取り込むことで、算出される。S507では、判定電力量を算出する。判定電力量は、S504で算出された基本判定電力量と、S506で算出された補正判定電力量と、の和をとることで、算出される。本ステップの後、本ルーチンを一旦終了する。
【0049】
S508では、EHC3の電極6への電力供給を終了したEHC3の通電終了か否かを判別する。S508において、肯定判定された場合には、S509へ移行する。一方、S508において、否定判定された場合には、本ルーチンを一旦終了する。S509では、電力量積算値が判定電力量を上回るか否かを判別する。S509において、肯定判定された場合には、S510へ移行する。一方、S509において、否定判定された場合には、S511へ移行する。S510では、EHC3の通電システムの通電が正常であると判定する。本ステップの後、本ルーチンを一旦終了する。S511では、EHC3の通電システムの通電が異常であると判定する。本ステップの後、本ルーチンを一旦終了する。
【0050】
以上の本ルーチンであると、凝縮水残存量を加味してEHC3の通電システムの異常を精度良く判別することができる。
【0051】
(加熱異常判別)
EHC3では、排気浄化触媒5の床温が目標温度に到達しているか否かの加熱異常判別が行われる。加熱異常判別は、一般に、加熱異常を検出するタイミングで、排気浄化触媒
5の温度と、排気浄化触媒5の目標温度と、を比較して、排気浄化触媒5の温度が目標温度を上回る場合に、加熱が正常に行われたと判定し、排気浄化触媒5の温度が目標温度を上回らない場合に、触媒床温が低下している加熱異常が生じたと判定する。しかしながら、EHC3の内部の凝縮水残存量が多くなると、凝縮水を蒸発させるためにEHC3の熱がより多く用いられ、排気浄化触媒5の温度上昇が緩やかになる。それにもかかわらず、加熱異常を検出するタイミングを一定タイミングとしてしまうと、凝縮水残存量が多ければ排気浄化触媒5の温度上昇が緩やかなためにそのタイミングでは排気浄化触媒5の温度が目標温度を上回らない場合が多くなり、実際の加熱異常判別ができない。
【0052】
そこで、本実施例では、加熱異常を検出するタイミングでの、排気浄化触媒5の温度と、排気浄化触媒5の目標温度と、を比較して、排気浄化触媒5の加熱異常を判別するものであって、凝縮水吸水量と凝縮水蒸発量とを用いて算出されるケース7内に残存する凝縮水残存量に応じて加熱異常を検出するタイミングを変更するようにした。
【0053】
凝縮水残存量が多くなると、凝縮水を蒸発させるためにEHC3の熱がより多く用いられ、排気浄化触媒5の温度上昇が緩やかになる。本実施例によると、凝縮水残存量に応じて加熱異常を検出するタイミングを変更するので、例えば、凝縮水残存量が多くなる程、排気浄化触媒5の加熱異常を検出するタイミングを遅くすることができる。これにより、凝縮水残存量が多くなることによって排気浄化触媒5の温度上昇が緩やかになることを考慮して、排気浄化触媒5の加熱異常を判別することができる。これによって、排気浄化触媒5の加熱異常を精度良く判別することができる。
【0054】
(加熱異常判別ルーチン)
ECU11における加熱異常判別ルーチンについて、図11に示すフローチャートに基づいて説明する。図11は、加熱異常判別ルーチンを示すフローチャートである。本ルーチンは、所定の時間毎に繰り返しECU11によって実行される。本ルーチンを実行するECU11が、本発明の加熱異常判別手段に対応する。
【0055】
図11に示すルーチンが開始されると、S601では、EHC3の電極6に電力を供給しているEHC3の通電中であるか否かを判別する。S601において、肯定判定された場合には、S602へ移行する。一方、S601において、否定判定された場合には、本ルーチンを一旦終了する。S602では、通電時間を計数する。S603では、排気浄化触媒5の床温を推定する。排気浄化触媒5の床温は、排気温度センサ10で検出した排気浄化触媒5を流通した排気温度から推定される。なお、排気浄化触媒5の床温は、ケース温度センサ9で検出するケース7の温度から推定するものでもよい。S604では、排気浄化触媒5の加熱異常判別に用いる排気浄化触媒5の目標温度を設定する。S605では、基本判定カウントを算出する。基本判定カウントは、予め求められた値等である。S606では、凝縮水残存量を取り込む。凝縮水残存量は、例えば、図3に示すルーチンが実行された際に算出されている。S607では、補正判定カウントを算出する。補正判定カウントは、S606で取り込まれた凝縮水残存量を、予め求められた凝縮水残存量と補正判定カウントとの相関関係を示したマップに取り込むことで、算出される。S608では、加熱異常を検出するタイミングを求めるための判定カウントを算出する。判定カウントは、S605で算出された基本判定カウントと、S607で算出された補正判定カウントと、の和をとることで、算出される。S609では、通電時間が判定カウントを上回るか否かを判別する。つまり、通電時間が判定カウントを上回ると、加熱異常を検出するタイミングが到来したことになる。S609において、肯定判定された場合には、S610へ移行する。一方、S609において、否定判定された場合には、本ルーチンを一旦終了する。S610では、排気浄化触媒5の推定床温が目標温度を上回るか否かを判別する。S610において、肯定判定された場合には、S611へ移行する。一方、S610において、否定判定された場合には、S612へ移行する。S611では、EHC3の通電が正
常に行われ、加熱が正常に行われたと判定する。本ステップの後、本ルーチンを一旦終了する。S612では、EHC3の通電異常等が生じ、加熱異常が生じたと判定する。本ステップの後、本ルーチンを一旦終了する。
【0056】
以上の本ルーチンであると、凝縮水残存量を加味して排気浄化触媒5の加熱異常を精度良く判別することができる。
【0057】
<その他>
本発明に係る電気加熱式触媒の制御装置は、上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1:内燃機関、2:排気通路、3:EHC、4:触媒担体、5:排気浄化触媒、6:電極、7:ケース、7a:収容部、7b,7c:テーパ部、8:マット、9:ケース温度センサ、10:排気温度センサ、11:ECU、12:クランクポジションセンサ、13:アクセルポジションセンサ、14:外気温度センサ
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気加熱式触媒の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気加熱式触媒として、金属製触媒担体の外周面と金属製シェルの内周面との間に、電気絶縁材であって緩衝性を有する環状のマット部材を介装させる技術が開示されている(例えば特許文献1参照)。特許文献1の技術によると、マット部材によって金属製触媒担体と金属製シェルとの間に電気的な絶縁が保持されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平05−269387号公報
【特許文献2】特許第4253511号公報
【特許文献3】特開2010−174657号公報
【特許文献4】特開2008−190341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電気加熱式触媒では、内燃機関の低温始動等の繰り返しによって凝縮水が内部に発生する場合がある。電気加熱式触媒の内部に残存した凝縮水は、蒸発するまで電気加熱式触媒が電力で発熱したときの熱を奪い、電気加熱式触媒の昇温を遅らせてしまう。
【0005】
本発明の目的は、電気加熱式触媒の電力量を制御する際に凝縮水の有無や残存量を制御に加味させ、電気加熱式触媒の電力量をより適切に制御する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にあっては、以下の構成を採用する。すなわち、本発明は、
通電により発熱して触媒を加熱する発熱体と、
前記発熱体を収容するケースと、
前記発熱体と前記ケースとの間に設けられ電気を絶縁する絶縁部材と、
前記ケースの温度と内燃機関の稼働時間とに基づいて、前記ケース内に発生する凝縮水吸水量と、前記ケース内から蒸発する凝縮水蒸発量と、の少なくとも一つを算出する算出手段と、
を備えたことを特徴とする電気加熱式触媒の制御装置である。
【0007】
本発明によると、電気加熱式触媒の内部の凝縮水吸水量と凝縮水蒸発量との少なくとも一つが算出され、電気加熱式触媒への電力量を制御する際に凝縮水の有無や残存量を制御に加味させることができる。これにより、凝縮水を考慮して電気加熱式触媒の電力量をより適切に制御することができる。
【0008】
前記凝縮水吸水量と前記凝縮水蒸発量とを用いて算出される前記ケース内に残存する凝縮水残存量に基づいて、前記発熱体に必要な電力量を変更する電力量変更手段を更に備えるとよい。
【0009】
凝縮水残存量が多くなると、凝縮水を蒸発させるために電気加熱式触媒の熱がより多く用いられ、電気加熱式触媒の昇温が遅れる。本発明によると、凝縮水残存量に基づいて、発熱体に必要な電力量を変更するので、例えば、凝縮水残存量が多くなる程、発熱体に必
要な電力量を多くし発熱体の発熱量を多くすることができる。これにより、早期に凝縮水を除去することができると共に電気加熱式触媒の昇温が遅れることを回避することができる。また、凝縮水残存量に基づいて発熱体に必要な電力量を変更するので、凝縮水を蒸発させるためだけの電力量を増加させることができ、発熱体への電力量を過剰に増大させることもなく、消費電力量の過剰な増大や電気加熱式触媒の過昇温を回避することができる。
【0010】
前記発熱体が使用する使用電力量と、前記凝縮水残存量に応じた補正判定電力量を基本判定電力量に上乗せした判定電力量と、を比較して、前記発熱体への通電システムの異常を判別する通電システム異常判別手段を更に備えるとよい。
【0011】
凝縮水残存量が多くなると、凝縮水を蒸発させるために電気加熱式触媒の熱がより多く用いられ、発熱体が使用する使用電力量が多くなる。本発明によると、判定電力量が、凝縮水残存量に応じた補正電力量を基本電力量に上乗せして求められるので、凝縮水残存量が多くなることによって発熱体が使用する使用電力量が多くなったことを考慮して、通電システムの異常を判別することができる。これによって、通電システムの異常を精度良く判別することができる。
【0012】
加熱異常を検出するタイミングでの、前記触媒の温度と、前記触媒の目標温度と、を比較して、前記触媒の加熱異常を判別する加熱異常判別手段であって、前記凝縮水吸水量と前記凝縮水蒸発量とを用いて算出される前記ケース内に残存する凝縮水残存量に応じて加熱異常を検出するタイミングを変更する加熱異常判別手段を更に備えるとよい。
【0013】
凝縮水残存量が多くなると、凝縮水を蒸発させるために電気加熱式触媒の熱がより多く用いられ、触媒の温度上昇が緩やかになる。本発明によると、凝縮水残存量に応じて加熱異常を検出するタイミングを変更するので、例えば、凝縮水残存量が多くなる程、触媒の加熱異常を検出するタイミングを遅くすることができる。これにより、凝縮水残存量が多くなることによって触媒の温度上昇が緩やかになることを考慮して、触媒の加熱異常を判別することができる。これによって、触媒の加熱異常を精度良く判別することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、電気加熱式触媒の電力量を制御する際に凝縮水の有無や残存量を制御に加味させることができ、電気加熱式触媒の電力量をより適切に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例1に係る内燃機関の概略構成を示す図である。
【図2】実施例1に係るEHCの概略構成を示す図である。
【図3】実施例1に係る凝縮水残存量算出ルーチンを示すフローチャートである。
【図4】実施例1に係る凝縮水吸水量算出サブルーチンを示すフローチャートである。
【図5】実施例1に係るケース温度変化割合と凝縮水吸水量との相関関係を示すマップである。
【図6】実施例1に係る凝縮水蒸発量算出サブルーチンを示すフローチャートである。
【図7】実施例1に係るケースの温度の関数を内燃機関の稼働時間で積分する様子を示す図である。
【図8】実施例1に係る総合要求電力量算出ルーチンを示すフローチャートである。
【図9】実施例1に係る凝縮水残存量と補正要求電力量との相関関係を示すマップである。
【図10】実施例1に係る通電システム異常判別ルーチンを示すフローチャートである。
【図11】実施例1に係る加熱異常判別ルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の具体的な実施例を説明する。
【0017】
<実施例1>
図1は、本発明の実施例1に係る内燃機関の概略構成を示す図である。図1に示す内燃機関1は、気筒を4つ有する水冷式の4ストロークサイクル・ディーゼルエンジンである。内燃機関1は、ガソリンエンジン等であってもよい。内燃機関1は、車両に搭載されている。車両は、内燃機関と電気モータとを備えたハイブリッドシステムを採用した車両であってもよい。内燃機関1には、排気通路2が接続されている。内燃機関1に接続された排気通路2の途中には、電気加熱式触媒(以下、EHCという)3が配置されている。EHC3は、内燃機関1から排出された排気中の排気物質を浄化するものである。
【0018】
図2は、実施例1に係るEHCの概略構成を示す図である。図2に示すEHC3は、触媒担体4、排気浄化触媒5、電極6、ケース7、及びマット8を備えている。触媒担体4は、円柱状に形成されており、その中心軸が排気流れ方向と同じ排気通路2の中心軸と同軸となるように設置されている。触媒担体4には排気浄化触媒5が担持されている。排気浄化触媒5としては、酸化触媒、吸蔵還元型NOx触媒、選択還元型NOx触媒及び三元触媒等を例示することができる。
【0019】
触媒担体4は、通電されると自身が有する電気抵抗で発熱する材料によって形成されている。触媒担体4が、本発明の発熱体に対応する。触媒担体4の材料としては、SiCを例示することができる。触媒担体4は、排気流れ方向に延び且つ排気流れ方向と垂直な断面がハニカム状をなす複数の通路を有している。この通路に排気を流通させる。触媒担体4には、電極6が接続されている。電極6には不図示のバッテリから電力が供給される。触媒担体4は、電極6に電力が供給されると通電されるようになっている。触媒担体4が通電されると触媒担体4は発熱し、触媒担体4に担持された排気浄化触媒5を加熱して昇温させ、排気浄化触媒5の活性化を促進することができる。
【0020】
触媒担体4はケース7に収容されている。ケース7は、金属製である。ケース7を構成する金属材料としては、ステンレス鋼材を例示することができる。ケース7は、触媒担体4が内部に配置される収容部7aと、収容部7aよりも排気流れ方向上流側及び下流側で収容部7aと排気通路2とを接続するテーパ部7b,7cと、を有している。収容部7aの通路断面積は、排気通路2の通路断面積よりも大きくなっている。収容部7aの内部には、触媒担体4及びマット8が収容されている。テーパ部7b,7cは、収容部7aから離れ排気通路2に近付くに従って通路断面積が縮小するテーパ形状となっている。
【0021】
ケース7の収容部7aの内壁面と、触媒担体4の外周面と、の間には、絶縁部材としての円環状のマット8が挟み込まれている。マット8がケース7内に配置されることにより、触媒担体4がケース7内でマット8によって支持される。マット8は、電気を絶縁する電気絶縁材で構成されている。マット8を構成する材料としては、アルミナを主成分とするセラミックファイバを例示することができる。マット8は、触媒担体4の外周面に巻きつけられている。電気絶縁材のマット8が触媒担体4とケース7との間に設けられているので、触媒担体4に通電したときにその電気がマット8で絶縁されケース7へ流れてしまうことが防止されている。
【0022】
EHC3のケース外周壁面には、ケース7の温度を検出するケース温度センサ9が配置されている。ケース温度センサ9により、EHC3の壁温であるケース7の温度を検出す
ることができる。また、ケース7の排気流れ下流側のテーパ部7cには、EHC3の排気浄化触媒5を流通した排気の温度を検出する排気温度センサ10が配置されている。排気温度センサ10により、EHC3の排気浄化触媒5の床温を推定することができる。
【0023】
図1に示すように、以上述べたように構成された内燃機関1には、内燃機関1を制御するためのECU(電子制御ユニット)11が併設されている。ECU11は、内燃機関1の運転条件や運転者の要求に応じて内燃機関1の運転状態を制御するユニットである。ECU11には、ケース温度センサ9、排気温度センサ10、クランクポジションセンサ12、アクセルポジションセンサ13、外気温度センサ14等の各種センサが電気配線を介して接続され、これら各種センサの出力信号がECU11に入力されるようになっている。一方、ECU11には、EHC3の電極6が電気配線を介して接続されており、ECU11により電極6(EHC3)への電力量が制御される。
【0024】
(EHC制御)
EHC3は、排気浄化触媒5を加熱して排気浄化触媒5を早期に活性化させるために、排気浄化触媒5が低温不活性状態である内燃機関1の始動時等に電極6へ電力が供給され、触媒担体4が発熱するよう制御される。この排気浄化触媒5の早期活性化を妨げるものとして、EHC3の内部の凝縮水が存在する。凝縮水は、内燃機関の低温始動等の繰り返しによって大量に発生する。触媒担体4やマット8が凝縮水を吸水していると、電極6へ電力を供給した時に凝縮水が触媒担体4の発熱した熱を蒸発するまで奪うため、排気浄化触媒5の昇温が遅れ、排気浄化触媒5の活性化が遅くなってしまう。特に、触媒担体4がSiC製であると、SiC製の触媒担体4は吸水し易いため、マット8まで凝縮水が除去できていないと、マット8からSiC製の触媒担体4へ凝縮水が浸入してしまう。マット8はケース7と接しているため、温度上昇し難くマット8の凝縮水の蒸発が遅れるので、マット8からSiC製の触媒担体4へ凝縮水が浸入し易い。よって、SiC製の触媒担体4であると、さらに排気浄化触媒5の昇温が遅れ、排気浄化触媒5の活性化が遅くなってしまう。このように凝縮水は、EHC3の制御に悪影響を及ぼす。
【0025】
そこで、本実施例では、ケース7の温度と内燃機関1の稼働時間とに基づいて、ケース7内に発生する凝縮水吸水量と、ケース7内から蒸発する凝縮水蒸発量と、を算出するようにした。さらに算出された凝縮水吸水量と凝縮水蒸発量とを用いてケース7内に残存する凝縮水残存量を算出するようにした。そして、算出された凝縮水残存量に基づいて、電極6に供給する、触媒担体4に必要な総合要求電力量を変更するようにした。
【0026】
なお、本実施例では、ケース7の温度と内燃機関1の稼働時間とに基づいて、凝縮水吸水量と凝縮水蒸発量との両方を算出するようにしているが、本発明はこれに限られない。本発明としては、ケース7の温度と内燃機関1の稼働時間とに基づいて、凝縮水吸水量と凝縮水蒸発量とのうちいずれか一方だけを算出するものでもよい。
【0027】
具体的に本実施例では、凝縮水吸水量は、内燃機関1の稼働前から稼働中におけるケース7の温度の変化を内燃機関1の稼働時間で割ったケース温度変化割合を、予め求められたケース温度変化割合と凝縮水吸水量との相関関係を示したマップに取り込むことで、算出される。凝縮水蒸発量は、内燃機関1の稼働時のケース7の温度を関数化し、このケース7の温度の関数を内燃機関1の稼働時間で積分することで、算出される。凝縮水残存量は、前回値と、今回の凝縮水吸水量から今回の凝縮水蒸発量を差し引いた値と、の和をとることで、算出される。総合要求電力量は、ケース7の温度に応じた基本要求電力量と、凝縮水残存量を、予め求められた凝縮水残存量と補正要求電力量との相関関係を示したマップに取り込むことで算出される補正要求電力量と、の和をとることで算出され、この総合要求電力量を上回るまで電極6への電力の供給が実行される。
【0028】
本実施例によると、EHC3の内部の凝縮水吸水量と凝縮水蒸発量とが算出され、EHC3への電力量を制御する際に凝縮水残存量を制御に加味させている。これにより、凝縮水を考慮してEHC3の電力量をより適切に制御することができる。詳述すると、例えば、凝縮水残存量が多くなると、凝縮水を蒸発させるために触媒担体4の熱がより多く用いられ、排気浄化触媒5の昇温が遅れ排気浄化触媒5の活性化も遅れる。しかし本実施例によると、凝縮水残存量に基づいて、触媒担体4に必要な電力量を変更するので、例えば、凝縮水残存量が多くなる程、触媒担体4に必要な電力量を多くし触媒担体4の発熱量を多くすることができる。これにより、早期に凝縮水を除去することができると共に排気浄化触媒5の昇温が遅れることを回避することができる。また、凝縮水残存量に基づいて触媒担体4に必要な電力量を変更するので、凝縮水を蒸発させるためだけの電力量を増加させることができ、触媒担体4への電力量を過剰に増大させることもなく、消費電力量の過剰な増大や排気浄化触媒5の過昇温を回避することができる。
【0029】
(凝縮水残存量算出ルーチン)
ECU11における凝縮水残存量算出ルーチンについて、図3に示すフローチャートに基づいて説明する。図3は、凝縮水残存量算出ルーチンを示すフローチャートである。本ルーチンは、所定の時間毎に繰り返しECU11によって実行される。本ルーチンを実行するECU11が、本発明の算出手段に対応する。
【0030】
図3に示すルーチンが開始されると、S101では、凝縮水吸水量算出サブルーチンを実行する。
【0031】
図4は、凝縮水吸水量算出サブルーチンを示すフローチャートである。図4に示すサブルーチンが開始されると、S201では、外気温度が予め定めた所定温度T1よりも低いか否かを判別する。外気温度は、外気温度センサ14で検出する。S201において、肯定判定された場合には、S202へ移行する。一方、S201において、否定判定された場合には、本サブルーチンを一旦終了する。S202では、ケース7の温度が予め定めた所定温度T2よりも低いか否かを判別する。ケース7の温度は、ケース温度センサ9で検出する。S202において、肯定判定された場合には、S203へ移行する。一方、S202において、否定判定された場合には、S204へ移行する。S203では、内燃機関1が稼働停止しているか否かを判別する。内燃機関1が稼働しているか稼働停止しているかは、クランクポジションセンサ12で内燃機関1の機関回転速度を検出することにより判断する。S203において、肯定判定された場合には、S205へ移行する。一方、S203において、否定判定された場合には、S208へ移行する。S204では、内燃機関1の稼働中のケース7の温度CT1を取り込み済みか否か、を判別する。S204において、肯定判定された場合には、S205へ移行する。一方、S204において、否定判定された場合には、本サブルーチンを一旦終了する。
【0032】
S205では、ケース7の温度変化△CTを算出済みか否か、を判別する。なお、ケース7の温度変化△CTとは、内燃機関1の稼働中のケース7の温度CT1から内燃機関1の稼働前のケース7の温度CT0を差し引いた値である。S205において、肯定判定された場合には、S210へ移行する。一方、S205において、否定判定された場合には、S206へ移行する。S206では、内燃機関1の稼働前のケース7の温度CT0を取り込み済みか否か、を判別する。S206において、肯定判定された場合には、本サブルーチンを一旦終了する。一方、S206において、否定判定された場合には、S207へ移行する。S207では、内燃機関1の稼働前のケース7の温度CT0を取り込む。ケース7の温度CT0は、ケース温度センサ9で検出することができる。本ステップの後、本サブルーチンを一旦終了する。
【0033】
S208では、内燃機関1の稼働中のケース7の温度CT1を取り込む。ケース7の温
度CT1は、ケース温度センサ9で検出することができる。S209では、ケース7の温度変化△CTを算出する。ケース7の温度変化△CTは、内燃機関1の稼働中のケース7の温度CT1から内燃機関1の稼働前のケース7の温度CT0を差し引いて算出される(△CT=CT1−CT0)。本ステップの後、本サブルーチンを一旦終了する。
【0034】
S210では、ケース温度変化割合△CT/△tを算出する。ケース温度変化割合△CT/△tは、ケース7の温度変化△CTを内燃機関1の稼働時間△tで割って算出される。S211では、凝縮水吸水量を算出する。凝縮水吸水量は、ケース温度変化割合△CT/△tを、図5に示す予め求められたケース温度変化割合と凝縮水吸水量との相関関係を示したマップに取り込むことで、算出される。本ステップの後、本サブルーチンを一旦終了する。
【0035】
図4に示すサブルーチンが一旦終了されると、図3に示すルーチンのS102へ移行する。S102では、凝縮水蒸発量算出サブルーチンを実行する。
【0036】
図6は、凝縮水蒸発量算出サブルーチンを示すフローチャートである。図6に示すサブルーチンが開始されると、S301では、ケース7の温度が予め定めた所定温度T3よりも高いか否かを判別する。ケース7の温度は、ケース温度センサ9で検出する。S301において、肯定判定された場合には、S302へ移行する。一方、S301において、否定判定された場合には、本サブルーチンを一旦終了する。S302では、内燃機関1が稼働しているか否かを判別する。内燃機関1が稼働しているか稼働停止しているかは、クランクポジションセンサ12で内燃機関1の機関回転速度を検出することにより判断する。S302において、肯定判定された場合には、S303へ移行する。一方、S302において、否定判定された場合には、S304へ移行する。S303では、内燃機関1の稼働時のケース7の温度を関数化した関数f(t)を算出する。ケース温度センサ9で検出したケース7の温度を前回値と比較して増加量や減少量等から関数化する。本ステップの後、本サブルーチンを一旦終了する。
【0037】
S304では、内燃機関1の稼働履歴が存在するか否かを判別する。内燃機関1の稼働履歴は、ECU11に記録から判断する。S304において、肯定判定された場合には、S305へ移行する。一方、S304において、否定判定された場合には、本サブルーチンを一旦終了する。S305では、凝縮水蒸発量を算出する。凝縮水蒸発量は、図7に示すように、ケース7の温度の関数f(t)を内燃機関1の稼働時間で積分することで、算出される(凝縮水蒸発量V(t)=K∫f(t)dt)。本ステップの後、本サブルーチンを一旦終了する。
【0038】
図6に示すサブルーチンが一旦終了されると、図3に示すルーチンのS103へ移行する。S103では、凝縮水吸水量を更新したか否かを判別する。S103において、肯定判定された場合には、S105へ移行する。一方、S103において、否定判定された場合には、S104へ移行する。S104では、凝縮水蒸発量を更新したか否かを判別する。S104において、肯定判定された場合には、S105へ移行する。一方、S104において、否定判定された場合には、本ルーチンを一旦終了する。S105では、凝縮水残存量を算出する。凝縮水残存量は、前回値と、今回の凝縮水吸水量から今回の凝縮水蒸発量を差し引いた値と、の和をとることで、算出される。算出した凝縮水残存量は、ECU11に保存される。本ステップの後、本ルーチンを一旦終了する。
【0039】
以上の本ルーチンであると、EHC3の内部の凝縮水吸水量と凝縮水蒸発量とを算出して、凝縮水残存量を算出することができる。
【0040】
(総合要求電力量算出ルーチン)
ECU11における総合要求電力量算出ルーチンについて、図8に示すフローチャートに基づいて説明する。図8は、総合要求電力量算出ルーチンを示すフローチャートである。本ルーチンは、所定の時間毎に繰り返しECU11によって実行される。本ルーチンを実行するECU11が、本発明の電力量変更手段に対応する。
【0041】
図8に示すルーチンが開始されると、S401では、EHC3の電極6に電力を供給していないEHC3の通電中でないか否かを判別する。S401において、肯定判定された場合には、S402へ移行する。一方、S401において、否定判定された場合には、S410へ移行する。S402では、現在のケース7の温度を取り込む。ケース7の温度は、ケース温度センサ9で検出する。S403では、通電要求温度を設定する。通電要求温度とは、電極6に電力を供給して排気浄化触媒5を昇温しなければならない温度である。S404では、現在のケース7の温度が通電要求温度よりも低いか否かを判別する。S404において、肯定判定された場合には、S405へ移行する。一方、S404において、否定判定された場合には、本ルーチンを一旦終了する。S405では、通電目標温度を設定する。通電目標温度とは、排気浄化触媒5を昇温させる目標の温度である。S406では、通電必要温度差を算出する。通電必要温度差は、通電目標温度から現在のケース7の温度を差し引くことで、算出される。S407では、基本要求電力量を算出する。基本要求電力量は、通電必要温度差を、予め求められた通電必要温度差と基本要求電力量との相関関係を示したマップに取り込むことで、算出される。結局、基本要求電力量は、ケース7の温度に応じた値である。S408では、通電を開始する。つまり、電極6に電力を供給し始める。S409では、電力量積算値をクリアしておく。本ステップの後、本ルーチンを一旦終了する。
【0042】
S410では、電力量を算出する。電力量は、電力と通電時間とを掛けて算出される。S411では、電力量積算値を算出する。電力量積算値は、前回の電力量積算値と、S410で算出された電力量と、の和をとることで、算出される。S412では、補正要求電力量を算出する。補正要求電力量は、図3に示すルーチンで算出された凝縮水残存量を、図9に示す予め求められた凝縮水残存量と補正要求電力量との相関関係を示したマップに取り込むことで、算出される。S413では、総合要求電力量を算出する。総合要求電力量は、S407で算出された基本要求電力量と、S412で算出された補正要求電力量と、の和をとることで、算出される。S414では、電力量積算値が総合要求電力量を上回るか否かを判別する。S414において、肯定判定された場合には、S415へ移行する。一方、S414において、否定判定された場合には、本ルーチンを一旦終了する。S415では、通電を終了する。つまり、電極6への電力の供給を停止する。本ステップの後、本ルーチンを一旦終了する。
【0043】
以上の本ルーチンであると、凝縮水残存量を加味してEHC3の電極6へ供給する電力量を制御することができる。
【0044】
(通電システム異常判別)
EHC3では、EHC3へ供給する電力量が少なくなり過ぎてしまうことを防止するために、通電システムの異常判別が行われる。通電システムの異常判別は、一般に、EHC3の使用電力量(電力量積算値)と判定電力量とを比較して、EHC3の使用電力量が判定電力量を上回る場合に、通電が正常に行われたと判定し、EHC3の使用電力量が判定電力量を上回らない場合に、通電異常が生じたと判定する。しかしながら、EHC3の内部の凝縮水残存量が多くなると、凝縮水を蒸発させるためにEHC3の熱がより多く用いられ、使用電力量が多くなる。それにもかかわらず、判定電力量を一定値としてしまうと、凝縮水残存量が多ければ使用電力量が多いために多くの場合に通電システムの通電が正常と判定されてしまい、実際の通電システムの異常判別ができない。
【0045】
そこで、本実施例では、触媒担体4が使用する使用電力量である電力量積算値と、凝縮水残存量に応じた補正判定電力量を基本判定電力量に上乗せした判定電力量と、を比較して、EHC3の通電システムの異常を判別するようにした。
【0046】
凝縮水残存量が多くなると、凝縮水を蒸発させるためにEHC3の熱がより多く用いられ、触媒担体4が使用する使用電力量(電力量積算値)が多くなる。本実施例によると、判定電力量が、凝縮水残存量に応じた補正判定電力量を基本判定電力量に上乗せして求められるので、凝縮水残存量が多くなることによって触媒担体4が使用する使用電力量(電力量積算値)が多くなったことを考慮して、通電システムの異常を判別することができる。これによって、通電システムの異常を精度良く判別することができる。
【0047】
(通電システム異常判別ルーチン)
ECU11における通電システム異常判別ルーチンについて、図10に示すフローチャートに基づいて説明する。図10は、通電システム異常判別ルーチンを示すフローチャートである。本ルーチンは、所定の時間毎に繰り返しECU11によって実行される。本ルーチンを実行するECU11が、本発明の通電システム異常判別手段に対応する。
【0048】
図10に示すルーチンが開始されると、S501では、EHC3の電極6に電力を供給しているEHC3の通電中であるか否かを判別する。S501において、肯定判定された場合には、S502へ移行する。一方、S501において、否定判定された場合には、S508へ移行する。S502では、電力量積算値を算出する。電力量積算値は、触媒担体4が使用する使用電力量であり、例えば、図8に示すルーチンが実行されることで更新されている。S503では、通電開始時のケース7の温度と、通電目標温度と、を取り込む。通電開始時のケース7の温度と、通電目標温度とは、例えば、図8に示すルーチンが実行された際にECU11に記憶されている。S504では、基本判定電力量を算出する。基本判定電力量は、通電開始時のケース7の温度及び通電目標温度を、予め求められた通電開始時のケース7の温度及び通電目標温度と基本判定電力量との相関関係を示したマップに取り込むことで、算出される。S505では、凝縮水残存量を取り込む。凝縮水残存量は、例えば、図3に示すルーチンが実行された際に算出されている。S506では、補正判定電力量を算出する。補正判定電力量は、S505で取り込まれた凝縮水残存量を、予め求められた凝縮水残存量と補正判定電力量との相関関係を示したマップに取り込むことで、算出される。S507では、判定電力量を算出する。判定電力量は、S504で算出された基本判定電力量と、S506で算出された補正判定電力量と、の和をとることで、算出される。本ステップの後、本ルーチンを一旦終了する。
【0049】
S508では、EHC3の電極6への電力供給を終了したEHC3の通電終了か否かを判別する。S508において、肯定判定された場合には、S509へ移行する。一方、S508において、否定判定された場合には、本ルーチンを一旦終了する。S509では、電力量積算値が判定電力量を上回るか否かを判別する。S509において、肯定判定された場合には、S510へ移行する。一方、S509において、否定判定された場合には、S511へ移行する。S510では、EHC3の通電システムの通電が正常であると判定する。本ステップの後、本ルーチンを一旦終了する。S511では、EHC3の通電システムの通電が異常であると判定する。本ステップの後、本ルーチンを一旦終了する。
【0050】
以上の本ルーチンであると、凝縮水残存量を加味してEHC3の通電システムの異常を精度良く判別することができる。
【0051】
(加熱異常判別)
EHC3では、排気浄化触媒5の床温が目標温度に到達しているか否かの加熱異常判別が行われる。加熱異常判別は、一般に、加熱異常を検出するタイミングで、排気浄化触媒
5の温度と、排気浄化触媒5の目標温度と、を比較して、排気浄化触媒5の温度が目標温度を上回る場合に、加熱が正常に行われたと判定し、排気浄化触媒5の温度が目標温度を上回らない場合に、触媒床温が低下している加熱異常が生じたと判定する。しかしながら、EHC3の内部の凝縮水残存量が多くなると、凝縮水を蒸発させるためにEHC3の熱がより多く用いられ、排気浄化触媒5の温度上昇が緩やかになる。それにもかかわらず、加熱異常を検出するタイミングを一定タイミングとしてしまうと、凝縮水残存量が多ければ排気浄化触媒5の温度上昇が緩やかなためにそのタイミングでは排気浄化触媒5の温度が目標温度を上回らない場合が多くなり、実際の加熱異常判別ができない。
【0052】
そこで、本実施例では、加熱異常を検出するタイミングでの、排気浄化触媒5の温度と、排気浄化触媒5の目標温度と、を比較して、排気浄化触媒5の加熱異常を判別するものであって、凝縮水吸水量と凝縮水蒸発量とを用いて算出されるケース7内に残存する凝縮水残存量に応じて加熱異常を検出するタイミングを変更するようにした。
【0053】
凝縮水残存量が多くなると、凝縮水を蒸発させるためにEHC3の熱がより多く用いられ、排気浄化触媒5の温度上昇が緩やかになる。本実施例によると、凝縮水残存量に応じて加熱異常を検出するタイミングを変更するので、例えば、凝縮水残存量が多くなる程、排気浄化触媒5の加熱異常を検出するタイミングを遅くすることができる。これにより、凝縮水残存量が多くなることによって排気浄化触媒5の温度上昇が緩やかになることを考慮して、排気浄化触媒5の加熱異常を判別することができる。これによって、排気浄化触媒5の加熱異常を精度良く判別することができる。
【0054】
(加熱異常判別ルーチン)
ECU11における加熱異常判別ルーチンについて、図11に示すフローチャートに基づいて説明する。図11は、加熱異常判別ルーチンを示すフローチャートである。本ルーチンは、所定の時間毎に繰り返しECU11によって実行される。本ルーチンを実行するECU11が、本発明の加熱異常判別手段に対応する。
【0055】
図11に示すルーチンが開始されると、S601では、EHC3の電極6に電力を供給しているEHC3の通電中であるか否かを判別する。S601において、肯定判定された場合には、S602へ移行する。一方、S601において、否定判定された場合には、本ルーチンを一旦終了する。S602では、通電時間を計数する。S603では、排気浄化触媒5の床温を推定する。排気浄化触媒5の床温は、排気温度センサ10で検出した排気浄化触媒5を流通した排気温度から推定される。なお、排気浄化触媒5の床温は、ケース温度センサ9で検出するケース7の温度から推定するものでもよい。S604では、排気浄化触媒5の加熱異常判別に用いる排気浄化触媒5の目標温度を設定する。S605では、基本判定カウントを算出する。基本判定カウントは、予め求められた値等である。S606では、凝縮水残存量を取り込む。凝縮水残存量は、例えば、図3に示すルーチンが実行された際に算出されている。S607では、補正判定カウントを算出する。補正判定カウントは、S606で取り込まれた凝縮水残存量を、予め求められた凝縮水残存量と補正判定カウントとの相関関係を示したマップに取り込むことで、算出される。S608では、加熱異常を検出するタイミングを求めるための判定カウントを算出する。判定カウントは、S605で算出された基本判定カウントと、S607で算出された補正判定カウントと、の和をとることで、算出される。S609では、通電時間が判定カウントを上回るか否かを判別する。つまり、通電時間が判定カウントを上回ると、加熱異常を検出するタイミングが到来したことになる。S609において、肯定判定された場合には、S610へ移行する。一方、S609において、否定判定された場合には、本ルーチンを一旦終了する。S610では、排気浄化触媒5の推定床温が目標温度を上回るか否かを判別する。S610において、肯定判定された場合には、S611へ移行する。一方、S610において、否定判定された場合には、S612へ移行する。S611では、EHC3の通電が正
常に行われ、加熱が正常に行われたと判定する。本ステップの後、本ルーチンを一旦終了する。S612では、EHC3の通電異常等が生じ、加熱異常が生じたと判定する。本ステップの後、本ルーチンを一旦終了する。
【0056】
以上の本ルーチンであると、凝縮水残存量を加味して排気浄化触媒5の加熱異常を精度良く判別することができる。
【0057】
<その他>
本発明に係る電気加熱式触媒の制御装置は、上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1:内燃機関、2:排気通路、3:EHC、4:触媒担体、5:排気浄化触媒、6:電極、7:ケース、7a:収容部、7b,7c:テーパ部、8:マット、9:ケース温度センサ、10:排気温度センサ、11:ECU、12:クランクポジションセンサ、13:アクセルポジションセンサ、14:外気温度センサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電により発熱して触媒を加熱する発熱体と、
前記発熱体を収容するケースと、
前記発熱体と前記ケースとの間に設けられ電気を絶縁する絶縁部材と、
前記ケースの温度と内燃機関の稼働時間とに基づいて、前記ケース内に発生する凝縮水吸水量と、前記ケース内から蒸発する凝縮水蒸発量と、の少なくとも一つを算出する算出手段と、
を備えたことを特徴とする電気加熱式触媒の制御装置。
【請求項2】
前記凝縮水吸水量と前記凝縮水蒸発量とを用いて算出される前記ケース内に残存する凝縮水残存量に基づいて、前記発熱体に必要な電力量を変更する電力量変更手段を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の電気加熱式触媒の制御装置。
【請求項3】
前記発熱体が使用する使用電力量と、前記凝縮水残存量に応じた補正判定電力量を基本判定電力量に上乗せした判定電力量と、を比較して、前記発熱体への通電システムの異常を判別する通電システム異常判別手段を更に備えたことを特徴とする請求項2に記載の電気加熱式触媒の制御装置。
【請求項4】
加熱異常を検出するタイミングでの、前記触媒の温度と、前記触媒の目標温度と、を比較して、前記触媒の加熱異常を判別する加熱異常判別手段であって、前記凝縮水吸水量と前記凝縮水蒸発量とを用いて算出される前記ケース内に残存する凝縮水残存量に応じて前記加熱異常を検出するタイミングを変更する加熱異常判別手段を更に備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気加熱式触媒の制御装置。
【請求項1】
通電により発熱して触媒を加熱する発熱体と、
前記発熱体を収容するケースと、
前記発熱体と前記ケースとの間に設けられ電気を絶縁する絶縁部材と、
前記ケースの温度と内燃機関の稼働時間とに基づいて、前記ケース内に発生する凝縮水吸水量と、前記ケース内から蒸発する凝縮水蒸発量と、の少なくとも一つを算出する算出手段と、
を備えたことを特徴とする電気加熱式触媒の制御装置。
【請求項2】
前記凝縮水吸水量と前記凝縮水蒸発量とを用いて算出される前記ケース内に残存する凝縮水残存量に基づいて、前記発熱体に必要な電力量を変更する電力量変更手段を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の電気加熱式触媒の制御装置。
【請求項3】
前記発熱体が使用する使用電力量と、前記凝縮水残存量に応じた補正判定電力量を基本判定電力量に上乗せした判定電力量と、を比較して、前記発熱体への通電システムの異常を判別する通電システム異常判別手段を更に備えたことを特徴とする請求項2に記載の電気加熱式触媒の制御装置。
【請求項4】
加熱異常を検出するタイミングでの、前記触媒の温度と、前記触媒の目標温度と、を比較して、前記触媒の加熱異常を判別する加熱異常判別手段であって、前記凝縮水吸水量と前記凝縮水蒸発量とを用いて算出される前記ケース内に残存する凝縮水残存量に応じて前記加熱異常を検出するタイミングを変更する加熱異常判別手段を更に備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気加熱式触媒の制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−107567(P2012−107567A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−256994(P2010−256994)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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