電気化学分子認識プローブ及びそれを用いた分子認識センサ並びにそれらを用いた電気化学的検出方法
【課題】目的物質へのラベル化および測定溶液へのマーカーの添加を必要とせず、かつ目的物質の認識に伴い電気化学信号が増加するsignal−on型の検出法を実現するための分子認識プローブおよび分子認識センサを提供する。
【解決手段】電気化学活性団と、前記電気化学活性団の電気化学活性を抑制する活性抑制団と、目的物質を特異的に分子認識するレセプターと、分子認識の結果立体構造を変化させる分子領域とを備え、分子認識前は前記電気化学活性団が前記活性抑制団により活性を抑制され、分子認識後は活性を取り戻すように分子認識プローブを構成する、或いは、アンカー領域を前記分子認識プローブに備え、これを電極表面に固定することによって分子認識センサを構成する。
【解決手段】電気化学活性団と、前記電気化学活性団の電気化学活性を抑制する活性抑制団と、目的物質を特異的に分子認識するレセプターと、分子認識の結果立体構造を変化させる分子領域とを備え、分子認識前は前記電気化学活性団が前記活性抑制団により活性を抑制され、分子認識後は活性を取り戻すように分子認識プローブを構成する、或いは、アンカー領域を前記分子認識プローブに備え、これを電極表面に固定することによって分子認識センサを構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、目的の分子を認識することで電気化学活性を発現する分子認識プローブ、特に目的の核酸を配列特異的に認識することで電気化学活性を発現する分子認識プローブ、及びそれを用いた分子認識センサ並びにそれらを用いた電気化学的検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の分子の共存した溶液中で特定の分子を検出するためには、その分子特有の物理的・化学的特徴を指標に何らかの物理的・化学的摂動を与え、得られる信号変化から同定を行う。
目的とする分子に特有な特徴がない場合には、特徴のある分子団等によりラベル化し、ラベルを目印に目的の分子を検出する。また、その目的とする分子へのラベル化が困難な場合には、その分子を特異的に認識する分子認識試薬を用い、分子認識試薬側に特徴を持たせることで目的の分子を検出することが多い。特に、測定対象が多数の場合には後者の方法を用いることが多い。
【0003】
近年、核酸やタンパク質、ペプチドなどの生体物質のハイスループットスクリーニングやゲノム解析、プロテオーム解析、メタボローム解析などの網羅的生体活動解析のニーズが高まっているが、測定対象の規模の増加に伴い、従来のラベル化法に変わる新しい検出法が望まれている。
現在、例えばゲノム解析における核酸の検出においては、測定対象となる核酸(ターゲット核酸)そのものに蛍光団を直接ラベル化し、チップや基板上に固定した相補的配列を有する核酸(プローブ核酸)との配列特異的なハイブリッド形成の後、蛍光発光を直接検出することでターゲット核酸を同定している。
しかし、多種類の核酸を測定対象とする場合、こういったラベル化作業を全ての核酸に対して行うのは大変煩雑であり、ラベル化フリーの核酸検出法が望まれている。このような状況は、多くのタンパク質やペプチドを取り扱わねばならないプロテオーム解析やメタボローム解析でも同様である。
【0004】
例えば、ラベル化フリーの核酸検出法のうち最もよく使用されている手法に分子ビーコン法がある。この手法は、図6に示すように、プローブ核酸の両端に蛍光団(F)とその蛍光を消光する消光団(Q)とをそれぞれ修飾し、ターゲット核酸とハイブリッド形成していない時には、蛍光団の近傍に消光団が位置するようにヘアピン構造を取らせ、蛍光を発光させないようにしておき、ターゲット核酸とハイブリッド形成して両者が離れることで初めて蛍光団が蛍光を発光するようにすることで、目的の核酸の存在を知ることができるものである(特許文献1、非特許文献1)。
【0005】
しかし、蛍光分光に基づく検出法は高感度検出が可能な一方、高エネルギーで高価で大掛かりな測定装置を必要とする。
本発明者らは従来、蛍光分光法に代わるより簡便な手法について研究してきた。その過程で、電気化学に基づく手法は、低エネルギーで安価で小規模な装置で検出が可能なため、簡便な検出を可能とすることを示してきた。特に、生体内での遺伝子やタンパク質の働きにおける正常時からのずれを指標とした診断技術であるトキシコゲノミクスやファーマコゲノミクスなど患者の病態予測や治療法の選択を可能とする技術が、研究所レベルの研究から臨床レベルの診断へと応用の幅を広げようとしている昨今では、簡便な診断ツールの必要性はますます増加している。
【0006】
電気化学に基づくラベル化フリーの分子認識法には、例えば本発明者らが開発してきたイオンチャンネルセンサがある(特許文献2、3、非特許文献2)。これは、生体膜に存在するイオンチャネルタンパクが少量のリガンドの結合により生体膜内外における多量のイオンの流れを制御することに着目し、分子認識とそれに続く信号増幅とにより目的物質を検出するセンサである。目的物質への選択的な結合能を有する分子をレセプターとして電極表面に固定し、測定溶液中に電気化学活性物質(マーカー)を溶解しておく。目的物質がレセプターと結合して電極表面に濃縮されることで、マーカーの電極表面での電子移動反応が促進されたり抑制されたりするように仕組んでおくことで、少量の目的物質の存在を多量の電子の流れとして検出することができる。この原理の最大の利点は、目的物質に電気化学活性がなくとも(ラベル化しなくとも)目的物質を電気化学的に検出できる点である。この原理を用いることにより、数多くの分子やイオン、糖鎖やペプチド、核酸の高感度検出に成功した。
【0007】
本発明者らはこの原理をさらに進め、電気化学活性を有するレセプターを開発し、目的物質へのラベル化が不要であるのみならずマーカーの添加も不要なより簡便な手法を提案した(非特許文献3)。例えば、核酸検出用のレセプター(プローブ核酸)では、プローブ核酸の一端をフェロセンなどの電気化学活性団で修飾し、他端を電極表面に固定する。核酸は一本鎖の状態では柔軟性に富む構造をしているが、二本鎖となると剛直な構造となることが知られている。この核酸の性質により、プローブ核酸末端のフェロセンはハイブリッド形成により、自由に電極表面へ電子移動反応が起こせる状態から困難な状態へと変化するため、観測される電流値の減少によりターゲット核酸を配列特異的に検出することができることを見出した。同様の手法により、タンパク質、分子やイオンなどその他の化学種を目的物質とした検出も試みられている(非特許文献4〜7)。
【0008】
しかし、末端に電気化学活性種を有するレセプターを用いた検出法では、その原理を電極表面からの距離に依存した電子移動反応の制御に依らざるを得ず、したがって、分子認識イベントを電子移動反応の減少によって知らせるような仕組みとせざるを得ない。電気化学的な検出原理に基づくプローブ核酸では、ほぼ全てがこの仕組みに基づくものである。一般に、分子認識に伴い信号が減少する系(signal−off型)では、検出感度が小さいことが知られている。これに対し、分子認識に伴い信号が増加する系(signal−on型)では、高感度な検出を望むことができる。電気化学的手法の簡便性を生かし、ラベル化およびマーカーが共に不要な分析法を開発するためには、signal−on型の手法を開発する必要がある。しかし、現状ではそのような手法の開発はなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際特許公開WO95/13399
【特許文献2】特許第3,956,214号公報
【特許文献3】米国特許7,169,614号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Nature Biotechnol.vol.14,303-308(1996)
【非特許文献2】Anal.Chem.vol.76,No.17,320A-326A(2004)
【非特許文献3】Analyst vol.132,784-791(2007)
【非特許文献4】Angew.Chem.Int.Ed.vol.44,5456-5459(2005)
【非特許文献5】Proc.Natl.Acad.Sci.USA vol.100,9134-9137(2003)
【非特許文献6】J.Am.Chem.Soc.vol.128,3138-3139(2006)
【非特許文献7】J.Am.Chem.Soc.vol.129,262-263(2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであって、目的物質へのラベル化および測定溶液へのマーカーの添加を必要とせず、かつ目的物質の認識に伴い電気化学信号が増加するsignal−on型の検出法を実現するための分子認識プローブおよび分子認識センサを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、電気化学活性団と、前記電気化学活性団の電気化学活性を抑制する活性抑制団と、目的物質を特異的に分子認識するレセプターと、分子認識の結果立体構造を変化させる分子領域とを備えた分子認識プローブであって、分子認識前は、前記電気化学活性団が前記活性抑制団により活性を抑制され、分子認識後は、その立体構造の変化により活性を取り戻すように構成することにより、上記目的が達成できるという知見を得た。また、アンカー領域を前記分子認識プローブに備え、これを電極表面に固定することによって分子認識センサを構成できることも判明した。
【0013】
本発明は、これらの知見に基づいて完成に至ったものであり、以下のとおりのものである。
[1]電気化学活性団と、前記電気化学活性団の電気化学活性を抑制する活性抑制団と、目的物質を特異的に分子認識するレセプター領域と、分子認識の結果立体構造を変化させる構造変化領域とを備え、分子認識前は前記電気化学活性団が前記活性抑制団により活性を抑制され、分子認識後は活性を取り戻すことを特徴とする分子認識プローブ。
[2]前記レセプター領域が、前記構造変化領域を兼ねていることを特徴とする前記[1]の分子認識プローブ。
[3]固体表面上に固定するためのアンカー領域を備えたことを特徴とする前記[1]又は[2]の分子認識プローブ。
[4]前記電気化学活性団が、メタロセン又はその誘導体であることを特徴とする前記[1]〜[3]のいずれかの分子認識プローブ。
[5]前記活性抑制団が前記電気化学活性団を内包していることを特徴とする前記[1]〜[4]のいずれかの分子認識プローブ。
[6]前記活性抑制団が、シクロデキストリン又はカリックスアレン或いはこれらの誘導体であることを特徴とする前記[5]の分子認識プローブ。
[7]前記[1]〜[6]のいずれか1つの分子認識プローブを固体表面に固定化することで作製した分子認識センサ。
[8]目的物質を含有する溶液と、前記[1]〜[6]のいずれかの分子認識プローブを接触させて、該分子認識プローブから発生される、分子認識前後の電気化学信号の変化を検出することを特徴とする電気化学的検出方法。
[9]前記電気化学信号の変化が、電流値の増減又は電圧値の増減であることを特徴とする前記[8]の電気化学的検出方法。
[10]目的物質を含有する溶液と、前記[7]に記載の分子認識センサを接触させて、該分子認識センサから発生される、分子認識前後の電気化学信号の変化を検出することを特徴とする電気化学的検出方法。
[11]前記電気化学信号の変化が、電流値の増減又は電圧値の増減であることを特徴とする前記[10]の電気化学的検出方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明は以上に説明したような特徴を持つので、目的物質へのラベル化および測定溶液へのマーカーの添加を必要とせず、かつ目的物質の認識に伴い電気化学信号が増加するsignal−on型の検出法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の分子認識プローブを模式的に示す図。
【図2】本発明の分子認識プローブを電極に固定した本発明の分子認識センサを模式的に示す図。
【図3】レセプターが分子認識に伴ってその立体構造が変化して酸化還元電位がシフトすることにより電流値が増大することを模式的に示す図
【図4】本発明の分子認識プローブの一例を模式的に示す図。
【図5】図4に示す分子認識プローブにアンカーの一例を付加したものを示す図。
【図6】従来の分子ビーコン法を模式的に示す図。
【図7a】分子1の構造式を示す図。
【図7b】分子2の構造式を示す図。
【図7c】分子3の構造式を示す図。
【図8a】合成したプローブを含む溶液が示したS字型の電流−電位曲線(バックグラウンドの電流−電位曲線を差し引いた後)を示す図。
【図8b】合成したプローブを含む溶液が示したS字型の電流−電位曲線を微分した結果を示す図。
【図9a】合成したプローブおよびフルマッチDNAを含む溶液が示したS字型の電流−電位曲線(バックグラウンドの電流−電位曲線を差し引いた後)を示す図。
【図9b】合成したプローブおよびフルマッチDNAを含む溶液が示したS字型の電流−電位曲線を微分した結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、目的物質へのラベル化および測定溶液へのマーカーの添加を必要とせず、かつ目的物質の認識に伴い電気化学信号が増加するsignal−on型の検出法を実現するための分子認識プローブおよび分子認識センサを提供するという課題を、電気化学活性団と、前記電気化学活性団の電気化学活性を抑制する活性抑制団と、目的物質を特異的に分子認識するレセプターと、分子認識の結果立体構造を変化させる分子領域とを備え、分子認識前は前記電気化学活性団が前記活性抑制団により活性を抑制され分子認識後は活性を取り戻すように分子認識プローブを構成することによって実現したものである。
本発明の分子認識プローブは、目的物質を特異的に分子認識するレセプターが、分子認識の結果立体構造を変化させる分子領域を兼ね備えていても良い。
【0017】
すなわち、本発明の分子認識プローブは、具体的には、目的物質を選択的に分子認識するレセプターと、分子認識に伴ってその立体構造を変化させる構造変化領域とを有し、この両端にそれぞれ電気化学活性団とこの電気化学活性団の活性を抑制する活性抑制団とを備えた分子であるか、或いは、目的物質を選択的に分子認識するとともに、分子認識に伴ってその立体構造を変化させる機能を有するレセプターに対し、その両端にそれぞれ電気化学活性団とこの電気化学活性団の活性を抑制する活性抑制団とを備えた分子である。
また、本発明の分子認識センサは、この分子認識プローブを電極表面に固定して構成したセンサである。
【0018】
図1は、本発明の分子認識プローブを模式的に示す図であり、図2は、該分子認識プローブに、固体表面上に固定するためのアンカー領域を設けることにより、前記分子認識プローブを電極に固定した分子認識センサを模式的に示す図である。
図中、Eは、電気化学活性団を表し、Qは、該電気化学活性団の電気化学活性を抑制する活性抑制団を表しており、これらの図では、EとQの間に存在するレセプターの一例として核酸を用いた例を示している。本例においては、レセプターである核酸は、分子認識の結果立体構造を変化させる分子領域を兼ねている。
【0019】
図1,2に示すように、該構成を有する本発明の分子認識プローブは、目的物質と分子認識を起こす前は、電気化学活性団と活性抑制団とが互いに近傍に位置するため、電気化学活性団は活性を抑制され電気化学信号は得られないが、目的物質と分子認識を起こした後は、レセプターが分子認識に伴ってその立体構造を変化させるため、電気化学活性団は活性抑制団から離れ活性を取り戻し、電気化学信号を得ることができる。
この際、分子認識プローブはバルク測定溶液中で電気化学信号を発生し、分子認識センサは電極表面上で電気化学信号を発生する。最終的には、どちらの場合も電極を用いて電気化学信号を測定する。
前記分子認識プローブは、分子認識前の状態では、電気化学活性団と活性抑制団とを互いに近傍に位置させるため、両者が内包錯体や電荷移動錯体などを形成することで、比較的弱い力により結び付いている状態が望ましい。また同様の目的のため、例えばレセプター領域として核酸を用いている場合には、図6に示すようなステム構造を形成していても良い。
【0020】
本発明において、電気化学活性団の電気化学活性の変化は、電流値の増減であっても電圧値の増減であっても良い。
図3は、レセプターが分子認識に伴ってその立体構造が変化して酸化還元電位がシフトすることにより電流値が増大することを模式的に示す図である。
【0021】
このように、本発明によれば、目的物質へのラベル化および測定溶液中へのマーカーの添加を必要とせず、かつ目的物質の認識に伴い電気化学信号が増加するsignal−on型の検出法を実現することができる。
【0022】
本発明において、前記レセプター領域としては、核酸、タンパク質、ペプチド、イオノフォア等が挙げられる。
また、本発明において、前記構造変化領域としては、核酸、タンパク質、ペプチド、イオノフォア等が挙げられる。
これらに用いられる核酸としては、具体的には、DNA、RNA、PNA(Peptide Nucleic Acid、ペプチド核酸)、LNA(Locked Nucleic Acid)が挙げられる。
さらに、前記レセプター領域が、前記構造変化領域を兼ねるものであってもよい。
【0023】
本発明において、前記電気化学活性団としては、キノン類及びその誘導体、ナフトキノン類及びその誘導体、アントラキノン類及びその誘導体、ピリジン類及びその誘導体、ビピリジン類及びその誘導体、チアジン類及びその誘導体、及びフェロセン等のメタロセン及びその誘導体などの有機金属錯体または酸化還元酵素であることが好ましい。
【0024】
本発明における活性抑制団は、前記電気化学活性団の電気化学活性を抑制することが可能なものである。
例えば、前記活性抑制団として、前記電気化学活性団を内包するものが用いられる。この場合、電気化学活性団は、分子認識前は、活性抑制団に内包されているために、その活性が抑制されているが、分子認識後は、レセプター領域が分子認識に伴ってその立体構造が変化する結果、電気化学活性団が活性抑制団に内包されない構造に変化し、その活性が取り戻される。このような活性抑制団としては、シクロデキストリン、又はカリックスアレン、或いはそれらの誘導体が挙げられる。
また、前記電気化学活性団が酸化還元酵素の場合において、前記活性抑制団はその阻害剤であってもよく、この場合、分子認識前は、酸化還元酵素の酵素活性が阻害されているが、分子認識後は、レセプター領域が分子認識に伴ってその立体構造が変化して、阻害剤の影響を受けなくなり、酵素活性が取り戻される。このような活性抑制団としては、イミダゾール、又はトリアゾール、或いはそれらの誘導体が挙げられる。
【0025】
また、本発明においては、前記レセプター及び/又は構造変化領域は、リンカー領域を介して、前記電気化学活性団及び/又は前記活性抑制団と結合されていてもよい。
この場合、分子認識するレセプター及び/又は構造変化領域に対して、電気化学活性団及び/又は活性抑制団を離して位置させることができる。その結果、電気化学活性団及び/又は活性抑制団は、レセプター及び/又は構造変化領域からの立体障害をより受けにくくなり、電気化学活性団及び活性抑制団の効果を充分に生かして、本発明のプローブを構成することが可能となる。
該リンカー領域としては、置換されていても良い、好ましくは炭素数が5以上の直鎖アルキレン基を有し、さらにグリコール基・エーテル基・チオエーテル基・アミド基・イミド基・マレイミド基・エステル基やリン酸エステルの構造を1つ以上繰り返してなる構造も有しても良く、任意の環構造や硫黄、窒素、酸素等の炭素以外の原子を有していても良く、単結合・二重結合・三重結合を有していても良い。
【0026】
本発明においては、前記分子認識プローブに固体表面上に固定できるアンカー領域を設けることにより、前記分子認識プローブを電極に固定した分子認識センサとすることができる。
このようなアンカー領域としては、電極材料である金属と共有結合することが可能なものが用いられ、具体的には、チオール類、チオエーテル類、チオエステル類、リポ酸誘導体、システイン誘導体およびその他の硫黄化合物等が挙げられる。
また、前記アンカー領域として、他の電極材料である金属酸化物と共有結合することが可能なものが用いられ、具体的には、シラン類が挙げられる。
さらに、前記アンカー領域が、抗原抗体反応、His−Tag、核酸のハイブリッド形成、ビオチン−アビジン結合およびその他の結合形成により固体表面上に固定できるものが好ましい。
【0027】
図4は、本発明の分子認識プローブの一例として、電気化学活性団、構造変化領域を兼ねたレセプター、及び活性抑制団に、それぞれ、フェロセン、核酸、及びβ−シクロデキストリンを用いた例を模式的に記載したものであり、図4に示す例では、フェロセンと核酸のリンカー、及び核酸とβ−シクロデキストリンのリンカーとして、それぞれ直鎖アルキレン基を有するリン酸エステル構造を有するものを用いている。
図5は、それにアンカーの一例を付加したものである。
【0028】
本発明の分子認識プローブ又は分子認識センサを用いて、溶液中の目的物質を電気化学的に検出するには、目的物質を含有する溶液と、本発明の分子認識プローブ又は分子認識センサを接触させて、分子認識プローブ又は分子認識センサから発生される、分子認識前後の電気化学信号の変化を検出する。
本発明において、目的物質を含有する溶液と分子認識プローブ又は分子認識センサを接触させる方法は、特に限定されないが、例えば、本発明の分子認識プローブを用いる場合には、目的物質と分子認識プローブを含有する溶液を入れた容器内に電極を挿入するか、或いは、電極を形成した基板上に、目的物質を含有する溶液に分子認識プローブを混合した液を滴下する方法等があげられる。また、本発明の分子認識センサを用いる場合には、目的物質を含有する溶液を入れた容器内に該センサを挿入するか、或いは、該センサを有する基板上に、目的物質を含有する溶液を滴下する方法等があげられる。
【実施例】
【0029】
以下、本発明の分子認識プローブの合成およびそれを用いたDNA検出法について、実施例に基づいて説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0030】
〈準備〉
(1)試薬
フェロセンを修飾したジチオール化DNA(分子1)はDNA合成機により作製したものを株式会社ファスマックより購入した。分子1の構造式は、Fc-C6-(C3)2-GCA ACC TTC CCT ATT ACT CCA C-(C3)3-(CH2)3-SS-(CH2)3OH(ここで、Fc:フェロセン、C6およびC3はそれぞれ炭素鎖6および3のリンカーを表す)と表される。図7aにこの分子の構造式を示した。この分子のジチオール基をチオール基に変換することでβ−シクロデキストリンと結合可能にした。
プローブに対するターゲットとして、フルマッチDNA(配列:5’-GTG GAG TAA TAG GGA AGG TTG C-3’)、ミスマッチDNA(配列:(dT)22)及び一塩基変異DNA(配列:5’-GTG GAG TAA TAC GGA AGG TTG C-3’)をオペロンバイオテクノロジー社から購入し、これらを100μM水溶液に調製してストックした。3A−アミノ−3A−デオキシ−(2AS,3AS)−β−シクロデキストリンは東京化成株式会社より購入し、N−(6−マレイミドカプロイロキシ)スルホスクシンイミドナトリウム塩は株式会社同仁化学研究所(熊本)より購入した。他の試薬は全て入手できる最も高品質のものを使用した。水溶液には全てMilli−Q水システム(Millipore社、Bedford,MA)を使用して調製した超純水(抵抗値>18.2MΩcm)を用いた。
【0031】
(2)電気化学測定
カーボンくし形電極(電極幅10μm、電極間隔5μm、電極長さ2mm、対本数65、BAS株式会社、東京)を使用した。参照電極は、銀塩化銀ペーストを塗布し、120℃で5分間加熱することで形成した。電気化学測定は全て、ALS−730C電気化学測定装置(BAS社)を用いて25℃で行った。サイクリックボルタモグラムはデュアルモードにて4電極法で行った。電位は0Vから0.6Vまで挿引し、再び0Vまで挿引した。挿引速度は10mV/sとした。
【0032】
(実施例1:プローブの合成)
1ODの分子1水溶液の50μLおよび1Mジチオスレイトールを含む0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)の5μLを混合し、37℃で1時間静置した。その後150μLの水を加え水で平衡化したNAP−5カラム(GEヘルスケアライフサイエンス株式会社、東京)上に展開し、水を展開溶媒として500μLずつ分画した。これら画分を吸光光度計により吸光測定し、260nmの吸光度が最も大きい画分を以降の合成に用いた。得られた分子の構造式はFc-C6-(C3)2-GCA ACC TTC CCT ATT ACT CCA C-(C3)3-(CH2)3-SH(分子2)であり、この分子のモル吸光係数ε=2.29×10−5M−1cm−1を用いて濃度を計算すると7.51μM(500μL)だった。図7bにこの分子の構造式を示した。
【0033】
5mM3A−アミノ−3A−デオキシ−(2AS,3AS)−β−シクロデキストリン、0.1M塩化ナトリウム、1mMエチレンジアミン四酢酸を含む0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)の500μLおよび4mMN−(6−マレイミドカプロイロキシ)スルホスクシンイミドナトリウム塩、0.1M塩化ナトリウム、1mMエチレンジアミン四酢酸を含む0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)の125μLを混合し、30℃で1時間攪拌する。これに対し分子2をモル比1:10で加え、4℃で20時間静置した。その後、凍結乾燥により液量を200μLに濃縮し、水で平衡化したNAP−5カラム上に展開し、水を展開溶媒として500μLずつ分画した。これら画分を吸光光度計により吸光測定し、260nmの吸光度が最も大きい画分を目的の化合物(分子3、プローブ)として得た。プローブの構造式は、Fc-C6-(C3)2-GCA ACC TTC CCT ATT ACT CCA C-(C3)3-(CH2)3-S-Mal-β-CD(ここで、Mal:マレイミドクロスリンカーを表す)である。100μM水溶液に調製してストックした。図7cにこの分子の構造式を示した。
【0034】
(実施例2:プローブに基づくDNAの電気化学的検出)
0.01M塩化ナトリウムを含む0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)と100μMプローブ水溶液とを3:1の体積比で混合し、25μMプローブおよび7.5mM塩化ナトリウムを含む75mMリン酸緩衝液を調製した。カーボンくし形電極を用いて挿引速度10mV/s、0〜0.6V(銀塩化銀電極に対して)間でこの溶液5μLの電気化学測定を行ったところ、プローブに修飾したフェロセンの電子移動反応に起因するS字型の電流−電位曲線を得た。ここで、バックグラウンドとして7.5mM塩化ナトリウムを含む75mMリン酸緩衝液の電流−電位曲線を差し引いた。0〜0.3V間では電流値はほぼ0であったが、0.3V付近から急激な電流値の増加が観測され、0.4V付近でほぼ18nAの定電流であった(図8a)。この曲線の変曲点における電位を微分により算出すると0.363Vであった(図8b)。以降同様に、電流−電位曲線の変化をこの変曲点電位にて追うこととした。
【0035】
0.02M塩化ナトリウムを含む0.2Mリン酸緩衝液(pH7.0)と100μMプローブと100μMフルマッチDNAと水とを3:2:2:1の体積比で混合し、25μMプローブと25μMフルマッチDNAおよび7.5mM塩化ナトリウムを含む75mMリン酸緩衝液を調製した。カーボンくし形電極を用いてこの溶液5μLの電気化学測定を行ったところ、S字型の電流−電位曲線を得た(図9a)。バックグラウンドを差し引き、この曲線の変曲点における電位を微分により算出すると0.301Vであった(図9b)。プローブのみの場合と比較して62mV電位が負にシフトした。これは、プローブがフルマッチDNAとハイブリッド形成することで、プローブに結合しているフェロセンの電子移動反応が起こりやすくなったためである。これにより、酸化還元電位のシフトを指標とすることで、本プローブに基づく電気化学検出法がDNAを検出できることが示された。
【0036】
同様に、前項目で示したS字型の電流−電位曲線(図9a)において、電位0.3Vでの電流値変化に着目すると、ハイブリッド形成前後において1nAから7nAへと電流値が増加した。これは、プローブがフルマッチDNAとハイブリッド形成することで、プローブに結合しているフェロセンの電子移動反応が起こりやすくなったためである。これにより、酸化還元電流値の増加を指標とすることで、本プローブに基づく電気化学検出法がDNAを検出できることが示された。同時に、分子認識に伴い信号が増加するsignal−on型の電気化学検出が可能であることが示された。
【技術分野】
【0001】
この発明は、目的の分子を認識することで電気化学活性を発現する分子認識プローブ、特に目的の核酸を配列特異的に認識することで電気化学活性を発現する分子認識プローブ、及びそれを用いた分子認識センサ並びにそれらを用いた電気化学的検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の分子の共存した溶液中で特定の分子を検出するためには、その分子特有の物理的・化学的特徴を指標に何らかの物理的・化学的摂動を与え、得られる信号変化から同定を行う。
目的とする分子に特有な特徴がない場合には、特徴のある分子団等によりラベル化し、ラベルを目印に目的の分子を検出する。また、その目的とする分子へのラベル化が困難な場合には、その分子を特異的に認識する分子認識試薬を用い、分子認識試薬側に特徴を持たせることで目的の分子を検出することが多い。特に、測定対象が多数の場合には後者の方法を用いることが多い。
【0003】
近年、核酸やタンパク質、ペプチドなどの生体物質のハイスループットスクリーニングやゲノム解析、プロテオーム解析、メタボローム解析などの網羅的生体活動解析のニーズが高まっているが、測定対象の規模の増加に伴い、従来のラベル化法に変わる新しい検出法が望まれている。
現在、例えばゲノム解析における核酸の検出においては、測定対象となる核酸(ターゲット核酸)そのものに蛍光団を直接ラベル化し、チップや基板上に固定した相補的配列を有する核酸(プローブ核酸)との配列特異的なハイブリッド形成の後、蛍光発光を直接検出することでターゲット核酸を同定している。
しかし、多種類の核酸を測定対象とする場合、こういったラベル化作業を全ての核酸に対して行うのは大変煩雑であり、ラベル化フリーの核酸検出法が望まれている。このような状況は、多くのタンパク質やペプチドを取り扱わねばならないプロテオーム解析やメタボローム解析でも同様である。
【0004】
例えば、ラベル化フリーの核酸検出法のうち最もよく使用されている手法に分子ビーコン法がある。この手法は、図6に示すように、プローブ核酸の両端に蛍光団(F)とその蛍光を消光する消光団(Q)とをそれぞれ修飾し、ターゲット核酸とハイブリッド形成していない時には、蛍光団の近傍に消光団が位置するようにヘアピン構造を取らせ、蛍光を発光させないようにしておき、ターゲット核酸とハイブリッド形成して両者が離れることで初めて蛍光団が蛍光を発光するようにすることで、目的の核酸の存在を知ることができるものである(特許文献1、非特許文献1)。
【0005】
しかし、蛍光分光に基づく検出法は高感度検出が可能な一方、高エネルギーで高価で大掛かりな測定装置を必要とする。
本発明者らは従来、蛍光分光法に代わるより簡便な手法について研究してきた。その過程で、電気化学に基づく手法は、低エネルギーで安価で小規模な装置で検出が可能なため、簡便な検出を可能とすることを示してきた。特に、生体内での遺伝子やタンパク質の働きにおける正常時からのずれを指標とした診断技術であるトキシコゲノミクスやファーマコゲノミクスなど患者の病態予測や治療法の選択を可能とする技術が、研究所レベルの研究から臨床レベルの診断へと応用の幅を広げようとしている昨今では、簡便な診断ツールの必要性はますます増加している。
【0006】
電気化学に基づくラベル化フリーの分子認識法には、例えば本発明者らが開発してきたイオンチャンネルセンサがある(特許文献2、3、非特許文献2)。これは、生体膜に存在するイオンチャネルタンパクが少量のリガンドの結合により生体膜内外における多量のイオンの流れを制御することに着目し、分子認識とそれに続く信号増幅とにより目的物質を検出するセンサである。目的物質への選択的な結合能を有する分子をレセプターとして電極表面に固定し、測定溶液中に電気化学活性物質(マーカー)を溶解しておく。目的物質がレセプターと結合して電極表面に濃縮されることで、マーカーの電極表面での電子移動反応が促進されたり抑制されたりするように仕組んでおくことで、少量の目的物質の存在を多量の電子の流れとして検出することができる。この原理の最大の利点は、目的物質に電気化学活性がなくとも(ラベル化しなくとも)目的物質を電気化学的に検出できる点である。この原理を用いることにより、数多くの分子やイオン、糖鎖やペプチド、核酸の高感度検出に成功した。
【0007】
本発明者らはこの原理をさらに進め、電気化学活性を有するレセプターを開発し、目的物質へのラベル化が不要であるのみならずマーカーの添加も不要なより簡便な手法を提案した(非特許文献3)。例えば、核酸検出用のレセプター(プローブ核酸)では、プローブ核酸の一端をフェロセンなどの電気化学活性団で修飾し、他端を電極表面に固定する。核酸は一本鎖の状態では柔軟性に富む構造をしているが、二本鎖となると剛直な構造となることが知られている。この核酸の性質により、プローブ核酸末端のフェロセンはハイブリッド形成により、自由に電極表面へ電子移動反応が起こせる状態から困難な状態へと変化するため、観測される電流値の減少によりターゲット核酸を配列特異的に検出することができることを見出した。同様の手法により、タンパク質、分子やイオンなどその他の化学種を目的物質とした検出も試みられている(非特許文献4〜7)。
【0008】
しかし、末端に電気化学活性種を有するレセプターを用いた検出法では、その原理を電極表面からの距離に依存した電子移動反応の制御に依らざるを得ず、したがって、分子認識イベントを電子移動反応の減少によって知らせるような仕組みとせざるを得ない。電気化学的な検出原理に基づくプローブ核酸では、ほぼ全てがこの仕組みに基づくものである。一般に、分子認識に伴い信号が減少する系(signal−off型)では、検出感度が小さいことが知られている。これに対し、分子認識に伴い信号が増加する系(signal−on型)では、高感度な検出を望むことができる。電気化学的手法の簡便性を生かし、ラベル化およびマーカーが共に不要な分析法を開発するためには、signal−on型の手法を開発する必要がある。しかし、現状ではそのような手法の開発はなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際特許公開WO95/13399
【特許文献2】特許第3,956,214号公報
【特許文献3】米国特許7,169,614号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Nature Biotechnol.vol.14,303-308(1996)
【非特許文献2】Anal.Chem.vol.76,No.17,320A-326A(2004)
【非特許文献3】Analyst vol.132,784-791(2007)
【非特許文献4】Angew.Chem.Int.Ed.vol.44,5456-5459(2005)
【非特許文献5】Proc.Natl.Acad.Sci.USA vol.100,9134-9137(2003)
【非特許文献6】J.Am.Chem.Soc.vol.128,3138-3139(2006)
【非特許文献7】J.Am.Chem.Soc.vol.129,262-263(2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであって、目的物質へのラベル化および測定溶液へのマーカーの添加を必要とせず、かつ目的物質の認識に伴い電気化学信号が増加するsignal−on型の検出法を実現するための分子認識プローブおよび分子認識センサを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、電気化学活性団と、前記電気化学活性団の電気化学活性を抑制する活性抑制団と、目的物質を特異的に分子認識するレセプターと、分子認識の結果立体構造を変化させる分子領域とを備えた分子認識プローブであって、分子認識前は、前記電気化学活性団が前記活性抑制団により活性を抑制され、分子認識後は、その立体構造の変化により活性を取り戻すように構成することにより、上記目的が達成できるという知見を得た。また、アンカー領域を前記分子認識プローブに備え、これを電極表面に固定することによって分子認識センサを構成できることも判明した。
【0013】
本発明は、これらの知見に基づいて完成に至ったものであり、以下のとおりのものである。
[1]電気化学活性団と、前記電気化学活性団の電気化学活性を抑制する活性抑制団と、目的物質を特異的に分子認識するレセプター領域と、分子認識の結果立体構造を変化させる構造変化領域とを備え、分子認識前は前記電気化学活性団が前記活性抑制団により活性を抑制され、分子認識後は活性を取り戻すことを特徴とする分子認識プローブ。
[2]前記レセプター領域が、前記構造変化領域を兼ねていることを特徴とする前記[1]の分子認識プローブ。
[3]固体表面上に固定するためのアンカー領域を備えたことを特徴とする前記[1]又は[2]の分子認識プローブ。
[4]前記電気化学活性団が、メタロセン又はその誘導体であることを特徴とする前記[1]〜[3]のいずれかの分子認識プローブ。
[5]前記活性抑制団が前記電気化学活性団を内包していることを特徴とする前記[1]〜[4]のいずれかの分子認識プローブ。
[6]前記活性抑制団が、シクロデキストリン又はカリックスアレン或いはこれらの誘導体であることを特徴とする前記[5]の分子認識プローブ。
[7]前記[1]〜[6]のいずれか1つの分子認識プローブを固体表面に固定化することで作製した分子認識センサ。
[8]目的物質を含有する溶液と、前記[1]〜[6]のいずれかの分子認識プローブを接触させて、該分子認識プローブから発生される、分子認識前後の電気化学信号の変化を検出することを特徴とする電気化学的検出方法。
[9]前記電気化学信号の変化が、電流値の増減又は電圧値の増減であることを特徴とする前記[8]の電気化学的検出方法。
[10]目的物質を含有する溶液と、前記[7]に記載の分子認識センサを接触させて、該分子認識センサから発生される、分子認識前後の電気化学信号の変化を検出することを特徴とする電気化学的検出方法。
[11]前記電気化学信号の変化が、電流値の増減又は電圧値の増減であることを特徴とする前記[10]の電気化学的検出方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明は以上に説明したような特徴を持つので、目的物質へのラベル化および測定溶液へのマーカーの添加を必要とせず、かつ目的物質の認識に伴い電気化学信号が増加するsignal−on型の検出法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の分子認識プローブを模式的に示す図。
【図2】本発明の分子認識プローブを電極に固定した本発明の分子認識センサを模式的に示す図。
【図3】レセプターが分子認識に伴ってその立体構造が変化して酸化還元電位がシフトすることにより電流値が増大することを模式的に示す図
【図4】本発明の分子認識プローブの一例を模式的に示す図。
【図5】図4に示す分子認識プローブにアンカーの一例を付加したものを示す図。
【図6】従来の分子ビーコン法を模式的に示す図。
【図7a】分子1の構造式を示す図。
【図7b】分子2の構造式を示す図。
【図7c】分子3の構造式を示す図。
【図8a】合成したプローブを含む溶液が示したS字型の電流−電位曲線(バックグラウンドの電流−電位曲線を差し引いた後)を示す図。
【図8b】合成したプローブを含む溶液が示したS字型の電流−電位曲線を微分した結果を示す図。
【図9a】合成したプローブおよびフルマッチDNAを含む溶液が示したS字型の電流−電位曲線(バックグラウンドの電流−電位曲線を差し引いた後)を示す図。
【図9b】合成したプローブおよびフルマッチDNAを含む溶液が示したS字型の電流−電位曲線を微分した結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、目的物質へのラベル化および測定溶液へのマーカーの添加を必要とせず、かつ目的物質の認識に伴い電気化学信号が増加するsignal−on型の検出法を実現するための分子認識プローブおよび分子認識センサを提供するという課題を、電気化学活性団と、前記電気化学活性団の電気化学活性を抑制する活性抑制団と、目的物質を特異的に分子認識するレセプターと、分子認識の結果立体構造を変化させる分子領域とを備え、分子認識前は前記電気化学活性団が前記活性抑制団により活性を抑制され分子認識後は活性を取り戻すように分子認識プローブを構成することによって実現したものである。
本発明の分子認識プローブは、目的物質を特異的に分子認識するレセプターが、分子認識の結果立体構造を変化させる分子領域を兼ね備えていても良い。
【0017】
すなわち、本発明の分子認識プローブは、具体的には、目的物質を選択的に分子認識するレセプターと、分子認識に伴ってその立体構造を変化させる構造変化領域とを有し、この両端にそれぞれ電気化学活性団とこの電気化学活性団の活性を抑制する活性抑制団とを備えた分子であるか、或いは、目的物質を選択的に分子認識するとともに、分子認識に伴ってその立体構造を変化させる機能を有するレセプターに対し、その両端にそれぞれ電気化学活性団とこの電気化学活性団の活性を抑制する活性抑制団とを備えた分子である。
また、本発明の分子認識センサは、この分子認識プローブを電極表面に固定して構成したセンサである。
【0018】
図1は、本発明の分子認識プローブを模式的に示す図であり、図2は、該分子認識プローブに、固体表面上に固定するためのアンカー領域を設けることにより、前記分子認識プローブを電極に固定した分子認識センサを模式的に示す図である。
図中、Eは、電気化学活性団を表し、Qは、該電気化学活性団の電気化学活性を抑制する活性抑制団を表しており、これらの図では、EとQの間に存在するレセプターの一例として核酸を用いた例を示している。本例においては、レセプターである核酸は、分子認識の結果立体構造を変化させる分子領域を兼ねている。
【0019】
図1,2に示すように、該構成を有する本発明の分子認識プローブは、目的物質と分子認識を起こす前は、電気化学活性団と活性抑制団とが互いに近傍に位置するため、電気化学活性団は活性を抑制され電気化学信号は得られないが、目的物質と分子認識を起こした後は、レセプターが分子認識に伴ってその立体構造を変化させるため、電気化学活性団は活性抑制団から離れ活性を取り戻し、電気化学信号を得ることができる。
この際、分子認識プローブはバルク測定溶液中で電気化学信号を発生し、分子認識センサは電極表面上で電気化学信号を発生する。最終的には、どちらの場合も電極を用いて電気化学信号を測定する。
前記分子認識プローブは、分子認識前の状態では、電気化学活性団と活性抑制団とを互いに近傍に位置させるため、両者が内包錯体や電荷移動錯体などを形成することで、比較的弱い力により結び付いている状態が望ましい。また同様の目的のため、例えばレセプター領域として核酸を用いている場合には、図6に示すようなステム構造を形成していても良い。
【0020】
本発明において、電気化学活性団の電気化学活性の変化は、電流値の増減であっても電圧値の増減であっても良い。
図3は、レセプターが分子認識に伴ってその立体構造が変化して酸化還元電位がシフトすることにより電流値が増大することを模式的に示す図である。
【0021】
このように、本発明によれば、目的物質へのラベル化および測定溶液中へのマーカーの添加を必要とせず、かつ目的物質の認識に伴い電気化学信号が増加するsignal−on型の検出法を実現することができる。
【0022】
本発明において、前記レセプター領域としては、核酸、タンパク質、ペプチド、イオノフォア等が挙げられる。
また、本発明において、前記構造変化領域としては、核酸、タンパク質、ペプチド、イオノフォア等が挙げられる。
これらに用いられる核酸としては、具体的には、DNA、RNA、PNA(Peptide Nucleic Acid、ペプチド核酸)、LNA(Locked Nucleic Acid)が挙げられる。
さらに、前記レセプター領域が、前記構造変化領域を兼ねるものであってもよい。
【0023】
本発明において、前記電気化学活性団としては、キノン類及びその誘導体、ナフトキノン類及びその誘導体、アントラキノン類及びその誘導体、ピリジン類及びその誘導体、ビピリジン類及びその誘導体、チアジン類及びその誘導体、及びフェロセン等のメタロセン及びその誘導体などの有機金属錯体または酸化還元酵素であることが好ましい。
【0024】
本発明における活性抑制団は、前記電気化学活性団の電気化学活性を抑制することが可能なものである。
例えば、前記活性抑制団として、前記電気化学活性団を内包するものが用いられる。この場合、電気化学活性団は、分子認識前は、活性抑制団に内包されているために、その活性が抑制されているが、分子認識後は、レセプター領域が分子認識に伴ってその立体構造が変化する結果、電気化学活性団が活性抑制団に内包されない構造に変化し、その活性が取り戻される。このような活性抑制団としては、シクロデキストリン、又はカリックスアレン、或いはそれらの誘導体が挙げられる。
また、前記電気化学活性団が酸化還元酵素の場合において、前記活性抑制団はその阻害剤であってもよく、この場合、分子認識前は、酸化還元酵素の酵素活性が阻害されているが、分子認識後は、レセプター領域が分子認識に伴ってその立体構造が変化して、阻害剤の影響を受けなくなり、酵素活性が取り戻される。このような活性抑制団としては、イミダゾール、又はトリアゾール、或いはそれらの誘導体が挙げられる。
【0025】
また、本発明においては、前記レセプター及び/又は構造変化領域は、リンカー領域を介して、前記電気化学活性団及び/又は前記活性抑制団と結合されていてもよい。
この場合、分子認識するレセプター及び/又は構造変化領域に対して、電気化学活性団及び/又は活性抑制団を離して位置させることができる。その結果、電気化学活性団及び/又は活性抑制団は、レセプター及び/又は構造変化領域からの立体障害をより受けにくくなり、電気化学活性団及び活性抑制団の効果を充分に生かして、本発明のプローブを構成することが可能となる。
該リンカー領域としては、置換されていても良い、好ましくは炭素数が5以上の直鎖アルキレン基を有し、さらにグリコール基・エーテル基・チオエーテル基・アミド基・イミド基・マレイミド基・エステル基やリン酸エステルの構造を1つ以上繰り返してなる構造も有しても良く、任意の環構造や硫黄、窒素、酸素等の炭素以外の原子を有していても良く、単結合・二重結合・三重結合を有していても良い。
【0026】
本発明においては、前記分子認識プローブに固体表面上に固定できるアンカー領域を設けることにより、前記分子認識プローブを電極に固定した分子認識センサとすることができる。
このようなアンカー領域としては、電極材料である金属と共有結合することが可能なものが用いられ、具体的には、チオール類、チオエーテル類、チオエステル類、リポ酸誘導体、システイン誘導体およびその他の硫黄化合物等が挙げられる。
また、前記アンカー領域として、他の電極材料である金属酸化物と共有結合することが可能なものが用いられ、具体的には、シラン類が挙げられる。
さらに、前記アンカー領域が、抗原抗体反応、His−Tag、核酸のハイブリッド形成、ビオチン−アビジン結合およびその他の結合形成により固体表面上に固定できるものが好ましい。
【0027】
図4は、本発明の分子認識プローブの一例として、電気化学活性団、構造変化領域を兼ねたレセプター、及び活性抑制団に、それぞれ、フェロセン、核酸、及びβ−シクロデキストリンを用いた例を模式的に記載したものであり、図4に示す例では、フェロセンと核酸のリンカー、及び核酸とβ−シクロデキストリンのリンカーとして、それぞれ直鎖アルキレン基を有するリン酸エステル構造を有するものを用いている。
図5は、それにアンカーの一例を付加したものである。
【0028】
本発明の分子認識プローブ又は分子認識センサを用いて、溶液中の目的物質を電気化学的に検出するには、目的物質を含有する溶液と、本発明の分子認識プローブ又は分子認識センサを接触させて、分子認識プローブ又は分子認識センサから発生される、分子認識前後の電気化学信号の変化を検出する。
本発明において、目的物質を含有する溶液と分子認識プローブ又は分子認識センサを接触させる方法は、特に限定されないが、例えば、本発明の分子認識プローブを用いる場合には、目的物質と分子認識プローブを含有する溶液を入れた容器内に電極を挿入するか、或いは、電極を形成した基板上に、目的物質を含有する溶液に分子認識プローブを混合した液を滴下する方法等があげられる。また、本発明の分子認識センサを用いる場合には、目的物質を含有する溶液を入れた容器内に該センサを挿入するか、或いは、該センサを有する基板上に、目的物質を含有する溶液を滴下する方法等があげられる。
【実施例】
【0029】
以下、本発明の分子認識プローブの合成およびそれを用いたDNA検出法について、実施例に基づいて説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0030】
〈準備〉
(1)試薬
フェロセンを修飾したジチオール化DNA(分子1)はDNA合成機により作製したものを株式会社ファスマックより購入した。分子1の構造式は、Fc-C6-(C3)2-GCA ACC TTC CCT ATT ACT CCA C-(C3)3-(CH2)3-SS-(CH2)3OH(ここで、Fc:フェロセン、C6およびC3はそれぞれ炭素鎖6および3のリンカーを表す)と表される。図7aにこの分子の構造式を示した。この分子のジチオール基をチオール基に変換することでβ−シクロデキストリンと結合可能にした。
プローブに対するターゲットとして、フルマッチDNA(配列:5’-GTG GAG TAA TAG GGA AGG TTG C-3’)、ミスマッチDNA(配列:(dT)22)及び一塩基変異DNA(配列:5’-GTG GAG TAA TAC GGA AGG TTG C-3’)をオペロンバイオテクノロジー社から購入し、これらを100μM水溶液に調製してストックした。3A−アミノ−3A−デオキシ−(2AS,3AS)−β−シクロデキストリンは東京化成株式会社より購入し、N−(6−マレイミドカプロイロキシ)スルホスクシンイミドナトリウム塩は株式会社同仁化学研究所(熊本)より購入した。他の試薬は全て入手できる最も高品質のものを使用した。水溶液には全てMilli−Q水システム(Millipore社、Bedford,MA)を使用して調製した超純水(抵抗値>18.2MΩcm)を用いた。
【0031】
(2)電気化学測定
カーボンくし形電極(電極幅10μm、電極間隔5μm、電極長さ2mm、対本数65、BAS株式会社、東京)を使用した。参照電極は、銀塩化銀ペーストを塗布し、120℃で5分間加熱することで形成した。電気化学測定は全て、ALS−730C電気化学測定装置(BAS社)を用いて25℃で行った。サイクリックボルタモグラムはデュアルモードにて4電極法で行った。電位は0Vから0.6Vまで挿引し、再び0Vまで挿引した。挿引速度は10mV/sとした。
【0032】
(実施例1:プローブの合成)
1ODの分子1水溶液の50μLおよび1Mジチオスレイトールを含む0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)の5μLを混合し、37℃で1時間静置した。その後150μLの水を加え水で平衡化したNAP−5カラム(GEヘルスケアライフサイエンス株式会社、東京)上に展開し、水を展開溶媒として500μLずつ分画した。これら画分を吸光光度計により吸光測定し、260nmの吸光度が最も大きい画分を以降の合成に用いた。得られた分子の構造式はFc-C6-(C3)2-GCA ACC TTC CCT ATT ACT CCA C-(C3)3-(CH2)3-SH(分子2)であり、この分子のモル吸光係数ε=2.29×10−5M−1cm−1を用いて濃度を計算すると7.51μM(500μL)だった。図7bにこの分子の構造式を示した。
【0033】
5mM3A−アミノ−3A−デオキシ−(2AS,3AS)−β−シクロデキストリン、0.1M塩化ナトリウム、1mMエチレンジアミン四酢酸を含む0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)の500μLおよび4mMN−(6−マレイミドカプロイロキシ)スルホスクシンイミドナトリウム塩、0.1M塩化ナトリウム、1mMエチレンジアミン四酢酸を含む0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)の125μLを混合し、30℃で1時間攪拌する。これに対し分子2をモル比1:10で加え、4℃で20時間静置した。その後、凍結乾燥により液量を200μLに濃縮し、水で平衡化したNAP−5カラム上に展開し、水を展開溶媒として500μLずつ分画した。これら画分を吸光光度計により吸光測定し、260nmの吸光度が最も大きい画分を目的の化合物(分子3、プローブ)として得た。プローブの構造式は、Fc-C6-(C3)2-GCA ACC TTC CCT ATT ACT CCA C-(C3)3-(CH2)3-S-Mal-β-CD(ここで、Mal:マレイミドクロスリンカーを表す)である。100μM水溶液に調製してストックした。図7cにこの分子の構造式を示した。
【0034】
(実施例2:プローブに基づくDNAの電気化学的検出)
0.01M塩化ナトリウムを含む0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)と100μMプローブ水溶液とを3:1の体積比で混合し、25μMプローブおよび7.5mM塩化ナトリウムを含む75mMリン酸緩衝液を調製した。カーボンくし形電極を用いて挿引速度10mV/s、0〜0.6V(銀塩化銀電極に対して)間でこの溶液5μLの電気化学測定を行ったところ、プローブに修飾したフェロセンの電子移動反応に起因するS字型の電流−電位曲線を得た。ここで、バックグラウンドとして7.5mM塩化ナトリウムを含む75mMリン酸緩衝液の電流−電位曲線を差し引いた。0〜0.3V間では電流値はほぼ0であったが、0.3V付近から急激な電流値の増加が観測され、0.4V付近でほぼ18nAの定電流であった(図8a)。この曲線の変曲点における電位を微分により算出すると0.363Vであった(図8b)。以降同様に、電流−電位曲線の変化をこの変曲点電位にて追うこととした。
【0035】
0.02M塩化ナトリウムを含む0.2Mリン酸緩衝液(pH7.0)と100μMプローブと100μMフルマッチDNAと水とを3:2:2:1の体積比で混合し、25μMプローブと25μMフルマッチDNAおよび7.5mM塩化ナトリウムを含む75mMリン酸緩衝液を調製した。カーボンくし形電極を用いてこの溶液5μLの電気化学測定を行ったところ、S字型の電流−電位曲線を得た(図9a)。バックグラウンドを差し引き、この曲線の変曲点における電位を微分により算出すると0.301Vであった(図9b)。プローブのみの場合と比較して62mV電位が負にシフトした。これは、プローブがフルマッチDNAとハイブリッド形成することで、プローブに結合しているフェロセンの電子移動反応が起こりやすくなったためである。これにより、酸化還元電位のシフトを指標とすることで、本プローブに基づく電気化学検出法がDNAを検出できることが示された。
【0036】
同様に、前項目で示したS字型の電流−電位曲線(図9a)において、電位0.3Vでの電流値変化に着目すると、ハイブリッド形成前後において1nAから7nAへと電流値が増加した。これは、プローブがフルマッチDNAとハイブリッド形成することで、プローブに結合しているフェロセンの電子移動反応が起こりやすくなったためである。これにより、酸化還元電流値の増加を指標とすることで、本プローブに基づく電気化学検出法がDNAを検出できることが示された。同時に、分子認識に伴い信号が増加するsignal−on型の電気化学検出が可能であることが示された。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学活性団と、前記電気化学活性団の電気化学活性を抑制する活性抑制団と、目的物質を特異的に分子認識するレセプター領域と、分子認識の結果立体構造を変化させる構造変化領域とを備え、分子認識前は前記電気化学活性団が前記活性抑制団により活性を抑制され、分子認識後は活性を取り戻すことを特徴とする分子認識プローブ。
【請求項2】
前記レセプター領域が、前記構造変化領域を兼ねていることを特徴とする請求項1に記載の分子認識プローブ。
【請求項3】
固体表面上に固定するためのアンカー領域を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の分子認識プローブ。
【請求項4】
前記電気化学活性団が、メタロセン又はその誘導体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の分子認識プローブ。
【請求項5】
前記活性抑制団が、前記電気化学活性団を内包することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の分子認識プローブ。
【請求項6】
前記活性抑制団が、シクロデキストリン又はカリックスアレン或いはこれらの誘導体であることを特徴とする請求項5に記載の分子認識プローブ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の分子認識プローブを固体表面に固定化することで作製した電気化学センサ。
【請求項8】
目的物質を含有する溶液と、請求項1〜6のいずれか1項に記載の分子認識プローブを接触させて、該分子認識プローブから発生される、分子認識前後の電気化学信号の変化を検出することを特徴とする電気化学的検出方法。
【請求項9】
前記電気化学信号の変化が、電流値の増減又は電圧値の増減であることを特徴とする請求項8に記載の電気化学的検出方法。
【請求項10】
目的物質を含有する溶液と、請求項7に記載の分子認識センサを接触させて、該分子認識センサから発生される、分子認識前後の電気化学信号の変化を検出することを特徴とする電気化学的検出方法。
【請求項11】
前記電気化学信号の変化が、電流値の増減又は電圧値の増減であることを特徴とする請求項10に記載の電気化学的検出方法。
【請求項1】
電気化学活性団と、前記電気化学活性団の電気化学活性を抑制する活性抑制団と、目的物質を特異的に分子認識するレセプター領域と、分子認識の結果立体構造を変化させる構造変化領域とを備え、分子認識前は前記電気化学活性団が前記活性抑制団により活性を抑制され、分子認識後は活性を取り戻すことを特徴とする分子認識プローブ。
【請求項2】
前記レセプター領域が、前記構造変化領域を兼ねていることを特徴とする請求項1に記載の分子認識プローブ。
【請求項3】
固体表面上に固定するためのアンカー領域を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の分子認識プローブ。
【請求項4】
前記電気化学活性団が、メタロセン又はその誘導体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の分子認識プローブ。
【請求項5】
前記活性抑制団が、前記電気化学活性団を内包することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の分子認識プローブ。
【請求項6】
前記活性抑制団が、シクロデキストリン又はカリックスアレン或いはこれらの誘導体であることを特徴とする請求項5に記載の分子認識プローブ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の分子認識プローブを固体表面に固定化することで作製した電気化学センサ。
【請求項8】
目的物質を含有する溶液と、請求項1〜6のいずれか1項に記載の分子認識プローブを接触させて、該分子認識プローブから発生される、分子認識前後の電気化学信号の変化を検出することを特徴とする電気化学的検出方法。
【請求項9】
前記電気化学信号の変化が、電流値の増減又は電圧値の増減であることを特徴とする請求項8に記載の電気化学的検出方法。
【請求項10】
目的物質を含有する溶液と、請求項7に記載の分子認識センサを接触させて、該分子認識センサから発生される、分子認識前後の電気化学信号の変化を検出することを特徴とする電気化学的検出方法。
【請求項11】
前記電気化学信号の変化が、電流値の増減又は電圧値の増減であることを特徴とする請求項10に記載の電気化学的検出方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7a】
【図7b】
【図7c】
【図8a】
【図8b】
【図9a】
【図9b】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7a】
【図7b】
【図7c】
【図8a】
【図8b】
【図9a】
【図9b】
【公開番号】特開2011−107125(P2011−107125A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−193207(P2010−193207)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 研究集会名 東京コンファレンス2009 主催者名 (社)日本分析機器工業会、(社)日本分析化学会 開催日 平成21年9月2日〜9月4日
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 研究集会名 東京コンファレンス2009 主催者名 (社)日本分析機器工業会、(社)日本分析化学会 開催日 平成21年9月2日〜9月4日
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】
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