説明

電気化学素子

【課題】 薄型化かつ電気特性に優れた外装フィルムで成形された電気化学素子を提供する。
【解決手段】 積層セル6の上下面に、導電性ペースト13を重ねて、その外側に外装フィルム11を配置し、積層セル6と重ならない大きさの端子板12を、一部が導電性ペースト13と接触し導通を保ち、一部が外部に取り出されて、電極端子15となるように配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学素子、特に電気二重層コンデンサ素子の外装構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気二重層コンデンサは、電荷の蓄積に分極性電極と電解質の界面に生じる電気二重層を利用したコンデンサであり、この電気二重層の厚さが数ナノメートルと非常に小さく、かつ、活性炭のような比表面積の大きな材料が分極性電極に用いられることによって、大容量を実現してきた。電気二重層コンデンサは、構成材料に重金属などの有害物質を使用していないことから環境汚染の危険性がなく、さらに二次電池のように化学反応を伴わないことから充放電サイクル寿命に優れているといった特徴がある。このため、電気二重層コンデンサは、二次電池の代替デバイスとして、マイコンやメモリーなどのバックアップ電源として広く用いられるようになった。
【0003】
近年においては、電気二重層コンデンサの特徴を活かし、電気自動車などのモーター駆動用エネルギー源あるいはエネルギー回生システムとして、また携帯電話等の小型電子機器の補助電源等としての新しい用途が検討され、また実用化されており、電気二重層コンデンサの大容量化、および電子機器の小型化に対応した形状が望まれている。
【0004】
電気二重層コンデンサに要求されている課題の一つに、携帯電話等の小型電子機器の補助電源等として素子の薄型化がある。その要求に対して、ラミネート外装構造による素子の薄型化がなされてきた。次に、一般的なラミネート外装構造の電気二重層コンデンサを以下に図面を参照して説明する。
【0005】
図1に、基本的な電気二重層コンデンサの単位セルの断面図を示す。図1に示されるように、電気二重層コンデンサの単位セル5は、電解質を添加した分極性電極1を多孔性で絶縁性のセパレータ2の両側に配し、絶縁性のガスケット3で周囲を覆い、上下が集電体4で挟まれた構造である。図2は、電気二重層コンデンサの積層セルを示す模式図である。図2に示されるように、電気二重層コンデンサの単位セル5を複数積層して積層セル6が形成される。電気二重層コンデンサには、単位セル5、もしくは耐電圧に合わせて単位セル5を必要数積層した積層セル6が用いられる。
【0006】
分極性電極1は、椰子殻系に代表される活性炭と、導電性を確保する為のカーボン、及びバインダから成り、電解質を添加している。電解質には希硫酸、水酸化カリウムなどの水溶液系の電解液やプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトンの電解液に第4級アンモニウム塩などの電解質塩を溶解させた有機系の電解液が用いられる。セパレータ2は多孔質を有するフィルムであり、例えばポリテトラフルオロエチレン系フィルムやポリオレフィン系フィルムが用いられる。ガスケット3はセル内の絶縁を確保するためのものであり、例えばブチルゴムや熱可塑性樹脂が用いられる。集電体4は、導電性を有するゴムまたはエラストマが用いられる。
【0007】
図3は、ラミネート外装構造の電気二重層コンデンサ製品の外観図であり、図3(a)に平面図、図3(b)に側面図を示す。上記単位セル5を所定の電圧に応じて複数層重ねた積層セル6を用い、外部に取り出す電極端子15を設けて、外装を施すことにより、図3に示すような、電気二重層コンデンサの製品が製造されている。
【0008】
図4は、従来のラミネート外装構造の電気二重層コンデンサであり、図4(a)は断面図、図4(b)は外装フィルムに端子板をセットした状態を示す説明図である。図4に示すように、従来のラミネート外装構造の電気二重層コンデンサは、積層セル6の上下面に、導電性ペースト9を介して端子板8を重ねて、その外側に外装フィルム7を配置し、端子板8の一部が外部に取り出されて、電極端子15が形成された構造である。製造の際は、図4(b)に示すように、外装フィルム(ラミネートフィルム)7に端子板8をセットして、端子板8に導電性ペースト9を施したものの間に積層セル6を挟み、外装フィルム7の周囲を圧着してシーリングを施されて、電気二重層コンデンサ製品となる。
【0009】
端子板8上の導電性ペースト9は積層セルと端子板の導通を確実にするために用いられており、端子板8と積層セル6との接触が充分であれば、必ずしも必要ではない。また、外装フィルム7は、内面に熱可塑性樹脂を配する金属箔との複合フィルムなどが用いられている。このような従来のラミネート外装構造の電気二重層コンデンサは、例えば特許文献1に記載されている。
【0010】
【特許文献1】特開2002−170552号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
近年、一層の薄型化の要求があるが、これに応えるために、従来構造のラミネート外装構造の電気二重層コンデンサの各部品の薄型化を検討した。しかしながら、外装フィルムについては、外装フィルム材のアルミニウム箔を薄くすれば外装フィルムの強度低下がおこり、また内面の融着層を薄くすると、端子取り出し部等での封止性低下のおそれがあり、製品の安定性、信頼性が低下するという問題がある。また積層セルについては、集電体薄型化は、ガス透過性の増大による長期信頼性低下、セパレータ薄型化は、正極負極間の短絡のおそれがあるため限度があり、根本的な電気二重層コンデンサの容量増加がなされない限り、これ以上の薄型化は困難である。
【0012】
本発明は、上記の薄型化の問題を解決すべくなされたものであり、特に、薄型かつ電気特性・信頼性に優れたラミネート外装構造の電気二重層コンデンサ等の電気化学素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、板状の単位セル又は該単位セルを複数積層した積層セルの外側を外装フィルムで覆うと共に前記の単位セル又は積層セルの側方に電極端子を形成してなるラミネート外装構造の電気化学素子において、前記の単位セル又は積層セルとセルの厚み方向に積層されないように前記の単位セル又は積層セルの側方に配置した端子板の一部を前記電極端子とし、前記の単位セル又は積層セルと前記端子板間の電気的接続は導電性ペーストを介して行った電気化学素子が得られる。また、別の発明によれば、この電気化学素子は電気二重コンデンサであり、前記単位セルは、セパレータを介して分極する二極の分極性電極の内部に電解質を含浸した電気二重層コンデンサのセルである。
【発明の効果】
【0014】
外装フィルム内面に導電性ペーストを施し積層セルに重なる端子板を用いないことで、端子板厚み分の薄型化が可能となり、従来より薄型で、しかも従来以上の信頼性の電気二重層コンデンサ等の電気化学素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
電気化学素子として、電気二重層コンデンサを例として説明する。電気二重層コンデンサの単位セルの構造は、従来と同じものが使用できる。図1に示されるように、電気二重層コンデンサの単位セル5は、電解質を添加した分極性電極1を多孔性で絶縁性のセパレータ2の両側に配し、絶縁性のガスケット3で周囲を覆い、上下が集電体4で挟まれた構造が一般的である。電気二重層コンデンサには、図2に示されるように、耐電圧に合わせて単位セル5を必要数積層した積層セル6が用いられる。もちろん、耐電圧等により単位セル5を1層のみで用いても良い。
【0016】
従来と同様、分極性電極1は、椰子殻系に代表される活性炭と、導電性を確保する為のカーボン、及びバインダから成るものが一般的であり、電解質を添加して用いる。電解質には希硫酸、水酸化カリウムなどの水溶液系の電解液やプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトンの電解液に第4級アンモニウム塩などの電解質塩を溶解させた有機系の電解液が用いられる。セパレータ2は多孔質で絶縁性のフィルムであり、例えばポリテトラフルオロエチレン系フィルムやポリオレフィン系フィルムが用いられる。ガスケット3はセル内の絶縁を確保するための物であり、例えばブチルゴムや熱可塑性樹脂が用いられる。集電体4は、導電性を有するゴムまたはエラストマが用いられる。
【0017】
図5は、本発明のラミネート外装構造の電気二重層コンデンサで、図5(a)は断面図、図5(b)は外装フィルムに導電性ペーストを印刷し電極端子をセットした状態を示す説明図である。図5に示すように、上記の積層セル6の上下面に、導電性ペースト13を重ねて、その外側に外装フィルム11を配置し、積層セル6と重ならない大きさの端子板12を、一部が導電性ペーストと接触し導通を保ち、一部が外部に取り出されて、電極端子15となるように配置する。
【0018】
製造の際は、図5(b)に示すように、外装フィルム11に直接導電性ペースト9を施し端子板12を積層セル6と重ならないように配置する。このようにして配置したものを1組用意し、この間に積層セル6を挟み、外装フィルム11の周囲を圧着してシーリングを施し、電気二重層コンデンサ製品とする。図4に示す従来の電気二重層コンデンサと比較すると、本発明の端子板12は積層セル6と重ならないため、従来の端子板8の厚みだけ、本発明の電気二重層コンデンサは薄型である。
【実施例1】
【0019】
図5に示す本発明の電気二重層コンデンサを次のようにして作製した。図1〜図3を参照して、分極性電極1は活性炭/カーボン複合材料であり、寸法は12×24×0.05mmである。セパレータ2はポリテトラフルオロエチレン系フィルムからなり、寸法は14×26×0.025mmである。集電体4は導電性オレフィン共重合体からなり、寸法は16×28×0.05mmである。ガスケット3はエチレンメタクリル酸共重合体樹脂からなり、外寸は18×30mm、内寸は12×24、厚さは0.05mmのものを1セル当り2枚使用しており、それぞれフレーム状に加工されている。作製した単位セル5の寸法は18×30×0.225mmである。この単層セル5を6層積層して積層セル6を作製した。積層セル6の寸法は18×30×1.35mmである。端子板12は錫メッキを配した厚さ0.1mmの銅板で寸法は3×5.5mmであり熱圧着によって外装フィルム11に接着する。導電性ペースト13は、図5(b)に示されるように、外装フィルム11の内面(積層セルと接する側)に厚さ0.01mmで塗布した。外装フィルム11は、ここでは厚さ0.1mm、寸法23×35であるエチレンメタクリル酸共重合体樹脂、ポリエステル、アルミ箔、ナイロン樹脂からなる4層構造のラミネートフィルムを用いた。
【0020】
具体的には、先ず集電体4にガスケット3を熱圧着により貼り合わせたものを2枚作製した。平均粒径15μm粉末椰子殻活性炭、平均粒径15μmの非球状カーボン、繊維径0.1〜0.2μmの繊維状カーボン及びバインダの組成比を75:10:10:5の割合となる泥しょうを作製し、これをガスケット3の内側にあたる集電体上に塗布、乾燥させ、分極性電極1を形成した。このようにして分極性電極1の塗布された集電体4を2枚作製した後、40wt%硫酸水溶液を分極性電極1上に添加した。硫酸添加済みシートの1枚にセパレータ2を載せた後、2枚のシートを集電体4が外側になるように貼り合わせ、熱圧着によりガスケット3を溶融させて接着させた。この方法で単位セル5を6枚作製した後、重ね合わせて積層セル6とした。
【0021】
外装フィルム内面(エチレンメタクリル酸共重合体樹脂)上に、導電性ペーストをスクリーン印刷で塗布し乾燥させ、厚さ0.01mmの導電性ペースト13を設け、その後、図5(b)に示す位置に端子板12を熱圧着し固定した外装フィルム体14を2枚作製した。外装フィルム体14の導電性ペースト13の上面に積層セル6を配置し、さらにもう一枚の外装フィルム体14を導電性ペースト13が向かい合うように、積層セル6に接する方向に重ね合わせて減圧下で上下の外装フィルム体の外装フィルム11同士の重なった部分を熱融着することで、電気二重層コンデンサを形成した。
【0022】
(従来例)
図4に示す従来例の電気二重層コンデンサを次のようにして作製した。従来例に使用する材料は実施例と同様のものを使用し、積層セル6の作製までは、実施例と同じ方法で作製した。
【0023】
用意した積層セル6の両側から、厚さ0.01mmの導電性ペースト9(実施例同様)を施した厚さ0.1mmの錫メッキした銅製端子板8を重ねあわせた。積層セル6に端子板8を重ねた状態で、さらに両外側に厚さ0.10mmのラミネートフィルム7を配置し、減圧下で外装フィルム7同士の重なった部分を熱融着することで、電気二重層コンデンサを形成した。
【0024】
以上の方法で実施例1および従来例の電気二重層コンデンサを各10個を作製し、ESR、静電容量、製品厚みの測定を行った。また、70℃、5.4V(1セルあたり0.9V)、1,000時間の負荷を印加し室温まで冷却した後の上記特性についても測定した。
【0025】
ここでESRは、1kHz,10mVrmsの交流電圧を印加して、電流と位相差を測定することで求めた。静電容量は1Hz,10mVrmsの交流電圧を印加して、電流と位相差を測定することで求めた。製品厚みは、ノギスによって測定した。
【0026】
実施例1及び従来例の電気二重層コンデンサの、特性測定結果を表1に示す。なお、ESR及び静電容量、製品厚みの値はサンプル10個の測定値の平均値で示した。
【0027】
【表1】

【0028】
表1より、実施例1と従来例のESR及び静電容量、製品厚みを比べると、サンプル作製直後の製品厚みは実施例の方が良好な値を示している。また、ESR及び静電容量は、従来例と同等値である。
【0029】
製品厚みに関しては、図4と図5を比較してもわかるように、端子板8の厚み分実施例1の製品厚みが薄く出来ていることがわかる。またESR及び静電容量の電気特性においても、実施例1は従来例と遜色ない値が得られていることから、積層セル6と重ねて配置する端子板8を用いなくても導電性ペースト13のみで十分に電荷を集電することが出来ることがわかる。
【0030】
また、電圧印加後の特性測定結果では、実施例1の方が従来例よりもESR上昇及び静電容量減少率が少なく良好な値を示している。これらの要因として、従来例の端子板8に対して外装フィルム体14が薄膜であり、積層セルの集電体に対して導電性ペースト13が印刷された外装フィルム11と密着しやすく、実施例1の方が、集電体/導電性ペースト間がより密着した状態で保持されるため、積層セルと導電性ペースト間の接触抵抗が安定することが理由として考えられる。 以上の結果より、外装フィルム内面に導電性ペーストを施すことで、リード端子板厚み分の薄型化が可能となり、さらに信頼性も向上させることが出来ることがわかる。
【0031】
本発明を実施することにより、電気二重層コンデンサの製品において薄型化が可能となり、ESR、静電容量において良好な結果が得られた。今回、電気二重層コンデンサについての実施例のみを示したが、電気二重層コンデンサに限らず、積層セルを外装フィルムで成形する電気化学素子の薄型化に適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】電気二重層コンデンサの単位セルの断面図。
【図2】電気二重層コンデンサの積層セルの模式図。
【図3】本発明および従来例のラミネート外装構造の電気二重層コンデンサ製品の外観図で、図3(a)は平面図、図3(b)は側面図。
【図4】従来のラミネート外装構造の電気二重層コンデンサで、図4(a)は断面図、図4(b)は外装フィルムに端子板をセットした状態を示す説明図。
【図5】本発明のラミネート外装構造の電気二重層コンデンサで、図5(a)は断面図、図5(b)は外装フィルムに導電性ペーストを印刷し電極端子をセットした状態を示す説明図。
【符号の説明】
【0033】
1 分極性電極
2 セパレータ
3 ガスケット
4 集電体
5 単位セル
6 積層セル
7,11 外装フィルム
8,12 端子板
9,13 導電性ペースト
14 外装フィルム体
15 電極端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の単位セル又は該単位セルを複数積層した積層セルの外側を外装フィルムで覆うと共に前記セルの側方に電極端子を形成してなる電気化学素子において、前記セルと積層されないように前記セルの側方に配置した端子板の一部を前記電極端子とし、前記セルと前記端子板間の電気的接続は導電性ペーストを介したことを特徴とする電気化学素子。
【請求項2】
前記単位セルは、セパレータを介して分極する二極の分極性電極の内部に電解質を含浸した電気二重層コンデンサのセルであることを特徴とする請求項1記載の電気化学素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−41009(P2006−41009A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−215441(P2004−215441)
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【出願人】(000239736)NECトーキン兵庫株式会社 (25)
【Fターム(参考)】