説明

電気式集じん装置を制御するための方法及び装置

本発明の開示は、電気式集じん装置(ESP)の作動を制御する方法又は装置に関する。ESPは、燃焼プロセスにより生成されるプロセスガスからダスト粒子を除去するために使用される。指示器信号は、典型的には温度センサにより発生され、この信号は、燃焼プロセスに供給される燃焼空気の温度を示す。ESPは指示器信号に依存する態様で作動される。その結果、バックコロナ効果は大いに回避され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の開示は、燃焼プロセスにより生成されるプロセスガスからダスト粒子を除去するように作用する電気式集じん装置の作動を制御する方法に関する。この開示は、さらに、電気式集じん装置の作動を制御するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃焼プロセスからの排気ガスのようなプロセスガスからダスト粒子を除去するために、電気式集じん装置(ESP)は、何十年にわたり広く使用されている。ESPの一例はUS5114442に開示される。
【0003】
ESPに関連した1つの問題は、いわゆるバックコロナ(back-corona)効果、すなわち、電極上に既に捕集されたダスト粒子の層の抵抗が、生成された電界に低下を引き起こし、捕集した粒子をプロセスガスへ再導入し得ることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の開示の目的は、プロセスガスからのダスト粒子の効率的な除去を維持しながら、バックコロナ効果を回避する改善された能力を有するESPを制御するための方法又は装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、請求項1に定義されるような方法によって、すなわち、燃焼プロセスにより生成されるプロセスガスからダスト粒子を除去するように作用する電気式集じん装置ESPの作動を制御する方法において、燃焼プロセスに供給される燃焼空気の温度を示す指示器信号を発生し、指示器信号に依存する態様でESPを作動することを特徴とする方法によって、達成される。発明者は、バックコロナ効果が燃焼プロセスに供給される燃焼空気の温度と関連することを見いだした。温度が高いほど、生じるバックコロナ効果の危険は高い。従って、ESP制御を燃焼空気温度に適応させることによって、ESPはより効率的にすることができる。
【0006】
ESPを適応させる1つの選択は、燃焼空気温度の上昇に伴って平均電流を減少させるように、ESPの電極に供給される平均電流を指示器信号に基づいて制御することである。これは、より高い燃焼空気温度が生成する、より多くのバックコロナを起こし易いダストにESPを有効に適応させる。
【0007】
そのような適応を達成する別の方法は、ESPの電極に電圧/電流パルスが供給される場合には、燃焼空気温度の上昇に伴ってパルス間の断続的な時間の長さを増加させることである。これは、例えば、セミパルス供給設備においてより少い電位パルスを利用することによって達成され得る。
【0008】
さらに別の方法は、燃焼空気温度が比較的低い時点でESP電極のラッピング(rapping)を開始し、ESPがバックコロナ効果をより少ない程度で受けている期間にラッピングの妨害が制限されるようにすることである。
【0009】
指示器信号は、典型的に、温度センサにより発生され得る。しかしながら、タイマーも、日中に適正に予測可能な方法で温度が変化する例えば熱帯及び亜熱帯地域において、指示器信号を発生するために使用されてよい。
【0010】
前記目的は、さらに、燃焼プロセスにより生成されるプロセスガスからダスト粒子を除去するように作用する電気式集じん装置ESPの作動を制御する装置において、前記装置が、燃焼プロセスに供給される燃焼空気の温度を示す指示器信号を受信するように作用し、指示器信号に依存する態様で電気式集じん装置を作動するように適合されていることを特徴とする装置によって、達成される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】電気式集じん装置(ESP)が生成されたプロセスガスからダスト粒子を除去するために使用される、燃焼プロセス装置を示す概略図である。
【図2】燃焼空気温度に対するESP作動点の適合を示す図である。
【図3A】サイリスタ制御の電源を使用するセミパルス制御スキームを示す図である。
【図3B】サイリスタ制御の電源を使用するセミパルス制御スキームを示す図である。
【図4】そのようなセミパルス制御スキームが燃焼空気温度にどのように依存するかを示す図である。
【図5】トランジスタ制御の電源の作動が燃焼空気温度にどのように依存するかを示す図である。
【図6】ラッピングのタイミングが燃焼空気温度に基づいてどのように最適化されるかを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、電気式集じん装置が燃焼プロセスで生成されたプロセスガスからダスト粒子を除去するように作用する、燃焼プロセス装置を概略的に示している。
【0013】
燃焼プロセスは、石炭3及び燃焼空気5のような可燃物が供給されるボイラ1の中で行われる。燃焼プロセスは、ダスト粒子を含むプロセスガス7を生成する。プロセスガス、すなわち、時には煙道ガスとして参照される排気ガスは、電気式集じん装置(ESP)9に供給され、このESPは、ガス流から粒子を取り除いて出力ガス流れ11を生成し、この出力ガス流れは、粒子を比較的僅かしか含んでおらず、追加のプロセス段階(示しない)で亜硫酸ガスのような非粒子汚染物質を除去するように処理され得る。
【0014】
本発明の開示は、燃焼空気の温度に基づいたESP9の作動を制御する制御装置13に関する。これは、出力ガス流れ11において少量のダスト粒子残留物を維持する一方で、後述するように、ESP作動を幾つかの方法で改善することを可能にする。
【0015】
一般に、燃焼空気5の温度が高くなるほど、バックコロナ効果の危険が高くなることが分かっている。このことは、昼間の燃焼空気温度が40℃をしばしば超える熱帯及び亜熱帯気候地域で特に顕著になる。
【0016】
本発明の開示による制御装置13は、燃焼プロセスに供給される燃焼空気の温度を示す指示器信号を得る。典型的には、この指示器信号は、燃焼空気流れの温度を感知する温度センサ15からの実際のセンサ信号である。そのようなセンサは、典型的に、燃焼空気入口に、あるいは実際の流れの中に配置されてよい。しかしながら、問題のプラントの近くの周囲空気に配置される温度センサを使用することも可能である。そのような場合、燃焼空気入口とおよそ同じ時点で直射日光に露出される位置を選ぶことが有益である。
【0017】
指示器信号が温度センサの使用なしでも原則として得られるかもしれないことは注目されるべきである。温度差は、多くの配置において、一年の時期及び一日の時間の両方で非常に関連しており、従って、時計又はタイマー17に基づいた指示器信号もESPプロセスを改善するのに考えられる。一般に、指示器信号は燃焼空気温度に関連される。
【0018】
制御装置13が指示器信号によりESP9に影響を及ぼす異なる方法について説明する。ESPの他の制御様相が考えられても、3つの様相が特に興味深いと考えられる。第1に、ESPの平均電流は、指示器信号に基づいて制御される。第2に、セミパルスあるいはトランジスタに基づいたパルス制御スキームは、影響を受け、第3の選択として、ラッピング(rapping)のタイミングは考慮される。言うまでもなく、1つ、2つ、あるいはそれ以上の様相は、指示器信号により影響を受ける。
【0019】
指示器信号は、異なる方法で制御スキームに含まれていてよい。1つの制御スキームでは、指示器信号は、燃焼空気温度における連続的な増加又は減少が例えばESP電圧における連続的な変化を生じるような制御アルゴリズムに含まれ得る。別のスキームでは、限界値を超えるかあるいは届かない燃焼空気温度は、ESPの特殊な作用あるいはESP活動の非連続的な変化を引き起し得る。これらのスキームは、もちろん組み合わされてよい。線形、部分的に線形及び非線形の制御スキームは、例えばファジー論理に基づいた制御スキームと同様に考慮されてよい。
【0020】
最初のスキームでは、ESP電流は指示器信号に基づいて制御される。ESP電流は、ここでは、粒子を帯電し捕集するためにESPの電極に供給される平均電流を意味する。
【0021】
図2は、燃焼空気温度に対するESP作動点の適応を示す。図は、概略的に、実線で表示したESPの電圧−電流特性19を示す。この特性は、幾らかの抵抗性ダストが電極に既に捕集されているESPに関連する。電極間の電圧は、平均電流の増加に伴って増加するが、或る最大電圧Vmaxまでのみである。より大きな電流は、ほとんどバックコロナ効果により、電圧の下降を生じるであろう。しかしながら、ダスト除去率は、この範囲において通常その最大である供給電力に密接に関連するので、電圧が平均電流の増加に伴って低下する範囲において作動点21を選択することは適切であり得る。
【0022】
燃焼空気温度の上昇に伴い、ダスト組成は、後述するように、幾つかの燃焼プロセスに関して変更される。この変更は、後述するように、数μmのサイズのより小さなダスト粒子の形成によるかもしれない。従って、燃焼空気温度の上昇に伴い、電圧−電流特性は図2の破線23と類似するように変更され得る。より大きな粒子抵抗は、より低い平均電流で且つより大きな程度に、バックコロナ効果を生じさせ得ることが分かっている。
【0023】
従って、図1の制御装置は、作動点、すなわち、設定平均電流を変更して、新しい特性に適合し且つ適切なESP電力を供給することができる。例えば、指示器信号が温度センサ信号である場合、予め定めた範囲内の燃焼空気温度に逆比例して依存するESPの平均電流を与える制御アルゴリズムが使用されてよい。その後、例えば日没後に燃焼空気が冷えてくるにつれて、ESP電流は典型的に上昇する。
【0024】
典型的には、ESPの平均電流は、サイリスタ回路におけるトリガタイミングを変更することによって変化されるが、電流を変更するための他の概念は、ESPの構成に依存して可能となる。
【0025】
バックコロナ効果を回避するのに関連し得る別のパラメーターは、ESPがパルス方式で電力供給される場合にパルス間の断続的な時間である。
【0026】
ESPは、図3A及び3Bに簡単に記載されているように、例えばいわゆるセミパルス制御スキームを使用でき、このスキームの作動は指示器信号により影響を受ける。
【0027】
セミパルス制御スキームは、ここでは、交流入力電流において、すべての半周期がESP電極に電流を供給するために使用されるとは限らないスキームを意味する。代わりに、すべての3番目、5番目、7番目等(交流を維持するために奇数)が使用される。図3Aは、例えば、従来のサイリスタ制御の供給回路により生成されるような交流を示している。交流電圧(正弦波)は回路にわたって印加され、制御システムは、各半期間の間、どの段階でサイリスタを、図3Aの制御角度αにより示されるように、電荷を導き始めるようにするかを決定する。制御角度が小さいほど、平均電流は大きい。セミパルス制御スキームにおいて、図3Bに示されるように、サイリスタは幾つかの半周期で全く起動されない。図示の場合では、すべての3番目の半周期が使用されるが、すべての5番目、7番目等の半周期も使用することができる。
【0028】
断続的な周期でパルスを分離することは、バックコロナ効果を弱め、すなわち、捕集した粒子の幾らかをガス流れへ押し戻す電極の上に既に捕集されている粒子の層にわたって電位が作られる。
【0029】
このように、制御装置(13及び図1参照)は、燃焼空気温度が上昇する場合より少数のパルス(例えばすべての3番目の代わりにすべての7番目のパルス)が使用されるように、セミパルス制御スキームを使用するESPを制御できる。これが図4に概略的に示されており、この図において、最初の比較的低い燃焼空気温度(T)範囲は、すべてのパルスを使用すること(“1”)を意味するのに対し、より高い温度範囲は、すべての3番目、5番目等のパルスを使用して、パルス間の断続的な時間(t)を増加させることを意味する。このことは、平均電流が低下するにつれてバックコロナ効果を弱め、ダスト層を横切ってより低い電位を生じさせる。前記制御角度αを同時に変更することにより、所要の帯電レベルを多かれ少なかれ維持することは可能である。
【0030】
トランジスタ制御のESP供給回路のための同様の制御スキームは、図5に示されている。そのような場合では、サイリスタ制御システムの場合のように、供給パルス間の断続的な時間は、グリッド周波数と関係なしに、任意に選択されてよい。図示のように、これは単なる一例であるが、断続的な時間(t)は燃焼空気温度(T)に一次的に依存していてよい。
【0031】
前述のように、ESP電極のラッピングも、燃焼空気温度に基づいて制御され得る。
バックコロナ効果の危険が比較的少ない場合、期間に対するラッピングを集中することは望ましい。
【0032】
特に、ESPの最終セクション又はフィールドのラッピング、あるいは、電力をオフにしてのラッピングいわゆるパワーダウンのラッピングは、燃焼空気温度がそのサイクルの最低部分にある場合にのみ実行され得る。図6は、文字「x」で示したラッピングが、燃焼空気温度が比較的低い、例えば1日の平均又は移動平均よりも低い時点に、どのように集中するかを示している。
【0033】
上記の開示は、石炭火力発電所、幾つかの冶金プロセス及び幾つかのセメントプロセスのような高抵抗のダストを生成し易い燃焼プロセスには特に関連すると考えられる。高抵抗のダストは、たとえプロセスがより多くの伝導性ダスト組成にも関連していても、1012Ωcm以上の抵抗を備えたダストであることを一般に意味する。なぜ燃焼空気温度の上昇に伴ってバックコロナ効果が増加するかに関する妥当性のある1つの仮定は、より多くの小さな粒子、例えばいわゆるPM10粒子の形成に高い温度が起因するということである。PM10粒子は、10μm未満である直径を備えた粒子状物質を意味し、従って、概念PM10は遥かに小さな粒子をも含む。
【0034】
要約すると、この開示は、電気式集じん装置(ESP)の作動を制御する方法又は装置に関する。ESPは、燃焼プロセスにより生成されるプロセスガスからダスト粒子を除去するために使用される。指示器信号は、典型的に温度センサにより発生され、その信号は、燃焼プロセスに供給される燃焼空気の温度を指示する。ESPは、指示器信号に依存する方法で作動される。その結果、バックコロナ効果は大部分回避できる。
【0035】
この開示は、上述した実施例に制限されるものではなく、付随する特許請求の範囲内において異なる手段で変更されてよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼プロセスにより生成されるプロセスガスからダスト粒子を除去するように作用する電気式集じん装置ESPの作動を制御する方法において、
燃焼プロセスに供給される燃焼空気の温度を示す指示器信号を発生し、
指示器信号に依存する態様でESPを作動する、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
ESPの電極に供給される平均電流が、燃焼空気温度の上昇に伴って平均電流を減少させるように、指示器信号に基づいて制御される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ESPの電極がパルスを供給され、パルス間の断続的な時間が、燃焼空気温度の上昇に伴って増加される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
セミパルス設備でのより少い電位パルスを利用することにより、断続的な時間が増加される、請求項3記載の方法。
【請求項5】
燃焼空気温度が比較的低い時点で、ESP電極のラッピングが実施される、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
指示器信号が温度センサにより発生される、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
指示器信号がタイマーにより発生される、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
燃焼プロセス(1)により生成されるプロセスガス(7)からダスト粒子を除去するように作用する電気式集じん装置ESP(9)の作動を制御する装置(13)において、前記装置が、燃焼プロセスに供給される燃焼空気(5)の温度を示す指示器信号を受信するように作用し、指示器信号に依存する態様で電気式集じん装置を作動することを特徴とする装置。
【請求項9】
前記装置が、燃焼空気温度の上昇に伴って平均電流が減少するように、指示器信号に基づいてESPの電極に供給される平均電流を制御する、請求項8記載の装置。
【請求項10】
ESPの電極が電流パルスを供給され、前記装置が、燃焼空気温度の上昇に伴って断続的な時間が増加するように、パルス間の断続的な時間を制御する、請求項8又は9に記載の装置。
【請求項11】
セミパルス設備でのより少い電位パルスを利用することにより、断続的な時間が増加される、請求項10記載の装置。
【請求項12】
前記装置が、燃焼空気温度が比較的低い時点でESP電極のラッピングを開始する、請求項8ないし11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
信号発生器が温度センサ(15)である、請求項8ないし12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
信号発生器がタイマー(17)である、請求項8ないし12のいずれか1項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−511240(P2011−511240A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−541707(P2010−541707)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【国際出願番号】PCT/EP2008/010676
【国際公開番号】WO2009/086887
【国際公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(503416353)アルストム テクノロジー リミテッド (394)
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 7, CH−5401 Baden, Switzerland
【Fターム(参考)】