説明

電気感知式抗体プローブ検出/測定センサ及び方法

【課題】試料中の抗原を電気感知するセンサとその方法を提供する。
【解決手段】センサ100は、互いに電気的に遮断され且つ物理的に分離される2つの電極112,114を有し、抗体層は電極の少なくとも一方の表面に固定される。抗体は抗原に対し特異的結合反応性を有する。2電極間の導電特性を改善するため、導電性促進分子を抗体定着電極上に繋留することができる、及び/又は抗体定着電極間に分散させることができる。抗体は、緩衝溶液に混合され抗体定着電極と接触する試料中の抗原を捕捉する。それにより2電極間の導電特性は変化し、変化を表す量は抗原の電気感知の指標となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概してプローブとして抗体を使用する電気感知式検出及び測定に関する。詳細には、本発明は抗体プローブを備える電気感知式センサ及びそれに関わる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野や関連分野では、バイオチップを用いて試料中の標的物質の存在を検出することが知られている。標的の存在の検出には、精度やコスト等の要因からバイオチップセンサが使われている。技術的に可能でコスト面で許容可能である場合、単なる標的物質の存在の検出を超えた感知は、考え得るあらゆる用途においてより有益であることは明白である。例えば生物医学分野において標的物質の存在レベルが表示可能であれば、例えば1から10の、あるいは1から100以上の高分解能と精度で濃度が表示可能であれば、目的とするするそのような感知において大変有益である。
【0003】
今日、最も一般的なバイオチップの1つが光感知方式のバイオチップである。その光感知方式のチップで感知反応の結果を読み取るには、高価で大きな精密計器が必要となる。かかる問題を回避するには、電気感知方式によるバイオチップが有用のようである。試料に暴露された後の電気感知式バイオチップの検査(あるいは感知)は電気的な検査(あるいは感知)となる。試料から得られる情報は抵抗値、伝導率値、電流値、あるいは他の有用な電気的パラメータである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ただし、流体試料の殆どは本質的に非導電性であるため、電気感知技術の用途には今日まで限りがあった。図3A及び図3Bは、抗体をプローブとして使用する一般的な抗原標的の感知において従来の電気感知が理想的ではないことを示す図である。例えば、図3Aに示した先行技術によるセンサチップ300では、Au、Ag、Cu、Ni等の薄膜からなる正電極312及び負電極314の表面に、免疫グロブリンG等の抗体分子322が固定されている。このシステムを実用的なものにするには、センサチップの電極間に位置し、一般に参照数字305で示される環境の中で、電流の変化を検出できなければならない。
【0005】
しかし図3Bに示すように、試料が導入され、試料中の抗原分子332(その殆どは本質的に非導電性か導電性に乏しい)が電極表面に定着した抗体分子322に結合すると、センサシステムの電極間導電性はかなり乏しくなる。このため、従来の電気感知式バイオチップを適用できるのは、チップ上のプローブとして酵素あるいは触媒を使用する試験のみである。したがって、用途は限られている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、様々な標的物質の存在を感知する電気感知式抗体プローブチップとそれに関わる方法を提供することである。
【0007】
本発明の別の目的は、様々な標的物質の存在レベルを感知測定する電気感知式抗体プローブチップとそれに関わる方法を提供することである。
【0008】
本発明のさらなる目的は、高精度、大型で、そのため高価であるハードウェアを必要とせず、実装が容易で小型かつ低コストである、標的物質を検出及び測定する電気感知式抗体プローブチップとそれに関わる方法を提供することである。
【0009】
本発明のさらなる目的は、環境管理や産業用等、生物医学を超えた用途で幅広い標的物質の試験に対応する電気感知式抗体プローブチップとそれに関わる方法を提供することである。
【0010】
本発明は、センサチップシステム(チップと、それに反応する流体試料)で導電性を促進することにより、上記及びその他の目的を達成する。ある意味、本発明のセンサチップ及び方法の抗体プローブ分子は、文字通り「導電性のタイツを着用する」ことである。これによりシステムの導電性は、今日の計器で感知できるレベルまで「増幅」される。センサチップシステムの抵抗等、測定対象の電気パラメータが検出及び識別可能となり、したがって有意なパラメータとしてとらえることができる。
【0011】
本発明は一実施形態において、試料中の抗原を電気感知するセンサを提供することにより、上記及びその他の目的を達成する。センサは、互いに電気的に遮断され且つ物理的に分離される2つの電極と、電極の少なくとも一方の表面に固定され、抗原に対し特異的結合反応性を有する抗体層とを備える。抗体は、緩衝溶液に混合され抗体定着電極と接触する試料中の抗原を捕捉し、それにより2電極間の導電特性は変化し、変化を表す量は抗原の電気感知の指標となる。
【0012】
本発明は別の実施形態において、試料中の抗原を電気感知するセンサを提供することにより、上記及びその他の目的を達成する。センサは、互いに電気的に遮断され且つ物理的に分離される2つの電極と、電極の少なくとも一方の表面に固定され、抗原に対し特異的結合反応性を有する抗体層と、2電極間の導電特性を改善するため、抗体定着電極上に繋留される、及び/又は抗体定着電極間に分散される導電性促進分子と、を備える。抗体は、緩衝溶液に混合され抗体定着電極と接触する試料中の抗原を捕捉し、それにより2電極間の改善導電特性は変化し、変化を表す量は抗原の電気感知の指標となる。
【0013】
本発明は別の実施形態において、センサを使用し試料中の抗原を電気感知する方法を提供することにより、上記及びその他の目的を達成する。センサは、互いに電気的に遮断され且つ物理的に分離される2つの電極と、電極の少なくとも一方の表面に固定され、抗原に対し特異的結合反応性を有する抗体層とを備える。該方法は、試料が抗体定着電極と接触した後、電極間を電気的に測定することを含む。抗体は試料中の抗原を捕捉し、それにより2電極間の導電特性は変化し、変化を表す量は抗原の電気感知の指標となる。
【0014】
本発明は別の実施形態において、センサを使用し試料中の抗原を電気感知する方法を提供することにより、上記及びその他の目的を達成する。センサは、互いに電気的に遮断され且つ物理的に分離される2つの電極と、電極の少なくとも一方の表面に固定され、抗原に対し特異的結合反応性を有する抗体層とを備える。該方法は、2電極間の導電特性を改善するため、導電性促進分子を抗体定着電極上に繋留することと、及び/又は抗体定着電極間に分散させることと、試料が抗体定着電極と接触した後、電極間を電気的に測定することと、を含む。抗体は試料中の抗原を捕捉し、それにより2電極間の改善導電特性は変化し、変化を表す量は抗原の電気感知の指標となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】基本電気感知システムの概略を示す図である。
【図2】図2A及び図2Bは、実施可能な2つのセンサチップ構成を示す図である。
【図3】図3A及び図3Bは、抗体プローブを使用する抗原試験において従来の電気感知がいかに適していないかを説明する図である。
【図4】図4A〜図4Cの各図は、本発明のセンサチップの一実施形態の準備とその試料の試験及び感知を示す図である。
【図5】図5A〜図5Cの各図は、本発明のセンサチップの別の実施形態の準備とその試料の試験及び感知を示す図である。
【図6】本発明の電気感知式チップ及び方法がいかに実用的であるかを概略的に示す図である。
【図7】図7A及び図7Bは、試験システムの導電性を促進する本発明のセンサチップの表面改質プロセスの2つの例を示す図である。
【図8】本発明のセンサを使用する様々な試料試験の結果を示す図である。
【図9】本発明のセンサを使用する様々な試料試験の結果を示す図である。
【図10】本発明のセンサを使用する様々な試料試験の結果を示す図である。
【図11】本発明のセンサチップの一実施形態の概略を示す図である。
【図12】本発明の一実施形態によるセンサチップ処理装置の流路構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、センサチップシステム(チップと、それに反応する流体試料)で導電性を促進することにより実用的且つ便利な電気感知を達成する。ある意味、本発明のセンサチップ及び方法の抗体プローブ分子は、文字通り「導電性のタイツを着用する」。これによりシステムの導電性は今日の計器で感知できるレベルまで「増幅」される。その結果、センサチップシステムの抵抗等、測定対象の電気パラメータが検出及び識別可能となり、したがって有意なパラメータとしてとらえることができる。
【0017】
本発明によると、センサチップ上に固定され試験プローブとして使用される抗体は効率的に、非導体から半導体か導体に変化する。その結果、検査された流体試料(センサチップ上の抗体と反応した後)の電気インピーダンスが計器により検出可能となるばかりでなく、精密な値で識別できるようになる。このような測定値を感知結果の判断に役立てることができる。
【0018】
実際、本システムの独創的な導電性促進のアイデアにより、システムの電気容量等、インピーダンス以外の電気的パラメータは全て測定可能となることは理解されよう。また、本書で用いる用語「導電性」は、電気抵抗の逆数という厳密な定義ではなく、より広義の電気伝導状態特性を意味する。つまり、「導電性促進」は「一般的な電気伝導状態の改善」を意味する。
【0019】
このように、本発明のセンサ及び方法では、捕捉物質の存在によって生じる導電性の変化を検出し識別できる導電環境を確立することができる。試料システム全体の電気特性の検出範囲は本発明のセンサ及び方法により効率的に「増幅」されるため、電気インピーダンス、電流、電気容量等の電気特性の変化はDC電圧あるいは特定の周波数のACにより簡単に検出し、精密に計測できる。このような変化の量は、試料における標的物質の存在レベルの指標となる。
【0020】
図1は基本電気感知システムの概略を示す図である。基板110上に組み込まれたセンサチップ100では、例えばAu、Ag、Cu、Ni等の薄膜からなる正電極112及び負電極114の表面に抗体プローブ120の層が固定される。電極112及び114は物理的土台となって特定の感知機能を担う抗体プローブを保持する。
【0021】
本発明の独創的な電気感知手法を実現するシステムの一実施形態は、試験計器に組み込まれて感知空洞102を形成するセンサチップ100に基づく。空洞の中では試料がチップに接触し、それにより流体試料内に浮遊する標的抗原分子134は抗体プローブ120に結合した捕捉抗原となる。
【0022】
以下で詳述するように、図1のシステムにより、試料中の標的抗原濃度の精密な測定が可能になる。かかる測定は、図面に概略的に示すように、センサチップの電極間に電圧を印加する際、電流測定計器を使用することにより行う。
【0023】
図2A及び図2Bは本発明の好適な実施形態による実行可能な2つのセンサチップ構成を示す図である。図2Aのセンサチップ200Aは典型的な平型チップの形態をとり、その基板210A上にはセンサ電極212A及び214Aが並置されている。このような平型チップ構成はチップ読取装置に依存し、試料空洞を形成し、その箇所で感知が行われる。
【0024】
対照的に、図2Bのセンサチップ200Bは管状チップであり、2つのセンサ212B及び214Bは、管状「基板」210Bの内面の、通常互いに対向する位置に、取り付けられる。このような管状構成では、対応する読取装置の中に挿入されてセンサチップ200Bの両端を密閉することにより、試料空洞202Bを容易に設けることができる。
【0025】
図4Aから図4Cは、それぞれ本発明のセンサチップの一実施形態の準備とその試料試験及び感知を示す図である。電極、抗体、抗原及び導電性促進分子の大きさが図面において縮尺通りに示していないことに注意されたい。大きさについては、むしろ本発明の概念を説明するため過度に誇張して示してある。
【0026】
図4Aはセンサチップの基本システムを示す図であり、その導電環境の導電性は導電性促進分子を用いた表面改質により増加する。好適な実施形態においては薄膜状の金を使用し、基板410上に構築されたセンサチップ400の基本正電極412及び負電極414を形成する。Ag、Cu、Ni等の他の金属を使用することもできる。用途に応じて適当な合金(インジウムスズ酸化物、ITO等)を使用することもできる。
【0027】
図面に示すように、導電性分子は、参照番号442で示される電極表面への固定により電極に結合される。これらの分子が電極表面に固定された導電性促進分子となる。このことにより、チップを使用する際、導電性促進分子がセンサチップの表面特性を改質することで、基本センサシステムが増強された導電環境を提供し、その結果、センサシステムの導電性が促進される。試料試験にあたっては正及び負電極間の導電性が大幅に向上する(抗体プローブ分子追加後)。このシステムでは、電極間で参照番号405Aにより一般に示される導電環境が大いに向上するため、センサチップ400の電極412及び414間の電流は感知可能となる。
【0028】
導電性促進材としての使用に適した物質はオリゴチオフェン−シラン、オリゴチオフェン−チオール、(1−フェニル)オリゴチオフェン、(2−フェニル)オリゴチオフェン、サイドアームオリゴチオフェン、オリゴフェニルオリゴチオフェン、ならびにそれらの派生物等を含むが、それらに限定されない。
【0029】
図4Bでは標的プローブ用抗体422を導電性促進分子442層との接合によりセンサチップ400へ加える。この抗体の固定により、この段階(標的抗原が存在しない)の導電環境405Bにおけるセンサチップの導電性は多少低下するが、それでもなお計器で容易に計測できる範囲内にある。
【0030】
抗体422の存在により、図4Bのチップ400は標的電気感知の用意ができる。チップには、感知用途に応じて特定の非導電性抗体分子が固定される。例えばS100、アルファ−フェトプロテイン、トロポリンI等の抗原試験には免疫グロブリンG分子を抗体プローブとして使用できる。システム導電性はプローブの存在によって反映される程度まで減少した。この導電性の変化が試験測定の基準値となる。
【0031】
チップへ固定されたプローブ抗体への暴露による標的抗原の電気感知を図4Cに示す。図4Bの標的電気感知用センサチップ400を試料に暴露する。特定の標的と結合するプローブとして固定される抗体422により、抗原432、すなわち試料中に存在する標的は捕捉されるか、あるいは抗体と反応する。
【0032】
捕捉抗原分子432の存在により、導電環境405C全体の導電性は(図4Bに比べて)更に変化し、このインピーダンス測定値(電極間の電流として測定)の差異がシステムにおける抗原の存在レベルの指標となる。
【0033】
本発明による電気感知の場合、図4Cのセンサチップにより提供される流体検出及び測定環境の中に非導電性抗原標的を含む試料が導入されると、システムの導電性が減少する。このような減少は測定電流の減少に反映される。この減少は、チップによって捕捉される標的物質の存在レベルに比例する。ただし場合によっては、センサチップの抗体プローブへの試料中の標的抗原の結合は、システムでそれらが存在しない場合より導電性が減少することもある。
【0034】
図5Aから図5Cは本発明のセンサチップの別の実施形態の準備とその試料試験及び感知を示す図である。図5Aから図5Cで説明する例は、電極を対向位置に配置するセンサチップの物理的構成を除き、図4Aから図4Cと実質的に同じである。そのような電極の対向構成によって導電状態が図4Aから図4Cの平型構成より改善し、電気感知を改善させると考えることができるが、その考えに限定されない。
【0035】
図6は本発明の電気感知式チップ及び方法がいかに実用的であるかを模式的に示す図である。このグラフは、試料中の標的抗原濃度に対する試料の導電性の関係を示している。
【0036】
図6で導電性を表す垂直の目盛りに沿った記号A、B、C、D、D’、及びD”はそれぞれ、センサチップシステムの様々な製造段階における導電性である。
A:基板
B:電極
C:導電性促進
D、D’、D”:抗体プローブ追加
【0037】
従来の電気感知では、広範な試料濃度に対し狭い電流測定範囲(BD’又はBD”、プローブの追加により全体的な導電性はそれぞれわずかに増減するかどうか)で試料の導電性を測定する。電流測定範囲があまりにも狭いため実用的ではなく、標的の存在を識別することさえ難しく、試料濃度曲率E’又はE”が許容できる測定分解能となる可能性は少ない。
【0038】
対照的に、導電性促進分子の使用により、ある程度標的の検出範囲は増幅され(BD)、良好な分解能と精度で標的濃度を判定することができる。その理由は、図6の特性曲線Eに明示されているように、幅広い測定範囲における標的の検出及び測定と、流体環境における標的濃度と対応する測定電流との直線又は非直線関係とにより、計器測定値の判断は格段に容易になるためである。
【0039】
図7A及び図7Bは試験システムの導電性を促進する本発明のセンサチップの表面改質プロセスの2つの例を示す図である。図8から図10は、本発明のセンサを用いた様々な試料試験の結果を示す図である。
【0040】
図8は−0.2Vの測定電圧を使用する抗S100モノクローナル抗体に対するS100抗原試験の結合曲線を示す。抗原S100を検出するため、抗S100モノクローナル抗体(mAb)プローブを備えるセンサチップが使われる。図8の結合曲線は、−0.2Vの試験電圧により得られ、1ミリリットル当たり0から200マイクログラムの試料濃度と0から40ナノアンペアの感知電流との関係が明確に認識できる。試験にはBSA(ウシ血清アルブミン)が対照試料として使われる。
【0041】
図9は、様々な抗原濃度に−0.5Vの測定電圧を使用する抗アルファフェトプロテインモノクローナル抗体に対するアルファフェトプロテイン試験の結合曲線を示す図である。抗原アルファフェトプロテインを検出するため、抗アルファフェトプロテインモノクローナル抗体(mAb)プローブを備えるセンサチップが使われる。1ミリリットル当たりの濃度が0から1マイクログラムの濃度で−0.5Vの試験電圧により結合曲線を得る。この試験により、試料濃度と対応する感知電流との関係が明確に認識できる。試験にはBSA(ウシ血清アルブミン)が対照試料として使われる。
【0042】
図10は−0.2Vの測定電圧を使用する試験におけるトロポリンに対する抗(トロポリンI)モノクローナル抗体の結合曲線を示す。抗原トロポリンを検出するため抗(トロポリンI)モノクローナル抗体(mAb)プローブを備えるセンサチップが使われている。1ミリリットル当たりの濃度が0から200マイクログラムの濃度で−0.2Vの試験電圧により結合曲線を得た。この試験により、試料濃度と対応する感知電流との関係が明確に認識できる。試験にはBSA(ウシ血清アルブミン)が対照試料として使われる。
【0043】
図11は本発明のセンサチップの一実施形態の物理的な概略を示す図である。この平型チップ構成の実施において、平型電極の概略を有するセンサチップ1100のガラス基板1110にはメッキされた電極1112、1114、及び1116と、プリント回路基板に見られるものに類似したエッジコネクタ1162、1164、及び1166とがある。この例において3つの電極は、2つの正機能電極1112及び負機能電極1114との間に中央基準電極1116を備える。いくつかのエッジコネクタは将来の機能のためにとっておく。センサ機能電極用の典型的な金属導体板はAu、Ag、Cu、Ni等を含む。このほかに導電材の可撓性膜も使用することもできる。基準電極用の典型的な不活性金属板はPt等を含む。チップをプロセッサへ接続するエッジコネクタには、PCBに見られるものを使用できる。それらのメッキの典型的な厚みは約2,000オングストロームである。
【0044】
図12は本発明の一実施形態によるセンサチップ処理装置1270の流路構成の概略を示す図である。この処理装置の実装には2つの流路が使われる。センサチップ1200はチップキャリア1208にて任意に保持されるが、それを所定の標的物質の試験に用いる場合、試料は注入器1284により点線で図示された装填路を通じてサンプルループ1282の中に装填される。次に、貯留槽1286から供給される緩衝液を使ってポンプ1277により試料を送り、センサチップの電極表面を通過させる。次に、試験液と緩衝液が廃液タンク1288へ排出され、後で廃棄される。
【0045】
以上は特定の実施形態の全体の説明であって、様々な修正、代替的な構造及び同等物を用いることができる。例えば、本発明の重要な革新性のために説明、図示された好適な実施形態は、センサチップシステムにおけるいくつもの可能な導電性促進実装構成のうちの1つ、具体的には図4及び図5に示す電極に対する抗体結合手段としての導電性促進分子の使用を例示したものに過ぎない。しかし、システムにおいて、それとは別の導電性促進分子の使用方法も可能であることは当業者には容易に理解されよう。例えば、導電性促進分子による抗体の改質、センサチップ表面へ送られる、あるいは試料に使われる緩衝液への導電性促進分子の追加、ならびにそれらの方法の組み合わせを含む、少し異なる方法も同様に適用可能であり、そのことはその後の追加的な実験結果により実証済みである。したがって、以上の説明及び図示は本発明の範囲を制限するものとして解釈すべきではない。
【符号の説明】
【0046】
100 センサチップ
102 感知空洞
110 基板
112 正電極
114 負電極
120 抗体プローブ
134 標的抗原分子
200A センサチップ
200B センサチップ
202B 試料空洞
210A (平型)基板
210B 管状基板
212A センサ電極
212B センサ
214A センサ電極
214B センサ
300 センサチップ
312 正電極
314 負電極
322 抗体分子
332 抗原分子
400 センサチップ
405A 導電環境
405B 導電環境
405C 導電環境
410 基板
412 正電極
414 負電極
422 抗体
432 抗原
442 導電性促進分子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の抗原を電気感知するセンサであって、
互いに電気的に遮断され且つ物理的に分離される2つの電極と、
前記電極の少なくとも一方の表面に固定され、前記抗原に対し特異的結合反応性を有する抗体層とを備えること、
を特徴とするセンサ。
【請求項2】
前記抗体は、緩衝溶液に混合され前記抗体定着電極と接触する前記試料中の前記抗原を捕捉し、それにより前記2電極間の導電特性は変化し、前記変化を表す量が前記抗原の電気感知の指標を提供すること、を特徴とする請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
前記電気感知がDC又はACによる前記電極間の電流測定であること、を特徴とする請求項1に記載のセンサ。
【請求項4】
前記電気感知が前記電極間の容量測定であること、を特徴とする請求項1に記載のセンサ。
【請求項5】
前記電極がAu、Ag、Cu、及びNiからなる群より選択される材料から作られること、を特徴とする請求項1に記載のセンサ。
【請求項6】
前記電極が前記センサの非導電性平型基板の表面上にあること、を特徴とする請求項1に記載のセンサ。
【請求項7】
前記電極が前記センサの非導電性管状基板上で互いに対向するよう配置されること、を特徴とする請求項1に記載のセンサ。
【請求項8】
試料中の抗原を電気感知するセンサであって、
互いに電気的に遮断され且つ物理的に分離される2つの電極と、
前記電極の少なくとも一方の表面に固定され、前記抗原に対し特異的結合反応性を有する抗体層と、
前記2電極間の導電特性を改善するため、前記抗体定着電極上に繋留される、及び/又は前記抗体定着電極間に分散される、導電性促進分子とを備えること、
を特徴とするセンサ。
【請求項9】
前記抗体は、緩衝溶液に混合され前記抗体定着電極と接触する前記試料中の前記抗原を捕捉し、それにより前記2電極間の前記改善導電特性は変化し、前記変化を表す量が前記抗原の電気感知の指標を提供すること、を特徴とする請求項8に記載のセンサ。
【請求項10】
センサを使用し試料中の抗原を電気感知する方法であって、前記センサは、互いに電気的に遮断され且つ物理的に分離される2つの電極と、前記電極の少なくとも一方の表面に固定され、前記抗原に対し特異的結合反応性を有する抗体層とを備え、前記方法が、
前記試料が前記抗体定着電極と接触した後、前記電極間を電気的に測定することを含むこと、
を特徴とする方法。
【請求項11】
前記抗体は前記試料中の前記抗原を捕捉し、それにより前記2電極間の導電特性は変化し、前記変化を表す量が前記抗原の電気感知の指標を提供すること、を特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記電気感知がDC又はACによる前記電極間の電流測定であること、を特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記電気感知が前記電極間の容量測定であること、を特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記電極がAu、Ag、Cu、及びNiからなる群より選択される材料から作られること、を特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記電極が前記センサの非導電性平型基板の表面上にあること、を特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記電極が前記センサの非導電性管状基板上で互いに対向するよう配置されること、を特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項17】
センサを使用し試料中の抗原を電気感知する方法であって、前記センサは、互いに電気的に遮断され且つ物理的に分離される2つの電極と、前記電極の少なくとも一方の表面に固定され、前記抗原に対し特異的結合反応性を有する抗体層とを備え、前記方法が、
前記2電極間の導電特性を改善するため、導電性促進分子を前記抗体定着電極上に繋留することと、及び/又は前記抗体定着電極間に分散させることと、
前記試料が前記抗体定着電極と接触した後、前記電極間を電気的に測定することとを含むこと、
を特徴とする方法。
【請求項18】
前記抗体は前記試料中の前記抗原を捕捉し、それにより前記2電極間の前記改善導電特性は変化し、前記変化を表す量が前記抗原の電気感知の指標を提供すること、を特徴とする請求項17に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−160151(P2010−160151A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−327(P2010−327)
【出願日】平成22年1月5日(2010.1.5)
【出願人】(510005638)
【Fターム(参考)】