説明

電気掃除機

【課題】信頼性が高く且つ誤検知の可能性が極めて低い、異常スパーク検知を、実現すること。
【解決手段】電動送風機2の整流子とカーボンブラシとの摩擦によって発生するカーボン粉量を検出する光検出手段15を有し、光検出手段15の検出結果に基づいて信号処理手段17が異常スパーク状態か否かを判断し、信号処理手段17からの出力により、双方向性サイリスタ20の駆動制御手段19の電動送風機2への通電量を可変する構成としたので、信頼性が高く且つ誤検知の可能性が極めて低い異常スパーク検知が実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファンと整流子モータからなる電動送風機を用いた電気掃除機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の電気掃除機の課題のひとつとして、整流子とカーボンブラシとの接触面から発生するモータースパークが挙げられる。特に電気掃除機に内蔵されるモータにおいては、その使用条件の過酷さ故に、モータースパークが発生し易く、更に一旦スパークが発生すると、次第に悪化していく傾向にある。このスパークが大きくなれば、大幅な寿命低下や振動、動作不良等、様々な不具合を引き起こすことは周知の事実であり、スパーク対策としてモータ自体の改良が進められてきたが、制御による対策も依然必要とされている。従来のこの種の対策としては、スパーク発生時に交流電流波形に重畳される高周波数成分を検出することで、スパークを検出する方法(例えば、特許文献1参照)や、光検出素子によって直接スパークによる光を検出する方法(例えば、特許文献2参照)が提案されている。
【特許文献1】特開2001−136780号公報
【特許文献2】特開2006−204470号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたスパーク判定方法によれば、複雑な演算処理が必要となるし、電源自体にノイズが重畳している場合でもスパークであると誤検知する可能性もある。更に、無視してもよいレベルの軽いスパーク(3号〜4号程度)と、重度のスパーク(7号・8号:以降、「異常スパーク」と呼ぶ)とで電流波形に重畳される高周波成分の差を検知するのはかなりの精度が必要であり、実際に不具合に繋がる異常スパークのみを検出することは非常に困難である。又、上記特許文献2に記載されたスパーク判定方法によっても、上述同様に無視してもよいレベルの軽いスパーク(3号〜4号程度)と、重度のスパーク(7号・8号:以降、「異常スパーク」と呼ぶ)とでの光度差を検知するのはかなりの精度が必要であり、光検出センサ自体が高価なものになるのは必至である上に、整流子とカーボンブラシとの接触部で発生するスパーク光を直接監視する必要があるため、光検出素子自体を整流子近傍のカーボン粉に直接曝露されやすい位置に配置せざるを得ず、光検出素子の汚れによる感度低下やモーターから発せられる熱によるセンサ自体の信頼性低下等、実現には大きな課題を有している。更に、異常スパークの発生を検出した場合の制御については、モータを停止することが一般的であるが、使用者にとっては掃除が中途半端になってしまう場合もあると共に、モーターの交換あるいは商品の買い替えを余儀なくされてしまう。
【0004】
本発明は前記従来の課題を解決するもので、比較的単純な構成で信頼性が高く且つ精度よく異常スパークを検出し、可能な限り掃除機として使用できる期間を延ばすことのできる制御を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記従来の課題を解決するために本発明は、ファンと整流子モータから成る電動送風機と、前記電動送風機の通電量を制御する制御手段と、前記電動送風機の整流子とカーボンブラシとの摩擦によって発生するカーボン粉量を検出する光検出手段を有し、前記光検出手段の検出結果に基づいて前記制御手段の前記電動送風機への通電量を可変する信号処理手段を備え、前記光検出手段が検出するカーボン粉の量が所定以上存在している場合に、「異常スパーク」と判断して、前記電動送風機への通電量を所定量まで下げるようにした。スパークの発生は、整流子とカーボンブラシとの電気的接触不良によって起こるものであるため、スパーク発生時には通常の接触状態と比較してカーボンブラシの磨耗は激しく、その結果多量のカーボン粉が発生する。カーボン粉の発生量は、スパークのレベルによって異なるが、基本的にスパークが大きいほど、カーボン粉の発生量は多くなる。本発明は、このカーボン粉量の検出によって、異常スパークを検知するものであるので、判断としては、交流電流波形に重畳される高周波数成分の微小な差という従来の検出方法に比べ、誤検知の可能性が極めて少なく、且つ整流子とカーボンブラシとの接触部で発生するスパーク光を直接監視する構成が必要となる光検出手段と比較しても、近年の電気掃除機に搭載されている塵埃検出等の手段として用いられてきている比較的安価で且つ信頼性の高い透過型の光検出手段という方法を用いているという意味において、高い信頼性を確保することができるものである。
【0006】
又、異常スパークを検出した場合、通電量を少なくすると、異常スパークが発生しなくなる場合があることは前述したが、低い通電量で暫く運転した場合には整流子とカーボンブラシが再び、なじんで、結果再度通電量を上げても異常スパークが治まっている場合がある。本発明は、この点にも着目し、異常スパークを検出した場合、通電量を下げて、寿命ぎりぎりまで電気掃除機として使用できるようにすると共に、モータ自体の復活をも期待できるようにしたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の電気掃除機は、比較的安価で単純な構成で信頼性が高く且つ誤検知の可能性が極めて低い異常スパーク検知が実現できると共に、異常スパークが発生した場合でも、寿命ぎりぎりまで電気掃除機として使用できるようにすると共に、モータ自体の復活をも期待できるようにしたものであり、利便性の高い電気掃除機を提供できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
第1の発明は、ファンと整流子モータから成る電動送風機と、前記電動送風機を駆動するための双方向性サイリスタと、前記双方向性サイリスタのトリガ位相角を変えることによって前記電動送風機の通電量を制御する制御手段とが設けられた電気掃除機であって、前記電動送風機の整流子とカーボンブラシとの摩擦によって発生するカーボン粉を検出する光検出手段を有し、前記光検出手段の検出結果に基づいて前記制御手段の前記電動送風機への通電量を可変する信号処理手段を備えたことを特徴とする電気掃除機であり、光検出手段によるカーボン粉量の検出であるので高信頼性且つ高精度で誤検知の可能性が極めて低く、且つ異常スパ−クが発生した場合でも通電量を可変することで使用が継続できるようにしたもので、電気掃除機としての使用性向上をも期待できるものである。
【0009】
第2の発明は、信号処理手段が、所定時間内に光検出手段が検出するカーボン粉量が、あらかじめ設定された閾値を超えたと判断したときには、電動送風機の通電量を少なくするよう制御手段に指示信号を出力することを特徴とする請求項1記載の電気掃除機であり、異常スパークが発生したときには通電量を少なくすることで、寿命ぎりぎりまで電気掃除機として使用できると共に、モータ自体の復活をも期待できるものである。
【0010】
第3の発明は、信号処理手段が、所定時間内に光検出手段が検出するカーボン粉量を都度記憶し、前回の記憶値と今回の検出量とを比較して、その差があらかじめ設定された閾値を超えたと判断したときには、電動送風機の通電量を少なくするよう制御手段に指示信号を出力することを特徴とする請求項1記載の電気掃除機であり、カーボン粉量を絶対量でなく単位時間当りの変化量として検出するため、異常スパークのレベルに限定されることがないので更に精度良く異常スパークの状態を判断できるものである。
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0012】
(実施の形態)
本発明の実施の形態における電気掃除機について、図1〜図4を用いて説明する。図2は、本実施の形態における電気掃除機の外観図である。図2において、掃除機本体1は、後部に整流子モータからなる電動送風機2を内蔵した電動送風機室3が配され、前部に、塵埃を捕集する集塵室4が配され、掃除機本体1の前部には、ホース5の一端に設けた接続パイプ6が着脱自在に接続される吸気口7が設けられている。ホース5の他端には、掃除の際に握ると共に掃除機本体1の運転を操作するための操作部8を有する把手9を備えた先端パイプ10が設けられている。11は伸縮自在の延長管で、下流側端部が前記先端パイプ10に着脱自在に接続され、他端は吸込み具12に着脱自在に接続される。又、掃除機本体1の後部には、回路基板13が電動送風機2の外周を囲うように取り付けられた電動送風機収納ケース14上に配置されると共に、電動送風機収納ケース14後方に設けられた排気口14aの上下には、排気口14aから排出される排気に含まれる電動送風機2の整流子(図示せず)とカーボンブラシ(図示せず)との摩擦で発生するカーボン粉を検出するための透過型赤外線センサで構成された光検出手段15が設けられており、掃除機本体1に内蔵されている電源コード(図示せず)をコンセント(商用電源)に接続すると、回路基板13と光検出手段15に電源が供給される。図3は前記操作部8の詳細図であり、「強」スイッチ8a,「中」スイッチ8b,「弱」スイッチ8c,「切」スイッチ8d及び異常表示ランプ8eより構成されている。
【0013】
次に、図1を用いて制御回路構成を説明する。商用電源16には、電動送風機2の排気から排出されるカーボン粉量を検出するための光検出手段15と、信号処理手段17に電源を供給するための電源回路18と、電動送風機2が接続されている。電動送風機2は駆動制御手段19により双方向性サイリスタ20を制御することによって、商用電源16から電源が供給されるように構成されている。駆動制御手段19は、信号処理手段17及び操作部8からの信号により双方向性サイリスタ20を位相制御するように構成されている。この時の位相制御角は、操作部8の各スイッチ8a〜8dからの出力信号及び信号処理手段17からの出力信号に応じて決定されている。これら電源回路18、信号処理手段17、駆動制御手段19、双方向性サイリスタ20は前述した回路基板13内に設けられている。異常表示ランプ8eは、信号処理手段17に接続されており、異常スパーク発生時に点灯するようになっている。
【0014】
次に、上記のように構成された、本実施の形態における電気掃除機の動作、作用について、図1、図3及び図4を参照しながら説明する。
【0015】
使用者の操作によって、図3に示す操作部8各スイッチ8a〜8cが押された場合、その入力信号を受けて駆動制御手段19が双方向性サイリスタ20に所定の位相角に設定されたトリガパルスを出力することで、双方向サイリスタ20が導通して電動送風機2に位相角に応じた通電量の電流が供給される。即ち、トリガパルスの位相角(=駆動制御手段19が商用電源16のゼロクロスを検出してからトリガパルスをオンするまでの時間)を変えることで、電動送風機2に流れる電流(入力)を制御している。駆動制御手段19は、操作部8のどのスイッチが押されたかを判断し、押されたスイッチに応じて、電動送風機2が狙いの入力で駆動するように、トリガパルスの位相角を決定し、双方向性サイリスタ20に信号を出力している。本実施例においての各スイッチとトリガパルス位相角及び電動送風機2入力の関係を下表に示す。
【0016】
【表1】

【0017】
又、電動送風機2が駆動している時に「切」スイッチ8dを押すと、駆動制御手段19からのトリガパルス出力が常時オフになり、電動送風機2も停止する。
【0018】
以降、異常スパーク検知のアルゴリズムと異常スパーク検知後の制御について、図4を参照しながら説明する。
【0019】
図4の波形は、上から順に(i)は「強」入力で運転時の光検出手段15が検出したカーボン粉の所定の単位時間Δt当りのカーボン量X(Δt)の推移を示すグラフ(カーボン粉は光検出手段15にて1個当り1パルスの信号として後段の信号処理手段17へ入力され、信号処理手段17はそれをΔtの期間で積算し、このΔt期間に光検出手段15から入力されたパルス信号の総数をその期間当りのカーボン量X(Δt)として判断処理を行う)、(ii)は同じく「中」入力で運転時の光検出手段15が検出したカーボン粉の所定の単位時間Δt当りのカーボン量X(Δt)の推移を示すグラフである。
【0020】
電動送風機2を(i)「強」で駆動した場合、信号処理手段17は操作部8からの入力により現在「強」で運転中であると認識すると共に、信号処理手段17は常に単位時間Δt当りのカーボン量X(Δt)をモニターしながら、Δt毎に今回認識したカーボン量X(Δt)値と前回の値との差を計算し、その差と「強」運転時での異常スパーク発生有無の判断閾値Δx1とを比較している。通常異常スパークが発生していない場合は多少のバラツキはあるものの、グラフに示すX1(Δt)程度のカーボン量で推移するが、異物混入等電動送風機2の整流子に何等かの不具合現象が起こり異常スパークが発生すると、その時点から単位時間Δt当りのカーボン量X(Δt)はX1(Δt)’へと急激に増加する。すると単位時間Δt当りのカーボン量X(Δt)の今回と前回の差ΔX1(Δt)が判断閾値Δx1以上となり、信号処理手段17は電動送風機2に異常スパークが発生したと判断し、駆動制御手段19に「弱」入力に相当する位相角に切替るよう信号を出力し、駆動制御手段19は双方向性サイリスタ20に「弱」の位相角に設定されたトリガパルスを出力することで、電動送風機2は「弱」まで入力が下がり、スパークが消滅するためにグラフに示すように徐々にカーボン粉量はX1(Δt)″まで減少していく。
【0021】
(ii)「中」入力で運転時も前述と同様に、信号処理手段17は操作部8からの入力により現在「中」で運転中であると認識すると共に、Δt毎にカーボン量X(Δt)の今回と前回の差を計算し、その差と「中」運転時での異常スパーク発生有無の判断閾値Δx2とを比較している。この場合、「中」運転時は「強」運転時よりも回転数が低いため異常スパーク時においても発生するカーボン粉量は「強」運転時よりは少ない。従って、判断閾値を「強」運転時と同じ値に設定しては正確な判断が出来ないため、「中」運転時の判断閾値Δx2は、Δx2<Δx1に設定している。「中」運転時も通常異常スパークが発生していない場合は多少のバラツキはあるものの、グラフに示すX2(Δt)程度のカーボン量で推移し、異常スパークが発生すると、その時点からX2(Δt)’へと急激に増加する。すると単位時間Δt当りのカーボン量X(Δt)の今回と前回の差ΔX2(Δt)は判断閾値Δx2以上となり、「強」運転時同様信号処理手段17は駆動制御手段19に「弱」入力に相当する位相角に切替るよう信号を出力し、電動送風機2は「弱」まで入力が下がり、スパークが消滅するためにグラフに示すように徐々にカーボン粉量はX1(Δt)″まで減少していく。
【0022】
尚、「強」運転時、「中」運転時いずれの場合も、信号処理手段17が異常スパークと判断し入力が「弱」に低下した段階で、信号処理手段17は操作部8の異常表示ランプ8eを点灯させる。
【0023】
以上のように、本実施の形態によれば、比較的安価で単純な構成で誤検知の可能性が極めて低い高信頼性且つ高精度な異常スパーク検知が実現できると共に、異常スパークが発生した場合でも、異常スパークが発生しない入力に下げることで寿命ぎりぎりまで電気掃除機として使用できるようにすると共に、モータ自体の復活をも期待できるようにしたものであり、利便性の高い電気掃除機を提供できるものである。
【0024】
又、本実施の形態においては、単位時間当りのカーボン量の今回と前回の差に対する判断閾値として説明したが、「強」運転時、「中」運転時それぞれ絶対量としての判断閾値を設定して異常スパークか否かの判断をする場合においても、同様の効果が得られることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0025】
以上のように、本発明はモータースパークに対する対策が必要とされる機器、特に電気掃除機に対して効果を発揮するものであり、家庭用だけでなく、ビルトインタイプ(セントラルクリーナ)のような電気掃除機にも応用・展開できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態における電気掃除機の回路ブロック図
【図2】同電気掃除機の外観図
【図3】同電気掃除機の操作部詳細図
【図4】同電気掃除機のカーボン量推移グラフ
【符号の説明】
【0027】
1 掃除機本体
2 電動送風機
8 操作部
8a 「強」スイッチ
8b 「中」スイッチ
8c 「弱」スイッチ
8d 「切」スイッチ
8e 異常表示ランプ
15 光検出手段
17 信号処理手段
19 駆動制御手段
20 双方向性サイリスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファンと整流子モータから成る電動送風機と、前記電動送風機を駆動するための双方向性サイリスタと、前記双方向性サイリスタのトリガ位相角を変えることによって前記電動送風機の通電量を制御する制御手段とが設けられた電気掃除機であって、前記電動送風機の整流子とカーボンブラシとの摩擦によって発生するカーボン粉量を検出する光検出手段を有し、前記光検出手段の検出結果に基づいて前記制御手段の前記電動送風機への通電量を可変する信号処理手段を備えたことを特徴とする電気掃除機。
【請求項2】
信号処理手段は、所定時間内に光検出手段が検出するカーボン粉量が、あらかじめ設定された閾値を超えたと判断したときには、電動送風機の通電量を少なくするよう制御手段に指示信号を出力することを特徴とする請求項1記載の電気掃除機。
【請求項3】
信号処理手段は、所定時間内に光検出手段が検出するカーボン粉量を都度記憶し、前回の記憶値と今回の検出量とを比較して、その差があらかじめ設定された閾値を超えたと判断したときには、電動送風機の通電量を少なくするよう制御手段に指示信号を出力することを特徴とする請求項1記載の電気掃除機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−11995(P2010−11995A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−174139(P2008−174139)
【出願日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】