説明

電気掃除機

【課題】吸込んだ含塵空気を遠心力で塵と空気に分離する性能の低下を高い信頼性をもって抑制可能な電気掃除機を提供する。
【解決手段】集塵カップ81、排気筒101、及び仕切り手段111を具備するサイクロン式の集塵装置26を、電動送風機の上流側に配設する。集塵カップ81は含塵空気の入口86を有し、上部空間は、含塵空気を旋回させて空気と塵とに分離する分離室81aとなり、下部空間は塵を集積する集塵室81bとなる。排気筒101は気流中の塵をろ過するフィルタ104を有する。フィルタ104を分離室81aの中央部に配設し、排気筒101を集塵カップ81内に設ける。仕切り手段111を排気筒101に取付ける。この手段は、運転状態で両室81a,81bを仕切るように拡径され、運転停止状態で集塵カップ81の内周面との間に分離室81a内の塵が集塵室81bに落ちる隙間Gを形成するように縮径されることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、吸込まれた含塵空気を遠心力で塵と空気に分離する集塵装置を備える電気掃除機に関する。
【背景技術】
【0002】
サイクロン式電気掃除機の集塵装置は、集塵カップとカップ蓋を備えている。集塵カップ内の上部空間は分離室を担い、集塵カップ内の下部空間は集塵室を担っている。含塵空気を分離室の内周面に沿って旋回させるように分離室に導く吸込口(入口)が、集塵カップの上部に設けられている。分離室の中央部でかつ集塵室の上方に配設される排気筒は、分離室の上端開口を開閉するカップ蓋に取付けられていて、電動送風機の吸気口に連通されている。
【0003】
この集塵装置に吸込まれた含塵空気は、分離室で旋回することで、遠心力により空気と塵とに分離される。そして、分離された塵は分離室の下側に連続した集塵室に集積される。
【0004】
前記遠心分離によって塵から分離された空気は排気筒でろ過されてから集塵装置外に流出し、電動送風機に吸込まれる。このため、分離されて集積された塵が分離室へ帰還して排気筒に付着すると、排気筒を通り抜けようとする気流に対する抵抗が増えるに伴い、分離室での遠心分離性能が低下する。
【0005】
こうした性能低下を抑制するために、分離室と集塵室との境界に、外周部に複数のリブが形成された遮蔽部材を配置する技術が知られている。
【0006】
遮蔽部材の外周と集塵室の内周面との間に、分離室からその下方への塵の集積を可能とする所定の間隙が形成されていて、この隙間に臨んで各リブが遮蔽部材の軸線に対して傾斜して設けられている。これらリブに集塵室から分離室へ帰還しようとする気流が衝突して、気流が方向転換されるので、この気流中に含まれる塵を、リブで分離して集塵室に留まらせることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4115481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、集塵室からその上の分離室へ帰還しようとする気流は、掃除中に電動送風機が弱モードで運転される場合、電動送風機が強モードで運転されたときに比べて、強くなることがある。つまり、弱モード運転では、吸塵力が低下することに応じて分離室での含塵気流に対する遠心力が低下する。このため、相対的には、分離室中央部の真空度、言い換えれば、分離室中央部に配設された排気筒に集塵室から気流を吸込む真空度が上がる。これにより、集塵室から分離室に帰還して排気筒に吸込まれる気流が強くなることがある。
【0009】
既述のように外周にリブを設けた遮蔽部材を分離室と集塵室との間に配置した電気掃除機で、以上のように帰還気流が強くなると、リブで帰還気流を十分に遮ることが困難となる。この場合、帰還気流中に含まれる塵を確実に分離することが難しくなることがある。したがって、掃除中に分離室での遠心分離性能が低下することを抑制する上で、従来の技術は十分ではなく改善の余地がある。
【0010】
従来の技術において、集塵室を上下方向により長く形成すれば、集塵室に集積された塵が分離室に帰還することを抑制することが可能となる。しかし、この場合、集塵カップの背丈が高くなって、掃除機本体の大形化を招く。そのため、掃除機本体がコンパクトである場合や、掃除機本体をよりコンパクトに形成しようとする場合には不適当である。
【0011】
更に、このような対策を講じることなく掃除機本体をコンパクトに形成した場合は、集塵カップの吸込口と集塵室との上下方向の距離が近くなるに伴って、集塵室に集積された塵の一部が吸上げられて排気筒に付着し易くなる。
【0012】
実施形態は、吸込んだ含塵空気を遠心力で塵と空気に分離する性能の低下を高い信頼性をもって抑制可能な電気掃除機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するために、実施形態の電気掃除機は、集塵カップ、排気筒、及び仕切り手段を具備するサイクロン式の集塵装置を、電動送風機の上流側に配設する。集塵カップはその上部側面に含塵空気の入口を有する。集塵カップ内の上部空間は、入口から流入する含塵空気を旋回させて空気と塵とに分離する分離室となり、分離室の下側に連続した集塵カップ内の下部空間は分離室で分離された塵を集積する集塵室となる。排気筒は集塵カップを通過しようとする気流中の塵をろ過するフィルタを有する。このフィルタを分離室の中央部に配設して、排気筒を集塵カップに取付ける。仕切り手段を排気筒に取付ける。この仕切り手段は、電動送風機の運転状態で分離室と集塵室とを仕切るように拡径され、電動送風機の停止状態で集塵カップの内周面との間に分離室内の塵が集塵室に落ちる隙間を形成するような縮径されることを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】一実施形態に係る電気掃除機を示す斜視図である。
【図2】図1の電気掃除機が備える掃除機本体を示す縦断面図である。
【図3】図2の掃除機本体の前部を示す平面図である。
【図4】図1の電気掃除機が備える集塵装置を電気掃除機が運転された状態で示す縦断面図である。
【図5】図1の電気掃除機が備える集塵装置を電気掃除機の運転停止状態で示す縦断面図である。
【図6】図5の集塵装置の一部を示す斜視図である。
【図7】図5の集塵装置が備える連動手段を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、一実施形態の電気掃除機について、図1〜図7を参照して詳細に説明する。
【0016】
図1に例示したキャニスタ型の電気掃除機11は、吸塵風路部材12と、掃除機本体13とを備える。
【0017】
吸塵風路部材12は、互に連通して掃除機本体13に含塵空気を導く吸塵風路を形成する吸塵ホース16、延長管18、及び吸込み口体19を備える。吸塵ホース16はホース部材16aと接続管部15と手元操作部17を有している。ホース部材16aは可撓性を有する。接続管部15は、ホース部材16aの基端部となる一端部に取付けられて、このホース部材16aに連通されている。手元操作部17は、ホース部材16aの先端部となる他端部に取付けられて、このホース部材16aに連通されている。
【0018】
接続管部15は掃除機本体13に着脱可能に接続されている。延長管18は、手元操作部17の先端部に着脱可能に接続されて、吸塵ホース16に連通されている。吸込み口体19は、例えば被掃除面である屋内の床面を掃除するのに適した床用である。この吸込み口体19は、延長管18の先端部又は手元操作部17の先端部に選択的にかつ着脱可能に接続されて、延長等管18に連通されている。
【0019】
手元操作部17はその先端部から後方に向けて突出した把持部21を有している。この把持部21に、運転操作用の設定ボタン22が複数取付けられている。
【0020】
掃除機本体13は被掃除面である屋内の床面上を走行可能である。図1〜図3に示すように掃除機本体13は本体ケース25を備え、この本体ケース25に集塵装置26が上下方向に沿って着脱可能に支持されている。
【0021】
本体ケース25は、例えば合成樹脂等で形成されていて、本体部32と、取付け部33と、壁部34、ハンドル35を備えている。
【0022】
図2に示すように本体ケース25の後部を占める本体部32は中空状に形成されている。この本体部32に、電動送風機31、及び制御手段36の他に、電動送風機31に給電するための電源部として、例えば電源コードを巻き取るコードリール装置(図示しない)等が収容されている。本体部32の後部に電動送風機31からの排気を本体ケース25の外部へ放出する排気口43が形成されている。排気口43は多数の小孔で形成されている。本体部32の前面部には開口部47が形成されている。
【0023】
開口部47は、電動送風機31が有する上向きの吸気口(図示しない)に風路部材54を介して気密に接続されている。この開口部47には集塵カップ81の後述する出口92が気密に接合される。開口部47には格子55(図3参照)が形成されている。
【0024】
開口部47は、ハンドル35と略等しい高さ位置に形成されていて、本体部32の両側壁にわたっているとともに、取付け部33側である前側に臨んでいる。この開口部47の外縁部に、開口部47の全周を囲んで環状の後側シール部材56が取付けられている。この後側シール部材56は格子55より前側に突出している。後側シール部材56は、例えばゴム、或いはエラストマ等の弾性を有する合成樹脂等で形成されている。
【0025】
電動送風機31はその吸気口を例えば上向にして本体部32内に上下方向に沿って配置されている。電動送風機31の強弱運転などの動作は、設定ボタン22の操作に応じて、本体部32で電動送風機31より上方に収容された制御手段36により制御される。電動送風機31の周囲はカバー体37で覆われている。電動送風機31は、カバー体37に対してコイルばねなどの図示しない弾性部材によって弾性的に吊下げられている。
【0026】
取付け部33、壁部34、及びハンドル35は、掃除機本体13の前部を構成している。本体ケース取付け部33は本体部32の下端部から前方に突出されている。後述する集塵カップ81の下部を受けてこのカップを保持する平面視円形状の凹部66が、上方に開放して取付け部33の中央部に形成されている。これにより、取付け部33は受け皿状をなしている。
【0027】
壁部34は、取付け部33の前端部から上方に向けて略垂直状に突出して形成されている。壁部34は、本体部32の前面に対して前方に離間されて、この前面に対向している。このため、壁部34の両側面と、本体部32の両側面と、後述するハンドル35の両側面との間に、集塵カップ81の側部を外部から視認可能に露出させる露出口69が夫々形成されている。
【0028】
壁部34の上部に筒状の吸込み接続部68が前後方向に延びて形成されている。吸込み接続部68の前端部に、吸塵風路部材12の基端部をなした接続管部15が着脱可能に接続される本体吸込み口71が形成されている。吸込み接続部68の後端部に吸込み口72が形成されている。吸込み口72は本体吸込み口71に対向し連通している。これとともに、吸込み口72は集塵カップ81が掃除機本体13に支持されていない状態で本体部32の前面に臨むようになっている。
【0029】
吸込み口72は、開口部47よりも下側に配設されていて、取付け部33に保持された集塵カップ81の後述する入口86と気密に接合される。この接合部での気密を保持するために、吸込み口72の周部に前側シール部材75が取付けられている。前側シール部材75は、例えばゴム、或いはエラストマ等の弾性を有する合成樹脂等で形成されている。
【0030】
掃除機本体13を把持する際に使用されるハンドル35は、本体部32の上部から前方へと突出されている。詳しくは、ハンドル35は、このハンドル35の両端部から前側へ突出するループ状に形成されていて、前記両端部からなる基端部が本体部32の両側の上部に一体的に連結されている。このハンドル35の前端部は、壁部34の上方付近に達している。具体的には、図2に示すようにハンドル35の前端部は、壁部34の吸込み接続部68の上方に位置し、この壁部34に対して離間されている。
【0031】
このため、ハンドル35は、取付け部33に保持された集塵装置26の上部の周囲を囲んで位置されているとともに、取付け部33に上方から臨む取付け開口76を区画している。取付け開口76には、集塵装置26を取付け部33に着脱する際に、この集塵装置26が挿脱される。なお、ハンドル35には、集塵装置26を取付け部33に取付けた状態で、集塵装置26を掃除機本体13の本体ケース25に保持する図示しない係脱機構が例えば取付け開口76の内側等に配設されている。
【0032】
集塵装置26は、その内部に吸込まれた含塵空気を遠心力で塵と空気に分離し、かつ、分離された塵を集積するサイクロン式の構成であり、図4及び図5に示すように集塵カップ81と、カップ蓋91と、排気筒101と、仕切り手段111と、昇降部材121とを備えている。
【0033】
集塵カップ81は、カップ本体82と、開閉可能な底蓋87を備えている。この集塵カップ81内の上部空間は遠心分離のための分離室81aとして利用され、この分離室81aの下側に連続する集塵カップ81内の下部空間は分離された塵を集積する集塵室81bとして利用されるようになっている。
【0034】
カップ本体82は、その内部を透視可能な透明合成樹脂製であり、上下両端が開口された円筒形状に形成されている。カップ本体82は分離室81aに臨んだ上部側面に入口86を有している。この入口86は、集塵装置26が掃除機本体13に保持された状態で、吸込み口72に前側シール部材75を介して気密に接合される。入口86は、この入口86を通過した含塵空気をカップ本体82の内周面に沿って旋回させるように、例えばカップ本体82に対する接線方向に沿うように外向きに突設されている。
【0035】
カップ本体82の下端部の外面に、蓋取付け部83が突設されているとともに、この蓋取付け部83からカップ本体82の周方向に180度隔たってクランプ84が取付けられている。クランプ84は、支軸84aを支点に回動可能なクランプ部材84bと、このクランプ部材84bの上部をカップ本体82の下端部外面から離れる方向に付勢するばね84cを備えている。クランプ部材84bは、その下端部に例えば爪状をなした蓋係合部84dを有している。
【0036】
底蓋87は蓋取付け部83に支点軸88を介して上下方向に回動可能に取付けられている。底蓋87の回動によってカップ本体82の開口された下端が開閉される。底蓋87はその自由端部に係合部89を有している。底蓋87がカップ本体82の下端開口を閉じた状態では、係合部89にクランプ部材84bの蓋係合部84dが下側から係合され、それにより、底蓋87は、カップ本体82の下端開口を閉じた状態に保持される。
【0037】
こうした保持状態においてクランプ部材84bの上部がばね84cに抗して押されてクランプ部材84bが回動された場合、蓋係合部84dが係合部89から外れるので、それに伴い、底蓋87が自重で支点軸88を支点として下方に回動される。これにより、カップ本体82内に集積された塵が外部に排出されるように、カップ本体82の下端開口が開かれる。
【0038】
カップ蓋91は、集塵カップ81の開口された上端を覆ってカップ本体82の上端部に連結されている。このカップ蓋91の側面に集塵装置26を流通する気流の出口92が後ろ向きに突設されている。出口92は、集塵装置26が掃除機本体13に保持された状態で、開口部47に後側シール部材56を介して気密に接合される。
【0039】
カップ蓋91の内側に二次フィルタ93が配置されている。二次フィルタ93には、例えばプリーツフィルタを好適に使用できるが,これに代えて発泡ウレタンやガラス繊維などのろ材で形成されたフィルタを用いることも可能である。二次フィルタ93の裏面(下流側の側面)とカップ蓋91の内面との間の蓋内空間は出口92に連通している。
【0040】
プリーツフィルタ製の二次フィルタ93は、そのプリーツが前後方向に延びるように配設されている。これとともに、二次フィルタ93はその下向きに開放した溝の前後両端を閉じる端部材94を有している。このため、集塵装置26を流通する気流は、二次フィルタ93でろ過されるとともに、前記蓋内空間を経由して出口92から集塵装置26外に流通するようになっている。
【0041】
なお、図4及び図5中符号95は格子状に形成されたフィルタホルダを示している。このフィルタホルダ95は、二次フィルタ93にその上流側から接してカップ蓋91に取付けられていて、二次フィルタ93をカップ蓋91との間に挟んで保持している。
【0042】
排気筒101は、円筒部102と、取付け壁部103と、一次フィルタ104を有している。
【0043】
円筒部102の上端は排気口102aとして開口されている。円筒部102の下端も開口されているが、この下端開口は底蓋87で開閉される。
【0044】
取付け壁部103は、円筒部102の上端から外側に一体に張り出して、例えば上側ほど径が大きくなるようにテーパ状に形成されている。取付け壁部103は通気性能を有していない。この取付け壁部103の周部103aは、カップ本体82の上端部にねじ止めされている。これにより、排気筒101が集塵カップ81の内部に取付けられている。
【0045】
取付け壁部103は、これとカップ蓋91との間を排気室26aとして形成すると共に、この排気室26aを分離室81aに対して隔離する隔壁として用いられている。排気室26aに既述の二次フィルタ93及びフィルタホルダ95が収容されている。この排気室26aは排気口102aを通じて円筒部102の内部空間に連通されている。
【0046】
排気筒101の円筒部102はカップ本体82の中央部に配設されている。分離室81aに臨んだ円筒部102の上部に、円筒部102の周方向に所定間隔を置いて通気孔102bが複数形成されている。これらの通気孔102bは例えば上下方向に延びる長孔からなる。
【0047】
一次フィルタ104は、ネットフィルタやパンチングメタルなどからなり、各通気孔102bを覆って円筒部102の上部に、この上部の例えば外周を覆って取付けられている。したがって、一次フィルタ104は、分離室81aに臨んで分離室81aの中央部に配設されている。この一次フィルタ104は、集塵カップ81を通過しようとする気流、より正確には、分離室81aから排気室26aに流通しようとする気流中の塵をろ過する。一次フィルタ104のろ過性能は二次フィルタ93のろ過性能より低い。
【0048】
仕切り手段111は、例えば複数の骨部材112と、これらを上方から覆うとともに各骨部材112にわたって取付けられた仕切り部材113とを有して、所謂傘状に形成されている。
【0049】
仕切り部材113の裏側(下側)に配設された各骨部材112は棒状である。これら骨部材112は排気筒101の円筒部102を中心として放射状に配設されている。これとともに、各骨部材112の一端部は円筒部102に枢軸114を介して上下方向の回動可能に取付けられている。枢軸114は、円筒部102の例えば一次フィルタ104の直下に円筒部102の周方向に一回り連続して設けられている。なお、円筒部102の外周にはその周方向に間隔的に図示しない軸支え突起が複数突設され、これら突起に枢軸114を貫通させることで、円筒部102の外周に枢軸114が取付けられている。
【0050】
仕切り部材113は、自在に変形ができるシートで形成されている。このシートには、合成樹脂繊維を編んで形成されたからなるシートを好適に使用できる。このような合成樹脂製の仕切り部材113は、その表面が滑らかであり、この表面に塵が付着し難い。各仕切り部材113とその裏面に接した各骨部材112とは互いに連結されている。
【0051】
仕切り手段111は、電動送風機31の運転モードにかかわりなく、仕切り手段111の先端縁111aが枢軸114の下方に配設されるとともにこの先端縁111a側程低くなるように傾斜されている。仕切り手段111は、その先端縁111aを通る外周径を、電動送風機31が運転されているか否かによって図4に示す拡径状態と、図5に示す縮径状態とに可変することが可能である。
【0052】
即ち、図4は電動送風機31が運転されているときの仕切り手段111の状態を示している。この状態で仕切り手段111は、円筒部102の内部空間を、分離室81aと集塵室81bとに仕切るように拡径されている。この拡径状態で、仕切り手段111の仕切り部材113が張っておリ、かつ、仕切り手段111の先端縁111aが図6中二点鎖線で示すように略円形となって、この先端縁111aは集塵カップ81が有したカップ本体82の内周面に接している。
【0053】
なお、仕切り手段111が分離室81aと集塵室81bとを仕切るように拡径されているとは、仕切り手段が広がって集塵室81bから分離室81aへの後述する帰還気流が形成されないように機能することを意味している。このため、この機能を発揮できる範囲で、仕切り手段111の先端縁111aがカップ本体82の内周面に接していなくても差し支えない。
【0054】
図5は電動送風機31の運転が停止されているときの仕切り手段111の状態を示している。この状態で仕切り手段111は、恰も傘が畳まれるときのように仕切り部材113が変形して(図6中実線の状態参照)、先端縁111aと集塵カップ81が有したカップ本体82の内周面との間に隙間Gを形成して縮径されている。隙間Gはカップ本体82の周方向に一回り連続している。この隙間Gの大きさは、分離室81a内の塵が集塵室81bに落ちることが可能な大きさである。
【0055】
昇降部材121は、受圧部122と、複数例えば二本の脚部123を有していて、集塵カップ81が有したカップ本体82に昇降可能に配設されている。
【0056】
受圧部122は排気筒101の排気口102aより大径の円板である。この受圧部122は、通気性を有さない円板、又は、フィルタ部材等の通気抵抗を有する円板で形成されている。二本の脚部123は、それらの上端を受圧部122の周部裏面に連結して、受圧部122から下方に突出されている。これらの脚部123は、受圧部122の周方向に間隔的に配設され、例えば180度隔てて配設されている。
【0057】
昇降部材121は、その脚部123を、円筒部102の内面に沿って上下方向に摺動可能に円筒部102に対して上方から挿入することによって配設されている。二本の脚部123の下部は一次フィルタ104及びこれで覆われた通気孔102bより下方に達している。
【0058】
この昇降部材121は、電動送風機31が運転されるに伴い排気筒101を流通する気流によって上昇される。この場合、電動送風機31が弱モードで運転された状態で生成される気流によって、昇降部材121が上昇位置に達するように、昇降部材121の重量と、受圧部122により生成される昇降部材121に対する気流による押上げ力との兼ね合いが設定されている。なお、前記上昇位置は次に説明する長孔124と突部125により規定される。同様に、昇降部材121の下降位置も長孔124と突部125により規定される。
【0059】
昇降部材121の昇降動作と仕切り手段111の外周径の変化を連動させるために図7等に示す連動手段127が採用されている。
【0060】
つまり、円筒部102に脚部123と同数の長孔124が開けられている。長孔124は、一次フィルタ104より下方に位置されていて、上下方向に延びている。この長孔124は円筒部102の内側から脚部123で塞がれている。各脚部123の下部に長孔124を通って円筒部102の外部に突出する突部125が夫々突設されている。これら突部125にわたって押上げ部材例えばリング126がねじ止め等により固定されている。リング126の内外径は何れも円筒部102より大きく、このリング126の外周縁は仕切り手段111の骨部材112に下側から接触されている。
【0061】
又、脚部123の下端部123aは突部125より下側に延びている。この下端部123aは、図4に示すように昇降部材121が上昇位置に達して保持された状態で、長孔124を塞ぐことができる長さを有している。
【0062】
次に、一実施形態の電気掃除機11の動作を説明する。
【0063】
まず、掃除作業の準備として、使用者は集塵装置26を掃除機本体13の取付け部33に取付ける。このとき、集塵装置26の下部を取付け開口76から下方へ挿入して、集塵カップ81の底蓋87及びカップ本体82の下端部を取付け部33の凹部66に嵌合させるとともに、集塵装置26を掃除機本体13の本体ケース25に図示しない係脱機構で固定する。
【0064】
この状態で、集塵カップ81の入口86と壁部34の吸込み口72とが気密に接合されると共に、集塵カップ81の出口92と本体ケース25の開口部47とが気密に接合される。そして、以上のように固定された集塵装置26のカップ本体82の両側部は、掃除機本体13の露出口69に視認可能に露出される。
【0065】
更に、使用者は、吸塵風路部材12の接続管部15を吸込み接続部68に接続すると共に、必要に応じて吸塵ホース16の手元操作部17に延長管18を接続し、更に、延長管18の先端部に吸込み口体19を接続する。なお、以上説明した一連の準備作業は、集塵装置26が既に掃除機本体13に取付けられていると共に、吸込み接続部68に吸塵風路部材12が既に接続されている場合は、不要である。
【0066】
この後、使用者は電源コードを本体ケース25から引出して図示しないコンセントに接続した上で、把持部21を把持し、所望の設定ボタン22を操作するとともに、吸込み口体19を被掃除面に沿って移動させる。設定ボタン22の操作により、制御手段36が、操作された設定ボタン22に対応した運転モード(強モード、弱モード等)で電動送風機31を駆動させる。
【0067】
電動送風機31の駆動により生じた負圧は、風路部材54及び開口部47を経由して、集塵装置26の出口92から集塵装置26の内部に波及する。これに伴い、昇降部材121が吸上げられて、この部材の受圧部122が円筒部102の排気口102aの上方に離れて、この排気口102aが開かれる。したがって、円筒部102の排気口102aから出口92に向けて流れる空気の圧力で昇降部材121の受圧部122が更に押上げられ、昇降部材121は図4に示した上昇位置まで上昇される。
【0068】
このとき、昇降部材121の上昇動作に連動して仕切り手段111の外周径が大きくなる。つまり、昇降部材121の上昇により、突部125を介してリング126が上昇するので、このリング126で仕切り手段111の各骨部材112が押上げられて、仕切り手段111の先端縁111aが上方に変位するように枢軸114を支点に仕切り手段111が上向きに回動される。これに伴い、仕切り手段111が拡径されて、その先端縁111aが円筒部102の高さ方向中間位置の内周面に接する。これにより、排気筒101の円筒部102の内部が、仕切り手段111を境にこれより上側の分離室81aと、仕切り手段111を境にこれより下側の集塵室81bとに仕切られる。
【0069】
こうした昇降部材121及び仕切り手段111の動作は、弱運転モードで電動送風機31が駆動されたときに実現されるので、この運転モードよりも吸塵力が強い強運転モードで電動送風機31が駆動されたときにも、当然に実現される。なお、既述のように上昇する昇降部材121は、突部125が長孔124の上端に接することで上昇位置に保持される。
【0070】
更に、既述のように昇降部材121が上昇されるに伴って、集塵装置26の入口86から吸込み口72を経由して吸塵風路部材12に波及する。このため、吸込み口体19が有した図示しない吸込み開口から被掃除面の塵が空気と共に吸込まれ、吸塵風路部材12で導かれて集塵装置26にその入口86を通って吸込まれる。
【0071】
集塵装置26に吸込まれた含塵空気はカップ本体82の分離室81a内を旋回する。これにより、比較的質量が大きい粗塵等は、空気から遠心分離されて、分離室81a内をカップ本体82の上部内周面に沿って旋回する。これに対して、比較的質量が小さい塵及び空気は、分離室81a内を排気筒101の一次フィルタ104の周囲に沿って旋回しつつ、一次フィルタ104によるろ過作用を受けて排気筒101の円筒部102内に流入する。このため、粗塵から分離されるとともに空気中に含まれた細塵のうち、比較的大きい細塵が一次フィルタ104に捕捉される。
【0072】
こうして含塵空気は集塵装置26において遠心力によって塵と空気とに分離される。粗塵から分離されるとともに比較的小さい細塵を含んだ空気は、排気室26a内で二次フィルタ93を流通するので、その際に、比較的小さい細塵が二次フィルタ93に捕捉される。
【0073】
二次フィルタ93でろ過された空気は、出口92を通り、更に、開口部47及び風路部材54を経由して電動送風機31に吸込まれる。電動送風機31に吸込まれた空気は、電動送風機31の内部を通過して排気風となり、電動送風機31の外部に排出された後に、排気口43を通って本体ケース25の外部に放出される。
【0074】
掃除中、つまり、電動送風機31の運転中、その運転モードが変更されることがある。この場合でも、集塵カップ81を通過する気流により、昇降部材121は上昇位置に保持される。このため、運転モードが、強モードから弱モードに変更された場合でも、この逆に変更された場合でも、それに伴って昇降部材121が上下動されることはない。
【0075】
このように掃除中、仕切り手段111の径が最大に広げられた状態に維持されるので、分離室81aと集塵室81bとが仕切られた状態が保持される。
【0076】
電動送風機31の運転モードが強モードから弱モードに変更されると、それことに伴う遠心力の低下に応じて、円筒部102の中央部側部位の負圧、言い換えれば、分離室81a内での一次フィルタ104の周囲の負圧が、円筒部102の上部内周面に近い部位の負圧に対して相対的に大きくなることがある。
【0077】
しかし、電動送風機31の運転状態で既述のように分離室81aと集塵室81bとは、互に連通しないように仕切り手段111で仕切られているので、一次フィルタ104の周囲の負圧が集塵室81bに及ぶことを、仕切り手段111で遮ることができる。しかも、この場合、仕切り手段111の先端縁111aが集塵カップ81のカップ本体82の内周面に接しているので、より確実に、一次フィルタ104の周囲の負圧が集塵室81bに及ばないようにできる。
【0078】
このため、電動送風機31を弱モードで運転したときに、集塵室81bからその上側の分離室81aの中央部に向う帰還気流が形成されないようにできる。これにより、集塵室81bに集積されている塵が分離室81aの径方向中央部に吸上げられて、一次フィルタ104に付着しないようにできる。
【0079】
これにより、一次フィルタ104での通気抵抗の増加が抑制されるに伴い、分離室81aを旋回する気流による遠心力の低下も抑制される。したがって、吸込んだ含塵空気を遠心力で塵と空気に分離する性能の低下を高い信頼性をもって抑制することが可能である。
【0080】
掃除中に電動送風機31が一時的に停止された場合、及び掃除終了のために電動送風機31の運転が停止された場合、昇降部材121の受圧部122に作用する風力は消失する。そのため、昇降部材121がその自重により下降される。この下降により、昇降部材121は、その突部125が長孔124の下端に接した下降位置に保持される。
【0081】
こうした昇降部材121の下降に追従して、仕切り手段111もその自重により、先端縁111aが下がるように枢軸114を支点として下方に回動される。そのため、図5に示すように仕切り手段111の先端縁111aが円筒部102の内周面から離れて、これらの間に分離室81aと集塵室81bとを連通する隙間Gが形成される。
【0082】
したがって、分離室81a内の塵A(図5参照)が隙間Gを通って集塵室81bに落ちて、この集塵室81bに集積される。しかも、この場合、図4に示した状態と同様に図5に示すように仕切り手段111の先端縁111aが枢軸114の下方に位置されてこの先端縁111a側程低くなるように仕切り手段111の表面が傾斜されている。このため、仕切り手段111上に溜まっている塵を、隙間Gに向けて円滑に滑落させて、集塵室81bに集積することが可能である。
【0083】
又、既述のように仕切り手段111を連動する昇降部材121は、排気筒101を通過する気流によって上昇されると共に、排気筒101を通過する気流の消失に伴い下降するので、昇降部材121を昇降させるために例えば電気的な駆動装置を必要としない。このため、集塵装置26等の構成が比較的単純である点で好ましいとともに、集塵装置26をメンテナンスする上での取扱いも容易である点で好ましい。
【0084】
掃除が終了したときなどに、カップ本体82を透視して、集塵装置26に所定量以上の塵が溜まっている、と使用者が判断した場合、使用者による塵捨てが行われる。この塵捨てにおいては、まず、掃除機本体13に対する集塵装置26の固定を解除した上で、本体ケース25から集塵装置26を上方に取出す。次に、集塵装置26を塵捨て場に運んで、この塵捨て場においてクランプ84の蓋係合部84dが底蓋87の係合部89から外れるようにクランプ84を操作する。それにより、底蓋87が支点軸88を中心に下方へ回動されて、カップ本体82の下端開口が開かれるので、集塵室81bに集積されていた塵を塵捨て場に落下させて廃棄することができる。
【0085】
又、集塵装置26の集塵室81bに塵が略満杯状態に集積された状態で、電動送風機31が強モードから弱モードで駆動された場合にも、拡径された仕切り手段111によって、集塵室81bから分離室81aへの帰還気流が形成されることがない。このため、集塵室81bの塵が一次フィルタ104に付着して、分離室81aに吸込まれた含塵空気を遠心力で塵と空気とに分離する性能が低下することを確実に防止することが可能である。
【0086】
前記一実施形態は例示であり、発明の範囲を限定することを意図していない、発明の実施形態は、発明の要旨を変更しない範囲で、祝の省略、置き換え、変更を行うことができるなど、様々な形態で実施することが可能である。
【0087】
例えば、仕切り手段111は電動送風機31が弱運転モードで運転された場合に拡径されるが、その先端縁111aは集塵カップ81が有したカップ本体82の内周面から離れていてもよい。ここで、先端縁111aは、弱運転モードで運転された電動送風機31によりカップ本体82の内周面に沿って旋回される塵が、通過することを抑制できる程度に、カップ本体82の内周面に接近していることが望ましい。このような仕切り手段を備えた構成であっても、既述の課題を解決することが可能である。
【0088】
更に、仕切り手段111は上下方向に回動して、仕切り手段111の外周径が可変されるようにしたが、これには制約されない。
【符号の説明】
【0089】
11…電気掃除機、13…掃除機本体、26…集塵装置、31…電動送風機、81…集塵カップ、81a…分離室、81b…集塵室、86…入口、101…排気筒、102…円筒部、104…一次フィルタ、111…仕切り手段、111a…仕切り手段の先端縁、114…枢軸、G…隙間、121…昇降部材、122…受圧部、123…脚部、124…長孔、125…突部、126…リング(押上げ部材)、127…連動手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動送風機、及びこの送風機の上流側に配設されるサイクロン式の集塵装置を備える電気掃除機において、
前記集塵装置が、
上部空間が含塵空気を旋回させて空気と塵とに分離する分離室をなすと共に、この分離室の下側に連続する下部空間が前記分離室で分離された塵を集積する集塵室となり、前記分離室への含塵空気の入口を有した集塵カップと、
この集塵カップを通過しようとする気流中の塵をろ過するフィルタを有し、このフィルタを前記分離室の中央部に配設して前記集塵カップに取付けられた排気筒と、
前記フィルタの下方位置で前記排気筒に取付けられ、前記電動送風機の運転状態で前記分離室と前記集塵室とを仕切るように拡径されるとともに、前記電動送風機の停止状態で前記集塵カップの内周面との間に前記分離室内の塵が前記集塵室に落ちる隙間を形成するように縮径される仕切り手段と、
を具備することを特徴とする電気掃除機。
【請求項2】
前記仕切り手段が枢軸を支点に上下方向に回動可能に前記排気筒に取付けられ、前記仕切り手段の先端縁が前記枢軸の下方に位置されてこの先端縁側程低くなるように前記仕切り手段が傾斜されていることを特徴とする請求項1に記載の電気掃除機。
【請求項3】
前記電動送風機の運転状態で前記仕切り部材の先端縁が前記集塵カップの内周面に接することを特徴とする請求項1又は2に記載の電気掃除機。
【請求項4】
前記排気筒を通過する気流によって上昇されると共に、前記排気筒を通過する気流の消失に伴い下降する昇降部材と、この昇降部材の上昇動作に前記仕切り手段を拡径させる連動手段とを、更に備えることを特徴とする請求項2又は3に記載の電気掃除機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−111187(P2013−111187A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259134(P2011−259134)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(502285664)東芝コンシューマエレクトロニクス・ホールディングス株式会社 (2,480)
【出願人】(503376518)東芝ホームアプライアンス株式会社 (2,436)
【Fターム(参考)】