説明

電気機器およびその制御プログラム

【課題】 紙葉類センサの劣化にかかわらず常に適正な紙葉類検知を可能とし、ひいては紙葉類センサの使用期間を延ばすことができる電気機器およびその制御プログラムを提供する。
【解決手段】 発光素子と受光素子との間に紙葉類が存しないときの受光素子の出力電圧が一定値となるよう、発光素子の動作電流を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、紙葉類を光学的に検知する紙葉類センサを備えた電気機器およびその制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
紙葉類を光学的に検知する紙葉類センサを備えた電気機器として、紙葉類を搬送しながらその紙葉類上に情報をプリントするプリント装置がある。
【0003】
上記紙葉類センサは、紙葉類の搬送路を挟んで相対向する発光素子と受光素子からなり、発光素子から発せられた光が受光素子に届いているか否かに応じて受光素子の出力電圧が変化する。すなわち、発光素子と受光素子との間に紙葉類が無ければ、発光素子の光が受光素子に届き、受光素子の出力電圧が受光レベルとなる。発光素子と受光素子との間に紙葉類が入ると、発光素子の光が紙葉類で遮られて受光素子に届かず、受光素子の出力電圧が非受光レベルとなる。
このような紙葉類センサを有するものとして、例えば特許文献1に記載のものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−13289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
紙葉類センサの発光素子として使用される例えば発光ダイオードには、時間経過に伴って発光量が減少していくいわゆる経年劣化がある。この経年劣化が生じたまま何もしないと、そのうち、発光素子と受光素子との間に紙葉類が入っていないにもかかわらず紙葉類ありを検知してしまう可能性がある。
【0006】
本発明の実施形態の目的は、紙葉類センサの劣化にかかわらず常に適正な紙葉類検知を可能とし、ひいては紙葉類センサの使用期間を延ばすことができる電気機器およびその制御プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態の電気機器は、紙葉類の搬送路を挟んで相対向する発光素子および受光素子により紙葉類を光学的に検知する紙葉類センサを備えたものであって、前記発光素子と前記受光素子との間に前記紙葉類が存しないときの前記受光素子の出力電圧が一定値となるよう前記発光素子の動作電流を補正する調整手段、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の一実施形態の全体的な構成を示す図。
【図2】一実施形態の制御回路を示すブロック図。
【図3】一実施形態における用紙センサおよびその周辺回路の構成を示すブロック図。
【図4】一実施形態における受光素子の時間経過に伴う出力電圧の変化を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1において、1はプリント装置で、通帳Tの出入口とステートメント用紙の出口を兼ねるフェイシア部2を前面部に有し、用紙セット部3を後面部に有する。この用紙セット部3にロール状に巻かれたサーマル用紙4がセットされる。セットされたサーマル用紙4は、先端部が第1搬送手段5によって引き出され、搬送路6aに導かれる。この搬送路6a上に、サーマルプリント部7および切断部8が配設される。
【0010】
上記第1搬送手段5に続いて第2搬送手段10が配設される。第2搬送手段10は、上記搬送路6aに繋がる搬送路6b、この搬送路6bに沿って配設された搬送ローラ対11a〜11e、出入ローラ対12、およびフィードローラ対15を有し、フェイシア部2に挿入される通帳Tの搬送を行うとともに、搬送路6aから送られるサーマル用紙4をフェイシア部2に向け搬送する。そして、搬送路6bにおける搬送ローラ対11a,11bの相互間に、24ピンのドットマトリックスヘッド9aを有するドットプリント部9が配設される。出入ローラ対12は、フェイシア部2に挿入される通帳Tの取込みを行うとともに、プリントが済んだ通帳Tやステートメント用紙をフェイシア部2の外に送り出す。
【0011】
上記第2搬送手段10のサーマル用紙導入側に、紙葉類センサとして用紙センサ28が配設される。用紙センサ28は、プリント対象の紙葉類であるサーマル用紙4を光学的に検知する。第2搬送手段10における出入ローラ対12の近傍には、紙葉類センサとして通帳センサ29が配設される。通帳センサ29は、プリント対象の紙葉類である通帳Tを光学的に検知する。
【0012】
上記サーマルプリント部7は、サーマル用紙4の搬送方向に沿う所定間隔の位置に、裏面プリント用のサーマルヘッド17、および表面プリント用のサーマルヘッド18を有する。これらサーマルヘッド17,18に対し、プラテンローラ20,21が回動可能に圧接される。サーマル用紙4は、サーマルヘッド17,18とプラテンローラ20,21で挟持搬送されながら、サーマルヘッド17,18によって両面に情報がプリントされる。上記切断部8は、ロータリーカッタ23を有し、そのロータリーカッタ23を回転によってサーマル用紙4を切断する。この切断片が、ステートメント用紙となる。このステートメント用紙は、フィードローラ対14により第2搬送手段10に送られる。
【0013】
上記プラテンローラ20,21、ロータリーカッタ23、フィードローラ対14の駆動用として、モータ25が設けられる。また、搬送ローラ対11a〜11e、出入ローラ対12、フィードローラ対15の駆動用として、モータ26が設けられる。
【0014】
このようなプリント装置1において、用紙セット部3、第1搬送手段5、およびその周辺部により、サーマル用紙4を搬送しながらそのサーマル用紙4へのプリントを行うステートメントプリンタSTが構成される。フィードローラ対15、第2搬送手段10、およびその周辺部により、通帳Tを搬送しながらその通帳Tへのプリントを行いつつ、ステートメントプリンタSTのプリント時にサーマル用紙4の搬送も行うパスブックプリンタPBが構成される。
【0015】
制御回路を図2に示す。
ステートメントプリンタSTおよびパスブックプリンタPBの制御用として制御部30が設けられ、この制御部30にステートメントプリンタSTの構成部品およびパスブックプリンタPBの構成部品がそれぞれ接続される。さらに、制御部30に上位装置31および表示部32が接続される。
【0016】
制御部30は、用紙センサ28の駆動制御用として、図3に示すセンサ回路を備える。このセンサ回路は、CPU40、制御プログラム記憶用のROM41、データ記憶用のRAM42からなるコンピュータ、およびそのCPU40に接続されたD/A(ディジタル/アナログ)コンバータ43を有する。D/Aコンバータ43は、用紙センサ28に対する動作電流設定用の直流電圧をCPU40からの指令に応じて出力するとともに、用紙判定用の基準電圧VsをCPU40からの指令に応じて出力する。動作電流設定用の直流電圧は、オペアンプ44で増幅され、かつ抵抗45を介して、NPN型トランジスタ46のベース・エミッタ間に印加される。
【0017】
用紙センサ28は、サーマル用紙4が搬送される搬送路6bを挟んで相対向する発光素子たとえば発光ダイオード28aおよび受光素子たとえばフォトトランジスタ28bからなる。発光ダイオード28aのアノードは直流電圧5Vの正側端子に接続され、発光ダイオード28aのカソードは上記トランジスタ46のコレクタ・エミッタ間および抵抗47を介してアースされる。フォトトランジスタ28bのコレクタは抵抗48を介して直流電圧5Vの正側端子に接続され、フォトトランジスタ28bのエミッタはアースされる。このフォトトランジスタ28bのコレクタに生じる電圧が、フォトトランジスタ28bの出力電圧Vとして、比較器49の負側入力端に入力されるとともに、CPU40に供給される。
【0018】
比較器49の正側入力端には、上記CPU40から出力される基準電圧Vsが入力される。また、比較器49の出力端が抵抗50を介して直流電圧3.5Vの正側端子に接続され、その出力端と抵抗50との相互接続点がCPU40に接続される。比較器49は、フォトトランジスタ28bの出力電圧Vと基準電圧Vsとを比較し、出力電圧Vが基準電圧Vsより高いとき、サーマル用紙4が存する旨の低レベルの電圧信号を出力する。
【0019】
そして、CPU40は、ROM41内の制御プログラムに基づく主要な機能として、次の(1)(2)の手段を有する。
(1)発光ダイオード28aとフォトトランジスタ28bとの間にサーマル用紙4が存しないときのフォトトランジスタ28bの出力電圧Vが一定値Vaとなるよう、発光ダイオード28aの動作電流を補正する調整手段。発光ダイオード28aとフォトトランジスタ28bとの間にサーマル用紙4が存しない状況として、例えば、サーマル用紙4が第2搬送手段10に給紙されない運転待機時(アイドル状態ともいう)がある。
【0020】
(2)上記調整手段による動作電流の補正値が許容最大値に達した場合に、用紙センサ28が寿命切れである旨を上記表示部32の表示により報知する報知手段。
【0021】
つぎに、用紙センサ28の動作および調整について説明する。
CPU40からD/Aコンバータ43への指令により、D/Aコンバータ43から動作電流設定用の直流電圧が出力される。この出力電圧は、オペアンプ44で増幅されてトランジスタ46のベース・エミッタ間に印加される。トランジスタ46は、印加されるベース・エミッタ間電圧に応じた導通度で導通し、その導通度に応じた動作電流が発光ダイオード28aに流れる。これにより、発光ダイオード28aが発光する。
【0022】
発光ダイオード28aとフォトトランジスタ28bとの間にサーマル用紙4が存しないとき、発光ダイオード28aから発せられた光がフォトトランジスタ28bに届き、フォトトランジスタ28bがオンする。このオンによりフォトトランジスタ28bの出力電圧Vが基準電圧Vs以下に低下し、比較器49の出力が高レベルとなる。
【0023】
発光ダイオード28aとフォトトランジスタ28bとの間にサーマル用紙4が入ると、発光ダイオード28aから発せられた光がフォトトランジスタ28bに届かず、フォトトランジスタ28bがオフする。このオフにより、フォトトランジスタ28bの出力電圧Vが上昇して基準電圧Vsより高くなり、比較器49の出力が低レベルとなる。
【0024】
発光ダイオード28aには、図4に破線で示すように、時間経過に伴って発光量が減少していく経年劣化がある。この経年劣化が生じたまま何もせずに用紙センサ28の使用が続くと、そのうち、発光ダイオード28aとフォトトランジスタ28bとの間にサーマル用紙4が入っていないにもかかわらずフォトトランジスタ28bがターンオフし、そのフォトトランジスタ28bの出力電圧Vが上昇して比較器49の出力が低レベルとなり、紙葉類ありの誤検知を生じてしまう。この誤検知は、装置本体の誤動作となって現れる。この誤動作に対するユーザやサービスマンの保守作業に際しては、用紙センサ28の交換が必要となる。
【0025】
一方、CPU40は、サーマル用紙4が第2搬送手段10に存しない運転待機時、フォトトランジスタ28bの出力電圧Vを監視し、その出力電圧Vが図4に示すように一定値Vaとなるよう、D/Aコンバータ43に対し出力する動作電流設定用の直流電圧を補正する。
【0026】
例えば、発光ダイオード28aの発光量が経年劣化により減少すると、フォトトランジスタ28bの導通度が低下し、そのフォトトランジスタ28bの出力電圧Vが上昇方向に変化する。このとき、CPU40は、出力電圧Vの上昇分を抑えるべく、動作電流設定用の直流電圧を上昇方向に補正する。動作電流設定用の直流電圧が上昇方向に補正されると、トランジスタ46の導通度が増して発光ダイオード28aの動作電流が増大し、発光ダイオード28aの発光量が増加する。この発光量の増加により、フォトトランジスタ28bの導通度が上昇し、そのフォトトランジスタ28bの出力電圧Vの上昇分が抑制される。
【0027】
こうして、発光ダイオード28aの経年劣化による発光量の減少が補われ、誤検知が防止される。しかも、誤検知を防止できることにより、用紙センサ28をあわてて交換する必要がなくなり、用紙センサ28の使用期間(寿命)を延ばすことができる。これは、保守・点検・修理にかかるコストを低減することにつながる。
【0028】
また、CPU40は、上記調整の繰り返しによって発光ダイオード28aの動作電流(=動作電流設定用の直流電圧)が予め定められている許容最大値に達した場合には、それ以上の調整は不可能であることから、用紙センサ28が寿命切れである旨を表示部32の表示により報知する。この報知を知ったユーザやサービスマンは、寿命切れの用紙センサ28を新しいものと直ちに交換することができる。
【0029】
なお、上記実施形態では、用紙センサ28の経年劣化を例に説明したが、経年劣化にかかわらず、他の劣化についても同様に対応可能である。また、用紙センサ28の調整についてのみ説明したが、通帳センサ29の調整についても同様に実施可能である。さらに、ステートメントプリンタSTおよびパスブックプリンタPBからなるプリント装置を例に説明したが、これに限らず、複写機やファクシミリ装置など、紙葉類を光学的に検知する紙葉類センサを有するものであれば、他の電気機器にも同様に適用可能である。
【0030】
その他、上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、書き換え、変更を行うことができる。これら実施形態や変形は、発明の範囲は要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0031】
4…サーマル用紙、5…第1搬送手段、10…第2搬送手段、T…通帳、ST…ステートメントプリンタ、PB…パスブックプリンタ、28…用紙センサ(紙葉類センサ)、28a…発光ダイオード(発光素子)、28b…フォトトランジスタ(受光素子)、29…通帳センサ、30…制御部、32…表示部、40…CPU、41…ROM、42…RAM、43…D/Aコンバータ、44…オペアンプ、46…NPN型トランジスタ、49…比較器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉類の搬送路を挟んで相対向する発光素子および受光素子により紙葉類を光学的に検知する紙葉類センサを備えた電気機器において、
前記発光素子と前記受光素子との間に前記紙葉類が存しないときの前記受光素子の出力電圧が一定値となるよう前記発光素子の動作電流を補正する調整手段、
を備えることを特徴とする電気機器。
【請求項2】
前記調整手段による動作電流の補正値が許容最大値に達した場合に、前記紙葉類センサが寿命切れである旨を報知する報知手段、
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の電気機器。
【請求項3】
前記調整手段は、前記紙葉類が前記搬送路に存しない運転待機時における前記受光素子の出力電圧が一定値となるよう前記発光素子の動作電流を補正する、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電気機器。
【請求項4】
前記紙葉類は、通帳またはサーマル用紙である、
ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の電気機器。
【請求項5】
前記発光素子は発光ダイオードであり、前記受光素子はフォトトランジスタである、
ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の電気機器。
【請求項6】
紙葉類の搬送路を挟んで相対向する発光素子および受光素子により紙葉類を光学的に検知する紙葉類センサ、およびこの紙葉類センサを駆動制御するコンピュータを備えた電気機器において、
前記コンピュータに、
前記発光素子と前記受光素子との間に前記紙葉類が存しないときの前記受光素子の出力電圧が一定値となるよう前記発光素子の動作電流を補正する機能、
を実現させることを特徴とする電気機器の制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−179859(P2012−179859A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45504(P2011−45504)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】