説明

電気機器の絶縁劣化診断装置

【課題】 現場に出向くことなく活線状態のままで電気機器の絶縁劣化を検出することができる電気機器の絶縁劣化診断装置を提供する。
【解決手段】 一台の商用電源1に並列に接続した同一構成の二台の遮断器5,6と、前記商用電源1が供給する商用電流を利用するとともに、線路3,4に重畳されるノイズに起因して各遮断器5,6に流れる漏洩電流のノイズ成分を相殺して前記各電気機器の絶縁劣化に起因する絶縁劣化電流成分を検出する絶縁劣化電流検出手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気機器の絶縁劣化診断装置に関し、特に高電圧の充電部を有する同一規格の2台の遮断器、避雷器等の絶縁劣化を検出する場合に適用して有用なものである。
【背景技術】
【0002】
遮断器、避雷器、電力ケーブル等、高電圧の充電部を有する電気機器は、碍子を介して充電部を支持したり、充電部である当該機器の本体を収納するケーシング内又はシースに絶縁油を充填する等の手段により充電部の絶縁を図っている。また、前記ケーシング又はシースは保安上の観点から、通常接地するとともに漏洩電流の管理も行っている。この漏洩電流の管理は、定期的に当該電気機器の漏洩電流を測定することにより行う。具体的には、ケーシングアース線にクランプメータを取り付け、ある一定の劣化電流成分を選択して測定している。また、メガーによる絶縁管理も行っており、この場合には当該電気機器が接続されている系統を停電してその充電部と大地との間の絶縁抵抗をメガーを用いて計測している。
【0003】
かかる、漏洩電流を用いた絶縁抵抗の管理では次のような問題がある。
1) 対象となる電気機器の系統を停電する必要がある。
2) 漏洩電流が気象条件等で変化しやすく、湿度、温度の影響を受けやすい。
3) 漏洩電流が比較的微弱なため外来ノイズに影響され易い。
4) コロナ放電現象等、常時発生する漏洩電流もあり、変化を判定する手段に特殊な解析を必要とする。
5) 継続的な監視ができないため、次の絶縁診断までに地絡事故を生起する場合がある。
【0004】
なお、漏洩電流を測定するこの種の電気機器の絶縁劣化を監視する公知技術として次の特許文献に記載する漏洩電流記録装置を挙げることができる。
【0005】
【特許文献1】特許第2679170号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術に鑑み、現場に出向くことなく活線状態のままで電気機器の絶縁劣化を検出することができる電気機器の絶縁劣化診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の第1の態様は、
各相毎に商用電源に並列に接続した電気的諸元が同一の二台の各電気機器の絶縁劣化に起因する絶縁劣化電流成分を、前記商用電源が供給する電圧・電流を利用して検出する絶縁劣化電流検出手段を有するとともに、
この絶縁劣化電流検出手段は、各電気機器の絶縁抵抗を組み込んで形成したブリッジ回路を有し、このブリッジ回路における前記絶縁抵抗の前記ブリッジ回路における不平衡に起因する電流を検出するものであることを特徴とする。
【0008】
本発明の第2の態様は、
上記第1の態様の電気機器の絶縁劣化診断装置において、
前記絶縁劣化電流検出手段は、前記ブリッジ回路の他に、このブリッジ回路の基準となる基準抵抗を有し、この基準抵抗と電気機器の絶縁抵抗とを組み込んだブリッジ回路を構成するとともに、スイッチ手段を介して選択的に何れか一方の各電気機器の絶縁抵抗が前記基準抵抗とブリッジ回路をそれぞれ構成するようにしたことを特徴とする。
【0009】
本発明の第3の態様は、
各相毎に商用電源に並列に接続した電気的諸元が同一の二台の各電気機器のシース間との静電容量を組み込んで形成したブリッジ回路を有するとともに、活線状態における前記ブリッジ回路での前記静電容量の絶縁劣化に起因する不平衡による電流を検出する電流検出手段を有することを特徴とする。
【0010】
本発明の第4の態様は、
上記第3の態様の電気機器の絶縁劣化診断装置において、
前記絶縁劣化電流検出手段は、前記ブリッジ回路の他に、このブリッジ回路の基準となる基準容量を有し、この基準容量と電気機器の静電容量とを組み込んだブリッジ回路を構成するとともに、スイッチ手段を介して選択的に何れか一方の各電気機器の静電容量が前記基準容量とブリッジ回路をそれぞれ構成するようにしたことを特徴とする。
【0011】
本発明の第5の態様は、
上記第1乃至第4の何れか一つの態様の電気機器の絶縁劣化診断装置において、
前記絶縁劣化電流検出手段に、これに流れる電流の方向を検出する電流方向検出手段を接続したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、商用電源を絶縁劣化の測定用電流の電源として利用しているので、活線状態で、しかも遠隔地で所定の測定を行うことが可能となる。すなわち、対象となる電気機器の系統を停電することなく、また作業者が現場に出向くことなく、絶縁抵抗等、絶縁劣化を表すパラメーターを継続して監視することができる。この結果、絶縁劣化の評価を適切に行うことができ、電気機器の適切な保安体制を構築することができる。
【0013】
このとき、二台の電気機器に流れる漏洩電流回路をブリッジ回路化に組むことによりノイズ成分を除去しているので、絶縁劣化の程度を正確に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。なお、本実施の形態の説明は例示であり、本発明の構成は以下の説明に限定されない。
【0015】
<第一の実施の形態>
本形態は、絶縁抵抗を利用した電気機器の絶縁劣化診断装置であり、図1は本発明の実施の形態に係る電気機器の絶縁劣化診断装置を概念的に示す説明図である。同図中、1は高圧乃至超高圧の商用電源、2は母線、3,4は母線2から分岐する線路、5,6は線路3,4の途中に介在させた電気機器で、本形態においては遮断器である。
【0016】
ここで、遮断器5,6は電気的諸元が同一の構成、すなわち絶縁抵抗や静電容量等の電気的特性が同一のものであり、母線2及び線路3,4を介して商用電源1に接続してある。また、遮断器5,6は、大地7に配設した架台8,9上に絶縁部材10,11を介して据え付けてあり、導電部であるそれぞれのケーシング5a,6aに碍子5b,6bを介して充電部である線路3,4を支持するとともに、それぞれのケーシング5a,6aがアースバー12,13を介して架台8,9に接続してある。ここで、アースバー12,13と大地7との間には可変抵抗R3,R4が接続してあり、この可変抵抗R3,R4を介して大地7に接地してある。したがって、線路3,4は碍子5b,6bの絶縁抵抗R1,R2及び可変抵抗R3,R4を介して大地7に対し絶縁されていることになる。なお、ここでR1=R2である。また、可変抵抗R3,R4はメッシュアースまでのアース線の長さにより抵抗値を調整したものでも良い。
【0017】
一方、両アースバー12,13は、電線14で接続してあり、この電線14には電流センサ15が接続してある。
【0018】
本来、電気機器の漏洩電流には有効成分の損失電流と無効成分の容量性電流に分類されるが、それぞれ特徴があり絶縁診断に利用されている。本形態では損失電流と関係がある絶縁抵抗について説明する。
【0019】
本実施の形態では、図2に等価回路を示すブリッジ回路を形成している。すなわち、絶縁抵抗R1,R2(図では母線2側の碍子5b,6bのもののみを代表的なものとし、静電容量は小さいため省略する。以下、同じ。)及び可変抵抗R3,R4がこのブリッジ回路の要素となっており、絶縁劣化により絶縁抵抗R1,R2の抵抗値の平衡が崩れた場合には電流センサ15で絶縁劣化の程度を反映した不平衡電流が検出される。オシロ装置16はこの不平衡電流の値を、その方向とともに検出する。
【0020】
なお、商用電源1は中性点抵抗RNを介して大地7に接続してある。
【0021】
かかる実施の形態において何れかの絶縁抵抗R1,R2が雷事故や経年変化で劣化した場合には、絶縁抵抗R1,R2を含むブリッジ回路において、その劣化の程度に応じた不平衡電流が流れる(ただし、前提として当該遮断器5,6の設置時に可変抵抗R3,R4は、当該ブリッジ回路の平衡条件を満足するように調整してある。)。このときの不平衡電流の値は、電流センサ15を介してオシロ装置16によりその方向とともに検出される。また、母線の相電圧を基準に抵抗成分である損失電流と容量成分である容量性電流とに分離、抽出する。したがって、遮断器5,6の絶縁劣化の程度を検出することができるとともに、電流の方向に基づき絶縁劣化が著しい遮断器5,6を特定することができる。不平衡電流の方向はその母線電圧に基づき検出する。
【0022】
ここで、母線2乃至線路3,4に乗るノイズ成分は同一であり平衡しているため、ブリッジ回路でキャンセルされて除去される。すなわち本質的にノイズ成分の影響を受けない構造となっている。
【0023】
<第二の実施の形態>
本形態も、絶縁抵抗を利用した電気機器の絶縁劣化診断装置であり、図1に示す実施の形態に係る電気機器の絶縁劣化診断装置に、ブリッジ回路における比較の基準となる基準抵抗を追加したものである。図3は本形態に係る絶縁劣化診断装置におけるブリッジ回路の等価回路である。同図中、図2と同一部分には同一番号を付し、重複する説明は省略する。
【0024】
図3に示すように、直列に接続した基準抵抗R5及び可変抵抗R6は線路17を介して母線2に接続してあり、スイッチSW1,SW2,SW3,SW4,SW5の切り替えにより絶縁抵抗R1及び可変抵抗R3の組、又は絶縁抵抗R2及び可変抵抗R4の組と選択的に接続されてそれぞれブリッジ回路を構成するようになっている。ここで、基準抵抗R5は抵抗値が既知の抵抗であり、例えば遮断器5,6の据付時等、各遮断器5,6における絶縁抵抗R1,R2の値が所定の値に保証されているとき、絶縁抵抗R1及び可変抵抗R3の組、又は絶縁抵抗R2及び可変抵抗R4の組とで形成するブリッジ回路がそれぞれ平衡状態となるように調整してある。すなわち,R1・R4=R2・R3の関係が成立している。
【0025】
通常時には絶縁抵抗R1及び可変抵抗R3の組と絶縁抵抗R2及び可変抵抗R4の組とでブリッジ回路を組むように、スイッチSW1で可変抵抗R3,R4を選択的に接続するとともにスイッチSW2,SW3をオン状態にする。同時に、スイッチSW5により電流センサ15をスイッチSW2,SW3間に接続する。
【0026】
一方、絶縁抵抗R1及び可変抵抗R3の組と基準抵抗R5及び可変抵抗R6の組とでブリッジ回路を組む場合には、スイッチSW1で可変抵抗R3,R6を選択的に接続するとともにスイッチSW2,SW4をオン状態、スイッチSW3をオフ状態にする。同時に、電流センサ15はスイッチSW5によりスイッチSW2,SW4間に接続する。
【0027】
絶縁抵抗R2及び可変抵抗R4の組と基準抵抗R5及び可変抵抗R6の組とでブリッジ回路を組む場合には、スイッチSW1で可変抵抗R4,R6を選択的に接続するとともにスイッチSW3,SW4をオン状態、スイッチSW2をオフ状態にする。同時に、電流センサ15はスイッチSW5によりスイッチSW3,SW4間に接続する。
【0028】
かかるスイッチング動作は、例えば図4に示す回路により実現し得る。同図に示すように、スイッチSW1乃至SW5は、3個の電磁開閉器のa接点(常開接点)及びb接点(常閉接点)を利用して構成してある。ここで、第一の電磁開閉器のb接点をb1、第二の電磁開閉器のb接点をb2、第三の電磁開閉器のa接点をa3として図中に示している。
【0029】
同図を参照すれば明らかな通り、何れの電磁開閉器も動作していない通常時には、b1及びb2を介して絶縁抵抗R1及び可変抵抗R3の組と絶縁抵抗R2及び可変抵抗R4の組とで構成するブリッジ回路が形成される。また、電流センサ15は、b1及びb2を介して絶縁抵抗R1及び可変抵抗R3の組と絶縁抵抗R2及び可変抵抗R4の組との間に接続される。
【0030】
一方、第二の電磁開閉器及び第三の電磁開閉器を動作させることによりb1及びa3を介して絶縁抵抗R1及び可変抵抗R3の組と絶縁抵抗R2及び可変抵抗R4の組とで構成するブリッジ回路が形成される。このとき、電流センサ15は、b1及びa3を介して絶縁抵抗R1及び可変抵抗R3の組と基準抵抗R5及び可変抵抗R6の組との間に接続される。
【0031】
さらに、第二の電磁開閉器及び第三の電磁開閉器を動作させることによりb2及びa3を介して絶縁抵抗R2及び可変抵抗R4の組と基準抵抗R5及び可変抵抗R6の組とで構成するブリッジ回路が形成される。このとき、電流センサ15は、b2及びa3を介して絶縁抵抗R2及び可変抵抗R4の組と基準抵抗R5及び可変抵抗R6の組との間に接続される。
【0032】
かかる本実施の形態において、通常時にはスイッチSW1乃至SW5の動作により絶縁抵抗R1及び可変抵抗R3の組と絶縁抵抗R2及び可変抵抗R4の組とで構成するブリッジ回路を形成して電流センサ15により不平衡電流を検出する。すなわち、第一の実施の形態と全く同様に動作する。
【0033】
一方、不平衡電流が検出されたときには、スイッチSW1乃至SW5の切り換えにより
絶縁抵抗R1及び可変抵抗R3の組と基準抵抗R5及び可変抵抗R6の組とで構成するブリッジ回路又は絶縁抵抗R2及び可変抵抗R4の組と基準抵抗R5及び可変抵抗R6の組とで構成するブリッジ回路を形成する。
【0034】
ここで、絶縁抵抗R1の絶縁抵抗値を測定する場合、先ず当該ブリッジ回路の不平衡電流が0Aとなるように可変抵抗R6を調整する。この調整でR1=R3・R5/R6の関係が成立するので、このときの可変量から絶縁抵抗R1の絶縁抵抗値を測定することができる。一方、予め定数が分かっている場合には、可変抵抗R6の抵抗値を直読できるように換算しても良い。絶縁抵抗R2の絶縁抵抗値に関しても同様に測定することができるが、この場合の式は、R2=R4・R5/R6となる。また、可変抵抗R3,R4は、絶縁抵抗R1,R2の組み合わせの時調整する。ちなみに、当該電気機器の設置時には同一であるが、機器の経年変化に伴い不揃いを生起した場合に調整する。
【0035】
なお、線路17にスイッチを設け、基準抵抗R5及び可変抵抗R6を母線2から完全に切り離すように構成しても良い。このように切り離した状態では、基準抵抗R5自体の校正を行うことができる。
【0036】
<第三の実施の形態>
本形態は、第一の実施の形態における絶縁抵抗の代わりに電力ケーブル等の静電容量を利用した電気機器の絶縁劣化診断装置である。すなわち、本明細書では電力ケーブル及びその類似品も電気機器の概念に含めて考える。本形態は前記電力ケーブル等の絶縁が劣化すると誘電率が変化する現象を利用したものであり、図5は本形態に係る電気機器の絶縁劣化診断装置を概念的に示す説明図である。同図において図1と同一部分には同一番号を付し重複する説明は省略する。
【0037】
本形態において、大地容量C1,C2とは、充電部である例えば電力ケーブル18,19とシース18c、19cとの間の容量等(図では電力ケーブル18,19とシース18c、19cとの間の静電容量のみを代表的なものとして表示する。以下、同じ。)を意味する。また、本形態では可変抵抗R3,R4とともに可変コイルL3,L4を設けてある。ここで、可変コイルL3,L4は同一仕様であるため、当該電気機器の設置時には同一容量となっている。また、可変コイルL3,L4は当該ブリッジ回路の平衡用であるため、平衡しているときには不要である。かくして、本形態では、図6に等価回路を示すマクスウェルブリッジ回路を形成する。すなわち、静電容量C1,C2及び可変コイルL3,L4がこのブリッジ回路の追加的な要素となっており、絶縁劣化により静電容量C1,C2の容量値の平衡が崩れた場合には電流センサ15で絶縁劣化の程度を反映した不平衡電流が検出される。オシロ装置16はこの不平衡電流の値を、その方向とともに検出する。
【0038】
なお、商用電源1は中性点抵抗RNを介して大地7に接続してある。
【0039】
かかる実施の形態において何れかの静電容量C1,C2が劣化した場合には、静電容量C1,C2を含むブリッジ回路において、その劣化の程度に応じた不平衡電流が流れる。この不平衡電流の値は、電流センサ15を介してオシロ装置16によりその方向とともに検出される。また、当該母線の相電圧を基準に抵抗成分である損失電流と容量成分である容量性電流とに分離して抽出する。したがって、遮断器5,6の絶縁劣化の程度を検出することができるとともに、電流の方向に基づき絶縁劣化が著しい遮断器5,6を特定することができる。不平衡電流の方向はその位相に基づき検出する。
【0040】
ここで、母線2乃至線路3,4に乗るノイズ成分は同一であり、平衡しているため、ブリッジ回路でキャンセルされて除去される。すなわち本質的にノイズ成分の影響を受けない構造となっている。
【0041】
なお、本形態における平衡条件は、R1・R4=R2・R3及び(L4/C1)=(L3/C2)である。
【0042】
<第四の実施の形態>
本形態も、静電容量を利用した電気機器の絶縁劣化診断装置であり、図7に示す実施の形態に係る電気機器の絶縁劣化診断装置に、ブリッジ回路における比較の基準を追加したものである。すなわち、図3の可変抵抗R6を直列に接続した可変抵抗R6と基準コイルL6で置き換えたものである。そこで、図3及び図7と同一部分には同一番号を付し、重複する説明は省略する。
【0043】
かかる本実施の形態において、通常時にはスイッチSW1乃至SW5の動作により静電容量C1及び可変抵抗R3の組と静電容量C2及び可変抵抗R4の組とで構成するブリッジ回路を形成して電流センサ15により不平衡電流を検出する。
【0044】
一方、不平衡電流が検出されたときには、スイッチSW1乃至SW5の切り換えにより
静電容量C1及び可変抵抗R3の組と基準抵抗R5及び可変コイルL6の組とで構成するブリッジ回路又は静電容量C2及び可変抵抗R4の組と基準抵抗R5及び可変コイルL6の組とで構成するブリッジ回路を形成する。
【0045】
ここで、静電容量C1の静電容量値は次のようにして測定することができる。すなわち、先ず当該ブリッジ回路の不平衡電流が0Aとなるように可変コイルL6を調整する。このとき、当該ブリッジ回路の平衡条件が成立することでC1=L6/(R3・R5)となる。したがって、このときの可変コイルL6の可変量から静電容量C1の静電容量値を特定することができる。なお、このときには同時に、R1=(R3・R5)/R6も成立している。一方、予め定数が分かっている場合には、可変コイルL6のコイル容量から直読できるよう換算しても良い。静電容量C2の静電容量値に関しても同様に測定することができるが、この場合の式は、C2=L6/(R4・R5)、R2=(R4・R5)/R6
となる。また、可変コイルL6は、静電容量C1,C2の組み合わせの時調整する。ちなみに、当該電気機器の設置時には同一であるが、機器の経年変化伴い不揃いを生起した場合に調整する。
【0046】
なお、線路17にスイッチを設け、基準抵抗R5及び可変コイルL6を母線2から完全に切り離すように構成しても良い。このように切り離した状態では、基準抵抗R5自体の校正を行うことができる。
【0047】
<その他の実施の形態>
上記実施の形態では電流センサ15の出力信号をオシロ装置16で電流の方向も含めて検出するようにしたが、これは電流値のみを検出するようにしても良い。不平衡電流の方向を検出することはできないが、その大きさを検出することによって絶縁劣化の程度を検出することはできるからである。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、送配電系統における遮断器等の電気機器の監視システムに関する産業分野で利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の第一の実施の形態に係る電気機器の絶縁劣化診断装置を概念的に示す説明図である。
【図2】図1に示す装置の等価回路を示す回路図である。
【図3】本発明の第二の実施の形態に係る電気機器の絶縁劣化診断装置の等価回路を示す回路図である。
【図4】スイッチSW1乃至SW4の具体的構成とともに図3に示す等価回路の詳細を示す回路図である。
【図5】本発明の第三の実施の形態に係る電気機器の絶縁劣化診断装置を概念的に示す説明図である。
【図6】図5に示す装置の等価回路を示す回路図である。
【図7】本発明の第四の実施の形態に係る電気機器の絶縁劣化診断装置の等価回路を示す回路図である。
【符号の説明】
【0050】
1 商用電源
2 母線
3,4 線路
5,6 遮断器
7 大地
8,9 架台
15 電流センサ
18,19 電力ケーブル



【特許請求の範囲】
【請求項1】
各相毎に商用電源に並列に接続した電気的諸元が同一の二台の各電気機器の絶縁劣化に起因する絶縁劣化電流成分を、前記商用電源が供給する電圧・電流を利用して検出する絶縁劣化電流検出手段を有するとともに、
この絶縁劣化電流検出手段は、各電気機器の絶縁抵抗を組み込んで形成したブリッジ回路を有し、このブリッジ回路における前記絶縁抵抗の前記ブリッジ回路における不平衡に起因する電流を検出するものであることを特徴とする電気機器の絶縁劣化診断装置。
【請求項2】
請求項1の電気機器の絶縁劣化診断装置において、
前記絶縁劣化電流検出手段は、前記ブリッジ回路の他に、このブリッジ回路の基準となる基準抵抗を有し、この基準抵抗と電気機器の絶縁抵抗とを組み込んだブリッジ回路を構成するとともに、スイッチ手段を介して選択的に何れか一方の各電気機器の絶縁抵抗が前記基準抵抗とブリッジ回路をそれぞれ構成するようにしたことを特徴とする電気機器の絶縁劣化診断装置。
【請求項3】
各相毎に商用電源に並列に接続した電気的諸元が同一の二台の各電気機器のシース間との静電容量を組み込んで形成したブリッジ回路を有するとともに、活線状態における前記ブリッジ回路での前記静電容量の絶縁劣化に起因する不平衡による電流を検出する電流検出手段を有することを特徴とする電気機器の絶縁劣化診断装置。
【請求項4】
請求項3の電気機器の絶縁劣化診断装置において、
前記絶縁劣化電流検出手段は、前記ブリッジ回路の他に、このブリッジ回路の基準となる基準容量を有し、この基準容量と電気機器の静電容量とを組み込んだブリッジ回路を構成するとともに、スイッチ手段を介して選択的に何れか一方の各電気機器の静電容量が前記基準容量とブリッジ回路をそれぞれ構成するようにしたことを特徴とする電気機器の絶縁劣化診断装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか一つの電気機器の絶縁劣化診断装置において、
前記絶縁劣化電流検出手段に、これに流れる電流の方向を検出する電流方向検出手段を接続したことを特徴とする電気機器の絶縁劣化診断装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−93487(P2007−93487A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−285501(P2005−285501)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】