説明

電気機器及び給電システム

【課題】給電装置に近接させなくても効率よく給電を行えるようにする。
【解決手段】受電電極11は、モバイル装置1を携帯している人体3と容量結合し、給電装置2によって誘起された人体周りの電界の作用を受ける。電力変換部12は、受電電極11に作用した電界から直流電圧を生成し、充電回路13を介してバッテリ14を充電する。電力変換部12は、コイル101と、受電電極11に接続した電極102とより構成される電圧生成回路100をコイル101を直列接続した形態で二つ備える。また、電力変換ユニット121は、直接接続した二つのコイル101の共振周波数を設定するための第1コンデンサ110と、直接接続した二つのコイル101の両端に生じる交流を直流化する整流回路を形成するダイオード120と第2コンデンサ130とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モバイル装置等の電気機器に非接触で電力を供給する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
非接触で電力を供給する技術としては、給電装置から被給電装置に交流磁束や電磁波を印加し、被給電装置において印加された交流磁束や電磁波をコイル等を用いて電力に変換して使用する技術が知られている(たとえば、特許文献1、2)。
【特許文献1】特開2000-50534号公報
【特許文献2】特開2007-18210号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記交流磁束や電磁波を用いて給電を行う技術によれば、給電装置と被給電装置を充分に近接させないと、効率よく給電を行えないという問題があった。
そこで、本発明は、給電装置と被給電装置をさほど近接させなくても、非接触で効率よく給電を行えるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題達成のために、本発明は、電気機器に受電電極と、前記受電電極に接続し、前記受電電極に印加される交流電界を電力に変換する電力変換部とを備えたものである。
【0005】
ここで、前記電力変換部は、コイルと、前記受電電極に接続した、前記コイルに当該コイルの軸方向に重ねて配置された電極と、前記コイルの両端間に生じる交流を、前記電力として用いる直流に整流する整流部とを含めて構成する。または、直列接続された複数のコイルと、前記複数のコイルの各々に対応して、各々設けられた、前記受電電極に接続し対応するコイルに当該コイルの軸方向に重ねて配置された、複数の電極と、前記直列接続した複数のコイルの両端間に生じる交流を、前記電力として用いる直流に整流する整流部とより構成するようにしてもよい。
【0006】
このような電気機器によれば、交流電界の発生空間内に受信電極を位置させるだけで、電力を効率よく発生することができる。したがって、電気機器を直接給電装置に近接させずとも、たとえば、電気機器の受信電極を、給電装置において交流電界を発生させた空間内に位置させるだけで、当該電気機器に効率良く給電を行うことができるようになる。
さて、ここで、以上のような電気機器には、複数の前記電力変換部を、各電力変換部の整流部の出力を直列接続した形態で備えるようにしたり、複数の前記電力変換部を、各電力変換部の整流部の出力を並列接続した形態で備えるようにして、出力電圧や出力電流を、電力変換部を単独で備える場合に比べ増大させるようにしてもよい。
【0007】
また、以上の電気機器、給電システムにおいて前記給電媒体は人体であってよい。
また、以上の各電気機器を用いた給電システムは、より具体的には、当該電気機器と、当該電気器の前記受信電極が容量結合する、導電性ある給電媒体に容量結合し当該給電媒体に交流電圧信号を印加して当該給電媒体周りに電界を誘起する給電装置とより構成することができる。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、本発明によれば、給電装置と被給電装置をさほど近接させなくても、非接触で効率よく給電を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を説明する。
図1aに、本実施形態に係る給電システムの構成を示す。
図示するように、給電システムは、人間によって携帯されるモバイル装置1と、モバイル装置1に人体3を介して給電を行う給電装置2とを有する。
そして、給電装置2は、交流電圧信号を生成する発振器21、発振器21が生成した交流電圧信号を増幅して給電電極23に印加する増幅器22とを有している。ここで、給電電極23は、給電電極23に接近した人体3と非接触で容量結合して、交流信号を人体3に印加し、人体周りに電界を誘起する。
【0010】
一方、モバイル装置1は、受電電極11、電力変換部12、充電回路13、バッテリ14、電源回路15、機能部16とを有している。
そして、このようなモバイル装置1の構成において、受電電極11は、モバイル装置1を携帯している人体3と非接触で容量結合し、人体周りの電界の作用を受ける。電力変換部12は、受電電極11に作用した電界から直流電圧を生成し、充電回路13は、電力変換部12が生成した直流電圧による電流を用いてバッテリ14を充電し、電源回路15は、バッテリ14の電力を用いて、機能部16で必要とする各種電圧の電源を生成する。そして、機能部16は、電源回路15が生成した電源を用いて動作し、所定の機能を果たす。
【0011】
ここで、本実施形態に係る給電システムによれば、以上のように給電装置2とモバイル装置1が動作するので、たとえば、図1bに示すように、モバイル装置1を携帯したユーザが、改札ゲートなどに設置された給電電極23に手を接近させただけで、給電装置2からモバイル装置1に給電することができるようになる。
【0012】
さて、図1aに戻り、モバイル装置1の電力変換部12は、受電電極11を各々入力INに接続した複数の電力変換ユニット121の正負(+-)の出力を直列接続した構成を有している。ここで、この電力変換部12の構成を図2aに示す。
図示するように、電力変換ユニット121は、コイル101とコイル101に近接配置した電極102とより構成される電圧生成回路100を二つ備えており、二つの電圧生成回路100のコイル101は直列に接続される。また、二つの電圧生成回路100の電極102は、電力変換ユニット121の入力INを介して受電電極11に接続される。
【0013】
また、電力変換ユニット121は、直接接続した二つのコイル101の共振周波数を給電装置2の発振器21の生成する交流電圧信号の周波数に設定するための第1コンデンサ110と、直接接続した二つのコイル101の両端に生じる交流を直流化する整流回路を有し、この整流回路は、ダイオード120と第2コンデンサ130とより構成され、この整流回路の出力が電力変換ユニット121の正負(+-)の出力となる。
【0014】
なお、電力変換部12を構成するn個の電力変換ユニット121の直列接続は、i(iは1から n-1の整数)番目の電力変換ユニット121の負-の出力をi+1番目の電力変換ユニット121の正+の出力に接続することにより行われる。そして、1番目の電力変換ユニット121の正+の出力と、n番目の電力変換ユニット121の負-の出力が電力変換部12の出力として充電回路13に接続される。
【0015】
さて、このような電力変換部12によれば、各電力変換ユニット121の各電圧生成回路100において、電極102に交流電圧が印加されると、電極102に交流が発生し、この交流に追従して、コイル101の軸方向にコイル101を貫く磁束に変化が発生し、この磁束変化に応じてコイル101に誘起電圧が生じる。そして、各電力変換ユニット121において、直列接続された二つのコイル101の両端間の交流電圧が、整流回路によって直流電圧に整流された後に出力される。そして、電力変換部12において、各電力変換ユニット121の出力する直流電圧が加算され、当該電圧による電流が充電回路13に出力され、バッテリ14に充電されることになる。なお、本発明者の実験によれば、給電電極23への5.0Vppの交流電圧信号の印加に対して、電力変換ユニット121一つでDC3.4V、22μAの電力を得ることができた。
【0016】
ここで、図2b1、b2に電圧生成回路100の第1の構成例を示す。
図示するように、電圧生成回路100は、フェライト製のコア1011が中央穴に挿入されたコイル101と、コア1011の上部の端面に固定した銅性の電極102と、電極102をコア1011の端面上に封止する比較的透磁率の大きな封止体1012を有している。ここで、電極102は導線を介して前述のように受電電極11に接続される。また、封止体1012としては、磁性粉末を混合したエポキシ樹脂などを用いることができる。
【0017】
次に、図3に電圧生成回路100の第2の構成例を示す。
本構成例は、プリント基板の導体パターンとして電圧生成回路100を形成したものであり、この構成例では、図3aに層構造を示すように、板状またはフィルム状の基材の31の上に、第1パターン層32、絶縁層33、第2パターン層34を当該順序で積層したプリント基板30を用いる。
【0018】
そして、図3bに示すように、第1パターン層32に設けた渦巻き形状を有する導電体パターンによってコイル101を形成し、第2パターン層34に、導電体パターンにより電極102を形成する。また、絶縁層には、コイル101の両端を、第1パターン層上の、コイル101の両端に接続する導線パターンに接続するための接続ビア35を形成する。ここで、電極102の導電体パターンは、図3dにプリント基板30を鉛直方向から見た配置を示すように、コイル101のパターンを覆うように形成する。
【0019】
ここで、図3dは、このようにして電圧生成回路100を形成したプリント基板30の外観を表しており、図示するように電圧生成回路100は、単一のプリント基板30に任意数形成することができる。
なお、電圧生成回路100は、以上のようにプリント基板30の導体パターンとして形成するのと同様にして半導体基板上のパターンとして形成することもできる。
以上、本発明の実施形態について説明した。
ところで、以上の実施形態では、電力変換部12を、受電電極11を各々入力INに接続した複数の電力変換ユニット121を直列に接続して構成したが、電力変換部12は、電力変換ユニット121を単独で用いるように構成してもよい。
または、電力変換部12は、図4aに示すように受電電極11を各々入力INに接続した複数の電力変換ユニット121を並列に接続して構成してもよい。なお、この場合には、電力変換部12を構成する複数の電力変換ユニット121の並列接続は、各電力変換ユニット121の正+の出力同士、負-の出力同士をそれぞれ接続することにより行われる。そして、各電力変換ユニット121の正+の出力と、各電力変換ユニット121の負-の出力を電力変換部12の出力として充電回路13に接続することになる。
【0020】
このようにすることにより、電力変換部12から充電回路13に流れる直流電流を大きさを、電力変換ユニット121を単独で用いる場合に比べ増大することができる。
また、以上の実施形態は、モバイル装置1を、充電回路13、バッテリ14、電源回路15を省略し、電力変換部12の出力を直接電源として機能部16を動作させるように構成してもよい。
また、以上の実施形態に係る給電システムは、給電装置2を、モバイル装置1に信号伝送を行う送信装置として構成するようにしてもよい。
すなわち、この場合には、給電システムを、図4bに示すように、人間によって携帯されるモバイル装置1と、モバイル装置1に人体3を介した給電と信号送信を行う送信装置4とを有する。
【0021】
そして、送信装置4は、モバイル装置1に送信する信号を出力する送信信号処理部41、送信信号処理部41から出力された信号をAM変調する変調器42、AM変調器が変調した信号を増幅して給電電極23に印加する増幅器22とを有している。
一方、モバイル装置1は、受電電極11、電力変換部12、充電回路13、バッテリ14、電源回路15、機能部16、復調器17とを有している。
そして、モバイル装置1において、受電電極11は、モバイル装置1を携帯している人体3と容量結合し、人体周りの電界の作用を受ける。電力変換部12は、受電電極11に作用した電界から直流電圧を生成し、充電回路13は、電力変換部12が生成した直流電圧による電流を用いてバッテリ14を充電し、電源回路15は、バッテリ14の電力を用いて、機能部16で必要とする各種電圧の電源を生成する。復調器17は、電源回路15が生成した電源を用いて動作し、受電電極11の出力より送信装置4が送信した信号を復調する。そして、機能部16は、電源回路15が生成した電源を用いて動作し、復調器17が復調した信号を受信し、受信した信号に対して所定の処理を行う。
【0022】
以上、本発明の実施形態について説明した
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係る給電システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係る給電システムの電力変換ユニットの構成を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る電圧生成回路の他の構成例を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る給電システムの他の構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0024】
1…モバイル装置、2…給電装置、3…人体、4…送信装置、11…受電電極、12…電力変換部、13…充電回路、14…バッテリ、15…電源回路、16…機能部、17…復調器、21…発振器、22…増幅器、23…給電電極、30…プリント基板、41…送信信号処理部、42…変調器、100…電圧生成回路、101…コイル、102…電極、110…第1コンデンサ、120…ダイオード、121…電力変換ユニット、130…第2コンデンサ、1011…コア、1012…封止体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器であって、
受電電極と、
前記受電電極に接続し、前記受電電極に印加される交流電界を電力に変換する電力変換部とを有し、
前記電力変換部は、
コイルと、
前記受電電極に接続した、前記コイルに当該コイルの軸方向に重ねて配置された電極と、
前記コイルの両端間に生じる交流を、前記電力として用いる直流に整流する整流部とを有することを特徴とする電気機器。
【請求項2】
電気機器であって、
受電電極と、
前記受電電極に接続し、前記受電電極に印加される交流電界を電力に変換する電力変換部とを有し、
前記電力変換部は、
直列接続された複数のコイルと、
前記複数のコイルの各々に対応して、各々設けられた、前記受電電極に接続し対応するコイルに当該コイルの軸方向に重ねて配置された、複数の電極と、
前記直列接続した複数のコイルの両端間に生じる交流を、前記電力として用いる直流に整流する整流部とを有することを特徴とする電気機器。
【請求項3】
請求項1または2記載の電気機器であって、
複数の前記電力変換部を、各電力変換部の整流部の出力を直列接続した形態で備えたことを特徴とする電気機器。
【請求項4】
請求項1または2記載の電気機器であって、
複数の前記電力変換部を、各電力変換部の整流部の出力を並列接続した形態で備えたことを特徴とする電気機器。
【請求項5】
請求項1、2、3または4記載の給電システムであって、
前記給電媒体は人体であることを特徴とする給電システム。
【請求項6】
請求項1、2、3、4または5記載の電気機器と、当該電気器の前記受信電極が容量結合する、導電性ある給電媒体に容量結合し当該給電媒体に交流電圧信号を印加して当該給電媒体周りに電界を誘起する給電装置とを有することを特徴とする給電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−278616(P2008−278616A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−118415(P2007−118415)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(504256774)株式会社カイザーテクノロジー (17)
【Fターム(参考)】