説明

電気機械のロータおよびその製造方向

【課題】接着によらずに永久磁石14をロータ12に保持する。
【解決手段】電気機械10用のロータ12は、ロータ12の中心軸線18から外周側へ延びたロータディスク24と、複数の磁石保持タブ32を有する磁石支持帯30と、からなる。磁石保持タブ32は、磁石支持帯30から半径方向に突出し、かつ磁石支持帯30の全長に沿って軸方向に延びている。磁石支持帯30は、固定手段によってロータ面24に固定され、かつここから軸方向に延びている。複数の永久磁石14の各々は、磁石支持帯30において隣接する磁石保持タブ32の間に配置され、かつ磁石保持タブ32と磁石支持帯30との間で半径方向ならびに周方向に保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電気機械に関し、特に、永久磁石型電気機械のロータの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
永久磁石型電気機械は、2つの主要な構成要素、つまり、少なくとも1つの永久磁石を有するロータと、1つあるいは複数のステータ巻線を有する静止したステータと、を備えている。ある種の電気機械つまり伝統的な構成のものでは、ロータがステータの内側に位置し、ステータがロータを囲っている。一般にインサイド・アウト型電気機械と呼ばれる他の形式では、ステータがロータの内側に位置し、ロータがステータを囲っている。ロータは、電磁気力を機械的な力へ変換するための永久磁石を備えている。この永久磁石は、一般に、接着によってロータに固定されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のように接着によって永久磁石をロータに取り付ける構成では、電気機械の作動中に永久磁石が大きな負荷に晒され、永久磁石や電気機械の損傷ないし故障に至る虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一つの態様によれば、電気機械用のロータは、該ロータの中心軸線から外周側へ延びたロータディスクと、複数の磁石保持タブを有する磁石支持帯と、からなる。上記磁石保持タブは、上記磁石支持帯から半径方向に突出し、かつ上記磁石支持帯の全長に沿って軸方向に延びている。上記磁石支持帯は、固定手段によってロータ面に固定され、かつここから軸方向に延びている。複数の永久磁石の各々は、上記磁石支持帯において隣接する磁石保持タブの間に配置され、かつ該磁石保持タブと磁石支持帯との間で半径方向ならびに周方向に保持される。
【0005】
本発明の他の態様によれば、電気機械は、ステータと、該ステータと電磁気的に相互作用するロータと、を備える。上記ロータは、該ロータの中心軸線から外周側へ延びたロータディスクと、複数の磁石保持タブを有する磁石支持帯と、からなる。上記磁石保持タブは、上記磁石支持帯から半径方向に突出し、かつ上記磁石支持帯の全長に沿って軸方向に延びている。上記磁石支持帯は、固定手段によってロータ面に固定され、かつここから軸方向に延びている。複数の永久磁石の各々は、上記磁石支持帯において隣接する磁石保持タブの間に配置され、かつ該磁石保持タブと磁石支持帯との間で半径方向ならびに周方向に保持される。
【0006】
本発明のさらに他の態様によれば、電気機械におけるロータの組立方法として、環状の磁石支持帯に、該磁石支持帯から実質的に半径方向に突出する複数の磁石保持タブを形成する。そして、ロータディスクから上記磁石支持帯内へと延びる複数の機械的ファスナを介して、上記磁石支持帯の軸方向の第1端を上記ロータディスクに固定する。複数の永久磁石を上記磁石支持帯内に挿入し、隣接する磁石保持タブの間で周方向に保持させるとともに、磁石保持タブと磁石支持帯との間で半径方向に保持させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】電気機械の一実施例の断面図。
【図2】この電気機械のロータの一実施例の斜視図。
【図3】ロータの磁石支持帯の要部を示す斜視図。
【図4】ロータのロータディスクの要部を示す斜視図。
【図5】ロータの要部の断面斜視図。
【図6】ロータの異なる部分の断面斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、この発明の一実施例を図面を用いて詳細に説明する。
【0009】
図1は、電気機械10の一実施例を示している。この図1の電気機械10は、インサイド・アウト型の構成であり、複数の永久磁石14を有するロータ12がステータ16の外周側に配置されている。上記ロータ12は、電気機械10の中心軸線18を中心に回転可能であるとともに、上記中心軸線18に沿ったシャフト20を有し、かつこのシャフト20にハブ22が固定されている。図2に示すように、上記ハブ22は、シャフト20から外周側へ延びるロータディスク24を含んでいる。上記ロータディスク24は、ステータ16の一端(第1端)26側もしくは他端(第2端)28側のいずれかに配置される。ハブ22は、さらに、磁石支持帯30を含んでいる。この磁石支持帯30は、実質的に円環状(円筒状)をなし、かつシャフト20やロータディスク24と同心状となっている。図1に示すように、磁石支持帯30は、ステータ16の外周側に配置される。なお、インサイド・アウト型ではない一般的な構成の電気機械10の実施例においては、磁石支持帯30はステータ16の内周側に配置され得る。
【0010】
図3に示すように、磁石支持帯30は、該磁石支持帯30の内周面34から突出した複数の磁石保持タブ32を有する。これらの複数の磁石保持タブ32は、内周面34の周りに配列されており、かつ磁石支持帯30の一端(第1帯端)36から他端(第2帯端)38(図2参照)まで延びている。一実施例においては磁石保持タブ32は実質的に軸方向に沿って延びているが、本発明はこれに限定されず、これ以外の方向、例えば中心軸線18に対し斜めにスキューした方向であってもよい。この磁石保持タブ32は、隣接した2つの磁石保持タブ32の間に、各々の永久磁石14(図2参照)を所望の半径位置ならびに周方向位置でもって保持するように、配置されかつ構成されている。例えば、図3に示すように、各々の磁石保持タブ32は、内周面34から突出した支持部40と交差部42とからなる略T字形の断面形状を有している。永久磁石14は、隣接する支持部40の間そして内周面34と交差部42との間に挿入される。つまり隣接する支持部40が永久磁石14を周方向に保持し、内周面34と交差部42とが永久磁石14を半径方向に保持する。なお、このT字形の磁石保持タブ32は一例に過ぎず、他の形状、例えばL字形やV字形のものであってもよい。一実施例においては、磁石保持タブ32は磁石支持帯30と一体に形成されている。磁石支持帯30はロータ12のロータディスク24とは別の部品となっているので、例えば、ブローチ加工や放電加工(EDM)によって、磁石保持タブ32を効率よく形成することができる。
【0011】
図2に示すように、上記磁石支持帯30は、その第2帯端38においてロータディスク24に固定されている。一実施例においては、図3に示すように、磁石支持帯30は、その第2帯端38から軸方向に延びた複数のロータ駆動ピン44を備えている。このロータ駆動ピン44は、図4に示すようにロータディスク24に形成された相補的なロータ駆動ソケット46内に挿入可能である。これらのロータ駆動ピン44およびロータ駆動ソケット46は、磁石支持帯30をロータディスク24に対して適切に位置決めし、電気機械10の作動中にロータディスク24から磁石支持帯30へ回転エネルギが効率よく伝達されるように、構成されている。代替として、他の実施例では、ロータディスク24にロータ駆動ピン44が配置され、磁石支持帯30にロータ駆動ソケット46が配置される。一実施例においては、機械的ファスナとして複数のロータ保持ねじ48によって、磁石支持帯30とロータディスク24とが軸方向に固定されている。このロータ保持ねじ48は、図3,図4に示すように、ロータディスク24側から複数の保持ねじ孔50内へ延びている。図示するように、保持ねじ孔50は磁石保持タブ32の支持部40内に配置することができるが、他の適当な位置、例えば、隣接するロータ駆動ピン44の間、などに設けてもよい。あるいは、磁石支持帯30を、他の手段、例えば溶接などによってロータディスク24に固定することも可能である。
【0012】
一実施例においては、図5に示すように、ロータディスク24が、該ロータディスク24の内周面54から内周側へ突出した複数のロータ予圧タブ52を備えている。各々のロータ予圧タブ52は予圧ねじ用孔56を有し、この予圧ねじ用孔56を貫通して上記ロータ保持ねじ48が挿入されている。上記ロータ保持ねじ48が締め付けられると、ロータ予圧タブ52が磁石支持帯30に締付力を与える。一実施例においては、ロータ保持ねじ48をロータ予圧タブ52内に挿入するために、ロータディスク24を貫通する複数の作業孔58が設けられている。
【0013】
図6に示すように、磁石支持帯30に挿入された複数の永久磁石14は、磁石支持帯30の第1帯端36に固定された保持リング60によって、ロータ12内で軸方向に拘束される。上記保持リング60は上記第1帯端36に対し、例えば、該保持リング60を貫通して第1帯端36内へと延びる複数のリング用ねじ62によって固定される。上記保持リング60は、各永久磁石14の前端面64の少なくとも一部を横切るように、内周側へ延びており、これにより、永久磁石14の磁石支持帯30からの脱落を阻止している。
【0014】
上記のように永久磁石14をロータ12内に接着ではなく機械的に固定することによって、電気機械10の作動中に永久磁石14が受ける負荷が小さくなる。さらに、磁石支持帯30をロータ12の他の部分から別体とした構成によって、複数の支持部40の形成に際してより効果的な加工方法を利用することが可能となる。
【0015】
以上、この発明を一実施例に沿って説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0016】
10…電気機械
12…ロータ
24…ロータディスク
30…磁石支持帯
32…磁石保持タブ
48…ロータ保持ねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機械(10)のロータ(12)であって、
該ロータ(12)の中心軸線(18)から外周側へ延びたロータディスク(24)と、
上記ロータディスク(24)に固定されて該ロータディスク(24)から実質的に軸方向に延びる磁石支持帯(30)と、
複数の永久磁石(14)と
上記磁石支持帯(30)を上記ロータディスク(24)に固定する固定手段と、
を備え、
上記磁石支持帯(30)は、該磁石支持帯(30)から半径方向に突出するとともに該磁石支持帯(30)の全長に沿って軸方向に延びた複数の磁石保持タブ(32)を有し、
上記永久磁石(14)の各々は、上記磁石支持帯(30)の隣接する磁石保持タブ(32)の間にそれぞれ配置されるとともに、磁石保持タブ(32)と磁石支持帯(30)との間で半径方向ならびに周方向に拘束されていることを特徴とするロータ(12)。
【請求項2】
上記固定手段は、複数の機械的ファスナ(48)からなることを特徴とする請求項1に記載のロータ(12)。
【請求項3】
上記複数の機械的ファスナ(48)は、上記複数の磁石保持タブ(32)に設けられた複数の保持ねじ孔(50)内に延びていることを特徴とする請求項2に記載のロータ(12)。
【請求項4】
上記磁石支持帯(30)および上記ロータディスク(24)の一方に配置された複数のロータ駆動ピン(44)を備え、このロータ駆動ピン(44)は、上記磁石支持帯(30)および上記ロータディスク(24)の他方に配置された相補的な複数のロータ駆動ソケット(46)に挿入可能であることを特徴とする請求項1に記載のロータ(12)。
【請求項5】
上記固定手段は、上記磁石支持帯(30)と上記ロータディスク(24)との溶接からなることを特徴とする請求項4に記載のロータ(12)。
【請求項6】
上記複数の磁石保持タブ(32)の各々は、略T字形をなすことを特徴とする請求項1に記載のロータ(12)。
【請求項7】
上記複数の永久磁石(14)の各々は、少なくとも1つの磁石保持タブ(32)の交差部(42)によって半径方向に保持されていることを特徴とする請求項6に記載のロータ(12)。
【請求項8】
上記複数の磁石保持タブ(32)が、ブローチ加工もしくは放電加工のいずれかで形成されていることを特徴とする請求項1に記載のロータ(12)。
【請求項9】
上記ロータディスク(24)が固定されている第2帯端(38)とは反対側となる磁石支持帯(30)の第1帯端(36)に、保持リング60が固定され、該磁石支持帯(30)内において上記複数の永久磁石(14)が、上記ロータディスク(24)と上記保持リング(60)との間で軸方向に保持されていることを特徴とする請求項1に記載のロータ(12)。
【請求項10】
上記保持リング(60)は、各々の永久磁石(14)の面(64)を横切るように半径方向に延び、上記複数の永久磁石(14)の軸方向の動きを阻止していることを特徴とする請求項9に記載のロータ(12)。
【請求項11】
上記保持リング(60)は、複数のリング用ねじ(62)によって上記磁石支持帯(30)に固定されていることを特徴とする請求項9に記載のロータ(12)。
【請求項12】
上記複数の永久磁石(14)は、上記磁石支持帯(30)の内周面(54)に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のロータ(12)。
【請求項13】
ステータ(16)と、該ステータ(16)と電磁的に相互作用するロータ(12)と、からなる電気機械(10)であって、
上記ロータ(12)は、
該ロータ(12)の中心軸線(18)から外周側へ延びたロータディスク(24)と、
上記ロータディスク(24)に固定されて該ロータディスク(24)から実質的に軸方向に延びる磁石支持帯(30)と、
複数の永久磁石(14)と
上記磁石支持帯(30)を上記ロータディスク(24)に固定する複数の機械的ファスナ(48)と、
を備え、
上記磁石支持帯(30)は、該磁石支持帯(30)から半径方向に突出するとともに該磁石支持帯(30)の全長に沿って軸方向に延びた複数の磁石保持タブ(32)を有し、
上記永久磁石(14)の各々は、上記磁石支持帯(30)の隣接する磁石保持タブ(32)の間にそれぞれ配置されるとともに、磁石保持タブ(32)と磁石支持帯(30)との間で半径方向ならびに周方向に拘束されていることを特徴とする電気機械(10)。
【請求項14】
上記複数の機械的ファスナ(48)は、上記複数の磁石保持タブ(32)に設けられた複数の保持ねじ孔(50)内に延びていることを特徴とする請求項13に記載の電気機械(10)。
【請求項15】
上記複数の機械的ファスナ(48)は、上記ロータディスク(24)の複数の予圧タブ(52)を貫通して上記磁石支持帯(30)へと延びていることを特徴とする請求項13に記載の電気機械(10)。
【請求項16】
上記複数の磁石保持タブ(32)の各々は、略T字形をなすことを特徴とする請求項13に記載の電気機械(10)。
【請求項17】
上記複数の永久磁石(14)の各々は、少なくとも1つの磁石保持タブ(32)の交差部(42)によって半径方向に保持されていることを特徴とする請求項16に記載の電気機械(10)。
【請求項18】
上記複数の永久磁石(14)は、上記ステータ(16)の外周側に配置されていることを特徴とする請求項13に記載の電気機械(10)。
【請求項19】
電気機械(10)におけるロータ(12)の組立方法であって、
環状の磁石支持帯(30)に、該磁石支持帯(30)から実質的に半径方向に突出する複数の磁石保持タブ(32)を形成し、
ロータディスク(24)から上記磁石支持帯(30)内へと延びる複数の機械的ファスナ(48)を介して、上記磁石支持帯(30)の軸方向の第1端を上記ロータディスク(24)に固定し、
複数の永久磁石(14)を上記磁石支持帯(30)内に挿入し、
各々の永久磁石(14)を、隣接する上記磁石保持タブ(32)の間で周方向に保持させるとともに、上記磁石保持タブ(32)と上記磁石支持帯(30)との間で半径方向に保持させる、ことを特徴とする組立方法。
【請求項20】
上記磁石支持帯(30)の軸方向の第2端に保持リング(60)を固定することをさらに含み、これにより複数の永久磁石(14)を上記ロータディスク(24)と上記保持リング(60)との間で軸方向に保持することを特徴とする請求項19に記載の組立方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−10541(P2011−10541A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−135654(P2010−135654)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(500107762)ハミルトン・サンドストランド・コーポレイション (165)
【氏名又は名称原語表記】HAMILTON SUNDSTRAND CORPORATION
【住所又は居所原語表記】One Hamilton Road, Windsor Locks, CT 06096−1010, U.S.A.
【Fターム(参考)】