説明

電気機械的モータを有する粒子加速器並びにその動作及び製造方法

【課題】移動可能な機械的デバイスを加速チェンバー内部に配置して有する粒子加速器を提供する。
【解決手段】加速チェンバー(206)内部において所望の経路に沿って荷電粒子を導く電場システム(106)及び磁場システム(108)を含む粒子加速器(102)である。本粒子加速器はさらに、加速チェンバーの内部に配置させた機械的デバイス(280、282)を含む。この機械的デバイスは、加速チェンバー内部の別の位置まで選択的に移動される。本粒子加速器はさらに、コネクタ構成要素(456)と該コネクタ構成要素と動作可能に結合させた圧電素子(512)とを有する電気機械的(EM)モータ(290、292)を含む。このコネクタ構成要素は機械的デバイスに動作可能に取り付けられている。圧電素子を作動させたときにEMモータはコネクタ構成要素を駆動し、これにより機械的デバイスが移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載した本発明の実施形態は全般的には粒子加速器に関し、またより詳細には移動可能な機械的デバイスを加速チェンバー内部に配置して有する粒子加速器に関する。
【背景技術】
【0002】
サイクロトロンなどの粒子加速器は、様々な工業用途、医療用途及び研究用途を有することがある。例えば粒子加速器は、医学的治療、撮像及び研究での用途並びに医学関連でない別の用途を有する放射性同位体(放射性核種とも呼ぶ)を産生するために用いられることがある。放射性同位体を産生するシステムは、加速チェンバーを囲繞するマグネットヨークを有するサイクロトロンを含むのが典型的である。サイクロトロンは、互いから離間させた対向するポールトップを含むことがある。ポール間のらせん様の軌道に沿って荷電粒子を加速しかつガイドするために加速チェンバーの内部に電場及び磁場を生成することがある。放射性同位体の産生のためにサイクロトロンは、荷電粒子の粒子ビームを形成すると共に、加速チェンバーから出て標的材料を有する標的システムの方向にこの粒子ビームを導く。幾つかのケースでは標的システムを加速チェンバーの内部に設置されることがある。粒子ビームは標的材料上に入射し、これにより放射性同位体が生成される。
【0003】
粒子加速器の動作時に加速チェンバーの内部で様々な機械的デバイスを用いることが望ましい。例えば、荷電粒子から電子を引き剥がすフォイルを保持するフォイル保持体を移動させることが望ましい。さらに、所望の経路の様々な部分に沿った粒子ビームの試験のために診断用探触子を移動させることが望ましい。しかし、これらの機械的デバイスやその他の機械的デバイスは加速チェンバーの環境内で動作可能でなければならない。粒子加速器の動作時において、加速チェンバーを排気させることがあり、またその内部に大きな磁場を存在させることがある。幾つかのケースでは、機械的デバイスの磁場成分によって荷電粒子を導く役割をする磁場が乱されることがある。さらに、加速チェンバーを画定する内部表面に沿って大量の放射線が存在することがある。環境に関する上記の懸念に加えて、加速チェンバー内部の機械的デバイスは、大きな空間を要求しかつ動作が困難であることや、高い精度レベルを欠くことがある。さらに加速チェンバー内部の機械的デバイスは、真空チェンバーの外部にある電磁式アクチュエータ/モータと機械的にリンクさせることが可能である。これらのモータは、加速チェンバーの高い磁場内では有効に動作させることが不可能であり、またさらにその内部の確定(well−defined)磁場と干渉する可能性もある。このため電磁式モータは、真空フィードと通って延びる機械的構成要素によって加速チェンバー内部にある機械的デバイスと相互接続させることがある。しかしこうした機械的構成要素や真空フィードは粒子加速器の複雑性を増大させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願第20100148629号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、加速チェンバー内に有する機械的デバイスが周知の機械的デバイスと比べてより小型で、費用がより少なくかつ/または操作がより容易である粒子加速器が必要とされている。さらに、粒子加速器の操作や維持を行う要員に対する放射線被ばくを低減させた粒子加速器及び方法が必要とされている。さらに、粒子加速器の操作及び/または維持を容易にさせかつ/または放射線照射に影響されない代替的なデバイスが一般に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態では、加速チェンバー内部において所望の経路に沿って荷電粒子を導くように構成された電場システム及び磁場システムを含んだ粒子加速器を提供する。本粒子加速器はさらに、加速チェンバーの内部に配置された機械的デバイスを含む。この機械的デバイスは、加速チェンバー内部の別の位置まで選択的に移動させるように構成されている。本粒子加速器はさらに、コネクタ構成要素及び該コネクタ構成要素と動作可能に結合させた圧電素子を有する電気機械的(EM)モータを含む。このコネクタ構成要素は、機械的デバイスに動作可能に取り付けられている。このEMモータは、圧電素子を作動させたときにコネクタ構成要素を駆動させる。
【0007】
別の実施形態では、加速チェンバーを有する粒子加速器を操作する方法を提供する。本方法は、加速チェンバー内に荷電粒子の粒子ビームを提供するステップを含む。この粒子ビームは粒子加速器によって所望の経路に沿って導かれる。本方法はさらに、加速チェンバー内部で機械的デバイスを選択的に移動させるステップを含む。この機械的デバイスは、コネクタ構成要素と該コネクタ構成要素と動作可能に結合させた圧電素子とを含んだ電気機械的(EM)モータによって移動させている。このコネクタ構成要素は、機械的デバイスに動作可能に取り付けられている。このEMモータは、圧電素子を作動させたときにコネクタ構成要素を駆動させる。
【0008】
さらに別の実施形態では、加速チェンバーを有する粒子加速器を製造する方法を提供する。この粒子加速器は、加速チェンバー内部において所望の経路に沿って荷電粒子を導くように構成された電場システム及び磁場システムを含む。本方法は、加速チェンバー内部に機械的デバイスを位置決めするステップを含む。この機械的デバイスは、加速チェンバー内部の別の位置まで選択的に移動されるように構成されている。本方法はさらに、機械的デバイスに電気機械的(EM)モータを動作可能に結合させるステップを含む。このEMモータは、コネクタ構成要素と該コネクタ構成要素と動作可能に結合させた圧電素子とを有する。このコネクタ構成要素は機械的デバイスに動作可能に取り付けられており、この際にEMモータは、圧電素子を作動させたときにコネクタ構成要素を駆動し、これにより機械的デバイスを移動させるように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】一実施形態による粒子加速器のブロック図である。
【図2】一実施形態による粒子加速器の側面概要図である。
【図3】一実施形態による粒子加速器で使用し得るヨーク及びポールセクションの一部分の斜視図である。
【図4】図3のヨーク及びポールセクションのうちの引き剥がし用アセンブリをより詳細に表した拡大図である。
【図5】図3のヨーク及びポールセクションのうちの診断用探触子アセンブリをより詳細に表した拡大図である。
【図6】ヨーク及びポールセクションのうちの一実施形態によるRFチューニングアセンブリを表した拡大図である。
【図7】様々な実施形態で使用し得る電気機械的(EM)モータの分解図である。
【図8】図7のEMモータの斜視図である。
【図9】圧電素子の動きを表した図である。
【図10】様々な実施形態で使用し得るアクチュエータアセンブリを表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書で使用する場合、単数形で「a」や「an」の語を前に付けて記載した要素やステップは、これに関する複数の要素やステップも排除していない(こうした排除を明示的に記載している場合を除く)と理解すべきである。さらに、「一実施形態」に対する言及は、記載した特徴も組み込んでいる追加的な実施形態の存在を排除すると理解されるように意図したものではない。さらに特に明示的に否定する記述をしない限り、ある具体的な性状を有する1つまたは複数の構成要素を「備える(comprising)」または「有する(having)」実施形態は、当該性状を有しない追加的なこうした構成要素も含むことがある。
【0011】
図1は、一実施形態に従って形成した同位体産生システム100のブロック図である。システム100は、イオン源システム104、電場システム106、磁場システム108及び真空システム110を含む幾つかのサブシステムを有する粒子加速器102を含む。粒子加速器102は例えば、サイクロトロンとすること、またより具体的にはイソクロナス・サイクロトロンとすることがある。粒子加速器102は、加速チェンバー103を含むことがある。加速チェンバー103は粒子加速器のハウジングやその他の部分によって画定されることがあり、また排気済みの状態または条件を有する。図1に示した粒子加速器は、サブシステム104、106、108及び110のうちの少なくとも一部を加速チェンバー103内に配置させて有する。粒子加速器102の使用時において荷電粒子は、粒子加速器102の加速チェンバー103の内部に配置されるか、イオン源システム104を通して粒子加速器102の加速チェンバー103内に注入される。磁場システム108及び電場システム106は、荷電粒子の粒子ビーム112の生成の際に協働するそれぞれの場を発生させている。これらの荷電粒子は加速チェンバー103内部で加速され、所定のまたは希望する経路に沿ってガイドされる。粒子加速器102の動作時において、加速チェンバー103は真空(または、排気された)状態にあると共に大きな磁気フラックスを受けることがある。例えば加速チェンバー103内のポールトップ間の平均磁場強度は少なくとも1テスラとすることがある。さらに、粒子ビーム112の生成前における加速チェンバー103の圧力を概ね1×10-7ミリバールとすることがある。粒子ビーム112の生成後における加速チェンバー103の圧力を概ね2×10-5ミリバールとすることがある。
【0012】
さらに図1に示したようにシステム100は、抽出システム115と、標的材料116を含んだ標的システム114と、を有する。図示した実施形態では標的システム114は粒子加速器102に隣接して位置決めされている。同位体を生成するために粒子ビーム112は、粒子加速器102によって抽出システム115を通してビーム搬送経路またはビーム通路117に沿って標的システム114内に導かれ、対応する標的箇所120に配置された標的材料116上に粒子ビーム112が入射する。標的材料116に粒子ビーム112が照射されると、中性子やガンマ線からの放射が生成されることがある。代替的な実施形態ではシステム100は、加速器チェンバー103の内部に配置されるか加速器チェンバー103に直接取り付けられた標的システムを有することがある。
【0013】
システム100は、別々の標的材料116A〜Cを配置させた複数の標的箇所120A〜Cを有することがある。粒子ビーム112を異なる標的材料116上に入射させるように粒子ビーム112を基準として標的箇所120A〜Cをシフトさせるためにシフト用デバイスまたはシステム(図示せず)が用いられることがある。シフトの過程でも同様に真空を維持させることがある。別法として粒子加速器102及び抽出システム115は粒子ビーム112を1つの経路だけに沿って導くのでないことがあり、異なる各標的箇所120A〜Cごとに一意の経路に沿って粒子ビーム112を導くことがある。さらにビーム通路117は、粒子加速器102から標的箇所120まで実質的に直線的とすることがあり、あるいはビーム通路117がこれに沿った1つまたは複数の点で湾曲するまたは曲げられることがある。例えば、粒子ビーム112を別の経路に沿って導き直すようにビーム通路117に沿って位置決めしたマグネットを構成させることがある。
【0014】
システム100は、医学的な撮像、研究及び治療に関するのみならず、科学的な研究や解析など医学関連でない別の用途でも使用し得るような放射性同位体(放射性核種とも呼ぶ)を産生するように構成されている。核医学(NM)撮像や陽電子放出断層(PET)撮像などの医学的目的に使用する場合、その放射性同位体をトレーサーと呼ぶことがある。一例としてシステム100は、液体の形態をした18F−同位体、CO2の形の11C同位体、並びにNH3の形の13N同位体を作るための陽子を生成することがある。これらの同位体を作るために用いられる標的材料116は、濃縮18O水、天然の142ガス、16O水とすることがある。システム100はさらに、15Oガス(酸素、二酸化炭素及び一酸化炭素)や15Oラベルの水を産生するために陽子や重陽子を生成することもある。
【0015】
具体的な実施形態では、システム100は1-テクノロジーを用いると共に、その荷電粒子をビーム電流が概ね10〜30μAで低エネルギー(例えば、約9.6MeV)に至らせている。こうした実施形態では負の水素イオンが加速されると共に、粒子加速器102を通して抽出システム115内までガイドされる。この負の水素イオンは次いで、抽出システム115の引き剥がし用フォイル(図1では図示せず)に当たり、これにより電子対が除去されて粒子を正のイオン1+にすることがある。しかし本明細書に記載した実施形態は、別のタイプの粒子加速器やサイクロトロンにも適用可能である。例えば代替的な実施形態では、その荷電粒子を1+2+及び3He+などの正のイオンとすることがある。こうした代替的な実施形態では抽出システム115は、標的材料116の方向に粒子ビームをガイドする電場を生成する静電偏向器を含むことがある。さらに、別の実施形態ではそのビーム電流を例えば概ね200μAまでとすることがある。このビーム電流はさらに2000μA以上までとすることも可能である。
【0016】
システム100は、それぞれの構成要素が発生する熱を吸収するために冷却用流体または作用流体を別のシステムの様々な構成要素まで搬送する冷却システム122を含むことがある。システム100はさらに、技師が様々なシステム及び構成要素の動作を制御するために使用し得る制御システム118を含むことがある。制御システム118は、粒子加速器102及び標的システム114の近傍またはこれらから遠隔に配置させた1つまたは複数のユーザインタフェースを含むことがある。図1には図示していないがシステム100はさらに、粒子加速器102及び標的システム114向けの1つまたは複数の放射線及び/または磁気遮蔽を含むことがある。
【0017】
システム100はさらに、荷電粒子を所定のエネルギーレベルまで加速するように構成されることがある。例えば本明細書に記載した幾つかの実施形態は、荷電粒子を概ね18MeV以下のエネルギーまで加速する。別の実施形態ではそのシステム100は、荷電粒子を概ね16.5MeV以下のエネルギーまで加速する。具体的な実施形態ではそのシステム100は、荷電粒子を概ね9.6MeV以下のエネルギーまで加速する。さらに具体的な実施形態ではそのシステム100は、荷電粒子を概ね7.8MeV以下のエネルギーまで加速する。しかし本明細書に記載した実施形態はまた、18MeVを超えるエネルギーを有することもある。例えば実施形態によっては、100MeVを超える、500MeV以上のエネルギーを有することがある。
【0018】
より詳細には以下で検討することにするが、システム100は粒子加速器102の内部で動作するように構成された様々な機械的デバイスを含むことがある。幾つかの実施形態ではその機械的デバイスは、粒子ビーム112を生成しているときなどに加速チェンバー103内部で有効に動作することがある。このためにその機械的デバイスは、真空にある環境内で有効に動作するように構成されることがあり、大きな磁気フラックス場、高周波数及び高電圧場を受けており、かつ/または不用な放射線を大量に有している。別の実施形態では、本明細書に記載した機械的デバイスは標的システム114内で動作するように構成させることがある。
【0019】
図2は、一実施形態に従って形成したサイクロトロン200の側面図である。以下ではサイクロトロン200に関連して説明しているが、実施形態によっては別の粒子加速器及びこれに関する方法を含み得ることを理解されたい。図2に示したようにサイクロトロン200は、加速チェンバー206を囲繞するヨーク体部204を有するマグネットヨーク202を含む。代替的な実施形態ではその加速チェンバーは、ハウジングや遮蔽などマグネットヨーク以外の構成要素によって囲繞されるあるいは画定されることがある。ヨーク体部204は、その間の厚さがT1に及ぶ相対する側面208及び210を有すると共に、さらにその間の長さがLに及ぶような上側及び底側端部212及び214を有する。この例示的実施形態では、ヨーク体部204は実質的に円形の断面を有しており、またこのために、長さLがヨーク体部204の直径を示すことがある。ヨーク体部204は、鉄から製造されると共に、サイクロトロン200の動作時に所望の磁場を発生させるようなサイズ及び形状とさせることがある。
【0020】
ヨーク体部204は、その間に加速チェンバー206が画定される対向するヨークセクション228及び230を有することがある。ヨークセクション228及び230は、マグネットヨーク202の中間面232に沿って互いに隣接して位置決めされるように構成されている。図示したようにサイクロトロン200は(重力を基準とした)垂直方向に向けられ、これにより中間面232がサイクロトロン200の重量を支持する水平のプラットフォーム220と直角に延びるようにすることがある。サイクロトロン200は、ヨークセクション228及び230(及び、対応する側面210及び208のそれぞれ)の間でこれを通って水平に延びる中心軸236を有する。中心軸236は、ヨーク体部204の中心を通って中間面232と直角に延びることがある。加速チェンバー206は、中間面232と中心軸236の交点に配置された中心領域238を有する。幾つかの実施形態ではその中心領域238は加速チェンバー206の幾何学的中心の位置にある。
【0021】
ヨークセクション228と230は、加速チェンバー206内部の中間面232を横切って互いに対向するポール248と250のそれぞれを含む。ポール248及び250はポールギャップGによって互いから離間されることがある。ポール248はポールトップ252を含んでおり、またポール250はポールトップ252と対向したポールトップ254を含む。ポール248及び250とその間のポールギャップGとは、サイクロトロン200の動作時に所望の磁場が生成されるようなサイズ及び形状としている。例えば幾つかの実施形態ではそのポールギャップGを3cmとすることがある。
【0022】
サイクロトロン200はさらに、加速チェンバー206の内部あるいはその近傍に配置させたマグネットアセンブリ260を含む。マグネットアセンブリ260は、所望のビーム経路に沿って荷電粒子を導くためのポール248及び250による磁場の生成を容易にするように構成されている。マグネットアセンブリ260は、中間面232を横断して互いに距離D1だけ離間させた相対する1対のマグネットコイル264及び266を含む。このマグネットコイルは実質的に円形とし中心軸236の周りに延びることがある。ヨークセクション228と230は、対応するマグネットコイル264と266のそれぞれを受け容れるようなサイズ及び形状としたマグネットコイルキャビティ268と270のそれぞれを形成することがある。さらに図2に示したようにサイクロトロン200は、マグネットコイル264及び266を加速チェンバー206から離間させると共にマグネットコイル264及び266の適所への保持を容易にするチェンバー壁272及び274を含むことがある。
【0023】
加速チェンバー206は、中心軸236の周りをらせん状に取り巻きかつ実質的に中間面232に沿う状態を保っている所定の湾曲経路に沿ったその内部における1-イオンなどの荷電粒子の加速を可能にするように構成されている。この荷電粒子は、最初は中心領域238の近傍に位置決めされる。サイクロトロン200を作動させると、荷電粒子の経路は中心軸236を取り巻く軌道をとることがある。図示した実施形態ではサイクロトロン200はイソクロナス・サイクロトロンであり、またこのため荷電粒子の軌道は中心軸236の周りに湾曲した部分とこれより直線的な部分とを有する。しかし本明細書に記載した実施形態はイソクロナス・サイクロトロンに限定されるものではなく、別のタイプのサイクロトロンや粒子加速器も含む。図2に示したように、荷電粒子が中心軸236を回る軌道をとるとき、荷電粒子は加速チェンバー206の紙面から突き出てくること並びに加速チェンバー206の紙面内に入るように延び入ることがある。荷電粒子が中心軸236を回る軌道をとるため、荷電粒子の軌道と中心領域238の間に延びる半径Rは増大する。荷電粒子が軌道に沿った所定の箇所に到達すると、荷電粒子は抽出システム(図示せず)内に導かれるかこれを通過するように導かれサイクロトロン200を出る。例えば荷電粒子は、上で検討したようなフォイルによってその電子を引き剥がされることがある。
【0024】
粒子ビーム112の形成前及び形成中において加速チェンバー206は排気した状態とさせることがある。例えば粒子ビームを生成する前に、加速チェンバー206の圧力を概ね1×10-7ミリバールとすることがある。粒子ビームが作動されてH2ガスが中心領域238に配置されたイオン源(図示せず)を通って流れているとき、加速チェンバー206の圧力は概ね2×10-5ミリバールとなることがある。このためサイクロトロン200は、中間面232の近傍とし得る真空ポンプ276を含むことがある。真空ポンプ276は、ヨーク体部204の端部214から半径方向の外方に突き出た部分を含むことがある。
【0025】
幾つかの実施形態では、加速チェンバー206に(例えば、修復やメンテナンスのために)アクセスし得るようにそのヨークセクション228及び230を互いに向かって及び互いから離れるように移動可能とすることがある。例えばヨークセクション228及び230を、ヨークセクション228及び230の横に並んで延びるヒンジ(図示せず)によって繋ぎ合わせることがある。ヨークセクション228と230の一方または両方は、ヒンジ軸の周りで対応するヨークセクション(複数のこともある)をピボット動作させることによって開かれることがある。別の例としてそのヨークセクション228及び230は、ヨークセクションのうちの一方をもう一方から直線的に離れるように横方向に移動させることによって互いに分離させることがある。しかし代替的な実施形態ではそのヨークセクション228及び230を一体に形成することや、(例えば、加速チェンバー206内に至るマグネットヨーク202の穴または開口部を通った)加速チェンバー206へのアクセスの際に互いの封止を保持させることがある。代替的な実施形態ではそのヨーク体部204は、均等分割でないセクションを有することがあり、かつ/または3つ以上のセクションを含むことがある。
【0026】
加速チェンバー206は、中間面232に沿って延びると共にその周りで実質的に対称となった形状を有することがある。例えば加速チェンバー206は実質的に円盤状であると共に、ポールトップ252と254の間に画定される内側空間領域241とチェンバー壁272と274の間に画定される外側空間領域243とを含むことがある。サイクロトロン200の動作時における粒子の軌道は空間領域241の域内となることがある。加速チェンバー206はさらに、ヨーク体部204を通り標的システムまで延びる通路など、空間領域243から半径方向で外方に離れるように進む通路を含むことがある。
【0027】
さらにポール248及び250(またより具体的には、ポールトップ252及び254)は、荷電粒子が所望の経路に沿って導かれる場合にこれらの間の空間領域241によって隔てられることがある。マグネットコイル264及び266もまた空間領域243によって隔てられることがある。具体的にはチェンバー壁272及び274はその間に空間領域243を有することがある。さらに空間領域243の周縁は、加速チェンバー206の周縁も画定している壁表面255によって画定されることがある。壁表面255は中心軸236の周りを周回方向に延びることがある。図示したように、空間領域241は中心軸236に沿ってポールギャップGに等しい距離だけ延びており、また空間領域243は中心軸236に沿って距離D1だけ延びている。
【0028】
図2に示したように空間領域243は中心軸236の周りで空間領域241を囲繞している。空間領域241及び243は一体となって加速チェンバー206を形成することがある。したがって図示した実施形態では、サイクロトロン200は空間領域241のみを囲繞し、これにより空間領域241をサイクロトロンの加速チェンバーと画定させるような単独のタンクや壁を含まない。例えば真空ポンプ276を空間領域243を通して空間領域241に流体結合させることがある。空間領域241内に入る気体は空間領域243を通して空間領域241から排気させることがある。図示した実施形態では真空ポンプ276は空間領域243に流体結合させると共にこの領域に隣接して配置させている。
【0029】
さらに図2に示したようにサイクロトロン200は、電気機械的(EM)モータ290〜292に動作可能に取り付けられた1つまたは複数の機械的デバイス280〜282を含むことがある。幾つかの実施形態ではその機械的デバイス280〜282は、サイクロトロン200の動作に影響する、またより具体的には粒子ビームに影響するように選択的に移動させるように構成されている。例えば機械的デバイス280及び281は、荷電粒子が機械的デバイス上に入射するように選択的に移動させることがある。機械的デバイス282は、粒子ビームの所望の経路に影響するように選択的に移動させることがある。さらに機械的デバイス280及び281は、ポールトップ252と254の間で加速チェンバー206の空間領域241内まで延びることがある。機械的デバイス282は、加速チェンバー206の空間領域243内に配置させることがある。
【0030】
EMモータ290〜292はそれぞれの機械的デバイス280〜282に動作可能に取り付けられている。本明細書で使用する際に2つの要素またはアセンブリが「動作可能に取り付けられた」「動作可能に結合された」「動作可能に接続された」その他となっているときは、この2つの要素またはアセンブリが所望の機能を実行できるような方式で互いに接続されていることを含む。例えばEMモータ290〜292は、その各々によるそれぞれの機械的デバイスの選択的な移動を可能にさせるような方式でそれぞれの機械的デバイス280〜282に取り付けらている。動作可能に結合させる(あるいは、その他とした)EMモータと対応する機械的デバイスとは、何らの部品や構成要素を介在させることなく互いに直接接続させることや、互いに間接的に接続させることがある。いずれのケースでもEMモータによる移動によって機械的デバイスを移動させている。
【0031】
具体的な実施形態ではそのEMモータ290〜292は、ポールトップ252または254のうちの1つに装着されるか、あるいはポールトップ252または254のうちの1つに隣接して配置されている。EMモータ292は、図2に示したようにポールトップ252に直に隣り合わせて配置させている。例えばEMモータ290と291は、ポールトップ252と254のそれぞれに装着されている。EMモータ292はチェンバー壁272に装着させることがある。しかし別の実施形態ではそのEMモータはポールトップ252または254に装着させたり、これらに隣接して配置させていない。
【0032】
EMモータ290〜292は、それぞれの機械的デバイス280〜282に動作可能に取り付けられたコネクタ構成要素293〜295のそれぞれを含むことがある。このコネクタ構成要素は、EMモータのロッド、シャフト、リンク、ばね、ハウジングその他など任意の物理的部分とすることができる。EMモータ290〜292はさらに、対応するコネクタ構成要素と動作可能に結合させた圧電素子(図示せず)を含むことがある。これらの圧電素子は、コネクタ構成要素を移動させ、これにより対応する機械的デバイスを移動するように作動させることがある。圧電素子に電圧または電場を印加することあるいは圧電素子を歪ませることによって作動を提供することがある。一例として、コネクタ構成要素に関して得られる移動は直線方向とすることや回転方向とすることがあり得る。具体的な実施形態ではそのEMモータ290〜292は、圧電モータまたは超音波モータである。
【0033】
図3は、一実施形態に従って形成したヨークセクション330の部分斜視図である。ヨークセクション330は別のヨークセクション(図示せず)と対向させることがある。対向ヨークセクションとヨークセクション330を一体に封止させると、これらの間に加速チェンバーを形成することができる。封止するとこの2つのヨークセクションは、上で記載したサイクロトロン200のマグネットヨーク202などのサイクロトロンのマグネットヨークを成すことがある。ヨークセクション330は、ヨークセクション228及び230(図2)に関連して記載したのと同様の構成要素や特徴を有することがある。図示したようにヨークセクション330は、マグネットポール350をその内部に配置させて有する片側開きの(open−sided)キャビティ320を画定するリング部分321を含む。片側開きのキャビティ320は、上で検討した内側空間領域241と外側空間領域243など加速チェンバーの内側空間領域と外側空間領域(図示せず)からなる部分を含むことがある。リング部分321は、サイクロトロンの動作時に対向するヨークセクションの係合用表面を係合するように構成された係合用表面324を含むことがある。ヨークセクション330はヨークまたはビーム通路349を含む。破線で示したように、ビーム通路349はリング部分321を通って延びると共に、引き剥がされた粒子からなる粒子ビームが加速チェンバーから出るための経路を提供する。
【0034】
幾つかの実施形態では、ポール350のポールトップ354は、山331〜334と谷336〜339を含むことがある。この山331〜334と谷336〜339は、荷電粒子が受ける磁場を変動させることによって荷電粒子の誘導を容易にすることがある。ヨークセクション330はさらに、互いの方向に及びポール350(または加速チェンバー)の中心344方向に向かって半径方向内方に延びる無線周波数(RF)電極340及び342を含むことがある。RF電極340と342は、ステム345と347のそれぞれから延び出た中空のD電極すなわち「ディー」341と343のそれぞれを含むことがある。ディー341と343は、谷336と338のそれぞれの内部に配置されている。ステム345及び347はリング部分321の内壁表面322に結合させることがある。
【0035】
さらに図示したようにヨークセクション330は、ポール350の周りに配列させたインターセプションパネル371及び372を含むことがある。インターセプションパネル371及び372は、加速チェンバー内部の喪失粒子を捕えるように位置決めされている。インターセプションパネル371及び372はアルミニウムを含むことがある。図3に示したインターセプションパネル371及び372は2つだけであるが、本明細書に記載した実施形態は、追加のインターセプションパネルを含むことがある。さらに本明細書に記載した実施形態は、内側空間領域内部でポールトップ354の近傍に配置させたビームスクレイパー(図示せず)を含むことがある。
【0036】
RF電極340及び342は、RF電極340及び342が加速チェンバー内部で荷電粒子を加速している図1を参照しながら説明した電場システム106などのRF電極システム370を形成することがある。RF電極340及び342は互いに協働すると共に、所定の周波数(例えば、100MHz)にチューニングした誘導性素子と容量性素子を含んだ共振システムを形成する。RF電極システム370は、1つまたは複数の増幅器と連絡した周波数発振器を含み得るような高周波電力発生器(図示せず)を有することがある。RF電極システム370は、RF電極340と342の間に交流電圧を生成し、これにより荷電粒子を加速する。
【0037】
さらに図3に示したように、加速チェンバー内部には移動可能な複数の機械的デバイスを配置させることがある。例えば、ポール350に対して引き剥がし用アセンブリ402を装着させることがあり、また同じくポール350に対して診断用探触子アセンブリ440を装着させることがある。引き剥がし用アセンブリ402及び探触子アセンブリ440に加えて、記載した実施形態は加速チェンバー内部に移動可能な別の機械的デバイスを含むことがある。これら移動可能な機械的デバイスは、サイクロトロンの動作時及び/またはマグネットヨークが封止されたときに移動されるように構成されることがある。より具体的にはこれらの機械的デバイスは、真空状態の域内にある間及び大きな磁気フラックスを受けている間に反復して動作する(例えば、異なる位置間を往復移動する)ように構成されることがある。
【0038】
図4は、ヨークセクション330の一部分の拡大図であり、引き剥がし用アセンブリ402をより詳細に表している。図示したように引き剥がし用アセンブリ402は、回転可能アーム406と、該回転可能アーム406に装着されたフォイル保持体404と、を含む。回転可能アーム406はポールトップ354(図3)の外側周縁411の近くに位置決めされた近位端408から中心344(図3)の方向に延びている。回転可能アーム406は遠位端410(図3参照)まで延びることがある。幾つかの実施形態ではその回転可能アーム406は、遠位端410の周りでピボット動作するように構成されている。
【0039】
フォイル保持体404は、外側周縁411の近くに位置決めされるように構成されている。この例示的実施形態ではフォイル保持体404は、回転可能アーム406の近位端408の近くに確保されている。フォイル保持体404は、引き剥がし用フォイル412が所望の粒子ビーム経路の内部に配置されるように引き剥がし用フォイル412を保持するように構成されている。図示したようにフォイル保持体404は、回転可能アーム406に対して例えば締結用デバイス414を用いて着脱可能に結合させることがある。締結用デバイス414は、所望により回転可能アーム406に対してフォイル保持体404を再位置決めするために緩められることがある。さらにフォイル保持体404は、例えば締結用デバイス418を用いて一体に確保された対向するフィンガーを有するクランプ機構416を含むことがある。引き剥がし用フォイル412の取り外しまたは再配置のために、フィンガーを離すように締結用デバイス418が緩められることがある。
【0040】
さらに図4に示したように、引き剥がし用アセンブリ402を電気機械的(EM)モータ420と動作可能に結合させることが可能である。EMモータ420は、ケーブルまたはワイヤ422を通じて制御システム(図示せず)と通信可能に結合させることがある。EMモータ420は、アクチュエータアセンブリ424と、該アクチュエータアセンブリ424と移動可能に結合させたコネクタ構成要素456と、を含むことがある。このコネクタ構成要素は、引き剥がし用アセンブリ402(または、フォイル保持体404)に動作可能に取り付けられている。例えばコネクタ構成要素456を回転可能アーム406の近位端408に取り付けることがある。アクチュエータアセンブリ424は、コネクタ構成要素456と動作可能に結合させた複数の圧電素子を含むことがある。EMモータ420は圧電素子に電場を加えたときにコネクタ構成要素456を駆動させ、これにより回転可能アーム406を、また結果的にフォイル保持体404及び引き剥がし用フォイル412を移動させるように構成されている。コネクタ構成要素456はEMモータ420によって異なる位置まで選択的に移動させることがある。
【0041】
図示した実施形態ではEMモータ420はリニア圧電モータである。EMモータ420は、非磁性材料を含むこと、あるいはより具体的には本質的に非磁性材料からなることがある。EMモータが本質的に非磁性材料からなる場合、EMモータが有する加速チェンバーの動作用磁場に対する影響は最大でも無視し得る大きさである。例えば本質的に非磁性材料からなるEMモータは、EMモータに対応した磁場システムの再構成をすることなく既存の粒子加速器内に据え付け可能である。コネクタ構成要素456は、アクチュエータアセンブリ424によって両方向矢印で示したような直線方向で往復移動させるロッドまたはレールを含む。コネクタ構成要素456を第1の方向に移動させると、回転可能アーム406は遠位端410の周りに時計回りに回転することがある。コネクタ構成要素456を反対の第2の方向に移動させると、回転可能アーム406は遠位端410の周りに反時計回りに回転することがある。したがってEMモータ420と引き剥がし用アセンブリ402は、引き剥がし用フォイル412が所望の粒子ビーム経路内に位置決めされるように互いに相互作用し合うことがある。粒子ビームからなる荷電粒子が引き剥がし用フォイル412上に入射すると、荷電粒子から電子が除去される(または、引き剥がされる)ことがある。引き剥がしを受けた粒子は次いで、ビーム通路349(図3)を通った所望の経路に従うことがある。
【0042】
代替的な実施形態ではその引き剥がし用アセンブリ402は、引き剥がし用フォイル412を配置するように互いに相互作用し合う別の部品または構成要素を含むことがある。例えば代替的な一実施形態ではその引き剥がし用アセンブリ402は、遠位端410の周りにピボット動作しないことがあり、これに代えて締結用デバイス414を通って延びる軸の周りに回転するように構成させることがある。したがって引き剥がし用フォイルを選択的に移動させるために、相互接続させた多種多様な機械的構成要素及び部品が使用されることがある。例えば引き剥がし用アセンブリ402及び/またはEMモータ420は、引き剥がし用フォイル412を選択的に移動するように構成させ得る連結器、歯車、ベルト、カム機構、スロット、ランプ(ramp)及び継手を含むことがある。同様にフォイル404を移動させるために代替的なEMモータが用いられることがある。例えばリニアEMモータによって引き剥がし用フォイルを直接保持し、また引き剥がし用フォイル412が例えば中心344に向かうまたこれから離れるように移動させるようにリニアEMモータを構成させることがある。別の実施形態では直線移動を提供するのではなく、軸の周りに回転するようにそのEMモータを構成させることがある。引き剥がし用アセンブリ402もまた非磁性材料を含むことや、本質的に非磁性材料からなることがある。
【0043】
図5は、探触子アセンブリ440をより詳細に表したヨークセクション330の一部分の拡大図である。図示した実施形態では探触子アセンブリ440は、ポールトップ354に装着されると共に、谷337の内部に配置されている。探触子アセンブリ440は、外側周縁411の近傍に確保された基礎支持体442と、基礎支持体442と回転可能に結合させたシャフト部材444と、を含む。シャフト部材444は、ポール350の中心344に向けて半径方向内方に延びている。探触子アセンブリ440はさらに、シャフト部材444の遠位端に取り付けられたビーム検出器446を含む。図示した実施形態ではビーム検出器446はタブまたはフラグ447を備える。任意選択では探触子アセンブリ440は、シャフト部材444の遠位端に回転可能に結合させた遠位支持体448を含むことがある。
【0044】
さらに図5に示したように探触子アセンブリ440は、EMモータ450と動作可能に結合させることが可能である。EMモータ450及びビーム検出器446は、ケーブルまたはワイヤ452を通じて制御システム(図示せず)と通信可能に結合させることがある。EMモータ450は、アクチュエータアセンブリ454と、該アクチュエータアセンブリ454に結合されたコネクタ構成要素456と、を含むことがある。コネクタ構成要素456は、探触子アセンブリ440に動作可能に取り付けられている。例えばコネクタ構成要素456は、シャフト部材444の近位端458に取り付けられることがある。EMモータ420と同様にアクチュエータアセンブリ454は、コネクタ構成要素456と動作可能に結合された複数の圧電素子を含むことがある。EMモータ450は、圧電素子に電場が加えられたときにコネクタ構成要素456を駆動させ、これによりシャフト部材444が(また結果的にビーム検出器446が)移動するように構成されている。コネクタ構成要素456は、EMモータ450によって異なる位置まで選択的に移動させ、これによりシャフト部材444を選択的に移動させることがある。
【0045】
図示した実施形態では、EMモータ450はロータリー式圧電モータである。代替的な実施形態ではそのEMモータ450を、タブ447を適正な方式で移動するように動作可能に結合させたリニアモータとすることがある。代替的な実施形態ではそのEMモータ450は超音波モータを含むことがある。幾つかの実施形態ではEMモータ450は、非磁性材料を含むこと、あるいはより具体的には本質的に非磁性材料からなることがある。図示したようにコネクタ構成要素456は、アクチュエータアセンブリ454によって両方向矢印で示したように回転方向で往復移動させるロッドまたはシャフトを備える。コネクタ構成要素456を第1の方向に移動させると、シャフト部材444はビーム検出器446を所望の経路内に移動させることがある。コネクタ構成要素456を反対の第2の方向に移動させると、シャフト部材444はビーム検出器446を所望の経路から出るように移動させることがある。したがってEMモータ450と探触子アセンブリ440は、荷電粒子がその上に入射する所望の経路内部にビーム検出器446を位置決めするように互いに相互作用し合うことがある。
【0046】
探触子アセンブリ440は、所望の経路に沿った異なる点で粒子ビームの質または条件を試験するために用いられることがある。所望の経路のある点で取得した計測値を、所望の経路に沿った別の点で得た計測値と比較することがある。例えば、ビーム検出器446により得た計測値を、粒子ビームの損失量の判定のために用いることがある。
【0047】
図6は、中空のディー(またはRF共振器)343とEMモータ462に動作可能に結合させたRFデバイス460との斜視図である。図示した実施形態ではRFデバイス460は、EMモータ462に装着されると共に、中空のディー343の外側周縁の近傍に配置されている。RFデバイス460は、キャパシタプレート464と、EMモータ462と動作可能に結合させた基礎延長部466と、を含む。キャパシタプレート464は、中空のディー343と実質的に対面すると共に、これから離間距離SDだけ離間させている。EMモータ462は、軸470の周りにRFデバイス460を回転させるように構成されたロータリー式モータである。RFデバイス460を軸470の周りに回転させると、離間距離SDを変化させるようにキャパシタプレート464が中空のディー343の方向及びこれから離れる方向に動かされる。したがってEMモータ462は、中空のディー343の方向及びこれから離れる方向にキャパシタプレート464を選択的に動かし、これにより離間距離SDを変化させるように構成させることがある。離間距離SDを変化させることによって、粒子ビーム内の荷電粒子に影響を及ぼすようにサイクロトロンの共振周波数をチューニングすることが可能である。
【0048】
図7〜10は、本明細書に記載した実施形態に使用し得るEMモータをより詳細に表している。しかし本明細書に記載したEMモータは単に例示であり、別のEMモータを使用することもできる。図7〜9は、図4に示したEMモータ420と同様とし得るリニアタイプのEMモータ502をより詳細に表している。一例ではEMモータ420及び502をPiezoMotor(R)により製造されるPiezo LEGS(TM)モータとすることがある。図7はEMモータ502の分解図であり、また図8は組み上げたEMモータ502を表している。図示したようにEMモータ502は、引張りばね504、ローラー506、保持体507、ドライブロッド(または、コネクタ構成要素)508及びアクチュエータアセンブリ510を含む。このアクチュエータアセンブリ510は、その内部に複数の圧電素子512(図7)を有するハウジング511を含む。ドライブロッド508は、アクチュエータアセンブリ510に対して、またより具体的には圧電素子512に対して動作可能に結合させるように構成されている。図示した実施形態ではドライブロッド508は、ローラー506及び引張りばね504によって圧電素子512に押し当てられている。
【0049】
図9は、印加電圧により作動させたときのある圧電素子512に関する様々な段階A〜Dにわたる例示的な動きを表している。複数の圧電素子512をEMモータ502内などで直列に配列させると、これらの圧電素子512はドライブロッド508を直線的方向に動かすように協働することがある。図示したように圧電素子512は、1つの中間電極と互いに離間させた2つの外部電極(図示せず)とを備えた2つの圧電層516及び518を有する圧電セラミックのバイモルフ514を備える。圧電素子512の遠位端520はドライブロッド508を動作可能に係合するように構成されている。したがって、各層516または518は印加電圧によって独立に作動させることができる。例えば段階Aでは、層516と518をいずれも作動させておらず、また圧電素子512は縮んだ状態にある。段階Bでは、層518を作動させ、これにより層518を延長させている。層516が作動していないため、圧電素子512は一方向に曲がるまたは傾く。段階Cでは、圧電素子512が延びた状態になるように層516と518の両方を作動させている。段階Dでは層516を延ばすように層516を作動させている。層518が作動していないため、圧電素子512は段階Bの方向と反対方向に曲がる。したがって、アクチュエータアセンブリ510内の圧電素子512のそれぞれに対する電圧の印加によって、圧電素子512は摩擦力を用いてドライブロッド508を動かすフィンガーまたはレグとして動作することがある。
【0050】
図10は、回転子532及び固定子534を備えたアクチュエータアセンブリ530を表している。アクチュエータアセンブリ530は、EMモータ450及び462などのロータリー式EMモータ内に組み込まれることがある。具体的な実施形態ではアクチュエータアセンブリ530を超音波モータ内に組み込むことがある。回転子532は駆動シャフト(図示せず)と動作可能に結合させることがあり、一方この駆動シャフトは機械的デバイスと動作可能に結合させることがある。図示したように固定子534は、直列に配列されると共に回転子532とインタフェースする複数の圧電素子536を含むことがある。楕円運動を生成するために印加電圧によって圧電素子536のリングに沿って進行波TWを確立させることがある。作動させた圧電素子536は、様々な接触点で回転子と係合し、これにより回転子532を軸540の周りに回転させることがある。
【0051】
一実施形態では、加速チェンバーを有する粒子加速器を操作する方法を提供する。本方法はさらに、システム100などの同位体産生システムやサイクロトロン200などのサイクロトロンを動作させる際に用いることができる。本方法は、加速チェンバー内に荷電粒子からなる粒子ビームを提供するステップを含む。この粒子ビームは、例えば電場及び磁場を用いて荷電粒子を所望の経路に沿って導くために上で検討したようにして生成させることがある。
【0052】
本方法はさらに、粒子ビームに影響を与えるように加速チェンバー内部の機械的デバイスを選択的に移動させるステップを含むことがある。この機械的デバイスは、機械的デバイス280〜282、引き剥がし用アセンブリ402、診断用探触子アセンブリ440またはRFデバイス460と同様とすることがある。機械的デバイスは、例えば荷電粒子をその上に入射させるあるいは電場または磁場に影響を及ぼして所望の経路を制御することによって粒子ビームに影響を与えることがある。具体的な一例では、共振周波数に影響を与えるようにRFデバイスを中空のディーに対して移動させることがある。上で説明したように機械的デバイスは、コネクタ構成要素と該コネクタ構成要素と動作可能に結合させた圧電素子とを含む電気機械的(EM)モータによって移動させることがある。コネクタ構成要素は機械的デバイスに動作可能に取り付けられており、また機械的デバイスの動きを制御するように移動させるまたは操縦することが可能な任意の物理的構造とすることがある。圧電素子を(例えば、電圧の印加によって)作動させたときに、EMモータはコネクタ構成要素を駆動させ、これにより機械的デバイスを移動させる。

具体的な実施形態ではその機械的デバイスは、内側空間領域を画定するかあるいはポールに隣接して配置させたマグネットヨークのポールトップの間に配置させている。例えば、回転可能アームまたはシャフト部材の少なくとも一部分がポールトップの間を延びることがある。さらに具体的な実施形態ではそのEMモータは、ポールトップの間あるいはポールに隣接して配置させることがある。幾つかの実施形態ではその機械的デバイスは、マグネットヨークを基準として、また具体的な実施形態ではポールトップを基準として動かされる。機械的デバイスはさらに、ポールトップのうちの1つの山または谷に配置させることがある。例えば引き剥がし用アセンブリ402を山333に沿って配置させ、また探触子アセンブリ440を谷337内に配置させている。さらにEMモータ及び機械的デバイスは、壁表面322などのマグネットヨークの内壁表面から離して配置させるまたは離間させることがある。
【0053】
具体的な実施形態ではその粒子加速器やサイクロトロンは、医学的撮像向けの放射性同位体を産生するために病院内や別の同様の設定で用いるようにサイズ設定、形状設定及び構成されている。しかし本明細書に記載した実施形態は、医学用途の放射性同位体の生成に限定するように意図したものではない。さらに図示した実施形態では、粒子加速器は垂直向きのイソクロナス・サイクロトロンである。しかし代替的な実施形態は、別の種類のサイクロトロンや粒子加速器を含むこと、また別の向き(例えば、水平方向)を含むことがあり得る。
【0054】
上の記述は例示であって限定でないことを理解されたい。例えば上述の実施形態(及び/または、その態様)は、互いに組み合わせて使用することができる。さらに、具体的な状況や材料を本発明の教示に適応させるように本趣旨を逸脱することなく多くの修正を実施することができる。本明細書内に記載した材料の寸法及びタイプが本発明のパラメータを規定するように意図していても、これらは決して限定ではなく実施形態の例示にすぎない。上の記述を検討することにより当業者には別の多くの実施形態が明らかとなろう。本発明の範囲はしたがって、添付の特許請求の範囲、並びに本請求範囲が規定する等価物の全範囲を参照しながら決定されるべきである。添付の特許請求の範囲では、「を含む(including)」や「ようになった(in which)」という表現を「を備える(comprising)」や「であるところの(wherein)」という対応する表現に対する平易な英語表現として使用している。さらに添付の特許請求の範囲では、「第1の」、「第2の」及び「第3の」その他の表現を単にラベル付けのために使用しており、その対象に対して数値的な要件を課すことを意図したものではない。さらに、添付の特許請求の範囲の限定は手段プラス機能形式で記載しておらず、また35 U.S.C.§112、第6パラグラフに基づいて解釈されるように意図したものでもない(ただし、本特許請求の範囲の限定によって「のための手段(means for)」の表現に続いて追加的な構造に関する機能排除の記述を明示的に用いる場合を除く)。
【0055】
この記載では、本発明(最適の形態を含む)を開示するため、並びに当業者による任意のデバイスやシステムの製作と使用及び組み込んだ任意の方法の実行を含む本発明の実施を可能にするために例を使用している。本発明の特許性のある範囲は本特許請求の範囲によって規定していると共に、当業者により行われる別の例を含むことができる。こうした別の例は、本特許請求の範囲の文字表記と異ならない構造要素を有する場合や、本特許請求の範囲の文字表記と実質的に差がない等価的な構造要素を有する場合があるが、本特許請求の範囲の域内にあるように意図したものである。
【符号の説明】
【0056】
100 同位体産生システム
102 粒子加速器
103 加速チェンバー
104 イオン源システム
106 電場システム
108 磁場システム
110 真空システム
112 粒子ビーム
114 標的システム
115 抽出システム
116 標的材料
117 ビーム通路
118 制御システム
120 標的箇所
122 冷却システム
200 サイクロトロン
202 マグネットヨーク
204 ヨーク体部
206 加速チェンバー
208 側面
210 側面
212 上側端部
214 底側端部
220 水平のプラットフォーム
228 ヨークセクション
230 ヨークセクション
231 上側部分
232 中間面
236 中心軸
238 中心領域
241 空間領域
243 空間領域
248 ポール
250 ポール
252 ポールトップ
254 ポールトップ
255 壁表面
260 マグネットアセンブリ
264 マグネットコイル
266 マグネットコイル
268 マグネットコイルキャビティ
270 マグネットコイルキャビティ
272 チェンバー壁
274 チェンバー壁
276 真空ポンプ
280 機械的デバイス
282 機械的デバイス
290 EMモータ
291 EMモータ
292 EMモータ
293 コネクタ構成要素
294 コネクタ構成要素
295 コネクタ構成要素
320 片側開きのキャビティ
321 リング部分
322 内壁表面
324 係合用表面
330 ヨークセクション
331 山
332 山
333 山
334 山
336 谷
337 谷
338 谷
339 谷
340 RF電極
341 中空のディー
342 RF電極
343 中空のディー
344 中心
345 ステム
347 ステム
349 ビーム通路
350 ポール
354 ポールトップ
370 RF電極システム
371 インターセプションパネル
372 インターセプションパネル
402 引き剥がし用アセンブリ
404 フォイル保持体
406 回転可能アーム
408 近位端
410 遠位端
411 外側周縁
412 引き剥がし用フォイル
414 締結用デバイス
414 締結用デバイス
416 クランプ機構
418 締結用デバイス
420 EMモータ
422 ケーブルまたはワイヤ
424 アクチュエータアセンブリ
440 診断用探触子アセンブリ
442 基礎支持体
444 シャフト部材
446 ビーム検出器
447 タブまたはフラグ
448 遠位支持体
450 EMモータ
452 ケーブルまたはワイヤ
454 アクチュエータアセンブリ
456 コネクタ構成要素
458 近位端
460 RFデバイス
462 EMモータ
464 キャパシタプレート
466 基礎延長部
470 軸
502 EMモータ
504 引張りばね
506 ローラー
507 保持体
508 ドライブロッド
510 アクチュエータアセンブリ
511 ハウジング
512 圧電素子
514 圧電セラミックのバイモルフ
516 層
518 層
520 遠位端
530 アクチュエータアセンブリ
532 回転子
534 固定子
536 圧電素子
540 軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加速チェンバー(206)内部において所望の経路に沿って荷電粒子を導くように構成された電場システム(106)及び磁場システム(108)と、
加速チェンバー内部に配置された機械的デバイス(280、282)であって、加速チェンバー内部の別の位置まで選択的に移動されるように構成された機械的デバイスと、
前記機械的デバイスに動作可能に取り付けられたコネクタ構成要素(456)と該コネクタ構成要素と動作可能に結合させた圧電素子(512)とを備えた電気機械的(EM)モータ(290、292)であって、圧電素子を作動させたときに該コネクタ構成要素を駆動しこれにより機械的デバイスを移動させているEMモータと、
を備える粒子加速器(102)。
【請求項2】
前記磁場システム(108)は、加速チェンバー(206)を横断して互いに対向した1対のポールトップ(252、254)を含んでおり、前記機械的デバイス(280、282)が該ポールトップの間を延びている、請求項1に記載の粒子加速器(102)。
【請求項3】
前記EMモータ(290、292)は、前記ポールトップ(252、254)のうちの1つに装着されるか該ポールトップのうちの1つに隣接している、請求項2に記載の粒子加速器(102)。
【請求項4】
前記EMモータ(290、292)は本質的に非磁性材料からなる、請求項1に記載の粒子加速器(102)。
【請求項5】
前記機械的デバイス(280、282)は、その上に荷電粒子が入射するように所望の経路内に移動されるように構成されている、請求項1に記載の粒子加速器(102)。
【請求項6】
前記機械的デバイス(280、282)は、荷電粒子がその上に入射されるビーム検出器(446)を有する診断用探触子を備える、請求項5に記載の粒子加速器(102)。
【請求項7】
前記機械的デバイス(280、282)は、荷電粒子がその上に入射される引き剥がし用フォイル(412)を有する引き剥がし用アセンブリ(402)を備える、請求項5に記載の粒子加速器(102)。
【請求項8】
前記電場システム(106)は中空のディー(341、343)を含み、かつ前記機械的デバイス(280、282)は該中空のディーのうちの1つまであるいはここから移動するように構成されたキャパシタプレート(464)を備える、請求項1に記載の粒子加速器(102)。
【請求項9】
前記コネクタ構成要素(456)は、直線方向での移動と軸(236)の周りでの回転の少なくとも一方をするように構成されている、請求項1に記載の粒子加速器(102)。
【請求項10】
加速チェンバー(206)を有する粒子加速器(102)を操作する方法であって、
加速チェンバー内に荷電粒子の粒子ビーム(112)を提供するステップであって、該粒子ビームは所望の経路に沿って導かれる提供ステップと、
加速チェンバー内部で機械的デバイス(280、282)を選択的に移動させるステップであって、該機械的デバイスは機械的デバイスに動作可能に取り付けられたコネクタ構成要素(456)と該コネクタ構成要素と動作可能に結合させた圧電素子(512)とを備える電気機械的(EM)モータ(290、292)により移動させており、該EMモータは圧電素子を作動させたときにコネクタ構成要素を駆動させている移動ステップと、
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−134146(P2012−134146A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−278145(P2011−278145)
【出願日】平成23年12月20日(2011.12.20)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】