説明

電気活性物質およびリチウムイオン電池用の負極中での該電気活性物質の使用

本発明は、黒鉛状炭素相Cおよび(半)金属相および/または(半金属)酸化物相(MOx相)を含む新規の電気活性物質ならびにリチウムイオンセル用の陽極中での該電気活性物質の使用に関する。本発明は、この種の物質の製造法にも関する。電気活性物質は、次のもの:a)炭素相C;b)少なくとも1つのMOx相を含み、その中でMは、金属または半金属を表わし、xは、0ないし<k/2を表わし、この場合kは、金属または半金属の最大原子価を意味する。本発明による電気活性物質において、炭素相CおよびMOx相は、本質的に共連続相ドメインを形成し、この場合同一の相の2つの隣接したドメインの平均間隔は、10nm以下、殊に5nm以下、特に2nm以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、黒鉛状炭素相Cおよび(半)金属相および/または(半金属)酸化物相(MOx相)を含む新規の電気活性物質ならびにリチウムイオン電池用の負極中での該電気活性物質の使用に関する。本発明は、この種の物質の製造法にも関する。
【0002】
増大するモバイル社会において、モバイル電気機器は、常に大きな役を演じている。従って、ここ数年来、電池、殊に再充電可能な電池(いわゆる二次電池または蓄電池)が殆ど毎日の生活の一部で使用されている。現在、二次電池には、電気的性質および機械的性質に関連して複雑な要件特性が課されている。即ち、電気工業では、長い寿命の達成のために高い容量および高いサイクル安定性を有する新規の小型で軽量の二次電池または蓄電池を必要としている。更に、高い信頼性および効率を保証するために、感温性ならびに自己放電率は、僅かであるべきである。同時に、利用の際の高い安全基準が要求される。前記の性質を有するリチウムイオン二次電池は、殊に自動車部門にとっても重要であり、例えばこれから先、電気自動車またはハイブリッド自動車における電力蓄積器として使用されることができる。更に、この場合には、高い電流密度を実現させうるために、好ましい界面動電特性を有する蓄電池が必要とされる。更に、新しい種類の蓄電池システムを開発する場合には、再充電可能な蓄電池を安価な方法で製造しうることが特に重要である。また、新規の蓄電池システムを開発する場合には、環境的視点は、ますます重要な役を演じる。
【0003】
現在の高エネルギーリチウム電池の負極は、今日では典型的には黒鉛から構成されているが、しかし、この負極は、金属リチウム、リチウム合金またはリチウム金属酸化物をベースにしていてもよい。現在のリチウム電池の正極を構成することについては、最近、リチウムコバルト酸化物を使用することが有効であることが実証された。これら2つの電極は、リチウム電池において、液状電解質を使用して、または固体電解質を使用しても互いに結合される。リチウム電池を(再)充電する場合には、正極物質が酸化される(例えば、次の方程式:LiCoO2→nLi+ + Li(1-n)CoO + ne-による)。それによって、リチウムは、正極物質から遊離され、リチウムイオンの形で負極に移動し、この負極でリチウムイオンは、負極物質の還元下に結合され、黒鉛の場合には、リチウムイオンとして黒鉛の還元下に挿入される。この場合、リチウムは、黒鉛構造において中間層の部位を占める。蓄電池を放電する場合、負極中に結合されたリチウムは、負極からリチウムイオンの形で放出され、負極物質の酸化が行なわれる。リチウムイオンは、電解質を通って正極に移動し、そこで正極物質の還元下に結合される。蓄電池の放電の場合ならびに蓄電池の再充電の場合には、リチウムイオンは、セパレーターを通って移動する。
【0004】
しかし、Liイオン蓄電池中で黒鉛を使用する場合の本質的な欠点は、0.372Ah/gの理論的上限値を有する比較的僅かな比容量にある。また、黒鉛とは異なる、黒鉛に類似した炭素物質、例えばカーボンブラック、例えばアセチレン黒、ランプカーボンブラック、ファーネスカーボンブラック、フレームカーボンブラック、クラッキングか、チャンネルカーボンブラックまたはサーマルカーボンブラック、ならびに光沢カーボンまたは硬質カーボンは、類似の性質を有する。その上、この種の負極物質は、安全性に関連して問題がない訳ではない。
【0005】
リチウム合金、例えばLixSi合金、LixPb合金、LixSn合金、LixAl合金またはLixSb合金を使用する場合には、より高い比容量が達成されうる。この場合、電荷容量は、黒鉛の電荷容量の10倍まで可能である(LixSi合金、R.A.Huggins,Proceedings of the Electrochemical society 87−1,1987,第356〜364頁参照)。この種の合金の本質的な欠点は、帯電/放電の際の寸法の変化であり、このことは、負極物質の壊変をまねく。これから生じる、負極物質の比表面積の増加の結果として、負極物質と電解質との不可逆的な反応による容量損失および熱負荷に比して高められた、電池の敏感性が生じ、このことは、極端な場合には、電池の強い発熱分解をまねく可能性があり、および安全に対する危険性がある。
【0006】
リチウムを電極物質として使用することは、安全技術的理由から問題である。殊に、帯電の際のリチウムの析出の場合には、負極物質上でリチウムデンドライトが形成する。このリチウムデンドライトは、電池内で短絡を生じ、それによって電池の制御できない破壊を生じうる。
【0007】
欧州特許第692833号明細書には、炭素と共に、リチウムと一緒に合金を形成する金属または半金属、特に珪素を含有する炭素含有挿入化合物が記載されている。この製造は、例えばポリシロキサンの熱分解による珪素含有層間化合物の場合に、金属または半金属および炭化水素基を含有するポリマーを熱分解することによって行なわれる。熱分解は、最初に一次ポリマーを分解し、引続き炭素−および(半)金属および/または(半)金属酸化物ドメインを形成するような厳しい条件を必要とする。この種の物質の製造は、一般的に劣悪に再生可能な品質をまねくと思われる。それというのも、高いエネルギー入力のためにドメイン構造が制御できないかまたは制御が困難になるからである。
【0008】
H.Tamai et al.,J. Materials Science Letters,19(2000)第53〜56頁には、LIイオン蓄電池用の負極物質として、ポリシロキサンの存在下での瀝青の熱分解によって得られる、珪素でドーピングされた炭素含有物質が提案されている。この物質は、先に挙げた理由から、欧州特許第692833号明細書の記載から公知の物質と比較可能な欠点を有する。
【0009】
米国特許第2002/0164479号明細書には、粒子状の炭素含有物質がLiイオン二次電池用の負極物質として記載されており、この場合炭素含有物質の粒子は、黒鉛粒子からなり、この黒鉛粒子の表面上には、多数の"錯体粒子"が配置されており、非晶質の炭素層によって被覆されている。この錯体粒子は、その側で、粒子状の結晶珪素相と、この結晶珪素相上に配置された、導電性炭素からなる粒子と、炭素被覆とから構成されている。この錯体粒子は、50nm〜2μmの範囲内の粒度を有し、黒鉛粒子は、2〜70μmの範囲内の粒度を有する。前記物質の製造のために、最初にフェノール樹脂と珪素粒子と導電性カーボンブラックとからなる混合物を炭化することによって錯体粒子が製造され、引続きこの錯体粒子は粒子状黒鉛と混合され、さらにフェノール樹脂と混合され、および炭化される。前記物質の製造は、とりわけ2回の炭化のために比較的費用が掛かり、劣悪に再生可能な結果をまねく。
【0010】
米国特許第2004/0115535号明細書には、Liイオン二次電池内の負極物質としての粒子状炭素物質が記載されており、この場合100nm未満の寸法を有する珪素粒子は、SiO2粒子と一緒に連続炭素相の粒子中での分散された分布で存在する。この種の物質を製造するために、SiOx粒子(0.8≦x≦1.5)と炭素粒子と炭化可能な物質との混合物は、高められた温度で炭化される。SiOx粒子の使用は、プロセスを複雑にする。
【0011】
H.H.Kung et.al.,Chem.Mater.,21(2009)第6〜8頁には、共有結合を有しかつ珪素粒子に結合された多孔質の炭素マトリックス中に埋設された、30nm以下の粒度およびLiイオン蓄電池内での電気活性負極物質としての適性を有する珪素ナノ粒子が記載されている。この珪素ナノ粒子は、水素末端基を有する珪素ナノ粒子をアリルフェノールとヒドロシリル化の範囲内で反応させ、引続きヒドロシリル化された粒子をホルムアルデヒドおよびレゾルシンと反応させ、ナノ粒子に共有結合されたホルムアルデヒド樹脂を形成させ、得られた物質を炭化することによって製造される。この物質の製造は、とりわけH末端基を有するSiナノ粒子の使用およびヒドロシリル化のために、比較的複雑であり、かつ高価である。その上、この方法は、劣悪に再現可能な結果を生じると思われる。それというのも、この反応は、表面反応に固有の欠点、例えば立体障害および拡散現象のために不完全で変動する変換率を生じるからである。
【0012】
I.Honma et.al.,Nano Lett.,9(2009)には、剥離された黒鉛層の間に埋設されたSnO2ナノ粒子から構成されているナノ多孔質物質が記載されている。この物質は、Liイオン蓄電池用の負極物質として適している。このナノ多孔質物質は、剥離された黒鉛層をSnO2ナノ粒子とエチレングリコール中で混合することによって製造される。剥離された黒鉛層は、その側で酸化されかつ剥離された黒鉛を還元することによって製造される。また、この方法は、比較的複雑であり、原理的にH.H.Kung et.al.によって記載された方法と同様の問題を有する。
【0013】
総括的に言えば、炭素を基礎とするかまたはリチウム合金を基礎とする、これまで公知技術水準から公知の負極物質は、比容量、帯電/放電の力学現象(Kinetik)、および/またはサイクル安定性、例えば容量の減少および/または複数の帯電/放電サイクル後の高い、または増加するインピーダンスに関連して満足すべきものではないと言及することができる。前記問題の解決のために最近提案された、粒子状半金属−または金属相および1つ以上の炭素相を有する複合材料は、前記問題を部分的にのみ解決することができ、この場合この種の複合材料の品質は、一般的に再現可能な方法で達成することができない。その上、この複合材料の製造は、一般的に経済的な利用が不可能であるように複雑である。
【0014】
本発明は、負極物質としてLiイオン蓄電池、殊にLiイオン二次電池に適しておりかつ公知技術水準の欠点を解決する電気活性物質を提供するという課題に基づくものである。電気活性物質は、殊に少なくとも1つの、特に複数の次の性質を有する:
高い比容量、
高いサイクル安定性、
僅かな自己放電、
良好な機械的安定性。
【0015】
更に、この物質は、経済的であり、なかんずく再現可能な品質で製造することができる。
【0016】
この課題は、意外な方法で次の性質を有する電気活性物質によって解決されることが見出された。電気活性物質は、次のもの:
a)炭素相C;
b)少なくとも1つのMOx相を含み、その中でMは、金属または半金属を表わし、xは、0ないし<k/2を表わし、この場合kは、金属または半金属の最大原子価を意味する。
【0017】
本発明による電気活性物質において、炭素相CおよびMOx相は、本質的に共連続相ドメインを形成し、この場合同一の相の2つの隣接したドメインの平均間隔は、10nm以下、殊に5nm以下、特に2nm以下である。
【0018】
従って、本発明の対象は、ここで記載された、および以下に記載された性質を有する電気活性物質である。
【0019】
この電気活性物質の組成および炭素相CおよびMOx相の特殊な配置のために、本発明による物質は、特にLiイオン電池中、殊にLiイオン二次電池またはLiイオン蓄電池中の負極用の電気活性物質として適している。殊に、本発明による物質は、Liイオン電池、特にLiイオン二次電池の負極中での使用の際に高い容量および良好なサイクル安定性を示し、電池中での低いインピーダンスを保証する。更に、本発明による物質は、共連続相配置のために高い機械的安定性を有するものと思われる。その上、本発明による物質は、簡単にかつ再現可能な品質を有するように製造することができる。
【0020】
従って、本発明の対象は、リチウムイオン電池、殊にリチウムイオン二次電池用の負極中の電気活性物質の使用、ならびに本発明による電気活性物質を含む、リチウムイオン電池用、殊にリチウムイオン二次電池用の負極ならびに本発明による電気活性物質を含有する少なくとも1つの負極を有するリチウムイオン電池、殊にリチウムイオン二次電池である。
【0021】
本発明による物質は、特に簡単な方法でツイン重合法、これに続く炭化によって製造することができ、この場合には、ナノ粒子の複雑な官能化または数回の炭化を必要としない。従って、本発明の対象は、電気活性物質を製造するための方法でもある。
【0022】
本発明によれば、電気活性物質は、炭素相Cを含む。この相中には、炭素が本質的に元素状で存在し、即ち相中での炭素とは異なる原子、N、O、S、Pおよび/またはHの割合は、相中の炭素の全体量に対して10質量%未満、殊に5質量%未満である。相中での炭素とは異なる原子の含量は、X線光電子分光法により測定することができる。炭素と共に、炭素相は、製造法の結果として、殊に微少量の窒素、酸素および/または水素を含有することができる。水素と炭素とのモル比は、一般的に1:2の値、殊に1:3の値、特に1:4の値を上廻らない。この値は、0または実質的に0、例えば0.1以下であってもよい。
【0023】
炭素相Cにおいて、炭素は、例えば特性結合エネルギー(284.5eV)および特性不斉信号形につきESCA試験に基づいて決定されうるような主に黒鉛の形または非晶質の形で存在する。黒鉛の形の炭素とは、炭素が少なくとも部分的に、黒鉛にとって典型的な六方晶層配置で存在することであり、この場合前記層は、湾曲していてもよいし、剥離していてもよい。
【0024】
本発明によれば、電気活性物質は、化学量論的量のMOxを有する相、即ち本質的に酸化物の形および/または元素の形で存在する金属または半金属からなる相を含む。従って、この相は、以下、MOx相とも呼称される。一般的に、金属または半金属Mは、リチウムと合金を形成しうる金属およびこの金属の混合物の中から選択される。このための例は、周期律表の第3主族(IUPACによる第3族)の金属および半金属、殊にアルミニウム、周期律表の第4主族(IUPACによる第14族)の半金属および金属、周期律表の第4副族(IUPACによる第4族)、殊にジルコニウムおよびチタン、および周期律表の第5主族(IUPACによる第15族)の半金属、殊にアンチモンが有利である。その中で好ましいのは、珪素およびチタンである。殊に、この金属は、酸素とは異なる、MOx相の原子90質量%になる。殊に、MOx相中の原子Mの少なくとも90モル%、殊に少なくとも95モル%は、珪素原子である。MOx相は、金属または半金属と共に酸素を含有することができ、この場合酸素原子の可能な最大量は、金属または半金属の最大原子価によって決定される。それに応じて、xの値は、最大で金属または半金属の原子価の半分以下、即ちk/2以下である。好ましくは、酸素は、存在するならば、不足当量で存在し、即ちxの値は、k/2未満であり、および殊にk/4以下である。好ましくは、xは、0〜2の値、殊に0〜1の値を表わす。
【0025】
本発明による電気活性物質において、(半)金属原子Mと炭素原子Cとのモル比、即ちモル比M:Cは、幅広い範囲を超えて変動することができ、および特に1:30〜2:1の範囲内、殊に1:16〜1:1の範囲内にある。
【0026】
本発明による電気活性物質において、炭素相CおよびMOx相は、幅広い範囲に亘って共連続相配置で存在し、即ちそれぞれの相は、本質的に場合によっては連続的相ドメインによって包囲されている、絶縁された相ドメインを全く形成しない。むしろ、2つの相は、空間的に互いに別々に連続相ドメインを形成し、これらの連続相ドメインは、透過電子顕微鏡を用いて物質の検査によって確認できるように噛み合っている。前記概念に関連して、連続相ドメイン、非連続相ドメインおよび共連続相ドメインは、W.J.Work et al.Definitions of Terms Related to Polymer Blends,Composites and Multiphase Polymerie Materials,(IUPAC Recommendations 2004),Pure Appl.Chem.,76(2004),第1985〜2007頁、殊に第2003頁にも指摘されている。これに基づいて、二成分系混合物の共連続相配置とは、2つの相または成分の相が別々に配置されていることであり、この場合それぞれの相のドメイン内でドメインの相境界面のそれぞれの範囲は、連続的な通路が相境界面を通過するかまたは相境界面と交差することなしに、連続的な通路によって互いに結合されていてよい。
【0027】
本発明による電気活性物質において、炭素相およびMOx相が本質的に共連続相ドメインを形成する範囲は、電気活性物質少なくとも80容量%、殊に90容量%になる。 本発明による電気活性物質において、隣接した相境界間の距離または隣接した同一相のドメイン間の距離は、僅かであり、平均で10nm以下、殊に5nm以下、特に2nm以下である。隣接した同一相の距離とは、例えば炭素相のドメインを互いに分離する、MOx相の2つのドメインの距離であるか、またはMOx相のドメインを互いに分離する、炭素相Cの2つのドメインの距離である。隣接した同一相のドメインの間の平均間隔は、小角X線散乱(SAXS=Small Angle X−ray Scattering)における散乱ベクターqにより測定されることができる(20℃での透過測定、単色CuKα線、2D検出器(イメージングプレート))。
【0028】
相範囲の大きさ、ひいては隣接した相境界間の距離および相の配置は、透過電子顕微鏡、殊にHAADF−STEM技術(HAADF−STEM=high angle annular darkfield scanning electron microscopy高角環状暗視野走査透過電子顕微鏡)によっても測定される。この結像技術の場合、比較的重い元素(例えば、Cと比較したSiのように)は、より軽い元素よりも明るく現れる。調製人為現象は、同様に確認することができる。それというのも、調製物の濃度の高い範囲は、低い濃度の範囲よりも明るく現れるからである。
【0029】
本発明による電気活性物質の製造は、第1の工程において、いわゆるツイン重合法を含み、第2の工程においてツイン重合法の際に生じる有機ポリマーの炭化、即ち実質的に、または完全に酸素排除下での炭化を含むような方法によって成功する。
【0030】
ツイン重合法とは、
酸化物を形成する金属または半金属を有する第1のモノマー単位を有し、および
1個以上の化学結合により、殊に1個以上の共有結合により第1のモノマー単位と結合している第2の有機モノマー単位を有するモノマーの重合法である。
【0031】
ツイン重合法の重合条件は、モノマーの重合の際に第1のモノマー単位と第2のモノマーとが同期的に重合するように選択され、この場合第1のモノマー単位は、金属または半金属を含有する、第1の、一般的に酸化物の高分子物質を形成し、同時に第2のモノマー単位は、第2のモノマー単位から構成されている有機ポリマーを形成する。"同期的に"の概念は、第1のモノマー単位と第2のモノマー単位との重合が同じ速度で進行することを必ずしも意味するものではない。むしろ、"同期的に"とは、第1のモノマー単位と第2のモノマーとの重合が動力学的に結合され、同じ重合条件によって開始されることである。
【0032】
重合条件とは、部分的または完全な相分離が、第1の高分子物質によって形成される第1の相中に、および第2のモノマー単位から構成された有機ポリマー(第2の高分子物質)によって形成される第2の相中に生じることである。こうして、第1の高分子物質と第2の高分子物質とからなる複合材料が得られる。同期的重合のために、この複合材料は、それらの寸法が数ナノメートルの範囲内にある、第1の高分子物質と第2の高分子物質とからなる極めて小さな相領域の構成を生じ、この場合第1の高分子物質の相ドメインと第2の高分子物質の相ドメインとは、共連続相配置を有する。隣接した相境界間の距離または隣接した同一相のドメイン間の距離は、極端に僅かであり、平均で10nm以下、殊に5nm以下、特に2nm以下である。それぞれの相の非連続的ドメインの巨視的に目視可能な分離は、生じない。意外なことに、相ドメインの共連続相配置は、相ドメインの僅かな寸法と同様にその後の焼成中にそのまま維持される。
【0033】
ツイン重合法は、原則的に公知であり、最初にS.Spange et al.,Angew.Chem.Int.Ed.,46(2997)628−632によってテトラフルフリルオキシシランからポリオールフルフリルアルコールおよび二酸化珪素への陽イオン重合につき、ならびにジフルフリルオキシジメチルシランからポリフルフリルアルコールおよびポリジメチルシロキサンへの陽イオン重合につき記載された。更に、PCT/EP 2008/010168[WO 2009/083082]およびPCT/EP 2008/010169[WO 2009/083083]には、場合により置換された2,2’−スピロ[4H−1,3,2−ベンゾジオキサシリン](以下、SPISI)のツイン重合法が記載されている。この場合、これに関連するPCT/EP 2008/010168[WO 2009/083082]中およびPCT/EP 2008/010169[WO 2009/083083]中の開示は、全面的に参考のために挙げたものである。
【0034】
ツイン重合法に適しているモノマーは、公知技術水準から公知であるか、またはそこに記載された方法と同様の方法で製造されることができる。この状況で、例えば冒頭に引用された刊行物ならびに次の刊行物の箇所が指摘される:
Silylenolether(Chem.Ber.119,3394(1986);J.Organomet.Chem.244,381(1981);JACS 112,6965(1990))
Cycloboroxane(Bull.Chem.Jap.51,524(1978);Can.J.Chem.67,1384(1989);J.Organomet.Chem.590,52(1999))
Cyclosilikate und −germanate(Chemistry of Heterocyclic Compounds,42,1518,(2006);Eur.J.Inorg.Chem.(2002),1025;J.Organomet.Chem.1,93(1963);J.Organomet.Chem.212,301(1981);J.Org.Chem.34.2496(1968);Tetrahedron 57,3997(2001)ならびに古典的な国際出願WO 2009/083082およびWO 2009/083083)
Cyclostannane(J.Organomet.Chem.1,328(1963))
Cyclozirkonate(JACS 82,3495(1960))。
【0035】
本発明による物質の製造に適したモノマーは、殊に一般式I:
【化1】

[式中、
Mは、金属または半金属、殊に周期律表の第3族、第4族、第14族または第15族の金属または半金属、特にB、Al、Si、Ti、Zr、Hf、Ge、Sn、Pb、As、SbおよびBi、殊にB、Al、Si、Ti、Zr、SnおよびSbから選択されたものを表わし、この場合Mは、特に有利にSiを表わし;
1、R2は、同一でも異なっていてもよく、基Ar−C(Ra,Rb)−を表わし、この場合Arは、ハロゲン、CN、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシおよびフェニルから選択された、場合により1または2個の置換基を有する芳香族基またはヘテロ芳香族基を表わし、Ra,Rbは、互いに独立に水素またはメチルを表わすか、または一緒になって酸素原子またはメチリデン基(=CH2)を表わすか、またはR1とR2は、酸素原子と一緒になって、またはR1およびR2が結合している基Qと一緒になって、式A
【化2】

で示される基を表わし、上記式中、#は、Mとの結合を表わし、Aは、二重結合に縮合された芳香族環またはヘテロ芳香族環を表わし、mは、0、1または2を表わし、基Rは、同一でも異なっていてもよく、ハロゲン、CN、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシおよびフェニルから選択され、Ra,Rbは、前記の意味を有し、X,Yは、同一でも異なっていてもよく、酸素、硫黄、NHまたは1個の化学結合を表わし、qは、Mの原子価に相当して0、1または2を表わし、
Qは、酸素、硫黄またはNH、殊に酸素を表わし、
1'、R2'は、同一でも異なっていてもよく、C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、アリールまたは基Ar’−C(Ra',Rb')−を表わし、その際Ar’は、Arに対して記載した意味を有し、Ra',Rb'は、Ra,Rbに対して記載した意味を有するか、またはq=1に関連して、R1'、R2'は、XおよびYと一緒になって前記に定義したような式Aの基を表わすことができる〕によって記載することができる。
【0036】
本発明による物質の製造のためには、M、R1、R2、Q、q、YおよびR2'が前記の意味を有し、基R1'が式:
【化3】

〔式中、q、R1、R2、R2'、YおよびQは、前記の意味を有し、X''は、Qに対して記載した意味を有し、殊に酸素を表わし、および#は、Mに対する結合を意味する〕で示される基を表わすような式Iのモノマーも適している。これらの中で、M、R1、R2、Q、q、YおよびR2'は、好ましいものとして指摘した意味を有するようなモノマー、殊に基R1QとR2Qとが一緒になって式Aの基を表わすようなモノマーが好ましい。
【0037】
従って、本発明の対象は、
a)前記に定義したような炭素相C;および
b)前記に定義したような少なくとも1つのMOx相を含み、その中でMは、金属または半金属、殊にB、Al、Si、Ti、Zr、SnまたはSb、特にSiを表わし、xは、0ないし<k/2の数、殊に0〜2の数、特に0〜1の数を表わし、その際kは、金属または半金属の最大原子価を表わす、電気活性物質を製造するための方法でもあり、
この場合この方法は、次の工程:
i)非水性重合媒体中での前記に定義したような式Iの少なくとも1つのモノマーの重合
および
ii)酸素の実質的または完全な排除下でのその際に得られたポリマーのか焼を有する。
【0038】
従って、本発明の対象は、
a)前記に定義したような炭素相C;および
b)前記に定義したような少なくとも1つのMOx相を含み、その中で、Mは、金属または半金属、殊にB、Al、Si、Ti、Zr、SnまたはSb、特にSiを表わし、xは、0ないし<k/2の数、殊に0〜2の数、特に0〜1の数を表わし、その際kは、金属または半金属の最大原子価を表わし;
および本発明による方法によって得られる電気活性物質でもある。
【0039】
芳香族基は、本発明の範囲内で炭素環式芳香族炭化水素基、例えばフェニルまたはナフチルである。
【0040】
ヘテロ芳香族基は、本発明の範囲内で一般に5または6個の環員を有するヘテロ環式芳香族基であり、この場合環員の1つは、窒素、酸素および硫黄から選択されるヘテロ原子であり、場合により1または2個の他の環員は、窒素原子であってもよく、残りの環員は、炭素である。ヘテロ芳香族基の例は、フリル、チエニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、ピリジルおよびチアゾリルである。
【0041】
縮合された芳香族基または芳香族環は、本発明の範囲内で炭素環式芳香族の二価の炭化水素基、例えばo−フェニレン(ベンゾ)または1,2−ナフチレン(ナフト)である。
【0042】
縮合されたヘテロ芳香族基またはヘテロ芳香族環は、本発明の範囲内で前記に定義されたようなヘテロ環式芳香族基であり、その際2個の隣接したC原子は、式A中または式IIおよびIII中で表わされた二重結合を形成する。
【0043】
式Iのモノマーの第1の実施態様によれば、基R1OおよびR2Oは、一緒になって前記に定義したような式Aの基、殊に式Aa:
【化4】

〔式中、#、m、Q、R、RaおよびRbは、前記の意味を有する〕で示される基を表わす。式AおよびAaにおいて、変数mは、0を表わし、Qは、殊に酸素を表わす。mが1または2を表わす限り、Rは、殊にメチル基またはメトキシ基を表わす。式AおよびAaにおいて、RaおよびRbは、殊に水素を表わす。
【0044】
第1の実施態様のモノマーの中で、殊にq=1であり、および基X−R1'およびY−R2'が共通して式Aの基、殊に式Aaの基を表わすような式Iのモノマーが好ましい。この種のモノマーは、次の式IIまたはIIa:
【化5】

によって記載することができる
更に、第1の実施態様のモノマーの中で、qが0または1を表わし、および基X−R1'が式A’またはAa’:
【化6】

〔式中、m、A、R、Ra、Rb、G、Q、X''、Y、R2'およびqは、前記した、殊に有利なものとして記載された意味を有する〕で示される基を表わすような式Iのモノマーが好ましい。
【0045】
この種のモノマーは、次の式II’またはIIa’:
【化7】

によって記載することができる:
式IIおよびII’において、変数は、次の意味を有する:
Mは、金属または半金属、特に周期律表の第3主族または第4主族、または第4副族または第5副族の金属または半金属、殊にB、Al、Si、Ti、Zr、Hf、Ge、Sn、Pb、V、As、SbまたはBi、特に有利にSi、Ti、ZrまたはSn、特にSiを表わし;
A、A’は、互いに独立に二重結合に対して縮合された芳香族環またはヘテロ芳香族環を表わし;
m、nは、互いに独立に0、1または2、殊に0を表わし;
Q、Q’は、互いに独立にO、SまたはNH、殊にOまたはNH、特にOを表わし;
R、R’は、互いに独立にハロゲン、CN、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシおよびフェニルの中から選択され、殊にメチルまたはメトキシを表わし;
a、Rb、Ra'、Rb'は、互いに独立に水素およびメチルから選択されるか、またはRaおよびRbおよび/またはRa'およびRb'は、それぞれ共通して酸素原子または=CH2を表わし;殊にRa、Rb、Ra'、Rb'は、それぞれ水素を表わし;
Lは、基(Y−R2'qを表わし、その際Y、R2'およびqは、前記の意味を有し;殊にqは、0を表わし;および
X''は、Qに対して記載された意味を有し、殊に酸素を表わす。
【0046】
式IIaにおいて、変数は、次の意味を有する:
Mは、金属または半金属、特に周期律表の第3主族または第4主族、または第4副族または第5副族の金属または半金属、殊にB、Al、Si、Ti、Zr、Hf、Ge、Sn、Pb、V、As、SbまたはBi、特に有利にSi、Ti、ZrまたはSn、特にSiを表わし;
m、nは、互いに独立に0、1または2、殊に0を表わし;
Q、Q’は、互いに独立にO、SまたはNH、殊にOまたはNH、特にOを表わし;
R、R’は、互いに独立にハロゲン、CN、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシおよびフェニルの中から選択され、殊にメチルまたはメトキシを表わし;
a、Rb、Ra'、Rb'は、互いに独立に水素およびメチルから選択されるか、またはRaおよびRbおよび/またはRa'およびRb'は、それぞれ共通して酸素原子または=CH2を表わし;殊にRa、Rb、Ra'、Rb'は、それぞれ水素を表わし;
Lは、基(Y−R2'qを表わし、その際Y、R2'およびqは、前記の意味を有し;殊にqは、0を表わす。
【0047】
式IIまたはIIaのモノマーの1例は、2,2’−スピロビス[4H−1,3,2−ベンゾジオキサシリン]である(M=Si、m=n=0、G=O、Ra=Rb=Ra'=Rb'=水素である式IIaの化合物)。この種のモノマーは、古典的な国際特許出願WO 2009/083082およびPCT/EP 2008/010169[WO 2009/083083]から公知であるか、またはそこに記載された方法により製造されてよい。モノマーIIaのもう1つの例は、2,2−スピロビ[4H−1,3,2−ベンゾジオキサボリン]である(Bull.Chem.Soc.Jap.51(1978)524):(M=B、m=n=0、G=O、Ra=Rb=Ra'=Rb'=水素である式IIaの化合物)。モノマーIIa'のもう1つの例は、ビス−[4H−1,3,2−ベンゾジオキサボリン−2−イル]オキシドである(M=B、m=n=0、L不在(q=0)、G=O、Ra=Rb=Ra'=Rb'=水素である式IIa'の化合物;Bull.Chem.Soc.Jap.51(1978)524)。
【0048】
モノマーIIおよびIIaにおいて、単位MQQ’またはMO2は、重合可能な単位Aを形成し、これに対して、モノマーIIまたはIIaの残りの部分、即ち式AまたはAaの基は、原子QまたはQ’を差し引いて(またはAa中の酸素原子を差し引いて)重合可能な単位Bを形成する。
【0049】
更に、第1の実施態様のモノマーの中で基X−R1'とY−R2'が等しいかまたは異なり、C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキルおよびアリール、例えばフェニルの中から選択され、即ちXおよびYは、1個の化学結合を表わすような式Iのモノマーは、好ましい。この種のモノマーは、次の式IIIまたはIIIa:
【化8】

によって記載することができる:
式IIIにおいて、変数は、次の意味を有する:
Mは、金属または半金属、特に周期律表の第3主族または第4主族、または第4副族または第5副族の金属または半金属、殊にB、Al、Si、Ti、Zr、Hf、Ge、Sn、Pb、V、As、SbまたはBi、特に有利にSi、Ti、ZrまたはSn、特にSiを表わし;
Aは、二重結合に対して縮合された芳香族環またはヘテロ芳香族環を表わし;
mは、0、1または2、殊に0を表わし;
qは、Mの原子価および電荷に相応して0、1または2を表わし;
Qは、O、SまたはNH、殊にOまたはNH、特にOを表わし;
基Rは、互いに独立にハロゲン、CN、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシおよびフェニルの中から選択され、殊にメチルまたはメトキシを表わし;
a、Rbは、互いに独立に水素およびメチルの中から選択されるか、またはRa、Rbは、共通して酸素または=CH2 sを表わし、殊に双方共に水素を表わし;
c、Rdは、同一かまたは異なり、C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキルおよびアリールの中から選択され、殊にメチルを表わす。
【0050】
式IIIaにおいて、変数は、次の意味を有する:
Mは、金属または半金属、特に周期律表の第3主族または第4主族、または第4副族または第5副族の金属または半金属、殊にB、Al、Si、Ti、Zr、Hf、Ge、Sn、Pb、V、As、SbまたはBi、特に有利にSi、Ti、ZrまたはSn、特にSiを表わし;
mは、0、1または2、殊に0を表わし;
qは、Mの原子価および電荷に相応して0、1または2を表わし;
Qは、O、SまたはNH、殊にOまたはNH、特にOを表わし;
基Rは、互いに独立にハロゲン、CN、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシおよびフェニルの中から選択され、殊にメチルまたはメトキシを表わし;
a、Rbは、互いに独立に水素およびメチルの中から選択されるか、またはRa、Rbは、共通して酸素または=CH2を表わし、殊に双方共に水素を表わし;
c、Rdは、同一かまたは異なり、C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキルおよびアリールの中から選択され、殊にメチルを表わす。
【0051】
式IIIまたはIIIaのモノマーの例は、2,2−ジメチル−4H−1,3,2−ベンゾジオキサシリン(M=Si、q=1、m=0、G=O、Ra=Rb=水素、Rc=Rd=メチルである式IIIaの化合物)、2,2−ジメチル−4H−1,3,2−ベンゾオキサザシリン(M=Si、q=1、m=0、G=NH、Ra=Rb=水素、Rc=Rd=メチルである式IIIaの化合物)、2,2−ジメチル−4−オキソ−1,3,2−ベンゾジオキサシリン(M=Si、q=1、m=0、G=O、Ra+Rb=O、Rc=Rd=メチルである式IIIaの化合物)および2,2−ジメチル−4−オキソ−1,3,2−ベンゾオキサザシリン(M=Si、q=1、m=0、G=NH、Ra+Rb=O、Rc=Rd=メチルである式IIIaの化合物)である。この種のモノマーは、例えばWieber et.al.,Journal of Organometallic Chemistry,1,1963,93,94から公知である。モノマーIIIaのさらなる例は、2,2−ジフェニル[4H−1,3,2−ベンゾジオキサシリン](J.Organomet.Chem.71(1974)225);2,2−ジ−n−ブチル[4H−1,3,2−ベンゾジオキサスタンニン](Bill.Soc.Chim.Belg.97(1988)873);2,2−ジメチル[4−メチリデン−1,3,2−ベンゾジオキサシリン](J.Organomet.Chem.,244,C5−C8(1983));2−メチル−2−ビニル[4−オキソ−1,3,2−ベンゾジオキサザシリン]である。
【0052】
式Iのモノマーの第2の実施態様によれば、R1およびR2は、基Ar−C(R3,Rb)、特に基Ar−CH2(Ra=Rb=水素)を意味し、この場合Arは、前記の意味を有し、殊にフリル、チエニル、ピロリルおよびフェニルの中から選択され、この場合4つの記載された環は、置換されていないか、またはハロゲン、CN、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシおよびフェニルの中から選択された、1または2個の置換基を有する。殊に、Arは、場合によってはハロゲン、CN、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシおよびフェニルの中から選択された1または2個の置換基を有するフリルを表わし、およびこのフリルは、殊に置換されていない。この場合、R1およびR2は、異なっていてよい。
【0053】
第2の実施態様のモノマーは、一般式IV:
【化9】

〔式中、M、q、Ar、X、Y、R1'、R2'、RaおよびRbは、前記の意味を有し、Ar’は、Arに対して記載されて意味を有し、Ra'およびRb'は、互いに独立に水素またはメチルを表わす〕によって記載することができる。式IVにおいて、Mは、殊に周期律表第3族、第4族、第14族または第15族の金属または半金属、特にB、Al、Si、Ti、Zr、SnまたはSb、特にSiを表わす。変数qは、殊に1を表わす。式IVにおいて、RaおよびRbならびにRa'およびRb'は、殊に水素を表わす。式IVにおいて、ArとAr’は、同一かまたは異なり、殊にフリル、チエニル、ピロリルおよびフェニルの中から選択され、この場合4つの記載された環は、置換されていないか、またはハロゲン、CN、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシおよびフェニルの中から選択された1または2個の置換基を有する。殊に、ArおよびAr’は、場合によってはハロゲン、CN、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシおよびフェニルの中から選択された1または2個の置換基を有するフリルを表わし、およびこのフリルは、殊に置換されていない。
【0054】
第2の実施態様のモノマーの中で、殊にq=0、1または2、殊にq=1であり、および基X−R1'およびY−R2'が同一かまたは異なり、基Ar−C(Ra,Rb)、特に基Ar−CH2(Ra=Rb=水素)を表わすような式IVのモノマーが好ましく、この場合Arは、前記の意味を有し、殊にフリル、チエニル、ピロリルおよびフェニルの中から選択され、その際4個の記載された環は、置換されていないかまたはハロゲン、CN、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシおよびフェニルの中から選択された1または2個の置換基を有する。この種のモノマーは、次の式VまたはVa:
【化10】

【0055】
【化11】

〔式中、M、k、Ar、RaおよびRbは、前記の意味を有し、Ar’は、Arに対して記載された意味を有し、Ra'およびRb'は、水素またはメチル、特に水素を表わす〕によって記載することができる。式VおよびVaにおいて、Mは、殊に周期律表第3族、第4族、第14族または第15族の金属または半金属、特にB、Al、Si、Ti、Zr、SnまたはSb、特にSiを表わす。式VおよびVaにおいて、qは、殊に1を表わす。式Vにおいて、ArとAr’は、同一かまたは異なり、特にフリル、チエニル、ピロリルおよびフェニルの中から選択され、この場合4つの記載された環は、置換されていないか、またはハロゲン、CN、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシおよびフェニルの中から選択された1または2個の置換基を有する。殊に、ArおよびAr’は、場合によってはハロゲン、CN、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシおよびフェニルの中から選択された1または2個の置換基を有するフリルを表わし、およびこのフリルは、殊に置換されていない(式Va)。式Vaにおいて、mは、0、1または2、殊に0を表わし、Rは、ハロゲン、CN、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシおよびフェニル、特にメチルおよびメトキシの中から選択されたものである。式VまたはVaのモノマーのための1例は、テトラフルフリルオキシシランである(M=Si、q=1m、m=0、Ra=Rb=水素である式Vaの化合物)。モノマーVまたはVaのもう1つの例は、テトラフルフリルオルトチタネートである:Adv.Mater.2008,20,4113.この化合物は、四量体化されて(μ4−オキシド)−ヘキサキス(m−フルフリルオキソ)−オクタキス(フルフリルオキソ)テトラチタニウムに変わり、これは、ツインモノマーとして使用される。モノマーVまたはVaのもう1つの例は、トリフルフリルオキシボランである:この種のモノマーは、公知技術水準、例えば冒頭に引用されたSpange等の論文およびその中で引用された刊行物の記載から公知であるか、または同様に製造されてよい。
【0056】
更に、第2の実施態様のモノマーの中で基X−R1'とY−R2'が等しいかまたは異なり、C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキルおよびアリール、例えばフェニルの中から選択され、即ちXおよびYは、1個の化学結合を表わすような式IVのモノマーは、好ましい。この種のモノマーは、次の式VIまたはVIa:
【化12】

によって記載することができる
式VIおよびVIaにおいて、Mは、殊に周期律表第3族、第4族、第14族または第15族の金属または半金属、特にB、Al、Si、Ti、Zr、SnまたはSb、特にSiを表わす。変数qは、殊に1を表わす。式VIにおいて、ArとAr’は、同一かまたは異なり、特にフリル、チエニル、ピロリルおよびフェニルの中から選択され、この場合4つの記載された環は、置換されていないか、またはハロゲン、CN、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシおよびフェニルの中から選択された1または2個の置換基を有する。殊に、ArおよびAr’は、場合によってはハロゲン、CN、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシおよびフェニルの中から選択された1または2個の置換基を有するフリルを表わし、およびこのフリルは、殊に置換されていない(式Va)。式VIaにおいて、mは、0、1または2、殊に0を表わし、Rは、ハロゲン、CN、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシおよびフェニル、特にメチルおよびメトキシの中から選択されたものである。式VIおよびVIaにおいて、RcおよびRdは、殊にC1〜C6アルキル、特にメチルを表わす。式VIまたはVIaのモノマーのための1例は、ビス(フルフリルオキシ)ジメチルシランである(M=Si、q=1、m=0、Ra=Rb=水素、Rc=Rd=メチルである式VIaの化合物)。この種のモノマーは、公知技術水準、例えば冒頭に引用されたSpange等の論文およびその中で引用された刊行物の記載から公知であるか、または同様に製造されてよい。
【0057】
更に、本発明による物質を製造するために、平均で少なくとも2個の同一かまたは異なるアリール基、殊にフェニル環に結合されたトリアルキルシリルオキシメチル基および/またはアリールジアルキルシリルオキシメチル基を有する芳香族化合物が適している。これに関連して、アルキルは、1〜4個のC原子を有するアルキル、殊にメチルまたはエチルを表わす。これに関連して、アリールは、フェニルまたはナフチル、殊にフェニルを意味する。トリアルキルシリルオキシメチル基の1例は、トリメチルシリルオキシメチルである((H3C)3Si−O−CH2−)。アリールジアルキルシリルオキシメチル基の1例は、ジメチルフェニルシリルオキシメチルである(フェニル(H3C)2Si−O−CH2−)。この場合、トリアルキルシリルオキシメチル基および/またはアリールジアルキルシリルオキシメチル基が結合したアリール環は、さらなる置換基、例えばC1〜C4アルコキシ、例えばメトキシ、C1〜C4アルキル、トリアルキルシリルオキシまたはアリールジアルキルシリルオキシを有することができる。殊に、この種のツインモノマーは、フェノール系化合物のフェニル環に結合された少なくとも2個のトリアルキルリルオキシメチル基および/またはアリールジアルキルシリルオキシメチル基を有するフェノール系化合物であり、この場合このフェノール系化合物のOH基は、殊にトリアルキルシリル基および/またはアリールジアルキルシリル基でエーテル化されていてよい。この種の化合物は、芳香族化合物、殊にフェノール化合物をヒドロキシメチル化し、引続きトリアルキルハロゲンシランまたはアリールジアルキルハロゲンシランと反応させることによって製造されてよく、その際フェノール系出発物質の場合には、ヒドロキシメチル基だけでなく、フェノール系OH基も相応するシリルエーテルに変換される。芳香族化合物の例は、殊にフェノール系化合物、例えばフェノール、クレゾールおよびビスフェノールA(=2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン)である。平均で少なくとも2個の同一かまたは異なるアリール基、殊にフェニル環に結合されたトリアルキルシリルオキシメチル基および/またはアリールジアルキルシリルオキシメチル基を有する前記の芳香族化合物は、互いに共重合されてよい。この場合には、基礎とする芳香族化合物において区別されるような化合物が選択されるであろう。特に、平均で少なくとも2個の同一かまたは異なるアリール基、殊にフェニル環に結合したトリアルキルシリルオキシメチル基および/またはアリールジアルキルシリルオキシメチル基を有する芳香族化合物は、一緒になって式II、IIa、II’またはII’aのモノマー、または式IVまたはVまたはVaの化合物と共重合される。
【0058】
本発明の1つの好ましい実施態様において、式Iの重合すべきモノマーは、式IIの少なくとも1つのモノマー、殊に式IIaのモノマーを含み、この場合変数は、前記の意味、殊に有利であると記載された意味を有する。殊に、式IIのモノマーは、重合すべきモノマーの主要成分を特に少なくとも90質量%形成する。殊に、式IIのモノマーおよび特に式IIaのモノマーは、単独のモノマーである。
【0059】
本発明の同様に好ましい実施態様において、式Iのモノマーは、第1のモノマーおよび第1のモノマーとは異なる少なくとも1つの第2のモノマーを、例えば原子Mの性状の点で、または基R1、R2、XR1'および/またはYR2'の少なくとも1つにおいて含む。更に、殊に重合すべきモノマーは、式IIの少なくとも1つのモノマー、殊に式IIaのモノマー、ならびにそれとは異なる、特に金属原子において式IIまたはIIaの第1のモノマーと区別される式IIまたはIIaのモノマーの中から選択された、ならびに式II’、IIa’、III、IIIa、IV、V、Va、VIおよびVIaの中から選択されたモノマーを含む。この場合、式IIまたはIIaのモノマーと単数または複数の他のモノマーとのモノマーの質量比は、一般に10:1〜1:10の範囲内にある。
【0060】
式Iのモノマーを重合する場合およびそれに応じて式II、IIa、III、IIIa、IV、V、Va、VIおよびVIaのモノマーを重合する場合も、第2の有機高分子物質は、基R1およびR2、または基R1およびR2に相当する分子部分、ならびにX=Y=Oに対して基R1'およびR2'、または基R1'およびR2'に相当する分子部分を形成し、これに対して第1の有機高分子物質は、酸素原子の一部分を有する(半)金属原子Mを形成し、およびXおよびYが1個の結合を表わす場合には、基XR1'およびYR2'を形成する。
【0061】
モノマーIは、公知技術水準において記載された方法と同様に重合されてよく、殊にプロトン性触媒反応下または非プロトン性ルイス酸の存在下で実施される。この場合、好ましい触媒は、ブレンステッド酸、例えば有機カルボン酸、例えばトリフルオロ酢酸または乳酸、ならびに有機スルホン酸、例えばメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸またはトルエンスルホン酸である。同様に、無機ブレンステッド酸、例えばHCl、H2SO4またはHClO4も適している。ルイス酸として、例えばBF3、BCl3、SnCl4、TiCl4またはAlCl3が使用されてよい。複雑に結合されたかまたはイオン性液体中に溶解されたルイス酸を使用することも可能である。前記酸は、通常、モノマーに対して0.1〜10質量%、有利に0.5〜5質量%の量で使用される。
【0062】
重合は、物質中または特に不活性の希釈剤中で実施されてよい。適した希釈剤は、例えばハロゲン化炭化水素、例えばジクロロメタン、トリクロロメタン、ジクロロエテン、または炭化水素、例えばトルエン、キシレンまたはヘキサンおよびこれらの混合物である。
【0063】
特に、式Iのモノマーの重合は、水の実質的な不在下で実施され、即ち重合の開始時の水の濃度は、0.1質量%未満である。それに応じて、式Iのモノマーとして、重合条件下で水を分離しないようなモノマーが好ましい。このようなモノマーは、殊に式II、IIa、IIIおよびIIIaのモノマーを含む。
【0064】
重合温度は、通常、0〜150℃の範囲内、殊に20〜100℃の範囲内にある。
【0065】
式Iのモノマーの重合は、引続き精製工程および場合により乾燥工程を続けることができる。
【0066】
本発明による方法の工程i)における重合は、引続きか焼を続ける。この場合、式Iのモノマー(または式II、IIa、III、IIIa、IV、V、Va、VIおよび/またはVIaのモノマー)の重合の際に形成された有機高分子物質は、炭化され、炭素相に変わる。
【0067】
一般に、か焼は、400〜1500℃の範囲内、殊に500〜1100℃の範囲内の温度で実施される。
【0068】
更に、か焼は、通常、酸素の実質的な排除下に行なわれる。換言すれば、か焼中に、酸素分圧は、か焼が実施される反応帯域中で僅かであり、特に20ミリバール、殊に10ミリバールを上廻らない。特に、か焼は、不活性ガス雰囲気中で、例えば窒素またはアルゴンの下で実施される。特に、不活性ガス雰囲気は、酸素1体積%未満、殊に0.1体積%未満を含有する。同様に、本発明の好ましい実施態様において、か焼は、還元条件下で、例えば水素(H2)、炭化水素、例えばメタン、エタンまたはプロパン、またはアンモニア(NH3)を、場合により不活性ガス、例えば窒素またはアルゴンとの混合物として含む雰囲気中で実施される。
【0069】
揮発性成分を除去するために、か焼は、還元性ガス、例えば水素、炭化水素ガスまたはアンモニアを含む、不活性ガス流中またはガス流中で実施されてよい。
【0070】
本発明による物質は、既述したように、リチウムイオン電池中での使用の際に、特に好ましい性質、殊に高い比容量、良好なサイクル安定性、僅かな自己放電の傾向および僅かなリチウムデンドライトの形成傾向、ならびに帯電/放電プロセスに関連する好ましい力学現象(Kinetik)を示し、したがって、高い電流密度を達成することができる。
【0071】
従って、本発明の対象は、リチウムイオン電池用、殊にリチウムイオン二次電池用の負極中の電気活性物質の使用、ならびに本発明による電気活性物質を含む、リチウムイオン電池用、殊にリチウムイオン二次電池用の負極でもある。
【0072】
本発明による電気活性物質と共に、負極は、一般的に少なくとも1つの適当な結合剤を、本発明による電気活性物質ならびに場合による他の導電性成分または電気活性成分の補強のために含む。更に、負極は、一般的に電荷の入力および出力のために電気的接触を有する。場合による集電体および電気接点を差し引いた、負極物質の全質量に対する本発明による電気活性物質の量は、一般的に少なくとも40質量%、しばしば少なくとも50質量%、特に少なくとも60質量%である。
【0073】
本発明による負極中の他の導電性成分または電気活性成分として、カーボンブラック、黒鉛、炭素繊維、ナノカーボン繊維、ナノカーボンチューブまたは導電性ポリマーがこれに該当する。典型的には、導電性物質約2.5〜40質量%が本発明による電気活性物質50〜97.5質量%、しばしば60〜95質量%と一緒に負極中で使用され、この場合質量%の記載は、場合による集電体および電気接点を差し引いた、負極物質の全質量に対するものである。
【0074】
本発明による電気活性物質を使用して負極を製造するための結合剤として、殊に次の高分子物質がこれに該当する:
ポリエチレンオキシド(PEO)、セルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリルニトリル−メチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレン、スチレン−ブタジエンコポリマー、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロエチレンコポリマー、ポリビニリデンジフルオリド(PVdF)、ポリビニリデンジフルオリド−ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVdF−HFP)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ペルフルオロアルキル−ビニルエーテルコポリマー、ビニリデンフルオリド−ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー、ビニリデンフルオリド−クロロトリフルオロエチレンコポリマー、エチレン−クロロフルオロエチレンコポリマー、エチレン−アクリル酸コポリマー(ナトリウムイオンの包接化合物を有する、および該包接化合物を有しない)、エチレン−メタクリル酸コポリマー(ナトリウムイオンの包接化合物を有する、および該包接化合物を有しない)、エチレン−メタクリル酸エステルコポリマー(ナトリウムイオンの包接化合物を有する、および該包接化合物を有しない)、ポリイミドおよびポリイソブテン。
【0075】
結合剤は、場合によっては、場合により製造に使用される溶剤の性質を考慮しながら選択される。結合剤は、一般的に負極物質の全混合物に対して1〜10質量%の量で使用される。好ましくは、2〜8質量%、殊に3〜7質量%が使用される。
【0076】
負極は、冒頭に引用した公知技術水準または適切な専攻論文の記載から公知であるような通常の標準法で製造することができる。例えば、負極の製造のために、本発明による電気活性物質は、場合により有機溶剤(例えば、N−メチルピロリジノンまたは炭化水素溶剤)を使用して、場合により負極物質の他の成分(導電性成分および/または有機結合剤)と混合することができ、場合によっては成形法に掛けることができるか、または不活性の金属箔、例えばCu箔上にもたらすことができる。場合によっては、引続き乾燥される。この場合には、例えば80〜150℃の温度が使用される。乾燥プロセスは、減圧下で行なうこともでき、一般的に3〜49時間継続される。場合によっては、成形のために、溶融法または焼結法が使用されてもよい。
【0077】
更に、本発明の対象は、本発明による電気活性物質を含有する、少なくとも1つの負極を有する、リチウムイオン電池、殊にリチウムイオン二次電池である。
【0078】
この種の電池は、一般的に少なくとも1つの本発明による負極、リチウムイオン電池に適した正極、電解質および場合によりセパレーターを有する。
【0079】
適した正極物質、適した電解質、適したセパレーターおよび可能な配置に関連して、適切な公知技術水準、例えば冒頭に引用した公知技術水準ならびに相応する専攻論文および参考文献が指摘される:例えば、Wakihara et al.(編者)、Lithiumion Batteries,第1版,Wiley VCH,Weinheim,1998;David Linden:Handbook of Batteries(McGraw−Hill Handbook),第3版,McGraw−Hill Professional,New York 2008;J.O.Besenhard:Handbook of Battery Materials,Wiley−VCH,1998。
【0080】
正極として、殊に正極物質がリチウム遷移金属酸化物、例えばリチウム−コバルト酸化物、リチウム−ニッケル酸化物、リチウム−コバルト−ニッケル酸化物、リチウム−マンガン酸化物(スピネル)、リチウム−ニッケル−コバルト−アルミニウム酸化物、リチウム−ニッケル−コバルト−マンガン酸化物またはリチウム−バナジウム酸化物、またはリチウム遷移金属ホスフェート、例えばリチウム−鉄ホスフェートを含有するような正極がこれに該当する。
【0081】
これら2つの電極、即ち負極および正極は、液状電解質を使用して、または固体電解質を使用しても互いに結合される。液状電解質として、適した非プロトン性溶剤中、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネートおよびこれらのカーボネートと次の溶剤:〜の1つ以上との混合物中の、殊にリチウム塩および溶融されたLi塩の非水溶液(含水量一般的に20ppm未満)、例えばリチウムヘキサフルオロホスフェート、リチウム過塩素酸塩、リチウムヘキサフルオロ砒酸塩、リチウムトリフルオロメチルスルホネート、リチウム(ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド)またはリチウムテトラフルオロボレート、殊にリチウムヘキサフルオロホスフェートまたはリチウムテトラフルオロボレートの溶液がこれに該当する。ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメトキシエタン、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、ブチルラクトン、アセトニトリル、エチルアセテート、メチルアセテート、トルエンおよびキシレン、特にエチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの混合物固体電解質として、例えばイオン伝導性ポリマーが使用されてよい。
【0082】
電極間には、セパレーターが配置されていてよく、このセパレーターは、液状電解質で含浸されている。セパレーターの例は、殊にガラス繊維不織布ならびに多孔質有機ポリマーフィルム、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、PVdF等からなる多孔質フィルムである。
【0083】
前記多孔質フィルムは、例えばプリズム薄膜構造を有し、この場合固体の薄膜電解質は、負極であるフィルムと正極であるフィルムとの間に配置されている。中心の正極集電体は、複数の正極フィルムのそれぞれの正極フィルム間に配置され、両面セル構造を形成する。別の実施態様においては、片面セル構造を使用することができ、この場合単独の正極集電体は、単独の負極/セパレーター/正極要素の組合せに割り当てられている。この構造において、絶縁フィルムは、典型的には個々の負極/セパレーター/正極/集電体要素の組合せ間に配置されている。
【0084】
次の図および実施例は、本発明の説明に使用されるが、これに限定されるものではない。
【0085】
HAADF−STEM法によるTEM研究は、Tecnai F20透過電子顕微鏡(FEI,Eindhoven,NL)を用いて200kVの使用電圧で超薄膜技術(マトリックスとしての合成樹脂中への試料の埋設)で実施された。
【0086】
ESCA研究は、FEI社(Eindhoven,NL)のFEI 5500 LS X線光電子分光計を用いて実施された。
【0087】
小角X線散乱の研究は、20℃でスリットコリメーションでゲーベルミラーにより単色化されたCu線を用いて行なわれた。データは、背景に対して補正され、スリットコリメーションによって引き起こされたぶれに関連して鮮明にされた。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】106の大きさでの実施例1からの試料のHAADF−STEM検査法。
【図2】SWAXS研究の結果(補正および鮮明後の散乱ベクターqに依存する散乱強度として表わされた、実施例1(スリットD)および2(スリットB)からの試料の透過率。
【図3】サイクル数に依存する実施例1からの電極物質の容量のグラフ。
【実施例】
【0089】
製造例1:2,2’−スピロビス[4H−1,3,2−ベンゾジオキサシリン]
サリチルアルコール135.77g(1.0937モル)を85℃でトルエン中に溶解した。引続き、テトラメトキシシラン(TMOS)83.24g(0.5469モル)を徐々に滴加し、この場合テトラ−n−ブチルアンモニウムフルオリド0.3ml(THF中1M)を、TMOSの三分の一の添加後にシリンジを用いて突然に添加した。85℃で1時間攪拌し、引続きメタノール/トルエン共沸混合物を留去した(63.7℃)。残りのトルエンをロータリーエバポレータで除去した。生成物を得られた反応混合物からヘキサンを用いて約70℃で浸出した。20℃への冷却後、澄明な溶液を傾瀉した。ヘキサンの除去後、目的化合物を白色の固体として留めた。生成物は、ヘキサンでの再沈殿によってさらに精製することができる。
【0090】

【0091】
実施例1:電気活性物質の製造
1)2,2’−スピロビス[4H−1,3,2−ベンゾジオキサシリン]65gをトリクロロメタン500ml中に溶解した。反応容器を窒素で不活性化し、重合をメタンスルホン酸5gの添加によって23℃で開始した。この反応混合物を23℃でなお1時間さらに反応させ、ポリマーを濾別した。こうして得られたポリマーを真空乾燥炉中で50℃で質量が一定になるまで乾燥した。
2)工程1で得られた粉末を、引続き管状炉内で窒素流中で600℃で2時間か焼した。こうして、黒色粉末を得た。
【0092】
この粉末は、元素分析により、56.1質量%の炭素含量および15.4質量%の珪素含量を有していた。
【0093】
ESCAによれば、珪素は、本質的に二酸化珪素(103.3eVでの信号)として存在した。炭素は、本質的に黒鉛として存在した(284.5eVでの非対称信号)。
【0094】
SWAXSによれば、相の平均間隔は、1nm未満であった(図2参照)。
【0095】
TEM(透過電子顕微鏡)写真(図1)において、SiOxドメインの均一に分散された領域を確認することができる。このドメインの寸法は、0.2〜5nmの範囲内にある。
【0096】
実施例2:電気活性物質の製造
工程1で得られた粉末を、引続き管状炉内で窒素流中で800℃で2時間か焼した。こうして、黒色粉末を得た。
【0097】
この粉末は、元素分析により、55.9質量%の炭素含量および16.6質量%の珪素含量を有していた。
【0098】
ESCAによれば、珪素は、本質的に二酸化珪素として存在した。炭素は、本質的に黒鉛として存在した。
【0099】
SWAXSによれば、相の平均間隔は、1nm未満であった。
【0100】
実施例3:電気活性物質の製造
工程1で得られた粉末を、引続き管状炉内でアルゴン流中で1000℃で2時間か焼した。こうして、黒色粉末を得た。
【0101】
この粉末は、元素分析により、60.5質量%の炭素含量および16.3質量%の珪素含量を有していた。
【0102】
実施例4:電気活性物質の製造
工程1で得られた粉末を、引続き管状炉内で水素流中で1000℃で2時間か焼した。こうして、黒色粉末を得た。
【0103】
この粉末は、元素分析により、60.8質量%の炭素含量および15.7質量%の珪素含量を有していた。
【0104】
実施例5:負極の製造
負極の製造のために、実施例1で得られた粉末5gを、カーボンブラック5g(Super P(登録商標),Timcal AG社,6743 Bodio,Schweiz)、アセトニトリル16.4gおよび市販のコポリマーPVdF−HFP0.3gと、高速攪拌機(Ultra−Turrax(登録商標)T25 basic,IKA Labortechnik社,D−79219 Staufen)を用いて30秒間混合した。
【0105】
得られた黒色懸濁液を密閉されたガラス容器中でロール機上に脱ガス化し、引続き250μmの層厚でドクターブレードを用いてアルミ箔上に塗布した。真空乾燥炉中で80℃で1時間の乾燥後、塗布された層厚は、80μmであった。生じる負極物質から13mmの直径を有する電極を打ち抜き、グローブボックス中でアルゴン(それぞれ1ppm未満の酸素および水蒸気の含量)の下で電気化学的特性決定のためにセル中に取り付けた。
【0106】
正極として、750μmの厚さのLi箔(Sigma−Aldrich Chemie GmbH社,CH−9571 Buch SG,Schweiz)から打ち抜いた金属リチウムプレートを使用した。
【0107】
約1mmの厚さを有するガラス繊維フリースをセパレーターとして使用し、リチウムヘキサフルオロホスフェートLiPF6 1モル/l(製造業者:Ferro Corp.,Cleveland,USA)を含有する、1:1の比のジメチルカーボネートとエチレンカーボネートとの混合物を電解質溶液として使用した。
【0108】
安定性の試験のために、このセルを電気化学的特性決定のために測定ユニット中に取り付け、次のパラメーターを用いて作業を繰り返した:10mA/gでの放電;0から2.0Vへ繰り返されるセル電圧。この繰返し数に依存する容量は、図3に示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次のもの:
a)炭素相C;
b)少なくとも1つのMOx相を含み、その中でMは、金属または半金属を表わし、xは、0ないし≦k/2を表わし、この場合kは、金属または半金属の最大原子価を意味する電気活性物質において、
炭素相CおよびMOx相が本質的に共連続相ドメインを形成し、この場合同一の相の2つの隣接したドメインの平均間隔は、10nm以下であることを特徴とする、上記電気活性物質。
【請求項2】
MがB、Al、Si、Ti、Zr、Sn、Sbおよびこれらの混合物から選択される、請求項1記載の電気活性物質。
【請求項3】
Mの全体量に対してMの少なくとも90モル%がSiを表わす、請求項1または2記載の電気活性物質。
【請求項4】
xが0〜2の範囲内の値を表わす、請求項1から3までのいずれか1項に記載の電気活性物質。
【請求項5】
炭素相Cが0.5以下の水素と炭素とのモル比を有する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の電気活性物質。
【請求項6】
半金属または金属Mと炭素相Cとのモル比が1:30〜1:1の範囲内にある、請求項1から5までのいずれか1項に記載の電気活性物質。
【請求項7】
炭素相CおよびMOx相は本質的に共連続相ドメインを形成する範囲が電気活性物質少なくとも80%になる、請求項1から6までのいずれか1項に記載の電気活性物質。
【請求項8】
次の工程:
i)非水性重合媒体中での式I
【化1】

[式中、
Mは、金属または半金属を表わし;
1、R2は、同一でも異なっていてもよく、基Ar−C(Ra,Rb)−を表わし、この場合Arは、ハロゲン、CN、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシおよびフェニルから選択された、場合により1または2個の置換基を有する芳香族基またはヘテロ芳香族基を表わし、Ra,Rbは、互いに独立に水素またはメチルを表わすか、または一緒になって酸素原子またはメチリデン基(=CH2)を表わすか、または基R1OおよびR2Qは、式A
【化2】

で示される基を表わし、上記式中、Aは、二重結合に縮合された芳香族環またはヘテロ芳香族環を表わし、mは、0、1または2を表わし、基Rは、同一でも異なっていてもよく、ハロゲン、CN、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシおよびフェニルから選択され、Ra,Rbは、前記の意味を有し、
Qは、O、SまたはNHを表わし;qは、Mの原子価に相当して0、1または2を表わし、X、Yは、同一でも異なっていてもよく、O、S、NHまたは1個の化学結合を表わし;
1'、R2'は、同一でも異なっていてもよく、C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、アリールまたは基Ar’−C(Ra',Rb')−を表わし、その際Ar’は、Arに対して記載した意味を有し、Ra',Rb'は、Ra,Rbに対して記載した意味を有するか、またはR1'、R2'は、XおよびYと一緒になって前記に定義したような式Aの基を表わす〕で示される少なくとも1つのモノマーの重合
および
ii)酸素の実質的または完全な排除下でのその際に得られたポリマーのか焼を含む方法によって得られた、請求項1から7までのいずれか1項に記載の電気活性物質。
【請求項9】
式Iのモノマーが式II
【化3】

[式中、
Mは、金属または半金属を表わし;
AおよびA’は、二重結合に対して縮合された芳香族環またはヘテロ芳香族環を表わし;
mおよびnは、互いに独立に0、1または2を表わし;
QおよびQ’は、同一かまたは異なり、互いに独立にO、SまたはNHを表わし;
RおよびR’は、同一かまたは異なり、互いに独立にハロゲン、CN、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシおよびフェニルの中から選択され;および
a、Rb、Ra'、Rb'は、互いに独立に水素およびメチルの中から選択されるか、またはRaおよびRbおよび/またはRa'およびRb'は、それぞれ共通に酸素原子を表わす〕で示される少なくとも1つのモノマーを含む、請求項8記載の電気活性物質。
【請求項10】
か焼を400〜1500℃の範囲内の温度で本質的に酸素不含の雰囲気中で実施する、請求項8または9記載の電気活性物質。
【請求項11】
電気活性物質の製造法において、次の工程:
i)非水性重合媒体中での請求項8に定義したような式Iの少なくとも1つのモノマーの重合および
ii)酸素の実質的または完全な排除下でのその際に得られたポリマーのか焼を有することを特徴とする、電気活性物質の製造法。
【請求項12】
式Iのモノマーは、請求項9に定義したような式IIの少なくとも1つのモノマーを含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
か焼を400〜1500℃の範囲内の温度で本質的に酸素不含の雰囲気中で実施する、請求項11または12記載の方法。
【請求項14】
リチウムイオン電池、殊にリチウムイオン二次電池用の負極中での請求項1から10までのいずれか1項に記載の電気活性物質の使用。
【請求項15】
リチウムイオン電池用の負極において、請求項1から10までのいずれか1項に記載の少なくとも1つの電気活性物質を有することを特徴とする、リチウムイオン電池用の負極。
【請求項16】
請求項15記載の少なくとも1つの負極を有するリチウムイオン電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−523069(P2012−523069A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502689(P2012−502689)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【国際出願番号】PCT/EP2010/054403
【国際公開番号】WO2010/112580
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】