説明

電気湯沸かし器

【課題】蒸気温度検知手段が沸騰を検知して所定時間経過後に加熱手段を停止する構成において、湯沸し開始時の湯温によって蒸気口から実際に蒸気が出る時間が変動することを防止する。
【解決手段】蒸気通路6の蒸気温度を検知する蒸気温度検知手段7と、蒸気温度検知手段7の検知温度により沸騰を検知する沸騰検知手段8と、加熱手段2の通電を制御する加熱制御手段10と、沸騰検知手段8による沸騰検知から加熱制御手段10による加熱手段2停止までの遅延時間を決定する沸騰時間調整手段9を備え、沸騰時間調整手段9は、加熱開始時の温度検知手段3の温度に応じて遅延時間を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内に入れた液体を加熱・保温する電気湯沸かし器の蒸気検知式の湯沸し制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、湯沸し時に発生する蒸気の温度上昇を感温素子で検知して沸騰を判断する電気湯沸かし器は図2のように、本体111内に液体を収容する有底筒状の容器101があり、湯沸しヒータである加熱手段102を備えている。容器101の開口部を覆う蓋104の外郭部には蒸気口105が形成され、蒸気口105と容器101の開口部とを連通する蒸気通路106の途中に形成された中間開口部112には、本体111に保持された蒸気温度検知手段107が臨ませてあり、この蒸気温度検知手段107は金属ケース113内にNTCサーミスタが封止された構成であり、信号線114で制御回路115に接続されている。この種の電気湯沸かし器では、水温が上昇して沸騰温度になると蒸気が蒸気温度検知手段107に当たることによりその検知温度が上昇するため沸騰と判断し、所定時間沸騰を維持したのち、加熱手段102をオフする構成である。所定時間沸騰を維持しているのは、沸騰時に発生する蒸気を極力抑え、沸騰に要する余分な電力を減らす一方で、湯の安全性から確実に沸騰はして欲しいという要求があるためであり、沸騰時に蒸気口から噴出する蒸気発生時間を適度な時間に安定させることが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−33374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の構成では、低温の水から湯沸しを行った場合の蒸気の発生状態を基準に蒸気発生時間を適度な時間になるように調整しているため、湯沸し動作開始時の湯温によって蒸気口から実際に蒸気が出ている時間が変動してしまう。すなわち、低温から湯沸しを行った場合は、湯が完全に沸騰した後に蒸気口から蒸気が発生するのに対して、高温保温状態からの再沸騰のような湯沸し時には、既に、湯沸し動作開始前にある程度の蒸気が容器内に滞留しているため、湯が完全に沸騰する前から滞留した蒸気が蒸気口から排出されてしまう。その後、蒸気温度検知手段が沸騰したと判断する蒸気量になってから、湯温に関わらず同じ所定時間経過後に加熱手段を停止すると、高温からの湯沸し時は低温からの時より実際の蒸気発生時間が長くなってしまう。このように、蒸気温度検知手段が沸騰を検知して所定時間経過後に加熱手段を停止する従来の構成では、湯沸し動作開始時の湯温によって蒸気口から実際に蒸気が出る時間が変動するため、再沸騰湯沸し時には多量の蒸気が発生して周囲の家具などを結露させてしまうという課題があった。
【0005】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、湯沸し動作開始時の状態によって加熱停止までに蒸気口から出る蒸気の発生時間の変動を抑えるように調整することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記従来の課題を解決するために、本発明の電気湯沸かし器は、容器の底部に設置し容器内の液体の温度を検知する温度検知手段と、蒸気通路の蒸気温度を検知する蒸気温度検知手段と、蒸気温度検知手段の検知温度により沸騰を検知する沸騰検知手段と、加熱手段の通電を制御する加熱制御手段と、沸騰検知手段による沸騰検知から加熱制御手段による
加熱手段停止までの遅延時間を決定する沸騰時間調整手段を備え、沸騰時間調整手段は、加熱開始時の温度検知手段の温度に応じて遅延時間を調整するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の電気湯沸かし器は、湯沸し動作開始時の湯温により沸騰時に蒸気口から出る蒸気の蒸気発生時間が大きく変動することを防止し、略均一な時間に安定させることができるため、再沸騰湯沸し時に蒸気発生時間が増えて、設置周囲への結露が増えてしまうことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態における電気湯沸かし器のブロック図
【図2】従来の電気湯沸かし器の構造断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、液体を収容する容器と、容器を加熱する加熱手段と、容器の底部に設置し容器内の液体の温度を検知する温度検知手段と、容器の開口部を覆う蓋と、蓋の外郭に設置した蒸気口と、蓋内部に設置された容器から発生した蒸気が通る蒸気通路と、蒸気通路の蒸気温度を検知する蒸気温度検知手段と、前記蒸気温度検知手段の検知温度により沸騰を検知する沸騰検知手段と、前記加熱手段の通電を制御する加熱制御手段と、前記沸騰検知手段による沸騰検知から前記加熱制御手段による前記加熱手段停止までの遅延時間を決定する沸騰時間調整手段を備え、前記沸騰時間調整手段は、加熱開始時の温度検知手段の温度に応じて遅延時間を調整することにより、湯沸し開始時の温度検知手段の温度が低い時は遅延時間を長くし、湯沸し開始時の温度検知手段の温度が高い時は遅延時間を短くするように調整するため、蒸気口から出る蒸気発生時間が大きく変動することを防止し略均一な時間に安定させることができるため、再沸騰湯沸し時に蒸気発生時間が増えて設置周囲への結露が増えてしまうことを防止することができる。
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0011】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態における電気湯沸かし器のブロック図を示すものである。図1において、本体11内に液体を収容する有底筒状の容器1があり、湯沸し用の910Wと保温用の75Wの2種類のヒータで構成された加熱手段2を備えている。容器1の底部には温度検知手段3を当接させており、封入されたNTCサーミスタ素子にて容器1内の湯温を検知する。容器1の開口部を覆う蓋4の外郭部には蒸気口5が形成され、蒸気口5と容器1の開口部とを連通する蒸気通路6の途中に形成された中間開口部12には、本体11に保持された蒸気温度検知手段7を臨ませている。蒸気温度検知手段7は、金属ケース13内にNTCサーミスタ素子を封入した構成である。蒸気温度検知手段7は信号線14により制御回路15に接続されている。制御回路15は、マイクロコンピュータを含む電子部品が搭載された電子回路基板である。沸騰検知手段8と沸騰時間調整手段9と加熱制御手段10はマイクロコンピュータに書き込まれたプログラムで構成した制御部である。沸騰検知手段8は、蒸気温度検知手段7の蒸気温度信号に基づいて沸騰を検知するもので、容器1内の水が沸騰して蒸気が発生し蒸気通路6を通って金属ケース13に蒸気が触れることでその検知温度が急上昇すると沸騰と判断するものである、本実施の形態では、約60℃以上の温度域で0.5℃の温度上昇に要する時間が2秒以下になるのが連続2回検知されると沸騰したと判断する。沸騰時間調整手段9は、沸騰検知手段8が沸騰を検知すると、その湯沸しが開始されたときの温度検知手段3の検知温度に応じて沸騰検知後加熱手段3を停止するまでの遅延時間を予め設定された時間テーブルに基づいて時間タイマーをカウントし、カウントアップ後加熱制御手段10に加熱停止の信号を出力する。(表1)に湯沸し開始時の温度検知手段3による湯温と遅延時間の時間テーブルを示す。
【0012】
【表1】

【0013】
(表1)において、例えば、湯沸し開始時の湯温が55℃未満のときは、沸騰検知後8秒の遅延を行ってから加熱を停止する。また、湯沸し開始時の湯温が95℃以上のときは、遅延は行わずに加熱を停止するようにしている。加熱制御手段10は、湯沸し開始とともに加熱手段2の通電をオンし、沸騰時間調整手段9の加熱停止信号により加熱手段2の通電をオフする。また、加熱制御手段10は保温設定温度に基づいて保温温調も行う。
【0014】
以上のような構成において、湯沸し開始から加熱停止までの動作を説明する。電気湯沸かし器の温度が室温の約23℃である時、容器1に約23℃の水を満水量の3L入れて湯沸しを開始した場合について説明する。湯沸し開始時に温度検知手段3は湯温約23℃の検知温度を得る。この時、保温設定温度が90℃であるとすると加熱制御手段10は加熱手段2をオンして湯沸しを開始する。その後、容器1内の湯が沸騰し蒸気通路6を通る蒸気に蒸気温度検知手段7が触れるとその検知温度が上昇する。0.5℃上昇する時間が1回目0.8秒、2回目0.5秒であると、0.5℃温度上昇が2秒以下となる温度上昇が連続することになり、沸騰したと判断する。沸騰時間調整手段9は、(表1)の時間テーブルより湯沸し開始時の湯温が55℃未満の時の遅延時間8秒を採用し、8秒の時間タイマーをカウント開始し、8秒後に加熱制御手段10に通電停止の信号を出力する。
【0015】
この湯沸し条件時においては、蒸気口5から排出される蒸気発生時間は、加熱手段2停止までに実測値で約10.3秒であった。蒸気口から加熱停止までに出る蒸気の発生時間は、沸騰検知直前が約1秒、沸騰検知に要する時間が約1.3秒、遅延時間が8秒であるので合計約10.3秒ということになる。加熱停止後も容器1内の滞留蒸気がしばらくの間、発生するが、湯沸し用の910Wヒータでの沸騰時と違って滞留蒸気の排出であるのでその蒸気の勢いは急速に衰えているため周囲の結露の影響は少なくなる。
【0016】
同様に、電気湯沸かし器が満水量の3Lを約98℃の設定温度で保温している時に再沸騰湯沸しを開始した場合について説明する。再沸騰の指示により加熱制御手段10は加熱手段2をオンして湯沸しを開始する。温度検知手段3は湯温約97.5℃の検知温度を得る。その後、容器1内の湯が沸騰し蒸気通路6を通る蒸気に蒸気温度検知手段7が触れるとその検知温度が上昇する。0.5℃上昇する時間が1回目1.2秒、2回目0.8秒であると、所定の温度上昇が連続するため沸騰と判断する。沸騰時間調整手段9は(表1)の時間テーブルより、湯沸し開始時の湯温が95℃以上の時の遅延時間は無いため、即時に加熱制御手段10に通電停止の信号を出力する。
【0017】
この湯沸し条件時においては、蒸気口5から排出される蒸気発生時間は、加熱手段2停
止までに実測値で約10秒であった。蒸気口5から出る蒸気の発生時間は、沸騰検知直前が約8秒、沸騰検知に要する時間が約2秒、遅延時間は無いので合計約10秒ということになる。低温からの湯沸し時と同様に、加熱停止後も容器1内の滞留蒸気がしばらくの間、発生するが、その時間は低温からの湯沸し時とほぼ同じ時間である。
【0018】
ここで、沸騰時間調整手段9による湯温に応じた遅延時間の調整を行わない従来の湯沸しを行った場合を、98℃保温からの再沸騰に適用すると、本実施の形態の遅延時間の8秒間、湯沸し用910Wヒータによる沸騰が継続することにより、蒸気発生時間が8秒増え、蒸気発生時間は約18秒と長くなってしまう。この910Wでの加熱による沸騰8秒間に発生する蒸気量は約14gであり、本実施の形態によれば、この量の周囲の結露を防止することができる。
【0019】
また、高温保温時の再沸騰湯沸し時の蒸気発生時間が約10秒程度の適度な時間になるような遅延時間を、低温からの湯沸し時に適用すると、遅延時間が無いため蒸気発生時間が約2秒以下になってしまう。このような短い蒸気発生時間は、使用者が沸騰を認知することができないことも起こるため十分な沸騰時間が継続されたとは言えず、湯の安全性に対して問題視されることになる。
【0020】
また、湯沸し開始時の湯温が55℃〜95℃までの温度域については、各温度域での保温状態から再沸騰を行い、湯沸し開始から加熱停止までの間に蒸気口5から出る蒸気の発生時間の実測値に基づき蒸気発生時間が同様に約10秒になるように遅延時間を決定したものである。
【0021】
以上のように、本実施の形態においては、蒸気通路6の蒸気温度を検知する蒸気温度検知手段7と、蒸気温度検知手段7の検知温度により沸騰を検知する沸騰検知手段8と、加熱手段2の通電を制御する加熱制御手段10と、沸騰検知手段8による沸騰検知から加熱制御手段10による加熱手段2停止までの遅延時間を決定する沸騰時間調整手段9を備え、沸騰時間調整手段9は、加熱開始時の温度検知手段3の温度に応じて遅延時間を調整することができるため、湯沸し開始時の湯温により沸騰時に蒸気口から出る蒸気の蒸気発生時間が大きく変動することを防止し略均一な時間に安定させることができるため、再沸騰湯沸し時に蒸気発生時間が増えて設置周囲への結露が増えてしまうことを防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
以上のように、本発明にかかる電気湯沸かし器は、湯沸し開始時の湯温に関わらず蒸気発生時間の変動を抑えることができるため、沸騰検知に蒸気検知手段を利用した加熱調理気等の用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0023】
1 容器
2 加熱手段
3 温度検知手段
4 蓋
5 蒸気口
6 蒸気通路
7 蒸気温度検知手段
8 沸騰検知手段
9 沸騰時間調整手段
10 加熱手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容する容器と、
前記容器を加熱する加熱手段と、
前記容器の底部に設置し前記容器内の液体の温度を検知する温度検知手段と、
前記容器の開口部を覆う蓋と、
前記蓋の外郭に設置した蒸気口と、
前記蓋内部に設置された前記容器から発生した蒸気が通る蒸気通路と、
前記蒸気通路の蒸気温度を検知する蒸気温度検知手段と、
前記蒸気温度検知手段の検知温度により前記容器内の液体の沸騰を検知する沸騰検知手段と、
前記加熱手段の通電を制御する加熱制御手段と、
前記沸騰検知手段による沸騰検知から前記加熱制御手段による前記加熱手段停止までの遅延時間を設定する沸騰時間調整手段とを備え、
前記沸騰時間調整手段は、加熱開始時の前記温度検知手段の検知温度により予め定められた遅延時間に決定する電気湯沸かし器。

【図1】
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【図2】
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