説明

電気炊飯器

【課題】蓋体の開放時に、攪拌体が邪魔にならない上に、回転駆動装置の温度が異常に高くなるのを防ぐことができる電気炊飯器を提供する。
【解決手段】電気炊飯器は、被加熱物を収容する内鍋10と、内鍋10が収納される炊飯器本体1と、内鍋10内に回転自在に配置され、磁石42を有する攪拌翼40と、内鍋10外に配置されて、回転軸を有する攪拌モータと、内鍋10外に配置され、内鍋10の磁性体層10Bを誘導加熱するための誘導コイルとを備える。攪拌モータの回転軸には、磁石42と磁気カップリングする磁石が取り付けられている。内鍋10において回転翼40の外縁で囲まれる領域に対応する部分は、高熱伝導部材10Aがあって、磁性体層10Bがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気炊飯器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気炊飯器としては、特開2008−278924号公報(特許文献1)に開示されたものがある。この電気炊飯器は、被加熱物の米を収容する内鍋と、この内鍋が収納される炊飯器本体と、この炊飯器本体の上部に回動自在に取り付けられ、内鍋の開口を開閉する蓋体とを備えている。
【0003】
上記蓋体の内面に、断面形状がほぼ山の字形状の攪拌体の上端部を回転自在に取り付け、蓋体を閉じたときに、攪拌体の下端部と内鍋の底部との間に所定の隙間が空くようになっている。すなわち、上記蓋体を閉じた状態で、上記攪拌体は内鍋の内部空間の上端から内鍋の内部空間の下端近傍まで延びている。
【0004】
上記蓋体内には回転駆動装置が設置されており、この回転駆動装置の回転軸と攪拌体の上端部とが互いに連結されている。これにより、上記回転駆動装置が攪拌体を回転駆動して、内鍋内の飯をほぐすことができる。
【0005】
しかしながら、上記従来の電気炊飯器では、攪拌体が内鍋の内部空間の上端から内鍋の内部空間の下端近傍まで延び、攪拌体の上端部が蓋体の内面に取り付けられているため、炊き上がったご飯をよそうときに、攪拌体がじゃまになる問題があった。
【0006】
この問題を解決する電気炊飯器としては、攪拌体を蓋体から分離して、内鍋の底部上に配置して、蓋体が回動しても、攪拌体が内鍋の内面に引っ掛からないようにし、さらに、上記蓋体から分離された攪拌体に被駆動側磁石を取り付けると共に、内鍋の底部近傍に、被駆動側磁石との磁気カップリングにより攪拌体を回転駆動する回転駆動装置を配置した電気炊飯器が考えられる。
【0007】
しかしながら、誘導加熱を用いた電気炊飯器においては、一般に、内鍋の内面は非磁性体層からなり、内鍋の外面は磁性体層からなるため、内鍋を誘導加熱すると、内鍋の底部下の近傍の回転駆動装置は内鍋の外面の磁性体層から多量の熱量を受ける。その結果、上記回転駆動装置の温度が異常に高くなるという問題が新たに発生してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−278924号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明の課題は、蓋体の開放時に、攪拌体が邪魔にならない上に、回転駆動装置の温度が異常に高くなるのを防ぐことができる電気炊飯器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の電気炊飯器は、
被加熱物を収容すると共に、非磁性体層および磁性体層を重ねた部分を有する内鍋と、
上記内鍋が収納される炊飯器本体と、
上記炊飯器本体の上部に開閉自在に取り付けられ、上記内鍋を覆うように閉じることが可能な蓋体と、
上記蓋体とは分離されていると共に、上記内鍋内に回転自在に配置され、被駆動側磁石を有する攪拌体と、
上記内鍋外に配置され、上記攪拌体を回転駆動する回転駆動装置と、
上記内鍋外に配置され、上記内鍋の上記磁性体層を誘導加熱するための誘導加熱部と
を備え、
上記回転駆動装置は、上記被駆動側磁石と磁気カップリングすると共に、上記攪拌体を回転駆動するための回転磁界を発生させる回転磁界発生装置を有し、
上記内鍋において上記回転磁界発生装置に対応する部分は、上記非磁性体層があって、上記磁性体層がないことを特徴としている。
【0011】
上記構成によれば、上記攪拌体は、蓋体とは分離されているので、蓋体の開放時に、邪魔にならない。
【0012】
また、上記内鍋において回転磁界発生装置に対応する部分は、非磁性体層があって、磁性体層がないので、内鍋の磁性体層が誘導加熱されても、その回転磁界発生装置に対応する部分の温度上昇は比較的小さい。したがって、上記内鍋から回転磁界発生装置に伝わる熱量は少なくなるので、回転駆動装置の温度が異常に高くなるのを防ぐことができる。
【0013】
また、上記内鍋において回転磁界発生装置に対応する部分は、非磁性体層であって、磁性体層がないので、被駆動側磁石および回転磁界発生装置による磁気カップリングにおいて磁性体層から受ける悪影響が小さくなる。したがって、上記磁気カップリングを強固にすることができ、カップリングトルクを高めることができる。
【0014】
一実施形態の電気炊飯器では、
上記内鍋において上記被駆動側磁石の回転軌跡で囲まれる領域に対応する部分は、上記非磁性体層があって、上記磁性体層がない。
【0015】
上記実施形態によれば、上記内鍋において被駆動側磁石の回転軌跡で囲まれる領域に対応する部分は、非磁性体層があって、磁性体層がないので、内鍋から回転磁界発生装置に伝わる熱量はより少なくなると共に、磁性体層から磁気カップリングトルクへの悪影響がより小さくなる。
【0016】
一実施形態の電気炊飯器では、
上記内鍋において上記攪拌体の外縁で囲まれる領域に対応する部分は、上記非磁性体層があって、上記磁性体層がない。
【0017】
上記実施形態によれば、上記内鍋において攪拌体の外縁で囲まれる領域に対応する部分は、非磁性体層があって、磁性体層がないので、内鍋から回転磁界発生装置に伝わる熱量はよりさらに少なくなると共に、磁性体層から磁気カップリングトルクへの悪影響がよりさらに小さくなる。
【0018】
一実施形態の電気炊飯器では、
上記回転磁界発生装置は、回転軸と、この回転軸に取り付けられた駆動側磁石とを有する。
【0019】
上記実施形態によれば、上記回転磁界発生装置は、回転軸と、この回転軸に取り付けられた駆動側磁石とを有するので、回転軸と共に駆動側磁石を回転させることにより、簡単に回転磁界を発生させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の電気炊飯器によれば、炊飯器本体の上部に開閉自在に取り付けられ、内鍋を覆うように閉じることが可能な蓋体と、この蓋体とは分離されていると共に、内鍋内に回転自在に配置された攪拌体とを備えるので、蓋体の開放時に、攪拌体が邪魔にならない。
【0021】
また、上記内鍋において回転磁界発生装置に対応する部分は、非磁性体層があって、磁性体層がないので、内鍋の磁性体層が誘導加熱されても、その部分の温度上昇は比較的小さい。したがって、上記回転磁界発生装置が内鍋から受ける熱量は少なくなるので、回転駆動装置の温度が異常に高くなるのを防ぐことができる。
【0022】
また、上記内鍋において回転磁界発生装置に対応する部分は、非磁性体層であって、磁性体層がないので、被駆動側磁石および回転磁界発生装置による磁気カップリングにおいて磁性体層から受ける悪影響が小さくなる。したがって、上記磁気カップリングを強固にすることができ、カップリングトルクを高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は本発明の一実施形態の電気炊飯器の斜視図である。
【図2】図2は上記電気炊飯器の蓋体を開いた状態の斜視図である。
【図3】図3は図1のIII−III線から見た電気炊飯器の縦端面図である。
【図4】図4は図1のIV−IV線から見た電気炊飯器の縦端面図である。
【図5】図5は上記電気炊飯器の内鍋の下部と攪拌翼との端面図である。
【図6】図6は上記電気炊飯器の制御ブロック図である。
【図7】図7は上記電気炊飯器の内鍋の変形例を説明するための端面図である。
【図8】図8は上記電気炊飯器の内鍋の変形例を説明するための端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の電気炊飯器を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態の電気炊飯器を斜め上方から見た斜視図である。
【0026】
上記電気炊飯器は、炊飯器本体1と、この炊飯器本体1に開閉自在に取り付けられた蓋体2とを備えている。炊飯器本体1は、前面側に設けられた表示操作部3と、前面側かつ上側に設けられたフックボタン4と、後面側に回動自在に取り付けられた本体ハンドル5と、後面側かつ下側に接続された電源コード6とを有している。また、蓋体2の後面側に蒸気口2aを設けている。表示操作部3は、液晶ディスプレイと複数の操作ボタンにより構成され、調理メニューや調理状況などの表示とボタン操作が可能である。蓋体2は、炊飯器本体1に設けられたラッチ機構(図示せず)に解除可能に係止された状態で閉じられており、フックボタン4を押すことによりラッチ機構の係止が解除されて、スプリング26(図3に示す)の付勢力で蓋体2が開く。
【0027】
図2は、上記電気炊飯器の蓋体2を開いた状態の斜視図である。
【0028】
上記蓋体2は、外蓋21および内蓋22を有して、炊飯器本体1の上側かつ後面側に設けられたヒンジ軸20(図3に示す)を中心に回動自在に炊飯器本体1に取り付けられている。また、炊飯器本体1内には、被加熱物(例えば米)を収容する内鍋10が収納可能になっている。
【0029】
上記内鍋10の上端は開口しており、この開口の上面視の形状はほぼ円形となっている。また、内鍋10の上端の開口の縁には環状のフランジ部10aを設けている。そして、内鍋10のフランジ部10aには、径方向において互いに対向するように耐熱樹脂製の内鍋把手11,11を取り付けている。また、炊飯器本体1の上面の左右2箇所には、それぞれ、凹部12a(図2では右側の1つのみを示す)を設けている。
【0030】
図3は図1のIII−III線から見た電気炊飯器の縦端面図である。
【0031】
上記炊飯器本体1は、外ケース12と、この外ケース12内に配置され、内鍋10が収納される内ケース13とを有する。この内ケース13は、耐熱性と電気絶縁性を有する材料で形成されている。
【0032】
上記外ケース12と内ケース13との間の空間の後面側(図3の右側)には、電源回路やインバータ回路などを含む電源部14を配置し、この電源部14の下側に電源部14などを冷却する冷却ファン15を配置している。さらに、冷却ファン15の下側かつ外ケース12の底部上には、電源コード6を巻き取るコードリール7を配置している。
【0033】
また、上記内鍋10は、フランジ部10aと、フランジ部10aの内周縁部から鉛直下方に向かって延びる周壁部10bと、この周壁部10bの下端に連なって鉛直斜め下方に延びる傾斜部10cと、この傾斜部10cの下端に連なって水平方向に延びる環状の底部10dと、この底部10dの内周縁部に連なって鉛直上方つまり内側に突出する有天筒形状の凸部10eとを有している。この内鍋10の凸部10eには、蓋体2とは分離されている円板形状の攪拌翼40を回転自在に嵌合させている。そして、内鍋10の外面において凸部10eに対応する部分には凹部が形成されている。この内鍋10の外面の凹部は、内鍋10の凸部10eの形成に伴って形成される。なお、上記攪拌翼40は攪拌体の一例である。
【0034】
上記攪拌翼40は、保持部60と、保持部60に取り外し自在に取り付けられた円板部70とを有している。そして、保持部60は、環状のヨーク41と、このヨーク41の内側において周方向かつ等間隔に配列された複数の磁石42とを保持する。なお、磁石42は被駆動側磁石の一例である。
【0035】
また、上記内ケース13において内鍋10の凸部10eの下方に位置する部分には、開口部13aが設けられている。さらに、開口部13aの下方には、回転軸17aを有する攪拌モータ17を配置している。攪拌モータ17の回転軸17aはロータ80の軸部82に連結されている。なお、攪拌モータ17,ロータ80は回転駆動装置の一例である。また、ロータ80および回転軸17aは回転磁界発生装置の一例である。
【0036】
上記ロータ80は周方向かつ等間隔に配列された複数の磁石18を有している。この複数の磁石18は、内鍋10の外面の上記凹部内に収容され、攪拌モータ17の回転軸17aの径方向において攪拌翼40の複数の磁石42と磁気カップリングする。これにより、攪拌モータ17がロータ80を回転駆動すると、攪拌翼40も回転駆動できるようになっている。なお、磁石18は駆動側磁石の一例である。
【0037】
なお、図3の90は、ロータ80を覆うカバーである。
【0038】
また、上記外ケース12と内ケース13との間の空間の前面側(図3の左側)には、表示操作部3(図1,図2に示す)と電源部14のインバータ回路と冷却ファン15および攪拌モータ17などを制御する制御部30を配置している。
【0039】
また、上記炊飯器本体1内の内ケース13の下側には、内鍋10の磁性体層10B(図5に示す)を誘導加熱するための誘導コイル31を配置している。この誘導コイル31は、耐熱性を有する樹脂などにより内ケース13の内面(内鍋10に対向する面とは反対側の面)に接着されている。さらに、誘導コイル31の下側に、誘導コイル31の漏れ磁束を防止するフェライト部材39などを配置している。また、上記内ケース13の下側には、内ケース13を貫通する底温度センサ33も配置している。この底温度センサ33は、内ケース13に収納された内鍋10の傾斜部10cに先端部が当接して、内鍋10の温度を検出する。なお、誘導コイル31は誘導加熱部の一例である。
【0040】
また、炊飯器本体1内には横ヒータ32を配置している。この横ヒータ32は、内ケース13の上側の側部を囲むように周方向に沿って設けられている。そして、蓋体2内には蓋ヒータ38(図4に示す)と蓋温度センサ34(図6に示す)を配置している。
【0041】
上記誘導コイル31、横ヒータ32および蓋ヒータ38は、内鍋10全体を加熱する加熱部を構成している。
【0042】
上記蓋体2は、炊飯器本体1に回動自在に支持された外蓋21と、その外蓋21の内鍋10に対向する側に着脱自在に取り付けられた内蓋22とを有している。この内蓋22の外周には環状の耐熱ゴム製のパッキン23が着脱自在に取り付けられている。蓋体2が閉じられたときに、パッキン23は、内鍋10のフランジ部10aの上面に密着して、内鍋10と内蓋22との間をシールする。
【0043】
なお、図3の24は、内蓋22に設けられた蒸気穴である。
【0044】
図4は図1のIV−IV線から見た電気炊飯器の縦端面図である。
【0045】
上記炊飯器本体1の外ケース12の上面の左右2箇所に設けられた凹部12a,12aに、内鍋10の内鍋把手11,11を嵌合させると、内鍋10は炊飯器本体1に対して位置決めされる。
【0046】
そして、上記内鍋把手11内には磁石50を埋め込んでいる。また、外蓋21の磁石50上に位置する部分に、蓋体2を閉じたときに磁石50の磁気によりオンするリードスイッチ25を取り付けている。なお、上記内鍋把手11,11のどちらにも磁石50を埋め込んでいる。
【0047】
図5は、上記内鍋10の下部と攪拌翼40とを切断した端面を示す図である。
【0048】
上記内鍋10は、例えばアルミニウムなどの高熱伝導部材10Aと、加熱効率を向上させるステンレス等の磁性体層10Bとを有する。高熱伝導部材10Aはプレスまたは鋳造で成型される一方、磁性体層10Bは、高熱伝導部材10Aの外面の所定部のみに例えば溶射技術を用いて形成される。また、高熱伝導部材10Aの内面には、被加熱物の付着を防ぐためのフッ素樹脂をコーティングしている。なお、高熱伝導部材10Aは非磁性体層の一例である。
【0049】
上記磁性体層10Bは、傾斜部10cにおける高熱伝導部材10Aの外面の全部と、底部10dにおける高熱伝導部材10Aの外面の外周縁部とだけを覆っている。このため、底部10dの大部分と、凸部10eの全部とには、磁性体層10Bがない。すなわち、内鍋10において攪拌翼40の外縁で囲まれる領域に対応する部分は、高熱伝導部材10Aがあって、磁性体層10Bがない。
【0050】
図6は上記電気炊飯器の制御ブロック図である。
【0051】
上記制御部30は、マイクロコンピュータと入出力回路などからなり、表示操作部3からの操作信号や、リードスイッチ25,底温度センサ33,蓋温度センサ34からの信号などに基づいて、表示操作部3,攪拌モータ17,冷却ファン15,誘導コイル用インバータ回路35,横ヒータ用回路36および蓋ヒータ用回路37を制御する。誘導コイル用インバータ回路35は、誘導コイル31に交番磁界を発生させる。なお、誘導コイル用インバータ回路35は誘導加熱部の一例である。
【0052】
上記誘導コイル用インバータ回路35,横ヒータ用回路36,蓋ヒータ用回路37は、電源部14(図3に示す)に含まれている。
【0053】
上記構成の電気炊飯器によれば、図3,図4に示すように、攪拌翼40の磁石42はロータ80の磁石18と磁気カップリングし、ロータ80の軸部82が攪拌モータ17の回転軸17aに連結されている。したがって、攪拌モータ17およびロータ80は内鍋10外に配置されているが、攪拌モータ17の回転軸17aを回転駆動させることにより、攪拌翼40を回転駆動させることができる。すなわち、攪拌翼40を磁気カップリングを介して回転駆動できる。
【0054】
また、上記蓋体2に対して攪拌翼40を分離しているので、蓋体2の開放時に、攪拌翼40は邪魔にならず、蓋体2を完全に開くことができる。
【0055】
また、図5に示すように、上記内鍋10において攪拌翼40の外縁で囲まれる領域に対応する部分は、高熱伝導部材10Aがあって、磁性体層10Bがないので、内鍋10の磁性体層10Bが誘導加熱されても、その攪拌翼40の外縁で囲まれる領域に対応する部分の温度上昇が比較的小さい。別の言い方をすれば、内鍋10においてロータ80およびカバー90周辺の広範囲の部分は、他の部分に比べて低温となる。したがって、ロータ80およびカバー90が内鍋10から受ける熱量は非常に少なくなるので、攪拌モータ17、ロータ80およびカバー90の温度が異常に高くなるのを確実に防ぐことができる。
【0056】
また、上記内鍋10において攪拌翼40の外縁で囲まれる領域に対応する部分は、高熱伝導部材10Aがあって、磁性体層10Bがない。つまり、磁石18と磁石42との間に磁性体層10Bが介在しない。これにより、磁石18および磁石42による磁気カップリングにおいて磁性体層10Bから受ける悪影響が小さくなる。したがって、上記磁気カップリングを強固にすることができ、カップリングトルクを高めることができる。
【0057】
上記実施形態において、内鍋10に換えて、図7に示す内鍋210、あるいは、図8に示す内鍋310を用いてもよい。
【0058】
上記内鍋210は、内鍋10と同様に、傾斜部210c、底部210dおよび凸部210eを有している。この傾斜部210cにおける高熱伝導部材10Aの外面の全部と、底部210dにおける高熱伝導部材10Aの外面の外周縁部およびこれに隣接する中央部とを、磁性体層10Cで覆っている。そして、磁性体層10Cは、底部210dにおける高熱伝導部材10Aの外面の内周縁部と、凸部210eにおける高熱伝導部材10Aの外面の全部とを覆っていない。すなわち、内鍋210において磁石42の回転軌跡で囲まれる領域に対応する部分は、高熱伝導部材10Aがあって、磁性体層10Cがない。
【0059】
上記内鍋310は、内鍋10と同様に、傾斜部310c、底部310dおよび凸部310eを有している。この傾斜部310cにおける高熱伝導部材10Aの外面の全部と、底部310dにおける高熱伝導部材10Aの外面の全部とを、磁性体層10Dで覆っている。そして、磁性体層10Dは、凸部310eにおける高熱伝導部材10Aの外面の全部を覆っていない。すなわち、内鍋310においてロータ80および回転軸17aに対応する部分は、高熱伝導部材10Aがあって、磁性体層10Dがない。
【0060】
このような内鍋210,310を用いても、攪拌モータ17、ロータ80およびカバー90の温度上昇抑制効果と、カップリングトルクの向上効果とが得られる。
【0061】
なお、図7,図8において、図5に示した構成部と同一構成部は、図5における構成部と同一の参照番号を付して、説明を省略する。
【0062】
上記実施形態では、攪拌翼40の磁石42はロータ80の磁石18と回転軸17aの径方向において磁気カップリングするようにしていたが、ロータ80の磁石18と回転軸17aの軸方向において磁気カップリングするようにしてもよい。攪拌翼40の磁石42とロータ80の磁石18とを回転軸17aの軸方向において磁気カップリングさせる場合、凸部10eのような凸部を有さない内鍋を用いてもよい。
【0063】
上記実施形態において、攪拌モータ17およびロータ80の換わりに、例えば同期モータのステータヨークのように、ステータヨークと、このステータヨークに巻き付けられた複数のコイルと、この複数のコイルに回転磁界を生成するための交流電源とを用いてもよい。このステータヨークおよび交流電源によって、回転磁界を発生させることにより、磁気カップリングした攪拌翼40を回転駆動させることができる。要するに、回転磁界を発生できる装置であれば、内鍋10の底部の外面の凹部内に収容してもよい。
【0064】
本発明の具体的な実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0065】
1…炊飯器本体
2…蓋体
2a…蒸気口
3…表示操作部
4…フックボタン
5…本体ハンドル
6…電源コード
7…コードリール
10,210,310…内鍋
10A…高熱伝導部材
10B…磁性体層
10a…フランジ部
10e…凸部
11…内鍋把手
12…外ケース
12a…凹部
13…内ケース
14…電源部
15…冷却ファン
16…ロータ
17…攪拌モータ
18…磁石
20…ヒンジ軸
21…外蓋
22…内蓋
23…パッキン
24…蒸気穴
25…リードスイッチ
26…スプリング
30…制御部
31…誘導コイル
32…横ヒータ
33…底温度センサ
34…蓋温度センサ
35…誘導コイル用インバータ回路
36…横ヒータ用回路
37…蓋ヒータ用回路
38…蓋ヒータ
39…フェライト部材
40…攪拌翼
41…ヨーク
42…磁石
50…磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物を収容すると共に、非磁性体層および磁性体層を重ねた部分を有する内鍋と、
上記内鍋が収納される炊飯器本体と、
上記炊飯器本体の上部に開閉自在に取り付けられ、上記内鍋を覆うように閉じることが可能な蓋体と、
上記蓋体とは分離されていると共に、上記内鍋内に回転自在に配置され、被駆動側磁石を有する攪拌体と、
上記内鍋外に配置され、上記攪拌体を回転駆動する回転駆動装置と、
上記内鍋外に配置され、上記内鍋の上記磁性体層を誘導加熱するための誘導加熱部と
を備え、
上記回転駆動装置は、上記被駆動側磁石と磁気カップリングすると共に、上記攪拌体を回転駆動するための回転磁界を発生させる回転磁界発生装置を有し、
上記内鍋において上記回転磁界発生装置に対応する部分は、上記非磁性体層があって、上記磁性体層がないことを特徴とする電気炊飯器。
【請求項2】
請求項1に記載の電気炊飯器において、
上記内鍋において上記被駆動側磁石の回転軌跡で囲まれる領域に対応する部分は、上記非磁性体層があって、上記磁性体層がないことを特徴とする電気炊飯器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電気炊飯器において、
上記内鍋において上記攪拌体の外縁で囲まれる領域に対応する部分は、上記非磁性体層があって、上記磁性体層がないことを特徴とする電気炊飯器。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一項に記載の電気炊飯器において、
上記回転磁界発生装置は、回転軸と、この回転軸に取り付けられた駆動側磁石とを有することを特徴とする電気炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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