電気炊飯器
【課題】炊き込みご飯などの炊飯において、内鍋内での具材や調味料の沈殿を防いで、被加熱物の過加熱や焦げ付きを防止できる電気炊飯器を提供する。
【解決手段】この電気炊飯器によれば、加熱部(誘導コイル３１,横ヒータ３２,蓋ヒータ３９)による加熱運転を行う前に、制御部３０の予備撹拌運転部５１が予備撹拌運転を実行し、上記加熱運転の前に内鍋１０内で撹拌翼４０を回転させて予備撹拌を行う。この予備撹拌によって、加熱運転の前に内鍋１０内の被加熱物をユーザに手でかき混ぜさせるという負担を掛けることなく、内鍋内の被加熱物を確実に撹拌できて、調味料を米に十分吸収させると共に具材や調味料が底に沈殿することを防止できて早切れや焦げ付きを確実に防止して、おいしい炊き込みご飯を作れる。
【解決手段】この電気炊飯器によれば、加熱部(誘導コイル３１,横ヒータ３２,蓋ヒータ３９)による加熱運転を行う前に、制御部３０の予備撹拌運転部５１が予備撹拌運転を実行し、上記加熱運転の前に内鍋１０内で撹拌翼４０を回転させて予備撹拌を行う。この予備撹拌によって、加熱運転の前に内鍋１０内の被加熱物をユーザに手でかき混ぜさせるという負担を掛けることなく、内鍋内の被加熱物を確実に撹拌できて、調味料を米に十分吸収させると共に具材や調味料が底に沈殿することを防止できて早切れや焦げ付きを確実に防止して、おいしい炊き込みご飯を作れる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
この発明は、電気炊飯器に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来、電気炊飯器としては、炊飯用ヒータを鍋の底部と平行した方向に自動的に往復揺動させることで、炊飯動作時における鍋底部の加熱状態を均一化して、炊きむらや焦げ付きを防止するようにしたものが提案されている(特許文献１(実開昭６２‐１０８２４号))。
【０００３】
ところで、電気炊飯器で炊き込みご飯などを炊飯する場合、炊飯直前に手で内鍋内の被加熱物をかき混ぜて、内鍋内で具材や調味料の沈殿を防止するように、取扱い説明書で説明していた。上記具材や調味料が内鍋内で沈殿すると焦げ付きや早切れを招くからである。早切れとは、内鍋内で沈殿したものが過加熱して次の運転ステップへ行くことであり、早切れが起こると加熱時間が短縮されて米に芯が残る不具合を招く。
【０００４】
しかし、ユーザに手でかき混ぜさせるのはユーザに負担を掛けるし混ぜ忘れも起こり易いという問題がある。また、炊き込みご飯を炊飯する場合に、ユーザが内鍋内の被加熱物を手でかき混ぜても時間が経過すると再び沈殿するので、タイマー予約運転をすることができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００５】
【特許文献１】実開昭６２−１０８２４号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
そこで、この発明の課題は、炊き込みご飯などの炊飯において、内鍋内での具材や調味料の沈殿を防いで、被加熱物の過加熱や焦げ付きを防止できる電気炊飯器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
上記課題を解決するため、この発明の電気炊飯器は、被加熱物を収容する内鍋と、
上記内鍋が収納される炊飯器本体と、
上記炊飯器本体の上部に開閉自在に取り付けられ、上記内鍋を覆うように閉じることが可能な蓋体と、
上記内鍋内に回転自在に配置された撹拌体と、
上記内鍋外に配置され、上記撹拌体を回転駆動する回転駆動装置と、
上記炊飯器本体に収納された上記内鍋を加熱する加熱部と、
上記加熱部を制御して、加熱運転を行う制御部と
を備え、
上記制御部は、
上記加熱部による加熱運転を行う前に、上記回転駆動装置を稼働させて上記撹拌体を回転させる予備撹拌運転を行う予備撹拌運転部を有することを特徴としている。
【０００８】
この発明の電気炊飯器によれば、上記加熱部による加熱運転を行う前に、上記制御部の予備撹拌運転部が上記予備撹拌運転を実行することで、上記内鍋内で上記撹拌体を回転させて予備撹拌を行う。この予備撹拌によって、加熱運転の前にユーザに内鍋内の被加熱物を手でかき混ぜさせるという負担を掛けることなく、加熱運転の前に内鍋内の被加熱物を確実に撹拌できる。よって、炊き込みご飯などを炊飯する場合に内鍋内での具材や調味料の沈殿を防いで、被加熱物の過加熱や焦げ付きを防止でき、おいしい炊き込みご飯を作ることができる。
【０００９】
また、一実施形態の電気炊飯器では、上記制御部は、
上記予備撹拌運転部による予備撹拌運転の実行をタイマー予約できるタイマー予約部を有する。
【００１０】
この実施形態の電気炊飯器によれば、上記タイマー予約部により、上記予備撹拌運転の実行をタイマー予約でき、早切れや焦げ付きを起こすことなくタイマー予約による炊き込みご飯などの炊飯を行うことができる。
【発明の効果】
【００１１】
この発明の電気炊飯器によれば、ユーザに負担を掛けることなく、加熱運転の前に内鍋内の被加熱物を確実に撹拌できるので、炊き込みご飯などを炊飯する場合に早切れや焦げ付きを確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【００１２】
【図１】図１はこの発明の実施の一形態の電気炊飯器の斜視図である。
【図２】図２は上記電気炊飯器の蓋体を開いた状態の斜視図である。
【図３】図３は図１のIII−III線から見た電気炊飯器の縦断面図である。
【図４】図４は図１のIV−IV線から見た電気炊飯器の縦断面図である。
【図５】図５は上記電気炊飯器の制御ブロック図である。
【図６】図６は上記電気炊飯器の動作を説明するフローチャートである。
【図７】図７は上記電気炊飯器の予備撹拌運転モードにおける運転タイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【００１３】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【００１４】
図１はこの発明の実施の一形態の電気炊飯器を斜め上方から見た斜視図を示している。
【００１５】
この実施の一形態の電気炊飯器は、図１に示すように、炊飯器本体１と、炊飯器本体１に開閉自在に取り付けられた蓋体２とを備えている。炊飯器本体１は、前面側に設けられた表示操作部３と、前面側かつ上側に設けられたフックボタン４と、後面側に回動自在に取り付けられた本体ハンドル５と、後面側かつ下側に接続された電源コード６とを有する。また、蓋体２の後面側に蒸気口２ａを設けている。表示操作部３は、液晶ディスプレイと複数の操作ボタンにより構成され、調理メニューや調理状況などの表示とボタン操作が可能である。蓋体２は、炊飯器本体１に設けられたラッチ機構(図示せず)により係脱可能に係止された状態で閉じられており、フックボタン４を押すことによりラッチ機構が外れて、スプリング２６(図３に示す)の付勢力で蓋体２が開く。
【００１６】
また、図２は上記電気炊飯器の蓋体２を開いた状態の斜視図を示しており、図１と同一の構成部には同一参照番号を付している。
【００１７】
この電気炊飯器は、図２に示すように、炊飯器本体１の上側かつ後面側に設けられたヒンジ軸２０(図３に示す)を介して蓋体２を上下方向に回動自在に支持している。この蓋体２は、外蓋２１と内蓋２２とを有する。また、炊飯器本体１内に被加熱物を収容する内鍋１０を収納している。
【００１８】
上記内鍋１０の上側開口の縁に環状のフランジ部１０ａを設けている。その内鍋１０のフランジ部１０ａの半径方向に対向する位置に、図４に示すように耐熱樹脂製の内鍋把手１１,１１を取り付けている。炊飯器本体１の上面の左右２箇所に、位置決め部の一例としての凹部１２ａ(図２では右側のみを示す)を設けている。この２つの凹部１２ａに内鍋１０の内鍋把手１１,１１が夫々嵌合する。これにより、炊飯器本体１に収納された内鍋１０が炊飯器本体１に対して位置決めされる。
【００１９】
図３は、図１のIII−III線から見た電気炊飯器の縦断面図を示しており、図３に示すように、炊飯器本体１は、外ケース１２と、その外ケース１２内に配置され、内鍋１０を収納する内ケース１３とを有する。内ケース１３は、耐熱性と電気絶縁性を有する材料で形成されている。
【００２０】
上記外ケース１２と内ケース１３との間の空間の後面側(図３の右側)に、電源回路やインバータ回路などを含む電源部１４を配置し、電源部１４の下側に電源部１４などを冷却する冷却ファン１５を配置している。さらに、冷却ファン１５の下側かつ外ケース１２の底部に、電源コード６を巻き取るコードリール７を配置している。
【００２１】
また、内鍋１０の底部に、内側に突出する円筒形状の凸部１０ｂを設けている。この内鍋１０の凸部１０ｂに円板形状の撹拌翼４０を回転自在に嵌合している。この撹拌翼４０は、環状のヨーク４１と、そのヨーク４１の内側に周方向かつ等間隔に配列された複数の磁石４２とを有する。この内鍋１０の凸部１０ｂに対向する内ケース１３の領域に開口部１３ａを設けている。そして、内鍋１０の凸部１０ｂの下側かつ凸部１０ｂの内周側に、複数の磁石１８が周方向かつ等間隔に配置されたロータ１６を配置し、このロータ１６の軸部１６ａに回転軸１７ａが連結された撹拌モータ１７を内鍋１０の底部の下側に配置している。なお、撹拌モータ１７,ロータ１６は回転駆動装置の一例である。また、図３の９０は、ロータ１６を覆うカバーである。
【００２２】
そして、ロータ１６と撹拌翼４０は、夫々の磁石１８,４２によりラジアル型の磁気カップリングにより連結され、撹拌モータ１７により駆動されたロータ１６が回転することにより、磁気カップリングを介して撹拌翼４０が回転する。
【００２３】
また、外ケース１２と内ケース１３との間の空間の前面側(図３の左側)に、表示操作部３(図１,図２に示す)と、電源部１４のインバータ回路と冷却ファン１５および撹拌モータ１７などを制御する制御部３０を配置している。
【００２４】
また、炊飯器本体１内の内ケース１３の下側かつ外側に、内鍋１０を誘導加熱するための誘導コイル３１を配置している。この誘導コイル３１は、耐熱性を有する樹脂などにより内ケース１３の外面に接着されている。また、誘導コイル３１の下側には、誘導コイル３１の漏れ磁束を防止するフェライト部材３８を配置している。さらに、炊飯器本体１内の内ケース１３の上側の側面を囲むように横ヒータ３２を周方向に沿って配置している。また、内ケース１３の下側に内ケース１３を貫通する底温度センサ３３を配置している。この底温度センサ３３は、内ケース１３に収納された内鍋１０の底部近傍に先端部が当接して、内鍋１０の温度を検出する。なお、蓋体２内に蓋ヒータ３９(図４に示す)と蓋温度センサ３４(図５に示す)を配置している。
【００２５】
上記誘導コイル３１と横ヒータ３２および蓋ヒータ３９で内鍋１０全体を加熱する加熱部を構成している。
【００２６】
上記内鍋１０は、例えばアルミニウムなどの高熱伝導部材で形成され、その外面に加熱効率を向上させる例えばステンレス等の磁性体を貼り付ける一方、内面に被加熱物の付着を防ぐためのフッ素樹脂をコーティングしている。
【００２７】
一方、上記蓋体２は、炊飯器本体１の上側かつ後面側に設けられたヒンジ軸２０(図３に示す)を介して蓋体２が回動自在に支持された外蓋２１と、その外蓋２１の内鍋１０に対向する側に着脱自在に取り付けられた内蓋２２とを有する。この内蓋２２の外周に環状の耐熱ゴム製のパッキン２３を着脱自在に取り付けている。蓋体２が閉じられたときにパッキン２３は、内鍋１０のフランジ部１０ａの上面に密着して、内鍋１０と内蓋２２との間をシールする。また、図３において、２４は内蓋２２に設けられた蒸気穴である。
【００２８】
図４は図１のIV−IV線から見た電気炊飯器の縦断面図を示しており、図４に示すように、炊飯器本体１の外ケース１２の上面の左右２箇所に設けられた凹部１２ａ,１２ａに、内鍋１０の内鍋把手１１,１１を嵌合させると、内鍋１０は炊飯器本体１に対して位置決めされる。
【００２９】
そして、内鍋把手１１内には磁石５０を埋め込んでいる。また、外蓋２１の磁石５０上に位置する部分に、蓋体２を閉じたときに磁石５０の磁気によりオンする磁気センサとしてのリードスイッチ２５を取り付けている。なお、内鍋把手１１,１１のどちらにも磁石５０を埋め込んでいる。また、上記磁気センサとして、ホール素子を用いてもよい。
【００３０】
図５は上記電気炊飯器の制御ブロック図を示している。制御部３０は、マイクロコンピュータと入出力回路などからなり、表示操作部３からの操作信号や、リードスイッチ２５,底温度センサ３３,蓋温度センサ３４からの信号などに基づいて、表示操作部３,撹拌モータ１７,冷却ファン１５,誘導コイル用インバータ回路３５,横ヒータ用回路３６および蓋ヒータ用回路３７を制御する。誘導コイル用インバータ回路３５は、誘導コイル３１に交番磁界を発生させる。誘導コイル用インバータ回路３５,横ヒータ用回路３６,蓋ヒータ用回路３７は、図３に示す電源部１４に含まれている。
【００３１】
また、上記制御部３０は、予備撹拌運転部５１を有する。この予備撹拌運転部５１は、誘導コイル用インバータ回路３５,横ヒータ用回路３６,蓋ヒータ用回路３７を制御して誘導コイル３１,横ヒータ３２,蓋ヒータ３９による加熱運転を行う前に、撹拌モータ１７を駆動して撹拌翼４０を回転させる。また、制御部３０は、上記予備撹拌運転を実行する時刻をタイマー予約できるタイマー予約部５２を有している。
【００３２】
上記予備撹拌運転は、表示操作部３を操作することで実行される。また、表示操作部３を操作することにより、上記予備撹拌運転を実行する時刻をタイマー予約できる。
【００３３】
次に、上記構成の電気炊飯器によって、タイマー予約で炊き込みご飯を炊飯する場合の動作を、図６のフローチャートと図７のタイミングチャートを参照しながら説明する。
【００３４】
まず、使用者が適量の米と水および炊き込みご飯の具材や調味料を入れた内鍋１０を炊飯器本体１に収納した後、表示操作部３を操作して予備撹拌運転部５１による予備撹拌運転をタイマー予約部５２にタイマー予約する。これにより、上記予備撹拌運転を実行する時刻が設定される(ステップＳ１)。
【００３５】
次に、ステップＳ２に進み、制御部３０は、リードスイッチ２５がオンか否かを判定し、リードスイッチ２５がオンしていないと判定した場合は、表示操作部３にエラー表示を行って、炊飯器本体１内に内鍋１０が収納された状態で蓋体２を確実に閉じることをユーザに促す(ステップＳ３)。そして、制御部３０がリードスイッチ２５がオンしていないと判定している間は次のステップへ進まない。
【００３６】
〔予備撹拌運転〕
次に、制御部３０がリードスイッチ２５がオンしていると判定し、かつ、タイマー予約部５２による計時が設定時刻に達すると、予備撹拌運転が開始され、予備撹拌運転部５１は、撹拌モータ１７を所定時間だけ間欠的に駆動して撹拌翼４０を間欠的に回転させる(ステップＳ４)。この予備撹拌運転では、誘導コイル３１,横ヒータ３２,蓋ヒータ３９による加熱運転は行われない。なお、撹拌モータ１７を間欠的に駆動する替わりに所定時間だけ連続的に駆動して撹拌翼４０を連続的に回転させてもよい。この予備撹拌によって、調味料を米に十分吸収させると共に具材や調味料が底に沈殿することを防止できる。
【００３７】
次に、ステップＳ５に進み、初期温度検知を行う。この初期温度検知では、制御部３０は、底温度センサ３３により検出された内鍋１０内の温度が１３５℃を超えているか否かを判定し、１３５℃を超えていると判定した場合は、ステップＳ６に進んで、表示操作部３で内鍋１０の高温異常が発生した旨のエラー表示を行い、運転を停止する。上記エラー表示と共にエラー音を出力してユーザにより注意を促してもよい。
【００３８】
〔予熱/撹拌運転〕
一方、上記初期温度検知で、内鍋１０内の温度が１３５℃を超えていないと判定した場合は、ステップＳ７へ進み、予熱/撹拌運転を行う。
【００３９】
この予熱/撹拌運転では、撹拌モータ１７により撹拌翼４０を回転駆動して、内鍋１０内を撹拌しながら、誘導コイル用インバータ回路３５から誘導コイル３１に小電力を供給して、誘導コイル３１により内鍋１０を誘導加熱し、底温度センサ３３により検出された内鍋１０内の温度を６０℃に保つように誘導コイル３１の電力を制御して、予熱運転を所定時間行う。このとき、撹拌翼４０により内鍋１０内を撹拌することにより、内鍋１０内の被加熱物(米と水等)を均一な目標温度(６０℃)に保った状態で米に吸水させて、うまみ成分であるグルコースを生成する。
【００４０】
この予熱/撹拌運転では、澱粉分解酵素が最も有効に働く温度である６０℃に設定されており、１５分〜２０分の間、内鍋１０内の温度を６０℃に保つ。この実施形態では、予熱/撹拌運転の目標温度を６０℃としたが、これに限らず、目標温度は諸条件に応じて適宜設定すればよい。なお、この予熱/撹拌運転において、撹拌翼４０を回転させずに予熱だけを行ってもよい。
【００４１】
〔立ち上げ運転〕
次に、ステップＳ８へ進み、撹拌モータ１７の運転を停止して撹拌翼４０を止めた後、誘導コイル用インバータ回路３５から誘導コイル３１に大電力を供給して、誘導コイル３１により内鍋１０を誘導加熱すると共に、横ヒータ用回路３６,蓋ヒータ用回路３７を制御して、横ヒータ３２,蓋ヒータ３９により内鍋１０を側方と上側から加熱し、内鍋１０内の温度を１００℃に立ち上げる立ち上げ運転を行う。ここで、内鍋１０内の温度は、底温度センサ３３と蓋温度センサ３４により検出する。
【００４２】
〔炊き上げ運転〕
次に、ステップＳ９へ進み、内鍋１０内の温度が１００℃に達してから内鍋１０内の温度が１２０℃になるまで、誘導コイル３１と横ヒータ３２および蓋ヒータ３９による加熱量を調整して沸騰を維持した炊き上げ運転を行う。ここで、内鍋１０内の水が無くなって沸騰しなくなると、内鍋１０内の温度が１００℃から上昇し始める。
【００４３】
上記炊き上げ運転によって、米に熱と水が加わって米に含まれるβ澱粉がα澱粉へと変化する糊化という化学反応が起こり、美味しい炊き込みご飯ができる。
【００４４】
〔蒸らし運転〕
そうして、内鍋１０内の温度が１２０℃に達すると、ステップＳ１０に進み、誘導コイル３１と横ヒータ３２および蓋ヒータ３９による加熱量を調整して蒸らし運転を所定時間行った後、加熱調理(炊飯)を終了して、保温運転モードに移る(ステップＳ９)。
【００４５】
上述したように、この電気炊飯器では、炊き込みご飯を炊飯する場合に、誘導コイル３１,横ヒータ３２,蓋ヒータ３９による加熱を行う前に、制御部３０の予備撹拌運転部５１により、予備撹拌運転を行う。この予備撹拌運転では、加熱を行なわずに撹拌モータ１７により内鍋１０内で撹拌翼４０を回転させる。これにより、調味料を米に十分吸収させると共に具材や調味料が底に沈殿することを防止できる。よって、炊き込みご飯を炊飯する際に、加熱運転の前に内鍋１０内の被加熱物(米,水,具材,調味料)をユーザに手でかき混ぜさせるという負担を掛けることなく、加熱運転の前に内鍋１０内の被加熱物を確実に撹拌できる。したがって、加熱運転の前に被加熱物のかき混ぜが確実に実行され、早切れや焦げ付きを確実に防止でき、おいしい炊き込みご飯を炊飯することができる。また、タイマー予約部５２により、上記予備撹拌運転の実行をタイマー予約でき、タイマー予約による炊き込みご飯などの炊飯を早切れや焦げ付きを起こすことなく行うことができる。
【００４６】
尚、上記実施形態では、タイマー予約で炊き込みご飯を炊飯する場合の動作を説明したが、タイマー予約を行わず、制御部３０がリードスイッチ２５がオンしていると判定するとすぐに予備撹拌運転部５１による予備撹拌運転を開始する運転モードを選択することも勿論可能である。また、上記予備撹拌運転は、無洗米を炊飯する場合に幾らか生じる米糠の沈殿を防ぐことができるので有用である。また、上記実施形態の電気炊飯器において、炊き込みご飯等以外の通常炊飯を行う場合には、上記予備撹拌運転を行うことなく上記予熱/撹拌運転,上記立ち上げ運転,上記炊き上げ運転,上記蒸らし運転を行う通常運転モードを選択することも勿論できる。また、上記実施形態では、タイマー予約部５２を有したがタイマー予約部５２は必ずしも必要ではない。また、上記実施形態において、炊き込みご飯モードや無洗米炊飯モードを表示操作部３で選択できるようにして、この炊き込みご飯モードや無洗米炊飯モードを選択したときに上述の予備撹拌運転を含む炊飯運転を行うようにしてもよい。
【００４７】
また、上記実施形態では、磁石１８,４２による磁気カップリングで撹拌モータ１７から撹拌翼４０に回転を伝達したが、撹拌翼４０を撹拌モータ１７の回転軸１７ａに直結させてもよい。この場合、回転軸１７ａが内鍋１０を貫通する箇所に水漏れ防止用のシール装置を設ける。また、撹拌モータ１７およびロータ１６の換わりに、例えば同期モータのステータヨークのように、ステータヨークと、このステータヨークに巻き付けられた複数のコイルと、この複数のコイルに回転磁界を生成するための交流電源とを用いてもよい。このステータヨークおよび交流電源によって、回転磁界を発生させることにより、磁気カップリングした撹拌翼４０を回転駆動させることができる。要するに、回転磁界を発生できる装置であれば、内鍋１０の底部の外面の凹部内に収容してもよい。また、上記実施形態において、誘導コイル３１の換わりに、横ヒータ３２と同様のヒータを用いてもよい。このヒータを用いる場合、内鍋１０の高熱伝導部材の外面に磁性体を貼り付けなくてもよい。
【００４８】
以上、この発明の具体的な実施の形態について説明したが、この発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。
【符号の説明】
【００４９】
１…電気炊飯器本体
２…蓋体
２ａ…蒸気口
３…表示操作部
４…フックボタン
５…本体ハンドル
６…電源コード
７…コードリール
１０…内鍋
１０ａ…フランジ部
１０ｂ…凸部
１１…内鍋把手
１２…外ケース
１２ａ…凹部
１３…内ケース
１４…電源部
１５…冷却ファン
１６…ロータ
１７…撹拌モータ
１８…磁石
２０…ヒンジ軸
２１…外蓋
２２…内蓋
２３…パッキン
２４…蒸気穴
２５…リードスイッチ
２６…スプリング
３０…制御部
３１…誘導コイル
３２…横ヒータ
３３…底温度センサ
３４…蓋温度センサ
３５…誘導コイル用インバータ回路
３６…横ヒータ用回路
３７…蓋ヒータ用回路
３８…フェライト部材
３９…蓋ヒータ
４０…撹拌翼
４１…ヨーク
４２…磁石
５０…磁石
５１…予備撹拌運転部
５２…タイマー予約部
【技術分野】
【０００１】
この発明は、電気炊飯器に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来、電気炊飯器としては、炊飯用ヒータを鍋の底部と平行した方向に自動的に往復揺動させることで、炊飯動作時における鍋底部の加熱状態を均一化して、炊きむらや焦げ付きを防止するようにしたものが提案されている(特許文献１(実開昭６２‐１０８２４号))。
【０００３】
ところで、電気炊飯器で炊き込みご飯などを炊飯する場合、炊飯直前に手で内鍋内の被加熱物をかき混ぜて、内鍋内で具材や調味料の沈殿を防止するように、取扱い説明書で説明していた。上記具材や調味料が内鍋内で沈殿すると焦げ付きや早切れを招くからである。早切れとは、内鍋内で沈殿したものが過加熱して次の運転ステップへ行くことであり、早切れが起こると加熱時間が短縮されて米に芯が残る不具合を招く。
【０００４】
しかし、ユーザに手でかき混ぜさせるのはユーザに負担を掛けるし混ぜ忘れも起こり易いという問題がある。また、炊き込みご飯を炊飯する場合に、ユーザが内鍋内の被加熱物を手でかき混ぜても時間が経過すると再び沈殿するので、タイマー予約運転をすることができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００５】
【特許文献１】実開昭６２−１０８２４号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
そこで、この発明の課題は、炊き込みご飯などの炊飯において、内鍋内での具材や調味料の沈殿を防いで、被加熱物の過加熱や焦げ付きを防止できる電気炊飯器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
上記課題を解決するため、この発明の電気炊飯器は、被加熱物を収容する内鍋と、
上記内鍋が収納される炊飯器本体と、
上記炊飯器本体の上部に開閉自在に取り付けられ、上記内鍋を覆うように閉じることが可能な蓋体と、
上記内鍋内に回転自在に配置された撹拌体と、
上記内鍋外に配置され、上記撹拌体を回転駆動する回転駆動装置と、
上記炊飯器本体に収納された上記内鍋を加熱する加熱部と、
上記加熱部を制御して、加熱運転を行う制御部と
を備え、
上記制御部は、
上記加熱部による加熱運転を行う前に、上記回転駆動装置を稼働させて上記撹拌体を回転させる予備撹拌運転を行う予備撹拌運転部を有することを特徴としている。
【０００８】
この発明の電気炊飯器によれば、上記加熱部による加熱運転を行う前に、上記制御部の予備撹拌運転部が上記予備撹拌運転を実行することで、上記内鍋内で上記撹拌体を回転させて予備撹拌を行う。この予備撹拌によって、加熱運転の前にユーザに内鍋内の被加熱物を手でかき混ぜさせるという負担を掛けることなく、加熱運転の前に内鍋内の被加熱物を確実に撹拌できる。よって、炊き込みご飯などを炊飯する場合に内鍋内での具材や調味料の沈殿を防いで、被加熱物の過加熱や焦げ付きを防止でき、おいしい炊き込みご飯を作ることができる。
【０００９】
また、一実施形態の電気炊飯器では、上記制御部は、
上記予備撹拌運転部による予備撹拌運転の実行をタイマー予約できるタイマー予約部を有する。
【００１０】
この実施形態の電気炊飯器によれば、上記タイマー予約部により、上記予備撹拌運転の実行をタイマー予約でき、早切れや焦げ付きを起こすことなくタイマー予約による炊き込みご飯などの炊飯を行うことができる。
【発明の効果】
【００１１】
この発明の電気炊飯器によれば、ユーザに負担を掛けることなく、加熱運転の前に内鍋内の被加熱物を確実に撹拌できるので、炊き込みご飯などを炊飯する場合に早切れや焦げ付きを確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【００１２】
【図１】図１はこの発明の実施の一形態の電気炊飯器の斜視図である。
【図２】図２は上記電気炊飯器の蓋体を開いた状態の斜視図である。
【図３】図３は図１のIII−III線から見た電気炊飯器の縦断面図である。
【図４】図４は図１のIV−IV線から見た電気炊飯器の縦断面図である。
【図５】図５は上記電気炊飯器の制御ブロック図である。
【図６】図６は上記電気炊飯器の動作を説明するフローチャートである。
【図７】図７は上記電気炊飯器の予備撹拌運転モードにおける運転タイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【００１３】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【００１４】
図１はこの発明の実施の一形態の電気炊飯器を斜め上方から見た斜視図を示している。
【００１５】
この実施の一形態の電気炊飯器は、図１に示すように、炊飯器本体１と、炊飯器本体１に開閉自在に取り付けられた蓋体２とを備えている。炊飯器本体１は、前面側に設けられた表示操作部３と、前面側かつ上側に設けられたフックボタン４と、後面側に回動自在に取り付けられた本体ハンドル５と、後面側かつ下側に接続された電源コード６とを有する。また、蓋体２の後面側に蒸気口２ａを設けている。表示操作部３は、液晶ディスプレイと複数の操作ボタンにより構成され、調理メニューや調理状況などの表示とボタン操作が可能である。蓋体２は、炊飯器本体１に設けられたラッチ機構(図示せず)により係脱可能に係止された状態で閉じられており、フックボタン４を押すことによりラッチ機構が外れて、スプリング２６(図３に示す)の付勢力で蓋体２が開く。
【００１６】
また、図２は上記電気炊飯器の蓋体２を開いた状態の斜視図を示しており、図１と同一の構成部には同一参照番号を付している。
【００１７】
この電気炊飯器は、図２に示すように、炊飯器本体１の上側かつ後面側に設けられたヒンジ軸２０(図３に示す)を介して蓋体２を上下方向に回動自在に支持している。この蓋体２は、外蓋２１と内蓋２２とを有する。また、炊飯器本体１内に被加熱物を収容する内鍋１０を収納している。
【００１８】
上記内鍋１０の上側開口の縁に環状のフランジ部１０ａを設けている。その内鍋１０のフランジ部１０ａの半径方向に対向する位置に、図４に示すように耐熱樹脂製の内鍋把手１１,１１を取り付けている。炊飯器本体１の上面の左右２箇所に、位置決め部の一例としての凹部１２ａ(図２では右側のみを示す)を設けている。この２つの凹部１２ａに内鍋１０の内鍋把手１１,１１が夫々嵌合する。これにより、炊飯器本体１に収納された内鍋１０が炊飯器本体１に対して位置決めされる。
【００１９】
図３は、図１のIII−III線から見た電気炊飯器の縦断面図を示しており、図３に示すように、炊飯器本体１は、外ケース１２と、その外ケース１２内に配置され、内鍋１０を収納する内ケース１３とを有する。内ケース１３は、耐熱性と電気絶縁性を有する材料で形成されている。
【００２０】
上記外ケース１２と内ケース１３との間の空間の後面側(図３の右側)に、電源回路やインバータ回路などを含む電源部１４を配置し、電源部１４の下側に電源部１４などを冷却する冷却ファン１５を配置している。さらに、冷却ファン１５の下側かつ外ケース１２の底部に、電源コード６を巻き取るコードリール７を配置している。
【００２１】
また、内鍋１０の底部に、内側に突出する円筒形状の凸部１０ｂを設けている。この内鍋１０の凸部１０ｂに円板形状の撹拌翼４０を回転自在に嵌合している。この撹拌翼４０は、環状のヨーク４１と、そのヨーク４１の内側に周方向かつ等間隔に配列された複数の磁石４２とを有する。この内鍋１０の凸部１０ｂに対向する内ケース１３の領域に開口部１３ａを設けている。そして、内鍋１０の凸部１０ｂの下側かつ凸部１０ｂの内周側に、複数の磁石１８が周方向かつ等間隔に配置されたロータ１６を配置し、このロータ１６の軸部１６ａに回転軸１７ａが連結された撹拌モータ１７を内鍋１０の底部の下側に配置している。なお、撹拌モータ１７,ロータ１６は回転駆動装置の一例である。また、図３の９０は、ロータ１６を覆うカバーである。
【００２２】
そして、ロータ１６と撹拌翼４０は、夫々の磁石１８,４２によりラジアル型の磁気カップリングにより連結され、撹拌モータ１７により駆動されたロータ１６が回転することにより、磁気カップリングを介して撹拌翼４０が回転する。
【００２３】
また、外ケース１２と内ケース１３との間の空間の前面側(図３の左側)に、表示操作部３(図１,図２に示す)と、電源部１４のインバータ回路と冷却ファン１５および撹拌モータ１７などを制御する制御部３０を配置している。
【００２４】
また、炊飯器本体１内の内ケース１３の下側かつ外側に、内鍋１０を誘導加熱するための誘導コイル３１を配置している。この誘導コイル３１は、耐熱性を有する樹脂などにより内ケース１３の外面に接着されている。また、誘導コイル３１の下側には、誘導コイル３１の漏れ磁束を防止するフェライト部材３８を配置している。さらに、炊飯器本体１内の内ケース１３の上側の側面を囲むように横ヒータ３２を周方向に沿って配置している。また、内ケース１３の下側に内ケース１３を貫通する底温度センサ３３を配置している。この底温度センサ３３は、内ケース１３に収納された内鍋１０の底部近傍に先端部が当接して、内鍋１０の温度を検出する。なお、蓋体２内に蓋ヒータ３９(図４に示す)と蓋温度センサ３４(図５に示す)を配置している。
【００２５】
上記誘導コイル３１と横ヒータ３２および蓋ヒータ３９で内鍋１０全体を加熱する加熱部を構成している。
【００２６】
上記内鍋１０は、例えばアルミニウムなどの高熱伝導部材で形成され、その外面に加熱効率を向上させる例えばステンレス等の磁性体を貼り付ける一方、内面に被加熱物の付着を防ぐためのフッ素樹脂をコーティングしている。
【００２７】
一方、上記蓋体２は、炊飯器本体１の上側かつ後面側に設けられたヒンジ軸２０(図３に示す)を介して蓋体２が回動自在に支持された外蓋２１と、その外蓋２１の内鍋１０に対向する側に着脱自在に取り付けられた内蓋２２とを有する。この内蓋２２の外周に環状の耐熱ゴム製のパッキン２３を着脱自在に取り付けている。蓋体２が閉じられたときにパッキン２３は、内鍋１０のフランジ部１０ａの上面に密着して、内鍋１０と内蓋２２との間をシールする。また、図３において、２４は内蓋２２に設けられた蒸気穴である。
【００２８】
図４は図１のIV−IV線から見た電気炊飯器の縦断面図を示しており、図４に示すように、炊飯器本体１の外ケース１２の上面の左右２箇所に設けられた凹部１２ａ,１２ａに、内鍋１０の内鍋把手１１,１１を嵌合させると、内鍋１０は炊飯器本体１に対して位置決めされる。
【００２９】
そして、内鍋把手１１内には磁石５０を埋め込んでいる。また、外蓋２１の磁石５０上に位置する部分に、蓋体２を閉じたときに磁石５０の磁気によりオンする磁気センサとしてのリードスイッチ２５を取り付けている。なお、内鍋把手１１,１１のどちらにも磁石５０を埋め込んでいる。また、上記磁気センサとして、ホール素子を用いてもよい。
【００３０】
図５は上記電気炊飯器の制御ブロック図を示している。制御部３０は、マイクロコンピュータと入出力回路などからなり、表示操作部３からの操作信号や、リードスイッチ２５,底温度センサ３３,蓋温度センサ３４からの信号などに基づいて、表示操作部３,撹拌モータ１７,冷却ファン１５,誘導コイル用インバータ回路３５,横ヒータ用回路３６および蓋ヒータ用回路３７を制御する。誘導コイル用インバータ回路３５は、誘導コイル３１に交番磁界を発生させる。誘導コイル用インバータ回路３５,横ヒータ用回路３６,蓋ヒータ用回路３７は、図３に示す電源部１４に含まれている。
【００３１】
また、上記制御部３０は、予備撹拌運転部５１を有する。この予備撹拌運転部５１は、誘導コイル用インバータ回路３５,横ヒータ用回路３６,蓋ヒータ用回路３７を制御して誘導コイル３１,横ヒータ３２,蓋ヒータ３９による加熱運転を行う前に、撹拌モータ１７を駆動して撹拌翼４０を回転させる。また、制御部３０は、上記予備撹拌運転を実行する時刻をタイマー予約できるタイマー予約部５２を有している。
【００３２】
上記予備撹拌運転は、表示操作部３を操作することで実行される。また、表示操作部３を操作することにより、上記予備撹拌運転を実行する時刻をタイマー予約できる。
【００３３】
次に、上記構成の電気炊飯器によって、タイマー予約で炊き込みご飯を炊飯する場合の動作を、図６のフローチャートと図７のタイミングチャートを参照しながら説明する。
【００３４】
まず、使用者が適量の米と水および炊き込みご飯の具材や調味料を入れた内鍋１０を炊飯器本体１に収納した後、表示操作部３を操作して予備撹拌運転部５１による予備撹拌運転をタイマー予約部５２にタイマー予約する。これにより、上記予備撹拌運転を実行する時刻が設定される(ステップＳ１)。
【００３５】
次に、ステップＳ２に進み、制御部３０は、リードスイッチ２５がオンか否かを判定し、リードスイッチ２５がオンしていないと判定した場合は、表示操作部３にエラー表示を行って、炊飯器本体１内に内鍋１０が収納された状態で蓋体２を確実に閉じることをユーザに促す(ステップＳ３)。そして、制御部３０がリードスイッチ２５がオンしていないと判定している間は次のステップへ進まない。
【００３６】
〔予備撹拌運転〕
次に、制御部３０がリードスイッチ２５がオンしていると判定し、かつ、タイマー予約部５２による計時が設定時刻に達すると、予備撹拌運転が開始され、予備撹拌運転部５１は、撹拌モータ１７を所定時間だけ間欠的に駆動して撹拌翼４０を間欠的に回転させる(ステップＳ４)。この予備撹拌運転では、誘導コイル３１,横ヒータ３２,蓋ヒータ３９による加熱運転は行われない。なお、撹拌モータ１７を間欠的に駆動する替わりに所定時間だけ連続的に駆動して撹拌翼４０を連続的に回転させてもよい。この予備撹拌によって、調味料を米に十分吸収させると共に具材や調味料が底に沈殿することを防止できる。
【００３７】
次に、ステップＳ５に進み、初期温度検知を行う。この初期温度検知では、制御部３０は、底温度センサ３３により検出された内鍋１０内の温度が１３５℃を超えているか否かを判定し、１３５℃を超えていると判定した場合は、ステップＳ６に進んで、表示操作部３で内鍋１０の高温異常が発生した旨のエラー表示を行い、運転を停止する。上記エラー表示と共にエラー音を出力してユーザにより注意を促してもよい。
【００３８】
〔予熱/撹拌運転〕
一方、上記初期温度検知で、内鍋１０内の温度が１３５℃を超えていないと判定した場合は、ステップＳ７へ進み、予熱/撹拌運転を行う。
【００３９】
この予熱/撹拌運転では、撹拌モータ１７により撹拌翼４０を回転駆動して、内鍋１０内を撹拌しながら、誘導コイル用インバータ回路３５から誘導コイル３１に小電力を供給して、誘導コイル３１により内鍋１０を誘導加熱し、底温度センサ３３により検出された内鍋１０内の温度を６０℃に保つように誘導コイル３１の電力を制御して、予熱運転を所定時間行う。このとき、撹拌翼４０により内鍋１０内を撹拌することにより、内鍋１０内の被加熱物(米と水等)を均一な目標温度(６０℃)に保った状態で米に吸水させて、うまみ成分であるグルコースを生成する。
【００４０】
この予熱/撹拌運転では、澱粉分解酵素が最も有効に働く温度である６０℃に設定されており、１５分〜２０分の間、内鍋１０内の温度を６０℃に保つ。この実施形態では、予熱/撹拌運転の目標温度を６０℃としたが、これに限らず、目標温度は諸条件に応じて適宜設定すればよい。なお、この予熱/撹拌運転において、撹拌翼４０を回転させずに予熱だけを行ってもよい。
【００４１】
〔立ち上げ運転〕
次に、ステップＳ８へ進み、撹拌モータ１７の運転を停止して撹拌翼４０を止めた後、誘導コイル用インバータ回路３５から誘導コイル３１に大電力を供給して、誘導コイル３１により内鍋１０を誘導加熱すると共に、横ヒータ用回路３６,蓋ヒータ用回路３７を制御して、横ヒータ３２,蓋ヒータ３９により内鍋１０を側方と上側から加熱し、内鍋１０内の温度を１００℃に立ち上げる立ち上げ運転を行う。ここで、内鍋１０内の温度は、底温度センサ３３と蓋温度センサ３４により検出する。
【００４２】
〔炊き上げ運転〕
次に、ステップＳ９へ進み、内鍋１０内の温度が１００℃に達してから内鍋１０内の温度が１２０℃になるまで、誘導コイル３１と横ヒータ３２および蓋ヒータ３９による加熱量を調整して沸騰を維持した炊き上げ運転を行う。ここで、内鍋１０内の水が無くなって沸騰しなくなると、内鍋１０内の温度が１００℃から上昇し始める。
【００４３】
上記炊き上げ運転によって、米に熱と水が加わって米に含まれるβ澱粉がα澱粉へと変化する糊化という化学反応が起こり、美味しい炊き込みご飯ができる。
【００４４】
〔蒸らし運転〕
そうして、内鍋１０内の温度が１２０℃に達すると、ステップＳ１０に進み、誘導コイル３１と横ヒータ３２および蓋ヒータ３９による加熱量を調整して蒸らし運転を所定時間行った後、加熱調理(炊飯)を終了して、保温運転モードに移る(ステップＳ９)。
【００４５】
上述したように、この電気炊飯器では、炊き込みご飯を炊飯する場合に、誘導コイル３１,横ヒータ３２,蓋ヒータ３９による加熱を行う前に、制御部３０の予備撹拌運転部５１により、予備撹拌運転を行う。この予備撹拌運転では、加熱を行なわずに撹拌モータ１７により内鍋１０内で撹拌翼４０を回転させる。これにより、調味料を米に十分吸収させると共に具材や調味料が底に沈殿することを防止できる。よって、炊き込みご飯を炊飯する際に、加熱運転の前に内鍋１０内の被加熱物(米,水,具材,調味料)をユーザに手でかき混ぜさせるという負担を掛けることなく、加熱運転の前に内鍋１０内の被加熱物を確実に撹拌できる。したがって、加熱運転の前に被加熱物のかき混ぜが確実に実行され、早切れや焦げ付きを確実に防止でき、おいしい炊き込みご飯を炊飯することができる。また、タイマー予約部５２により、上記予備撹拌運転の実行をタイマー予約でき、タイマー予約による炊き込みご飯などの炊飯を早切れや焦げ付きを起こすことなく行うことができる。
【００４６】
尚、上記実施形態では、タイマー予約で炊き込みご飯を炊飯する場合の動作を説明したが、タイマー予約を行わず、制御部３０がリードスイッチ２５がオンしていると判定するとすぐに予備撹拌運転部５１による予備撹拌運転を開始する運転モードを選択することも勿論可能である。また、上記予備撹拌運転は、無洗米を炊飯する場合に幾らか生じる米糠の沈殿を防ぐことができるので有用である。また、上記実施形態の電気炊飯器において、炊き込みご飯等以外の通常炊飯を行う場合には、上記予備撹拌運転を行うことなく上記予熱/撹拌運転,上記立ち上げ運転,上記炊き上げ運転,上記蒸らし運転を行う通常運転モードを選択することも勿論できる。また、上記実施形態では、タイマー予約部５２を有したがタイマー予約部５２は必ずしも必要ではない。また、上記実施形態において、炊き込みご飯モードや無洗米炊飯モードを表示操作部３で選択できるようにして、この炊き込みご飯モードや無洗米炊飯モードを選択したときに上述の予備撹拌運転を含む炊飯運転を行うようにしてもよい。
【００４７】
また、上記実施形態では、磁石１８,４２による磁気カップリングで撹拌モータ１７から撹拌翼４０に回転を伝達したが、撹拌翼４０を撹拌モータ１７の回転軸１７ａに直結させてもよい。この場合、回転軸１７ａが内鍋１０を貫通する箇所に水漏れ防止用のシール装置を設ける。また、撹拌モータ１７およびロータ１６の換わりに、例えば同期モータのステータヨークのように、ステータヨークと、このステータヨークに巻き付けられた複数のコイルと、この複数のコイルに回転磁界を生成するための交流電源とを用いてもよい。このステータヨークおよび交流電源によって、回転磁界を発生させることにより、磁気カップリングした撹拌翼４０を回転駆動させることができる。要するに、回転磁界を発生できる装置であれば、内鍋１０の底部の外面の凹部内に収容してもよい。また、上記実施形態において、誘導コイル３１の換わりに、横ヒータ３２と同様のヒータを用いてもよい。このヒータを用いる場合、内鍋１０の高熱伝導部材の外面に磁性体を貼り付けなくてもよい。
【００４８】
以上、この発明の具体的な実施の形態について説明したが、この発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。
【符号の説明】
【００４９】
１…電気炊飯器本体
２…蓋体
２ａ…蒸気口
３…表示操作部
４…フックボタン
５…本体ハンドル
６…電源コード
７…コードリール
１０…内鍋
１０ａ…フランジ部
１０ｂ…凸部
１１…内鍋把手
１２…外ケース
１２ａ…凹部
１３…内ケース
１４…電源部
１５…冷却ファン
１６…ロータ
１７…撹拌モータ
１８…磁石
２０…ヒンジ軸
２１…外蓋
２２…内蓋
２３…パッキン
２４…蒸気穴
２５…リードスイッチ
２６…スプリング
３０…制御部
３１…誘導コイル
３２…横ヒータ
３３…底温度センサ
３４…蓋温度センサ
３５…誘導コイル用インバータ回路
３６…横ヒータ用回路
３７…蓋ヒータ用回路
３８…フェライト部材
３９…蓋ヒータ
４０…撹拌翼
４１…ヨーク
４２…磁石
５０…磁石
５１…予備撹拌運転部
５２…タイマー予約部
【特許請求の範囲】
【請求項１】
被加熱物を収容する内鍋と、
上記内鍋が収納される炊飯器本体と、
上記炊飯器本体の上部に開閉自在に取り付けられ、上記内鍋を覆うように閉じることが可能な蓋体と、
上記内鍋内に回転自在に配置された撹拌体と、
上記内鍋外に配置され、上記撹拌体を回転駆動する回転駆動装置と、
上記炊飯器本体に収納された上記内鍋を加熱する加熱部と、
上記加熱部を制御して、加熱運転を行う制御部と
を備え、
上記制御部は、
上記加熱部による加熱運転を行う前に、上記回転駆動装置を稼働させて上記撹拌体を回転させる予備撹拌運転を行う予備撹拌運転部を有することを特徴とする電気炊飯器。
【請求項２】
請求項１に記載の電気炊飯器において、
上記制御部は、
上記予備撹拌運転部による予備撹拌運転の実行をタイマー予約できるタイマー予約部を有することを特徴とする電気炊飯器。
【請求項１】
被加熱物を収容する内鍋と、
上記内鍋が収納される炊飯器本体と、
上記炊飯器本体の上部に開閉自在に取り付けられ、上記内鍋を覆うように閉じることが可能な蓋体と、
上記内鍋内に回転自在に配置された撹拌体と、
上記内鍋外に配置され、上記撹拌体を回転駆動する回転駆動装置と、
上記炊飯器本体に収納された上記内鍋を加熱する加熱部と、
上記加熱部を制御して、加熱運転を行う制御部と
を備え、
上記制御部は、
上記加熱部による加熱運転を行う前に、上記回転駆動装置を稼働させて上記撹拌体を回転させる予備撹拌運転を行う予備撹拌運転部を有することを特徴とする電気炊飯器。
【請求項２】
請求項１に記載の電気炊飯器において、
上記制御部は、
上記予備撹拌運転部による予備撹拌運転の実行をタイマー予約できるタイマー予約部を有することを特徴とする電気炊飯器。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【公開番号】特開２０１１−２４００１４（Ｐ２０１１−２４００１４Ａ）
【公開日】平成２３年１２月１日（２０１１．１２．１）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２０１０−１１６１２６（Ｐ２０１０−１１６１２６）
【出願日】平成２２年５月２０日（２０１０．５．２０）
【出願人】（０００００５０４９）シャープ株式会社 (33,933)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２３年１２月１日（２０１１．１２．１）
【国際特許分類】
【出願日】平成２２年５月２０日（２０１０．５．２０）
【出願人】（０００００５０４９）シャープ株式会社 (33,933)
【Ｆターム（参考）】
[ Back to top ]