説明

電気的特性測定装置及び方法

【課題】導電性シート体において、金属薄膜上の高機能材料の厚み方向の電気的特性を全面にわたって高速に検査する。
【解決手段】導電性シート体において、複数の圧接する測定用金属ガイドロールと金属薄膜と電気的に低抵抗で接続するための接地用金属ガイドロールと、導電性シート体またはガイドロールを連続的に移動させながら、測定用及び接地用金属ガイドロール間の電気的特性を連続的に測定する制御回路手段と、を備え、シート面上で厚さ方向の電気的特性分布を表示するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性シート体の電気的特性測定を行うための電気的特性測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題の意識が向上したこともあり、2次電池が色々な場面において使われてきている。この2次電池には導電性シート体が用いられており、その例として、金属薄膜上に高機能材料である活物質をつけた導電性フィルムや、電池の正極、負極シートといったものが挙げられる。
【0003】
通常、導電性シート体は、高機能材料である活物質で金属薄膜をサンドイッチした構造となっている。こうした導電性シート体は、その製造工程や検査工程などの搬送時に、高機能材料の活物質の電気的特性、特に電気抵抗の連続的測定が要求される場合が極めて多い。具体例として、Li電池製造工程を考える。Li電池は、金属薄膜上にコバルト酸リチウムなどの活物質をつけた正極シート、セパレータシート、金属薄膜上に黒鉛などの活物質をつけた負極シートを重ね合わせた構造物に電解液を充填したものである。Liイオンがセパレータを介して正極側活物質と負極側活物質を行き来することで、電気の充放電を電気化学的なエネルギーとして蓄積する、いわいる2次電池として動作するものである。活物質から出る電気はそれぞれの極の金属薄膜を通して+極、−極として電気を取り出すことができる。よって、金属薄膜と活物質を組み合わせたシート構造は、電池にとって本質的な構造であり、一般的に、正極、負極ともに金属薄膜は10〜100μm、その両側の活物質は10〜100μmの厚さである。
【0004】
電池の生産プロセスは、正極、負極ともに独立にシート体としてロール製造プロセスで制作する。具体的には、正極の場合、コバルト酸リチウムなどの活物質材料を混練し、金属薄膜上に塗工、圧延処理し、その後、電池サイズに切断して電極加工を行う。つまり、圧延処理までは、一括のシート体としてロール製造を行い、最後に電極加工することで電池の正極を制作する。負極製造プロセスも材料の違いはあるものの、同様にシート体をロール製造にて制作する。次工程の組み立て工程では、それぞれの正極、負極、セパレータを捲回、容器挿入、電解液注入、封缶を行い、全数の充放電検査を行い、電池は完成する。
【0005】
ところで、正極、負極の活物質の厚さ、電気特性のばらつきがあると、完成したLi電池の電気特性もばらつくことになる。従来は、正極、負極のシート製造工程の中で、活物質の塗布ムラ等を画像によるモニタリングや抵抗、容量を抜き取り検査等で測定していたが、全面に亘り、高速に、電気的特性、特に、電気抵抗の連続的測定をすることは不可能であった。
【0006】
この点、例えば、特許文献1は、渦電流発生・検査コイルによって導電膜を全面にわたり走査する方法によって、非接触・非破壊状態で連続的に電気的特性を測定することを開示している。特許文献1が開示する渦電流検出法は、過電流により発生する磁界が相互誘導作用により検出コイルのインピーダンスを変化させることで、非検査物である導体の状態を知る方法である。
【0007】
また、特許文献2は、グラファイトシートの厚さ方向の電気抵抗測定であり、かつ、全面にわたり非破壊検査する方法を開示している。
【0008】
さらに、特許文献3は、導体性シート体の電気抵抗測定値を搬送中に連続してシート体の横幅方向の電気抵抗を測定する方法を開示している。この測定原理は、ガイドロールを利用した4端子法であり、対象物の横幅の表面抵抗を測定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平5−149927号公報
【特許文献2】特開平9−213311号公報
【特許文献3】特開2006―38646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1は、磁界によるインピーダンス変化する導体の状態を知ることができるが、金属薄膜上の高機能材料の活物質層の状態を計測する場合、金属薄膜が影響を及ぼし、高機能材料の電気的特性を測定することは難しいという問題がある。
【0011】
また、特許文献2は、単一層のシート材料を一定量ずつ間接的に送り、その停止期間中に昇降を繰り返し測定するものであり、高速に連続的な計測には難しいという問題がある。
【0012】
さらに、特許文献3は、連続してシート体を測定することはできるが、測定できる抵抗はシート体の横幅方向の表面抵抗であり、厚さ方向の抵抗を連続的に計測することはできないという問題がある。
【0013】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、金属薄膜上の活物質の厚み方向の電気的特性を、シート体の全面に亘り、連続的にかつ高速に測定(非破壊検査)することができる、測定方法及び装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明では、被検査シート(導電性シート)を測定用ガイドローラと接地用ガイドローラで挟む、或いは双方をシート上面から圧接し、双方のガイドローラを介してシートに電圧(直流或いは交流)を印加する。このようにしてシートの高機能材料(表面の活物質層)の電気的特性値(抵抗値或いはインピーダンス値)を測定して出力(表示)する。
【0015】
即ち、本発明による電気的特性測定装置は、金属薄膜とそれを高機能材料で挟む構造を有する被検査シートの電気的特性を測定する電気的特性測定装置であって、被検査シートと接触する複数の測定用ロールを有する測定用ガイドロール部と、被検査シートをアースするための接地用ガイドロール部と、駆動部と、測定制御回路と、を備えている。駆動部は、被検査シート、又は、測定用及び接地用ガイドロール部を、所定方向(移動方向)に移動させる。また、測定制御回路は、測定用ガイドロール部のそれぞれの測定用ロールと接地用ガイドロールとの間に電圧を印加して被検査シートを通電させることにより、被検査シートの高機能材料の厚さ方向の電気的特性値(電源が直流の場合は抵抗値、電源が交流の場合にはインピーダンス値)を測定(連続的に測定)して出力する。ここで、金属薄膜と接地用ガイドロール部との間の高機能材料の厚さ方向の電気的特性値が、測定用ガイドロールの各測定用ロールと金属薄膜との間の高機能材料の厚さ方向の電気的特性値に比べて無視できるほど小さくなるようにする。このためには、接地用ガイドロール部の長さ(幅)が、複数の測定用ロールのそれぞれの長さ(幅)と比べて非常に大きくなるように構成すればよい。
【0016】
また、連続的に測定した電気的特性値は、被検査シートの厚さ方向の電気的特性分布として表示部に表示される。この場合、連続的に測定した電気的特性値を、値の大きさに応じて濃淡表示或いは色彩表示に変換し、電気的特性分布として表示部に表示するようにしても良い。また、連続的に測定した電気的特性値のうち、所定の上限閾値と所定の下限閾値とによって規定される範囲を外れる電気的測定値について異常状態であることを示す表示を表示部に表示するようにしても良い。
【0017】
さらに、測定用ガイドロール部は、複数のガイド軸と、それぞれのガイド軸に配置された測定用ロールと、を備えるようにしても良い。この場合、各測定用ロールが被検査シートと接する領域を総和すると、被検査シートの表面領域をカバーするように、複数の測定用ロールがガイド軸に配置される。
【0018】
また、被検査シートは、金属薄膜に高機能材料がパターンニングされ、金属薄膜の表面が露出するように作成されるようにしてもよい。このとき、接地用ガイドロール部を、金属薄膜の露出領域に接触するように配置するとシートと接地用ガイドロールとの間の電気的特性を考慮しなくてもよい。
【0019】
さらなる本発明の特徴は、以下本発明を実施するための最良の形態および添付図面によって明らかになるものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、金属薄膜上の活物質の厚み方向の電気的特性を、シート体の全面に亘り、連続的にかつ高速に測定(非破壊検査)することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態による電気的特性測定装置の概略構成を示す図である。
【図2】被測定対象であるシートの断面図である。
【図3】抵抗分布の測定結果を示すグラフ例(1)である。
【図4】抵抗分布の測定結果を示すグラフ例(2)である。
【図5】本発明の第2の実施形態による電気的特性測定装置のガイドロールに関するする概略構成を示す図である。
【図6】抵抗分布の測定位置及び測定結果の表示例を示す図である。
【図7】抵抗値を色の濃度に変換して表示した測定結果の表示例を示す図である。
【図8】本発明の第3の実施形態による電気的特性測定装置のガイドロールに関する概略構成を示す図である。
【図9】本発明の第4の実施形態による電気的特性装置のガイドロールに関する概略構成を示す図である。
【図10】本発明の第5の実施形態による電気的特性測定装置の概略構成を示す図である。
【図11】交流電源の周波数を可変にし、周波数に対応したシートの電気的特性を測定するシステムの概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、金属薄膜上の高機能性材料で構成される活物質層の厚さ方向の電気的特性をシート体全面に亘り高速に、かつ非破壊で測定するための技術に関するものである。
【0023】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。ただし、本実施形態は本発明を実現するための一例に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではないことに注意すべきである。また、各図において共通の構成については同一の参照番号が付されている。
(1)第1の実施形態
<電気特性測定装置の構成>
図1は、本発明の第1の実施形態による電気的特性測定装置の概略構成を示す図である。図1による電気的特性測定装置において、40は活物質層と金属薄膜を含む被検査シート(導電性シート)、2は被検査シート40をアース(接地)するための接地用ガイドロール(金属であれば良い)、3及び8は被検査シート40と接し(圧接し)当該シートの電気的特性(第1の実施形態では「抵抗」)を測定するための測定用ガイドロール(金属であれば良い)、15は測定用ガイドロール間の絶縁材料体、30は測定制御回路全体ユニットを示している。また、測定制御回路全体ユニット30において、4及び9は測定用直流電圧計、5及び10は測定用直流電流計、6及び11は測定用直流電源、7及び12は測定用D/A変換回路、13は処理ユニット、14は表示ユニットを示している。
【0024】
当該電気的特定測定装置において、接地用ガイドロール2は、被検査シート40を介して測定用ガイドロール3及び8の真下に設置する必要はなく、その配置する位置に特に制限は無い。
【0025】
被検査シート40は、図1中の「移動方向」に移動しているが、当該シートを移動させる機構については様々な形態があるため、ここでは移動機構についての図示を省略している。また、ここでは、被検査シートは移動方向に1m/sで移動するロール製造プロセスを想定している。
【0026】
<導電体シートの構成>
図2は、被検査シートである導電体シートの構成を示す図である。導電体シート40の構造は、図2に示されるように、活物質45及び47で金属薄膜46を挟んだものとなっている。活物質層45及び47としては、例えばコバルト酸リチウムやカーボン等を用いることができ、金属薄膜46としては、例えばアルミや銅等を用いることができる。
【0027】
また、この被検査シートは、ロール製法プロセスで制作されており、例えば移動方向に対応するロールシート長は数10m、ロールシート幅は80cm、金属薄膜46の厚さは10〜100μm、好ましくは30μm程度、活物質45及び47の厚さは両面塗布で各10〜100μm、好ましくは各60μm程度である。
【0028】
<電気特性の測定原理等>
続いて、被検査シート40の電気特性の測定原理等について説明する。測定用電源6及び11は、それぞれ測定用直流電流計5及び10を通して、測定用ガイドロール3及び8に接続されている。また、測定用ガイドロール3及び8は、被検査シート40にそれぞれ電極として圧接されており、電流はそれぞれの電極の直下の厚さ方向の活物質を通して、被検査シート40内の金属薄膜46に流れる。その後、それぞれの電流は接地用ガイドロール2の直上の圧さ方向の活物質47を通して、測定用電源6及び7に戻るループ回路を構成する。
【0029】
つまり、当該測定制御回路30は、測定用ガイドロール3及び8による電極と接地ガイドロール2による電極の間の電気抵抗を測定する回路構成であり、測定用ガイドロール3及び8のそれぞれについて独立に電極間の電気抵抗を測定できるものである。また、電極間の抵抗測定は、電極と接している部分の活物質層45の厚さ方向の抵抗を測定しているところが特徴である。
【0030】
測定用ガイドロール3及び8と接地用ガイドロール2に圧接された厚さ方向の活物質の抵抗をそれぞれR1、R2、Rg(図1中、L1部分の抵抗をR1、L2部分の抵抗をR2、L3部分の抵抗をRg)とすると、活物質層45の抵抗R1はρ×H/(W×L1)となる。ここでρは活物質層の電気抵抗率、Hは厚さ方向の距離、Wは計測用ガイドロールが圧接された接触幅、L1は測定用ロールの幅である。同様に抵抗R2はρ×H/(W×L2)、抵抗Rgはρ×H/(W×L3)となる。例えば、ρ=3kΩ、H=60μm、W=2mm、L1=10mm、L2=10mm、L3=800mmとすると、R1=数kΩ、R2=数kΩ、Rg=数Ωとなり、R及びR>>Rgであるので、電圧計9及び電流計10より求める抵抗はR2を、また、電圧計4及び電流計5より求める抵抗はR1を計測していることに相当する。見方を変えると、接地用ガイドロール2のL3を長く取り、L1及びL2をできるだけ短く取り、相対的に抵抗Rg51をなるべく小さくする(R1及びR2とは3桁以上オーダーが異なることが望ましい)ことにより、等価的に金薄薄膜46を仮想GNDにすることができる。これは、被検査シート40の金属薄膜46を積極的に利用して活物質層45の厚さ方向の抵抗を測定するものである。
【0031】
また、被検査シート40は移動方向に一定速度で移動しているため、測定すべき抵抗R1及びR2は、移動方向に連続的に測定していることになる。例えば、秒速1m/sの測定データを1KHzでサンプリングすると、1mmピッチのR1のデータを測定していることになる。そして、処理ユニット13で、横軸に、時間又は移動距離をプロットしてR1のデータを表示すると、移動方向に2次元的に活物質の厚さ方向の抵抗分布を示すことができる。図3、図4に抵抗分布の測定例を示すグラフを示す。図3は、シートの厚さ方向の抵抗がある一定の範囲に入っているときのもので、図4は、ある一定の範囲を超えて、抵抗が大きくなったり、又は抵抗が小さくなったりしたものである。このように2次元的に抵抗分布を測定するこが可能になる。図4のように、上限や下限の閾値を超えた抵抗値を有する被検査シート(導電性シート)40は品質が良くないため、Li電池製造には用いないようにすることが可能となる(品質管理)。
【0032】
(2)第2の実施形態
<電気的特性測定装置の構成>
図5は、本発明の第2の実施形態による電気的特性測定装置の測定用及び接地用ガイドロール部分の概略構成を示す図である。図5において、71は披検査シート、31、81、32、及び82はそれぞれ測定用ガイドロールA、B、C、D、21は接地用ガイドロールE、75は概略構成図を上から見たときのそれぞれのガイドロールの配置図である。図5は概略構成図であるため、測定用回路の全体ユニットは省略してあるが、第1の実施形態と同様に、測定用ガイドロールによる電極と接地ガイドロールによる電極の間の電気抵抗を測定する回路構成であり、測定ガイドロールごとに独立に電極間の電気抵抗を測定できる構成となっている。
【0033】
本実施形態による構成の特徴は、75に示すとおり、測定用ガイドロールを複数用いて、被検査シート体の幅方向(移動方向と垂直方向)に網羅的に配置することで、その直下の厚さ方向の抵抗を測定できることであり、結果としてシート全面に対して厚さ方法の抵抗を測定できることになる。
【0034】
<測定結果の表示>
図6は測定分布の測定位置及び測定結果表示の一例を示す図である。図5の例では、測定用ガイドロールA及びBと測定用ガイドロールC及びDがそれぞれ同軸上で測定されているが、シート上の測定位置として表現するとシート全面に対して網羅的に測定していることがわかる。図6において、90は面内分布表示画像、91はADサンプリング周期である。ADサンプリング周期で得た厚さ方向の抵抗値を、例えば、色の濃度分布、色彩表示に変換して表現することができる。これによって、面内の抵抗のばらつきを解り易く表現するとことができる。また、92のように、抵抗が異常値を示す場合には、色を濃くして表示するようにしても良い。さらに、図5の測定用ガイドロールの幅を小さくしてより細かく網羅的に測定したり、サンプリング周期を短くして位置ごとの測定分解能を上げるなどの改良を行うことで、よりきめ細かい2次元分布を表現することができる。
【0035】
図7は、別の形態の測定結果の表示例であり、抵抗値を色の濃度に変換して表示した表示例を示す図である。100は進行方向の厚さ抵抗バラツキを色濃淡に変換して表示したときの例、101はシート体の幅方向の厚さ抵抗バラツキを色濃淡に変換して表示したときの例である。このように表示することにより、例えば、いくつかの特徴的な分布を容易に見つけることも可能になる。つまり、表示100によれば、進行方向に対して活物質の塗布ムラ、密度ムラなどに起因する電気的特性バラツキを把握することができ、表示101によれば、幅方向に対して活物質の塗布ムラ、密度ムラなどに起因する電気的特性バラツキを把握することができるようになる。これらは、Li電池の電気的特性のバラツキにつながるものであり、最終製品になる前工程のシート生産段階で品質管理することができる。さらには、電気的特性のバラツキの傾向、特徴からバラツキの発生元を究明できる可能性もある。例えば、進行方向に規則的なムラが発生した場合、ロールプロセスの偏心と特定することが容易にできる。
【0036】
(3)第3の実施形態
図8は、本発明の第3の実施形態による電気的特性測定装置の測定用及び接地用ガイドロール部分の概略構成を示す図である。図8において、401は活物質層がパターニングされた被検査シート体であり、活物質層451及び471で金属薄膜461を挟んだ構造となっているが、第1の実施形態との違いは、シート体表面を上から見たときに、活物質451及び471がパターニングされ、金属薄膜461の一部が表面から見えている点である。このようなケースでは、接地用ガイドライン22を図8のように表面に圧接することで、測定用ガイドライン3及び8の厚さ方向の抵抗をより確実に測定することができる。
【0037】
(4)第4の実施形態
図9は、本発明の第4の実施形態による電気的特性測定装置の測定用及び接地用ガイドロール部分の概略構成を示す図である。図9において、210はガイドロールを移動するモータ(駆動部)、33及び83は測定用ガイドロール、23は接地用ガイドロールである。第1の実施形態との違いは、接地用ガイドロール23を測定用ガイドロール3及び8と同一面に配置した点である。接地用ガイドロール23は、本来、幅L3を大きくとることで金属薄膜46の抵抗を小さくすることが目的であり、その観点からみたとき、測定用ロールと同一面にしても効果は同様である。この構成に加え、測定用及び接地用ガイドロールを移動させるモータ210により、被検査シート40を固定しておき、各ガイドロールを移動することで連続的な抵抗を測定することもできる。つまり、被検査シート40を固定しておき、測定用ガイドロール33及び83、接地用ガイドロール23を移動させて測定する構造も、本発明の検出原理の範囲内である。
【0038】
(5)第5の実施形態
図10は、本発明の第5の実施形態による電気的特性測定装置の概略構成を示す図である。第1乃至第4の実施形態では、電源として直流電源6及び11を用いて活物質層45の抵抗値を測定するようにしているが、第5の実施形態では、交流電源を用いて活物質層45のインピーダンスZ500を測定する。
【0039】
第5の実施形態による電気的特性測定装置は、第1乃至第4の実施形態における測定制御回路30の代わりに交流電源を用いた測定制御回路300を備えており、測定用及び接地用ガイドロールについては第1乃至第4の実施形態のものと同一のものを適用することができる。
【0040】
測定制御回路300は、測定用交流電圧計140及び190と、測定用交流電流計150及び200と、測定用交流電源60及び110と、測定用D/A変換回路7及び12と、処理ユニット13と、表示ユニット14と、を備えている。
【0041】
当該電気的特性測定装置では、所定の周波数及び所定の最大電圧値において、交流電圧を測定用ガイドロール3及び8と接地用ガイドロール2との間に印加し、活物質層のインピーダンスZ500を測定する。第1乃至第4の実施形態における直流電圧印加による抵抗測定の場合のように、L3がL1又はL2に比べて過大であるので、インピーダンスZg510はインピーダンスZやZに比べて極めて小さくなり実質的に無視することができる。よって、当該電気的特性測定装置では、インピーダンスZ及びZの値がZgに比べて支配的となり、実質的に活物質層45の各領域(L1とW及びL2とWで規定される領域)におけるインピーダンスZ及びZを測定する構成となっている。このように、交流電源を用いて活物質層45のインピーダンスを測定することにより、活物質層45の膜質を観察することが可能となる。
【0042】
図11は、周波数の異なる複数の電気的特性測定装置を設置し、それぞれの周波数における活物質層45のインピーダンスを測定するシステムの概略構成を示す図である。図11において、各電気的特性測定装置は図10の構成を備えているが、それぞれの測定制御回路301乃至304における交流電源の周波数は異なっている。これにより、所定の範囲内で周波数1から周波数kまで掃引し、周波数値に対応した、活物質層45のインピーダンスを測定することができるので、より詳細に活物質層45の膜質を検査することが可能となる。なお、ここでは周波数について可変としたが、交流電源の最大電圧値を可変にしてインピーダンスを測定するようにしてもよい。これにより、最大電圧値可変及び周波数可変にした状態での活物質層45のインピーダンス値の変化を観察することができ、よりきめ細かく導電性シートの品質を管理することが可能となる。また、1つの交流電源で周波数1からkまで掃引してインピーダンスを測定するようにしてもよい。
【0043】
その他の構成(ガイドロールや表示形態に関する構成)については、第1乃至第4の実施形態における構成を第5の実施形態による電気的特性測定装置及びシステムに適用するようにしても良い。
【0044】
<まとめ>
本実施形態では、被検査シート(導電性シート)を測定用ガイドローラと接地用ガイドローラで挟む、或いは双方をシート上面から圧接し、双方のガイドローラを介してシートに電圧(直流或いは交流)を印加する。このようにしてシートの高機能材料(表面の活物質層)の厚さ方向の電気的特性値(抵抗値或いはインピーダンス値)を測定して出力(表示)する。この際、被検査シート或いはガイドローラを移動させながら電気的特性を測定する。このようにすることで、被検査シートの全面に亘って連続的に、かつ高速に、電気的特性を測定することができるようになる。そして、この電気的特性をリアルタイムでモニタリングすることにより、活物質層を構成する高機能材料の電気的特性のバラツキを観察し、そのバラツキが所定範囲を超える場合には、そのシート或いはその部分を製品(電池の電極)に用いないようすることができる。よって、被検査シートの品質管理を徹底することが可能となる。
【0045】
また、複数の圧接するガイドロールによる電極をシート体の幅方向の異なる位置に配置する。これにより、シート体の幅方向に対して網羅的にその直下の厚さ方向の抵抗を測定することができ、シート体全面の抵抗測定が可能になる。
【0046】
さらに、金属薄膜上の高機能材料が両面にある構造の場合、接地用ガイドロールの圧接する面積を数Ω以下になるように圧接することで、測定用ガイドロールの直下の圧さ方向の抵抗(数kΩ)を高精度に測定できるようになる。接地用ガイドロールの圧接する面積を数Ω以下になるようにするには、接地用ガイドロールの長さ(幅)を測定用ガイドロールの長さ(幅)に比べて非常に多く取れば良い。
【0047】
また、金属薄膜上の高機能材料が両面にある構造であり、かつ、高機能材料がパターニングしてあり金属薄膜が露出している場合は、その露出領域に接地用金属ガイドロールを配置する。これにより、ガイドロールによってシートを挟む構成と異なり、RgやZgの値をゼロとすることできるので、測定用ガイドロールの直下の圧さ方向の抵抗をより高精度に測定することができるようになる。
【0048】
また、厚さ方向の抵抗値を色の濃淡表示、色彩表示に変換してシート面上に表示するようにしてもよい。これにより、シート上の厚さ方向の抵抗分布の差が、一目で見分けられ、使い勝手のよいユーザインターフェースを実現することができる。
【符号の説明】
【0049】
2,21乃至27・・・接地用ガイドロール
3,31乃至37,8,81乃至87・・・測定用ガイドロール
4,9・・・測定用直流電圧計
5,10・・・測定用直流電流計
6,11・・・測定用直流電源
7,12・・・測定用D/A変換回路
13・・・処理ユニット
14・・・表示ユニット
15・・・絶縁材料体
30,300乃至304・・・測定制御回路全体ユニット
40,71,401・・・披検査シート(導電性シート)
45,47,451,471・・・活物質
46,461・・・金属薄膜
50・・・抵抗R1
51・・・抵抗Rg
90・・・面内分布表示画像
91・・・ADサンプリング周期
92・・・不均一抵抗部分の表示
210・・・ガイドロール駆動部(モータ)
140,190・・・測定用交流電圧計
150,200・・・測定用交流電流計
60,110・・・測定用交流電源
500・・・インピーダンスZ
510・・・インピーダンスZg

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属薄膜とそれを高機能材料で挟む構造を有する被検査シートの電気的特性を測定する電気的特性測定装置であって、
前記被検査シートと接触する複数の測定用ロールを有する測定用ガイドロール部と、
前記被検査シートをアースするための接地用ガイドロール部と、
前記測定用ガイドロール部のそれぞれの測定用ロールと前記接地用ガイドロールとの間に電圧を印加して前記被検査シートを通電させることにより、前記被検査シートの前記高機能材料の厚さ方向の電気的特性値を測定して出力する測定制御回路と、
前記被検査シート、又は、前記測定用及び接地用ガイドロール部を、所定方向(移動方向)に移動させる駆動部と、
を備えることを特徴とする電気的特性測定装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記金属薄膜と前記接地用ガイドロール部との間の前記高機能材料の厚さ方向の電気的特性値が、前記測定用ガイドロールの各測定用ロールと前記金属薄膜との間の前記高機能材料の厚さ方向の電気的特性値に比べて無視できるほど小さくなるように、前記接地用ガイドロール部の前記移動方向と直交する方向(シート幅方向)における長さが、前記複数の測定用ロールのそれぞれの前記シート幅方向の長さよりも大きくなっていることを特徴とする電気的特性測定装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記測定制御回路は、前記移動方向に亘り、前記被検査シートの電気的特性値を連続的に測定すること特徴とする電気的特性測定装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記測定制御回路は、前記連続的に測定した電気的特性値を、前記被検査シートの厚さ方向の電気的特性分布として表示部に表示することを特徴とする電気的特性測定装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記測定制御回路は、前記連続的に測定した電気的特性値を、値に大きさに応じて濃淡表示或いは色彩表示に変換し、前記電気的特性分布として前記表示部に表示することを特徴とする電気的特性測定装置。
【請求項6】
請求項3において、
前記測定制御回路は、前記連続的に測定した電気的特性値のうち、所定の上限閾値と所定の下限閾値とによって規定される範囲を外れる電気的測定値について異常状態であることを示す表示を前記表示部に表示することを特徴とする電気的特性測定装置。
【請求項7】
請求項1において、
前記測定用ガイドロール部は、複数のガイド軸と、それぞれのガイド軸に配置された測定用ロールと、を備え、各測定用ロールが前記被検査シートと接する領域を総和すると、前記被検査シートの表面領域をカバーするように、前記複数の測定用ロールが前記ガイド軸に配置されることを特徴とする電気的特性測定装置。
【請求項8】
請求項1において、
前記被検査シートでは、前記金属薄膜に前記高機能材料がパターンニングされ、前記金属薄膜の表面が露出しており、
前記接地用ガイドロール部が前記金属薄膜の露出領域に接触するように配置されていることを特徴とする電気的特性測定装置。
【請求項9】
請求項1において、
前記測定制御回路は、前記測定用ガイドロール部のそれぞれの測定用ロールと前記接地用ガイドロールとの間に直流電圧を印加して前記被検査シートを通電させることにより、前記被検査シートの前記高機能材料の厚さ方向の抵抗値を測定して出力することを特徴とする電気的特性測定装置。
【請求項10】
請求項1において、
前記測定制御回路は、前記測定用ガイドロール部のそれぞれの測定用ロールと前記接地用ガイドロールとの間に交流電圧を印加して前記被検査シートを通電させることにより、前記被検査シートの前記高機能材料の厚さ方向のインピーダンス値を測定して出力することを特徴とする電気的特性測定装置。
【請求項11】
金属薄膜とそれを高機能材料で挟む構造を有する被検査シートの電気的特性を測定する電気的特性測定方法であって、
複数の測定用ロールを有する測定用ガイドロール部を前記被検査シートと接触させる工程と、
前記被検査シートをアースするための接地用ガイドロール部を前記被検査シートに接触させる工程と、
駆動部を用いて、前記被検査シート、又は、前記測定用及び接地用ガイドロール部を、所定方向(移動方向)に移動させる工程と、
測定制御回路を用いて、前記測定用ガイドロール部のそれぞれの測定用ロールと前記接地用ガイドロールとの間に電圧を印加して前記被検査シートを通電させることにより、前記被検査シートの前記高機能材料の厚さ方向の電気的特性値を測定して出力する工程と、
を備えることを特徴とする電気的特性測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−149750(P2011−149750A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−9683(P2010−9683)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】