説明

電気自動車用暖房装置

【課題】立ち上がりが早く効率的な暖房を得ることが可能な電気自動車用の暖房を実現する。
【解決手段】通電開始の立ち上がり時は、立ち上がりの補助ヒータとして、立ち上がりの早いタングステンフィラメントの第1の管型ヒータを通電させ、立ち上がり後はニクロムフィラメントの第2の管型ヒータを通電させるようにした。これにより、立ち上がりの遅い第2の管型ヒータの立ち上がりを早めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、搭載したバッテリーに基づきモータを駆動させて走行を行う電気自動車用電気自動車用暖房装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電気自動車用暖房装置は、ニクロム線を利用したシーズヒータによる電気ヒータを用いて暖房が行われている。(例えば、特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−324653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1の技術は、ニクロム線の特性からヒータとしての立ち上がりに時間がかかり、車内の暖房効果が得られるまでには相当の時間を要してしまう、という問題があった。
【0005】
この発明の目的は、立ち上がりが早く効率的な暖房を得ることが可能な電気自動車用暖房装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するために、この発明の電気自動車用暖房装置は、バッテリーを走行用モータの電源とするとともに暖房器の電源とした電気自動車用暖房装置において、前記暖房器は、立ち上がり時は温度の立ち上がり速度の速い第1の管形ヒータを、立ち上がり後は発熱効率の高い第2の管形ヒータを用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、立ち上がり時は立ち上がり特性のよい第1の管形ヒータで、立ち上がり後は電力効率のよい第2の管形ヒータでの暖房としたことにより効率的な暖房を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の電気自動車用暖房装置に関する一実施形態について説明するための構成図である。
【図2】図1の要部の構成図である。
【図3】図1、図2の動作について説明するためのフローチャートである。
【図4】図1、図2の第1および第2の管型ヒータの制御信号について説明するための説明図である。
【図5】図1、図2の第1および第2の管型ヒータの温度変化について説明するための説明図である。
【図6】タングステンフィラメントとニクロムフィラメントによる管型ヒータのランプ強度について説明するための説明図である。
【図7】この発明の電気自動車用暖房装置に関する他の実施形態について説明するためのフローチャートである。
【図8】図7に基づく動作説明図である。
【図9】この発明の電気自動車用暖房装置に関するもう一つの他の実施形態について説明するためのフローチャートである。
【図10】図9に基づく動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
図1、図2は、この発明の電気自動車用暖房装置に関する一実施形態について説明するための、図1はシステム構成図、図2は図1の要部について説明するための構成図である。
【0011】
図1において、11は車載用のバッテリーであり、このバッテリー11は、スイッチSWを介して制御部12に供給する。制御部12には、車内温度センサ13と車外温度センサ14から必要な温度情報が供給される。また、制御部12からは、異なるフィラメントからなる第1の管型ヒータL1と第2の管型ヒータL2で構成されるヒータユニット15を駆動させるための制御信号が出力される。この制御信号に基づいて第1および第2の管型ヒータL1,L2は、両方あるいは第2の管型ヒータL2が駆動される状態となる。
【0012】
ここで、第1の管型ヒータL1と第2の管型ヒータL2のそれぞれについて、図2とともにさらに詳しく説明する。
【0013】
第1の管型ヒータL1は、管型白熱電球の一種であるハロゲンランプである。第1の管型ヒータL1は、例えば放射透過性を有する石英ガラス製等のバルブ101を有する。バルブ101の内部には、耐火性金属の電気抵抗線の一例であるタングステン製のフィラメント102が熱源として同心状に収容される。このフィラメント102は、バルブ101内で軸方向に複数配設されたモリブデン製のアンカー103により、バルブ101に対する同心状態が保持される。
【0014】
また、バルブ101内には、微量のハロゲン物質たとえば臭素Brや塩素Clとの混合物とともに、アルゴンArや窒素N等の不活性ガスが、常温25℃で約0.9×10Paの圧力で封入してある。バルブ101の軸方向の両端は、封止部104,105が形成される。封止部104,105内にはバルブ101と膨張係数が近似した導電性の例えばMo(モリブデン)で形成された矩形箔状の金属箔106,107をそれぞれ埋設している。
【0015】
金属箔106の一端には、一端がフィラメント102に接続されたインナーリード108の他端が、金属箔107の一端には、一端がフィラメント102に接続されたインナーリード109の他端がそれぞれ接続される。金属箔106の他端は、電力を供給するための図示しないアウターリードを介して接続リード151に、金属箔107の他端は、電力を供給するための図示しないアウターリードを介して接続リード152にそれぞれ接続される。
【0016】
第2の管型ヒータL2は、管型白熱電球の一種である電熱線ランプである。第2の管型ヒータL2は、例えば放射透過性を有する石英ガラス製等のバルブ201を有する。バルブ201の内部には、耐火性金属の電熱線の一例であるニクロム製のフィラメント202が熱源として同心状に収容される。このフィラメント202は、バルブ201内で軸方向に複数配設されたモリブデン製のアンカー203により、バルブ201に対する同心状態が保持される。
【0017】
バルブ201の軸方向の両端は、封止部204,205が形成される。封止部204,205内にはバルブ201と膨張係数が近似した導電性の例えばMo(モリブデン)で形成された矩形箔状の金属箔206,207をそれぞれ埋設している。
【0018】
金属箔206の一端には、一端がフィラメント202に接続されたインナーリード208の他端が、金属箔207の一端には、一端がフィラメント202に接続されたインナーリード209の他端がそれぞれ接続される。金属箔206の他端は、電力を供給するための図示しないアウターリードを介して接続リード153に、金属箔207の他端は、電力を供給するための図示しないアウターリードを介して第1の管型ヒータL1と共通の接続リード152にそれぞれ接続される。
【0019】
154,155は、第1および第1の管型ヒータL1,L2を並列して配設させるとともに、支持部に支持させるためのステアタイトなどのセラミックスからなる直方体形状の絶縁性のベース部材である。リード線151と第1の管型ヒータL1の一端それにリード線153と第1の管型ヒータL2の一端はベース部材154内で電気的に接続される。また、リード線152と第1および第2の管型ヒータL1,L2の他端は、ベース部材155内で電気的に接続される。
【0020】
図3〜図5は、図1、図2の動作について説明するための、図3はフローチャート、図4は第1および第2の管型ヒータの制御信号について説明するための説明図、図5は第1および第2の管型ヒータの温度変化について説明するための説明図である。
【0021】
まず、制御部12は、スイッチSWがオンかオフかを判断し(S1)、オンであれば、制御部12は、図4(a)〜(c)の波形がL1/L2のオンの時点で全て1レベルとなる。これにより、第1および第2の管型ヒータL1,L2はオンし、図5に示すように、第1および第2の管型ヒータL1,L2が駆動する(S2)。
【0022】
第1の管型ヒータL1は、バルブ101内に封入された封入物の作用により、2.0秒程度という短時間に所望の温度、例えば60度に達する。これに対し、第2の管型ヒータL2は、ニクロム線の特性から60秒程度の時間がかかることとなる。
【0023】
制御部12は、第2の管型ヒータL2が第1の管型ヒータL1と同様の温度となったかを判断する(S3)。第2の管型ヒータL2が第1の管型ヒータL1と同様の温度となる60秒経過後の制御部12は、第1の管型ヒータL1をオフし(S4)、第2の管型ヒータL2の駆動だけとする。
【0024】
ところで、第1の管型ヒータL1は、ハロゲンランプであり、このランプのランプ強度は、波長が1000nm付近では高いものの、水(=人体)の吸収しやすい波長2600nm付近の赤外線域では第2の管型ヒータL2の方が高くなる。つまり、水が吸収しやすい第2の管型ヒータL2は、第1の管型ヒータL1に比してランプ強度が20%程度高いことになる。これは、暖房効果が高いことを意味している。
【0025】
従って、立ち上がり時は、温度上昇の早い第1の管型ヒータL1で第2の管型ヒータL2を加熱させることで第2の管型ヒータL2の立ち上がりを早め、立ち上がり後は、第2の管型ヒータL2を使用することにより、暖房効果を高めることができる。
【0026】
なお、制御部12のランプユニット15の制御は、図4に示す制御信号に基づくものである。しかし、第2の管型ヒータL2では、立ち上がり後に車内温度センサ13や外気温度センサ14からの温度情報に基づいて第2の管型ヒータL2を所望の温度にするためのオン・オフ制御が行われる。
【0027】
この実施形態では、通電開始の立ち上がり時は、立ち上がりの補助ヒータとして、立ち上がりの早いタングステンフィラメントの第1の管型ヒータを通電させ、立ち上がり後はニクロムフィラメントの第2の管型ヒータを通電させて立ち上がりを向上させることができる。また、2600nmにおける赤外線のランプ強度の第2の管型ヒータを使用することにより暖房効率の上昇させることができる。
【0028】
図7、図8は、この発明の電気自動車用暖房装置に関する他の実施形態について説明するための、図7はフローチャート、図8は動作説明図である。図7、図8について図1、図2を参照しながら説明する。なお、以下各実施形態においても、上記した実施形態と同一の説明においては同一の符号を付して説明する。
【0029】
この実施形態は、図7のステップS2において、第1の管型ヒータL1の電力を大きくしたものである。
【0030】
この場合、図8に示すように立ち上がり時に第1の管型ヒータL1の電力を第2の管型ヒータL2よりも大きくしたことで、所望の温度になる時間も早めることができるばかりか、加熱温度も上昇することから、第2の管型ヒータL2が所望の温度に達する時間の短縮化も図ることができる。
【0031】
図9、図10は、この発明の電気自動車用暖房装置に関するもう一つ他の実施形態について説明するための、図9はフローチャート、図10は動作説明図である。図9、図10について図1、図2とともに説明する。
【0032】
この実施形態は、第2の管型ヒータL2がオフされて時間が経たずに、このヒータが加熱された状態の場合におけるランプユニット15を効率的に制御するものである。
【0033】
すなわち、制御部12は、図1では図示していないランプ温度センサから温度情報に基づき、所定の温度以上かを判断し(S2)、例えば30℃以上であった場合は第2の管型ヒータL2をいきなり駆動させる(S3)。これにより、図10に示すように、立ち上がり後の時間が例えば20.0秒程度となる。
【0034】
ステップS2において第2の管型ヒータL2の温度が所定温度以下であった場合は、ステップS4〜S6の、図3におけるステップS2〜S4までの同じルーチンで処理される。
【0035】
この実施形態の場合は、第2の管型ヒータL2がオフされてからあまり時間が経っていない場合において、第1の管型ヒータL1の動作と無駄な電力の消耗を避けることが可能となる。
【0036】
なお、この場合に第1の管型ヒータL1を動作させた場合は、さらに早くなることが考えられるが、バッテリーからの無駄な電力を抑えることに重点をおいた場合は、所定の温度以上に場合に、第1の管型ヒータL1を動作させないことは有効である。
【0037】
この発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、例えば第2の管型ヒータL2のフィラメントはニクロム線としたが、鉄−クロムの合金製でも構わない。また、第1および第2の管型ヒータL1,L2を支持させるためのベース板154,155は、ただ単に金属端子であっても構わない。
【符号の説明】
【0038】
11 バッテリー
12 制御部
13 車内温度センサ
14 車外温度センサ
15 ヒータユニット
SW スイッチ
L1 第1の管型ヒータ
L2 第2の管型ヒータ
102 フィラメント(タングステン)
202 フィラメント(ニクロム)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリーを走行用モータの電源とするとともに暖房器の電源とした電気自動車用暖房装置において、
前記暖房器は、立ち上がり時は温度の立ち上がり速度の速い第1の管形ヒータを、立ち上がり後は発熱効率の高い第2の管形ヒータを用いたことを特徴とする電気自動車用暖房装置。
【請求項2】
前記第1の管形ヒータは、フィラメントがタングステンであり、前記第2の管形ヒータは、フィラメントが電熱線であることを特徴とする請求項1記載の電気自動車用暖房装置。
【請求項3】
前記電熱線のフィラメントは、ニクロムまたは鉄−クロムであることを特徴とする請求項2記載の電気自動車用暖房装置。
【請求項4】
前記第1の管型ヒータに供給する電力を、第2の管型ヒータに供給する電力よりも大きくしたことを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の電気自動車用暖房装置。
【請求項5】
前記第2の管型ヒータが所定の温度以上であった場合は、前記第1の管型ヒータを駆動しないことを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の電気自動車用暖房装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−111027(P2011−111027A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−268725(P2009−268725)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】