説明

電気自動車

【課題】ボディアースを採用する構成と比べて、信号線路へのノイズの混入を抑制することができる電気自動車を提供する。
【解決手段】電気自動車1は、車輪を駆動するモータ3f、3rと、モータ3f、3rに駆動電流を供給するインバータ8f、8rと、モータ3f、3rを覆う金属材料から形成されたモータ筐体30f、30rと、インバータ8f、8rを覆う金属材料から形成されたインバータ筐体80f、80rと、モータ筐体30f、30r及びインバータ筐体80f、80rが絶縁体20を介して取り付けられる車体フレーム25と、モータ筐体30f、30r及びインバータ筐体80f、80rに抵抗21a〜21fを介して接続され、車体フレーム25とは絶縁されるように大地23に接地される接地部材22a〜22fとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インバータから発生する電磁波ノイズを抑制するようにした電気自動車が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この電気自動車は、金属製車体上に絶縁マウントを介して配置された電動機と、同じく金属製車体上に配置されたインバータとを備え、電動機とインバータとを接続する接続線にインバータから接続線を通って流れる高周波電流を抑制する高周波リアクトルを取り付け、電動機筐体から接地線を介して電気機器の負極側が接続されたボディアースに接続し、電動機から接地線を通って流れる高周波電流を抑制する高周波リアクトルを接地線に取り付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−268723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の電気自動車によれば、高周波リアクトルで抑制し切れなかった高周波電流が車体フレームを流れて拡散し、他の信号伝送路にノイズとして混入するおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、ボディアースを採用する構成と比べて、信号線路へのノイズの混入を抑制することができる電気自動車を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、上記課題を解決するため、車輪を駆動する電気モータと、前記電気モータに駆動電流を供給するインバータと、前記電気モータを覆う金属材料から形成されたモータ筐体と、前記インバータを覆う金属材料から形成されたインバータ筐体と、前記モータ筐体及び前記インバータ筐体が絶縁体を介して取り付けられる車体フレームと、前記モータ筐体及び前記インバータ筐体に抵抗を介して接続され、前記車体フレームとは絶縁されるように大地に接地されるアース線とを備えた電気自動車。を提供する。
【0008】
上記構成によれば、各筐体から発生する電磁波ノイズは、車体フレームにあまり伝播されずに、アース線を介して大地へ流れる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ボディアースを採用する構成と比べて、信号線路へのノイズの混入を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態に係る電気自動車の概略の構成を示す側面図である。
【図2】図2は、本発明の第1の実施の形態に係る電気自動車の概略の構成を示す図である。
【図3】図3は、本発明の第2の実施の形態に係る電気自動車の概略の構成を示す図である。
【図4】図4は、本発明の第3の実施の形態に係る電気自動車の概略の構成を示す図である。
【図5】図5は、本発明の第4の実施の形態に係る電気自動車の概略の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、各図中、実質的に同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付してその重複した説明を省略する。
【0012】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る電気自動車の概略の構成を示す側面図である。なお、同図及び以下の図では、構成要素の位置が前輪側か後輪側か、前輪側の右側か左側か、後輪側の右側か左側かを示す付加記号f、r、fr、fl、rr、rlを構成要素に付している。また、構成要素の位置を特に区別する必要がない場合には、上記付加記号や位置を示す「前輪用」、「後輪用」の語を省略することもある。
【0013】
この電気自動車1は、車体フレーム25の上に前輪2fr、2fl及び後輪2rr、2rlを駆動する車輪駆動系を実装している。車輪駆動系としては、第1の電気モータとしての前輪用モータ3f、第2の電気モータとしての後輪用モータ3r、電力変換器としての前輪用インバータ8f及び後輪用インバータ8r、DC/DCコンバータ9、コントローラ10、高電圧バッテリ60r、60l等の構成部品が含まれる。
【0014】
図2は、本発明の第1の実施の形態に係る電気自動車の概略の構成を示すブロック図である。この電気自動車1は、前輪2fr、2flを第1の差動装置としての前輪用差動装置4f及び車軸5fr、5flを介して駆動する上記前輪用モータ3fと、後輪2rr、2rlを第2の差動装置としての後輪用差動装置4r及び車軸5rr、5rlを介して駆動する上記後輪用モータ3rと、電気自動車1の駆動エネルギー源としての主電源部6と、電気自動車1の電子機器用の低電圧バッテリ7と、主電源部6からの電力を交流電力に変換してモータ3f、3rに供給する上記前輪用インバータ8f及び後輪用インバータ8rと、目標トルクに応じた信号をインバータ8f、8rに出力するとともに、前輪用モータ3f及び後輪用モータ3rの制駆動力を独立に制御する上記コントローラ10とを備えた、前後輪独立駆動型の電気自動車である。
【0015】
なお、本明細書において、「制駆動力」は、自動車を減速させる制動力と、自動車を加速させる駆動力の両方を意味する場合や一方のみを意味する場合がある。
【0016】
主電源部6は、互いに並列に接続された一対の上記高電圧バッテリ60r、60lと、高電圧バッテリ60r、60lのそれぞれの出力側に並列に接続された一対の平滑コンデンサ61r、61lとを備える。
【0017】
高電圧バッテリ60r、60lは、前輪用モータ3f及び後輪用モータ3rを駆動するための電力(例えば400V)を出力することができるものであり、例えばリチウムイオン電池を用いることができる。なお、電気自動車1の駆動エネルギー源として、バッテリの他に、乾電池等の一次電池、燃料電池等を用いてもよい。
【0018】
前輪用モータ3f及び後輪用モータ3rは、例えば同期モータ(Synchronous Motor)、誘導モータ(Induction Motor)等の各種のモータを用いることができる。なお、電気自動車は、1つのモータで前輪及び後輪を駆動するものでもよく、車輪の動力源として電気モータとエンジンの両方を有するハイブリッドカーでもよく、各車輪に電気モータ(ホイールインモータ)を備えた自動車でもよい。
【0019】
インバータ8は、高電圧バッテリ60からの電力を交流電力に変換し、コントローラ10からの信号に応じた電流をモータ3に出力してモータ3を駆動する。また、インバータ8は、モータ3により発電された交流電力を直流電力に変換してコンデンサ61を介して高電圧バッテリ60を充電する。インバータ8は、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)等のスイッチング素子、ダイオードを有して構成されている。
【0020】
低電圧バッテリ7は、主電源部6の直流の高電圧を上記DC/DCコンバータ9により変換して直流の低電圧(例えば12V)に変換して出力するものである。低電圧バッテリ7として、例えば電気二重層キャパシタ(EDLC:Electric Double Layer Capacitor)を用いることができる。DC/DCコンバータ9は、MOSFET等のスイッチング素子、ダイオードを有して構成されている。
【0021】
差動装置4f、4rは、例えば車軸5fr、5fl、5rr、5rlに連結された一対のサイドギヤ、これら一対のサイドギヤに噛み合う複数のピニオンギヤ、及び複数のピニオンギヤを自転可能に支持するデフケースを備えた所謂オープンデフを用いることができる。前輪用モータ3fの制駆動力は、前輪用差動装置4fにより右前輪2fr及び左前輪2flに配分される。また、後輪用モータ3rの制駆動力は、後輪用差動装置4rにより右後輪2rr及び左後輪2rlに配分される。
【0022】
モータ3f、3r、インバータ8f、8r、DC/DCコンバータ9、コントローラ10等のEMI(Electro-Magnetic Interference)ノイズ(電磁波ノイズ)の発生源は、車体フレーム25に伝播しない構造にしている。
【0023】
すなわち、モータ3f、3rのモータ筐体30f、30rは、絶縁体20を介して車体フレーム25に取り付けられている。モータ筐体30f、30rは、アルミニウム、銅、ステンレススチール等の金属材料から形成され、抵抗21a、21b及び接地部材22a、22bを介して大地23に接地されている。
【0024】
インバータ8f、8rのインバータ筐体80r、80lは、絶縁体20を介して車体フレーム25に取り付けられている。インバータ筐体80f、80rは、アルミニウム、銅、ステンレススチール等の金属材料から形成され、下面に放熱用のヒートシンク81f、81rが取り付けられている。ヒートシンク81f、81rは、アルミニウム等の金属材料から形成され、抵抗によるダンピングインピーダンス21c、21d及び接地部材22c、22dを介して大地23に接地されている。
【0025】
DC/DCコンバータ9のコンバータ筐体90は、絶縁体20を介して車体フレーム25に取り付けられている。コンバータ筐体90は、アルミニウム、銅、ステンレススチール等の金属材料から形成され、抵抗によるダンピングインピーダンス21e及び接地部材22eを介して大地23に接地されている。
【0026】
コントローラ10のコントローラ筐体100は、絶縁体20を介して車体フレーム25に取り付けられている。筐体100は、アルミニウム、銅、ステンレススチール等の金属材料から形成され、抵抗によるダンピングインピーダンス21f及び接地部材22fを介して大地23に接地されている。
【0027】
ダンピングインピーダンス21a〜21fとして抵抗を用いることで、安価にノイズを吸収することができる。なお、ダンピングインピーダンスとして、リアクトルを接地部材22a〜22fに取り付けてもよい。ダンピングインピーダンス21a〜21fの抵抗値は、インバータ8f、8r、DC/DCコンバータ9等のスイッチングのタイミングで発生する直列共振現象を抑制するように決定される。具体的には、抵抗は、直列共振現象によって発生した振動波形を臨界制動(減衰ファクターρ=1)になるように決定される。
【0028】
接地部材22a〜22fは、車体フレーム25とは絶縁されるように大地に接地される。接地部材22a〜22fは、例えば導電性ゴムベルト、導電性ブラシ等を用いることができる。
【0029】
(第1の実施の形態の効果)
本実施の形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)モータ3f、3r、インバータ8f、8r、DC/DCコンバータ9、コントローラ10等のEMIノイズ(電磁波ノイズ)の発生源は、車体フレーム25に伝播しない構造にしているので、ボディアースを採用する構成と比べて、電磁波がノイズとして車体フレーム25全体に広がるのを抑制することができ、信号線路へのノイズの混入を抑制することができる。
(2)接地部材22a〜22fに抵抗を挿入することにより、車輪駆動系を構成する各機器からスイッチング(急峻な電圧の変化:dv/dt)によって、浮遊容量を介して流れるコモンモード電流(漏れ電流)が抑制される。
(3)車体フレーム25の電位を均一化でき、この状態で車体フレーム25を大地23に接地することで感電も防止することができる。
【0030】
[第2の実施の形態]
図3は、本発明の第2の実施の形態に係る電気自動車の概略の構成を示すブロック図である。第1の実施の形態は、筐体毎に個別の接地部材を用いたが、第2の実施の形態は、共通の接地部材を用いたものである。
【0031】
本実施の形態では、モータ3f、3rのモータ筐体30f、30rは、抵抗によるダンピングインピーダンス21a、21b及び接地部材22a、22bを介して第1の共通接地部材24Aに接続されている。
【0032】
インバータ8f、8rのヒートシンク81f、81rは、抵抗によるダンピングインピーダンス21c、21d及び接地部材22c、22dを介して第1の共通接地部材24Aに接続されている。
【0033】
DC/DCコンバータ9のコンバータ筐体90は、抵抗によるダンピングインピーダンス21e及び接地部材22eを介して第1の共通接地部材24Aに接続されている。
【0034】
コントローラ10のコントローラ筐体100は、抵抗によるダンピングインピーダンス21f及び接地部材22fを介して第1の共通接地部材24Aに接続されている。
【0035】
第1の共通接地部材24Aは、車体フレーム25とは絶縁されるように第2の共通接地部材24Bに接続されている。第2の共通接地部材24Bは、車体フレーム25とは絶縁されるように大地23に接地される。第2の共通接地部材24Bは、例えば導電性ゴムベルト、導電性ブラシ等を用いることができる。
【0036】
(第2の実施の形態の効果)
本実施の形態によれば、接地部材の大地への接地が容易になる。
【0037】
[第3の実施の形態]
図4は、本発明の第3の実施の形態に係る電気自動車の概略の構成を示す図である。第1の実施の形態では、接地部材22a〜22fを大地23に接地したが、本実施の形態は、各接地部材22a〜22fを車体フレーム25に接続し、車体フレーム25の一部又は複数の箇所から1つ又は複数の接地部材26を導出し、接地部材26の端部を大地23に接地したものである。この構成によれば、接地部材の大地への接地が容易になる。
【0038】
[第4の実施の形態]
図5は、本発明の第4の実施の形態に係る電気自動車の概略の構成を示す図である。第4の実施の形態は、車体フレーム25から導出した接地部材26を大地23に接地したが、本実施の形態は、車体フレーム25から接地部材27fr、27fl、27rr、27rlを導出して導電性を有するタイヤを用いた車輪2に接触させ、車輪2のタイヤを介して大地23に接地したものである。車輪2のタイヤは、例えば導電性ゴムから形成することができる。
【0039】
接地部材27fr、27fl、27rr、27rlは、導電性ゴム、導電性ブラシ等を用いることができる。
【0040】
本発明は、上記実施の形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々に変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0041】
1…電気自動車、2…車輪、2fr、2fl…前輪、2rr、2rl…後輪、3f…前輪用モータ、3r…後輪用モータ、4f、4r…差動装置、5fr、5fl、5rr、5rl…車軸、6…主電源部、7…低電圧バッテリ、8f…前輪用インバータ、8r…後輪用インバータ、9…DC/DCコンバータ、10…コントローラ、20…絶縁体、21a〜21f…ダンピングインピーダンス、22a〜22f…接地部材、23…大地、24A…第1の共通接地部材、24B…第2の共通接地部材、25…車体フレーム、30f、30r…モータ筐体、80r、80l…インバータ筐体、81f、81r…ヒートシンク、90…コンバータ筐体、100…コントローラ筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力変換器のスイッチング動作に基づいて電磁波ノイズを発生するノイズ発生源と、
前記ノイズ発生源を覆う金属材料から形成された筐体と、
前記筐体が絶縁体を介して取り付けられる車体フレームと、
前記筐体にダンピングインピーダンスを介して電気的に接続され、大地に接地される接地部材とを備えた電気自動車。
【請求項2】
前記接地部材は、前記筐体に前記ダンピングインピーダンスを介して前記車体フレームに電気的に接続された第1の接地部材と、前記車体フレームから導出されて前記大地に接地される第2の接地部材とを備えた請求項1に記載の電気自動車。
【請求項3】
前記接地部材は、前記車体フレームとは絶縁されて前記大地に接地される請求項1に記載の電気自動車。
【請求項4】
前記ノイズ発生源は、車輪を駆動する電気モータと、前記電気モータに駆動電流を供給する電極変換器とを含み、
前記電気モータ及び前記電力変換器は、別個の前記筐体で覆われた請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電気自動車。
【請求項5】
前記接地部材は、前記筐体毎に独立して設けられた請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電気自動車。
【請求項6】
前記接地部材は、前記筐体に対して共通に設けられた請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電気自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−143031(P2012−143031A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292189(P2010−292189)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(510073383)
【出願人】(000154347)株式会社ユニバンス (132)
【Fターム(参考)】