説明

電気部品の電源ピンへのコンデンサ内蔵型給電装置

【課題】電気部品の低駆動電圧化に伴う電源系のノイズマージンの低下、同時スイッチング波形に伴う電源―グランド間のノイズの問題を解決する。
【解決手段】電気部品(10)へのコンデンサ内蔵型給電装置であって、電力を供給する電源(44,47)と、信号線パターンを内装するプリント板(50)と、電気部品の電極への形状及び位置に対応する形状及び位置に設けられた導電性突起を有しプリント板の外側に設けられた電源バー(48)と、プリント板の外側に設けられたグランドバー(49)と、電源バーとグランドバーの間で電気部品に対応する部分に設けられた高誘電体層(55)とを備え、電源からの電力を電源バー及びグランドバーを介して電気部品の電極に供給するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気部品の電源ピンへの給電装置に関し、より詳細にはBGA(Ball Gate Array)等の電気部品の各種電源ピンへの給電を、OBP(On Board Power)等の電源からプリント板に内装されたパターンを経由しないでプリント板の外側に電源バー及びグランドバーを配置してその間に高誘電材層を挟み、その電源バー及びグランドバーを経由して行うようにしたコンデンサ内臓型給電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、BGA等に代表される電気部品の低駆動電圧化に伴う電源系のノイズマージンの低下、同時スイッチング波形に伴う電源―グランド間のノイズの問題が大きくなってきている。
【0003】
図1の(a)は従来の給電装置により給電されるBGAを下から見た平面図である。同図において、10はBGAであり、その裏側には電源ピン1〜6が行方向と列方向の所定位置にソルダーボールで配列されている。電源ピン1は例えば3.3Vの電源電圧V1が印加される電極である。電源ピン2は例えば3.3Vの基準電圧V2が印加される電極である。電源ピン3は例えば3.3Vの補助電源電圧V3が印加される電極である。電源ピン4は例えば5Vの電源電圧V4が印加される電極である。電源ピン5は例えば5Vの基準電圧V5が印加される電極である。電源ピン6は例えば5Vの補助電源電圧V6が印加される電極である。
【0004】
図1の(b)は従来の給電装置の一例を示す断面図である。同図において、12はBGA10の下に配置されたプリント板、13はプリント板12上に配置されて3.3Vの電圧を発生するOBP(On Board Power)と称せられる電源、14はプリント板12上に配置されて5Vの電圧を発生するOBP、15はプリント板12に内装された3.3Vの電源層を構成する胴箔の電源層、16はプリント板12に内装された5Vの電源層を構成する胴箔の電源層、17はOBP13の出力電圧3.3Vを電源層15に印加するためにプリント板12内を貫通しているビア、18はOBP14の出力電圧5Vを電源層16に印加するためにプリント板12内を貫通しているビア、19〜24は電源ピン1〜6に対応してプリント板12内を貫通しているビアである。BGA10の下部は図1の一点鎖線に沿った断面を示している。3.3Vの電源バー15はビア19〜21を介して電源ピン1〜3に接続されており、5Vの電源バー16はビア22〜24を介して電源ピン4〜6に接続されている。
【0005】
基準電圧V2をOBP13内で作成することに替えて、5Vの電圧を発生する他のOBP14から出力される電圧を分圧回路(プリント板12上に形成されるが図示は省略)で分圧して3.3Vの基準電圧V2を作成する場合もある。
【0006】
BGA10には実際には複数種類の電源電圧と信号とが供給される。このため、プリント板12には図示しない複数の電源層と信号パターンが内装されている。
【0007】
図2はBGAに内臓されている回路の一例である。同図において、22はドライバ、24はレシーバである。
BGA内部にはドライバ回路、レシーバ回路が有るがドライバとレシーバの接続はそれぞれ違うBGA間を接続するものであり、単一のBGA内部でドライバとレシーバが接続されているものでは無い。図2で考えると22と24は違うBGAのドライバ回路とレシーバ回路をプリント板上のパターンで接続した場合を表す。ドライバ24には3.3Vの電源電圧V1と補助電源電圧V3が印加され、レシーバ24には3.3Vの電源電圧V2が印加される。これらの電源電圧はOBP13により出力され電源バー15を経由してそれぞれの電源ピン1〜3に印加される。
【0008】
図3はBGAに内臓されている回路の他の一例である。同図において、32はドライバ、34はレシーバであり、ドライバ34には5Vの電源電圧V4と補助電源電圧V6が印加され、レシーバ34には5Vの電源電圧V5が印加される。これらの電源電圧はOBP14により出力され電源バー15を経由してそれぞれの電源ピン1〜3に印加される。
【0009】
図2に示した基準電圧V2は例えば図3に示した回路のドライバ32の出力電圧がハイレベルかローレベルかを判定する基準として使用される。例えば、ドライバ32の出力電圧が3.3Vより高いときはハイレベル、3.3V以下のときはローレベルと判定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平2−003957号公報
【特許文献2】特公平7−120227号公報
【特許文献3】特開平6−223632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
BGAのように複数の電圧電源を必要とする部品の場合、図1に示す様にV1,V2,V3が同じ電圧であるものの用途が異なることが実際よく起こる。この例では図2のドライバ−レシーバの電源電圧V1が図3のレシーバの基準電圧V2と同じ電圧であるような場合である。そして物理的には例えば1mmピッチのBGAを使用した場合、ピン同士の間隔は1mmと狭い領域にあるためお互いに影響を受けやすい構造となっている。
【0012】
図2の回路においてドライバ22に電流Iが流れるとその電流に応じたノイズがVn=LdI/dtで電源層15に発生し、その結果電源層15の電圧が変動して基準電圧V2が変動する。すると、図3に示した回路のドライバ32の出力電圧がハイレベルかローレベルかを判定する基準電圧が変動することになる。例えば、基準電圧V2が3.5Vに変動し、ドライバ32に出力電圧が3.4Vであった場合、本来であればドライバ32の出力はハイレベルであるのに、この基準電圧の変動のためにローレベルと誤判定されてしまい、また、部品によっては部品内部にアナログ系の電源(PLL:Phase-locked loop)を必要とするピンも有り、一般的にアナログ系の電源はノイズに敏感であるためデジタル系の電源とは例え同じ電圧であっても物理的に分ける必要が有る。これも電圧は同じだが用途が異なるため分離した方が良い例の一つである。
【0013】
また、プリント板内には多数の電源層や信号層が存在しプリント板内の導電層の実装数が多くて寸法が大きくなるという課題、あるいはプリント板の厚さを薄くしようとすると導電層の実装密度が大きくなって製造が困難であるという課題があった。例えば、BGA10が1152ピンのFPGA(Field Programmable Gate Array)の場合、3.3VのVccauxピン(8ピン)が存在するが、このVccauxピンは仕様上他の全ての電源(Vcc,Vref)より先に起動しなければならない。このため、従来はVccaux用の電源層とVcco及びVref用の電源層との2層が必要であった。
【0014】
本発明の目的は、BGA等に代表される電気部品の低駆動電圧化に伴う電源系のノイズマージンの低下、同時スイッチング波形に伴う電源―グランド間のノイズの問題を解決することにある。
【0015】
本発明の他の目的は、給電装置内のプリント板に含まれる導電層の実装密度を小さくするかプリント板の厚さを薄くして小型化を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の態様により提供されるものは、電気部品への給電装置であって、電気部品の電極の形状及び位置に対応した形状及び位置に設けられた導電性突起を有しプリント板の外側に設けられた電源バーと、プリント板の外側に設けられたグランドバーと、電源バーとグランドバーの間で電気部品に対応する部分に設けられた高誘電体層とを備え、電源からの電力を電源バー及びグランドバーを介して電気部品の電極に供給するようにしたことを特徴とするコンデンサ内蔵型給電装置である。
【0017】
本発明の第2の態様によれば、電気部品は接地用のグランドピンと電源ピンとを備え、電源バーはグランドピンに対応する位置に設けられた穴と、電源ピンに対応する位置に設けられた第1の導電性突起とを備え、グランドバーは穴に嵌合する第2の導電性突起を備え、第1の導電性突起はプリント板内のビアを介して電気部品の電源ピンに接続され、第2の導電性突起はプリント内の他のビアを介して電気部品のグランドピンに接続されるようにしたことを特徴とするコンデンサ内蔵型給電装置が提供される。
【0018】
本発明の第3の態様によれば、電気部品は接地用のグランドピンと電源ピンとを備え、グランドバーはグランドピンに対応する位置に設けられた第1の導電性突起と、電源ピンに対応する位置に設けられた穴とを備え、電源バーは穴に嵌合する第2の導電性突起を備え、第1の導電性突起はプリント板内のビアを介して電気部品のグランドピンに接続され、第2の導電性突起はプリント内の他のビアを介して電気部品の電源ピンに接続されるようにしたことを特徴とするコンデンサ内蔵型給電装置が提供される。
【0019】
本発明の第4の態様によれば、電源バーとグランドバーはプリント板と電気部品との間に設けられており、電源バー及びグランドバーはプリント板のビアを介さずに直接電気部品に接続するようにしたことを特徴とするコンデンサ内蔵型給電装置が提供される。
【0020】
本発明の第5の態様によれば、電源バーは複数の電源バーからなり、グランドバーは複数の電源バーの各々との間に高誘電体層を挟んで設けられている給電装置が提供される。
【発明の効果】
【0021】
本発明の第1の態様によれば、プリント板の外側に電源バーとグランドバーとを設け、電源バーとグランドバーの間に高誘電体を設けたので、プリント板の実装密度を向上させるか、プリント板の製造の簡単化が実現できるとともに、電源バーと高誘電体層とグランドバーとでコンデンサが形成されるので、コンデンサ内蔵型給電装置が実現できる。
【0022】
本発明の第2の態様によれば、プリント板の下側に電源バー、高誘電層、グランドバーがこの順に設けられるので、コンデンサ内臓型給電装置において、電源バー及びグランドバーはプリント板内の電源層の電圧変動の影響を受けることがなく、従って電気部品内の信号の伝送品質を向上させることが出来る。
【0023】
本発明の第3の態様によれば、プリント板の下側にグランドバー、高誘電層、電源ドバーがこの順に設けられるので、コンデンサ内臓型給電装置において、電源バー及びグランドバーはプリント板内の電源層の電圧変動の影響を受けることがなく、従って電気部品内の信号の伝送品質を向上させることが出来る。
【0024】
本発明の第4の態様によれば、電源バー及びグランドバーはプリント板のビアを介さずに電気部品に直接接続されるので、ビアを介して接続する場合と比較して高周波ノイズによる影響を低減できる。
【0025】
本発明の第5の態様によれば、電源が複数存在する場合にもそれら複数の電源に対応する電源バーとグランドバーとの間に高誘電層を設けたので、プリント板の実装密度を更に向上させるか、プリント板の製造の更なる簡単化が実現できるとともに複数の電源に対応するコンデンサ内蔵型給電装置が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】(a)は従来の給電装置により給電されるBGAを下から見た平面図で、(b)は従来の給電装置の一例を示す断面図である。
【図2】BGAに内臓されている回路の一例である。
【図3】BGAに内臓されている回路の他の一例である。
【図4】本発明の実施例1によるコンデンサ内蔵型給電装置の基本構成を説明する図である。
【図5】本発明の実施例3によるコンデンサ内蔵型給電装置の断面図である。
【図6】本発明の実施例4によるコンデンサ内蔵型給電装置の断面図である。
【図7】本発明の実施例5によるコンデンサ内蔵型給電装置の断面図である。
【図8】図7の一部を拡大して示した図である。
【図9】従来のCOH構成の給電装置と、図4に示した本発明の実施例1によるコンデンサ内蔵型給電装置と、図5に示したコンデンサ内蔵型で高周波対策を施した給電装置との周波数特性を示すグラフである。
【図10】本発明の実施例6によるコンデンサ内蔵型給電装置の平面図であり、(a)はBGA10の平面図、(b)は電源A側の電源バーの平面図、(c)はグランド側電源バーの平面図、(d)は電源B側の電源バーの平面図である。
【図11】(a)は図10に示した多電源対応電源バーの平面図、(b)は多電源対応電源バーの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に本発明を実施するための最良の形態を図面により詳細に説明する。
【実施例1】
【0028】
図4の(a)〜(d)は本発明の実施例1によるコンデンサ内蔵型給電装置の基本構成を説明する図である。
図4の(a)はBGA10を裏から見た図1の(a)に示した従来図と同じである。同図において、黒丸で示した円41は接地用のグランドピン、半分を黒で塗りつぶした円42は電源ピン42、43で示す円は信号ピンを表す。これらのピンはソルダーボールでBGA10の裏面に構成されている。BGA10の図示右側の44又は47はOBPであり、点線で示した45及び46はプリント板50(図4の(d)参照)裏面に形成されて電源バー48又はグランドバー49と電気的に接触するための導電性パターンである。
【0029】
図4の(b)は電源バー48の平面図である。図示のように、電源バー48はBGA10とほぼ同じ形状の本体部分481とバー部分482で構成されている。バー部分482の幅は本体部分481の幅と比較して細く表しているが、必ずしも細くする必要はなく電圧ドロップを低く抑える、コンデンサの容量を大きくする等の理由がある場合は幅を広くしてもよい。本体部分481にはBGA10のグランドピン41に対応する位置に設けられた穴411と、BGA10の電源ピン42に対応する位置に設けられた円筒状の導電性突起421とを備えている。導電性突起421の形状は円筒状に限定されることはない。穴411の周囲には電源バー48と電気的に絶縁されるように絶縁材料、好ましくは高誘電材が塗布されている。
【0030】
図4の(c)はグランドバー49の平面図である。図示のように、グランドバー49もBGA10とほぼ同じ形状の本体部分491とバー部分492で構成されている。バー部分492の幅は本体部分491の幅と比較して細く表しているが、必ずしも細くする必要はなく電圧ドロップを低く抑える、コンデンサの容量を大きくする等の理由がある場合は幅を広くしてもよい。本体部分491にはBGA10のグランドピン41に対応する位置に設けられた導電性突起412を備えている。導電性突起412の形状は円筒状に限定されることはない。電源バー48の穴411はグランドバー49の導電性突起412よりも若干大きく作られ、電源バー48とグランドバー49を重ねると穴411に導電性突起412がぴったりと嵌合する構成となっている。
【0031】
図4の(d)は本実施例1によるコンデンサ内蔵型給電装置の断面図である。図示のように、プリント板50上の図示右側に配置されたOBP47の出力電源ピン51は、プリント板50上に形成された導電性パターン52とプリント板50を貫通するビア53及び導電性パターン45を介して、電源バー48の導電性突起54に電気的に接続されている。
プリント板50上の図示左の上側にはBGA10が実装されており、BGA10のグランドピン41はプリント板50を貫通するビア413及び電源バー48の穴411に嵌合する導電性突起412を介してグランドバー49に接続されている。穴411の内周は電気的絶縁材料で形成されているか、又は電源バー48との間に空隙を設けて電源バー48から絶縁されている。グランドバー49の本体部分491はバー部分492を経由してプリント板50の下側に形成された導電性突起、ビア、導電性パターンを介してOBP47のグランドピンに接続される(図においては電源バー49の紙面裏側にあるため隠れている)。
【0032】
BGA10の電源ピン42は、プリント板50を貫通する他のビア422及び電源バー48の導電性突起421を介して電源バー48に電気的に接続されている。
【0033】
電源バー48の本体部分481とグランドバー49の本体部分491との間には本発明により高誘電材層55が挟みこまれており、本体部分481、高誘電材層55及び本体部分491でコンデンサ56を形成している。これにより、コンデンサ内蔵型給電装置が構成される。このコンデンサ内蔵型給電装置はCOH(Chip On Hole)構成で0.1μFのコンデンサを125個実装した場合とほぼ同じノイズパーフォーマンスを実現する。コンデンサ内蔵型給電装置とすることにより給電装置内に高周波ノイズ除去用のコンデンサを別途設けなくてもよくなる。
【0034】
BGA10及びOBP44、47は通常のリフロープロセスでプリント板50に実装される。電源バー48及びグランドバー49も同様に実装可能だが、電源バーやグランドバーの厚みが厚い場合や体積が大きい場合は熱容量が大きくなりリフローの熱で温度が上がりにくい場合も考えられる。その場合は電源バー48及びグランドバー49をネジなどでプリント板50に固定することも可能である。プリント板50の図示しない信号層や電源層以外の部分は絶縁体である。
【0035】
図4に示したコンデンサ内蔵型給電装置の基本構成によれば、電源バー及びグランドバーをプリント板50の外側に設けたので、プリント板50内の電源層数を低減することが可能になる。また、高誘電材層55を電源バー48とグランドバー49で挟む構成としたことにより給電装置内に大容量のコンデンサを実現することができ、COH構成のような多数のコンデンサを実装する必要がなくなる。
【実施例2】
【0036】
実施例1ではプリント板50の下に電源バー48を配置し、その下に高誘電材層55を設け、その下にグランドバー49を配置したが、電源バーとグランドバーの位置関係を逆にしてもよい。即ち、プリント板50の下にグランドバー49を配置し、その下に高誘電材層55を設け、その下に電源バー48を配置してもよい。この場合は、グランドバー49のグランドピン41に対応する位置に第1の導電性突起を儲け、電源ピン42に対応する位置に穴を設ける。また、電源バー49にはグランドピン49に設けられた穴に嵌合する第2の導電性突起を設ける。そして、第1の導電性突起はプリント板内のビアを介して電気部品のグランドピンに接続され、第2の導電性突起はプリント内の他のビアを介して電気部品の電源ピンに接続されるようにすればよい。
【実施例3】
【0037】
図5は本発明の実施例3によるコンデンサ内蔵型給電装置の断面図である。本実施例3ではBGA10とプリント板70の間に電源バー71とグランドバー72が設けられている。電源バー71とグランドバー72は高誘電材層73で電気的に分離されている。BGA10には電源ピン2のほかにグランド用の電源ピン74及び信号伝達用の信号ピン75が設けられている。76は信号ピン75をプリント板70内に内装された信号層(図示省略)に接続するための接続ピン、77は信号ピン75を電源バー71及びグランドバー72から電気的に絶縁するための絶縁体である。接続ピン76は円筒形をしており絶縁体77はそれを取り囲むように中空の円筒でできている。BGA10の信号ピン75は、電源バー71、高誘電材層73及びグランドバー72を貫通する接続ピン76を介してビア78に接続されている。電源バー71、グランドバー72及び高誘電材層73には信号ピン76を貫通させるための穴が空いている。ビア78はプリント板70内の信号層(図示省略)に接続されている。接続ピン76は、ビア78とリフローソルダリングにより接続されるか、もしくは電源バー71及びグランドバー72自体をネジ固定(図示せず)でプリント板70に固定することによりプリント板70に内装されている信号層に接続される。
【0038】
この構成により、電源バーとグランドバーの間に高誘電材層が挟みこまれてコンデンサ内蔵型給電装置が実現できるとともに、電源バー及びグランドバーはプリント板のビアを介さずにBGA10に直接接続されるので、高周波ノイズの低減の効果がある。
【0039】
一般にプリント板内のビアは高周波領域においては大きなインダクタンスを有し、プリント板が高々2mm程度の厚さでも大きな問題となる。高周波ノイズ対策として一般にプリント板内の回路にコンデンサを実装するが、本実施例によればBGA10の真下にコンデンサを実装したのと同じ状態になり且つ電源バーをプリント板を介さないで直接BGA10に接続する構成であるので、高周波ノイズ対策として極めて有効である。
【実施例4】
【0040】
図6は本発明の実施例4によるコンデンサ内蔵型給電装置の断面図である。同図において、図5と同一部分には同一の参照番号を付してここでは説明を省略する。
図5と異なるところは、図6においては、電源バー71は電源ピン2に接続されるだけではなくプリント板70を貫通するビア781にも接続されていること、及びグランドバー72がグランド用電源ピン74に接続されるだけではなくプリント板70を貫通するビア782にも接続されていることである。771は電源バー71に接続されるビア781とグランドバー73とを電気的に絶縁する絶縁体である。
図6には示していないがプリント板70内には電源層及びグランド層が内装されており、ビア781はこの電源層と電気的に接続され、ビア782はこのグランド層と電気的に接続される。これにより、電源バー71とプリント70板内の電源層が並列接続され、グランドバー73とプリント板70内のグランド層とが並列接続されるので、電圧ドロップによる影響を低減できる。
【実施例5】
【0041】
図7は本発明の実施例4によるコンデンサ内蔵型給電装置の断面図である。同図において、図5と同一部分には同一の参照番号を付してここでは説明を省略する。
電源バー71は元々電気伝導率の高い銅などの金属で作られるので、電源バー71の一部にプレートタイプの放熱フィン81及びディスクタイプの放熱フィン82の少なくとも一方を設けることにより放熱構造とすることが出来る。さらに、プレートタイプの放熱フィン81の一部にスリット83を設けてディスクタイプの放熱フィン82の一部をスライドさせるようにすればさらに大きな放熱効果が得られる。
【0042】
図8は図7で説明したプレートタイプの放熱フィン81の一部にスリット83を設けてディスクタイプの放熱フィン82の一部をスライドさせる例を拡大して示した図である。
【0043】
図9は従来のCOH構成の給電装置と、図4に示した本発明の実施例1によるコンデンサ内蔵型給電装置と、図5に示したコンデンサ内蔵型で高周波対策を施した給電装置との周波数特性を示すグラフである。同図において、実線の曲線がCOH構成の周波数特性、点線の曲線がコンデンサ内蔵型電源バーの周波数特性、一点鎖線の曲線がコンデンサ内蔵型で高周波対策を施した電源バーの周波数特性である。図示のように、10MHz近辺ではCOH構成の周波数特性に比べて、図4に示したコンデンサ内蔵型電源バーの周波数特性及び図5に示したコンデンサ内蔵型で高周波対策を施した電源バーの周波数特性が1桁程度のノイズを抑えることができる。また、10MHz〜1GHzの高周波においては、図5に示したコンデンサ内蔵型で高周波対策を施した電源バーの周波数特性はCOH構成の周波数特性及びコンデンサ内蔵型電源バーの周波数特性に比べて1桁程度ノイズを抑えることができる。
【実施例6】
【0044】
図10は本発明の実施例5によるコンデンサ内蔵型給電装置の平面図である。同図において、(a)はBGA10の平面図、(b)は電源A側の電源バーの平面図、(c)はグランド側電源バーの平面図、(d)は電源B側の電源バーの平面図である。このように、本実施例では1個のBGAに対して2個の電源A122及びB123が接続されている。
【0045】
図10の(a)に示したBGA10は図1に示したものと同じであり、グランドピン1、電源ピン2及び電源ピン3を備えている。
【0046】
図10の(b)において、124は電源A側122に接続される電源バーであり、その本体部分に電源ピン3に対応した円筒状の導電性突起125と、グランドピン1に対応した穴126と、電源ピン2に対応した穴127を備えている。
【0047】
図10の(c)において、128は電源A側122に接続されるグランドバーであり、その本体部分にグランドピン1に対応した円筒状の導電性突起129と、電源ピン2に対応した穴130を備えている。
図10の(d)において、131は電源B側123に接続される電源バーであり、その本体部分に電源ピン2に対応した円筒状の導電性突起132を備えている。
これらの3つの電源バー124、128及び131を重ね合わせることにより多電源対応電源バーが実現できる。
【0048】
図11の(a)は図10に示した多電源対応電源バーの平面図、図11の(b)は図10の(a)を矢印Aから見た電源対応電源バーの断面図である。
図11の(a)から分かるように、各電源バーのバー部分は横方向にずれるように配置される。
図11の(b)において、132はプリント板であり、133は電源バー124と電源バー128の本体部分の間の高誘電材層であり、134は電源バー128と電源バー131の本体部分の間の高誘電材層である。
図10及び図11に示した例では2個の電源の場合を示しているが、電源の数が3個以上になっても同様にプリント板132の下側の電源バーにそれと重なる電源バーの穴を追加することにより対応できる。
(付記1)
電気部品への給電装置であって、電力を供給する電源と、信号線パターンを内装するプリント板と、前記電気部品の電極の形状及び位置に対応した形状及び位置に設けられた導電性突起を有し前記プリント板の外側に設けられた電源バーと、前記プリント板の外側に設けられたグランドバーと、前記電源バーと前記グランドバーの間で前記電気部品に対応する部分に設けられた高誘電体層とを備え、前記電源からの電力を前記電源バー及び前記グランドバーを介して前記電気部品の電極に供給するようにしたことを特徴とするコンデンサ内蔵型給電装置。
(付記2)
前記電気部品は接地用のグランドピンと電源ピンとを備え、前記電源バーは前記グランドピンに対応する位置に設けられ、周囲が前記電源バーから絶縁されている穴と、前記電源ピンに対応する位置に設けられた第1の導電性突起とを備え、前記グランドバーは前記穴に嵌合する第2の導電性突起を備え、前記第1の導電性突起は前記プリント板内のビアを介して前記電気部品の前記電源ピンに接続され、前記第2の導電性突起は前記プリント内の他のビアを介して前記電気部品の前記グランドピンに接続されるようにしたことを特徴とする、付記1に記載のコンデンサ内蔵型給電装置。
(付記3)
前記電気部品は接地用のグランドピンと電源ピンとを備え、前記グランドバーは前記グランドピンに対応する位置に設けられた第1の導電性突起と、前記電源ピンに対応する位置に設けられ、周囲が前記グランドバーから絶縁されている穴とを備え、前記電源バーは前記穴に嵌合する第2の導電性突起を備え、前記第1の導電性突起は前記プリント板内のビアを介して前記電気部品の前記グランドピンに接続され、前記第2の導電性突起は前記プリント内の他のビアを介して前記電気部品の前記電源ピンに接続されるようにしたことを特徴とする、付記1に記載のコンデンサ内蔵型給電装置。
(付記4)
前記電源バーと前記グランドバーは前記プリント板と前記電気部品との間に設けられており、前記電源バー及び前記グランドバーは前記プリント板のビアを介さずに直接前記電気部品に接続するようにしたことを特徴とする、付記1に記載のコンデンサ内蔵型給電装置。
(付記5)
前記電源バーは複数の電源バーからなり、前記グランドバーは前記複数の電源バーの各々との間に前記高誘電体層を挟んで設けられている、付記1に記載のコンデンサ内蔵型給電装置。
(付記6)
前記電源バーと前記グランドバーは前記プリント板と前記電気部品との間に設けられており、前記電気部品の電源ピンとグランドピンは前記プリント板のビアを介さずに直接前記電源バー及び前記グランドバーに接続をおこない、前記電源バー及びグ前記ランドバーは前記プリント板のビアにも接続することを特徴とする、付記1に記載のコンデンサ内蔵型給電装置。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上の説明から明らかなように、本発明によればプリント板の外側に電源バーとグランドバーを配置し、電源バーとグランドバーの間に高誘電材層を挟みこんだ構造としたことにより、プリント板に内装する電源層の数を減らすことができ、プリント板の実装密度を向上させるか、プリント板の製造の簡単化が実現できると共にコンデンサ内蔵型の給電装置が実現できる。また、電源バーはプリント板内の電源層の電圧変動の影響を受けることがなく、従って電気部品内の信号の伝送品質を向上させることが出来る。さらに、電源バーはプリント板のビアを介さずに電気部品に直接接続させることにより、ビアを介して接続する場合と比較して高周波ノイズによる影響を低減できる。さらに、電源バーはプリント板内の電源層から絶縁されているので、電源バーはプリント板内の電源層の電圧変動の影響を受けることがなく、従って電気部品内の信号の伝送品質を向上させることが出来る。さらに、電源が複数存在する場合にもそれら複数の電源に対応する電源バーをプリント板の外側に設けたので、プリント板の実装密度を更に向上させるか、プリント板の製造の更なる簡単化が実現できる。
【符号の説明】
【0050】
10 BGA
42,43 電源ピン
43 電源ピン2に対応する位置に円筒状の導電性突起
44 OBP
45,46 導電性パターン
47 OBP
48 電源バー
481 電源バーの本体部分
482 電源バーのバー部分
49 グランドバー
491 グランドバーの本体部分
492 グランドバーのバー部分
411 穴
421 導電性突起
412 導電性突起
50 プリント板
52 導電性パターン
55 高誘電材層
57 出力電源ピン
58 導電性パターン
70 プリント板
71 電源バー
72 グランドバー
73 高誘電材層
74 グランド用電源ピン
75 信号ピン
76 接続ピン
77,771 絶縁体
78,781,782 ビア
81 プレートタイプの放熱フィン
82 ディスクタイプの放熱フィン
83 スリット
124 電源バー
128 グランドバー
131 電源バー
132 プリント板
133,134 高誘電材層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気部品への給電装置であって、電力を供給する電源と、信号線パターンを内装するプリント板と、前記電気部品の電極の形状及び位置に対応した形状及び位置に設けられた導電性突起を有し前記プリント板の外側に設けられた電源バーと、前記プリント板の外側に設けられたグランドバーと、前記電源バーと前記グランドバーの間で前記電気部品に対応する部分に設けられた高誘電体層とを備え、前記電源からの電力を前記電源バー及び前記グランドバーを介して前記電気部品の電極に供給するようにしたことを特徴とするコンデンサ内蔵型給電装置。
【請求項2】
前記電気部品は接地用のグランドピンと電源ピンとを備え、前記電源バーは前記グランドピンに対応する位置に設けられ、周囲が前記電源バーから絶縁されている穴と、前記電源ピンに対応する位置に設けられた第1の導電性突起とを備え、前記グランドバーは前記穴に嵌合する第2の導電性突起を備え、前記第1の導電性突起は前記プリント板内のビアを介して前記電気部品の前記電源ピンに接続され、前記第2の導電性突起は前記プリント内の他のビアを介して前記電気部品の前記グランドピンに接続されるようにしたことを特徴とする、請求項1に記載のコンデンサ内蔵型給電装置。
【請求項3】
前記電気部品は接地用のグランドピンと電源ピンとを備え、前記グランドバーは前記グランドピンに対応する位置に設けられた第1の導電性突起と、前記電源ピンに対応する位置に設けられ、周囲が前記グランドバーから絶縁されている穴とを備え、前記電源バーは前記穴に嵌合する第2の導電性突起を備え、前記第1の導電性突起は前記プリント板内のビアを介して前記電気部品の前記グランドピンに接続され、前記第2の導電性突起は前記プリント内の他のビアを介して前記電気部品の前記電源ピンに接続されるようにしたことを特徴とする、請求項1に記載のコンデンサ内蔵型給電装置。
【請求項4】
前記電源バーと前記グランドバーは前記プリント板と前記電気部品との間に設けられており、前記電源バー及び前記グランドバーは前記プリント板のビアを介さずに直接前記電気部品に接続するようにしたことを特徴とする、請求項1に記載のコンデンサ内蔵型給電装置。
【請求項5】
前記電源バーは複数の電源バーからなり、前記グランドバーは前記複数の電源バーの各々との間に前記高誘電体層を挟んで設けられている、前記請求項1に記載のコンデンサ内蔵型給電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−4593(P2012−4593A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189221(P2011−189221)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【分割の表示】特願2005−286867(P2005−286867)の分割
【原出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】