説明

電気鉄道監視制御システム

【課題】消費電力が過剰となることを予測し、運行管理システムと連携することで、動的に定時性を保ちながら消費電力を抑える電気鉄道監視制御システムを提供する。
【解決手段】電気鉄道監視制御システムにおいて、電力管理システム1と運行管理システム2とが連携し、消費電力予測装置12は消費電力の予測結果が自己の変電所3の最大供給能力を超過するか否かを判断する最大供給能力比較制御部12aを含み、実施予測ダイヤ・運転曲線補正情報生成装置13は、消費電力の予測結果が自己の変電所3の最大供給能力を超過すると予測された際に、全き電区間における列車の電力特性の実績データを基に、自己の変電所3のき電区間に在線すると予測される列車の実施予測ダイヤと実施運転曲線とを補正するための情報を生成して、この生成された補正情報を運行管理システム2の実施予測ダイヤ監視装置21と実施運転曲線形成装置20とに送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気鉄道監視制御システムに関し、特に、電力管理システムと運行管理システムとを連携させた電気鉄道監視制御システムに適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、電気鉄道監視制御システムに関する従来技術として、特開平11−91414号公報(特許文献1)や特開平8−205405号公報(特許文献2)に記載される技術などがある。
【0003】
前記特許文献1には、自己の変電所と隣接する変電所のき電区間に複数の列車が存在する場合において、総合的に力行が多い場合は出力電圧を上げるように制御し、また、変電所の出力電圧の整定範囲の上限値または下限値を越えた場合、整定範囲の上限値または下限値の電圧を出力するようにサイリスタ整流器に対して制御出力を行う技術が記載されている。
【0004】
また、前記特許文献2には、各時間帯における列車の運行本数の実績から得られた列車の粗密情報を記憶して、各列車の位置を検知し、この各列車の位置情報と粗密情報から各列車の在線分布を判断して出力し、この粗密情報と各列車の在線分布から変電所を制御する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−91414号公報
【特許文献2】特開平8−205405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前述した特許文献1や特許文献2などの従来技術を検討した結果、以下のようなことが明らかとなった。前記特許文献1の技術は、き電区間内の列車が著しく増加した場合は、自己の変電所の出力電圧が著しく増加するため、列車に供給する電力が不足し、列車運行の定時性が失われる可能性がある。また、前記特許文献2の技術は、列車の粗密情報を予め記憶手段に記憶しているため、動的な運行状況の変化には対応できない場合がある。
【0007】
そこで、本発明は、このような従来技術の課題を解決するためになされたものであり、その代表的な目的は、消費電力が過剰となることを予測し、運行管理システムと連携することで、動的に定時性を保ちながら消費電力を抑える電気鉄道監視制御システムを提供することである。
【0008】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0010】
すなわち、代表的なものの概要は、電気鉄道監視制御システムにおいて、き電区間における変電所の電力を管理する電力管理システムと、前記電力管理システムと連携して、前記電力管理システムからの補正情報に基づいて、前記き電区間における列車の運行を管理する運行管理システムとを備える。前記運行管理システムは、列車運転の実施予測ダイヤを監視する実施予測ダイヤ監視装置と、実際の運行実績を基に実施運転曲線を作成する実施運転曲線形成装置とを備える。前記電力管理システムは、列車位置を取得する列車位置取得部と、前記運行管理システムから送信された実施予測ダイヤを基に自己の変電所のき電区間に在線すると予測される列車のダイヤを監視するき電区間実施予測ダイヤ監視装置と、前記自己の変電所のき電区間に在線すると予測される列車の運転状況から消費電力の予測を求める消費電力予測装置と、前記消費電力予測装置の予測結果に基づき前記実施予測ダイヤと前記実施運転曲線を補正する情報を生成する実施予測ダイヤ・運転曲線補正情報生成装置とを備える。さらに、前記消費電力予測装置は、前記消費電力の予測結果と前記自己の変電所の最大供給能力とを比較し、前記消費電力の予測結果が前記自己の変電所の最大供給能力を超過するか否かを判断する最大供給能力比較制御部を含む。そして、前記実施予測ダイヤ・運転曲線補正情報生成装置は、前記最大供給能力比較制御部の判断の結果、前記消費電力の予測結果が前記自己の変電所の最大供給能力を超過すると予測された際に、全き電区間における列車の電力特性の実績データを基に、前記自己の変電所のき電区間に在線すると予測される列車の前記実施予測ダイヤと前記実施運転曲線とを補正するための情報を生成して、この生成された補正情報を前記運行管理システムの前記実施予測ダイヤ監視装置と前記実施運転曲線形成装置とに送信することを特徴とする。
【0011】
さらに好適には、前記消費電力予測装置は、前記消費電力の予測結果と前記自己の変電所の契約電力量とを比較し、前記消費電力の予測結果が前記自己の変電所の契約電力量を超過するか否かを判断する契約電力量比較制御部を含む。そして、前記実施予測ダイヤ・運転曲線補正情報生成装置は、前記契約電力量比較制御部の判断の結果、前記消費電力の予測結果が前記自己の変電所の契約電力量を超過すると予測された際に、全き電区間における列車の電力特性の実績データを基に、前記自己の変電所のき電区間に在線すると予測される列車の前記実施予測ダイヤと前記実施運転曲線とを補正するための情報を生成して、この生成された補正情報を前記運行管理システムの前記実施予測ダイヤ監視装置と前記実施運転曲線形成装置とに送信することを特徴とする。
【0012】
さらに好適には、前記実施予測ダイヤ・運転曲線補正情報生成装置は、前記消費電力の予測結果が前記自己の変電所の最大供給能力を超過すると予測された際に、前記自己の変電所の最大供給能力を超過すると予測されたときの時間帯に在線するき電区間に最寄りの変電所の整流器を増発する制御に基づいて、前記自己の変電所のき電区間に在線すると予測される列車の前記実施予測ダイヤと前記実施運転曲線とを補正するための情報を生成する。また、前記消費電力の予測結果が前記自己の変電所の契約電力量を超過すると予測された際に、前記自己の変電所の契約電力量を超過すると予測されたときの予め定めた制御に基づいて、前記自己の変電所のき電区間に在線すると予測される列車の前記実施予測ダイヤと前記実施運転曲線とを補正するための情報を生成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0014】
すなわち、代表的なものによって得られる効果は、消費電力が過剰となることを予測し、運行管理システムと連携することで、動的に定時性を保ちながら消費電力を抑える電気鉄道監視制御システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施の形態に係る電気鉄道監視制御システムの構成の一例を示す図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る電気鉄道監視制御システムの動作の一例を示すフローチャートである。
【図3】本発明の一実施の形態に係る電気鉄道監視制御システムにおいて、変電所とき電区間と列車と駅との関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の実施の形態においては、便宜上その必要があるときは、複数の実施の形態またはセクションに分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらは互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。
【0017】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0018】
[本発明の実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る電気鉄道監視制御システム(一例として、()内に対応する構成要素、符号などを付記)は、き電区間における変電所の電力を管理する電力管理システム(1)と、前記電力管理システムと連携して、前記電力管理システムからの補正情報に基づいて、前記き電区間における列車の運行を管理する運行管理システム(2)とを備える。前記運行管理システムは、列車運転の実施予測ダイヤを監視する実施予測ダイヤ監視装置(21)と、実際の運行実績を基に実施運転曲線を作成する実施運転曲線形成装置(20)とを備える。前記電力管理システムは、列車位置を取得する列車位置取得部(10)と、前記運行管理システムから送信された実施予測ダイヤを基に自己の変電所のき電区間に在線すると予測される列車のダイヤを監視するき電区間実施予測ダイヤ監視装置(11)と、前記自己の変電所のき電区間に在線すると予測される列車の運転状況から消費電力の予測を求める消費電力予測装置(12)と、前記消費電力予測装置の予測結果に基づき前記実施予測ダイヤと前記実施運転曲線を補正する情報を生成する実施予測ダイヤ・運転曲線補正情報生成装置(13)とを備える。さらに、前記消費電力予測装置は、前記消費電力の予測結果と前記自己の変電所の最大供給能力とを比較し、前記消費電力の予測結果が前記自己の変電所の最大供給能力を超過するか否かを判断する最大供給能力比較制御部(12a)を含む。そして、前記実施予測ダイヤ・運転曲線補正情報生成装置は、前記最大供給能力比較制御部の判断の結果、前記消費電力の予測結果が前記自己の変電所の最大供給能力を超過すると予測された際に、全き電区間における列車の電力特性の実績データを基に、前記自己の変電所のき電区間に在線すると予測される列車の前記実施予測ダイヤと前記実施運転曲線とを補正するための情報を生成して、この生成された補正情報を前記運行管理システムの前記実施予測ダイヤ監視装置と前記実施運転曲線形成装置とに送信することを特徴とする。
【0019】
さらに好適には、前記消費電力予測装置は、前記消費電力の予測結果と前記自己の変電所の契約電力量とを比較し、前記消費電力の予測結果が前記自己の変電所の契約電力量を超過するか否かを判断する契約電力量比較制御部(12b)を含む。そして、前記実施予測ダイヤ・運転曲線補正情報生成装置は、前記契約電力量比較制御部の判断の結果、前記消費電力の予測結果が前記自己の変電所の契約電力量を超過すると予測された際に、全き電区間における列車の電力特性の実績データを基に、前記自己の変電所のき電区間に在線すると予測される列車の前記実施予測ダイヤと前記実施運転曲線とを補正するための情報を生成して、この生成された補正情報を前記運行管理システムの前記実施予測ダイヤ監視装置と前記実施運転曲線形成装置とに送信することを特徴とする。
【0020】
さらに好適には、前記実施予測ダイヤ・運転曲線補正情報生成装置は、前記消費電力の予測結果が前記自己の変電所の最大供給能力を超過すると予測された際に、前記自己の変電所の最大供給能力を超過すると予測されたときの時間帯に在線するき電区間に最寄りの変電所の整流器を増発する制御に基づいて、前記自己の変電所のき電区間に在線すると予測される列車の前記実施予測ダイヤと前記実施運転曲線とを補正するための情報を生成する。また、前記消費電力の予測結果が前記自己の変電所の契約電力量を超過すると予測された際に、前記自己の変電所の契約電力量を超過すると予測されたときの予め定めた制御に基づいて、前記自己の変電所のき電区間に在線すると予測される列車の前記実施予測ダイヤと前記実施運転曲線とを補正するための情報を生成することを特徴とする。
【0021】
上述した本発明の実施の形態の概要に基づいた本発明の一実施の形態を、以下において図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0022】
[本発明の一実施の形態]
本発明の一実施の形態に係る電気鉄道監視制御システムについて、図1〜図3を用いて説明する。本実施の形態においては、消費電力予測装置(12)が、最大供給能力比較制御部(12a)と契約電力量比較制御部(12b)と含む例を説明するが、最大供給能力比較制御部(12a)のみを含む場合、契約電力量比較制御部(12b)のみを含む場合にも適用可能であることは言うまでもない。
【0023】
<電気鉄道監視制御システムの構成>
図1を用いて、本実施の形態に係る電気鉄道監視制御システムの構成について説明する。図1は、この電気鉄道監視制御システムの構成の一例を示す図である。
【0024】
本実施の形態の電気鉄道監視制御システムは、電力管理システム1と、この電力管理システム1と連携した運行管理システム2とを備えて構成されている。電力管理システム1は、変電所3内の機器を監視制御するシステムであり、変電所3内の機器に接続されると共に、運行管理システム2と接続されている。
【0025】
電力管理システム1は、列車位置取得部10と、き電区間実施予測ダイヤ監視装置11と、消費電力予測装置12と、実施予測ダイヤ・運転曲線補正情報生成装置13とを備えて構成されている。
【0026】
列車位置取得部10は、自己の変電所3のき電区間や、自己の変電所3のき電区間に隣接するき電区間における列車の在線位置を取得する装置である。
【0027】
き電区間実施予測ダイヤ監視装置11は、運行管理システム2(実施運転曲線形成装置20、実施予測ダイヤ監視装置21)に接続され、この運行管理システム2から送信された実施予測ダイヤを基に自己の変電所3のき電区間に在線すると予測される列車のダイヤを監視する装置である。さらに、このき電区間実施予測ダイヤ監視装置11は、列車位置取得部10にも接続され、この列車位置取得部10から送信された自己の変電所3のき電区間に隣接するき電区間における列車の在線状況から、自己の変電所3のき電区間のある時間帯における実施予測ダイヤを監視するものである。
【0028】
消費電力予測装置12は、き電区間実施予測ダイヤ監視装置11に接続され、このき電区間実施予測ダイヤ監視装置11により自己の変電所3のき電区間のある時間帯に在線すると予測される列車の運転状況から消費電力の予測を求める装置である。さらに、この消費電力予測装置12は、消費電力の予測結果が自己の変電所3の最大供給能力を超過すると予測された際の最大供給能力比較制御部12aと、消費電力の予測結果が自己の変電所3の契約電力量を超過すると予測された際の契約電力量比較制御部12bとを含んでいる。
【0029】
最大供給能力比較制御部12aは、消費電力の予測結果と自己の変電所3の最大供給能力とを比較し、消費電力の予測結果が自己の変電所3の最大供給能力を超過するか否かを判断する機能部である。さらに、この最大供給能力比較制御部12aは、この判断の結果、消費電力の予測結果が自己の変電所3の最大供給能力を超過すると予測された場合に、運行管理システム2に対して警告通知を行う機能を備えている。
【0030】
契約電力量比較制御部12bは、消費電力の予測結果と自己の変電所3の契約電力量とを比較し、消費電力の予測結果が自己の変電所3の契約電力量を超過するか否かを判断する機能部である。さらに、この契約電力量比較制御部12bは、この判断の結果、消費電力の予測結果が自己の変電所3の契約電力量を超過すると予測された場合に、電力管理システム1に対して警報通知を行う機能を備えている。
【0031】
この消費電力予測装置12の最大供給能力比較制御部12aおよび契約電力量比較制御部12bは、自己および隣接した変電所3に接続され、消費電力の予測結果が自己の変電所3の最大供給能力を超過すると予測された際に、自己の変電所3の最大供給能力を超過すると予測されたときの時間帯に在線するき電区間に最寄りの変電所3の整流器を増発する制御を行うことができる。また、消費電力の予測結果が自己の変電所3の契約電力量を超過すると予測された際に、自己の変電所3の契約電力量を超過すると予測されたときの予め定めた制御を行うことができる。
【0032】
実施予測ダイヤ・運転曲線補正情報生成装置13は、消費電力予測装置12に接続され、この消費電力予測装置12の予測結果に基づき実施予測ダイヤと実施運転曲線を補正する情報を生成する装置である。さらに、この実施予測ダイヤ・運転曲線補正情報生成装置13は、運行管理システム2(実施予測ダイヤ監視装置21)に接続され、この運行管理システム2に、生成した補正情報を送信するものである。
【0033】
すなわち、実施予測ダイヤ・運転曲線補正情報生成装置13は、消費電力の予測結果が自己の変電所3の最大供給能力を超過すると予測された際に、全き電区間における列車の種別や在線位置などに応じた電力特性の実績データを基に、定時制が保たれるように自己の変電所3のき電区間に在線すると予測される列車の実施予測ダイヤと実施運転曲線とを補正するための情報を生成して、この生成された補正情報を運行管理システム2に送信するものである。また、消費電力の予測結果が自己の変電所3の契約電力量を超過すると予測された際に、全き電区間における列車の種別や在線位置などに応じた電力特性の実績データを基に、定時制が保たれるように自己の変電所3のき電区間に在線すると予測される列車の実施予測ダイヤと実施運転曲線とを補正するための情報を生成して、この生成された補正情報を運行管理システム2に送信するものである。
【0034】
具体的には、実施予測ダイヤ・運転曲線補正情報生成装置13は、自己の変電所3の最大供給能力を超過すると予測されたときの時間帯に在線するき電区間に最寄りの変電所3の整流器を増発する制御に基づいて、自己の変電所3のき電区間に在線すると予測される列車の実施予測ダイヤと実施運転曲線とを補正するための情報を生成するものである。また、自己の変電所3の契約電力量を超過すると予測されたときの予め定めた制御に基づいて、自己の変電所3のき電区間に在線すると予測される列車の実施予測ダイヤと実施運転曲線とを補正するための情報を生成するものである。
【0035】
運行管理システム2は、実施運転曲線形成装置20と、実施予測ダイヤ監視装置21とを備えて構成されている。
【0036】
実施運転曲線形成装置20は、実際の運行実績を基に実施運転曲線を作成する装置である。さらに、この実施運転曲線形成装置20は、電力管理システム1のき電区間実施予測ダイヤ監視装置11に接続され、このき電区間実施予測ダイヤ監視装置11に、自己の変電所3のき電区間に在線すると予測される列車のダイヤを監視するために、実施運転曲線を送信するものである。さらに、この実施運転曲線形成装置20は、実施予測ダイヤ監視装置21を介して、電力管理システム1の実施予測ダイヤ・運転曲線補正情報生成装置13に接続され、この実施予測ダイヤ・運転曲線補正情報生成装置13からの補正情報に基づいて、実施運転曲線を更新するものである。
【0037】
実施予測ダイヤ監視装置21は、列車運転の実施予測ダイヤを監視する装置である。さらに、この実施予測ダイヤ監視装置21は、電力管理システム1のき電区間実施予測ダイヤ監視装置11に接続され、このき電区間実施予測ダイヤ監視装置11に、自己の変電所3のき電区間に在線すると予測される列車のダイヤを監視するために、実施予測ダイヤを送信するものである。さらに、この実施予測ダイヤ監視装置21は、電力管理システム1の実施予測ダイヤ・運転曲線補正情報生成装置13に接続され、この実施予測ダイヤ・運転曲線補正情報生成装置13からの補正情報に基づいて、実施予測ダイヤを更新するものである。
【0038】
<電気鉄道監視制御システムの動作>
図2を用いて、本実施の形態に係る電気鉄道監視制御システムの動作について説明する。図2は、この電気鉄道監視制御システムの動作の一例を示すフローチャートである。
【0039】
まず、電力管理システム1は、運行管理システム2から実施運転曲線形成装置20と実施予測ダイヤ監視装置21の情報を受信する(ステップS1)。この実施運転曲線形成装置20と実施予測ダイヤ監視装置21の情報は、電力管理システム1のき電区間実施予測ダイヤ監視装置11で受信される。
【0040】
さらに、き電区間実施予測ダイヤ監視装置11は、列車位置取得部10から取得した情報と、実施運転曲線形成装置20と実施予測ダイヤ監視装置21の情報から、自己の変電所3のき電区間に隣接するき電区間における列車の在線状況を把握し、自己のき電区間のある時間帯における実施予測ダイヤを監視する(ステップS2)。このき電区間実施予測ダイヤ監視装置11の情報は、消費電力予測装置12へ送られる。
【0041】
そして、消費電力予測装置12は、上記時間帯に在線すると予測される列車の運転状況から消費電力予測を求める(ステップS3)。具体的には、自己の変電所3のき電区間に在線すると予測される各列車の実施予測ダイヤに基づく実施運転曲線の傾きから力行か減速かを求め、この運転状況に基づいて消費電力予測を求める。
【0042】
続いて、消費電力予測装置12内の最大供給能力比較制御部12aは、求めた消費電力予測が自己の変電所3の最大供給能力を超過するか否かを判断する(ステップS4)。
【0043】
ステップS4の判断の結果、消費電力予測が自己の変電所3の最大供給能力を超過すると予測された場合(ステップS4−yes)、最大供給能力比較制御部12aは、運行管理システム2に対して警告通知を行う(ステップS5)。この警告通知の内容は、音声案内やアラームで通知することが可能である。なお、ステップS4の判断の結果、消費電力予測が自己の変電所3の最大供給能力を超過すると予測されない場合(ステップS4−no)は、ステップS7へ移行する。
【0044】
また、電力管理システム1では、変電所3の能力により、消費電力予測が自己の変電所3の最大供給能力を超過すると予測された場合(ステップS4−yes)に、その時間帯に在線するき電区間に最寄りの変電所3の整流器を増発する制御を行うことが可能である(ステップS6)。
【0045】
さらに、消費電力予測装置12内の契約電力量比較制御部12bは、ステップS3で求めた消費電力予測が自己の変電所3の契約電力量を超過するか否かを判断する(ステップS7)。
【0046】
ステップS7の判断の結果、消費電力予測が自己の変電所3の契約電力量を超過すると予測された場合(ステップS7−yes)、契約電力量比較制御部12bは、電力管理システム1に対して警報通知を行う(ステップS8)。この警報通知の内容は、音声案内やアラームで通知することが可能である。なお、ステップS7の判断の結果、消費電力予測が自己の変電所3の契約電力量を超過すると予測されない場合(ステップS7−no)は、ステップS9へ移行する。
【0047】
続いて、実施予測ダイヤ・運転曲線補正情報生成装置13は、過去の電力特性の実績データを基に、省エネかつ定時制が保たれるように各列車の実施運転曲線と実施予測ダイヤを補正する情報を生成し、この補正情報を運行管理システム2の実施予測ダイヤ監視装置21に対して、さらに実施運転曲線形成装置20に対して出力する(ステップS9)。
【0048】
そして、実施運転曲線形成装置20と実施予測ダイヤ監視装置21は、実施運転曲線と実施予測ダイヤを更新する(ステップS10)。
【0049】
以上のステップS1〜S10までの処理を一定時間毎に繰り返す。このステップS1〜S10までの一定時間毎の繰り返し処理により更新された実施運転曲線と実施予測ダイヤで、運行管理システム2は省エネかつ定時制が保たれるように列車の運行を制御することができる。
【0050】
<変電所とき電区間と列車と駅との関係>
図3を用いて、本実施の形態に係る電気鉄道監視制御システムにおいて、変電所とき電区間と列車と駅との関係について説明する。図3は、この変電所とき電区間と列車と駅との関係の一例を示す図である。
【0051】
例えば、図3に示すように、変電所A、変電所B、変電所Cがある場合に、変電所Bを自己の変電所とすると、この自己の変電所Bのき電区間は、変電所Aと変電所Cとの間の区間である。この場合に、自己の変電所Bのき電区間に隣接するき電区間は、変電所Aのき電区間、変電所Cのき電区間となる。この自己の変電所Bのき電区間に在線すると予測される列車は、列車gとする。
【0052】
前述したステップS4の判断の結果、消費電力予測が自己の変電所Bの最大供給能力を超過すると予測された際は、ステップS6のように、自己の変電所Bの最大供給能力を超過すると予測されたときの時間帯に在線するき電区間に最寄りの変電所Bの整流器を増発する制御を行うことが可能である。
【0053】
また、前述したステップS7の判断の結果、消費電力予測が自己の変電所Bの契約電力量を超過すると予測された際は、自己の変電所Bの契約電力量を超過すると予測されたときの予め定めた制御を行うことが可能である。
【0054】
また、消費電力予測が自己の変電所Bの最大供給能力を超過すると予測された場合の変形例として、例えば、運行管理システム2に対して、最大供給能力超過となる列車群に対して在線状況に応じた最適な運転指令を行うための情報を提供して、各列車毎に最適な制御を行うことも可能である。例えば、図3の例において、駅rを発車した列車gは、駅sを発車した列車hに接近しているので、列車gに対して、駅rを発車した時点ではゆっくり、次第に速くして、駅sに到着する際には定時の到着時刻を守るような制御を行うことも可能である。
【0055】
また、他の変形例として、最寄りの変電所Bの整流器を増発する制御に代えて、最大供給能力を超過すると予測された時間帯にき電区間に在線する列車gに2番目に近い変電所、図3の例では変電所Cが相当し、この変電所Cの整流器を増発する制御を行うことも可能である。あるいは、3番目に近い変電所Aの整流器を増発する制御を行うことも可能である。
【0056】
<本実施の形態の効果>
以上説明したように、本実施の形態に係る電気鉄道監視制御システムによれば、電力管理システム1と運行管理システム2とが連携し、運行管理システム2は実施予測ダイヤ監視装置21と実施運転曲線形成装置20とを備え、電力管理システム1は列車位置取得部10とき電区間実施予測ダイヤ監視装置11と消費電力予測装置12と実施予測ダイヤ・運転曲線補正情報生成装置13とを備え、さらに消費電力予測装置12は最大供給能力比較制御部12aを含むことで、消費電力の予測結果が自己の変電所3の最大供給能力を超過すると予測された際に、全き電区間における列車の電力特性の実績データを基に、自己の変電所3のき電区間に在線すると予測される列車の実施予測ダイヤと実施運転曲線とを補正するための情報を生成して、この生成された補正情報を運行管理システム2の実施予測ダイヤ監視装置21と実施運転曲線形成装置20とに送信することができる。
【0057】
さらに好適には、消費電力予測装置12は契約電力量比較制御部12bを含むことで、消費電力の予測結果が自己の変電所3の契約電力量を超過すると予測された際に、全き電区間における列車の電力特性の実績データを基に、自己の変電所3のき電区間に在線すると予測される列車の実施予測ダイヤと実施運転曲線とを補正するための情報を生成して、この生成された補正情報を運行管理システム2の実施予測ダイヤ監視装置21と実施運転曲線形成装置20とに送信することができる。
【0058】
さらに好適には、自己の変電所3の最大供給能力を超過すると予測されたときの時間帯に在線するき電区間に最寄りの変電所3の整流器を増発する制御に基づいて補正情報を生成することができ、また、自己の変電所3の契約電力量を超過すると予測されたときの予め定めた制御に基づいて補正情報を生成することができる。
【0059】
さらに好適には、以下のような効果を得ることができる。(1)消費電力の予測結果が自己の変電所3の最大供給能力を超過すると予測された場合に、運行管理システム2に対して警告通知を行うことができる。(2)消費電力の予測結果が自己の変電所3の最大供給能力を超過すると予測された場合に、運行管理システム2に対して、最大供給能力超過となる列車群に対して在線状況に応じた最適な運転指令を行うための情報を提供することができる。(3)消費電力の予測結果が自己の変電所3の最大供給能力を超過すると予測された場合に、その予測された時間帯にき電区間に在線する列車に2番目に近い変電所3の整流器を増発する制御を行うことができる。(4)消費電力の予測結果が自己の変電所3の契約電力量を超過すると予測された場合に、電力管理システム1に対して警報通知を行うことができる。(5)消費電力の予測結果が自己の変電所3の契約電力量を超過するか否かを予測する際に、自己の変電所3のき電区間に在線すると予測される列車の運転曲線の傾きから力行か減速かの運転状況に基づいて契約電力量を超過するか否かを予測することができる。
【0060】
以上のように、電力管理システム1と運行管理システム2とを連携させた電気鉄道監視制御システムにおいて、自己の変電所3の最大供給能力、および契約電力量を超過することを予測し、超過が予測された場合には、電力管理システム1と運行管理システム2に対して通知を行い、運行計画を補正する情報を出力することで、動的に定時性や省エネを実現することができる。
【0061】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、上記した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、一部の構成を他の構成に置き換えたり、他の構成を加えたり、一部の構成を削除することが可能である。
【0062】
例えば、上記した実施の形態の変形例として、消費電力予測装置12に、最大供給能力比較制御部12aのみを含む場合には、自己の変電所3の最大供給能力を超過することを予測して、運行計画を補正することができる。また、消費電力予測装置12に、契約電力量比較制御部12bのみを含む場合には、自己の変電所3の契約電力量を超過することを予測して、運行計画を補正することができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の電気鉄道監視制御システムは、特に、電力管理システムと運行管理システムとを連携させた電気鉄道監視制御システムに利用可能である。
【符号の説明】
【0064】
1…電力管理システム、2…運行管理システム、3…変電所、
10…列車位置取得部、11…き電区間実施予測ダイヤ監視装置、12…消費電力予測装置、12a…最大供給能力比較制御部、12b…契約電力量比較制御部、13…実施予測ダイヤ・運転曲線補正情報生成装置、
20…実施運転曲線形成装置、21…実施予測ダイヤ監視装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
き電区間における変電所の電力を管理する電力管理システムと、
前記電力管理システムと連携して、前記電力管理システムからの補正情報に基づいて、前記き電区間における列車の運行を管理する運行管理システムとを備え、
前記運行管理システムは、
列車運転の実施予測ダイヤを監視する実施予測ダイヤ監視装置と、
実際の運行実績を基に実施運転曲線を作成する実施運転曲線形成装置とを備え、
前記電力管理システムは、
列車位置を取得する列車位置取得部と、
前記運行管理システムから送信された実施予測ダイヤを基に自己の変電所のき電区間に在線すると予測される列車のダイヤを監視するき電区間実施予測ダイヤ監視装置と、
前記自己の変電所のき電区間に在線すると予測される列車の運転状況から消費電力の予測を求める消費電力予測装置と、
前記消費電力予測装置の予測結果に基づき前記実施予測ダイヤと前記実施運転曲線を補正する情報を生成する実施予測ダイヤ・運転曲線補正情報生成装置とを備え、
前記消費電力予測装置は、前記消費電力の予測結果と前記自己の変電所の最大供給能力とを比較し、前記消費電力の予測結果が前記自己の変電所の最大供給能力を超過するか否かを判断する最大供給能力比較制御部を含み、
前記実施予測ダイヤ・運転曲線補正情報生成装置は、前記最大供給能力比較制御部の判断の結果、前記消費電力の予測結果が前記自己の変電所の最大供給能力を超過すると予測された際に、全き電区間における列車の電力特性の実績データを基に、前記自己の変電所のき電区間に在線すると予測される列車の前記実施予測ダイヤと前記実施運転曲線とを補正するための情報を生成して、この生成された補正情報を前記運行管理システムの前記実施予測ダイヤ監視装置と前記実施運転曲線形成装置とに送信することを特徴とする電気鉄道監視制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の電気鉄道監視制御システムにおいて、
前記消費電力予測装置は、前記消費電力の予測結果と前記自己の変電所の契約電力量とを比較し、前記消費電力の予測結果が前記自己の変電所の契約電力量を超過するか否かを判断する契約電力量比較制御部を含み、
前記実施予測ダイヤ・運転曲線補正情報生成装置は、前記契約電力量比較制御部の判断の結果、前記消費電力の予測結果が前記自己の変電所の契約電力量を超過すると予測された際に、全き電区間における列車の電力特性の実績データを基に、前記自己の変電所のき電区間に在線すると予測される列車の前記実施予測ダイヤと前記実施運転曲線とを補正するための情報を生成して、この生成された補正情報を前記運行管理システムの前記実施予測ダイヤ監視装置と前記実施運転曲線形成装置とに送信することを特徴とする電気鉄道監視制御システム。
【請求項3】
請求項2に記載の電気鉄道監視制御システムにおいて、
前記実施予測ダイヤ・運転曲線補正情報生成装置は、
前記消費電力の予測結果が前記自己の変電所の最大供給能力を超過すると予測された際に、前記自己の変電所の最大供給能力を超過すると予測されたときの時間帯に在線するき電区間に最寄りの変電所の整流器を増発する制御に基づいて、前記自己の変電所のき電区間に在線すると予測される列車の前記実施予測ダイヤと前記実施運転曲線とを補正するための情報を生成し、
前記消費電力の予測結果が前記自己の変電所の契約電力量を超過すると予測された際に、前記自己の変電所の契約電力量を超過すると予測されたときの予め定めた制御に基づいて、前記自己の変電所のき電区間に在線すると予測される列車の前記実施予測ダイヤと前記実施運転曲線とを補正するための情報を生成することを特徴とする電気鉄道監視制御システム。
【請求項4】
請求項3に記載の電気鉄道監視制御システムにおいて、
前記最大供給能力比較制御部は、前記消費電力の予測結果が前記自己の変電所の最大供給能力を超過すると予測された場合に、前記運行管理システムに対して警告通知を行うことを特徴とする電気鉄道監視制御システム。
【請求項5】
請求項3に記載の電気鉄道監視制御システムにおいて、
前記最大供給能力比較制御部は、前記消費電力の予測結果が前記自己の変電所の最大供給能力を超過すると予測された場合に、前記運行管理システムに対して、最大供給能力超過となる列車群に対して在線状況に応じた最適な運転指令を行うための情報を提供することを特徴とする電気鉄道監視制御システム。
【請求項6】
請求項3に記載の電気鉄道監視制御システムにおいて、
前記最大供給能力比較制御部は、前記消費電力の予測結果が前記自己の変電所の最大供給能力を超過すると予測された場合に、その予測された時間帯にき電区間に在線する列車に2番目に近い変電所の整流器を増発する制御を行うことを特徴とする電気鉄道監視制御システム。
【請求項7】
請求項3に記載の電気鉄道監視制御システムにおいて、
前記契約電力量比較制御部は、前記消費電力の予測結果が前記自己の変電所の契約電力量を超過すると予測された場合に、前記電力管理システムに対して警報通知を行うことを特徴とする電気鉄道監視制御システム。
【請求項8】
請求項3に記載の電気鉄道監視制御システムにおいて、
前記契約電力量比較制御部は、前記消費電力の予測結果が前記自己の変電所の契約電力量を超過するか否かを予測する際に、前記自己の変電所のき電区間に在線すると予測される列車の運転曲線の傾きから力行か減速かの運転状況に基づいて契約電力量を超過するか否かを予測することを特徴とする電気鉄道監視制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−95398(P2013−95398A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243216(P2011−243216)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000153443)株式会社日立情報制御ソリューションズ (359)
【Fターム(参考)】