説明

電気銅メッキ浴、並びに銅メッキ方法

【課題】 酸性電気銅メッキ浴において、先ず、均一電着性に優れ、次いで、高いビアフィリング能力を発揮させる。
【解決手段】 可溶性銅塩とベース酸を含有し、ベース酸が有機酸であり、錯化剤に特定の脂肪族チオアミノカルボン酸又はその塩(メチオニンなど)、脂肪族メルカプトカルボン酸又はその塩(メルカプトコハク酸など)、スルフィド類(3,6−ジチアオクタン−1,8−ジオールなど)、アミノカルボン酸類(ジエチレントリアミンベンタ酢酸など)、或はチオ尿素類を選択した電気銅メッキ浴である。また、ベース酸の種類を問わず、上記錯化剤に準じた種類の錯化剤を含むメッキ浴も有効である。特定の錯化剤を含む有機酸又は無機酸の銅浴であるため、従来の硫酸銅浴などに比して素地表面への均一電着性に優れる。さらには、高いビアフィリング能力も有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気銅メッキ浴並びに銅メッキ方法に関して、酸の種類を問わない浴、或は有機酸浴に各特定の錯化剤を含有させることにより、素地表面への均一電着性に優れ、特に、ビアホール及びスルホールの混在する基板などに電気銅メッキを施した場合、ビアホールへの銅充填(ビアフィリング)とスルホールへの均一電着性を共に良好に達成できるものを提供する。
【背景技術】
【0002】
電気銅メッキ浴としては、従来、硫酸をベース酸とする硫酸銅浴、ピロリン酸銅浴、或はシアン化銅浴などが公知である。このうち、シアン化銅浴は均一電着性は良いが、レベリング能力が不足するうえ、排水処理にも慎重を要する。
また、硫酸銅浴やピロリン酸浴はシアン化銅浴よりレベリング作用は大きいが、均一電着性の点で未だ不充分な点が残る。しかも、ビアホール並びにスルホールの混在する基板に適用した場合、ビアフィリングはビアの底部には厚く、ビア周辺には薄く膜厚形成する必要があり、メカニズム的に均一電着性とは別ものである(或は、相反する)ため、ビアフィリングとスルホールへの均一電着性の両立は容易でない。
【0003】
従来、各種錯化剤を含有した電気銅メッキ浴が知られている。
先ず、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)などのアミノカルボン酸類を含有した銅メッキ浴として、下記の特許文献1〜3がある。
(1)特許文献1
非導電性材料上に密着性の良い銅メッキ皮膜を形成することを目的として、EDTA、DTPA、ニトリルトリ酢酸(NTA)、イミノジ酢酸(IDA)などの錯化剤を含有する無電解メッキ代替用の銅ストライクメッキ方法が開示されている(請求項3、段落9、段落17参照)。
(2)特許文献2
希土類系永久磁石の表面に密着性に優れた銅メッキ皮膜を形成することを目的として、 EDTAを0.05〜0.7モル/L、酒石酸塩又はクエン酸塩を0.1〜1.0モル/L含有するアルカリ性銅めっき液(pH11.0〜13.0)が開示されている(請求項1参照)。
(3)特許文献3
微細窪みに確実に銅フィリングすることを目的として、EDTA、IDA、エチレンジアミンなどの錯化剤を含有する銅めっき液が開示されている(請求項1〜2参照)。
(4)特許文献4
低粘度で取り扱いを容易化する目的で、EDTA、酒石酸、NTAなどの錯化剤を分散剤として添加した酸化銅スラリーの製造方法が開示されている(請求項1〜3参照)。
【0004】
次いで、システイン、脂肪族スルフィド類、或は脂肪族メルカプタン類を含有する銅メッキ浴には下記の特許文献5〜8がある。
(5)特許文献5
非常に薄い直径の銅ワイヤーを作成するに際して、システイン、スルホプロピルジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィドなどの有機添加剤を含有する電解質溶液により銅箔を析出させることが開示されている(請求項12〜16参照)。
(6)特許文献6
3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド(HS−CH2CH2−S−CH2CH2−SH)、チオジエタノール(即ち、チオジグリコール;HO−CH2CH2−S−CH2CH2−OH)などの水溶性メルカプト基含有有機光沢剤を含有する酸性電気銅メッキ浴が開示されている(請求項1〜3、段落15参照)。また、レベリング剤として、1,3−ビス(3−ピリジルメチル)−2−チオ尿素、N,N′−エチレンチオ尿素などを添加可能であることが開示されている(請求項6、段落18参照)。
(7)特許文献7
フィリング性の低下やボイドの発生を防止することを目的として、ジスルフィド類よりなる有機添加剤を含む銅メッキ浴が開示されている(請求項6〜8参照)。但し、ジスルフィド類の具体例はなし(段落11、22参照)。
(8)特許文献8
スルフィド化合物、スルホン酸基含有化合物よりなる光沢剤を含む銅メッキ浴が開示されている(請求項6〜8参照)。当該光沢剤としては、3−メルカプト−プロピルスルホン酸(ナトリウム塩)などが列挙されている(段落27参照)。
【0005】
次いで、チオ尿素類を含有する銅メッキ浴としては、特許文献9〜11がある。
(9)特許文献9
ハンダ付け性の向上などを目的とした銅被覆アルミニウム線の製造に際して、チオ尿素系添加剤などを含有する銅メッキ浴を用いて、銅皮膜を形成することが開示されている(請求項1〜3参照)。
また、前記特許文献6には、レベリング剤として、2,5−ジチオ尿素、1−フェニル−2−チオ尿素、エチレンチオ尿素などを銅メッキ浴に含有することが開示されている(請求項6、段落18参照)。
(10)特許文献10
多層プリント配線板のビアホールの充填形成などを目的として、チオ尿素類を含有する銅メッキ浴によりビアホールを充填形成することが開示されている(請求項1参照)。
(11)特許文献11
銅メッキ浴ではないが、チオ尿素類と、硫酸、塩酸、カルボン酸などから選ばれた酸とを含有する銅剥離剤が開示されている(請求項1〜2参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平5−44075号公報
【特許文献2】特開2004−137533号公報
【特許文献3】特開2002−80992号公報
【特許文献4】特開平11−158644号公報
【特許文献5】特表平10−510883号公報
【特許文献6】特開2001−73182号公報
【特許文献7】特開2004−143478号公報
【特許文献8】特開2001−3191号公報
【特許文献9】特開2001−271198号公報
【特許文献10】特開2000−188476号公報
【特許文献11】特開平11−158659号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記錯化剤を含有する銅メッキ浴では、均一電着性は一般的な硫酸銅浴などとあまり変わらず、スルホールへの均一電着性の改善を期待することは難しい(後述の試験例参照)。
さらに、ビアホール及びスルホールの混在する基板に適用すると、上述の通り、ビアフィリングと均一電着性はメカニズム的に別ものであるため、これらを同時に達成するには課題が多い。
本発明は、酸性の電気銅メッキ浴において、均一電着性に優れると共に、ビアフィリングにも良好に対処できることを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本出願人は、先に、従来の硫酸銅浴に比して均一電着性に優れる見地から、特定のオキシカルボン酸(グリコール酸など)又はその塩、或は、これらのオキシカルボン酸と有機スルホン酸の混合酸をベース酸とする銅メッキ浴を提案した(特願2005−11570号参照)。
本発明者らは、この先願や、上記特許文献1〜10に記載されたEDTAやチオ尿素類などを参考にして、各種錯化剤を含有する銅浴を用いて電気メッキを行った場合に、素地表面への均一電着性とビアフィリングの達成度合を鋭意研究した結果、特定の脂肪族チオアミノカルボン酸類、脂肪族メルカプトカルボン酸類、スルフィド類などを錯化剤に選択すると、先ず、均一電着性に優れ、次いで、ビアフィリングをも良好に達成できること、また、これらの特定錯化剤を含有する場合には、ベース酸の種類を問わず有効性を発揮するが、その一方で、硫酸などの無機酸浴より有機酸浴の方が広範囲の錯化剤で有効性が担保できること、特に、メチオニンを錯化剤とする銅のグリコール酸浴では、より優れた効果が期待できることを見い出して、本発明を完成した。
【0009】
即ち、本発明1は、可溶性銅塩、ベース酸及び錯化剤を含有する電気銅メッキ浴において、
上記錯化剤が下記の化合物(A)〜(E)の少なくとも一種
(A)メチオニン、エチオニン、シスチン、N−アセチルシステインよりなる群から選ばれた脂肪族チオアミノカルボン酸又はその塩
(B)メルカプトイソ酪酸、メルカプト酢酸、ジメルカプト酢酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、メルカプトコハク酸、2,3−ジメルカプトコハク酸よりなる群から選ばれた脂肪族メルカプトカルボン酸又はその塩
(C)次の一般式(1)で表されるスルフィド類
Ra−(A)j−S−(B)k−Rb …(1)
(式(1)中、j及びkは1〜100の整数である;A及びBは同一又は異なっても良く、夫々メチレン、エチレン、1,3−プロピレン、1,2−プロピレン、1,4−ブチレン、1,2−ブチレン、1,3−ブチレン、又はこれらC2〜C4のオキシアルキレンである;Ra及びRbは同一又は異なっても良く、夫々H(但し、AとBが共にメチレン、C2〜C4アルキレンの場合には、RaとRbのどちらか一方はHでない。また、AとBが共にC2〜C4オキシアルキレンの場合、jとkが共に1のときには、RaとRbは共にHではない。)、OH、NH2、CO2M、SO3M、ピリジル基又はアミノフェニル基である;Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、アミンである)
(D)次の一般式(2)で表されるスルフィド類
Ra−S−(CH2CH2−S)n−Rb …(2)
(式(2)中、nは1〜3の整数である;Ra及びRbは同一又は異なっても良く、夫々−(CH2)m−Rcである;mは0又は1〜5の整数である;Rcはmが0の場合はピリジル基又はアミノフェニル基であり、mが1〜5の整数の場合はOH、NH2、CO2M、SO3M、ピリジル基又はアミノフェニル基であり;Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、アミンである)
(E)次の一般式(3)で表されるチオ尿素誘導体
Rd−NH−C(=S)−NH−Re …(3)
(式(3)中、Rd及びReは同一又は異なっても良く、夫々−(CH2)p−Rfである;pは〜5の整数である;Rfはピリジル基である)
であることを特徴とする電気銅メッキ浴である。
【0010】
本発明2は、可溶性銅塩、ベース酸及び錯化剤を含有する電気銅メッキ浴において、
ベース酸が有機酸又はその塩であり、且つ、上記錯化剤が下記の化合物(a)〜(f)の少なくとも一種(但し、ベース酸が酒石酸、クエン酸又はその塩の場合、錯化剤は化合物(a)〜(e)であるか、エチレンジアミンテトラ酢酸を除いた化合物(f)である)
(a)メチオニン、エチオニン、シスチン、N−アセチルシステイン、システインよりなる群から選ばれた脂肪族チオアミノカルボン酸又はその塩
(b)メルカプトイソ酪酸、メルカプト酢酸、ジメルカプト酢酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、メルカプトコハク酸、2,3−ジメルカプトコハク酸よりなる群から選ばれた脂肪族メルカプトカルボン酸又はその塩
(c)次の一般式(1)で表されるスルフィド類
Ra−(A)j−S−(B)k−Rb …(1)
(式(1)中、j及びkは1〜100の整数である;A及びBは同一又は異なっても良く、夫々メチレン、エチレン、1,3−プロピレン、1,2−プロピレン、1,4−ブチレン、1,2−ブチレン、1,3−ブチレン、又はこれらC2〜C4のオキシアルキレンである;Ra及びRbは同一又は異なっても良く、夫々H(但し、AとBが共にメチレン、C2〜C4アルキレンの場合にはRaとRbのどちらか一方はHでない)、OH、NH2、CO2M、SO3M、ピリジル基又はアミノフェニル基である;Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、アミンである)
(d)次の一般式(2)で表されるスルフィド類
Ra−S−(CH2CH2−S)n−Rb …(2)
(式(2)中、nは1〜3の整数である;Ra及びRbは同一又は異なっても良く、夫々−(CH2)m−Rcである;mは0又は1〜5の整数である;Rcはmが0の場合はピリジル基又はアミノフェニル基であり、mが1〜5の整数の場合はOH、NH2、CO2M、SO3M、ピリジル基又はアミノフェニル基であり;Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、アミンである)
(e)チオ尿素、チオ尿素誘導体の少なくとも一種
(f)ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、N,N−ジカルボキシメチル−L−グルタミン酸、エチレンジアミンテトラ酢酸、ニトリロトリ酢酸、グルタミン酸、N,N−ジカルボキシメチル−L−アスパラギン酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、イミノジ酢酸、イミノジプロピオン酸、アスパラギン酸、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、ホスホノブタントリカルボン酸、ヒドロキシエチルアミノジメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸、N,N−ジカルボキシメチル−L−アラニン、1,3−プロパンジアミンテトラ酢酸、グリコールエーテルジアミンテトラ酢酸、エチレンジアミンジコハク酸、アラニン、ヒドロキシエチルイミノジ酢酸、グリシン、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパンテトラ酢酸、オルニチン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシンよりなる群から選ばれたアミノカルボン酸、アミノホスホン酸、ホスホン酸、ホスホノカルボン酸又はこれらの塩の少なくとも一種
であることを特徴とする電気銅メッキ浴である。
【0011】
本発明3は、上記本発明1又は2において、錯化剤がメチオニンであることを特徴とする電気銅メッキ浴である。
【0012】
本発明4は、上記本発明2又は3において、有機酸がオキシカルボン酸、有機スルホン酸であることを特徴とする電気銅メッキ浴である。
【0013】
本発明5は、上記本発明4において、オキシカルボン酸がグリコール酸であることを特徴とする電気銅メッキ浴である。
【0014】
本発明6は、上記本発明4において、有機スルホン酸がメタンスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸であることを特徴とする電気銅メッキ浴である。
【0015】
本発明7は、上記本発明2において、錯化剤がメチオニンであり、有機酸がグリコール酸であることを特徴とする電気銅メッキ浴である。
【0016】
本発明8は、上記本発明1〜7のいずれかにおいて、さらに、レベラー、ブライトナーなどの添加剤を含有することを特徴とする電気銅メッキ浴である。
【0017】
本発明9は、上記本発明1〜8のいずれかの電気銅メッキ浴を用いて、ビアホール及びスルホールの混在する被メッキ物に銅メッキ皮膜を形成することを特徴とする電気銅メッキ方法である。
【発明の効果】
【0018】
特定の脂肪族チオアミノカルボン酸類、脂肪族メルカプトカルボン酸類、或はスルフィド類などから選択された錯化剤を含有する銅メッキ浴であるため、従来の硫酸銅浴などに比して、素地表面への均一電着性に優れ、特に、スルホールでの均一電着性に高い能力を発揮する。これら特定の錯化剤を含有する銅メッキ浴では、ベース酸の種類は無機酸、有機酸を問わずに均一電着性を改善できるが、有機酸をベース酸に選択する方が無機酸の場合より広い範囲の錯化剤で有効性を担保できる。
また、本発明の銅メッキ浴は上記均一電着性のみならず、ビアフィリングにも充分に対処でき、ビアホール及びスルホールの混在する基板に適用しても、ビアホールへの銅充填とスルホールへの均一電着性を共に良好に達成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、第一に、特定の脂肪族チオアミノカルボン酸類、脂肪族メルカプトカルボン酸類、或はスルフィド類などの錯化剤を含有する電気銅メッキ浴であり(本発明1に相当)、第二に、特定の錯化剤(第一発明より広い範囲の錯化剤)を含有し、且つ、オキシカルボン酸や有機スルホン酸などの有機酸をベース酸とする電気銅メッキ浴であり(本発明2に相当)、第三に、これらの銅メッキ浴を用いて、ビアホール及びスルホールの混在する被メッキ物に銅メッキ皮膜を形成する電気銅メッキ方法である。
尚、本発明の電気銅メッキ浴は基本的に酸性銅メッキ浴であり、従来のアルカリ性の銅浴に比べて浴管理は容易になる。
【0020】
本発明1の電気銅メッキ浴は、可溶性銅塩と特定の錯化剤とを基本組成とする。従って、従来公知の硫酸やピロリン酸をベース酸とする浴を初め、任意の無機酸浴、有機酸浴に適用できる(即ち、電気銅メッキ浴のベース酸は無機酸、有機酸又はこれらの塩を問わず、特段の制限はない)。
上記可溶性銅塩は、水溶液中で第一又は第二銅イオンを発生させる可溶性の塩であれば任意のものが使用でき、特段の制限はなく、難溶性塩をも排除しない。具体的には、硫酸銅、酸化銅、塩化銅、炭酸銅、酢酸銅、ピロリン酸銅、シュウ酸銅などが挙げられ、硫酸銅、酸化銅が好ましい。
可溶性銅塩の金属換算の含有量は0.015〜3.2モル/Lであり、好ましくは0.1〜1.2モル/Lである。
ベース酸としての無機酸は、硫酸、ピロリン酸、ホウフッ酸などが挙げられる。また、有機酸は後述する本発明2の場合と同様に、グリコール酸や酒石酸等のオキシカルボン酸、メタンスルホン酸や2―ヒドロキシエタンスルホン酸等の有機スルホン酸などが挙げられる。
ベース酸のメッキ浴に対する含有量は0.1〜12モル/Lが好ましく、0.2〜3.0モル/Lがより好ましい。
【0021】
本発明1の電気銅メッキ浴は、特定のチオアミノカルボン酸又はその塩、脂肪族メルカプトカルボン酸又はその塩、スルフィド類、チオ尿素誘導体より選択した含イオウ化合物を錯化剤に使用することに特徴がある。
これらの含イオウ化合物は夫々を単用又は併用でき、或は、異種を複用(例えば、チオアミノカルボン酸とスルフィド類とを複用)できる。含イオウ化合物の添加量は浴中銅イオンに対して0.5〜10倍モルが好ましく、より好ましくは1.0〜5.0倍モルである。適正濃度範囲より少ないと、均一電着性が低下し(特に、均一電着性とビアフィリングが両立しない恐れがあり)、一方、適正濃度範囲を越えても当該効果にあまり差異はなく、コストの無駄である。
【0022】
上記脂肪族チオアミノカルボン酸は、メチオニン、エチオニン、シスチン、N−アセチルシステインよりなる群から選択でき、メチオニン、シスチン、N−アセチルシステインが好ましく、メチオニンがより好ましい。
上記脂肪族メルカプトカルボン酸は、メルカプトイソ酪酸、メルカプト酢酸、ジメルカプト酢酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、メルカプトコハク酸、2,3−ジメルカプトコハク酸よりなる群から選択でき、メルカプト酢酸、ジメルカプト酢酸、メルカプトコハク酸が好ましく、メルカプトコハク酸がより好ましい。
【0023】
上記スルフィド類は一般式(1)又は一般式(2)で表される特定の化合物である。
一般式(1)で表されるスルフィド類としては、チオジグリコール酸、2,2′−チオビス(エチルアミン)、チオジプロピオン酸、チオジエタンスルホン酸、チオジプロパノール、3,3′−チオビス(プロピルアミン)、チオジ酪酸、チオジプロパンスルホン酸、ビス(ウンデカエチレングリコール)チオエーテル、ビス(ドデカエチレングリコール)チオエーテル、ビス(ペンタデカエチレングリコール)チオエーテル、ビス(トリエチレングリコール)チオエーテルなどが挙げられる。好ましい例は、チオジグリコール酸、2,2′−チオビス(エチルアミン)、チオジプロピオン酸、チオジエタンスルホン酸、チオジプロパノール、3,3′−チオビス(プロピルアミン)、チオジ酪酸、チオジプロパンスルホン酸、ビス(ウンデカエチレングリコール)チオエーテル、ビス(ペンタデカエチレングリコール)チオエーテル、ビス(トリエチレングリコール)チオエーテルであり、チオジグリコール酸、ビス(ウンデカエチレングリコール)チオエーテル、ビス(ペンタデカエチレングリコール)チオエーテル、ビス(トリエチレングリコール)チオエーテルがより好ましい。
【0024】
上記スルフィド類の一般式(1)において、A、Bが共にC2〜C4オキシアルキレンの場合、j=k=1のとき、RaとRbは共にHではないため、例えば、特許文献6(段落15参照)に記載されているチオジエタノール(=チオジグリコール;H−(OCH2CH2)−S−(CH2CH2O)−H)では、A=B=オキシエチレンであり、j=k=1、Ra=Rb=Hに該当することに鑑みると、本発明のスルフィド類からチオジグリコールは排除される。
また、AとBが共にメチレンやC2〜C4アルキレンの場合、RaとRbのどちらか一方はHでないため、例えば、ジエチルスルフィド(H−(CH2CH2)−S−(CH2CH2)−H)は、A=B=エチレン、Ra=Rb=Hに該当することに鑑みると、本発明のスルフィド類から排除される。
そこで、前述のスルフィド類の具体例を一般式(1)に則して説明すると、A及びBがメチレンであり、その付加数であるj及びkが共に1であり、Ra及びRbがCOOHの場合には、HOOC−CH2−S−CH2−COOHを表し、チオジグリコール酸を意味する。A及びBがエチレンであり、その付加数であるj及びkが共に1であり、Ra及びRbがNH2の場合には、H2N−CH2CH2−S−CH2CH2−NH2を表し、2,2′−チオビス(エチルアミン)を意味する。A及びBがオキシエチレンであり、その付加数であるj及びkが共に11であり、Ra及びRbがHの場合には、H−(OCH2CH2)11−S−(CH2CH2O)11−Hを表し、ビス(ウンデカエチレングリコール)チオエーテルを意味する。A及びBがオキシエチレンであり、その付加数のj及びkが共に15であり、Ra及びRbがHの場合には、H−(OCH2CH2)15−S−(CH2CH2O)15−Hを表し、ビス(ペンタデカエチレングリコール)チオエーテルを意味する。
【0025】
一般式(2)で表されるスルフィド類としては、4,7,10−トリチアトリデカン−1,2,12,13−テトラオール、6,9,12−トリチア−3,15−ジオキサヘプタデカン−1,17−ジオール、3,6−ジチアオクタン−1,8―ジオール、4,7−ジチアデカン−1,10−ジオール、3,6,9−トリチアウンデカン−1,11−ジオール、3,6−ジチアオクタン−1,8―ジアミン、3,6−ジチアオクタン−1,8―ジカルボン酸、4,7,10−トリチアトリデカン−1,13−ジスルホン酸ジナトリウム、3,6,9−トリチアウンデカン−1,11−ジスルホン酸、4,7,10,13−テトラチアヘキサデカン−1,16−ジスルホン酸、1,8−ビス(2−ピリジル)−3,6−ジチアオクタンなどが挙げられる。好ましい例は、3,6−ジチアオクタン−1,8―ジオール、4,7−ジチアデカン−1,10−ジオール、1,8−ビス(2−ピリジル)−3,6―ジチアオクタン、4,7,10−トリチアトリデカン−1,13−ジスルホン酸ジナトリウム、3,6,9−トリチアウンデカン−1,11−ジスルホン酸であり、3,6−ジチアオクタン−1,8―ジオール、4,7−ジチアデカン−1,10−ジオールがより好ましい。
例えば、一般式(2)において、付加数nが1であり、Ra及びRbが共に−(CH2)2−OH(m=2、Rc=OHである)の場合には、HO−CH2CH2−S−CH2CH2−S−CH2CH2−OHを表し、3,6−ジチアオクタン−1,8―ジオールを意味する。付加数nが1であり、Ra及びRbが共に−(CH2)3−OH(m=3、Rc=OHである)の場合には、HO−CH2CH2CH2−S−CH2CH2−S−CH2CH2CH2−OHを表し、4,7−ジチアデカン−1,10―ジオールを意味する。付加数nが2であり、Ra及びRbが共に−(CH2)3−SO3Na(m=3、Rc=SO3M(M=Na)である)の場合には、NaO3S−CH2CH2CH2−S−(CH2CH2S)2−CH2CH2CH2−SO3Naを表し、4,7,10−トリチアトリデカン−1,13−ジスルホン酸ジナトリウムを意味する。
【0026】
上記チオ尿素誘導体は一般式(3)で表されるピリジン環を有するチオ尿素系化合物である。当該チオ尿素誘導体としては、1,3−ビス(3−ピリジルエチル)−2−チオ尿素、1,3−ビス(4−ピリジルペンチル)−2−チオ尿素などが挙げられ、1,3−ビス(3−ピリジルメチル)−2−チオ尿素、1,3−ビス(3−ピリジルエチル)−2−チオ尿素が好ましい。
上記チオ尿素誘導体の一般式(3)において、窒素原子に結合するメチレンの個数pは2〜5であるため、例えば、特許文献6(段落18参照)に記載されている1,3−ビス(3−ピリジルメチル)−2−チオ尿素はp=1に該当する化合物であることに鑑みると、本発明のチオ尿素誘導体から排除される。
そこで、上述のチオ尿素誘導体の具体例を一般式(3)に則して説明すると、例えば、一般式(3)において、Rd及びReが共に−(CH2)−Py(p=2、Py=ピリジン環である)の場合には、Py−CH2CH2−NH−C(=S)−NH−CH2CH2−Pyを表し、1,3−ビス(3−ピリジルエチル)−2−チオ尿素を意味する。
【0027】
本発明1の電気銅メッキ浴においては、前述した通り、ベース酸は無機酸、有機酸又はその塩を問わずに適用できる。
一方、本発明2の電気銅メッキ浴は前述した本出願人の先願に基づくものであり、本発明1に対して、特定の錯化剤(上記本発明1より広い範囲の錯化剤)を含有し、且つ、ベース酸を無機酸ではなく、オキシカルボン酸や有機スルホン酸などの有機酸又はその塩に限定した電気銅メッキ浴である。
本発明2の銅メッキ浴に含有すべき錯化剤は、前記化合物(a)〜(f)の少なくとも一種である。
これらの化合物は夫々を単用又は併用でき、或は異種(例えば、スルフィド類とアミノカルボン酸類)を複用できる。錯化剤のメッキ浴への添加量は基本的に前記本発明1と同様である。
本発明2の錯化剤(a)は前記本発明1の錯化剤(A)にシステインを加えたものである。錯化剤(a)の好ましい例はメチオニン、シスチン、N−アセチルシステインであり、メチオニンがより好ましい。
本発明2の錯化剤(b)は前記本発明1の錯化剤(B)と同じである。錯化剤(b)の好ましい例はメルカプト酢酸、ジメルカプト酢酸、メルカプトコハク酸であり、メルカプトコハク酸がより好ましい。
本発明2の錯化剤(c)は前記本発明1の錯化剤(C)を基本としながら、当該錯化剤(C)より広い。この点を本発明2の一般式(1)に則して説明すると、AとBが共にC2〜C4オキシアルキレンの場合、j=k=1でも、Ra=Rb=Hであることを排除されない。従って、本発明2の錯化剤(c)には、チオジグリコール(HO−CH2CH2−S−CH2CH2−H)が包含される。即ち、本発明2の錯化剤(c)は本発明1の錯化剤(C)の具体例に、チオジグリコールなどを加えたものであり、好ましい例は、チオジグリコール、チオジグリコール酸、2,2′−チオビス(エチルアミン)、チオジプロピオン酸、チオジエタンスルホン酸、チオジプロパノール、3,3′−チオビス(プロピルアミン)、チオジ酪酸、チオジプロパンスルホン酸、ビス(ウンデカエチレングリコール)チオエーテル、ビス(ペンタデカエチレングリコール)チオエーテル、ビス(トリエチレングリコール)チオエーテルであり、より好ましい例は、チオジグリコール、チオジグリコール酸、ビス(ウンデカエチレングリコール)チオエーテル、ビス(ペンタデカエチレングリコール)チオエーテル、ビス(トリエチレングリコール)チオエーテルである。
本発明2の錯化剤(d)は前記本発明1の錯化剤(D)と同じであり、好ましい例は、3,6−ジチアオクタン−1,8―ジオール、4,7−ジチアデカン−1,10−ジオール、1,8−ビス(2−ピリジル)−3,6―ジチアオクタン、4,7,10−トリチアトリデカン−1,13−ジスルホン酸ジナトリウム、3,6,9−トリチアウンデカン−1,11−ジスルホン酸であり、より好ましい例は、3,6−ジチアオクタン−1,8―ジオール、4,7−ジチアデカン−1,10−ジオールである。
本発明2の錯化剤(e)は、チオ尿素、チオ尿素誘導体であり、本発明1の錯化剤(E)のようなピリジル基を有するチオ尿素誘導体には限定されない。当該チオ尿素誘導体としては、N,N′―ジメチルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、ジエチルチオ尿素(例えば、N,N′―ジエチルチオ尿素)、N,N′―ジイソプロピルチオ尿素、アリルチオ尿素、アセチルチオ尿素、エチレンチオ尿素、N,N′―ジフェニルチオ尿素、二酸化チオ尿素、チオセミカルバジド、S−メチルイソチオ尿素硫酸塩、トリブチルチオ尿素、塩酸ベンジルイソチオ尿素、N,N′−ジブチルチオ尿素、1−ナフチルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素、1−フェニルチオ尿素、1−メチルチオ尿素等が挙げられる。本発明2の錯化剤(e)の好ましい例はチオ尿素である。また、本発明2のチオ尿素誘導体はピリジル基を有するチオ尿素誘導体を含み、この場合、例えば、本発明1の一般式(3)において、メチレン基の個数pは2〜5に限らず、p=1であっても良く、1,3−ビス(3−ピリジルメチル)−2−チオ尿素などは本発明2のチオ尿素誘導体に包含される。
本発明2の錯化剤(f)は特定のアミノカルボン酸、アミノホスホン酸、ホスホン酸、ホスホノカルボン酸又はその塩であり、本発明1では選択しなかった化合物である。これらの特定のアミノカルボン酸又はその塩などは夫々を単用又は併用でき、異種(例えば、アミノカルボン酸とアミノホスホン酸)を複用しても良い。
上記アミノカルボン酸には、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、N,N−ジカルボキシメチル−L−グルタミン酸、エチレンジアミンテトラ酢酸、ニトリロトリ酢酸、グルタミン酸、N,N−ジカルボキシメチル−L−アスパラギン酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、アスパラギン酸、N,N−ジカルボキシメチル−L−アラニン、1,3−プロパンジアミンテトラ酢酸、グリコールエーテルジアミンテトラ酢酸、エチレンジアミンジコハク酸、アラニン、ヒドロキシエチルイミノジ酢酸、グリシン、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパンテトラ酢酸、オルニチン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシンが挙げられる。
上記アミノホスホン酸には、ヒドロキシエチルアミノジメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸が挙げられる。
上記ホスホン酸には、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)が挙げられる。
同様に、上記ホスホノカルボン酸には、ホスホノブタントリカルボン酸が挙げられる。 尚、これらの特定のアミノカルボン酸の塩、アミノホスホン酸の塩、ホスホン酸の塩、又はホスホノカルボン酸の塩も錯化剤(f)に包含される。当該アミノカルボン酸などの塩は、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグムシウム塩、アンモニウム塩又はアミン塩などをいう。
本発明2の錯化剤(f)としては、エチレンジアミンテトラ酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、ニトリロトリ酢酸、トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、イミノジ酢酸、イミノジプロピオン酸、グルタミン酸、アスパラギン酸が好ましく、エチレンジアミンテトラ酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、ニトリロトリ酢酸、トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、イミノジ酢酸がより好ましい。
【0028】
本発明2は特定の錯化剤を有機酸浴に含有することを特徴とする。有機酸は特には制限されず、具体的には、オキシカルボン酸、有機スルホン酸、カルボン酸などであり、オキシカルボン酸、有機スルホン酸が好ましい(本発明4参照)。
上記オキシカルボン酸としてはグリコール酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸、グルコヘプトン酸などが挙げられ、グリコール酸、クエン酸、グルコン酸、乳酸、リンゴ酸が好ましく、グリコール酸がより好ましい。
上記有機スルホン酸にはアルカンスルホン酸、アルカノールスルホン酸などがあり、排水処理や銅塩の溶解性の点でも優れている。
上記アルカンスルホン酸としては、化学式Cn2n+1SO3H(例えば、n=1〜5)で示されるものが使用でき、具体的には、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1―プロパンスルホン酸、2―プロパンスルホン酸、1―ブタンスルホン酸、2―ブタンスルホン酸、ペンタンスルホン酸などの外、ヘキサンスルホン酸、デカンスルホン酸、ドデカンスルホン酸などが挙げられる。好ましい例は、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1―プロパンスルホン酸、2―プロパンスルホン酸であり、メタンスルホン酸(以下、MSAという)がより好ましい。
【0029】
上記アルカノールスルホン酸としては、化学式Cm2m+1-CH(OH)-Cp2p-SO3H(例えば、m=0〜6、p=1〜5)で示されるものが使用でき、具体的には、2―ヒドロキシエタン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシプロパン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシブタン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシペンタン―1―スルホン酸などの外、1―ヒドロキシプロパン―2―スルホン酸、3―ヒドロキシプロパン―1―スルホン酸、4―ヒドロキシブタン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシヘキサン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシデカン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシドデカン―1―スルホン酸などが挙げられる。好ましい例は、2―ヒドロキシエタン―1―スルホン酸(イセチオン酸)である。
尚、上記有機スルホン酸としては、アルカンスルホン酸、アルカノールスルホン酸を挙げているが、これ以外に芳香族スルホン酸も有効である。
当該芳香族スルホン酸としては、ベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、フェノールスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸などであって、具体的には、1−ナフタレンスルホン酸、2―ナフタレンスルホン酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、p―フェノールスルホン酸、クレゾールスルホン酸、スルホサリチル酸、ニトロベンゼンスルホン酸、スルホ安息香酸、ジフェニルアミン―4―スルホン酸などが挙げられる。
【0030】
上記有機酸はオキシカルボン酸や有機スルホン酸などの夫々を単用又は併用しても良いし、複数種を複用しても良い。例えば、グリコール酸とメタンスルホン酸の混合酸、グリコール酸とイセチオン酸の混合酸をベース酸としても差し支えない。
前述の通り、有機酸又はその塩のメッキ浴に対する含有量は0.1〜12モル/Lが好ましく、0.2〜3.0モル/Lがより好ましい。
有機酸の塩は、オキシカルボン酸のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグムシウム塩、アンモニウム塩又はアミン塩などをいう。
また、本発明2の銅メッキ浴は特定の錯化剤を含有する有機酸浴であるが、本発明7に示すように、錯化剤としてメチオニンを含有するグリコール酸浴が好ましい。尚、本発明2の有機酸浴では、硫酸、ピロリン酸などの無機酸が少量混入することを排除するものではない。
【0031】
本発明8に示すように、本発明の電気銅メッキ浴は、上記基本組成以外に、レベラー、ブライトナー、塩化物などの各種添加剤を含有できることは勿論である。レベラーやブライトナーは銅皮膜に対して光沢作用や平滑化作用を奏する。塩化物はレベラーやブライトナーの光沢作用、平滑化作用を促進する働きがある。
上記レベラーは界面活性剤や染料を主とする窒素系有機化合物などである。
この界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン系界面活性剤、或はアニオン系界面活性剤を単用又は併用できる。
当該ノニオン系界面活性剤の具体例としては、ポリエチレングリコール(以下、PEGという)、ポリプロピレングリコールを初め、C1〜C20アルカノール、フェノール、ナフトール、ビスフェノール類、(ポリ)C1〜C25アルキルフェノール、(ポリ)アリールアルキルフェノール、C1〜C25アルキルナフトール、C1〜C25アルコキシル化リン酸(塩)、ソルビタンエステル、ポリアルキレングリコール、C1〜C22脂肪族アミン、C1〜C22脂肪族アミドなどにエチレンオキシド(EO)及び/又はプロピレンオキシド(PO)を2〜300モル付加縮合させたものや、C1〜C25アルコキシル化リン酸(塩)などが挙げられる。
【0032】
上記エチレンオキシド(EO)及び/又はプロピレンオキシド(PO)を付加縮合させるC1〜C20アルカノールとしては、メタノール、エタノール、n−ブタノール、t−ブタノール、n−ヘキサノール、オクタノール、デカノール、ラウリルアルコール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、ステアリルアルコール、エイコサノール、オレイルアルコール、ドコサノールなどが挙げられる。同じく上記ビスフェノール類としては、ビスフェノールA、ビスフェノールB、ビスフェノールFなどが挙げられる。上記(ポリ)C1〜C25アルキルフェノールとしては、モノ、ジ、若しくはトリアルキル置換フェノール、例えば、p−メチルフェノール、p−ブチルフェノール、p−イソオクチルフェノール、p−ノニルフェノール、p−ヘキシルフェノール、2,4−ジブチルフェノール、2,4,6−トリブチルフェノール、ジノニルフェノール、p−ドデシルフェノール、p−ラウリルフェノール、p−ステアリルフェノールなどが挙げられる。上記アリールアルキルフェノールとしては、2−フェニルイソプロピルフェノール、クミルフェノール、(モノ、ジ又はトリ)スチレン化フェノール、(モノ、ジ又はトリ)ベンジルフェノールなどが挙げられる。上記C1〜C25アルキルナフトールのアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、オクタデシルなどが挙げられ、ナフタレン核の任意の位置にあって良い。上記ポリアルキレングリコールとしては、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン・コポリマーなどが挙げられる。
【0033】
上記C1〜C25アルコキシル化リン酸(塩)は、下記の一般式(a)で表されるものである。
Ra・Rb・(MO)P=O …(a)
(式(a)中、Ra及びRbは同一又は異なるC1〜C25アルキル、但し、一方がHであっても良い。MはH又はアルカリ金属を示す。)
【0034】
上記ソルビタンエステルとしては、モノ、ジ又はトリエステル化した1,4−、1,5−又は3,6−ソルビタン、例えばソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンジステアレート、ソルビタンジオレエート、ソルビタン混合脂肪酸エステルなどが挙げられる。上記C1〜C22脂肪族アミンとしては、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、牛脂アミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミンなどの飽和及び不飽和脂肪酸アミンなどが挙げられる。上記C1〜C22脂肪族アミドとしては、プロピオン酸、酪酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘン酸、ヤシ油脂肪酸、牛脂脂肪酸などのアミドが挙げられる。
【0035】
更に、上記ノニオン系界面活性剤としては、
1N(R2)2→O
(上式中、R1はC5〜C25アルキル又はRCONHR3(R3はC1〜C5アルキレンを示す)、R2は同一又は異なるC1〜C5アルキルを示す。)などで示されるアミンオキシドを用いることができる。
【0036】
上記カチオン系界面活性剤としては、下記の一般式(b)で表される第4級アンモニウム塩
(R1・R2・R3・R4N)+・X- …(b)
(式(b)中、Xはハロゲン、ヒドロキシ、C1〜C5アルカンスルホン酸又は硫酸、R1、R2、R3及びR4は同一又は異なるC1〜C20アルキル、アリール又はベンジルを示す。)或は、下記の一般式(c)で表されるピリジニウム塩などが挙げられる。
6−(C54N−R5)+・X- …(c)
(式(c)中、C54Nはピリジン環、Xはハロゲン、ヒドロキシ、C1〜C5アルカンスルホン酸又は硫酸、R5はC1〜C20アルキル、R6はH又はC1〜C10アルキルを示す。)
【0037】
塩の形態のカチオン系界面活性剤の例としては、ラウリルトリメチルアンモニウム塩、ステアリルトリメチルアンモニウム塩、ラウリルジメチルエチルアンモニウム塩、オクタデシルジメチルエチルアンモニウム塩、ジメチルベンジルラウリルアンモニウム塩、セチルジメチルベンジルアンモニウム塩、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム塩、トリメチルベンジルアンモニウム塩、トリエチルベンジルアンモニウム塩、ジメチルジフェニルアンモニウム塩、ベンジルジメチルフェニルアンモニウム塩、ヘキサデシルピリジニウム塩、ラウリルピリジニウム塩、ドデシルピリジニウム塩、ステアリルアミンアセテート、ラウリルアミンアセテート、オクタデシルアミンアセテートなどが挙げられる。
【0038】
上記アニオン系界面活性剤としては、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、{(モノ、ジ、トリ)アルキル}ナフタレンスルホン酸塩などが挙げられる。アルキル硫酸塩としては、ラウリル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩としては、ポリオキシエチレン(EO5)ノニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(EO15)ドデシルエーテル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩としては、ポリオキシエチレン(EO15)ノニルフェニルエーテル硫酸塩などが挙げられる。アルキルベンゼンスルホン酸塩としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。また、{(モノ、ジ、トリ)アルキル}ナフタレンスルホン酸塩としては、ナフタレンスルホン酸塩、ジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物などが挙げられる。
【0039】
上記両性界面活性剤としては、カルボキシベタイン、イミダゾリンベタイン、スルホベタイン、アミノカルボン酸などが挙げられる。また、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドとアルキルアミン又はジアミンとの縮合生成物の硫酸化、或はスルホン酸化付加物も使用できる。
【0040】
代表的なカルボキシベタイン、或はイミダゾリンベタインは、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ミリスチルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−ウンデシル−1−カルボキシメチル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、2−オクチル−1−カルボキシメチル−1−カルボキシエチルイミダゾリニウムベタインなどが挙げられ、硫酸化及びスルホン酸化付加物としてはエトキシル化アルキルアミンの硫酸付加物、スルホン酸化ラウリル酸誘導体ナトリウム塩などが挙げられる。
【0041】
上記スルホベタインとしては、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアンモニウム−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、N−ココイルメチルタウリンナトリウム、N−パルミトイルメチルタウリンナトリウムなどが挙げられる。アミノカルボン酸としては、ジオクチルアミノエチルグリシン、N−ラウリルアミノプロピオン酸、オクチルジ(アミノエチル)グリシンナトリウム塩などが挙げられる。
【0042】
上記界面活性剤において、好ましいノニオン系界面活性剤としてはPEG、α−ナフトールポリエトキシレート(EO10モル)、エチレンオキシド(EO18モル)とプロピレンオキシド(PO20モル)の共重合体、好ましいカチオン系界面活性剤としてはラウリルトリメチルアンモニウム塩、好ましい両性界面活性剤としてはラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインが挙げられる。
【0043】
上記染料を主とする窒素系有機化合物は、染料或はその誘導体を初め、アミド系化合物、チオアミド系化合物、アニリン又はピリジン環を有する化合物、各種複素単環式化合物、各種縮合複素環式化合物、アミノカルボン酸類などである。
具体例としては、C.I.(Color Index)ベーシックレッド2、トルイジンブルーなどのトルイジン系染料、C.I.ダイレクトイエロー1、C.I.ベーシックブラック2などのアゾ系染料、3−アミノ−6−ジメチルアミノ−2−メチルフェナジン一塩酸などのフェナジン系染料、コハク酸イミド、2′−ビス(2−イミダゾリン)などのイミダゾリン類、イミダゾール類、ベンゾイミダゾール類、インドール類、2−ビニルピリジン、4−アセチルピリジン、4−メルカプト−2−カルボキシルピリジン、2,2′−ビピリジル、フェナントロリンなどのピリジン類、キノリン類、イソキノリン類、アニリン、チオ尿素、ジメチルチオ尿素などのチオ尿素類、3,3′,3′′−ニトリロ三プロピオン酸、ジアミノメチレンアミノ酢酸、グリシン、N−メチルグリシン、ジメチルグリシン、β−アラニン、システイン、グルタミン酸、アスパラギン酸、アミノ吉草酸、オルニチンなどが挙げられる。
好ましい例は、C.I.ベーシックレッド2、ヤーナスグリーンB、トルイジンブルー、コハク酸イミドが挙げられる。
【0044】
前記ブライトナーとしては、チオ尿素又はその誘導体、2−メルカプトベンゾイミダゾール、チオグリコール酸などのメルカプタン類、2,2′−チオジグリコール酸、ジエチルスルフィドなどのスルフィド類、3−メルカプトプロパン−1−スルホン酸ナトリウム、ビス(3−スルホプロピル)ジスルフィド(2ナトリウム塩)(以下、SPSという)などのメルカプトスルホン酸類などが挙げられる。
【0045】
前述の通り、塩化物は上記ブライトナーやレベラーの光沢作用や平滑化作用を促進する働きがあり、塩素イオンを供給可能な化合物を意味する。塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、塩酸、塩化銅などの無機物、第4アルキルアンモニウムクロリド、クロリ酢酸などの塩素系有機化合物が挙げられる。
【0046】
本発明1〜8の電気銅メッキ浴は、均一電着性とビアフィリングの両立に有効性がある。そこで、これらの電気銅メッキ浴を用いて、ビアホール及びスルホールの混在する被メッキ物(基板)に銅メッキする方法を本発明9とした。
銅メッキの条件は任意であり、特段の制限はない。従って、陽極は銅(合金)を材質とする可溶性陽極でも良いし、白金又はカーボンなどを材質とする不溶性陽極でも良い。
一般に、通電時に銅の可溶性陽極を溶解させてメッキ槽に銅イオンを補給すると、銅の表面積が徐々に減少して一定の表面積の保持が困難になり、また、メッキ浴の組成が変動して、電流密度の分布が不均一になるうえ、陽極スライムが発生するなどの問題がある。そこで、メッキ槽に不溶性陽極を配置し、メッキ槽とは別個の補給槽で陽極電解溶出させた銅イオンをメッキ槽に補給可能にすると、陽極の形状変化がなく、メッキ槽の浴管理が容易になるうえ、陽極でのスライムの発生を防止できる利点がある。但し、この補給槽方式で電気メッキを行う場合には、銅メッキ浴に含有されるレベラーやブライトナーなどの添加剤が不溶性陽極で分解され易いため、陽極室をイオン交換膜(アニオン、カチオンを問わない)でメッキ槽から隔離して、上記添加剤が不溶性陽極に移動するのを防止し、電子の移動だけを可能にすることが好ましい。
本発明では、上記可溶性陽極による電気銅メッキ、或は、不溶性陽極と補給槽の組み合わせによる電気銅メッキのいずれの方法も適用できる。
【実施例】
【0047】
以下、本発明の電気銅メッキ浴の実施例、当該メッキ浴を用いたハルセルテストによる均一電着性並びにスルホールでの均一電着性の各評価試験例を順次説明する。
尚、本発明は下記の実施例、試験例に拘束されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意の変形をなし得ることは勿論である。
【0048】
《電気銅メッキ浴の実施例》
実施例1〜13のうち、実施例1〜3は無機酸浴(硫酸浴)に特定の錯化剤を含有する例(本発明1に相当)であり、実施例1と3は特定の脂肪族チオアミノカルボン酸(A)を錯化剤とする含有例、実施例2は特定の脂肪族メルカプトカルボン酸の含有例である。実施例4〜実施例13は有機酸浴に特定の錯化剤を含有する例(本発明2に相当)であり、実施例4〜7は特定の脂肪族チオアミノカルボン酸(a)であるメチオニンを錯化剤とする含有例、実施例8は特定の脂肪族チオアミノカルボン酸(a)であるシステインの含有例、実施例9は特定の脂肪族メルカプトカルボン酸(b)であるメルカプトコハク酸の含有例、実施例10は特定の脂肪族スルフィド類(c)であるチオジグリコールの含有例、実施例11は特定の脂肪族スルフィド類(d)である3,6−ジチアオクタン−1,8−ジオールの含有例、実施例12はチオ尿素(e)の含有例、実施例13は特定のアミノカルボン酸類(f)であるDTPAの含有例である。また、実施例4〜13の有機酸浴において、実施例4〜5と8〜9と13はベース酸がグリコール酸の例、実施例6と12はMSAの例、実施例7と10〜11はイセチオン酸の例である。
一方、比較例1〜7のうち、比較例1は従来公知の硫酸銅浴の(即ち、本発明1の特定錯化剤を初め、いかなる錯化剤も含まない)例である。比較例2は冒述の特許文献1〜3などに準拠して錯化剤にDTPAを含有し、硫酸をベース酸とする銅浴の例である。比較例3は冒述の特許文献9〜10に準拠したチオ尿素を含有し、硫酸をベース酸とする銅浴の例である。比較例4は冒述の特許文献5に準拠したシステインを含有し、硫酸をベース酸とする銅浴の例である。比較例5は冒述の特許文献6に準拠したチオジグリコールを含有し、硫酸をベース酸とする銅浴の例である。比較例6は本発明2の特定錯化剤を初め、いかなる錯化剤も含まず、MSAをベース酸とする銅浴の例である。比較例7は本発明2の特定以外の錯化剤(エタノールアミン;冒述の特許文献1に準拠)を含み、MSAをベース酸とする銅浴の例である。
尚、実施例及び比較例の各銅メッキ浴について、銅塩と酸の夫々の種類と含有量を図1の左半部の欄にまとめた(濃度の単位Mはモル/Lを表す)。
【0049】
先ず、下記に標準組成の電気銅メッキ浴を示す。
[標準組成の電気銅メッキ浴]
可溶性銅塩(Cuイオンとして) 0.8モル/L
酸 0.5モル/L
PEG(平均分子量2000) 10ppm
ヤーナスグリーンB 10ppm
SPS 10ppm
塩化物イオン 10ppm
当該電気メッキ浴のメッキ条件は浴温25℃、陰極電流密度2A/dm2とする。
【0050】
(1)実施例1
上記標準組成のメッキ浴(以下、標準メッキ浴という)を基本として、可溶性銅塩に硫酸銅、酸に硫酸を各々使用するとともに、錯化剤としてメチオニンを1.0モル/L含有させて、電気銅メッキ浴を建浴した。
【0051】
(2)実施例2
上記標準メッキ浴を基本として、可溶性銅塩に硫酸銅、酸に硫酸を各々使用するとともに、錯化剤としてメルカプトコハク酸を1.0モル/L含有させて、電気銅メッキ浴を建浴した。
【0052】
(3)実施例3
上記標準メッキ浴を基本として、可溶性銅塩に硫酸銅(含有量を0.8モル/Lから0.3モル/Lに減量)、酸に硫酸(含有量を0.5モル/Lから1.0モル/Lに増量)を各々使用するとともに、錯化剤としてメチオニンを0.45モル/L含有させて、電気銅メッキ浴を建浴した。
【0053】
(4)実施例4
上記標準メッキ浴を基本として、可溶性銅塩に酸化銅(II)(以下の実施例、比較例も同様に2価の酸化銅)、酸にグリコール酸を各々使用するとともに、錯化剤としてメチオニンを1.0モル/L含有させて、電気銅メッキ浴を建浴した。
【0054】
(5)実施例5
上記標準メッキ浴を基本として、可溶性銅塩に酸化銅(含有量を0.8モル/Lから0.3モル/Lに減量)、酸にグリコール酸(含有量を0.5モル/Lから1.0モル/Lに増量)を各々使用するとともに、錯化剤としてメチオニンを0.45モル/L含有させて、電気銅メッキ浴を建浴した。
【0055】
(6)実施例6
上記標準メッキ浴を基本として、可溶性銅塩に酸化銅、酸にMSAを各々使用するとともに、錯化剤としてメチオニンを1.0モル/L含有させて、電気銅メッキ浴を建浴した。
【0056】
(7)実施例7
上記標準メッキ浴を基本として、可溶性銅塩に酸化銅、酸にイセチオン酸を各々使用するとともに、錯化剤としてメチオニンを1.0モル/L含有させて、電気銅メッキ浴を建浴した。
【0057】
(8)実施例8
上記標準メッキ浴を基本として、可溶性銅塩に酸化銅、酸にグリコール酸を各々使用するとともに、錯化剤としてシステインを1.0モル/L含有させて、電気銅メッキ浴を建浴した。
【0058】
(9)実施例9
上記標準メッキ浴を基本として、可溶性銅塩に酸化銅、酸にグリコール酸を各々使用するとともに、錯化剤としてメルカプトコハク酸を1.0モル/L含有させて、電気銅メッキ浴を建浴した。
【0059】
(10)実施例10
上記標準メッキ浴を基本として、可溶性銅塩に酸化銅、酸にイセチオン酸を各々使用するとともに、錯化剤としてチオジグリコールを1.0モル/L含有させて、電気銅メッキ浴を建浴した。
【0060】
(11)実施例11
上記標準メッキ浴を基本として、可溶性銅塩に酸化銅、酸にイセチオン酸を各々使用するとともに、錯化剤として3,6−ジチアオクタン−1,8−ジオール(以下、DTODという)を1.0モル/L含有させて、電気銅メッキ浴を建浴した。
【0061】
(12)実施例12
上記標準メッキ浴を基本として、可溶性銅塩に酸化銅、酸にMSAを各々使用するとともに、錯化剤としてチオ尿素を1.0モル/L含有させて、電気銅メッキ浴を建浴した。
【0062】
(13)実施例13
上記標準メッキ浴を基本として、可溶性銅塩に酸化銅、酸にグリコール酸を各々使用するとともに、錯化剤としてDTPAを1.0モル/L含有させて、電気銅メッキ浴を建浴した。
【0063】
(14)比較例1
上記標準メッキ浴を基本として、可溶性銅塩に硫酸銅、酸に硫酸を各々使用して、電気銅メッキ浴を建浴した。
【0064】
(15)比較例2
上記標準メッキ浴を基本として、可溶性銅塩に硫酸銅、酸に硫酸を各々使用するとともに、錯化剤としてDTPAを1.0モル/L含有させて、電気銅メッキ浴を建浴した。
【0065】
(16)比較例3
上記標準メッキ浴を基本として、可溶性銅塩に硫酸銅、酸に硫酸を各々使用するとともに、錯化剤としてチオ尿素を1.0モル/L含有させて、電気銅メッキ浴を建浴した。
【0066】
(17)比較例4
上記標準メッキ浴を基本として、可溶性銅塩に硫酸銅、酸に硫酸を各々使用するとともに、錯化剤としてシステインを1.0モル/L含有させて、電気銅メッキ浴を建浴した。
【0067】
(18)比較例5
上記標準メッキ浴を基本として、可溶性銅塩に硫酸銅、酸に硫酸を各々使用するとともに、錯化剤としてチオジグリコールを1.0モル/L含有させて、電気銅メッキ浴を建浴した。
【0068】
(19)比較例6
上記標準メッキ浴を基本として、可溶性銅塩に酸化銅、酸にMSAを各々使用して、電気銅メッキ浴を建浴した。
【0069】
(20)比較例7
上記標準メッキ浴を基本として、可溶性銅塩に酸化銅、酸にMSAを各々使用するとともに、錯化剤としてエタノールアミンを1.0モル/L含有させて、電気銅メッキ浴を建浴した。
【0070】
そこで、上記実施例1〜13及び比較例1〜7の各電気銅メッキ浴を用いてハルセルテストを行い、均一電着性を評価した。
《ハルセルテストによる均一電着性の評価試験例》
即ち、鉄製のハルセル板を用いて、1A−5分−無撹拌の条件で通電しながら銅メッキを行って、高電流端から1.0cm、3.5cm、6.0cm、8.5cmの膜厚を蛍光X線膜厚計により測定し、下記に示すFieldの式に基づいて、異なる2点間の均一電着性の比率T(%)を算出した。異なる2点間の組み合わせは、6.0/8.5→P4.5、3.5/8.5→P10、1.0/8.5→P22とした。
[Fieldの式]
T(%)=100(P−M)/(P−M−2)
T:均一電着性
P:2点間の一次電流分布比
M:2点間のメッキ膜厚の比
(但し、ハルセルの陰極上の一次電流密度の分布は、i=I(5.10−5.24LogL)で表される。i:電流密度(A/dm2)、I:全電流(A)、L:高電流密度側端部からの距離(cm);所定の組み合わせによる2点間の電流密度の比が、夫々の一次電流密度分布比Pの数値(P4.5、P10、P22)となり、当該組み合わせによる測定点のメッキ膜厚の比が夫々Mの数値となる。)
【0071】
図1の右寄り中央の欄は、均一電着性の試験結果をP4.5、P10、P22に分けて示したものである。
理論的に、一次電流分布比Pでは、P4.5<P10<P22の順に数値が良くなり、固定した2点間のP値ごとに均一電着性は評価することができる。下記の評価はP22の項目に該当する実施例と比較例の対比に基づいて行ったが、P4.5、P10でも同様の傾向を示した。
従来公知の硫酸をベース酸とする(錯化剤を含まない)比較例1の均一電着性(P22)は37.7%であり、錯化剤を含まずMSAをベース酸とする比較例6では40.0%であったが、実施例1〜13の均一電着性は44.4〜73.0%(P22)であった。実施例の均一電着性においては、メチオニンを錯化剤とする実施例1、3〜7では、ベース酸の種類を問わず(即ち、無機酸浴と有機酸浴を問わず)、60%前後、或はそれ以上の数値を示し、このうち、酸濃度の高い実施例3(硫酸浴)と実施例5(グリコール酸浴)では高域の数値を示し、特に、実施例5では70%以上を示した。一般の目安として、P22で70%以上はきわめて優れた数値である。
従って、ベース酸の種類を問わず、本発明の特定の錯化剤を含有する銅メッキ浴、或は、有機酸をベース酸として特定の錯化剤を含有する銅メッキ浴は、均一電着性の点で錯化剤を含まない比較例1又は6に対して顕著な優位性を示した。
【0072】
従来の硫酸銅浴に冒述の特許文献に準拠したDTPA、チオ尿素、システイン、或はチオジグリコールを含有した比較例2〜5の均一電着性は33.8〜38.8%にとどまり、錯化剤を含まない従来の硫酸銅浴(比較例1)の均一電着性(37.7%)と大差はないか、逆に低い数値を示した。
これに対して、硫酸銅浴に錯化剤としてメチオニン又はメルカプトコハク酸を含有する実施例1〜3では、均一電着性は高い数値(50.1〜63.1%)を示し、特に、メチオニンを含有する実施例1と3では、60%前後の優れた数値を示した。また、錯化剤としてメチオニンを含み、ベース酸をグリコール酸、MSA、イセチオン酸などの有機酸とする実施例4〜7でも、均一電着性は60%前後、或はそれ以上の数値を示した。
これにより、従来の硫酸銅浴を初め、無機酸をベース酸とする電気銅メッキ浴にあっては、均一電着性の面で優れた効果を発揮するには、メチオニンやメルカプトコハク酸などの特定の錯化剤を選択的に含有することが重要であり、DTPA、チオ尿素、システイン、或はチオジグリコールなどの特定以外の錯化剤では効果が期待できないことが確認できた。
また、メチオニンやメルカプトコハク酸などの特定の錯化剤を含有すると、無機酸のみならず、有機酸をベース酸とする銅メッキ浴にあっても、優れた均一電着性を発揮する(即ち、ベース酸の種類を問わない)ことが確認できた。
【0073】
次いで、有機酸の銅浴について詳述する。上述の通り、メチオニンやメルカプトコハク酸、或は、DTODなどの特定の錯化剤を含有する有機酸浴(実施例3〜7、9、11)は、優れた均一電着性を示した。
一方、従来の硫酸銅浴に含有しても均一電着性の改善が見られなかった冒述の特許文献に開示された錯化剤(システイン、チオ尿素など)について検討すると、硫酸銅浴にシステインを含有した比較例4に対して、グリコール酸の銅浴にシステインを含有した実施例8は、均一電着性において顕著な改善が見られ(36.7%→57.2%)、また、硫酸銅浴にチオジグリコール酸を含有した比較例5に対して、イセチオン酸の銅浴にチオジグリコールを含有した実施例10でも、明白な改善が見られた(38.8%→47.0%)。さらに、DTPAを含有する硫酸銅浴(比較例2)と有機酸浴(実施例13)、或は、チオ尿素を含有する硫酸銅浴(比較例3)と有機酸浴(実施例12)を対比しても、同様に、均一電着性の面で有機酸浴は無機酸浴(硫酸銅浴)に対して明らかな優位性が見られた。 このように、無機酸浴への含有では、均一電着性の改善効果が期待できないシステイン、チオ尿素、DTPAなどの錯化剤にあっても、有機酸浴に添加することで(即ち、有機酸浴と組み合わせることで)、均一電着性を有効に改善できること、従って、当該改善の有効性を担保できる錯化剤の範囲(種類)は、有機酸浴と組み合わせる方が無機酸浴との組み合わせより広いことが確認できた。換言すると、有機酸浴にあっては、含有するべき錯化剤を多様な種類に広げても、メッキ浴から得られる銅皮膜の均一電着性を有効に改善できるのである。
【0074】
そこで、実施例1〜13の均一電着性を詳細に評価する。
酸濃度と錯化剤濃度が同じであり、共にグリコール酸浴である実施例4(メチオニン含有)と実施例8(システイン含有)を対比すると、メチオニンの含有浴(実施例4)の方が均一電着性で高い数値を示し、また、MSA浴で共通する実施例6(メチオニン含有)と実施例12(チオ尿素含有)との対比でも、同様の傾向を示した。
即ち、錯化剤にメチオニンを選択すると、有機酸浴、無機酸浴を問わず、総じて均一電着性の評価に優れていた。また、酸の種類が異なるが、酸濃度と錯化剤濃度が同じで、共にメチオニンを含有する実施例1、4、6〜7を対比すると、グリコール酸をベース酸とする浴(実施例4)が均一電着性で最も高い数値を示したことから、メチオニンにグリコール酸を組み合わせると均一電着性をより良く改善できることが確認できた。
さらに、メチオニンを含有する実施例5(グリコール酸浴)と実施例3(硫酸をベース酸とする浴)は、共にハイスロー浴と呼ばれる酸濃度の高い浴であるが、これらの均一電着性の評価は実施例5では73.0%、実施例3でも63.1%であって、きわめて高い数値を示した。従って、酸濃度が増すと、均一電着性が向上するものと推定できる。
一方、メルカプトコハク酸やシステインを含有する実施例9と8では、均一電着性の面でメチオニンの含有浴に準じた評価であり、DTOD、DTPA、チオジグリコール、チオ尿素などの錯化剤を含有する浴でも、比較例に比して明白な均一電着性の改善が認められた。例えば、共にMSAをベース酸とする実施例12(チオ尿素含有)と比較例7(エタノールアミン含有)を対比すると(酸濃度と錯化剤濃度も同じ)、本発明に示す通り、錯化剤の種類の特定化(即ち、エタノールアミンなどではなく、チオ尿素などへの特定化)が均一電着性の向上に重要であることが裏付けられる。
【0075】
《スルホールでの均一電着性評価試験例》
スルホール径0.4mm、板厚2.0mmのガラス・エポキシ系基板に、常法に従ってPd触媒活性を施し、薄付け無電解銅メッキを行ったものを試験片に用いた。
上記実施例1〜13及び比較例1〜7の各銅メッキ浴を用いて当該試験片に電気メッキした後、スルホールの中心を軸心方向に切断し、スルホール端部のメッキ厚さ(T1)と、スルホール中央部のメッキ厚さ(T2)を顕微鏡で測定し、下式により均一電着性T(%)を算出した。
T(%)=(T2/T1)×100
尚、電気銅メッキの条件は、前述の標準メッキ浴の欄で示した条件とした。
【0076】
図1の右から2欄目はその試験結果である。
比較例1〜7のスルホールでの均一電着性は76〜81%であるが、実施例1〜13では90%以上の数値であり、比較例に対して顕著な優位性を示した。
一般に、スルホールでの均一電着性の評価では、酸濃度の高いハイスロー浴で90%程度、一般浴で70〜80%程度が目安となるが、無機酸浴にメチオニン又はメルカプトコハク酸よりなる特定の錯化剤を含有し、或は、有機酸浴にメチオニン、メルカプトコハク酸、DTOD、チオ尿素などの特定錯化剤(対無機酸浴の錯化剤より多様)を含有する実施例では、すべて90%以上の数値を達成したことから、スルホールでの均一電着性に優れることが確認できた。このうち、メチオニンを錯化剤とする有機酸(グリコール酸、MSA、イセチオン酸)の浴、或は、メルカプトコハク酸やシステインを錯化剤とするグリコール酸浴の実施例では、共に95%以上の数値を示し、スルホールでの均一電着性に特に優れることが確認できた。
また、実施例1と3、実施例4と5は、共に錯化剤(メチオニン)と酸の種類が同じで、酸濃度が異なる例(0.5モル/L→1.0モル/L)であるが、これらの対比から、酸濃度の高いハイスロー浴では、当然ながら均一電着性が向上することが確認できる。
以上のように、本発明の特定錯化剤を含有する無機酸又は有機酸の銅メッキ浴では、従来公知の硫酸銅浴や特定錯化剤を含まない有機酸の銅浴に比べて顕著な均一電着性、特に、スルホールでの均一電着性に優れることが確認できた。
【0077】
そこで、今度は、上記スルホールを有する基板に代えて、本発明の銅メッキ浴(例えば、実施例4)をビアホールを有する基板に適用したところ、良好なビアフィリング能力があることが確認できた。従って、本発明の銅メッキ浴をビアホールとスルホールが混在する基板に適用した場合、ビアホールでの銅充填とスルホールでの均一電着性を同時に達成できることが期待できる。尚、前述の通り、ビアフィリングはメカニズム的に均一電着性とは別ものであり、優れた均一電着性を示す一方で、良好なビアフィリング能力を示す理由は現時点では不明である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】実施例1〜13及び比較例1〜7の各電気銅メッキ浴の組成、当該メッキ浴を用いたハルセルテストによる均一電着性並びにスルホールでの均一電着性の夫々の評価試験の結果を示す図表である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可溶性銅塩、ベース酸及び錯化剤を含有する電気銅メッキ浴において、
上記錯化剤が下記の化合物(A)〜(E)の少なくとも一種
(A)メチオニン、エチオニン、シスチン、N−アセチルシステインよりなる群から選ばれた脂肪族チオアミノカルボン酸又はその塩
(B)メルカプトイソ酪酸、メルカプト酢酸、ジメルカプト酢酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、メルカプトコハク酸、2,3−ジメルカプトコハク酸よりなる群から選ばれた脂肪族メルカプトカルボン酸又はその塩
(C)次の一般式(1)で表されるスルフィド類
Ra−(A)j−S−(B)k−Rb …(1)
(式(1)中、j及びkは1〜100の整数である;A及びBは同一又は異なっても良く、夫々メチレン、エチレン、1,3−プロピレン、1,2−プロピレン、1,4−ブチレン、1,2−ブチレン、1,3−ブチレン、又はこれらC2〜C4のオキシアルキレンである;Ra及びRbは同一又は異なっても良く、夫々H(但し、AとBが共にメチレン、C2〜C4アルキレンの場合には、RaとRbのどちらか一方はHでない。また、AとBが共にC2〜C4オキシアルキレンの場合、jとkが共に1のときには、RaとRbは共にHではない。)、OH、NH2、CO2M、SO3M、ピリジル基又はアミノフェニル基である;Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、アミンである)
(D)次の一般式(2)で表されるスルフィド類
Ra−S−(CH2CH2−S)n−Rb …(2)
(式(2)中、nは1〜3の整数である;Ra及びRbは同一又は異なっても良く、夫々−(CH2)m−Rcである;mは0又は1〜5の整数である;Rcはmが0の場合はピリジル基又はアミノフェニル基であり、mが1〜5の整数の場合はOH、NH2、CO2M、SO3M、ピリジル基又はアミノフェニル基であり;Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、アミンである)
(E)次の一般式(3)で表されるチオ尿素誘導体
Rd−NH−C(=S)−NH−Re …(3)
(式(3)中、Rd及びReは同一又は異なっても良く、夫々−(CH2)p−Rfである;pは〜5の整数である;Rfはピリジル基である)
であることを特徴とする電気銅メッキ浴。
【請求項2】
可溶性銅塩、ベース酸及び錯化剤を含有する電気銅メッキ浴において、
ベース酸が有機酸又はその塩であり、且つ、上記錯化剤が下記の化合物(a)〜(f)の少なくとも一種(但し、ベース酸が酒石酸、クエン酸又はその塩の場合、錯化剤は化合物(a)〜(e)であるか、エチレンジアミンテトラ酢酸を除いた化合物(f)である)
(a)メチオニン、エチオニン、シスチン、N−アセチルシステイン、システインよりなる群から選ばれた脂肪族チオアミノカルボン酸又はその塩
(b)メルカプトイソ酪酸、メルカプト酢酸、ジメルカプト酢酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、メルカプトコハク酸、2,3−ジメルカプトコハク酸よりなる群から選ばれた脂肪族メルカプトカルボン酸又はその塩
(c)次の一般式(1)で表されるスルフィド類
Ra−(A)j−S−(B)k−Rb …(1)
(式(1)中、j及びkは1〜100の整数である;A及びBは同一又は異なっても良く、夫々メチレン、エチレン、1,3−プロピレン、1,2−プロピレン、1,4−ブチレン、1,2−ブチレン、1,3−ブチレン、又はこれらC2〜C4のオキシアルキレンである;Ra及びRbは同一又は異なっても良く、夫々H(但し、AとBが共にメチレン、C2〜C4アルキレンの場合にはRaとRbのどちらか一方はHでない)、OH、NH2、CO2M、SO3M、ピリジル基又はアミノフェニル基である;Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、アミンである)
(d)次の一般式(2)で表されるスルフィド類
Ra−S−(CH2CH2−S)n−Rb …(2)
(式(2)中、nは1〜3の整数である;Ra及びRbは同一又は異なっても良く、夫々−(CH2)m−Rcである;mは0又は1〜5の整数である;Rcはmが0の場合はピリジル基又はアミノフェニル基であり、mが1〜5の整数の場合はOH、NH2、CO2M、SO3M、ピリジル基又はアミノフェニル基であり;Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、アミンである)
(e)チオ尿素、チオ尿素誘導体の少なくとも一種
(f)ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、N,N−ジカルボキシメチル−L−グルタミン酸、エチレンジアミンテトラ酢酸、ニトリロトリ酢酸、グルタミン酸、N,N−ジカルボキシメチル−L−アスパラギン酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、イミノジ酢酸、イミノジプロピオン酸、アスパラギン酸、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、ホスホノブタントリカルボン酸、ヒドロキシエチルアミノジメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸、N,N−ジカルボキシメチル−L−アラニン、1,3−プロパンジアミンテトラ酢酸、グリコールエーテルジアミンテトラ酢酸、エチレンジアミンジコハク酸、アラニン、ヒドロキシエチルイミノジ酢酸、グリシン、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパンテトラ酢酸、オルニチン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシンよりなる群から選ばれたアミノカルボン酸、アミノホスホン酸、ホスホン酸、ホスホノカルボン酸又はこれらの塩の少なくとも一種
であることを特徴とする電気銅メッキ浴。
【請求項3】
錯化剤がメチオニンであることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気銅メッキ浴。
【請求項4】
有機酸がオキシカルボン酸、有機スルホン酸であることを特徴とする請求項2又は3に記載の電気銅メッキ浴。
【請求項5】
オキシカルボン酸がグリコール酸であることを特徴とする請求項4に記載の電気銅メッキ浴。
【請求項6】
有機スルホン酸がメタンスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸であることを特徴とする請求項4に記載の電気銅メッキ浴。
【請求項7】
錯化剤がメチオニンであり、有機酸がグリコール酸であることを特徴とする請求項2に記載の電気銅メッキ浴。
【請求項8】
さらに、レベラー、ブライトナーなどの添加剤を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の電気銅メッキ浴。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の電気銅メッキ浴を用いて、ビアホール及びスルホールの混在する被メッキ物に銅メッキ皮膜を形成することを特徴とする電気銅メッキ方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−265632(P2006−265632A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−85573(P2005−85573)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(000197975)石原薬品株式会社 (83)
【Fターム(参考)】