説明

電気錠システム

【課題】 システムが稼働中であっても既設のラックのセキュリティを高めることができる電気錠システムを提供する。
【解決手段】 ラック11に、電気錠21及び電気錠制御装置22を貼着して固定し、電気錠制御装置22を、ネットワーク81を介して電気錠管理装置83に接続する。電気錠管理装置83は、電気錠制御装置22との通信機能を備え、電気錠管理装置83は、電気錠制御装置22に対して制御信号を送信し、かつ電気錠制御装置83から各種状態を取得する。電気錠21は、電気錠管理装置83からの信号に従ってラック11の扉12の解放を阻止する施錠状態と、扉12の開放を許容する解錠状態とを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設のラックに電気錠を設ける電気錠システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、データセンタには、複数のサーバコンピュータが設けられており、各サーバコンピュータは、ラック内に収容されている。
【0003】
各ラックの開口部は扉で閉鎖されており、この扉を開閉することで、保守点検等を行えるように構成されている。
【0004】
これらのラックに最新式の電気錠を設置してセキュリティを高める場合には、扉を加工したり、交換したり、あるいはラック自体を入れ替えていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このようなラックにあっては、扉の加工や交換又はラックの入れ替えが必要なため、大規模な工事及び多大な費用が発生してしまう。
【0006】
また、稼働中のデータセンタでは、切粉が発生する作業はできないという問題があった。
【0007】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、システムが稼働中であっても既設のラックのセキュリティを高めることができる電気錠システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために本発明の施錠システムにおいては、電子機器を収容したラックの外表面に貼着して固定され、当該ラックの開口部を開閉する扉の解放を阻止する施錠状態、及び前記扉の開放を許容する解錠状態を選択的に形成する電気錠と、該電気錠にネットワークを介して通信可能に接続される電気錠管理装置とからなる電気錠システムであって、前記電気錠管理装置は、入力に応じて前記ネットワークに接続された前記電気錠に対して当該電気錠を前記施錠状態にする為の施錠信号を出力する施錠信号出力手段と、入力に応じて前記ネットワークに接続された前記電気錠に対して当該電気錠を前記解錠状態にする為の解錠信号を出力する解錠信号出力手段とを備え、前記電気錠は、前記電気錠管理装置から前記施錠信号を受けた際に前記施錠状態を形成する施錠状態形成手段と、前記電気錠管理装置から前記解錠信号を受けた際に前記解錠状態を形成する解錠状態形成手段とを備えている。
【0009】
すなわち、データセンタにおいてシステムが稼働中のラックのセキュリティを向上する際には、このラックの外表面に電気錠を貼着して固定し、当該電気錠を、ネットワークを介して電気錠管理装置と通信可能に接続する。
【0010】
そして、この電気錠によって当該ラックの扉の解放を阻止する際には、前記電気錠管理装置へ入力操作し、この入力に応じて前記電気錠に対して施錠信号を出力する。すると、この施錠信号を受けた電気錠では、扉の解放を阻止する施錠状態が形成され、当該扉の開放が阻止される。
【0011】
一方、前記電気錠によって当該ラックの扉の解放を許容する際には、前記電気錠管理装置へ入力操作し、この入力に応じて前記電気錠に対して解錠信号を出力する。すると、この解錠信号を受けた電気錠では、扉の開放を許容する解錠状態が形成され、当該扉の開放が許容される。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように本発明の施錠システムにあっては、ラック内部のシステムが稼働中であっても、ラックの外表面に電気錠を貼着して固定するだけで、電気錠を新設することができる。
【0013】
このため、既設のラックの扉を加工したり交換したり、又は当該ラックを入れ替えるなどの大規模な工事を行うことなく、電気錠の設置が可能となる。これにより、電気錠の導入コストを大幅に抑えることができる。
【0014】
また、前記電気錠は、ラックの外表面に貼着して固定される。このため、扉や筐体に加工を施す際に切粉が発生する恐れがある場合と比較して、システム稼働中であっても、既設のラックに電気錠を設けてセキュリティを高めることができる。
【0015】
そして、この電気錠を複数のラックに設けた場合には、各ラックでの施錠解錠制御を、電気錠管理装置にて一括管理することができる。このため、各ラックに機械式の施錠装置を設けて管理する場合と比較して、複数の鍵を管理しなければならないといった不具合も解消することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(第1の実施の形態)
【0017】
以下、本発明の第1の実施の形態を図面に従って説明する。図1は、本実施の形態にかかる電気錠システム1を示す図であり、サーバーコンピュータが集中配置されたデータセンタでの採用例が示されている。
【0018】
すなわち、データセンタでは、各社で使用する複数のサーバコンピュータが管理されており、各サーバコンピュータは、ラック11,・・・内に収容されている。各ラック11,・・・の前面には、保守点検用の開口部が設けられており、この開口部は、扉12によって開閉自在に閉鎖されている。
【0019】
前記各ラック11,・・・には、対を成す電気錠21及び電気錠制御装置22が貼着されて固定されており、前記電気錠21は、前記電気錠制御装置22からの制御信号に従って、当該ラック11の前記扉12の解放を阻止した施錠状態と、前記扉12の開放を許容する解錠状態とを選択的に形成できるように構成されている。
【0020】
図2は、前記電気錠21を示す図であり、該電気錠21は、前記筐体31の天面32に固定される筐体側構成部33と、前記扉12側に固定される扉側構成部34とによって構成されている。前記筐体側構成部33は、クランク状に屈曲されたベース板35を備えており、該ベース板35の奥側には、前記筐体31の天面32に固定される固定部36が設定されている。該固定部36は、接着剤37によって前記天面32に固定されるように構成されており、硬化時には、コンクリートのように固化する接着剤37が使用されている。
【0021】
前記ベース板35の手前側には、前記固定部36より肉厚分一段高く、固定時に前記扉12の上部に延出する延出部41が設定されている。この延出部41には、前記電気錠制御装置22からの制御信号に従って作動するロック機構42が固定されており、該ロック機構42の端面43からは、進退駆動されるロックバー44が延出している。これにより、このロック機構42は、前記電気錠制御装置22からの制御信号に従って前記ロックバー44を延出して突出させた状態と、突出したロックバー44をボタン操作45に基づいて後退させた状態とを形成できるように構成されている。
【0022】
また、前記扉側構成部34は、金属板がL字状に屈曲されたアングル材51を備えており、該アングル材51には、前記扉12の上端面52に沿って延在する垂設面53と、該垂設面53より垂下した垂下面54とが形成されている。このアングル材51は、前記垂下面54が前述の接着剤37によって前記扉12の前面55に貼着された状態で固定されており、前記垂設面53には、固定ブロック56が固定されている。
【0023】
該固定ブロック56は、前記垂設面53に固定された固定面61と、該固定面61より起立した起立部62とからなり、該起立部62は、図3に示すように、当該扉12を閉鎖した状態で、前記筐体側構成部33の前記ロック機構42の前記端面43側部に配置されるように構成されている。この起立部62には、前記ロックバー44が挿入されるロック穴が設けられている(図示省略)。
【0024】
これにより、図3の(b)に示すように、前記扉12を閉鎖した状態において、前記電気錠制御装置22からの制御信号によって前記ロックバー44を延出して突出させた際には、該ロックバー44が前記固定ブロック62の前記ロック穴に挿入され前記扉12の開放を阻止する施錠状態を形成できるように構成されている。また、前記電気錠制御装置22からの制御信号によって突出したロックバー44の後退を許容し、かつボタン45操作によりロックバー44を後退させた際には、該ロックバー44が前記固定ブロック62の前記ロック穴から抜けて前記扉12の開放を許容する解錠状態を形成できるように構成されている。
【0025】
また、前記ロック機構42には、発光ダイオード71が設けられており、該発光ダイオード71は、前記解錠状態で発光するように構成されている。これにより、通路等からの目視によって施錠状態を確認できるように構成されており、こじ開けの発見時間の短縮化や少人数による大量ラックの状態監視が容易に行えるように構成されている。
【0026】
前記電気錠制御装置22は、図1に示したように、ネットワーク81(LAN(local area network)やWAN(wide area network))を介して、監視室82に設けられた電気錠管理装置83に接続されている。ここで、この電気錠管理装置83は構内のみならず、他のビル内に設置しても良く、この場合には、WANで構成されたインターネットを利用して電気錠制御装置22と通信できるように構成する。
【0027】
この電気錠管理装置83は、パーソナルコンピュータ(PC)によって構成されており、当該パーソナルコンピュータにて前記電子錠21を遠隔・集中管理するソフトウエアを実行することで、前記電気錠管理装置83を構成している。この電気錠管理装置83を構成するパーソナルコンピュータは、前記各電気錠制御装置22,・・・と通信する機能を備えており、各電気錠制御装置22,・・・は、前記電気錠管理装置83と通信する機能を備えている。これにより、該電気錠管理装置83は各電気錠制御装置22,・・・に対して制御信号を送信できるように構成されているとともに、各電気錠制御装置83から各種状態を取得できるように構成されている。
【0028】
図4は、当該電気錠システム1の動作を示すフローチャートであり、監視室82の電気錠管理装置83のキーボート83aやマウス83bを利用して予めユーザに付与されたユーザIDが入力されるとともに(S1)、パスワードが入力され(S2)、その認証がとれた際には、操作する電気錠21の選択を促す(S3)。
【0029】
このとき、選択された電気錠21が施錠状態の場合には、解錠許可を出すと判断し(S4)、この電気錠21を解錠状態にする為の解錠信号を、ネットワーク81を介して解錠対象となる電気錠21と対を成す電気錠制御装置22に対して送信し、前記電気錠21がボタン45操作によって解錠状態を形成できる状態とする(S5)。
【0030】
当該電気錠21が設けられたラック11において、前記電気錠21のボタン45操作により鍵が開けられ扉12が解放された際には(S6)、当該電気錠21は、前記電気錠制御装置22及び前記ネットワーク81を介して、前記電気錠管理装置83へ扉12が解放されたこをと通知する(S7)。すると、電気錠管理装置83のモニタ83cに示された当該ラック11の扉12の表示が、解放されたことを示す表示に変化する(S8)。
【0031】
また、前記ステップS4において、選択された電気錠21が解錠状態の場合には、施錠信号を出すと判断し、この電気錠21を施錠状態にする為の施錠信号を、ネットワーク81を介して施錠対象となる電気錠21と対を成す電気錠制御装置22に対して送信し、当該電気錠21を施錠状態とする。このとき、扉12が閉鎖されたか否かを判断し(S9)、扉12が閉鎖されていた場合には、当該電気錠21は、前記電気錠制御装置22及び前記ネットワーク81を介して、前記電気錠管理装置83へ扉12が閉鎖されたこをと通知し、電気錠管理装置83のモニタ83cに示された当該ラック11の扉12の表示を、閉鎖されたことを示す表示に変化する(S10)。
【0032】
また、前記ステップS9において、扉12が解放されていた場合には、当該電気錠21は、前記電気錠制御装置22及び前記ネットワーク81を介して、前記電気錠管理装置83へ扉12が解放されていることを通知し、電気錠管理装置83のモニタ83cに示された当該ラック11の扉12の表示を、扉12がこじ開けられたことを示す表示に変化する(S11)。そして、一旦解錠信号を前記電気錠21に送信して当該扉12が閉鎖されるまで待機状態にした後(S12)、前記ステップS4へ移行して施錠動作を行う。
【0033】
以上の構成において、稼働中のサーバ装置が収容されたラック11のセキュリティを向上する際には、このラック11の筐体31及び扉12に電気錠21及び電気錠制御装置22を接着剤37で貼着して固定し、当該電気錠21を、前記電気錠制御装置22及びネットワーク81を介して電気錠管理装置83と通信可能に接続する。これにより、前述したように前記電気錠管理装置83から前記各ラック11,・・・の施錠及び解錠を制御することができる。
【0034】
このように、ラック11内のサーバコンピュータが稼働中であっても、ラック11の外表面に電気錠21を貼着して固定するだけで、電気錠21を新設することができる。このため、既設のラック11の扉12を加工したり、交換したり、又は当該ラック11を入れ替えるなどの大規模な工事を行うことなく、電気錠21の設置が可能となる。これにより、電気錠21の導入コストを大幅に抑えることができる。
【0035】
また、前記電気錠21は、ラック11に貼着して固定されるため、扉12や筐体31に加工を施す際に切粉が発生する恐れがある場合と比較して、システム稼働中であっても、既設のラック11に電気錠21を設けてセキュリティを高めることができる。
【0036】
そして、この電気錠21を複数のラック11,・・・に設けことによって、各ラック11,・・・での施錠解錠制御を、電気錠管理装置83にて一括管理することができる。このため、各ラック11,・・・に機械式の施錠装置を設けて管理する場合と比較して、複数の鍵を管理しなければならないといった不具合も解消することができる。
【0037】
(第2の実施の形態)
【0038】
図5は第2の実施の形態を示す図であり、第1の実施の形態と、各扉12,・・・に非接触カードリーダやテンキー等の入力装置101,・・・が設けられている点で異なっている。
【0039】
この入力装置101は、前記電気錠制御装置22に接続されており、カードを近づける、又は暗証番号を入力することによって、前記電気錠21を解錠することができる。
【0040】
(第3の実施の形態)
【0041】
図6は第3の実施の形態を示す図であり、第1の実施の形態と異なる点としては、各ラック11,・・・の近傍に、タッチパネル式電気錠管理装置111が設けられている。
【0042】
このタッチパネル式電気錠管理装置111は、前記ネットワーク81に接続されており、当該タッチパネル式電気錠管理装置111においても、ユーザIDとパスワードを入力することで、いずれかの電気錠21を施錠及び解錠制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示すブロック図である。
【図2】同実施の形態の電気錠の取り付け状態を示す説明図である。
【図3】(a)は同実施の形態の電気錠の筐体側構成部と扉側構成部との関係を示す図であり、(b)は、その動作を示す説明図である。
【図4】同実施の形態の動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第2の実施の形態を示すブロック図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0044】
1 電気錠システム
11 ラック
12 扉
21 電気錠
81 ネットワーク
83 電気錠管理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器を収容したラックの外表面に貼着して固定され、当該ラックの開口部を開閉する扉の解放を阻止する施錠状態、及び前記扉の開放を許容する解錠状態を選択的に形成する電気錠と、該電気錠にネットワークを介して通信可能に接続される電気錠管理装置とからなる電気錠システムであって、
前記電気錠管理装置は、
入力に応じて前記ネットワークに接続された前記電気錠に対して当該電気錠を前記施錠状態にする為の施錠信号を出力する施錠信号出力手段と、
入力に応じて前記ネットワークに接続された前記電気錠に対して当該電気錠を前記解錠状態にする為の解錠信号を出力する解錠信号出力手段とを備え、
前記電気錠は、
前記電気錠管理装置から前記施錠信号を受けた際に前記施錠状態を形成する施錠状態形成手段と、
前記電気錠管理装置から前記解錠信号を受けた際に前記解錠状態を形成する解錠状態形成手段とを備えた
ことを特徴とする電気錠システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−9330(P2006−9330A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−185742(P2004−185742)
【出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(000210964)中央電子株式会社 (81)
【Fターム(参考)】