説明

電池の外装体構造

【課題】 金属端子と外装体のアルミニウム等の金属箔とが接触して短絡することがない電池の外装体構造を提供することである。
【解決手段】 少なくとも第1熱接着性樹脂層と、金属箔層と、化成処理層と、接着層と、第2熱接着性樹脂層とが順に積層された包装材からなる蓋体と、前記包装材を前記第2熱接着性樹脂層が凹部側に位置するようにプレス成形して周縁にフランジ部を有する成形容器本体とからなり、前記成形容器本体内に電池要素を収納すると共にこれに接続された金属端子を前記フランジ部から外側に突出させ、開口部を前記蓋体で被覆すると共に前記フランジ部で熱接着して密封した電池をインサート成形法にて射出成形して前記フランジ部の少なくとも前記金属箔層が表出する周縁端面に射出成形樹脂層を形成したことを特徴とする電池の外装体構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池に関し、特に電解質(液体や固体電解質)を有するリチウム電池の外装体構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウム電池とは、リチウム二次電池ともいわれ、電解質として固体高分子、ゲル状高分子、液体などからなり、リチウムイオンの移動で起電する電池であって、正極・負極活物質が高分子ポリマーからなるものを含むものである。リチウム二次電池の構成は、正極集電材(アルミニウム)/正極活性物質層(金属酸化物、カーボンブラック、金属硫化物、電解液、ポリアクリロニトリル等の高分子正極材料)/電解質(プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、炭酸ジメチル、エチレンメチルカーボネート等のカーボネート系電解液、リチウム塩からなる無機固体電解質、ゲル電解質)/負極活性物質層(リチウム金属、合金、カーボン、電解液、ポリアクリロニトリルなどの高分子負極材料)/負極集電材(銅)からなる電池要素およびこの電池要素を包装する外装体等からなる。リチウム二次電池は、その高い体積効率、重量効率から電子機器、電子部品、特に携帯電話、ノート型パソコン、ビデオカメラなどに広く用いられている。
【0003】
前記リチウム電池の外装体としては、金属端子の取出し易さや密封のし易さ、あるいは、柔軟性を有するために電子機器や電子部品の適当な空間に合わせた形状とすることができ、電子機器や電子部品自体の形状をある程度自由に設計することができるために、小型化、軽量化を図り易い等の理由から、プラスチックフィルムやアルミニウム等の金属箔を積層した包装材からなる外装体が用いられるようになってきた。
【0004】
そして、前記包装材には、リチウム電池として求められる物性、すなわち、防湿性、密封性、耐突刺し性、絶縁性、耐熱・耐寒性、耐電解質性(耐電解液性)、耐腐蝕性(電解質の劣化や加水分解により発生するフッ酸に対する耐性)等が必要不可欠なものとして求められるために、前記包装材としては耐突刺し性や外部との通電を阻止するための基材層、防湿性を確保するためのアルミニウム等の金属箔からなるバリアー層、金属端子との接着性に優れると共に密封性を確保するための内層で構成される積層体が一般的には用いられる。
【0005】
外装体として包装材を用いたリチウム電池の形態としては、包装材を筒状に加工し、電池要素および正極および負極との各々に接続された金属端子を外側に突出した状態で収納し、開口部を熱接着して密封した袋タイプ(たとえば、特許文献1参照)と包装材を容器状に成形し、この容器内に電池要素および正極および負極との各々に接続された金属端子を外側に突出した状態で収納し、平板状の包装材ないし容器状の成形した包装材で被覆すると共に四周縁を熱接着して密封した成形タイプ(たとえば、特許文献2参照)が知られている。
【0006】
上記したいずれの形態のリチウム電池においても、リチウム電池本体を包装材で密封する際に、リチウム電池本体の正極および負極の各々に接続された金属端子を外部に突出させると共に包装材で前記金属端子を挟持した状態で熱接着することにより密封する必要がある。このために、前記包装材の内層を金属と良好な接着性を有する熱接着性樹脂、たとえば、不飽和カルボン酸でグラフト変性した酸変性オレフィン樹脂を用いて熱接着して密封する、あるいは、前記内層を金属との接着性に劣る一般的なオレフィン系樹脂(炭素と水素とからなる直鎖状あるいは分枝鎖状のオレフィン系樹脂)を用い、金属と良好な接着性を有する上記した酸変性オレフィン樹脂からなる金属端子部密封用接着性フィルムを前記金属端子と前記内層との間に介在させて熱接着して密封する方法が一般的に採られている。
【0007】
そして、特許文献1に記載された袋タイプからなる二次電池に比べて特許文献2に記載された成形タイプの二次電池は、電池要素等をタイト(ぴったりとした状態)に収納することができるために、体積エネルギー密度を向上させることができるという利点があると共に電池要素等の収納がし易いなどの利点があり、成形タイプが主流となっている。
【0008】
ところで、上記した包装材からなる外装体で密封された二次電池は、たとえば、携帯電話等の機器に実装する際に、よりコンパクトに機器内に収納するために金属端子を外装体側へ折り曲げて実装される場合などに、外装体を構成するアルミニウム等の金属箔からなるバリアー層と金属端子とが接触し、電池が短絡する虞があった。
【0009】
このような短絡を防止する一つの技術として、外装体と金属端子との接合部において、外装体を構成する包装材を外側に折返した状態で熱接着するものがある(たとえば、特許文献1参照)。この特許文献1に開示された技術は、確かに短絡を確実に防止することができるものであるが、包装材を折返す工程は結構煩雑であると共に、機械化するにしても新規ラインを導入するなり既存ラインに増設するなりする必要があり、それだけコスト高になることは避けられないものである。
【0010】
また、短絡を防止する他の技術として、包装材と金属端子との接合部において、金属端子の少なくとも熱接着する部分を無水マレイン酸変性ポリプロピレンで被覆するものがある(たとえば、特許文献2参照)。この特許文献2に開示された技術は、短絡を防止することができるものであるが、金属端子の両面に位置を合わせてパターン状に無水マレイン酸変性ポリプロピレンを塗布する必要があり、工程が増加すると共にこの位置を合わせてパターン状に塗布する作業は結構煩雑なものであり、また、金属端子は通常ロール状で供給されるが、これを無水マレイン酸変性ポリプロピレン塗布面と非塗布面とを位置合わせして金属端子の寸法に裁断する必要があり、さらにまた、金属端子はリチウム電池の大きさにより各種サイズがあり、それぞれに対応したものが必要となる等、結果としてコスト高とならざるを得ないものである。
【0011】
また、他方の問題として、携帯電話、ノート型パソコン、ビデオカメラなどのモバイル品と異なり高容量、高出力が求められる自動車用バッテリーにおいては、外装体として包装材を用いたリチウム電池は採用されていないのが実情である。この理由としては、自動車用バッテリーはモバイル品に比べて、使用される環境が厳しい上に耐用年数が長く、一層の耐久性と安全性等の性能が求められるからである。たとえば、自動車用バッテリーは、通常は複数個の単電池を直列に接続して構成されている。たとえば、300Vのバッテリー電圧を得るためには、単電池当たり3.6Vのリチウム電池では80個程度の単電池を直列接続することになる。
【0012】
このような多数の単電池を直列接続してなる電池モジュールにおいて、たとえば、結露等により包装材に使用されているアルミニウム等の金属箔からなるバリアー層が互いに電気的に接続され、かつ、何等かの要因で内層にピンホールが生じて前記バリアー層に電解液が接触した場合は、前記バリアー層が高い電位を有することになり、これにより前記バリアー層が溶解し、電池としての機能を果たさなくなるという問題がある。このような問題を防止するために、包装材からなる外装体のアルミニウム等の金属箔からなるバリアー層が表出する端面を粘着テープ等で封止することも考えられるが、金属端子が突設する電池においては、機械化するのが相当に大変であるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平11−86841号公報
【特許文献2】特開平11−86842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこで本発明は、金属端子と外装体のアルミニウム等の金属箔とが接触して短絡することがない電池の外装体構造を提供することは元より、特に結露等により単電池の外装体中に用いられるアルミニウム等の金属箔が単電池間で電気的に接続することのない電池の外装体構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、上記課題を達成するために、請求項1記載の本発明の電池の外装体構造は、少なくとも第1熱接着性樹脂層と、金属箔層と、化成処理層と、接着層と、第2熱接着性樹脂層とが順に積層された包装材からなる蓋体と、前記包装材を前記第2熱接着性樹脂層が凹部側に位置するようにプレス成形して周縁にフランジ部を有する成形容器本体とからなり、前記成形容器本体内に正極および負極を備えた電池要素を収納すると共に正極および負極の各々に接続された金属端子を前記成形容器本体の前記フランジ部から外側に突出させ、開口部を前記成形容器本体の凹部側に前記蓋体の前記第2熱接着性樹脂層が位置するように前記蓋体で被覆すると共に前記フランジ部で熱接着して密封した電池をインサート成形法にて射出成形して前記フランジ部の少なくとも前記金属箔層が表出する周縁端面に射出成形樹脂層を形成したことを特徴とするものである。
【0016】
また、請求項2記載の本発明の電池の外装体構造は、少なくとも第1熱接着性樹脂層と、金属箔層と、化成処理層と、接着層と、第2熱接着性樹脂層とが順に積層された包装材を前記第2熱接着性樹脂層が凹部側に位置するようにプレス成形して周縁にフランジ部を有する成形容器本体と、成形容器状蓋体とからなり、前記成形容器本体内に正極および負極を備えた電池要素を収納すると共に正極および負極の各々に接続された金属端子を前記成形容器本体の前記フランジ部から外側に突出させ、開口部を前記成形容器状蓋体の凹部と前記成形容器本体の凹部とが対向するように前記成形容器状蓋体で被覆すると共に前記フランジ部で熱接着して密封した電池をインサート成形法にて射出成形して前記フランジ部の少なくとも前記金属箔層が表出する周縁端面に射出成形樹脂層を形成したことを特徴とするものである。
【0017】
また、請求項3記載の本発明は、請求項1、2のいずれかに記載の電池の外装体構造において、前記第1熱接着性樹脂層と前記金属箔層との間に二軸延伸フィルム層を設けたことを特徴とするものである。
【0018】
また、請求項4記載の本発明の電池の外装体構造は、少なくとも易接着性樹脂層と、基材層と、金属箔層と、化成処理層と、接着層と、第2熱接着性樹脂層とが順に積層された包装材からなる蓋体と、前記包装材を前記第2熱接着性樹脂層が凹部側に位置するようにプレス成形して周縁にフランジ部を有する成形容器本体とからなり、前記成形容器本体内に正極および負極を備えた電池要素を収納すると共に正極および負極の各々に接続された金属端子を前記成形容器本体の前記フランジ部から外側に突出させ、開口部を前記成形容器本体の凹部側に前記蓋体の前記第2熱接着性樹脂層が位置するように前記蓋体で被覆すると共に前記フランジ部で熱接着して密封した電池をインサート成形法にて射出成形して前記フランジ部の少なくとも前記金属箔層が表出する周縁端面に射出成形樹脂層を形成したことを特徴とするものである。
【0019】
また、請求項5記載の本発明の電池の外装体構造は、少なくとも易接着性樹脂層と、基材層と、金属箔層と、化成処理層と、接着層と、第2熱接着性樹脂層とが順に積層された包装材を前記第2熱接着性樹脂層が凹部側に位置するようにプレス成形して周縁にフランジ部を有する成形容器本体と、成形容器状蓋体とからなり、前記成形容器本体内に正極および負極を備えた電池要素を収納すると共に正極および負極の各々に接続された金属端子を前記成形容器本体の前記フランジ部から外側に突出させ、開口部を前記成形容器状蓋体の凹部と前記成形容器本体の凹部とが対向するように前記成形容器状蓋体で被覆すると共に前記フランジ部で熱接着して密封した電池をインサート成形法にて射出成形して前記フランジ部の少なくとも前記金属箔層が表出する周縁端面に射出成形樹脂層を形成したことを特徴とするものである。
【0020】
また、請求項6記載の本発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の電池の外装体構造において、前記蓋体が前記成形容器本体の一つの端辺を介して連接していることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明の電池の外装体構造は、携帯電話等の機器に実装する際に、よりコンパクトに機器内に収納するために金属端子を外装体側へ折り曲げて実装されたとしても、外装体のアルミニウム等の金属箔と金属端子とが接触し、電池が短絡する虞がない電池を提供することができるという優れた効果し、また、電池モジュールにおいて、結露等が生じても単電池の外装体中に用いられるアルミニウム等の金属箔が単電池間で電気的に接続することがないという優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明にかかる電池の外装体に用いる包装材の層構成の一実施例を図解的に示す図である。
【図2】本発明にかかる電池の外装体に用いる包装材の層構成の他の実施例を図解的に示す図である。
【図3】本発明かかる電池の外装体の電池要素を収納する前の成形体の一実施例を示す平面図である。
【図4】本発明にかかる電池の中間品の一実施例を図解的に示す斜視図である。
【図5】本発明にかかる電池の外装体構造を示す(a)は斜視図,(b)は要部を図解的に示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
上記の本発明について、図面等を用いて以下に詳しく説明する。
図1は本発明にかかる電池の外装体に用いる包装材の層構成の一実施例を図解的に示す図、図2は本発明にかかる電池の外装体に用いる包装材の層構成の他の実施例を図解的に示す図、図3は本発明かかる電池の外装体の電池要素を収納する前の成形体の一実施例を示す平面図、図4は本発明にかかる電池の中間品の一実施例を図解的に示す斜視図、図5は本発明にかかる電池の外装体構造を示す(a)は斜視図,(b)は要部を図解的に示す拡大断面図であり、図中の1,1’,1a,1bは包装材、1a’,1b’は成形体、1A,1A’,1B,1B’は電池、2は成形容器本体、3は蓋体、4は射出成形樹脂層、10は第1熱接着性樹脂層、20,21,22,50は接着層、30は化成処理層、40は金属箔層、60は第2熱接着性樹脂層、70は基材層、Tは金属端子、Sは熱接着部、αはフランジ部をそれぞれ示す。
【0024】
図1は本発明にかかる電池の外装体に用いる包装材の層構成の一実施例を図解的に示す図であって、包装材1は第1熱接着性樹脂層10と、接着層20と、化成処理層30と、金属箔層40と、化成処理層30と、接着層50と、第2熱接着性樹脂層60とが順に積層されたものである。なお、以後の説明において、前記第1熱接着性樹脂層10を外層、すなわち、プレス成形(冷間成形)した際に凸部側の面を形成する層、前記第2熱接着性樹脂層60を内層、すなわち、プレス成形(冷間成形)した際に凹部側の面を形成する層として説明する。
【0025】
最初に、前記金属箔層40について説明する。前記金属箔層40としては、外部から電池内部に特に水蒸気が浸入するのを防止するために設けられるものであって、これを満足する金属箔であれば特に限定するものではないが、軽量であって、成形性(プレス成形性)に優れるなどを考慮するとアルミニウム箔が好ましく、水蒸気バリアー性の確保と加工時の加工適性を考慮すると、20〜200μm厚さのものが適当である。20μm未満の厚さの場合は、アルミニウム箔単体のピンホールが危惧され、水蒸気の浸入の危険性が高くなり、200μm超の厚さの場合は、アルミニウム箔のピンホールに顕著な効果が認められず、水蒸気バリアー性の更なる向上が期待できず、加工適性においても劣り、体積および重量エネルギー密度を低下させると共に費用対効果の面からも使用しない方が望ましい。
【0026】
また、前記アルミニウム箔は鉄分を0.3〜9.0重量%、好ましくは0.7〜2.0重量%含有したものが鉄分を含有しないものと比較して延展性に優れると共に折り曲げに対するピンホールの発生が少なく、成形時に偏肉のない均一な成形品を得ることができる。鉄分の含有量が0.3重量%未満ではピンホール発生の防止や延展性において効果が認められず、9.0重量%超ではアルミニウム箔としての柔軟性が阻害されるために成形適性が低下する。
【0027】
また、前記アルミニウム箔は冷間圧延で製造されるが、焼きなまし(いわゆる焼鈍処理)条件でその柔軟性、腰の強さ、硬さが変化するが、本発明に用いるアルミニウム箔は焼きなましをしていない硬質処理品よりも多少ないし完全に焼きなまし処理をした軟質傾向にあるアルミニウム箔がよい。
【0028】
次に、前記化成処理層30について説明する。図1においては、前記化成処理層30を前記金属箔層40としてのアルミニウム箔(以後、金属箔層40をアルミニウム箔40と置き換えて説明する)の両面に形成したものを示したが、前記化成処理層30は前記アルミニウム箔40の少なくとも内層となる前記第2熱接着性樹脂層60側の面に形成すればよいものであるが、図1のように前記アルミニウム箔40の両面に形成する方が好ましい。このように構成することにより、前記アルミニウム箔40と前記接着層20および50とを強固に接着させてプレス成型(冷間成形)時のデラミネーションを防止すると共に電解液、あるいは、電解液の加水分解により発生するフッ酸による前記アルミニウム箔40と前記熱接着性樹脂層60間のデラミネーションを防止することができる。また、前記アルミニウム箔40の両面に前記化成処理層30を形成することにより、外層となる前記第1熱接着性樹脂層10と前記アルミニウム箔40とを一層強固に接着させることができ、この層間のプレス成型(冷間成形)時のデラミネーション防止に大いに寄与する。また、前記化成処理層30は、少なくとも内層となる前記第1熱接着性樹脂層60側の面に形成されるものであるが、前記接着層50と強固に接着するという点、また、連続処理が可能であると共に水洗工程が不要で処理コストを安価にすることができるという点などから塗布型化成処理、特にフェノール樹脂としてアミノ化フェノール重合体と3価クロム化合物とリン化合物を含有する処理液で処理するのが最も好ましい。
【0029】
まず、フェノール樹脂としてのアミノ化フェノール重合体について説明する。アミノ化フェノール重合体としては、公知のものを広く使用することができ、たとえば、下記式(1)、(2)、(3)、(4)で表される繰り返し単位からなるアミノ化フェノール重合体を挙げることができる。なお、式中のXは水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アリル基ないしベンジル基を示す。また、R1、R2はヒドロキシル基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基を示し、同じ基であってもよいし、異なる基であってもよいものである。下記式(1)〜(4)において、X、R1、R2で示されるアルキル基としては、たとえば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4の直鎖または分枝鎖状アルキル基を挙げることができる。また、X、R1、R2で示されるヒドロキシアルキル基としては、たとえば、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、1−ヒドロキシブチル基、2−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、4−ヒドロキシブチル基等のヒドロキシ基が1個置換された炭素数1〜4の直鎖ないし分枝鎖状アルキル基を挙げることができる。なお、下記式(1)〜(4)におけるXは水素原子、ヒドロキシル基、および、ヒドロキシアルキル基のいずれかであるのが好ましい。
【0030】
また、下記式(1)、(3)で表されるアミノ化フェノール重合体は、繰り返し単位を約80モル%以下、好ましくは繰り返し単位を約25〜約55モル%の割合で含むアミノ化フェノール重合体である。また、アミノ化フェノール重合体の数平均分子量は、好ましくは約500〜約100万、より好ましくは約1000〜約2万である。アミノ化フェノール重合体は、たとえば、フェノール化合物ないしナフトール化合物とホルムアルデヒドとを重縮合して下記(1)ないし(3)で表される繰り返し単位からなる重合体を製造し、次いで、この重合体にホルムアルデヒドおよびアミン(R12NH)を用いて水溶性官能基(−CH2NR12)を導入することにより製造される。アミノ化フェノール重合体は、1種ないし2種以上混合して用いることができる。
【0031】
【化1】

【0032】
【化2】

【0033】
【化3】

【0034】
【化4】

【0035】
次に、三価クロム化合物について説明する。三価クロム化合物としては、公知のものを広く使用することができ、たとえば、硝酸クロム、フッ化クロム、硫酸クロム、酢酸クロム、蓚酸クロム、重リン酸クロム、クロム酸アセチルアセテート、塩化クロム、硫酸カリウムクロム等を挙げることができ、好ましくは硝酸クロム、フッ化クロムである。
【0036】
次に、リン化合物について説明する。リン化合物としては、公知のものを広く使用することができ、たとえば、リン酸、ポリリン酸等の縮合リン酸およびこれらの塩等を挙げることができる。ここで、前記塩としては、たとえば、アンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩を挙げることができる。
【0037】
そして、アミノ化フェノール重合体、三価クロム化合物、および、リン化合物を含有する処理液を用いて形成する前記化成処理層23としては、1m2当たり、アミノ化フェノール重合体が約1〜約200mg、三価クロム化合物がクロム換算で約0.5〜約50mg、および、リン化合物がリン換算で約0.5〜約50mgの割合で含有されているのが適当であり、アミノ化フェノール重合体が約5.0〜150mg、三価クロム化合物がクロム換算で約1.0〜約40mg、および、リン化合物がリン換算で約1.0〜約40mgの割合で含有されているのがより好ましい。この場合の乾燥温度としては、150〜250℃、好ましくは170〜250℃で、加熱処理(焼付け処理)するのが適当である。
【0038】
また、前記化成処理層30の形成方法としては、前記処理液をバーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、浸漬法等の周知の塗布法を適宜選択して形成すればよいものである。また、前記化成処理層30を形成する前記アルミニウム箔40面は、予め、たとえば、アルカリ浸漬法、電解洗浄法、酸洗浄法、電解酸洗浄法、酸活性化法等の周知の脱脂処理法で処理を施しておく方が、前記化成処理層30の機能を最大限に発現させると共に、長期間維持することができる点から好ましい。
【0039】
次に、前記接着層20、50について説明する。前記接着層20、50としては、前記アルミニウム箔40の前記化成処理層30と後述する前記第1、第2熱接着性樹脂層10、60とを強固に接着させるために設けるものであり、前記接着層20、50を形成する樹脂としてその一つを例示するならば、たとえば、不飽和カルボン酸でグラフト変性したポリオレフィン樹脂、エチレンないしプロピレンとアクリル酸、または、メタクリル酸との共重合体等の酸変性ポリオレフィン樹脂、特に好ましくは不飽和カルボン酸でグラフト変性したポリオレフィン樹脂を挙げることができ、前記接着層20、50の形成方法としては上記した樹脂をTダイ押出機を用いて前記アルミニウム箔40の前記化成処理層30面に溶融押出しして、後述する前記第1、第2熱接着性樹脂層10、60を構成する樹脂フィルムを積層する、いわゆるサンドイッチラミネーション法で積層することにより形成してもよいし、また、上記した樹脂をシート化したフィルムを用いてサーマルラミネーション法で前記アルミニウム箔40の前記化成処理層30面に積層してもよいものである。この場合の前記接着層20、50の厚さとしては、5〜20μm、好ましくは10〜15μmであり、5μm未満では十分なラミネート強度を得ることができず、20μm超では端面からの水分透過が多くなり、電池としての性能を低下させる虞があるからである。
【0040】
また、前記接着層20、50を形成する樹脂として別の一つを例示するならば、たとえば、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリウレタン系等の主剤からなる周知の2液硬化型ドライラミネーション用接着剤を挙げることができる。前記接着層20、50を形成する方法としては、上記した主剤にイソシアネート化合物を配合した組成物をグラビアコート法、ロールコート法等の周知の塗布方法で塗布・乾燥し、前記第1、第2熱接着性樹脂層10、60を構成する樹脂フィルムを積層する、いわゆるドライラミネーション法で積層することにより形成することができる。前記接着層20、50の乾燥後の塗布量としては2.0〜5.0g/m2、好ましくは3.0g/m2以上となるように塗布するのが適当である。なお、前記接着層20を設けることなく前記第1熱接着性樹脂層10をサーマルラミネーション法で前記アルミニウム箔40に直に積層してもよいものである。
【0041】
次に、前記第1、第2熱接着性樹脂層10、60を形成する樹脂について説明する。まず、前記第2熱接着性樹脂層60を形成する樹脂としては、リチウム電池の電池要素の正極および負極の各々に接続された金属端子を外側に突出した状態で挟持して熱接着して密封する際に前記第2熱接着性樹脂層60と金属端子との間に金属端子部密封用接着性フィルムを介在させるか否かで樹脂種が異なるものである。金属端子部密封用接着性フィルムとしては酸変性オレフィン樹脂が通常は用いられるために、金属端子部密封用接着性フィルムを介在させる場合には、低密度ポリエチレン,中密度ポリエチレン,高密度ポリエチレン,線状低密度ポリエチレン,エチレン−ブテン共重合体等のエチレン系樹脂、ホモポリプロピレン,エチレン−プロピレン共重合体,エチレン−プロピレン−ブテン共重合体等のプロピレン系樹脂の単体ないし混合物等の一般的なオレフィン系樹脂(炭素と水素とからなる直鎖状あるいは分枝鎖状のオレフィン系樹脂)を適宜選択して用いればよいのであって、これらの一般的なオレフィン系樹脂をフィルム化して、上記したドライラミネーション法やサーマルラミネーション法で積層すればよいし、また、前記第2熱接着性樹脂層60を前記接着層50を形成する樹脂の一つとして例示した、酸変性ポリオレフィン系樹脂と上記した低密度ポリエチレン,中密度ポリエチレン,高密度ポリエチレン,線状低密度ポリエチレン,エチレン−ブテン共重合体等のエチレン系樹脂、ホモポリプロピレン,エチレン−プロピレン共重合体,エチレン−プロピレン−ブテン共重合体等のプロピレン系樹脂の単体ないし混合物等とを前記アルミニウム箔40の前記化成処理層30に共押出して前記接着層50と前記第2熱接着性樹脂層60を同時に形成してもよいし、予め前記接着層50を形成する樹脂の一つとして例示した、酸変性ポリオレフィン系樹脂と上記した低密度ポリエチレン,中密度ポリエチレン,高密度ポリエチレン,線状低密度ポリエチレン,エチレン−ブテン共重合体等のエチレン系樹脂、ホモポリプロピレン,エチレン−プロピレン共重合体,エチレン−プロピレン−ブテン共重合体等のプロピレン系樹脂の単体ないし混合物等を共押出しして共押出しフィルムを作製し、これを前記アルミニウム箔40の前記化成処理層30にサーマルラミネーション法で積層して形成してもよいものである。
【0042】
また、金属端子部密封用接着性フィルムを介在させない場合には、前記接着層50を形成する樹脂の一つとして例示した、酸変性ポリオレフィン系樹脂、たとえば、不飽和カルボン酸でグラフト変性したポリオレフィン樹脂、エチレンないしプロピレンとアクリル酸、または、メタクリル酸との共重合体等の酸変性ポリオレフィン樹脂、特に好ましくは不飽和カルボン酸でグラフト変性したポリオレフィン樹脂を用いることができ、この場合は前記接着層50を兼ねてもよいものである。前記第2熱接着性樹脂層60の厚さとしては、10〜100μm、好ましくは30〜50μmであり、10μm未満では熱接着した際に十分な接着強度を得ることができずに密封性に問題が生じる虞があり、100μm超では熱接着して密封する際の密封性に顕著な効果が認められず、また、総厚が厚くなることにより逆に体積および重量エネルギー密度を低下させると共に費用対効果の面からも使用しない方が好ましい。なお、前記第2熱接着性樹脂層60をフィルムで構成する場合には、必要な面にコロナ放電処理、オゾン処理、プラズマ処理等の易接着処理を施してもよいものである。
【0043】
次に、前記第1熱接着性樹脂層10について説明する。前記第1熱接着性樹脂層10としては前記第2熱接着性樹脂層60で説明した低密度ポリエチレン,中密度ポリエチレン,高密度ポリエチレン,線状低密度ポリエチレン,エチレン−ブテン共重合体等のエチレン系樹脂、ホモポリプロピレン,エチレン−プロピレン共重合体,エチレン−プロピレン−ブテン共重合体等のプロピレン系樹脂の単体ないし混合物等の一般的なオレフィン系樹脂(炭素と水素とからなる直鎖状あるいは分枝鎖状のオレフィン系樹脂)を適宜選択して用いればよいのであって、これらの一般的なオレフィン系樹脂をフィルム化して、上記したドライラミネーション法やサーマルラミネーション法で積層すればよいものである。
【0044】
なお、前記第1熱接着性樹脂層10、前記第2熱接着性樹脂層60および金属端子部密封用接着性フィルムをオレフィン系樹脂ということで説明してきたが、金属端子部密封用接着性フィルムを用いない場合、前記第2熱接着性樹脂層60は金属接着性を有する熱可塑性樹脂であれば、オレフィン系樹脂に限ることはなく用いることができるし、金属端子部密封用接着性フィルムを用いる場合についても、この金属端子部密封用接着性フィルムと相溶性があり、十分なヒートシール強度で熱接着可能な熱可塑性樹脂で前記第2熱接着性樹脂層60を形成してもよいものである。また、前記第1熱接着性樹脂層10についてもオレフィン系樹脂に限ることはなく、たとえば、環状ポリオレフィン、塩素化ポリオレフィン、あるいは、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ABS、ポリアクリロニトリル、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリアセタール、フッ素樹脂、変性ポリフェニレンエーテル等の熱可塑性樹脂を挙げることができる。また、前記第1熱接着性樹脂層10を形成する樹脂と第2熱接着性樹脂層60を形成する樹脂とは、前記第1熱接着性樹脂層10を形成する樹脂の方が高い融点を有する樹脂を用いるのが電池とするために熱接着して密封する際のヒートシール適性が向上し、生産性に寄与する。たとえば、前記第1熱接着性樹脂層10を形成する樹脂をプロピレン系樹脂とし、前記第2熱接着性樹脂層60を形成する樹脂をエチレン系樹脂とするような使い方であり、後述する射出形成樹脂層(図5参照)はプロピレン系樹脂で形成すればよいものである。
【0045】
また、前記アルミニウム箔40は成形性に優れる反面、成形時に生じる不均質変形による応力集中により均質に変形させることができずに、ピンホールやクラックが生じ易いという問題があり、シャープな形状で深く安定して成形するという成形安定性の点において、外側の前記第1熱接着性樹脂層10と前記接着層20との間に基材層70を用いてもよいものである。基材層70としては、2軸方向に延伸したフィルムが特に好ましく、たとえば、2軸延伸ナイロンフィルムや2軸延伸ポリエステルフィルム、あるいは、これらの積層体であり、基材層の厚さとしては単層であれ、複層であれ、6μm以上25μm以下が適当である。また、基材層70は必要な面にコロナ放電処理、オゾン処理、プラズマ処理等の易接着処理を施してもよいものである。このような基材層70を設けた包装材1’の構成を例示するならば、図2に示すように、(外層)第1熱接着性樹脂層10/接着層21/基材層70/接着層22/化成処理層30/アルミニウム箔40/化成処理層30/接着層50/第2熱接着性樹脂層60(内層)を挙げることができ、この場合の接着層21、22としては、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリウレタン系等の周知の2液硬化型ドライラミネーション用接着剤を用いればよいものである。注釈を加えないその他の符号は、図1で示したものと同じ意味で用いている。
【0046】
また、図示はしないが、前段で説明した前記第1熱接着性樹脂層10を用いることなく、前記基材層70の外側面(第2熱接着性樹脂層60と反対側の面)に後述する射出成形樹脂層との接着性を向上させる目的で易接着性樹脂層を形成した構成、たとえば、(外層)易接着性樹脂層/基材層70/接着層22/化成処理層30/アルミニウム箔40/化成処理層30/接着層50/第2熱接着性樹脂層60(内層)とした包装材であってもよいものである。前記易接着性樹脂層としては、たとえば、有機チタネート、ポリエチレンイミン誘導体、シランカップリング剤、イソシアネート系化合物等の周知のコーティング剤を挙げることができるが、これに限るものではなく、前記基材層70の樹脂種によりコーティング剤の樹脂種についても適宜選択して用いればよいものである。
【0047】
次に、本発明について、以下に実施例を挙げてさらに詳しく説明する。
まず、予め、フェノール樹脂、フッ化クロム(三価)化合物、リン酸の3成分からなる化成処理液で両面を化成処理(リン酸クロメート処理)して両面に化成処理層を有するアルミニウム箔(40μm厚さ)の一方の面と25μm厚さの両面コロナ放電処理した二軸延伸ナイロンフィルム(以下、ONフィルムと呼称する)とを2液硬化型ポリウレタン系接着剤を介して積層して第1中間積層体を作成した。
【0048】
〔包装材1a〕
上記で作成した第1中間積層体の化成処理面に15μm厚さの不飽和カルボン酸でグラフト変性した不飽和カルボン酸グラフト変性ランダムポリプロピレン(以下、PPaと呼称する)フィルムを前記化成処理層面が120℃となるように加熱してサーマルラミネーション法で貼合して第2中間積層体を作製し、次いで前記第2中間積層体のONフィルム面に2液硬化型ポリウレタン系接着剤を介して30μm厚さの未延伸ポリプロピレンフィルム(以下、CPPフィルムと呼称する)を積層し、これを更に180℃となるように再加熱して本発明に供する包装材を作製した。
【0049】
〔包装材1b〕
上記で作成した第1中間積層体の化成処理面に15μm厚さの不飽和カルボン酸でグラフト変性したポリエチレン(以下、PEaと呼称する)フィルムを前記化成処理層面が120℃となるように加熱してサーマルラミネーション法で貼合して第2中間積層体を作製し、次いで前記第2中間積層体のONフィルム面に2液硬化型ポリウレタン系接着剤を介して30μm厚さの未延伸の線状低密度ポリエチレンフィルム(以下、LLDPEフィルムと呼称する)を積層し、これを更に180℃となるように再加熱して本発明に供する包装材を作製した。
【0050】
〔包装材1c〕
上記で作成した第1中間積層体の化成処理面に15μm厚さの不飽和カルボン酸でグラフト変性したポリエチレン(以下、PEaと呼称する)フィルムを前記化成処理層面が120℃となるように加熱してサーマルラミネーション法で貼合して第2中間積層体を作製し、次いで前記第2中間積層体のONフィルム面にポリエチレンイミン系アンカーコート材を塗布・乾燥して後に、さらに180℃となるように再加熱して本発明に供する包装材を作製した。
【0051】
上記で作製した包装材1a、1b、1cのそれぞれを、33×55mmの矩形状の雄型とこの雄型とのクリアランスが0.5mmの雌型からなるストレート金型(雄型のコーナーRは2mm、稜線Rは1mm、雌型のコーナーRは2mm、稜線Rは1mm)を用い、雄型側にPPaフィルム、PEaフィルムがそれぞれ位置するように雌型上に短冊片を載置すると共に包装材1Aおよび1Bをそれぞれ0.1MPaの押え圧(面圧)で押えて、7.0mmの成形深さに冷間成形(引き込み1段成形)して凹部を設けた後に裁断して、図3に示すように43×130mmの矩形状の蓋体3が成形容器本体2と一つの端辺を介して連接した電池とした際に5mm幅のフランジ部αを有するように構成した成形体1a’、1b’、1c’を作製した。
【0052】
上記で作製したそれぞれの成形体1a’、1b’、1c’の凹部内に正極および負極を備えた電池要素を収納すると共に前記正極および負極の各々に接続された金属端子T(正極:アルミニウム、負極:ニッケル)を前記成形容器本体2の前記蓋体3と対向する位置にあるフランジ部αから外側に突出させ、図3に示す破線部で折り曲げて開口部(凹部)を蓋体3で被覆すると共にフランジ部αで熱接着して密封した図4に示す本発明の中間品となる電池1A’,1B’,1C’を作製した。なお、符号Sはフランジ部αの熱接着部を示す。
【0053】
上記で作製した電池1A’、1B’,1C’をそれぞれ射出成形金型のキャビティー内に配置し、前記電池1A’の場合はポリプロピレン、前記電池1B’,1C’の場合は線状低密度ポリエチレンの溶融樹脂を射出して成形(いわゆる、インサート成形)し、図5に示すように折り曲げた一辺を除く三周辺の端縁の少なくとも端面を被覆するように略コの字状に射出成形樹脂層4を形成して本発明の電池1A、1B、1Cを作製した。
【0054】
上記で作製した本発明の電池1A、1B、1Cは包装材のアルミニウム箔が表出する端面が射出成形樹脂層で被覆されているので、たとえば、多数の単電池を直列接続してなる電池モジュールにおいて、結露等が生じたとしても、単電池間で包装材に使用されているアルミニウム箔が互いに電気的に接続されることがなく、電池としての機能が確実に維持される。
【0055】
なお、前記射出成形樹脂層4を略コの字状とする理由は、電池1A’,1B’,1C’の端縁に十分な接着強度のある射出成形樹脂層4を形成すると共に電池1A’,1B’,1C’の包装材1a、1b、1cの層構成中のアルミニウム箔を外部環境から遮断するためであり、また、図示はしないが、成形容器本体2と蓋体3とを別体とし、四周縁のフランジ部で熱接着して密封したものであってもよく、この場合は四周辺の端縁の少なくとも端面を被覆するように略コの字状の射出成形樹脂層を形成すればよいものである。また、図示はしないが、フランジ部の両側に凹部を有する形状の電池としてもよく、この場合は電池容量等を大きなものとすることができる。
【0056】
射出成形に用いる樹脂としては、上記した前記第1熱接着性樹脂層10を形成する樹脂種により、これと相溶性があると共に射出成形時の樹脂温度で接着する樹脂を適宜選択して用いればよいのであって、前記第1熱接着性樹脂層10で説明した樹脂の中から適宜選択して用いればよいものである。また、射出成形に用いる樹脂は透明であっても、半透明であっても、不透明であってもよいし、また、着色されていてもよいものである。また、今までは、射出成形に用いる樹脂を前記第1熱接着性樹脂層10と相互に溶融して接着し得る樹脂ということで説明してきたが、前記第1熱接着性樹脂層10の表面に射出成形樹脂と前記第1熱接着性樹脂層10とを接着させることができる接着層を別途設けてもよいものである。
【符号の説明】
【0057】
1,1’,1a,1b 包装材
1a’,1b’ 成形体
1A,1A’,1B,1B’ 電池
2 成形容器本体
3 蓋体
4 射出成形樹脂層
10 第1熱接着性樹脂層
20,21,22,50 接着層
30 化成処理層
40 金属箔層
60 第2熱接着性樹脂層
70 基材層
T 金属端子
S 熱接着部
α フランジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1熱接着性樹脂層と、金属箔層と、化成処理層と、接着層と、第2熱接着性樹脂層とが順に積層された包装材からなる蓋体と、前記包装材を前記第2熱接着性樹脂層が凹部側に位置するようにプレス成形して周縁にフランジ部を有する成形容器本体とからなり、前記成形容器本体内に正極および負極を備えた電池要素を収納すると共に正極および負極の各々に接続された金属端子を前記成形容器本体の前記フランジ部から外側に突出させ、開口部を前記成形容器本体の凹部側に前記蓋体の前記第2熱接着性樹脂層が位置するように前記蓋体で被覆すると共に前記フランジ部で熱接着して密封した電池をインサート成形法にて射出成形して前記フランジ部の少なくとも前記金属箔層が表出する周縁端面に射出成形樹脂層を形成したことを特徴とする電池の外装体構造。
【請求項2】
少なくとも第1熱接着性樹脂層と、金属箔層と、化成処理層と、接着層と、第2熱接着性樹脂層とが順に積層された包装材を前記第2熱接着性樹脂層が凹部側に位置するようにプレス成形して周縁にフランジ部を有する成形容器本体と、成形容器状蓋体とからなり、前記成形容器本体内に正極および負極を備えた電池要素を収納すると共に正極および負極の各々に接続された金属端子を前記成形容器本体の前記フランジ部から外側に突出させ、開口部を前記成形容器状蓋体の凹部と前記成形容器本体の凹部とが対向するように前記成形容器状蓋体で被覆すると共に前記フランジ部で熱接着して密封した電池をインサート成形法にて射出成形して前記フランジ部の少なくとも前記金属箔層が表出する周縁端面に射出成形樹脂層を形成したことを特徴とする電池の外装体構造。
【請求項3】
前記第1熱接着性樹脂層と前記金属箔層との間に二軸延伸フィルム層を設けたことを特徴とする請求項1、2のいずれかに記載の電池の外装体構造。
【請求項4】
少なくとも易接着性樹脂層と、基材層と、金属箔層と、化成処理層と、接着層と、第2熱接着性樹脂層とが順に積層された包装材からなる蓋体と、前記包装材を前記第2熱接着性樹脂層が凹部側に位置するようにプレス成形して周縁にフランジ部を有する成形容器本体とからなり、前記成形容器本体内に正極および負極を備えた電池要素を収納すると共に正極および負極の各々に接続された金属端子を前記成形容器本体の前記フランジ部から外側に突出させ、開口部を前記成形容器本体の凹部側に前記蓋体の前記第2熱接着性樹脂層が位置するように前記蓋体で被覆すると共に前記フランジ部で熱接着して密封した電池をインサート成形法にて射出成形して前記フランジ部の少なくとも前記金属箔層が表出する周縁端面に射出成形樹脂層を形成したことを特徴とする電池の外装体構造。
【請求項5】
少なくとも易接着性樹脂層と、基材層と、金属箔層と、化成処理層と、接着層と、第2熱接着性樹脂層とが順に積層された包装材を前記第2熱接着性樹脂層が凹部側に位置するようにプレス成形して周縁にフランジ部を有する成形容器本体と、成形容器状蓋体とからなり、前記成形容器本体内に正極および負極を備えた電池要素を収納すると共に正極および負極の各々に接続された金属端子を前記成形容器本体の前記フランジ部から外側に突出させ、開口部を前記成形容器状蓋体の凹部と前記成形容器本体の凹部とが対向するように前記成形容器状蓋体で被覆すると共に前記フランジ部で熱接着して密封した電池をインサート成形法にて射出成形して前記フランジ部の少なくとも前記金属箔層が表出する周縁端面に射出成形樹脂層を形成したことを特徴とする電池の外装体構造。
【請求項6】
前記蓋体が前記成形容器本体の一つの端辺を介して連接していることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電池の外装体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−227150(P2012−227150A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−141612(P2012−141612)
【出願日】平成24年6月25日(2012.6.25)
【分割の表示】特願2005−130041(P2005−130041)の分割
【原出願日】平成17年4月27日(2005.4.27)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】