説明

電池パック及びこれを備えた電動工具

【課題】 粉塵や水分が電池パック内に入り込むことを抑制し、防水性、防塵性を確保することができる電池パック及び電動工具を提供する。
【解決手段】 上ケース部22と下ケース部21からなるケース体10と、ケース体10に収容される電池セル31,32,33と、電池セルに電気的に接続される複数の電極端子50A,50Bと、を有する電池パックであって、上ケース部10には、複数の電極端子に対応した位置に電極端子を露出する複数の開口211A,211Bが形成され、開口211A,211Bからケース体10内部への異物の侵入を抑制する部材80を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極端子への保護性能を向上させた電池パック及びこれを備える電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
電動工具に用いられる電池パックとして、例えば、特許文献1に記載されているものが公知である。これは、電池ケース形状が側面視L字型とされており、この電池ケース上端には、電動工具本体に設けられた本体側電極端子に接続される電極端子が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−302759号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の電池パックでは、例えば、電動工具から取り外した状態で横倒しの状態で置かれているときに電池パックに衝撃等が加えられた場合に、その衝撃が加えられた部位が電極端子付近であると衝撃が電極端子に及びやすくなり、結果として、電極端子が損傷・破損してしまう場合があった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、電極端子の保護性を向上させることができる電池パック及びこれを用いた電動工具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、上ケース部と下ケース部からなるケース体と、該ケース体に収容される電池セルと、前記電池セルに電気的に接続される複数の電極端子と、を有する電池パックであって、前記上ケース部には、前記複数の電極端子に対応した位置に前記電極端子を露出する複数の開口が形成され、前記開口から前記ケース体内部への異物の侵入を抑制する部材を設けたことを特徴としている。
【0007】
また、本発明は、上ケース部と下ケース部からなるケース体と、該ケース体に収容される電池セルと、該電池セルの上側に配置される回路基板と、該回路基板に実装される複数の電極端子と、を有する電池パックであって、前記回路基板と前記上ケース部との間に前記ケース体内部への異物の侵入を抑制する弾性部材を設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、粉塵や水分が電池パック内に入り込むことがなく、防水性、防塵性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態に係るドライバドリルの内部構成を示した側断面図である。
【図2】電池パックの内部構成を示した分解斜視図である。
【図3】電池パックの前面形状を示した平面図である。
【図4】図1におけるA−A線断面図である。
【図5】電池パックのうちロック片周辺構造を示した一部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明をドライバドリルに適用した一実施形態について図1ないし図5を参照して説明する。なお、図1において、矢印により上下前後方向を示すとともに、矢印Iの方向を電池パック1の差込方向(挿入方向)とする。図1に示すように、ドライバドリル100は側面視T字状に形成されており、横長形状の本体部内110には、駆動源であるモータ120が横置きで収容されている。本体部110の中央下端位置からは作業者が当該ドライバドリル100を把持するためのハンドル部130が下方へ延伸形成されている。また、ハンドル部130下端には矩形状の台座140が形成されており、この台座140の下側から電池パック1がドライバドリル100に装着されている。
【0011】
ハンドル部130内部には、後述する電池パック1の副ケース部22を収容する収容空間130A(収容部)が形成されている。また、モータ120から引き出された電線150をハンドル部130下端にまで引き出すための電線通路160が隔壁170(侵入規制手段)を介在させた状態で収容空間130Aに沿って形成されており、この電線150が当該電線通路160内を通ってハンドル部130下端にまで伸びている。台座140下面には、電池パック1の電極端子50A,50Bが接続される雄型の本体側電極端子180が下方に向いた姿勢で配置されており、この本体側電極端子180とモータ120とが電線150を介して電気的に接続された状態となっている。従って、電池パック1の副ケース部22をハンドル部130の収容空間130Aに進入させた後、進入動作が停止したところで両端子50、180が接続されることとなる。
【0012】
図2から図4に示すように、電池パック1のケース体10は、上下に2分割されたケース半体11,12を合体させることで形成されている。このケース体10は、横長形状の主ケース部21とこの主ケース部21から上方へ(主ケース部21に対して直交方向に)突出した副ケース部22とで構成されており、側面視L字型の形態とされている。
【0013】
このケース体10内部には、3本の電池セル31,32,33、電池セル31,32,33の保護機能を備えた保護回路が実装された回路基板40、及び、ドライバドリル100の本体側電極端子180に接続される複数の電極端子50A,50Bが収容されている。3本の電池セル31,32,33は、2本を並列状態で横置きとする一方、1本を縦置きとするL字型に配置されており、横置きされた電池セル31,32がケース体10のうち主ケース部21内に収容されているとともに、縦置きされた電池セル33が副ケース部22内に収容されている。また、横置きされた電池セル31,32の下側及び縦置きされた電池セル33の上側にはそれぞれ弾性変形可能な緩衝部材60,61が設けられている。
【0014】
横置きの電池セル31,32の上側には板面を当該電池セル31,32の円周面に対面させた状態で回路基板40が配置されており、この回路基板40は横置きの電池セル31,32に取り付けられた支持部材70にねじ止めにより固定されて横置きの電池セル31,32と回路基板40とが一体化されている。また、図示しない電線を介して回路基板40と3本の電池セル31,32,33とが電気的に接続されている。
【0015】
回路基板40には、雌型の電極端子50A,50Bが本体側電極端子180を上方から受け入れられるようにして実装されている。電極端子50A,50Bは7本実装されており、このうち5本の電極端子50A(第1の電極端子群)が横置きの電池セル31,32の並び方向に沿って互いに隣接した状態で一列に並べて配置されている。また、残り2本の電極端子50B(第2の電極端子群)が縦置きの電池セル33と5本の電極端子50Aとの間に配置されている。電極端子50Aは、その端子片が左右に並ぶようにその向きが決定されており、電極端子50Bは、電極端子50Aの向きに対して直交方向となるように向きが決定されている。これら7本の電極端子50A,50Bは回路基板40上において縦置きの電池セル33側に密集した状態で位置している。従って、電極端子50A,50Bは、主ケース 部21の先端と副ケース部22の突出端との仮想線Bよりも主ケース部21側であって、かつ、主ケース部21のうち副ケース部22側に設けられた形となっている。
【0016】
これらの電極端子50A,50Bには、それぞれ充電電力供給、電池温度出力、電池種別出力、エラー出力等の機能が割り当てられている。そして、これらの電極端子50A及び電極端子50Bのうち、最も遠い位置関係にある一対の電極端子50A,50Bが充電電力供給用の電極端子として機能しており、これらがドライバドリル100の本体側電極端子180に接続されて、ドライバドリル100に電力供給されるようになっている。また、各電極端子50A,50Bは、充電器に接続されて充電されるときには、各電極端子50A,50Bから充電器に対して信号が出力されるようになっている。
【0017】
主ケース部21の上面には段部21Aが形成されており、この段部21Aを境にして、当該主ケース部21の中央位置から副ケース部22までの領域における高さ寸法が、主ケース部21の先端側の高さ寸法よりも大となっている。この段部21Aには、横置きの電池セル31,32の並び方向に沿って5本のスリット211Aが形成されているとともに、これら5本のスリット211Aと副ケース部22との間にさらに2本のスリット211Bが形成されている。これらのスリット211A,211Bのうち、スリット211Aは前方および上方に開口するL字型の開口形状とされているとともに、スリット211Bは前方のみが開口した形状とされている。これらのスリット211A,211Bはケース半体11,12を合体させたときに電極端子50A,50Bの位置に対応して配置されており、本体側電極端子180が電極端子50A,50Bに接続されるときには、本体側電極端子180がこれらのスリット211A,211Bを介してケース体10内に進入可能となっている。
【0018】
図4に示すように、主ケース部21の内面側には、隣接する電極端子50A,50Bをそれぞれ隔離する隔壁212が形成されている。この隔壁212は、各スリット211A,211B間に設けられており、主ケース部21内面から回路基板40側へ伸設されている。なお、図示はしないが、電極端子50Aと電極端子50Bとを隔離するための隔壁も同様に形成されている。
【0019】
隔壁212と回路基板40との間には、ゴムやシリコン等の弾性体で構成されたシート状の密閉部材80が設けられている。この密閉部材80は、隔壁212と回路基板40との隙間寸法よりも大となる厚みを有しているとともに、各電極端子50A,50Bに対応する位置に開口が形成されている。したがって、各開口に電極端子50A,50Bを通した状態で回路基板40と隔壁212とに挟まれた状態で配置され、弾発力が発揮されて各隔壁212間が密閉されるとともに、隔壁212に囲まれた空間と電池パック1内部とが遮断された状態となっている。
【0020】
図5に示すように、副ケース部22の基端側には、副ケース部22の突出方向と直交方向に膨出形成された挿入規制用凸部22Aが設けられているとともに、ドライバドリル100の収容空間130A内には挿入規制用凸部22Aに対応した挿入規制部(不図示)が形成されている。この挿入規制用凸部22Aの膨出位置は、電池パック1内に内蔵される電池の電池種に応じて決定されており、例えば、公称電圧の低い電池パック1については、挿入規制用凸部22Aの膨出位置を副ケース部22の基端側に配置する一方、公称電圧の高い電池パック1については、逆にその膨出位置を副ケース部22の先端側に配置するようにする。そして、電池パック1が装着されるドライバドリル100側については、電池パック1が正規装着されたときに、当該ドライバドリル100に使用可能な電池パック1のうち最も公称電圧の高いものに形成された挿入規制用凸部22Aに係合する挿入規制部を形成しておく。
【0021】
また、主ケース部21の左右端後方側には、副ケース部22がドライバドリル100の収容空間130A内に収容されたときに、当該ドライバドリル100に形成されているロック受け部に係止可能な1対のロック片213が左右対称位置に形成されている。このロック片213は、電池パック1側に撓み変形可能な状態で上方へ向けて延伸形成されており、その延伸長さは副ケース部22の基端よりもわずかに上方位置となるような長さに設定されている。また、主ケース部21と副ケース部22との境界領域のうち、両ロック片213に対応する位置に、それぞれのロック片213側へ突出形成された撓み規制部材214が形成されている。この撓み規制部材214によって、ロック片213の電池パック1側への撓み変形量が所定量に規制されるようになっている。
【0022】
本実施形態の電池パック1では、電極端子50A,50Bは、主ケース部21の前端と副ケース部22の突出端との仮想線Bよりも主ケース部21側であって、かつ、主ケース部21のうち副ケース部22側に設けられた形となっている。これにより、電池パック1が横倒しで載置された状態で外部から衝撃が加えられることがあったとしても、その衝撃が直接的に電極端子50A,50Bに加えられることを抑制でき、電極端子50A,50Bの破損・損傷を効果的に抑制できる。また、緩衝部材60,61が設けられていることで、電池パック1に強い衝撃が加えられたとしても電池セル31,32,33に対する衝撃力を緩和することができる。また、本実施形態では、複数の電極端子50A,50Bを互いに並列させた2つの電極端子の群として配置していることで、電極端子50A,50Bのすべてを並列させた場合に比べて主ケース部21の横幅寸法を小さくすることができる。また、電極端子50Aと電極端子50Bとで端子の向きを直交させることで、その寸法をさらに小さくすることができる。
【0023】
また、電池パック1内に設けられた密閉部材80によって、隔壁212間の空間と電池パック1内が隔絶されているため、隔壁212内に侵入した粉塵や水分が電池パック1内に入り込むことがなく、防水性、防塵性を確保することができる。
【0024】
電池パック1をドリルドライバ100に装着する際には、上述したように、副ケース部22をハンドル部130の収容空間130A内に進入させる。このとき、電線150は隔壁170を介して形成されている電線通路160内にあることから、この電線150が副ケース部22の収容空間130Aへの進入を阻害することがなく進入動作の円滑化を図ることができるとともに、副ケース部22へ電線150が干渉することによる断線の虞がない。
【0025】
仮に、ドライバドリル100の使用可能な電圧を超える公称電圧を有する電池パック1をドライバドリル100に装着しようとするときには、電池パック1の挿入規制用凸部22Aがドライバドリル100側の挿入規制部にあたることで、正規の装着状態となることが阻止されるため、ドライバドリル100に対して不適合な電池パック1を装着するといった誤挿入を防止することができる。
【0026】
電池パック1のドリルドライバ100への装着時において、副ケース部22の収容空間130Aへの差込深さが所定の差込深さに近づいて本体側電極端子180と電極端子50A,50Bとが接続される過程では、両端子50,180間に一定の摩擦力が発生し、当該摩擦力に抗いながら両端子50,180の接続深さが増大していく。
【0027】
従って、接続深さが増大する時には、回路基板40に対して押圧力が発生するが、横置きの電池セル31,32とケース体10との間に設けられた緩衝部材60によって回路基板40への押圧力が吸収されるためその押圧力が低減される。さらには、緩衝部材60で吸収しきれない押圧力が発生したとしても、回路基板40は支持部材70により電池セル31,32に一体化されているため、その押圧力によって変形することがなく回路基板40の損傷を回避できる。
【0028】
また、回路基板40が両端子50,180の接続方向と直交姿勢でケース体10内に収められているため、本体側電極端子180と電極端子50A,50Bとを接続する過程で発生する電極端子50A,50Bの実装部位への剥離力の発生を防止でき、電極端子50A,50Bの実装状態を安定的に維持できる。
【0029】
さらには、隔壁212によって各電極端子50A,50Bが隔離されているため、両端子50,180の接続時に電極端子50A,50Bが変形することで隣接する電極端子50A,50Bが接触したり、あるいは、振動等によって隣接する電極端子50A,50Bが接触することを防止することができる。
【0030】
そして、副ケース部22を収容空間130A内に差し込んだときの差込深さが所定の差込深さに到達すると、主ケース部21の側面が台座140内面に当接するとともに、電池パック1のロック片213がドライバドリル100側のロック受け部に係止することで抜け止め状態で装着される。
【0031】
電池パック1をドライバドリル100から取り外すときには、電池パック1のロック片213を電池パック1側に押し込んで撓ませることで、ロック受け部との係合状態を解除し、この状態を維持したまま副ケース部22を収容空間130Aから引き出す。この際に、ロック片213の撓み変形量が撓み規制部材214によって規制されるため、必要以上に撓むことがなく、ロック片213の損傷・破損を防止することができる。
【0032】
本発明は、上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
(1)上記実施形態では、副ケース部22を主ケース部21の後端側に配置した構成を示したが、例えば、副ケース部22を主ケース部21の中央側に配置した構成としてもよい。
(2)また、上記実施形態では、電動工具としてドライバドリル100の例を示したが、駆動源をモータ120とする電動工具であれば、他の種類の電動工具にも適用することができる。
(3)また、上記実施形態では、各電極端子50A,50B間に隔壁212を設けた構成を示したが、例えば、充電電力供給用の電極端子50A,50Bの周囲にのみ隔壁を設ける構成としてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1…電池パック
21…主ケース部
22…副ケース部
31,32,33…電池セル
40…回路基板
50A,50B…電極端子
60,61…緩衝部材
70…支持部材
80…密閉部材
100…ドライバドリル
110…本体部
120…モータ
130…ハンドル部
130A…収容空間(収容部)
150…電線
170…隔壁
211A,211B…スリット
212…隔壁
B…仮想線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上ケース部と下ケース部からなるケース体と、
該ケース体に収容される電池セルと、
前記電池セルに電気的に接続される複数の電極端子と、を有する電池パックであって、
前記上ケース部には、前記複数の電極端子に対応した位置に前記電極端子を露出する複数の開口が形成され、
前記開口から前記ケース体内部への異物の侵入を抑制する部材を設けたことを特徴とする電池パック。
【請求項2】
前記電池セルの上側に配置され前記電池セルの保護回路が実装された回路基板を有し、
前記部材は、前記回路基板の上方に設けられることを特徴とする請求項1に記載の電池パック。
【請求項3】
上ケース部と下ケース部からなるケース体と、
該ケース体に収容される電池セルと、
該電池セルの上側に配置される回路基板と、
該回路基板に実装される複数の電極端子と、を有する電池パックであって、
前記回路基板と前記上ケース部との間に前記ケース体内部への異物の侵入を抑制する弾性部材を設けたことを特徴とする電池パック。
【請求項4】
前記弾性部材を前記複数の電極端子の周りに設けたことを特徴とする請求項3に記載の電池パック。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の電池パックが着脱可能に装着される電動工具であって、
駆動源であるモータを収容する本体部と、
該本体部から延伸形成されるハンドル部と、
該ハンドル部の下端に形成され前記電池パックが装着される台座と、を備えたことを特徴とする電動工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−77574(P2013−77574A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−279487(P2012−279487)
【出願日】平成24年12月21日(2012.12.21)
【分割の表示】特願2007−280279(P2007−280279)の分割
【原出願日】平成19年10月29日(2007.10.29)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】