説明

電池パック

【課題】複数の電池モジュールを容易に固定することを可能とし、作業員の負荷を軽減することが可能な構造の電池パックを提供すること。
【解決手段】電池パックCPは、凸部22を有する電池モジュール1と、
それぞれの凸部22が一直線上に並ぶように配列された複数の電池モジュール1の凸部22を保持する保持体70と、
保持体70を凸部22に固定する固定部材80と、
を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電池パックに係り、特に、リチウムイオン電池などに代表される非水電解液を用いた二次電池(セル)をケースに収容した複数の電池モジュールを一直線上に配列した状態で固定した電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非水系二次電池、特にリチウムイオン二次電池は、高電圧、高エネルギー密度を有することから、コードレス携帯型電子機器の電源、さらには電気自動車などの車両駆動用の電源などとして注目されている。
【0003】
例えば、特許文献1においては、複数の蓄電体セルとしての平面ラミネート型電池と、このラミネート型電池を収容する外装ケースとを備えて構成された蓄電体装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献2においては、複数のバッテリから構成される駆動用電源をバッテリボックスに収容した構成の電気自動車用バッテリボックス装置が開示されている。
【特許文献1】特開2005−268004号公報
【特許文献2】特許第3350189号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、上述した問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、複数の電池モジュールを容易に固定することを可能とし、作業員の負荷を軽減することが可能な構造の電池パックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の第1の態様による電池パックは、
凸部を有する電池モジュールと、
それぞれの前記凸部が一直線上に並ぶように配列された複数の前記電池モジュールの前記凸部を保持する保持体と、
前記保持体を前記凸部に固定する固定部材と、
を備えたことを特徴とする電池パック。
【0007】
この発明の第2の態様による電池パックは、
電池モジュールと、
底板から略垂直に延出した第1固定板と、前記底板から略垂直に延出し且つ前記底板から離れるに従って厚みが減少するテーパ状の第2固定板と、の間に一直線上に配列された複数の前記電池モジュールを収納する筐体と、
前記筐体の前記第2固定板と前記電池モジュールとの間に挿入された楔部材と、
前記楔部材を前記筐体に固定する固定部材と、
を備えたことを特徴とする。
【0008】
この発明の第3の態様による電池パックは、
電池モジュールと、
固定板と、
前記固定板に対向配置され移動可能に構成された押圧板と、
前記固定板と前記押圧板との間で一直線上に配列された複数の前記電池モジュールを保持するように前記押圧板を前記固定板に向けて付勢して複数の前記電池モジュールを固定する付勢部材と、
を備えたことを特徴とする。
【0009】
この発明の第4の態様による電池パックは、
開放部を有するケースと、前記ケースに収容されたセルと、を備えた電池モジュールと、
一直線上に配列された複数の前記電池モジュールのそれぞれにおいて、前記ケースと嵌合して前記開放部を塞ぐとともに前記電池モジュールを固定する蓋部材と、
を備えたことを特徴とする。
【0010】
この発明の第5の態様による電池パックは、
電極群及び非水電解液を外装ケース内に収納して構成され、前記電極群に電気的に接続されるとともに前記外装ケースから突出したセル端子を有するセルと、前記セルを収容するセル収容部を有するとともに前記セルのセル端子が突出する端子孔を有するケースと、を備えた電池モジュールと、
一直線上に配列された複数の前記電池モジュールのそれぞれにおいて、前記ケースの前記端子孔から突出した前記セル端子に電気的に接続されるとともに隣接する前記電池モジュール間を電気的に接続する接続部材と、
前記接続部材を前記電池モジュールのそれぞれの前記ケースに固定する固定部材と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、複数の電池モジュールを容易に固定することを可能とし、作業員の負荷を軽減することが可能な構造の電池パックを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、この発明の一実施の形態に係る電池パックについて図面を参照して説明する。
【0013】
まず、電池パックに備えられる電池モジュールの基本構造について説明する。
【0014】
図1及び図2に示すように、電池モジュール1は、セル10と、セル10を収容可能に形成されたケース20と、を備えて構成されている。
【0015】
すなわち、セル10は、リチウムイオン電池などに代表される非水電解液を用いた二次電池であり、外装ケース内に電極群及び非水電解液を密封して収納した構造を有している。セル10の外形(つまり、外装ケースの外形)は、概ね直方体である。
【0016】
電極群は、例えば、正極及び負極をその間にセパレータを介在させて渦巻き状に捲回し、さらに径方向に圧縮した扁平な矩形状を有している。このような電極群には、セル端子11が電気的に接続されている。すなわち、電極群の正極には正極端子11Pが電気的に接続され、また、電極群の負極には負極端子11Mが電気的に接続されている。これらの正極端子11P及び負極端子11Mは、外装ケースの一つの面(上面)13からともに外方に向かって突出している。
【0017】
ケース20は、セル10を収容するセル収容部21Xを有するケース本体21と、ケース本体21から突出した凸部22と、を有している。このようなケース20は、例えば、ポリカーボネート(PC)やポリフェニレンサルファイド(PPS)などの樹脂や、セラミックなどによって形成されている。このケース20の凸部22は、電池モジュール1の凸部に対応する。
【0018】
ケース本体21は、略直方体状に形成され、セル10を囲む6つの壁板を有している。セル収容部21Xは、ケース本体21の内側に形成された略直方体状の中空部に相当し、セル10の外形より大きな寸法に形成されている。これらの6つの壁板は一体的に形成されても良いし、少なくとも1つの壁板がネジ止めや嵌合構造などにより他の壁板と接合されていても良い。ケース本体21を構成する1つの壁板21Aには、セル10の正極端子11P及び負極端子11Mを挿入可能とする2つの端子孔21Hが形成されている。
【0019】
このようなケース本体21のセル収容部21Xにセル10を収容した際には、セル10とケース本体21との間に、冷却媒体(例えば冷風)が通過可能なわずかな隙間が形成される。また、端子孔21Hに挿入された正極端子11P及び負極端子11Mは、それぞれ壁板21Aよりも外方に突出し、電流リードとの接続を可能としている。
【0020】
凸部22は、壁板21Aから外方(つまり、セル収容部21Xとは反対側)に向かって突出するように形成されている。この実施の形態においては、凸部22は、略直方体状に形成され、壁板21Aから外方に向かって立ち上がった4つの側面22A乃至22D、及び、上面22Eを有している。これらの4つの側面22A乃至22D及び上面22Eは、略矩形状に形成されている。なお、凸部22の形状は、ここに示した例に限定されるものではなく、他の形状であっても良い。
【0021】
側面22Aは、正極端子11が突出した壁板21Aに対して略垂直な方向に延出している。側面22Bは、側面22Aに対向し、負極端子11Mが突出した壁板21Aに対して略垂直な方向に延出している。側面22C及び側面22Dは、対向し、ともに側面22A及び側面22Bに隣接している。また、これらの側面22C及び側面22Dは、ケース本体21における壁板21C及び壁板21Dとそれぞれ同一平面をなすように一体的に形成されている。上面22Eは、4つの側面22A乃至22Dとそれぞれ繋がっている。
【0022】
また、凸部22は、インサート30を備えている。インサート30は、側面22A及び側面22Bのそれぞれから凸部22の内部に向かって延出しており、内面にメネジが形成されている。このようなインサート30は、例えば黄銅などの金属によって形成されている。
【0023】
次に、電池パックCPの具体的な構造の実施形態について詳細に説明する。
【0024】
≪第1実施形態≫
第1実施形態においては、図3に示すように、電池パックCPは、複数の電池モジュール1と、保持体70と、固定部材80と、を備えて構成されている。
【0025】
複数の電池モジュール1A、1B、1C…は、この順に、それぞれの凸部22が一直線上に並ぶように配列されている。
【0026】
より具体的には、図4に示すように、各電池モジュール1は、互いのケース20が対向するように配置されている。例えば、電池モジュール1Aのケース本体21における壁板21D及び凸部22の側面22Dは、これに隣接する電池モジュール1Bのケース本体21における壁板21C及び凸部22の側面22Cに対向している。図4に示した例のように、各電池モジュール1のケース20は、密着していても良い。
【0027】
また、このとき、各電池モジュール1のセル端子11は、凸部22が並ぶ方向と平行な一直線上に並んでいる。なお、複数の電池モジュール1は、電気的に直列または並列に接続することが可能である。例えば、直列に接続する場合には、複数の電池モジュール1は、隣接する電池モジュール1のセル端子が互いに異極となるように配列され、また、並列に接続する場合には、複数の電池モジュール1は、隣接する電池モジュール1のセル端子が同極となるように配列される。
【0028】
保持体70は、それぞれの凸部22が一直線上に並んだ電池モジュール1の凸部22を保持する。
【0029】
より具体的には、図5に示すように、保持体70は、例えば、1枚の板状材料を屈曲することによって形成可能であり、中間部71、及び、一対の挟持部72を一体的に有している。中間部71及び一対の挟持部72は、略U字型に形成されている。
【0030】
中間部71は、略矩形の板状に形成されている。この中間部71は、保持した凸部22のそれぞれの上面22Eに沿って略平行に延出している。
【0031】
挟持部72は、第1挟持部72A及び第2挟持部72Bからなり、それぞれが中間部71の両端に接続されている。これらの第1挟持部72A及び第2挟持部72Bは、略矩形の板状に形成されている。また、これらの第1挟持部72A及び第2挟持部72Bは、凸部22の幅W1と同等の間隔をおいて対向している。つまり、第1挟持部72Aは凸部22の側面22Aに沿って略平行に延出するとともに、第2挟持部72Bは凸部22の側面22Bに沿って略平行に延出し、これらの第1挟持部72A及び第2挟持部72Bは、凸部22を挟んでいる。
【0032】
これらの第1挟持部72A及び第2挟持部72Bは、側面22A及び側面22Bがそれぞれ上面22Eに対して略垂直な方向に延出しているのに対応して、中間部71に対してそれぞれ略垂直な方向に延出している。つまり、第1挟持部72A及び第2挟持部72Bは、略平行に対向している。
【0033】
また、これらの第1挟持部72A及び第2挟持部72Bは、固定部材の一例であるネジ80を挿入可能な開口72Hを有している。第1挟持部72Aに形成された複数の開口72Hは、第1挟持部72Aと各電池モジュールの側面22Aとが対向したときに側面22Aに設けられたインサート30と連通する。また、第2挟持部72Bに形成された複数の開口72Hは、第2挟持部72Bと各電池モジュールの側面22Bとが対向したときに側面22Bに設けられたインサート30と連通する。
【0034】
ネジ80は、例えばバネワッシャ81及び平ワッシャ82を介して、第1挟持部72A及び第2挟持部72Bのそれぞれに形成された開口72Hから挿入され、インサート30に締め付けられる。これにより、保持体70は、各電池モジュール1の凸部22に固定される。同時に、複数の電池モジュール1A、1B、1C…を一体的に保持固定することができる。
【0035】
このような第1実施形態によれば、それぞれの凸部22が一直線上に並ぶように複数の電池モジュール1を配列することによって、保持体70によって複数の凸部22を容易に保持することが可能であり、固定部材80によって保持体70を全ての凸部22に固定することができる。つまり、1つの保持体70を利用して複数の電池モジュール1を容易に固定することが可能となる。このようにして固定された複数の電池モジュール1は、電池パックCPを構成するように整列されているため、取り扱いが容易となる。また、作業効率を改善することが可能となり、作業員の負荷を軽減することも可能となる。
【0036】
上述した第1実施形態において、電池パックCPは、図6に示すように、さらに、保持体70によって固定された複数の電池モジュール1を収納する筐体90と、保持体70を筐体90に固定する筐体固定部材100と、を備えて構成しても良い。
【0037】
筐体90は、平板状の底板91と、この底板91から略垂直に延出した平板状の第1固定板92と、この第1固定板92に対向し底板91から略垂直に延出した平板状の第2固定板93と、を有している。図6に示した例では、筐体90は、底板91、第1固定板92、及び、第2固定板93とで略U字型に形成されているが、この例に限らず、たとえば、箱状に形成されていても良い。
【0038】
第1固定板92は、一列に配列された複数の電池モジュール1…のうち、一端側に配置された電池モジュール1Aのケース本体21における壁板21Cに対向している。また、第2固定板93は、一列に配列された複数の電池モジュール1…のうち、他端側に配置された電池モジュール1Zのケース本体21における壁板21Dに対向している。これらの第1固定板92及び第2固定板93は、両者の間に配置される複数の電池モジュール1…の総厚と同等の間隔をおいて、略平行に対向している。
【0039】
筐体固定部材の一例であるネジ100Aは、保持体70を介して第1固定板92に締め付けられ、保持体70を第1固定板92に固定している。筐体固定部材の一例であるネジ100Bは、保持体70を介して第2固定板93に締め付けられ、保持体70を第2固定板93に固定している。
【0040】
これにより、保持体70によって固定された電池モジュール1の底面が筐体90の底板91に押し付けられ、複数の電池モジュール1と筐体90とが一体化される。このため、複数の電池モジュール1を強固に筐体90に固定することが可能となる。また、各電池モジュール1は、保持体70と筐体90とで支持され、特に、電池モジュール1の厚み方向(あるいは、複数の電池モジュールの配列方向)が一対の固定板92及び93によって挟持されるため、セルの膨れを規制することが可能となる。
【0041】
また、各電池モジュール1と筐体90との間には、弾性部材110が配置されても良い。この弾性部材110としては、例えば、シート状のゴムなどである。特に、弾性部材110は、筐体90の底板91と電池モジュール1の底面との間に配置することが有効である。
【0042】
これにより、電池モジュール1の寸法誤差を吸収することが可能となり、各電池モジュール1を一様な力で筐体90に固定することが可能となる。また、振動や衝撃などの外力が作用した場合であっても、電池モジュール1、特にセル10にかかる負荷を軽減することが可能となる。
【0043】
また、上述した第1実施形態において、電池パックCPは、さらに、図7乃至図9に示すように、電流リード40と、保持体70に埋設された接続部材60と、を備えて構成しても良い。
【0044】
すなわち、電流リード40は、凸部22の外形に沿って屈曲している。この電流リード40は、導電性材料によって形成され、例えば、1枚の板状の導電性材料を屈曲することによって形成可能である。例えば、電流リード40は、接続部41、及び、延出部42を一体的に有し、略L字型に形成されている。
【0045】
より具体的に説明すると、接続部41は、略矩形の板状に形成され、ケース本体21の壁板21Aと略平行に延出している。この接続部41は、壁板21Aから突出したセル端子が挿入可能な開口41Hを有している。この接続部41は、開口41Hに挿入されたセル端子と溶接されるなどして電気的に接続されている。図9に示した例では、負極端子11Mに接続された電流リード40しか図示していないが、当然のことながら正極端子11Pにも電流リード40は接続されている。
【0046】
延出部42は、その一端が接続部41の一端に接続されている。この延出部42は、略矩形の板状に形成され、凸部22の側面22Aに沿って延出している。この延出部42は、側面22Aが壁板21Aに略垂直な方向に延出しているのに対応して、接続部41に対して略垂直な方向に延出している。また、この延出部42は、インサート30に締め付けられるネジ80を挿入可能な開口42Hを有している。保持体70が凸部22を保持した際には、延出部42は、凸部22と保持体70との間に延出している。
【0047】
なお、接続部41は、その他端に、接続部41に対して略垂直な方向に延出した電圧取出端子50を有しているが、必ずしも必要ではない。
【0048】
一方、ケース20については、ケース本体21は、接続部41が嵌合する袋状の嵌合部BCを有している。この嵌合部BCは、壁板21Aから突出して形成されており、凸部22と対向する側に、接続部41の厚みDよりも大きな空隙を有している。このため、接続部41の他端は、嵌合部BCの空隙に嵌合し、保持される。なお、接続部41の他端に電圧取出端子50が設けられた場合には、電圧取出端子50は、嵌合部BCに嵌合することなく延出している。
【0049】
接続部材60は、保持体70の電流リード40と対向する面に埋設されている。すなわち、接続部材60は、第1挟持部72A及び第2挟持部72Bのそれぞれにおける凸部22と対向する面に埋設されている。この接続部材60は、板状に形成され、電池モジュール1が配列された方向に延出しており、隣接する2以上の電流リード40にコンタクトしている。
【0050】
また、接続部材60は、ネジ80を挿入可能な開口60Hを有している。開口60Hは、第1挟持部72A及び第2挟持部72Bのそれぞれに形成された開口72Hと連通している。
【0051】
このような構成においては、ネジ80は、例えばバネワッシャ81及び平ワッシャ82を介して、第1挟持部72A及び第2挟持部72Bのそれぞれの開口72H及び接続部材60の開口60Hから挿入され、さらに、電流リード40の開口42Hに挿入され、インサート30に締め付けられる。
【0052】
これにより、複数の電池モジュール1A、1B、1C…を一体的に保持固定するとともに、隣接する電池モジュール間を電気的に接続することができる。図8に示した例では、複数の電池モジュール1を直列に接続する場合に対応し、電池モジュール1Aのセル端子11Mに接続された電流リード40と、これに隣接する電池モジュール1Bのセル端子11Pに接続された電流リード40とは、接続部材60を介して電気的に接続される。
【0053】
このように、各電池モジュールの固定と、電池モジュール間の電気的な接続とを同時に行うことができ、組立工程数を低減することが可能となり、作業効率を改善し、作業員の負荷を軽減することが可能となる。
【0054】
≪第2実施形態≫
第2実施形態においては、図10に示すように、電池パックCPは、複数の電池モジュール1と、筐体90と、楔部材200と、固定部材201と、を備えて構成されている。
【0055】
複数の電池モジュール1A、1B、1C…は、この順に、一直線上に並ぶように配列されている。
【0056】
筐体90は、一直線上に配列された複数の電池モジュール1を収納するものであり、平板状の底板91と、この底板91から略垂直に延出した平板状の第1固定板92と、この第1固定板92に対向し底板91から略垂直に延出し且つ底板91から離れるに従って厚みが減少するテーパ状の第2固定板93と、を有している。図10に示した例では、筐体90は、底板91、第1固定板92、及び、第2固定板93とで略U字型に形成されているが、この例に限らず、第2固定板93がテーパ状であれば、例えば箱状に形成されていても良い。
【0057】
第1固定板92は、一列に配列された複数の電池モジュール1…のうち、一端側に配置された電池モジュール1Aのケース本体21における壁板21Cに対向している。また、第2固定板93は、一列に配列された複数の電池モジュール1…のうち、他端側に配置された電池モジュール1Zのケース本体21における壁板21Dに対向し、両者の間に楔状の空間を形成している。
【0058】
これらの第1固定板92及び第2固定板93の間の底板91の長さは、両者の間に配置される複数の電池モジュール1…の総厚と同等であり、第1固定板92及び第2固定板93は、この間隔をおいて、略平行に対向している。
【0059】
楔部材200は、第2固定板93と電池モジュール1Zの壁板21Dとの間に形成される空間の形状に対応するように形成されている。この楔部材200は、第2固定板93と電池モジュール1Zとの間に挿入される。
【0060】
固定部材の一例であるネジ201は、第2固定板93を介して楔部材200に締め付けられ、楔部材200と第2固定板93とを固定している。
【0061】
これにより、複数の電池モジュール1を配列した方向に力を付与しつつ、複数の電池モジュール1を筐体90に固定することができる。また、各電池モジュール1は、その厚み方向が一対の固定板92及び93及び楔部材200によって挟持されるため、セルの膨れを規制することが可能となる。
【0062】
また、各電池モジュール1と筐体90との間には、図6に示した例と同様に、弾性部材110が配置されても良い。特に、弾性部材110は、筐体90の底板91と電池モジュール1の底面との間に配置することが有効である。
【0063】
これにより、電池モジュール1の寸法誤差を吸収することが可能となり、各電池モジュール1を一様な力で筐体90に固定することが可能となる。また、振動や衝撃などの外力が作用した場合であっても、電池モジュール1、特にセル10にかかる負荷を軽減することが可能となる。
【0064】
なお、この第2実施形態においても、図3に示した保持体70を適用し、保持体70と筐体90とを固定しても良い。また、図7に示したような電流リード40を適用し、しかも、図8に示したような接続部材60を埋設した保持体70を適用し、電池モジュール間を電気的に接続してもよい。
【0065】
≪第3実施形態≫
第3実施形態においては、図11及び図12に示すように、電池パックCPは、複数の電池モジュール1と、固定板210と、押圧板220と、付勢部材230と、を備えて構成されている。
【0066】
複数の電池モジュール1A、1B、1C…は、この順に、一直線上に並ぶように配列されている。
【0067】
固定板210及び押圧板220は、概ね厚みが一定の板状に形成されている。押圧板220は、所定の間隔をおいて固定板210に略平行に対向配置され、移動可能に構成されている。固定板210は、一列に配列された複数の電池モジュール1…のうち、他端側に配置された電池モジュール1Zに対向している。また、押圧板220は、一列に配列された複数の電池モジュール1…のうち、一端側に配置された電池モジュール1Aに対向している。
【0068】
なお、これらの固定板210及び押圧板220は、電池モジュール1の一部が嵌め込み可能なように、例えば図13に示すように、電池モジュール1の外形に相当する凹部Cを有していることが望ましい。
【0069】
付勢部材230は、例えば、固定板210及び押圧板220に掛け渡されたバンド231と、このバンドに張力を付与するバンド締め用ネジ232とで構成されている。このような構成により、バンド締め用ネジ232を締め付けることにより、固定板210と押圧板220との間で一直線上に配列された複数の電池モジュール1を保持するように押圧板220を固定板210に向けて付勢して、複数の電池モジュール1を固定することができる。また、各電池モジュール1は、その厚み方向が固定板210及び押圧板220によって挟持されるため、セルの膨れを規制することが可能となる。
【0070】
また、固定板210及び押圧板220が電池モジュール1の外形に相当する凹部Cを有していることにより、互いに連結された複数の電池モジュール1の厚み方向に直交する方向の移動を規制することができ、より強固に固定することが可能となる。
【0071】
なお、この第3実施形態においても、図3に示した保持体70を適用し、保持体70と筐体90とを固定しても良い。また、図7に示したような電流リード40を適用し、しかも、図8に示したような接続部材60を埋設した保持体70を適用し、電池モジュール間を電気的に接続してもよい。
【0072】
≪第4実施形態≫
第4実施形態において適用される電池モジュール1は、図14に示すように、セル10と、セル10を収容するケース20と、を備えている。
【0073】
このケース20は、開放部20Hを有している。この実施の形態では、開放部20Hは、ケース20の底部つまりセル端子11が突出する壁板21Aと対向する側に形成されている。また、ケース20は、開放部20Hに近接する位置に嵌合孔20APを有している。
【0074】
この電池モジュール1は、さらに、ケース20と嵌合して開放部20Hを塞ぐ蓋部材300を備えている。この蓋部材300は、嵌合孔20APに嵌合する爪部300Cを有している。
【0075】
このような構成においては、セル10は、ケース20の開放部20Hから挿入される。そして、蓋部材300の爪部300Cがケース20の嵌合孔20APに嵌合することにより、ケース20の開放部20Hが塞がれ、セル10がケース20の内部に収容される。これにより、電池モジュールの組立工程数を低減することが可能となる。
【0076】
次に、上述した構成のセル10及びケース20を備えた電池モジュール1を複数備えた電池パックCPについて説明する。
【0077】
図15に示すように、電池パックCPは、複数の電池モジュール1と、蓋部材310と、を備えて構成されている。
【0078】
蓋部材310は、一直線上に配列された複数の電池モジュール1のそれぞれにおいて、ケース20と嵌合して開放部20Hを塞ぐとともに電池モジュール1を固定する。すなわち、蓋部材310は、複数のケース20に設けられた嵌合孔20APに嵌合する爪部310Cを有している。
【0079】
このような構成においては、各ケース20の開放部20Hからセル10を挿入した後、蓋部材310の爪部310Cが各ケース20の嵌合孔20APに嵌合することにより、ケース20の開放部20Hが塞がれ、セル10がケース20の内部に収容されるとともに、複数の電池モジュール1は、蓋部材310を介して連結される。
【0080】
これにより、電池パックの組立工程数を低減することが可能となる。
【0081】
また、第1実施形態や第2実施形態で説明したような筐体90の底板91として、上述したような蓋部材310を適用しても良い。これにより、複数の電池モジュール1を容易に筐体90に固定することが可能となる。
【0082】
また、各電池モジュール1と蓋部材310との間には、図6に示した例と同様に、弾性部材110が配置されても良い。特に、弾性部材110は、筐体90の蓋部材310と電池モジュール1の底面との間に配置することが有効である。
【0083】
これにより、電池モジュール1の寸法誤差を吸収することが可能となり、各電池モジュール1を一様な力で蓋部材310に固定することが可能となる。また、振動や衝撃などの外力が作用した場合であっても、電池モジュール1、特にセル10にかかる負荷を軽減することが可能となる。
【0084】
なお、この第4実施形態においても、図3に示した保持体70を適用し、保持体70と筐体90とを固定しても良い。また、図7に示したような電流リード40を適用し、しかも、図8に示したような接続部材60を埋設した保持体70を適用し、電池モジュール間を電気的に接続してもよい。
【0085】
≪第5実施形態≫
第5実施形態においては、図16に示すように、電池パックCPは、複数の電池モジュール1と、接続部材400と、固定部材80と、を備えて構成されている。
【0086】
複数の電池モジュール1A、1B、1C…は、この順に、それぞれの凸部22が一直線上に並ぶように配列されている。電池モジュール1のそれぞれは、上述した構成と同一である。
【0087】
接続部材400は、一直線上に配列された複数の電池モジュール1のそれぞれにおいて、ケース20の端子孔21Hから突出したセル端子11に電気的に接続されるとともに隣接する電池モジュール間を電気的に接続するものである。
【0088】
すなわち、接続部材400は、1つの電池モジュール1Aのセル端子11に電気的に接続される第1電流リード410と、この電池モジュール1Aに隣接する電池モジュール1Bのセル端子11に電気的に接続される第2電流リード420と、これらの第1電流リード410と第2電流リード420とを連結する連結部430と、を有している。
【0089】
これらの第1電流リード410、第2電流リード420、及び、連結部430は、導電性材料によって形成されており、連結部430によって第1電流リード410と第2電流リード420とを電気的に接続している。
【0090】
第1電流リード410は、接続部411、中間部412、及び、延出部413を一体的に有し、略Z字型に形成されている。同様に、第2電流リード420は、接続部421、中間部422、及び、延出部423を一体的に有し、略Z字型に形成されている。ここでは、第1電流リード410について、より詳細に説明する。
【0091】
接続部411は、略矩形の板状に形成され、ケース本体21の壁板21Aと略平行に延出している。この接続部411は、壁板21Aから突出したセル端子が挿入可能な開口411Hを有している。この接続部411は、開口411Hに挿入されたセル端子と溶接されるなどして電気的に接続されている。
【0092】
中間部412は、その一端が接続部411の一端に接続されている。この中間部412は、略矩形の板状に形成され、凸部22の側面22Aに沿って延出している。この中間部412は、側面22Aが壁板21Aに略垂直な方向に延出しているのに対応して、接続部411に対して略垂直な方向に延出している。また、この中間部422は、インサート30に締め付けられる固定部材の一例であるネジ80を挿入可能な開口412Hを有している。
【0093】
延出部413は、その一端が中間部412の他端に接続されている。この延出部413は、略矩形の板状に形成され、凸部22の上面22Eに沿って延出している。この延出部413は、上面22Eが側面22Aに略垂直な方向に延出しているのに対応して、中間部412に対して略垂直な方向に延出している。
【0094】
なお、接続部411は、その他端に、接続部411に対して略垂直な方向に延出した電圧取出端子50を有しているが、必ずしも必要ではない。
【0095】
連結部430は、略U字型に形成され、第1電流リード410の中間部412に接続されるとともに、第2電流リード420の中間部422に接続されている。
【0096】
このような構成においては、ネジ80は、例えばバネワッシャ81及び平ワッシャ82を介して、第1電流リード410の開口412H及び第2電流リード420の開口422Hからそれぞれ挿入され、インサート30に締め付けられる。
【0097】
これにより、複数の電池モジュール1A、1Bを一体的に保持固定するとともに、隣接する電池モジュール間を電気的に接続することができる。図16乃至図18に示した例では、複数の電池モジュール1を直列に接続する場合に対応し、電池モジュール1Aのセル端子11Mに接続された第1電流リード410と、これに隣接する電池モジュール1Bのセル端子11Pに接続された第2電流リード420とは、連結部430を介して電気的に接続される。
【0098】
このように、各電池モジュールの固定と、電池モジュール間の電気的な接続とを同時に行うことができ、組立工程数を低減することが可能となり、作業効率を改善し、作業員の負荷を軽減することが可能となる。
【0099】
また、固定部材80によって接続部材400を固定することにより、接続部材400とセル端子11とが位置決めされた状態で固定される。このため、複数の電池モジュール1を接続した後に、接続部材400をセル端子11に押さえ込む冶具を必要とすることなく、セル端子11と接続部材400とをまとめてしかも容易にレーザ溶接することが可能である。
【0100】
なお、この第5実施形態においては、第1実施形態や第2実施形態で説明したような筐体90を適用しても良い。また、図3に示した保持体70を適用し、保持体70と筐体90とを固定しても良い。
【0101】
なお、この発明は、上記実施形態そのものに限定されるものではなく、その実施の段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】図1は、この発明の一実施の形態に係る電池モジュールの基本構造を概略的に示す断面図である。
【図2】図2は、図1に示した電池モジュールの基本構造を概略的に示す斜視図である。
【図3】図3は、第1実施形態に係る電池パックの構造を概略的に示す斜視図である。
【図4】図4は、図3に示した電池パックにおいて一列に配列した複数の電池モジュールの外観を概略的に示す斜視図である。
【図5】図5は、図3に示した電池パックに適用可能な保持体の構造を概略的に示す斜視図である。
【図6】図6は、図3に示した電池パックを筐体に固定した状態を概略的に示す斜視図である。
【図7】図7は、第1実施形態に係る電池パックの各電池モジュールに適用可能な電流リードの構造を概略的に示す斜視図である。
【図8】図8は、図3に示した電池パックに適用可能な他の保持体の構造を概略的に示す斜視図である。
【図9】図9は、図8に示した保持体をケースに取り付けた状態を概略的に示す断面図である。
【図10】図10は、第2実施形態に係る電池パックの構造を概略的に示す斜視図である。
【図11】図11は、第3実施形態に係る電池パックの構造を概略的に示す斜視図である。
【図12】図12は、第3実施形態に係る電池パックの構造を概略的に示す側面図である。
【図13】図13は、第3実施形態に係る電池パックに適用可能な固定板及び押圧板の構造を概略的に示す斜視図である。
【図14】図14は、第4実施形態に係る電池モジュールの構造を概略的に示す斜視図である。
【図15】図15は、第4実施形態に係る電池パックの構造を概略的に示す分解斜視図である。
【図16】図16は、第5実施形態に係る電池モジュールの構造を概略的に示す斜視図である。
【図17】図17は、第5実施形態に係る電池パックに適用可能な接続部材の構造を概略的に示す斜視図である。
【図18】図18は、図17に示した接続部材をケースに取り付けた状態を概略的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0103】
CP…電池パック 1…電池モジュール
10…セル 11(P、M)…セル端子
20…ケース 20H…開放部 20AP…嵌合孔
21…ケース本体 21(A、C、D)…壁板 21H…端子孔
22…凸部 22(A乃至D)…側面 22E…上面
30…インサート
40…電流リード 41…接続部 41H…開口 42…延出部 42H…開口
50…電圧取出端子
60…接続部材 60H…開口
70…保持体 71…中間部 72(A,B)…挟持部 72H…開口
80…固定部材(例えばネジ)
90…筐体 91…底板 92…第1固定板 93…第2固定板
100(A,B)…筐体固定部材(例えばネジ)
110…弾性部材(例えばゴムシート)
200…楔部材 201…固定部材(例えばネジ)
210…固定板 220…押圧板
230…付勢部材 231…バンド 232…バンド締め用ネジ
300…蓋部材 300C…爪部
310…蓋部材 310C…爪部
400…接続部材
410…第1電流リード 411…接続部 412…中間部 413…延出部
420…第2電流リード 421…接続部 422…中間部 423…延出部
430…連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凸部を有する電池モジュールと、
それぞれの前記凸部が一直線上に並ぶように配列された複数の前記電池モジュールの前記凸部を保持する保持体と、
前記保持体を前記凸部に固定する固定部材と、
を備えたことを特徴とする電池パック。
【請求項2】
さらに、複数の前記電池モジュールを収納する筐体と、
前記保持体を前記筐体に固定する筐体固定部材と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の電池パック。
【請求項3】
さらに、前記電池モジュールのセル端子に電気的に接続されるとともに前記凸部と前記保持体との間に延出した電流リードと、
前記保持体の前記電流リードと対向する面に埋設されるとともに前記電流リードにコンタクトして複数の前記電池モジュール間を電気的に接続する接続部材と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の電池パック。
【請求項4】
電池モジュールと、
底板から略垂直に延出した第1固定板と、前記底板から略垂直に延出し且つ前記底板から離れるに従って厚みが減少するテーパ状の第2固定板と、の間に一直線上に配列された複数の前記電池モジュールを収納する筐体と、
前記筐体の前記第2固定板と前記電池モジュールとの間に挿入された楔部材と、
前記楔部材を前記筐体に固定する固定部材と、
を備えたことを特徴とする電池パック。
【請求項5】
さらに、前記筐体と前記電池モジュールとの間に配置された弾性部材を備えたことを特徴とする請求項2または4に記載の電池パック。
【請求項6】
電池モジュールと、
固定板と、
前記固定板に対向配置され移動可能に構成された押圧板と、
前記固定板と前記押圧板との間で一直線上に配列された複数の前記電池モジュールを保持するように前記押圧板を前記固定板に向けて付勢して複数の前記電池モジュールを固定する付勢部材と、
を備えたことを特徴とする電池パック。
【請求項7】
開放部を有するケースと、前記ケースに収容されたセルと、を備えた電池モジュールと、
一直線上に配列された複数の前記電池モジュールのそれぞれにおいて、前記ケースと嵌合して前記開放部を塞ぐとともに前記電池モジュールを固定する蓋部材と、
を備えたことを特徴とする電池パック。
【請求項8】
さらに、前記蓋部材と前記電池モジュールとの間に配置された弾性部材を備えたことを特徴とする請求項7に記載の電池パック。
【請求項9】
電極群及び非水電解液を外装ケース内に収納して構成され、前記電極群に電気的に接続されるとともに前記外装ケースから突出したセル端子を有するセルと、前記セルを収容するセル収容部を有するとともに前記セルのセル端子が突出する端子孔を有するケースと、を備えた電池モジュールと、
一直線上に配列された複数の前記電池モジュールのそれぞれにおいて、前記ケースの前記端子孔から突出した前記セル端子に電気的に接続されるとともに隣接する前記電池モジュール間を電気的に接続する接続部材と、
前記接続部材を前記電池モジュールのそれぞれの前記ケースに固定する固定部材と、
を備えたことを特徴とする電池パック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−231126(P2009−231126A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−76580(P2008−76580)
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】