説明

電池パック

【課題】リード板とリードピンの係止作業を容易に行えるようにする。
【解決手段】パック基板74と電気リード板とを接続するための、金属細線を折曲したリードピン90を備え、電池リード板80は、その一部にリード開口81を設けており、リード開口81は、開口部分周囲に切り込みを有しない閉塞した周囲としており、リード開口81が、リードピン90の延長方向に延長された開口に形成されており、リードピン90の一端は、折曲されてリード係止端91を形成しており、リード係止端91の長さは、リード開口81の開口よりも短く、リード係止端91が、リード開口81側に突出するように折曲されており、該リード係止端91を該リード開口81に挿入して連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動工具や電動芝刈り機、電動ブロワ等の電池駆動機器に脱着自在に装着されて電力を供給する電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
電動工具等の電池駆動機器は、充電できる電池を内蔵している電池パックを脱着自在に装着することで、コードレス方式として建築現場等において便利に使用できる。また、電池駆動機器から電池パックを取り外し式とすることで、取り外した電池パックを充電して繰り返し使用できる。内蔵する電池パックの残容量が少なくなった電池パックは、電池パック用の充電器にセットして充電される。
【0003】
このような電池パックは、二次電池を複数、直列や並列に接続して出力を得ている。これらの二次電池は電池ケース内で電池ホルダに収納される。また電池ケース内には、電子部品を実装したパック基板も内蔵され、必要な電気配線が行われている。電池ホルダの上面にパック基板を配置した例を、図14の側面図に示す。
【0004】
このような電池パックでは、各二次電池の状態を把握するため、中間電位を測定することが行われている。特に二次電池1としてリチウムイオン電池を使用する場合は、二次電池毎のセル電圧の測定が行われている。そこで、二次電池同士を接続する電池リード板80X毎に電圧を測定して、この電圧値をパック基板74X側に伝達する構成が採用されている。具体的には、電池ホルダ70Xの上面に固定されたパック基板74Xは、電池リード板80Xと電気的に接続されており、このパック基板74Xに実装された保護回路が、電池の状態を監視している。また電池リード板80Xは、電池ホルダ70Xの側面において二次電池と固定されており、パック基板74Xでもって二次電池の状態を監視している。また電池リード板80Xの側面には、各電池リード板80Xを固定するためのリード板固定枠86が設けられている。
【0005】
この電池ホルダでは、パック基板74の配線パターンと電池リード板80Xとを、リードピン90を介して電気的に接続されている。この様子を図14の側面図、及び図14の破線で示す部分を拡大した図15の要部拡大図に基づいて説明する。これらの図に示すように、リードピン90は、細い金属線を折曲して構成されている。リードピン90は一端をパック基板74X上に設けられたピン固定穴(図示せず)に挿入されて固定される。またリードピン90の他端は、電池リード板80Xに係止されて固定される。このためリードピン90の他端は、図15の拡大図に示すように折曲された係止端91としている。また電池リード板80Xには、その上端にリードピン90の係止端91を係止するための切り込み80aを設けている。切り込み80aは、パック基板74から見て電池リード板80Xの遠い側の縁部に開口されている。これにより、リードピン90の他端を切り込み80aに係止すると、リードピン90が抜けないように保持される。さらに必要に応じてリードピン90と電池リード板80Xとを半田付けなどによって固定する。
【0006】
このような構成に係る電池パックの組立作業時においては、作業者がリードピン90の先端を電池リード板80Xの切り込み80aに手動で係止する必要がある。作業者はリードピン90の他端を切り込み80aに案内するため、一旦リードピン90を引き出すと共に切り込み80aの奥側に押し込んで、さらに逆向きに跳ね上げるようにして係止させる。このような係止動作を実現するためには、図15の拡大図に示すように、電池リード板80Xの切り込み80aを設けた端縁と、電池ホルダ70Xのリード板固定枠86との間にdで示す空間を予め設けておく必要がある。
【0007】
しかしながら、このような空間は電池パックの組立時にのみ必要となるものであって、組立終了後には余剰空間として残ることとなり、スペース等の面で不効率となる。また一方で、近年は電池パックの小型化が大いに求められるところであり、このような余剰空間を設けて大型化させる構成は要求される仕様にも反するものであった。加えて、電池リード板に、複雑な形状の切り込みを設けるための加工費が嵩む上、電池リード板上部の幅を狭くすることで、電池リード板の固定部分の強度が低下するといった問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−146879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来のこのような問題点に鑑みてなされたものである。本発明の主な目的は、リード板とリードピンの係止作業を容易に行えるようにした電池パックを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の側面に係る電池パックによれば、充電可能な複数の二次電池1と、前記複数の二次電池1を所定の姿勢で収納するための電池ホルダ70と、前記電池ホルダ70の端面において、隣接する二次電池1の端面電極同士を接続する電池リード板80と、前記二次電池1を監視する電子回路を実装したパック基板74と、前記パック基板74と前記電気リード板とを接続するための、金属細線を折曲したリードピン90と、を備え、前記電池リード板80は、その一部にリード開口81を設けており、前記リード開口81は、開口部分周囲に切り込みを有しない閉塞した周囲としており、前記リード開口81が、前記リードピン90の延長方向に延長された開口に形成されており、前記リードピン90の一端は、折曲されてリード係止端91を形成しており、前記リード係止端91の長さは、前記リード開口81の開口よりも短く、前記リード係止端91が、前記リード開口81側に突出するように折曲されており、該リード係止端91を該リード開口81に挿入して連結できる。これにより、リード係止端をリード開口に案内するために、従来のように電池リード板に切り込みや切り込みに案内するための隙間を設ける必要が無く、その分リード開口を延長することができ、リード開口にリード係止端を案内しやすくでき、組立作業時の作業性を向上させることができる。また電池リード板にリード開口として閉じた穴を開口すれば足り、穴から基板端縁まで連通した切り込みを設ける必要をなくして電池リード板の機械的強度を向上できる。
【0011】
また、第2の側面に係る電池パックによれば、前記リードピン90が、前記パック基板74上に開口されたピン固定穴74aに固定されており、前記リードピン90の、前記ピン固定穴74aから前記リード係止端91までの長さを、前記ピン固定穴74aから前記電池リード板80までの距離に応じて設計できる。これにより、リード係止端をリード開口に挿入する際、ピン固定穴を支点としてリードピンを押し下げるようにすれば足り、リード係止端を弾性的にリード開口に挿入できるので作業性を高めることができる。
【0012】
さらに、第3の側面に係る電池パックによれば、前記電池ホルダ70に、前記電池リード板80のリード開口81に向けて傾斜面を設けた誘い込みリブ79を設けることができる。これにより、リード係止端をリード開口に挿入する際、リードピン先端部を誘い込みリブの傾斜面でリード開口に向かって案内することができ、リード係止端をリード開口に挿入する作業を容易にすることができる。
【0013】
さらにまた、第4の側面に係る電池パックによれば、前記パック基板74が、前記ピン固定穴74aと近接した該パック基板74の端縁にピン係止部74bを形成しており、前記リードピン90が、前記リード係止端91を設けた一端と異なる他端を、コ字状に折曲したピン固定端92としており、前記ピン固定端92の端部を前記ピン固定穴74aに挿入して固定すると共に、該コ字状の折曲部分を前記ピン係止部74bに係止して、前記リードピン90を折り返すことができる。これにより、リードピンをパック基板に安定的に固定する構造を簡素化できる。特にパック基板の端縁を加工してピン係止部を形成できるので、加工作業が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1に係る電池パックを示す斜視図である。
【図2】図1の電池パックを背面から見た図を示す斜視図である。
【図3】図1の姿勢における電池パックの分解斜視図である。
【図4】図2の姿勢における電池パックの分解斜視図である。
【図5】電池ホルダの分解斜視図である。
【図6】電池ホルダの斜視図である。
【図7】図6の電池ホルダからパック基板を外した状態を示す斜視図である。
【図8】図7の電池ホルダから電気接続線を外した状態を示す斜視図である。
【図9】図6の電池ホルダを左側面から見た斜視図である。
【図10】図9の電池ホルダの平面図である。
【図11】図10の電池ホルダの側面図
【図12】図10の電池ホルダのXII−XII線における垂直断面図である。
【図13】電気接続線の外観斜視図である。
【図14】従来の電池ホルダの側面図である。
【図15】図14の電池ホルダのXV部分を示す要部拡大図である。
【図16】図11の電池ホルダのXVI部分を示す要部拡大図である。
【図17】図10のリードピンを電池リード板のリード穴に挿入したXVII部分を示す拡大図である。
【図18】図10の電池ホルダのXVIII−XVIII線における垂直断面図である。
【図19】図18の誘い込みリブを示すXIX部分の拡大断面図である。
【図20】図10の誘い込みリブを用いてリードピンをリード穴に挿入した部分を示す拡大斜視図である。
【図21】図11の電池ホルダのXXI−XXI線における垂直断面図である。
【図22】図21のリードピンをピン固定穴に固定したXXII部分を示す拡大断面図である。
【図23】従来の電池ホルダを示す平面図である。
【図24】図23のリードピンをピン固定穴に固定したXXIV部分を示す拡大図である。
【図25】図24のリードピンをピン固定穴に固定する様子を示す分解斜視図である。
【図26】図10のリードピンをピン固定穴に固定したXXVI部分を示す拡大図である。
【図27】図26のリードピンをピン固定穴に固定する様子を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための電池パックを例示するものであって、本発明は電池パックを以下のものに特定しない。なお、特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部材の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。また、一部の実施例、実施形態において説明された内容は、他の実施例、実施形態等に利用可能なものもある。
(実施例1)
【0016】
図1〜図4に、本発明の実施例1に係る電池パックとして、電動工具用の電池パックを示す。これらの図において、図1は電池パック30を示す斜視図、図2は図1の電池パック30を背面から見た図を示す斜視図、図3は図1の姿勢における電池パック30の分解斜視図、図4は図2の姿勢における電池パック30の分解斜視図を、それぞれ示している。なお、以下では電動工具用の電池パックを説明するが、本発明の電池パックは電動工具用の電池パックに限定されるものでなく、他の電池駆動機器にも適宜利用可能であることはいうまでもない。
【0017】
これらの図に示す電池パック30は、外形を箱形とし、内部に二次電池1を内蔵している。具体的には、電池パック30は、充電可能な複数の二次電池1を保持する電池ホルダ70と、二次電池1同士を端面で接続する電池リード板80と、二次電池1の保護回路を実装したパック基板74と、電池駆動機器や電池パック用充電器と接続する複数の外部接続端子33と、電池ホルダ70及びパック基板74を収納する電池ケース31とを備える。
(電池ケース31)
【0018】
電池ケース31は、図1〜図2に示すように、外観を箱状に形成されており、隅部を面取りすると共に、表面に電池駆動機器や電池パック用充電器の接続端子と接続するための外部接続端子33を表出させている。また電池パック30を電池駆動機器や電池パック用充電器に装着する際に、装着状態を保持するためのラッチ部50を備える。この電池ケース31は、絶縁性と強度に優れた樹脂等により成型される。
【0019】
また電池ケース31は、図3〜図4の分解斜視図に示すように上ケーシング31Aと下ケーシング31Bに二分割されている。電池ケース31の内部には収納空間を構成しており、ここに電池ホルダ70とパック基板74、及びラッチ部50を収納する。さらに電池ケース31の側面は、側面カバー31Cで被覆している。側面カバー31Cは上ケーシング31Aと下ケーシング31Bと別部材で構成している。側面カバー31Cは、上ケーシング31Aと下ケーシング31Bにそれぞれ設けられた溝部に、端縁を挿入して、上ケーシング31Aと下ケーシング31Bで挟持されて固定される。
(電池ホルダ70)
【0020】
電池ホルダ70は、図3〜図5に示すように、二次電池1と、パック基板74と、電池リード板80と、各種リード線とを備えている。またこの電池ホルダ70は、下面に二次電池1を収納する電池収納空間と、上面にパック基板74を固定する基板固定部75とを設けている。二次電池1同士は、電池ホルダ70の端面に開口された表出部71から表出する二次電池1の端面同士を、電池リード板80で電気接続され、さらに電池ホルダ70に二次電池1を収納した電池コアの出力を、出力リード板や出力リード線等を介してパック基板74に接続している。また電池リード板80は、信号リード線を介してパック基板74と接続されている。
(外部接続端子33)
【0021】
また電池パック30は、電池駆動機器や電池パック用充電器と接続するための外部接続端子33を複数備えている。外部接続端子33は、パック基板74上に固定されており、二次電池1の出力の他、接続先の外部の電池パック用充電器や電池駆動機器との間で信号のやりとりを行うための信号端子等を設けることができる。この外部接続端子33は、金属板を折曲して形成される。各外部接続端子33は、図6、図9等に示すように、後端縁を上面視コ字状に折曲されると共に、電池パック用充電器や電池駆動機器といった外部接続機器の接続端子と電気的に接続される先端側においては、コ字状の開口端が徐々に狭くなるように、テーパ状に折曲されている。このように折曲された2枚の金属板の間に、外部接続機器の接続端子が挿入され、金属板同士の間で挟持されることによって電気接続が確立される。
(ラッチ部50)
【0022】
一方で電池パック30に設けられたラッチ部50は、図1〜図4に示すように部分的に電池ケース31から表出させるようにして、電池ケース31内に可動自在に収納される。ラッチ部50は、ユーザが手で操作するための着脱操作部52を前面に形成すると共に、図において上部には、電池パック30の装着時の進行方向に面して傾斜させた傾斜面と、傾斜面から連続して形成された垂直面とを有する係止フック54を設けている。この係止フック54は着脱操作部52と一体成型されている。上ケーシング31Aには、ラッチ部50の係止フック54を突出させるフック突出窓15を開口している。また装着部2には、この係止フック54と対応する位置に保持凹部17を形成している。この保持凹部17も、傾斜面と一致する凹部傾斜面と、水直面と一致する凹部垂直面とを有している。
(保護回路)
【0023】
またパック基板74上には、二次電池1の保護回路が実装されている。保護回路は、各電池リード板80と信号リード線を介して接続されており、例えば各二次電池1の電池電圧を検出する。さらにパック基板74は、外部接続端子33として、充放電端子に加え、保護回路の出力や電池情報等を出力する信号端子も備えている。これら充放電端子や信号端子は、図2等に示すように、電池ケース31の表面から表出される。
(二次電池1)
【0024】
電池ケース31は、内部に二次電池1を内蔵できる形状に形成される。ここでは、二次電池1として外装缶を長手方向に延長された円筒状とした円筒形二次電池を使用している。この電池ケース31は、図4等に示すように電池ケース31内に複数本の二次電池1を互いにほぼ平行姿勢で、同一平面上に横並びに隣接するように配置している。電池パック30に内蔵される二次電池1は、リチウムイオン電池である。ただ、二次電池は、ニッケル水素電池やニッケルカドミウム電池、ポリマー電池等の充電できる他の全ての電池とすることもできる。複数の二次電池は、複数本を直列に接続して出力電圧を高くし、また複数本を並列に接続して出力電流を大きくできる。この例では、二次電池1をリチウムイオン電池とし、2本を並列にして5組を直列に接続して出力電圧を18Vとしている。ただ電池パックは、内蔵する二次電池の本数や接続状態を特定しない。電池パックは、使用する電池駆動機器の種類や用途に応じて内蔵する二次電池の本数と出力電圧を種々に設計できる。
(電池収納空間)
【0025】
電池ホルダ70の電池収納空間は、図5の分解斜視図に示すように第一サブホルダ71A、第二サブホルダ71Bに二分割されており、これら第一サブホルダ71A、第二サブホルダ71Bの間に二次電池1が挟持される。この例では、電池ホルダは10本の二次電池1を収納している。この電池ホルダ70は、二次電池1を電池収納空間に収納した状態で、表出部71から表出される端面同士を電池リード板80で接続する。
(電池リード板80)
【0026】
電池リード板80は図5の分解斜視図などに示すように、導電性に優れた平板状の金属板であり、電池収納空間に収納できる大きさに形成される。この電池リード板80はスポット溶接のため、溶接スリットを形成しており、電池収納空間に収納された状態で隣接する二次電池1の端面同士に固定される。
(基板固定部75)
【0027】
電池ホルダ70の上面には、パック基板74を固定するための基板固定部75が設けられる。図6〜図7に、基板固定部75にパック基板74を装着する様子を示す。これらの図において、図6は電池ホルダ70の斜視図、図7は図6の電池ホルダ70からパック基板74を外した状態を示す斜視図を、それぞれ示している。これらの図に示す電池ホルダ70は、パック基板74を支承するボス72を設けている。一方、パック基板74は、ボス72と対応する位置にボス穴76を開口している。このボス穴76は、パック基板74の裏面側からボス72の先端を挿入して、ねじ止めなどにより固定される。この例では上ケーシング31Aの内面に、図示しないがボス72と対応する位置に、パック基板74に向かって突出させた円柱部と、その先端に挿入ピンを設けている。また円柱部の挿入ピンは、ねじを挿入するねじ穴を貫通させ、上ケーシング31Aの上面に開口されたねじ穴37と連通している。この上ケーシング31Aに対して、図3及び図4に示すように、ねじ穴37からねじ38を螺合して、パック基板74を上ケーシング31Aに固定できる。
(電気接続線85)
【0028】
このパック基板74は、電池ホルダ70に収納された二次電池1の出力と接続するために、動力リード線に代えて、電気接続線85を使用している。この様子を、図8〜図13に示す。これらの図において、図8は図7の電池ホルダ70から電気接続線85を外した状態を示す斜視図、図9は図6の電池ホルダ70を左側面から見た斜視図、図10は図9の電池ホルダ70の平面図、図11は図10の電池ホルダ70の側面図、図12は図10の電池ホルダ70のXII−XII線における垂直断面図、図13は電気接続線85の外観斜視図を、それぞれ示している。これらの図に示す電気接続線85は、金属線を折曲して構成される。金属製の電気接続線85は、図13に示すように両端縁をそれぞれ折曲して、図9に示すように一方をパック基板74に、他方を電池リード板80に、それぞれ挿入して半田付けなどにより固定される。端縁の折曲方向は、図13に示すように異なる方向とすることができ、柔軟な接続経路に設定できる。またパック基板74には、電気接続線85の端縁を挿入する接続穴74cが開口されている。電気接続線85は端縁を接続穴74cに挿入して、半田付けなどによりパック基板74上に固定される。
【0029】
電気接続線85を構成する金属線は、電気導電率に優れた金属製とでき、例えばニッケルや錫、銅などとする。また、リード板のような板状の金属板でなく円柱状の金属線とすることで、抵抗率を抑えてジュール熱を抑制できる。加えて、リード線やリード板のようにパック基板74の表面を這わせるのでなく、端縁を折曲してパック基板74の表面から浮かせるように配置することも容易となる。このように空間的にパック基板74の表面と離間できることは、絶縁性や放熱性の点からも有利となる。加えて、リード線のような可撓性がないため、機械振動や衝撃によって線が移動する、いわゆる暴れる状態となることもなく、摩擦による擦り切れや断線の虞も極減できる。さらに加えて、単に金属線を折曲することで構成できるので、製造コストも抑えることができ、さらに折曲が容易なことなら加工性にも優れる。このように金属線を折曲した電気接続線85を利用することで、従来のリード線やリード板による配線に比べて、信頼性や作業性、加工の容易性等の面において優れた効果を発揮できる。
(保持リブ78)
【0030】
電気接続線85は、図8の分解斜視図に示すように、電池ホルダ70の上面に保持され、さらに図7の分解斜視図に示すようにパック基板74と固定される。電池ホルダ70の上面には、電気接続線85を保持する保持リブ78が複数設けられている。
(折曲部85a)
【0031】
また電気接続線85は、図13の斜視図に示すように中間部分にコ字状(U字状)に折曲された折曲部85aを形成することができる。この折曲部分を利用して、図8の分解斜視図に示すように、高さの異なる保持リブ78によって所定の姿勢に保持できる。すなわち、電池ホルダ70の上面に設けられた複数の保持リブ78の内、折曲部85aを保持する一対の中間保持リブ78bは、折曲部85aの深さに応じて高さを高くしている。この結果、線状で本来的に回転しやすい電気接続線85の位置決めが図られ、その端縁を正確にパック基板74や電池リード板80に挿入できるようになる。特に、組立時において電気接続線85の端縁をパック基板74の接続穴74cに挿入する際に、電気金属線が転倒するのを中間保持リブ78bによって防止する。また、一対の中間保持リブ78bでもってコ字状の折曲部85aの両側を保持することで、電気接続線85の長手方向における位置決めも行える。さらに、このように複数の保持リブで電気接続線85を指示することで、外部から衝撃力が印加された場合の、電気接続線85の変形量の緩和も実現される。
【0032】
折曲部85aは、好ましくは電気接続線85の中央近傍に設ける。これにより、安定的な位置決めを図ることができる。また、外部から強い衝撃を受けた場合等に、硬質な金属線では可撓性のあるリード線と比べて衝撃を伝えやすく、接続部分に衝撃力が伝搬されて破損される可能性があるところ、このような折曲部85aを設けておくことで、折曲部85aを変形させて衝撃力を吸収し、このような接続部分の破損リスクを低減できる効果も期待できる。
【0033】
上記の例では、電気接続線85を二次電池の出力線としたが、これに限らず信号線も、金属線を折曲した電気接続線85とすることもできる。
(中間電位の測定)
【0034】
一方で、二次電池1を複数接続した電池パック30においては、各二次電池1の状態を把握するため、中間電位を測定することが行われている。特に二次電池1としてリチウムイオン電池を使用する場合は、二次電池毎のセル電圧の測定が行われている。そこで、二次電池同士を接続する電池リード板80毎に電圧を測定して、この電圧値をパック基板74側に伝達する構成が採用されている。具体的には、電池ホルダ70の上面に固定されたパック基板74は、電池リード板80と電気的に接続されており、このパック基板74に実装された保護回路が、電池の状態を監視している。また電池リード板80は、電池ホルダ70の側面において二次電池1と固定されており、パック基板74でもって二次電池1の状態を監視している。また電池リード板80の側面には、各電池リード板80を固定するためのリード板固定枠86が設けられている。
(リードピン90)
【0035】
パック基板74と各電池リード板80とは、リードピン90を介して接続されている。リードピン90は、細い金属線を折曲して構成されている。リードピン90は一端をパック基板74上に設けられたピン固定穴74aに挿入されて固定される。またリードピン90の他端は、電池リード板80に係止されて固定するため、折曲された係止端91としている。従来は、図14〜図15に示すように、電池リード板80Xの上端にリードピン90の係止端91を係止するための切り込み80aを設けていた。しかしながら、この構成では作業者が手動でリードピン90の係止端91を切り込み80aに案内するため、一旦リードピン90を引き出すと共に切り込み80aの奥側に押し込んで、さらに逆向きに跳ね上げる動作が必要であった。また、このような係止動作を実現するためには、図15の拡大図に示すように、電池リード板80Xの切り込みを設けた端縁と、電池ホルダ70Xのリード板固定枠86との間にdで示す空間を予め設けておく必要があった。このような空間は電池パックの組立時にのみ必要となるに過ぎず、組立終了後には余剰空間として残ることとなり、スペース効率が悪い上、電池リード板80Xにとっても、複雑な形状の切り込みを設けるための加工費が嵩む上、電池リード板80X上部の幅を狭くすることで、電池リード板80Xとリードピン90との固定部分の強度が低下するといった問題もあった。
(リード開口81)
【0036】
これに対して本実施例に係る電池パック30では、図11、図16等に示すように、電池リード板80の上端部分に、リードピン90の係止端91を挿入するためのリード開口81を設けている。このリード開口81は、閉じた周囲としている。いいかえると、リード開口81が電池リード板80の端縁と連通した切り込みを有しないことで、電池リード板80の強度を増すことができる。また、図15及び図16との対比から明らかなとおり、従来の電池リード板80のような誘い込み用の切り込みを設けないことから、その分電池リード板80の上端を幅広とできる。このことは、電池リード板80の機械強度を増すことに加え、リード開口幅をリードピン90の長さ方向に延長できる、いいかえるとリード開口81を広く開口できることにも繋がり、リード係止端91をリード開口81に挿入し易くして、組立時の作業性向上にも寄与する。加えて、電池リード板80の加工に際してもリード開口81として閉じた穴を開口すれば足りるので、複雑な切り込みを設ける作業を不要として、電極リード板の製造、加工コストも削減できる。
【0037】
一方リードピン90は、他端が予めパック基板74上に開口されたピン固定穴74aに固定されている。このリードピン90は、図10の平面図などに示すように、一端のリード係止端91が、リード開口81側に突出するように配置されている。またリードピン90の、ピン固定穴74aからリード係止端91までの長さが、ピン固定穴74aから電池リード板80までの距離とほぼ等しくなるよう設計されている。これにより、リード係止端91をリード開口81に挿入する際、ピン固定穴74aを支点としてリード係止端91を、図16において一点鎖線で示すように電池リード板80の上方から押し下げることで、リード係止端91が弾性変形して、リード開口81から突出できる。この工程は、図15に示すように一旦リード係止端91を引き延ばした上で切り込み部分に押し戻すような複雑な工程が不要となって、単にリード係止端91を押し下げるようにすれば足り、リード係止端91をリード開口81に挿入する作業を簡便とでき、作業性が高まる利点が得られる。またリード係止端91の長さを、リード開口81の開口幅よりも短くすることで、リード係止端91をリード開口81に弾性的に押し込みやすくできる。
(誘い込みリブ79)
【0038】
加えて、電池リード板80のリード開口81にリード係止端91を案内しやすくするために誘い込みリブ79を設けることができる。この様子を、図17〜図20に基づいて説明する。これらの図において、図17は図10のリードピン90を電池リード板80のリード穴に挿入した部分を示す拡大図、図18は図10の電池ホルダ70のXVIII−XVIII線における垂直断面図、図19は図18の誘い込みリブ79を示す拡大断面図、図20は図10の誘い込みリブ79を用いてリードピン90をリード穴に挿入した部分を示す拡大斜視図を、それぞれ示している。これらの図に示すように、電池ホルダ70は、電池リード板80のリード開口81に向けて傾斜面を設けた誘い込みリブ79を設けている。誘い込みリブ79は、図19の断面図に示すように、傾斜面を外側、すなわち電池リード板80側に向かって下り勾配となるようにしている。また図17の平面図に示すように、誘い込みタブは各リード開口81に対して2連設けられている。このようにすることで、図20の斜視図及び図16の側面図に示すように、誘い込みリブ79によってリードピン90をリード開口81に案内でき、この挿入作業をより迅速にかつ確実に行える。
(パック基板74とリードピン90の位置決め)
【0039】
一方でリードピン90とパック基板74との固定構造を、図21〜図27に基づいて説明する。これらの図において、図21は図11の電池ホルダ70のXXI−XXI線における垂直断面図、図22は図21のリードピン90をピン固定穴74aに固定した部分を示す拡大断面図、図23は従来の電池ホルダ70Yを示す平面図、図24は図23のリードピン90Yをピン固定穴74xに固定した部分を示す拡大図、図25は図24のリードピン90Yをピン固定穴74xに固定する様子を示す分解斜視図、図26は図10のリードピン90をピン固定穴74aに固定した部分を示す拡大図、図27は図26のリードピン90をピン固定穴74aに固定する様子を示す分解斜視図を、それぞれ示している。
【0040】
従来は、図25のように複雑な方向に折曲したリードピン90Yと、図24のようにパック基板74Yに開口されたピン固定穴74xとピン固定スリット74yとを用いて、図23のように固定していた。すなわち、単にリードピンの一端をパック基板に固定するのみでは、姿勢や方向性が定まらないため、パック基板74Yにピン固定スリット74yを開口し、このピン固定スリット74yに挿入できるような形状にリードピン90Yの一部を折曲していた。この構成では、パック基板74Yにピン固定スリット74yを開口させる加工が必要となり、またこのピン固定スリット74yに応じてリードピン90Yの一部を折曲する加工も必要となって、加工の手間がかかっていた。
【0041】
そこで、より簡易な構造で、リードピン90を所定の姿勢で位置決めして固定できるよう、本実施例では図26〜図27に示すようなパック基板74及びリードピン90を採用している。まず図26に示すように、パック基板74は、ピン固定穴74aと近接したパック基板74の端縁にピン係止部74bを形成している。一方リードピン90は、図27に示すようにリード係止端91を設けた端部とは反対側の端部を、端縁とほぼ平行になるように折り返してコ字状(U字状)に折曲したピン固定端92としている。ピン固定端92の折り返し部分の幅は、パック基板74のピン固定穴74aとピン係止部74bとの幅と一致させる。このようにすることで、図22に示すようにピン固定端92の端部をピン固定穴74aに挿入して固定すると共に、このコ字状の折曲部分をピン係止部74bに係止して、リードピン90を折り返すことができる。このようにすることで、リードピン90はピン固定端92でピン固定穴74aとピン係止部74bとの間を橋渡しすることにより位置決めでき、またリードピン90をパック基板74に挿入する作業も行いやすくなる。またパック基板側の加工においても、パック基板にピン固定スリットを開口させる必要が無く、単に端縁の一部にピン係止部74bを形成すれば足りるので、加工工程を大幅に簡素化できる。またリードピン90の折曲もより簡単となって、製造コストの低減を図ることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明に係る電池パックは、電動工具等の電池駆動機器用の電池パックや、アシスト自転車、電動バイク、携帯電話等の携帯機器等を駆動するための電池パックとして好適に利用できる。
【符号の説明】
【0043】
1…二次電池
15…フック突出窓
30…電池パック
31…電池ケース;31A…上ケーシング;31B…下ケーシング
31C…側面カバー
32…セット面
33…外部接続端子
38…ねじ
50…ラッチ部
52…着脱操作部
54…係止フック
70、70X、70Y…電池ホルダ;71A、71B…サブホルダ
71…表出部
72…ボス
74、74X、74Y…パック基板
74a、74x…ピン固定穴;74b…ピン係止部;74c…接続穴
74y…ピン固定スリット
75…基板固定部
76…ボス穴
78…保持リブ;78b…中間保持リブ
79…誘い込みリブ
80、80X…電池リード板
80a…切り込み
81…リード開口
85…電気接続線;85a…折曲部
86…リード板固定枠
90、90Y…リードピン
91…リード係止端
92…ピン固定端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電可能な複数の二次電池(1)と、
前記複数の二次電池(1)を所定の姿勢で収納するための電池ホルダ(70)と、
前記電池ホルダ(70)の端面において、隣接する二次電池(1)の端面電極同士を接続する電池リード板(80)と、
前記二次電池(1)を監視する電子回路を実装したパック基板(74)と、
前記パック基板(74)と前記電気リード板とを接続するための、金属細線を折曲したリードピン(90)と、
を備え、
前記電池リード板(80)は、その一部にリード開口(81)を設けており、
前記リード開口(81)は、開口部分周囲に切り込みを有しない閉塞した周囲としており、
前記リード開口(81)が、前記リードピン(90)の延長方向に延長された開口に形成されており、
前記リードピン(90)の一端は、折曲されてリード係止端(91)を形成しており、
前記リード係止端(91)の長さは、前記リード開口(81)の開口よりも短く、
前記リード係止端(91)が、前記リード開口(81)側に突出するように折曲されており、該リード係止端(91)を該リード開口(81)に挿入して連結されてなることを特徴とする電池パック。
【請求項2】
請求項1に記載の電池パックであって、
前記リードピン(90)が、前記パック基板(74)上に開口されたピン固定穴(74a)に固定されており、
前記リードピン(90)の、前記ピン固定穴(74a)から前記リード係止端(91)までの長さが、前記ピン固定穴(74a)から前記電池リード板(80)までの距離に応じて設計されてなることを特徴とする電池パック。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電池パックであって、
前記電池ホルダ(70)が、前記電池リード板(80)のリード開口(81)に向けて傾斜面を設けた誘い込みリブ(79)を設けていることを特徴とする電池パック。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一に記載の電池パックであって、
前記パック基板(74)が、前記ピン固定穴(74a)と近接した該パック基板(74)の端縁にピン係止部(74b)を形成しており、
前記リードピン(90)が、前記リード係止端(91)を設けた一端と異なる他端を、コ字状に折曲したピン固定端(92)としており、
前記ピン固定端(92)の端部を前記ピン固定穴(74a)に挿入して固定すると共に、該コ字状の折曲部分を前記ピン係止部(74b)に係止して、前記リードピン(90)を折り返してなることを特徴とする電池パック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2013−114781(P2013−114781A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257382(P2011−257382)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】