説明

電池パック

【課題】電池主回路の導体ケース内に浸入した水などの液体が、引出導体を伝って電池制御ユニット内に浸入するのを防止する。
【解決手段】電池パック1の電池2の配置方向の端部に位置させて設けられた電池制御ユニット6と、電池集合体3の総負極に接続された総負極端子11を電池制御ユニット6の主回路端子12に接続する引出導体13とを備えてなり、引出導体13は、総負極端子11と主回路端子12とを結ぶ直線よりも下方に延在する迂回部13aを有し、迂回部13aの少なくとも一部の上端が主回路端子の下端よりも下方に位置して形成されてなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池パックに係り、例えば、電気自動車やハイブリッドカー等の電動機を駆動する直流電源として用いる電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電池パックは、特許文献1に記載のように、複数の電池の正極と負極を隣り合せて交互に配置し、隣り合う電池の正極と負極間をそれぞれバスバーと称される導体で直列に接続して束ねて電池集合体を形成し、必要に応じて筐体に収容して用いられる。そして、電池集合体の両端の電池の正極(以下、総正極という。)と負極(以下、総負極という。)が、電池パックの直流出力になる。
【0003】
電池パックには、電池集合体を制御するための電池制御ユニットが、電池集合体の電池の配置方向の端部に設けられる場合がある。電池制御ユニットは、例えば、電池パックの出力電流を検出する電流センサ、プリチャージコンタクタ、メインコンタクタ等を備えて構成され、総正極と総負極の総電極端子を、電池制御ユニットを介して負荷の制御器に接続して用いる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−289431号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1によれば、電池集合体の上面に総電極端子が設けられ、電池制御ユニット内から引き出された主回路端子を総電極端子と面一に設け、それらを直状の引出導体で接続するようにしていることから、直状の引出導体を伝って水等の液体が電池制御ユニット内に浸入するおそれがある。つまり、例えば、昼夜などの気温の変動に伴って大気中の水分が電池主回路の導体が収容されたバスバーモジュール内で凝縮した水などの液体が、引出導体を伝って電池制御ユニット内に浸入すると、故障の原因になるという問題がある。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、水などの液体が電池主回路の引出導体を伝って電池制御ユニット内に浸入するのを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するため、複数の電池の正極と負極を交互に隣り合せて配置してなる電池集合体と、該電池集合体の隣り合う電池の正極と負極間をそれぞれ接続する複数の導体が絶縁部材に支持されてなるバスバーモジュールと、前記電池集合体の電池の配置方向の端部に位置させて設けられた電池制御ユニットと、前記電池集合体の総正極又は総負極に接続された総電極端子を前記電池制御ユニットの主回路端子に接続する引出導体とを備えてなる電池パックにおいて、前記引出導体は、前記総電極端子と前記主回路端子とを結ぶ直線よりも下方に延在する迂回部を有し、前記迂回部の少なくとも一部の上端が前記主回路端子の下端よりも下方に位置して形成されてなることを特徴とする。
【0008】
このように構成されることから、引出導体を伝わる水などの液体は重力により迂回部に流下が、迂回部の少なくとも一部の上端が主回路端子の下端よりも下方に位置していることから、迂回部から電池制御ユニットの主回路端子に向って液体が重力に逆らって上昇することはない。その結果、電池主回路の引出導体を伝わってくる水などの液体は、引出導体の迂回部で電池制御ユニットの主回路端子よりも下方に流れるから、引出導体を伝って電池制御ユニット内に浸入するのを防止することができる。
【0009】
本発明において、前記総電極端子と前記主回路端子は、前記電池集合体と前記電池制御ユニットの同一側の側面に位置させて形成され、前記引出導体は、両端がそれぞれ前記総電極端子と前記主回路端子とにボルト又はナットで締結され、前記総電極端子と前記主回路端子との間に前記迂回部が形成され、前記迂回部は、前記引出導体に切り込み部を形成してU字状に形成されてなり、切り込み部の底部が前記主回路端子の下端よりも下方に位置に形成され、前記引出導体は、樹脂製のケースに収容して構成することができる。また、前記ケースの底面に開口が形成されてなるものとすることができる。これによれば、引出導体を伝わって流下する液体をケース外部に排出することができる。
【0010】
また、この場合において、前記迂回部の切り込み部に係止する形状のリブが前記ケースから突出して形成されてなるものとすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、水などの液体が電池主回路の引出導体を伝って電池制御ユニット内に浸入するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態の電池パックに係る総電極端子と電池制御ユニットの主回路端子とを接続する引出導体部の構成を示す図である。
【図2】図1の実施形態の主要部の斜視図である。
【図3】図1の実施形態の電池パック全体の斜視外観図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図3に本発明の一実施形態の電池パック1の斜視構成図を示す。電池パック1は、例えば電気自動車の電動機を駆動する直流電源として用いられるものであり、図示のように、薄型に形成されたリチウム電池などの電池2を複数配列して電池集合体3として形成される。複数の電池2は、正極と負極を隣り合せて交互に配置し、隣り合う電池2の正極と負極間をそれぞれバスバーと称される導体4で直列接続される。電池集合体3の電池2の直列数は、所望の直流電圧に応じて定まり、電池集合体3の両端に位置される電池2の正極(以下、総正極という。)と負極(以下、総負極という。)が、電池パック1の直流出力となる。なお、電池2の直列数が奇数のときは、電池集合体3の互いに反対側の側部に総正極と総負極が位置され、直列数が偶数のときは電池集合体3の同一側の側部に総正極と総負極が位置される。なお、本実施形態は直列数が奇数の例である。
【0014】
複数の電池2の隣り合う正極と負極との間を接続する複数の導体4は、絶縁部材である樹脂部材により形成されたケース内に装着されて、バスバーモジュール5として形成されている。図には表れていないが、本実施形態では、各電池2の正極又は負極には、電池側面から突出して設けられた柱状の正極端子又は負極端子が接続され、柱状の各電極端子の外面にはネジが形成されている。各導体4には、隣り合う電池2の正極端子と負極端子の位置に合わせて一対の穴が穿設され、導体4の穴に各電極端子を挿し込んで各電極端子のネジにナットを螺合して、導体4を各電極端子に締結するようになっている。なお、電池集合体3の両端に位置される電池2の総正極又は総負極の柱状の電極端子は、隣り合う電池2の電極端子には接続されず、引出導体で引き出されるようになっている。
【0015】
一方、電池パック1には、電池集合体3を制御するための電池制御ユニット6が、電池集合体3の電池2の配列方向の端部に設けられている。電池制御ユニット6は、図示していないが、例えば、電池パック1の出力電流を検出する電流センサ、電池パック1の出力を投入遮断するメインコンタクタ、メインコンタクタを投入する前に電池パック1の出力を所定時間投入するプリチャージコンタクタ、等の制御機器を樹脂製のケースに収容して形成されている。電池制御ユニット6は、本実施形態では、電池集合体3の端部の総負極側の電池2にエンドプレート7を挟んで固定されている。エンドプレート7は、電池集合体3の両端部に位置させて設けられ、配列された複数の電池2を束ねるための部材である。また、図示していないが、電池集合体3は、必要に応じて筐体内に収容して用いられる。
【0016】
このように構成される本実施形態の電池パック1の特徴部である総負極端子と電池制御ユニット6の主回路端子とを接続する引出導体部の構成を図1及び図2を参照して説明する。図1は、図3の電池集合体3の電池制御ユニット6側の端部の側面を示す正面図である。図示のように、本実施形態では、総負極に接続された総負極端子11は、電池制御ユニット6の側面に設けられた一方の主回路端子12に引出導体13を介して接続される。また、電池制御ユニット6の他方の主回路端子17には、図示していない総正極端子がケーブルを介して接続されるようになっている。
【0017】
総負極側の電池2の側面と電池制御ユニット6の側面は面一に配置されている。電池2の総負極に接続された総負極端子11は、外周面にネジが形成された円柱体を電池2の側面に突出させて設けられている。また、電池制御ユニット6の主回路端子12は、電池制御ユニット6の側面から突出させて設けられ、主回路端子12の先端面にはネジ穴が穿設されている。総負極端子11と主回路端子12の先端面は、例えば面一に配置されている。総負極端子11と主回路端子12を接続する引出導体13は、樹脂製の引出導体ケース14に収容されている。引出導体ケース14のベース板14aには、総負極端子11と主回路端子12の先端面に対応する位置に開口が形成されている。これにより、引出導体13が開口を介して総負極端子11と主回路端子12の先端面に電気的に接触可能に形成されている。
【0018】
引出導体13は、総負極端子11と主回路端子12を接続する直状の導体の途中に、下方に延在された迂回部13aを備えて形成されている。迂回部13aには、切り込み部13bが形成され、これに合わせて引出導体13にU字型の迂回部13aが形成されている。また、切り込み部13bの底部は、主回路端子12の下端よりも下方に位置して形成されている。引出導体13の一端の総負極端子11に対応する位置に、総負極端子11が挿入される穴が穿設されている。引出導体13の穴に総負極端子11を挿入し、ナット21を総負極端子11に螺合して引出導体13を接続するようになっている。また、引出導体13の他端の主回路端子12に対応する位置に、主回路端子12に穿設されたネジ穴に螺入されるボルト22が挿入される穴が穿設され、ボルト22を主回路端子12のネジ穴に螺入して引出導体13を接続するようになっている。主回路端子17には、図示していないケーブルの端部に接続された端子が、その端子のボルト穴を通して主回路端子17のネジ穴にボルト22を螺入して締結されるようになっている。
【0019】
引出導体ケース14のベース板14aには、引出導体13の外周を取り囲む外壁14bが形成され、引出導体13の迂回部13aの底部に対応する位置の外壁14bの一部を切り欠いて開口14cが設けられている。また、外壁の内面側には、複数の爪16が設けられ、引出導体ケース14に装着される引出導体13を係止するようになっている。また、ベース板14aには、引出導体13の切り込み部13bに挿入されるリブ14dが突出して形成されている。また、図示していないが、本実施形態では、外壁14bの外周に係合突起14eが適宜設けられ、引出導体ケース14のカバーが被着されるようになっている。
【0020】
なお、総負極端子11には、各電池2の電圧を検出する1つの電圧検出端子24と引出導体13とが共締めされて接続されている。電圧検出端子24には、電圧検出電線25が圧着接続され、図示していない電池パック1の制御器に接続されるようになっている。
【0021】
以上説明したように、本実施形態によれば、引出導体13を伝わって引出導体ケース14内に浸入した水などの液体は、重力により下方に延在する迂回部13aに流下する。しかし、切り込み部13bの底部は、主回路端子12の下端よりも下方に位置していることから、迂回部13aから重力に逆らって主回路端子12に向って液体が上昇することはない。したがって、引出導体ケース14内に浸入した水などの液体が、引出導体13を伝って電池制御ユニット6内に浸入するのを防止することができる。その結果、電池制御ユニット6内に水などの液体が浸入することによる故障を防止できる。
【0022】
また、本実施形態によれば、引出導体ケース14の底面に開口14cを形成したことから、引出導体13を伝わって流下する液体をケース外部に排出することができる。さらに、この場合において、迂回部13aの切り込み部13bの形状に合わせたリブ14dをベース板14aから突出して形成しているから、水などの液体が引出導体13を伝わって主回路端子12に直接達する経路が遮られるから、電池制御ユニット6に液体が浸入するのを確実に防止できる。
【0023】
本実施形態の引出導体ケース14は、バスバーモジュール5の樹脂製のケースと一体に形成することができるが、これに限らず、バスバーモジュール5と引出導体ケース14を別々に形成することができる。
【符号の説明】
【0024】
1 電池パック
2 電池
3 電池集合体
4 導体
5 バスバーモジュール
6 電池制御ユニット
11 総負極端子
12 主回路端子
13 引出導体
13a 迂回部
13b 切り込み部
14 引出導体ケース
14a ベース板
14b 外壁
14c 開口
14d リブ
14e 係合突起
16 爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池の正極と負極を交互に隣り合せて配置してなる電池集合体と、該電池集合体の隣り合う電池の正極と負極間をそれぞれ接続する複数の導体が絶縁部材に支持されてなるバスバーモジュールと、前記電池集合体の電池の配置方向の端部に位置させて設けられた電池制御ユニットと、前記電池集合体の総正極又は総負極に接続された総電極端子を前記電池制御ユニットの主回路端子に接続する引出導体とを備え、前記引出導体は、前記総電極端子と前記主回路端子とを結ぶ直線よりも下方に延在する迂回部を有し、前記迂回部の少なくとも一部の上端が前記主回路端子の下端よりも下方に位置して形成されてなる電池パック。
【請求項2】
前記総電極端子と前記主回路端子は、前記電池集合体と前記電池制御ユニットの同一側の側面に位置させて形成され、
前記引出導体は、両端がそれぞれ前記総電極端子と前記主回路端子とにボルト又はナットで締結され、前記総電極端子と前記主回路端子との間に前記迂回部が形成され、
前記迂回部は、前記引出導体に切り込み部を形成してU字状に形成されてなり、切り込み部の底部が前記主回路端子の下端よりも下方に位置に形成され、
前記引出導体は、樹脂製のケースに収容され、該ケースの底面に開口が形成されてなることを特徴とする請求項1に記載の電池パック。
【請求項3】
前記迂回部の切り込み部に係止する形状のリブが前記ケースから突出して形成されてなることを特徴とする請求項2に記載の電池パック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−30342(P2013−30342A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165126(P2011−165126)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】