説明

電池パック

【課題】バスバーを、がたつきを発生させることなく、安価、適切かつ確実に取り付け、良好な導通状態を確保する。
【解決手段】電池パックケース1と、電池パックケース1内に配置されるバスバー15と、バスバー15を電池パックケース1内の壁面に取り付ける取付部材25とを備える。取付部材25は、バスバー15の導通領域から偏在させた領域に取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池パックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電池パックに採用可能なジャンクションボックスとして、2つのバスバーをボルト及びナットによって締結固定するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、他の電池パックに採用可能なジャンクションボックスとして、リレーブロックに形成したバスバー収容部に縦型バスバーを挿入し、縦型バスバーに形成した係止孔にバスバー収容部の内側面から突出する可撓片の係止凸部を係止するようにしたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−28896号公報
【特許文献2】特開2002−186145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献に記載の発明では、導通部分に貫通孔が形成される関係上、電気抵抗が増大し、導通状態に悪影響を与えるという問題がある。
【0006】
さらに、前記特許文献1に記載の発明では、バスバーを導通部分のボルト及びナットによって固定しただけであるので、これらが緩めば、バスバーにがたつきが発生するという問題がある。
【0007】
また、前記特許文献2に記載の発明では、縦型バスバーであるため、リレーブロックに対して下面側から挿入し、その一部が底壁に当接した時点で、係止孔に可撓片の係止凸部を係止させる必要がある。このため、各部品の加工精度が要求され、コストアップを招来する。また、係止孔に係止凸部を係止しただけであるので、衝撃等で係止状態が解除されてしまう恐れがある。
【0008】
本発明は、バスバーを、がたつきを発生させることなく、安価、適切かつ確実に取り付け、良好な導通状態を確保することができる電池パックを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、
電池パックを、
電池パックケースと、
前記電池パックケース内に配置されるバスバーと、
前記バスバーを前記電池パックケース内の壁面に取り付ける取付部材と、
を備え、
前記取付部材は、前記バスバーの導通領域から偏在させた領域に取り付けた構成としたものである。
【0010】
なお、取付部材は、バスバーを電池パックケースに固定するものであってもよいし、バスバーの一部に当接するだけのものであってもよい。
【0011】
前記構成により、導通領域とは直接関係しない偏在領域でバスバーを取り付けることができ、バスバーでの導通に悪影響を与えることなく適切な支持状態を得ることが可能となる。
【0012】
前記電池パックケースは、内部に底壁面と側壁面とを備え、
前記バスバーは、前記電池パックケースの底壁面に載置される載置部と、前記電池パックケースの側壁面に沿って起立する起立部とを備え、
前記取付部材は、前記バスバーの起立部の起立方向と直交する方向に延び、前記電池パックケースの側壁面に取り付けられる軸部を有するのが好ましい。
【0013】
この構成により、電池パックケースに取り付けたバスバーは、起立部を起立方向とは直交する方向に延びる取付部材の軸部によって支持される。したがって、電池パックケースに対する取付部材の位置がずれたとしても、それは軸方向であって、バスバーの起立部を支持する状態には何等影響を与えることがない。つまり、バスバーの浮き上がりを確実に防止することができる。
【0014】
前記取付部材は、前記電池パックケースの側壁面に軸部を係合されるクリップであるのが好ましい。
【0015】
この構成により、クリップの軸部をボックス本体の側壁に係合させるだけで簡単にバスバーの浮き上がりを防止することができる。
【0016】
前記取付部材は、前記ボックス本体の側壁から突出し、前記バスバーの起立部の縁に当接可能な舌片であるのが好ましい。
【0017】
この構成により、別部材を必要とすることなくバスバーの浮き上がりを防止することができ、作業性に優れている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電池パックケースへのバスバーの取付を、バスバーの導通領域とは直接関係しない偏在領域に取り付けた取付部材によって行うようにしたので、バスバーでの導通に悪影響を与えることなく適切な支持状態を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施形態に係る電池パックの斜視図である。
【図2】図1から電池パックカバーを除去した状態を示す斜視図である。
【図3】図2から電池モジュール、ジャンクションボックス等の内部構成部品を取り外した状態を示す斜視図である。
【図4】図2の電池モジュールの斜視図である。
【図5】図2のジャンクションボックスのバスバー装着前の状態を示す部分斜視図である。
【図6】図5のジャンクションボックスへのバスバー装着途中の状態を示す部分斜視図である。
【図7】図5のジャンクションボックスへのバスバー装着完了後の状態を示す部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、「側」、「端」を含む用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が限定されるものではない。また、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0021】
図1及び図2は、本実施形態に係る電池パックを示す。この電池パックは、電池パックケース1に、複数の電池モジュール2とジャンクションボックス3(Junction Box)とを収容し、電池パックカバー4で閉鎖したものである。
【0022】
電池パックケース1は、図3に示すように、上面が開口する略箱体形状で、内部空間が所定間隔で配置した2枚の仕切壁5a、5bと仕切部6とで、第1電池収容部7と、第2電池収容部8a、8bとに分離され、両仕切壁5a、5bの間は、ジャンクションボックス3が配置されるジャンクションボックス収容部(JB収容部9)となっている。
【0023】
電池モジュール2は、図4に示すように、電池ケース10内に複数の電池セル11を所定間隔で収容し、電池カバー12で覆ったもので、電池セル11は直列に電気接続されている。各電池セル11は、リチウムイオン電池等の非水電解質二次電池であり、図示しないが、例えば、電池容器内に発電要素を収容し、蓋体で封止した構成となっている。
【0024】
ジャンクションボックス3は、ボックス本体13内に、図示しない制御装置やセンサ、バスバー15等を収容したもので、バスバー15にはワイヤハーネス(図示せず)が接続されている。制御装置では、バスバー15を介して電池セル11からの電力を電池パックが搭載される車両側へと供給し、ワイヤハーネス(図示せず)を介して電池セル11の電力残量を検出し、車両側の制御装置と通信することにより管理する。
【0025】
ジャンクションボックス3には、図5に示すように、一端側底面の凹凸形状に沿って長手方向に延びる4列の溝部14がそれぞれ形成され、各溝部14には、図6に示すように、4つのバスバー15(第1バスバー15a、第2バスバー15b、第3バスバー15c及び第4バスバー15d)がそれぞれ配置されている。
【0026】
ジャンクションボックス3の一側壁の内側近傍には、図6及び図7に示すように、所定間隔で起立壁16が形成されている。起立壁16の内側近傍の底面には、各バスバー15a,15b,15c,15dが配置される部分に開口部17がそれぞれ形成されている。各開口部17の下方側には、ワイヤハーネス(図示せず)の一端部に取り付けた丸型圧着端子19がそれぞれ配置されるようになっている。
【0027】
各バスバー15a,15b,15c,15dは、ジャンクションボックス3の底面に沿って配置される載置部20と、この載置部20の一端側から前記起立壁16に沿って起立する、本発明の偏在させた領域に相当する起立部21とを備える。
【0028】
載置部20には筒部22が形成され、前記丸型圧着端子19の中心孔に挿通されるボルト23が挿通し、ナット24が螺合されることにより、バスバー15a,15b,15c,15dと図示しないワイヤハーネスとが丸型圧着端子19を介して電気接続されている。第2バスバー15bと第3バスバー15cでは、2箇所に筒部22が形成され、それぞれ丸型圧着端子19を介してワイヤハーネスと電気接続されている。
【0029】
起立部21には貫通孔21aが形成され、この貫通孔21aに挿通される、取付部材の一例である樹脂クリップ25によって前記起立壁16に対して上下方向に位置決めされている。樹脂クリップ25は、軸部25aの一端側に鍔部25bを備え、鍔部25bの中心に樹脂ピン25cを圧入することにより貫通孔21a内で軸部25aを拡径させて固定できるようにしたものである。そして、樹脂クリップ25は、バスバー15a,15b,15c,15dを、ジャンクションボックス3から浮き上がろうとする方向に対して直交する方向に延びる軸部25aで支持する。したがって、樹脂クリップ25はバスバー15a,15b,15c,15dの浮き上がりによって脱落しにくく、取付状態を良好なものとする。
【0030】
第2バスバー15bと第3バスバー15cでは、2箇所に筒部22がそれぞれ形成され、図示しないワイヤハーネス等に電気接続されている。第2バスバー15bでは、載置部20の両端側にそれぞれ形成した筒部22で接続され、第3バスバー15cでは、起立部21側と、側方への延設部分とにそれぞれ形成した筒部22で接続されている。
【0031】
このように、前記各バスバー15a,15b,15c,15dでは、導通領域(例えば、第2バスバー15bや第3バスバー15cでは、2箇所の筒部22の間)から偏在させた領域である起立部21に、取付部材の一例である樹脂クリップ25を取り付けるようにしている。したがって、導通領域とは直接関係しない起立部21で、各バスバー15a,15b,15c,15dを起立壁16に取り付けることができ、バスバー15a,15b,15c,15dでの導通に悪影響を与えることなく適切な支持状態を得ることが可能となる。
【0032】
電池パックカバー4は、電池パックケース1の上方開口部を覆う板状体で、対角位置に吸気部27と排気部28がそれぞれ形成されている。
【0033】
次に、前記構成の電池パックの組立方法について説明する。ここでは、本発明の特徴部分である、ジャンクションボックス3でのバスバー15a,15b,15c,15dの組立方法についてのみ言及する。
【0034】
ジャンクションボックス3では、各バスバー15a,15b,15c,15dの載置部20を底面に形成した溝部14にそれぞれ載置する。このとき、各バスバー15a,15b,15c,15dの起立部21を起立壁16に沿わせるように配置する。これにより、各バスバー15a,15b,15c,15dが位置決めされる。
【0035】
また、各バスバー15a,15b,15c,15dは、起立部21に形成した貫通孔21aを介してジャンクションボックス3の起立壁16に形成した貫通孔16aに樹脂クリップ25の軸部25aを挿入し、樹脂ピン25cを圧入することにより樹脂クリップ25を位置決めする。これにより、各バスバー15a,15b,15c,15dは、上方への浮き上がりを、樹脂クリップ25の軸部25aによって阻止される。この場合、バスバー15の浮き上がり方向と、樹脂クリップ25の脱落方向とが直交している。このため、バスバー15が浮き上がろうとしても、その方向は樹脂クリップ25の脱落方向とは合致せず、樹脂クリップ25によるバスバー15の位置決めを良好な状態に維持することができる。
【0036】
その後、ボルト23及びナット24により、各バスバー15a,15b,15c,15dの筒部22にワイヤハーネス(図示せず)に一体化した丸型圧着端子19を連結する。
【0037】
なお、本発明は、前記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0038】
例えば、前記実施形態では、バスバー15を樹脂クリップ25で固定するようにしたが、ネジ止め等の他の手段によって固定するようにしてもよい。要は、バスバー15の浮き上がり方向に対して直交する方向に軸部25aを備えた構成の取付部材であればよい。
【0039】
また、取付部材は、必ずしもジャンクションボックス3とは別体とする必要がなく、例えば、起立壁16から突出する突起等で構成することも可能である。この場合、突起等は、必ずしもバスバー15の貫通孔21aに挿通させる必要がなく、例えば、バスバー15の起立部21の上端に当接可能としてもよい。
【0040】
また、取付部材により、ジャンクションボックス3に収容したボックス本体13内のバスバー15の浮き上がりを防止するようにしたが、電池パックケース1内の他の位置に設けたバスバーであっても同様に浮き上がりを防止することが可能である。例えば、電池セル11同士を接続するバスバーや、電池モジュール2同士を接続するバスバーであっても、前記構成の取付部材を採用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1…電池パックケース
2…電池モジュール
3…ジャンクションボックス
4…電池パックカバー
5a,5b…仕切壁
6…仕切部
7…第1電池収容部
8…第2電池収容部
9…JB収容部
10…電池ケース
11…電池セル
12…電池カバー
13…ボックス本体
14…溝部
15…バスバー
15a…第1バスバー
15b…第2バスバー
15c…第3バスバー
15d…第4バスバー
16…起立壁
17…開口部
18…ワイヤハーネス
19…丸型圧着端子
20…載置部
21…起立部
21a…貫通孔
22…筒部
23…ボルト
24…ナット
25…樹脂クリップ
25a…軸部
27…吸気部
28…排気部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池パックケースと、
前記電池パックケース内に配置されるバスバーと、
前記バスバーを前記電池パックケース内の壁面に取り付ける取付部材と、
を備え、
前記取付部材は、前記バスバーの導通領域から偏在させた領域に取り付けたことを特徴とする電池パック。
【請求項2】
前記電池パックケースは、内部に底壁面と側壁面とを備え、
前記バスバーは、前記電池パックケースの底壁面に載置される載置部と、前記電池パックケースの側壁面に沿って起立する起立部とを備え、
前記取付部材は、前記バスバーの起立部の起立方向と直交する方向に延び、前記電池パックケースの側壁面に取り付けられる軸部を有することを特徴とする請求項1に記載の電池パック。
【請求項3】
前記取付部材は、前記電池パックケースの側壁面に軸部を係合されるクリップであることを特徴とする請求項2に記載の電池パック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−78215(P2013−78215A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217050(P2011−217050)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(508110205)株式会社リチウムエナジージャパン (32)
【Fターム(参考)】