説明

電池パック

【課題】半田が失われても電気接続状態を維持可能とする。
【解決手段】回路基板12は、リード板11を半田付けする位置に基板穴13を開口しており、前記基板穴13の周縁に、前記リード板11と導通させる導通パターン15を形成しており、電池ホルダ23は、前記基板穴13と対応する位置に、前記リード板11を保持するための位置決め機構と、前記位置決め機構で電池ホルダ23上に位置決めされたリード板11上に、前記導通パターン15を接触させた状態で前記回路基板12を配置し、この状態で前記リード板11を前記電池ホルダ23に固定するための固定機構と、を備えており、前記リード板11を前記回路基板12で押圧した状態で、前記固定機構で前記回路基板12を前記電池ホルダ23に固定し、この状態で前記基板穴13を通じて、前記回路基板12に前記リード板11を半田付けすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として電動バイクや電動自転車等の大電流の放電に適している電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
電池パックは、電池セルを複数並列又は直列に接続して、出力電圧を調整している。このような電池パックは、各電池セルのセル電圧を検出して、セル電圧の異常を検出する保護回路等を実装した回路基板を接続している。
【0003】
このような電池パックにおいては、電気接続を長期に渡って安定的に確保する必要がある。従来より、リード板と回路基板との電気接続等においては半田付けが多用されているところ、経年変化や外力、衝撃等の応力によって半田が割れる等することも考えられる。そこで、半田が失われても、リード板と回路基板との電気接続を維持するメカニカル半田構造が提案させている。例えば、回路基板に穴を開口しておき、リード板を穴に貫通させ、リード板を先端を折曲させた上で半田接続する。これによれば、仮に半田が失われても、折曲されたリード板の先端を回路基板と導通させた状態に維持することが期待できる。
【0004】
しかしながら、この方法によればリード板を基板の穴から突出する分のスペースが必要となり、またリード板の折り曲げ加工も必要となる上、折り曲げた折曲片のスペースを確保する必要もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63−24693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来のこのような問題に鑑みてなされたものである。本発明の主な目的は、半田が失われても電気接続状態を維持可能な電池パックを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の第1の電池パックによれば、端面に電極を備えた一以上の電池セル10と、前記電池セル10の端面電極と接続される一以上のリード板11と、前記リード板11と半田付けによって接続された回路基板12と、前記リード板11及び電池セル10を保持する電池ホルダ23と、を備える電池パックであって、前記回路基板12は、前記リード板11を半田付けする位置に基板穴13を開口しており、前記基板穴13の周縁に、前記リード板11と導通させる導通パターン15を形成しており、前記電池ホルダ23は、前記基板穴13と対応する位置に、前記リード板11を保持するための位置決め機構と、前記位置決め機構で電池ホルダ23上に位置決めされたリード板11上に、前記導通パターン15を接触させた状態で前記回路基板12を配置し、この状態で前記リード板11を前記電池ホルダ23に固定するための固定機構と、を備えており、前記リード板11を前記回路基板12で押圧した状態で、前記固定機構で前記回路基板12を前記電池ホルダ23に固定し、この状態で前記基板穴13を通じて、前記回路基板12に前記リード板11を半田付けすることができる。
これにより、リード板の回路基板に対する相対移動が、水平方向においては位置決め機構で規制され、垂直方向においては固定機構で規制されるため、仮に半田が失われてもリード板と回路基板の相対移動が規制されて、導通状態が維持され、信頼性を高めた電気接続が達成される。また従来のようにリード板の先端を回路基板に開口したスリットに手作業にて挿入した後折り曲げ加工する必要性がなく、メカニカル半田にて接続できるので、突出部分をなくし無駄なスペースを省くことができる。
【0008】
また第2の側面に係る電池パックは、前記リード板11は、前記回路基板12を半田付けするための、折曲されたリード端面11Aを有し、前記基板穴13の開口面積が前記リード端面11Aの面積と略同等かそれよりも小さな面積を形成してなることができる。
これにより、折曲されたリード端面が基板穴に確実に露出させることができ、半田付けを容易に行うことができる。さらに、回路基板をリード端面に一致させるだけで、リード板に折り曲げ加工などの後加工をすることなく半田付けすることができる。
【0009】
さらにまた第3の側面に係る電池パックは、前記位置決め機構として、前記リード端面11Aに、前記電池ホルダ23への位置決めするためのリード孔11Bを形成し、前記電池ホルダ23に、前記リード孔11Bと対応する位置に突起部23Bを設け、前記リード孔11Bへ前記突起部23Bを挿入することにより前記リード端面11Aが位置決めされてなることができる。
これにより、電池ホルダの突起部をリード端面のリード孔に挿入させることにより、水平方向の位置ずれを抑制することができる。
【0010】
さらにまた第4の側面に係る電池パックは、前記位置決め機構として、前記リード端面11Aの周囲を保持する固定リブを前記電池ホルダ23に設けていることができる。
これにより、リード端面は、電池ホルダの固定リブにより水平方向の位置ずれを抑制することができる。
【0011】
さらにまた第5の側面に係る電池パックは、前記電池ホルダ23は、前記電池セル10を収納するセル収納空間を一以上有しており、前記セル収納空間は前記電池ホルダ23を貫通しており、該セル収納空間に前記電池セル10を収納した状態で、該電池ホルダ23の端面に前記リード板11を固定して、各電池セル10の端面電極とリード板11とを接続していることができる。
これにより、電池ホルダの端面においてリード板と電池セルとを溶接等により固定でき、固定作業を効率よく行える利点が得られる。
【0012】
さらにまた第6の側面に係る電池パックは、前記電池ホルダ23は、複数を連結可能に構成しており、前記電池ホルダ23を複数連結して、一の連結ホルダ20を形成してなることができる。
これにより、任意の数の電池ホルダを連結することで、電池ホルダに収納される電池セルの数を調整でき、所望の出力値に合致させることができる。
【0013】
さらにまた第7の側面に係る電池パックは、前記電池ホルダ23同士を連結する一面を、該リード板11を固定した端面としており、前記連結ホルダ20の他の一面に、前記回路基板12を載置可能な平坦面を有する載置面23Aを設けており、前記載置面23Aにおいて、前記電池ホルダ23同士の連結面から前記リード端面11Aを突出させることで、該載置面23Aに前記回路基板12を載置した状態で、該回路基板12と前記連結ホルダ20との間で該リード端面11Aを狭持してなることができる。
これにより、リード板と回路基板とを近接させることで、リード線などの部材を用いることなくこれらの接続を行うことが可能となり、電気接続を簡素化できる利点が得られる。
【0014】
さらにまた第8の側面に係る電池パックは、前記電池ホルダ23は、前記載置面23Aの両側に、さらに第二セル収納空間を設けており、前記第二セル収納空間同士の間に、前記回路基板12が配置されるように構成されてなることができる。
これにより、回路基板の両側をセル収納空間すなわち電池ホルダで囲み、回路基板上に実装された電子回路を保護できる。また、セル収納空間を多く配置して二次電池セルの収納数を増やしつつ、電池ホルダのデッドスペースを回路基板の配置スペースに利用して、限られた空間の有効利用を図ることができる。
【0015】
さらにまた第9の側面に係る電池パックは、前記固定機構として、前記回路基板12に、前記電池ホルダ23との位置決めのための複数の固定孔14を形成し、各電池ホルダ23に、前記固定孔14と対応する位置に一以上の筒状突起23Dを設けており、前記固定孔14の少なくとも一以上を、前記電池ホルダ23の連結方向に延長された長穴とすることで、該固定孔14に前記筒状突起23Dを挿入して、連結された該電池ホルダ23上に前記回路基板12を、位置調整して固定でき、さらに、前記基板穴13から前記リード端面11Aが露出するように前記電池ホルダ23の連結方向に位置を調整可能に構成してなることができる。
これにより、電池ホルダの連結による寸法誤差を固定孔の長穴にて補正することができ、さらに電池ホルダと回路基板の間にリード端面を基板穴の位置で確実に挟み込むことができ、電気的接続を保持させることができる。
【0016】
さらにまた第10の側面に係る電池パックは、前記基板穴13が、前記電池ホルダ23の連結方向に延長された長穴であることができる。
これにより、基板穴とリード端面が多少の位置ズレをおこしても、基板穴の長穴により確実に半田付けすることができる。
【0017】
さらにまた第11の側面に係る電池パックは、前記回路基板12には、前記基板穴13の周縁に形成された前記導通パターン15と分離された電子回路との接続部16を形成しており、前記導通パターン15と前記接続部16を半田付けすることにより、前記回路基板12上に実装される電子回路へ通電可能に構成してなることができる。
これにより、回路基板上に実装されている電子回路には、導通パターンと接続部とが半田付けされることにより始めて、電池セルと通電することができる。この結果、接続される電池セルの電圧が低い順序にて電池セルと電子回路とを導通させることが可能となり、装着時の電子回路への負荷を軽減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例に係る外箱を外した電池パックの外観を示す斜視図である。
【図2】図1の電池パックを回路基板の上面からの平面図である。
【図3】図1の電池パックを示す分解斜視図である。
【図4】図1における電池ホルダに設置された回路基板の基板穴部分の拡大斜視図である。
【図5】図5(a)は図4のV−V線における基板穴の部分を示す拡大模式断面図、図5(b)は図4のV−V線における基板穴の部分の異なる例を示す拡大模式断面図である。
【図6】図4の状態から回路基板を外した状態の電池ホルダの拡大斜視図である。
【図7】図2のVII−VII線における断面図及び一部の拡大断面図である。
【図8】図6に示す位置決め機構の変形例を示す拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための電池パックを例示するものであって、本発明は電池パックを以下のものに特定しない。さらに、本明細書においては、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」及び「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部材の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。また、一部の実施例、実施形態において説明された内容は、他の実施例、実施形態等に利用可能なものもある。
(実施例)
【0020】
以下、本発明の実施例に係る電池パックの例として、図1から図7に基づいて説明する。これらの図において、図1は外箱を外した電池パック100の外観の斜視図、図2は図1の電池パック100を回路基板12の上面からの平面図、図3は図1の電池パック100の分解斜視図を示している。また、図4は図1における電池ホルダ23に設置された回路基板12の基板穴13部分の拡大斜視図、図5(a)は図4のV−V線における基板穴の部分を示す拡大模式断面図、図5(b)は図4のV−V線における基板穴の部分の異なる例を示す拡大模式断面図、図6は図4の状態から回路基板12を取り外した電池ホルダ23の拡大斜視図、図7は図2のVII−VII線における断面図及び一部の拡大断面図を示している。
【0021】
まず図1の斜視図及び図2の平面図に示す電池パック100は、電池ホルダ23を三段に連結し、さらに第二電池ホルダ23’が連結されて、連結ホルダ20を形成している。各電池ホルダ23及び第二電池ホルダ23’の連結面には、図3の分解斜視図に示されるようにリード板11が狭持されている。さらにこの連結ホルダ20の両端面においても、リード板11を配置している。またこの電池ホルダ23には、各リード板11と電気的に接続される回路基板12が固定される固定機構を有している。回路基板12は、第一固定孔14’及び固定孔14を介して電池ホルダ23へねじ止めまたはリベット等(図示せず)で固定されている。
【0022】
さらに、リード板11の折曲面であるリード端面11Aは、回路基板12と電池ホルダ23に狭持され、回路基板12に設けた基板穴13の位置で露出している。この基板穴13は、リード端面11Aを露出する位置に調整するため、電池ホルダ23の連結方向に対し長穴としている。さらに図4の拡大斜視図に示すようにこの基板穴13には、周縁に導通パターン15を形成している。図示していないが、リード端面11Aと導通パターン15は、基板穴13より半田付けし電気的な接続を行っている。この構成によれば、仮にこの半田付けが外れたとしても、リード端面11Aは、回路基板12と電池ホルダ23とで狭持され固定されているため、電気的接続を維持することができるので、メカニカル半田としての機能を実現できる。ここでメカニカル半田とは、仮に半田付けが外れても回路基板12とリード端面11Aとの相対移動が阻止され、電気的接続が維持される構造を示している。さらにこの構成であれば、従来のようにリード板の先端を回路基板に開口したスリットに手作業にて挿入した後折り曲げ加工する必要性がないため、作業工程を簡素化することができ、さらに、半田付け作業の時間短縮が可能となる。
【0023】
次に図2の平面図で示される基板穴13は、9箇所に形成されている。リード端面11Aは、基板穴13の規定した位置に露出できるよう位置決め機構により配置されている。これにより、回路基板12の上面側から基板穴13を通じてリード端面11Aを回路基板12の導通パターン15と半田付けすることができるため、作業効率を向上させることができる。なお、回路基板12に設ける基板穴13の数は、図2の平面図の例では9個としているが、この例に限られず、電池ホルダ23の連結数や求められる電気接続の信頼性等に応じて調整できる。
【0024】
さらに回路基板12には、電池ホルダ23へ固定する穴が4箇所に形成されている。この回路基板12の固定のための穴は、図上部の第一固定孔14’を起点とし、電池ホルダ23の連結方向へ3箇所の固定孔14を長穴に形成し、取付位置の調整を可能としている。これにより、回路基板12は、電池ホルダ23の連結方向への寸法ズレの誤差を長穴で吸収することができ、確実に電池ホルダ23へ固定することができる。ただ、回路基板12の固定孔14の数は、電池ホルダ23の連結数により変更することを可能としている。
【0025】
図3の分解斜視図に示す電池パック100は、3つの電池ホルダ23と1つの第二電池ホルダ23’とを連結している。各電池ホルダ23には、9本の電池セル10を収納している。一方の第二電池ホルダ23’には、3本の電池セル10が収納されている。これらの複数の電池セル10を収納した各電池ホルダ23及び第二電池ホルダ23’の間には、互いに形状が異なる複数のリード板11が挟み込まれている。この実施例では、3つの電池ホルダ23と1つの第二電池ホルダ23’に電池セル10が全体で30本収納されている。この電池パック100では、各リード板11により電池セル10を10直列で3並列に接続している。ただ、電池ホルダに収納される電池セルの数及び電池ホルダの連結段数は、これに限るものではなく、電池駆動機器側の需要電力仕様により変更することができる。なお、電池ホルダに設けられたすべての電池収納空間に電池セルを収納する必要は無く、幾つかの電池収納空間を空としてもよい。これにより、同型の電池ホルダを使用しつつ、電池セルの本数を変更することで出力電力仕様を調整できる。この結果、電池セルの本数に応じて専用の電池ホルダを設計する事態を避け、共通の電池ホルダを使用しながら出力電力仕様の異なる電池パックを構成できる。
【0026】
また、図1の斜視図に示すように、連結ホルダ20の両端面に配置されるリード板11には、接続孔11Dが開口され、ここにリード線19が接続されている。このリード線19は、図3の分解斜視図に示すように、回路基板12から引き出されたそれぞれ別の二本の配線により、図において上下に示されている二箇所のリード板11の接続孔11Dにそれぞれ接続される。さらにこの回路基板12には、外部への電力の入出力線として二本の入出力リード線19Aが接続されており、そのうちの一本にはヒューズボックス18を介して電力入出力用のコネクタ17へ接続されている。これにより、電池パック100は、コネクタ17を介して外部への電力供給と外部からの電力受電を可能とすることができる。
【0027】
一方で、図3の分解斜視図に示すように、電池ホルダ23の連結面には、連結凸部23Eと連結凹部23Fを複数設けている。電池ホルダ23同士を連結させる際には、連結凸部23Eと連結凹部23Fを嵌合させることにより、連結方向と直交する方向への位置ズレを抑制し、正確に連結させることができる。これにより、電池ホルダ23の位置ズレが無く、収納された電池セル10の端面電極とリード板11は、確実に接合させることができる。ただ、電池ホルダの連結構造としては、連結凸部や連結凹部を備える嵌合構造に限らず、ねじ止め等の方法を利用することもできる。
(電池セル10)
【0028】
ここで実施例の電池セル10は、円柱状のリチウムイオン二次電池(Li−ion)としいる。ただ、電池セル10は、リチウムイオン二次電池には特定しない。例えば電池セルには、ニッケル水素電池(Ni−MH)やニッケルカドミウム電池(NiCd)等の充電できる全ての電池を利用することができる。またこの例では、電池セルの外装缶を円筒形とする円筒形電池を用いているが、角形電池を使用してもよいことは言うまでもない。
(回路基板12)
【0029】
図4は、図1において上から一番目の電池ホルダ23と二番目の電池ホルダ23との連結部における基板穴13部分の拡大斜視図を示している。この回路基板12上には、基板穴13と固定孔14が形成されている。さらに、基板穴13の直下には、折曲されたリード端面11Aが配置されている。この基板穴13の開口面積は、リード端面11Aの面積に対し略同等かそれよりも小さく形成されている。
(固定孔14)
【0030】
まず、回路基板12の固定孔14には、電池ホルダ23に設けられた筒状突起23Dが挿入されている。この固定孔14は、電池ホルダ23の連結方向に対して長穴としている。回路基板12は、この長穴を利用し筒状突起23Dへの位置調整を行い、図示しないがねじ止めまたはリベット等で電池ホルダ23に固定される。
(基板穴13)
【0031】
さらに、回路基板12には、基板穴13に形成された導通パターン15と電気的に絶縁し、且つ近接した位置に接続部16を形成している。この接続部16は、回路基板12の両面に実装されている電子回路と電気的に接続されている。これにより、組立時においてリード板と回路基板とを接続する際に、回路基板に実装された電子回路への不用意な導通を避けて、電子回路を保護できる利点が得られる。
【0032】
従来の電池パックでは、リード板と回路基板とが接触した時点で、回路基板内の電子回路へ通電される。この結果、電子回路が、意図しない高電圧や過渡的な電流によって電子部品の破損を引き起こす可能性があった。これに対し、この実施例ではリード端面11Aが回路基板12と設置されただけでは、回路基板12上に配置されている電子回路への通電は行われない。電子回路との通電が、接続部16と導通パターン15の離間によって電気的に遮断されているためである。このため、回路基板12に実装された電子回路には、過渡的な通電がなされないため、内部の電子部品への過電流を防ぐことができる。電子回路への通電は、導通パターン15と接続部16が半田付けされることにより開始される。これにより、接続される電池セル10の電圧が低い順序で導通パターン15と接続部16とを半田付けすることにより、回路基板12の上に実装された電子回路を保護することができる。
【0033】
また、図5(a)及び(b)の拡大模式断面図に示す基板穴13は、回路基板12に開口された半田実装箇所となっている。回路基板12は、電池ホルダ23の後述する載置面23Aに載置されている。さらに、この回路基板12には、基板穴13の周縁に導通パターン15と、電子回路と接続された接続部16を形成している。さらにまた、回路基板12と載置面23Aの間には、リード端面11Aが狭持されている。この図に示すリード端面11Aは、回路基板12の導通パターン15と半田40にて電気的に接続されている。さらに、導通パターン15は、接続部16と半田40にて電気的に接続されている。これにより、リード端面11Aは、導通パターン15を介して接続部16と導通させることができる。このようにして接続部16に接続された電子回路を通電させることができる。これにより電子回路は、電池セル10の電圧、電流及び電池温度等の監視といった所期の動作を行うことができる。
【0034】
さらに、回路基板12への半田付けは、図5(a)及び(b)の拡大模式断面図に示すように、リード端面11Aと導通パターン15、及び導通パターン15と接続部16とを半田40により繋ぐことで行われる。図5(a)に示す例では、リード端面11Aと導通パターン15を半田付けした後に、接続部16を半田付けしている。このように、導通パターン15と接続部16との半田付けを、リード端面11Aと導通パターン15との半田付けと分けることで、リード端面11Aと導通パターン15との半田付けの順序を、任意の順番で行うことが可能となる。一方で、導通パターン15と接続部16との半田付けは、電池セルの低電圧側から順に行うことにより、回路基板に実装された電子回路への過負荷を回避できる。
【0035】
さらにまた、このような半田付けを分離する方法に限らず、図5(b)に示すように、リード端面11Aと導通パターン15及び接続部16を同時に纏めて半田付けすることもできる。これにより、三点同時に半田付けすることができるため、組立工程を短縮することができる。
(位置決め機構)
【0036】
次に図6の拡大斜視図に示すように、電池ホルダ23の上面には、リード端面11Aを配置できる平坦面とした載置面23Aを設けている。さらに、その載置面23Aには、リード端面11Aの位置決めのための突起部23Bを設けている。この突起部23Bの高さは、リード端面11Aの厚みと略同等か少し低く形成されている。これに対しリード端面11Aにも位置決めのためのリード孔11Bを形成している。これにより、位置決め機構としては、電池ホルダ23の突起部23Bをリード孔11Bに挿入させることにより、リード端面11Aと電池ホルダ23の水平方向への相対移動を規制し、位置ズレを抑制することができる。
【0037】
また、位置決め機構は上記構成に限らず、リード端面11Aと電池ホルダ23との水平方向での位置ズレを抑制できる他の構成を適宜利用できる。例えば変形例として図8に示すように、電池ホルダ23の載置面23Aにリード端面11Aの水平方向への位置ズレを抑制するための固定リブ23B’を設けることもできる。この固定リブ23B’は、リード端面11Aの設置された周囲で、載置面23Aに周壁を設けている。この周壁の高さは、リード端面11Aの厚みと略同等か少し低く形成されている。
【0038】
さらに、別の変形例に係る位置決め機構としては、同じく図示はしないが、載置面23Aに凹部を形成し、リード端面11Aに凸部を設け、凹部に凸部を挿入させることにより、リード端面11Aの水平方向への位置ズレを抑制することもできる。
【0039】
ここでリード端面11Aは、連結された電池ホルダ23間に配置されたリード板11と直交した回路基板12を平行に接合させるための折曲線11Cを形成している。この拡大図でのリード板11は、折曲線11Cを二箇所に有している。一方他の場所のリード板11では、折曲線11Cを一箇所に有したリード端面11Aを配置している箇所もある。これらのリード端面11Aは、電池ホルダ23の載置面23Aに平行に載置され、その上部に回路基板12が配置されることにより固定される。これにより、固定機構としては、リード端面11Aを回路基板12と電池ホルダ23とで狭持しているため、リード端面11Aの垂直方向への移動を抑制することができる。またこれで、回路基板12とリード端面11Aとの接続は、メカニカル半田としての機能を持たせることができ、振動等による耐久性を向上させることができる。
(載置面23A)
【0040】
ここで、載置面23Aの平坦面には、リード端面11Aを平行に保持できると共に、その上部から回路基板12を平行に配置し固定することができる。これにより、リード端面11Aは、回路基板12と載置面23Aとの間に確実に固定することができる。
【0041】
さらに、この実施例の載置面23Aの平坦面は、図7の断面図に示すように電池ホルダ23に収納された電池セル10の上部で挿入方向に形成し、電池セル10毎に分離して配置されている。この分離された載置面23Aの間には、回路基板12の裏面に実装され突出した電子回路を収納可能な配置空間23Gを形成している。これにより、配置空間23Gのスペースには、回路基板12の裏面に実装される電子回路の配置が可能となり、回路基板12の両面で電子回路の実装を可能とし、電子回路の配置の自由度を向上させることができる。
【0042】
また、この図6の拡大斜視図に示す電池ホルダ23は、回路基板12を載置し固定する設置孔として載置部23Cを、配置空間23Gの両端部に2箇所設けている。この載置部23Cは、載置面23Aと同一面になるような高さで設けられている。さらに、この載置部23Cの一方には、回路基板12の固定孔14に挿入できる筒状突起23Dを設けている。これにより、回路基板12は、電池ホルダ23への配置する位置を確定することができる。
【0043】
図7の断面図及び拡大断面図に示す電池ホルダ23の両側には、電池セル10を双方に収納できる第二電池収納空間が設けられている。さらに、第二電池収納空間同士の間には、回路基板12が配置されている。この回路基板12は、リード端面11Aを挟み込んで電池ホルダ23の載置面23Aに載置されている。これにより、回路基板12の両側を第二電池収納空間で囲み、回路基板12上に実装された電子回路を保護できる。
【0044】
また、この回路基板12には、上述の通り基板穴13が形成されており、その直下にリード端面11Aが配置されている。このリード端面11Aには、リード孔11Bが形成され、載置面23Aに設けている突起部23Bに挿入されて配置されている。これにより、リード端面11Aは、突起部23Bをリード孔11Bに挿入することにより水平方向への位置ズレを抑制することができる。
【0045】
さらに、この回路基板12には、固定孔14が形成されており、電池ホルダ23に設けられた載置部23C上の筒状突起23Dが固定孔14へ挿入されている。この図の回路基板12は、固定孔14の上部からねじ30により、電池ホルダ23の載置面23Aに固定されている。これにより、リード端面11Aは、載置面23Aと回路基板12により狭持され確実に圧着される。
【0046】
さらにまた、セル収納空間を有する電池ホルダ23は、収納される電池セル10の形状に沿った外形としている。これにより、電池ホルダ23は、収納される電池セル10を保持できる強度を保ちつつ、軽量化を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明に係る電池パックは、アシスト自転車やその他の電動自転車、電動バイク、電動工具用の電源装置として好適に利用できる。
【符号の説明】
【0048】
100…電池パック
10…電池セル
11…リード板
11A…リード端面
11B…リード孔
11C…折曲線
11D…接続孔
12…回路基板
13…基板穴
14…固定孔 14’…第一固定孔
15…導通パターン
16…接続部
17…コネクタ
18…ヒューズボックス
19…リード線 19A…入出力リード線
20…連結ホルダ
23…電池ホルダ 23’…第二電池ホルダ
23A…載置面
23B…突起部 23B’…固定リブ
23C…載置部
23D…筒状突起
23E…連結凸部
23F…連結凹部
23G…配置空間
30…ねじ
40…半田

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端面に電極を備えた一以上の電池セル(10)と、
前記電池セル(10)の端面電極と接続される一以上のリード板(11)と、
前記リード板(11)と半田付けによって接続された回路基板(12)と、
前記リード板(11)及び電池セル(10)を保持する電池ホルダ(23)と、
を備える電池パックであって、
前記回路基板(12)は、前記リード板(11)を半田付けする位置に基板穴(13)を開口しており、
前記基板穴(13)の周縁に、前記リード板(11)と導通させる導通パターン(15)を形成しており、
前記電池ホルダ(23)は、
前記基板穴(13)と対応する位置に、前記リード板(11)を保持するための位置決め機構と、
前記位置決め機構で電池ホルダ(23)上に位置決めされたリード板(11)上に、前記導通パターン(15)を接触させた状態で前記回路基板(12)を配置し、この状態で前記リード板(11)を前記電池ホルダ(23)に固定するための固定機構と、
を備えており、
前記リード板(11)を前記回路基板(12)で押圧した状態で、前記固定機構で前記回路基板(12)を前記電池ホルダ(23)に固定し、この状態で前記基板穴(13)を通じて、前記回路基板(12)に前記リード板(11)を半田付けしてなることを特徴とする電池パック。
【請求項2】
請求項1に記載の電池パックであって、
前記リード板(11)は、前記回路基板(12)を半田付けするための、折曲されたリード端面(11A)を有し、
前記基板穴(13)の開口面積が前記リード端面(11A)の面積と略同等かそれよりも小さな面積を形成してなることを特徴とする電池パック。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電池パックであって、
前記位置決め機構として、
前記リード端面(11A)に、前記電池ホルダ(23)への位置決めするためのリード孔(11B)を形成し、
前記電池ホルダ(23)に、前記リード孔(11B)と対応する位置に突起部(23B)を設け、
前記リード孔(11B)へ前記突起部(23B)を挿入することにより前記リード端面(11A)が位置決めされてなることを特徴とする電池パック。
【請求項4】
請求項1または2に記載の電池パックであって、
前記位置決め機構として、前記リード端面(11A)の周囲を保持する固定リブを前記電池ホルダ(23)に設けていることを特徴とする電池パック。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか一に記載の電池パックであって、
前記電池ホルダ(23)は、前記電池セル(10)を収納するセル収納空間を一以上有しており、
前記セル収納空間は前記電池ホルダ(23)を貫通しており、該セル収納空間に前記電池セル(10)を収納した状態で、該電池ホルダ(23)の端面に前記リード板(11)を固定して、各電池セル(10)の端面電極とリード板(11)とを接続していることを特徴とする電池パック。
【請求項6】
請求項5に記載の電池パックであって、
前記電池ホルダ(23)は、複数を連結可能に構成しており、
前記電池ホルダ(23)を複数連結して、一の連結ホルダ(20)を形成してなることを特徴とする電池パック。
【請求項7】
請求項6に記載の電池パックであって、
前記電池ホルダ(23)同士を連結する一面を、該リード板(11)を固定した端面としており、
前記連結ホルダ(20)の他の一面に、前記回路基板(12)を載置可能な平坦面を有する載置面(23A)を設けており、
前記載置面(23A)において、前記電池ホルダ(23)同士の連結面から前記リード端面(11A)を突出させることで、該載置面(23A)に前記回路基板(12)を載置した状態で、該回路基板(12)と前記連結ホルダ(20)との間で該リード端面(11A)を狭持してなることを特徴とする電池パック。
【請求項8】
請求項7に記載の電池パックであって、
前記電池ホルダ(23)は、前記載置面(23A)の両側に、さらに第二セル収納空間を設けており、
前記第二セル収納空間同士の間に、前記回路基板(12)が配置されるように構成されてなることを特徴とする電池パック。
【請求項9】
請求項6から8のいずれか一に記載の電池パックであって、
前記固定機構として、
前記回路基板(12)に、前記電池ホルダ(23)との位置決めのための複数の固定孔(14)を形成し、
各電池ホルダ(23)に、前記固定孔(14)と対応する位置に一以上の筒状突起(23D)を設けており、
前記固定孔(14)の少なくとも一以上を、前記電池ホルダ(23)の連結方向に延長された長穴とすることで、該固定孔(14)に前記筒状突起(23D)を挿入して、連結された該電池ホルダ(23)上に前記回路基板(12)を、位置調整して固定でき、さらに、
前記基板穴(13)から前記リード端面(11A)が露出するように前記電池ホルダ(23)の連結方向に位置を調整可能に構成してなることを特徴とする電池パック。
【請求項10】
請求項6から9のいずれか一に記載の電池パックであって、
前記基板穴(13)が、前記電池ホルダ(23)の連結方向に延長された長穴であることを特徴とした電池パック。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一に記載の電池パックであって、
前記回路基板(12)には、
前記基板穴(13)の周縁に形成された前記導通パターン(15)と分離された電子回路との接続部(16)を形成しており、
前記導通パターン(15)と前記接続部(16)を半田付けすることにより、前記回路基板(12)上に実装される電子回路へ通電可能に構成してなることを特徴とする電池パック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−89382(P2013−89382A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227279(P2011−227279)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】