説明

電池ボックス

【課題】 本発明は、衝撃を受けても不意にスイッチがオフ状態またはオン状態になるおそれを低減した電池ボックスを提供することにある。
【解決手段】 電池を収納可能な電池収納部と、電池収納部内面に配置された端子板と、電池収納部に配置され、電池収納部に収納された電池を所定方向に付勢する弾性部材と、操作部を有し前記電池の移動を規制する移動規制手段と、を備え、移動規制手段は、操作部が第1の状態のとき、電池が電池収納部内において弾性部材による付勢方向に移動して第1の位置にあることを許容し、操作部が第1の状態から弾性部材による付勢方向と異なる方向へと操作された第2の状態のとき、電池が電池収納部内において弾性部材の弾性に抗して移動した第2の位置に位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電池ボックスに係り、たとえば走行玩具等に組み込まれる電池ボックスに関する。
【背景技術】
【0002】
電池ボックスは、通常、電池が収納される室(電池収納室)の一方の端部には端子板が形成され他方の端部にはたとえばスプリング等からなる弾性端子が設けられて形成されている。そして、この電池ボックスに電池を収納した時点で、電池のプラス電極とマイナス電極が、それぞれ、前記端子板と前記弾性端子に当接され、電気的に接続されるようになっている。したがって、電池ボックス内の電池によってたとえばモータ等を駆動させる場合、電池ボックスとモータ等の間は独立に構成されたスイッチを介在させ、このスイッチの操作によってモータ等を駆動させるか、端子板をプラス電極に対して移動させることにより、プラス電極と接触、離間状態を切り替えるようになっている。
【0003】
また、電池ボックスの他の例として、たとえば下記特許文献1に示すものが開示されている。すなわち、電池収納室に収納された電池は、その長手方向に若干スライドできる状態で配置できるようになっている。電池は、電池収納室を閉塞する蓋体に形成されたリブによって係止され、蓋体のスライドに応じてスライドできるようになっている。電池収納室の一方の端部には端子板が形成され他方の端部にたとえばスプリング等からなる弾性端子が設けられている。蓋体の一方の方向へのスライドによって、電池は、そのプラス電極が前記端子板から離間されるようにスライド(弾性端子に抗して)され、蓋体の他方の方向へのスライドによって、電池は、そのプラス電極が前記端子板に当接するようにスライド(弾性端子に付勢されて)されるようになっている。このような構成からなる電池ボックスは、蓋体においてスイッチの機能を合わせもつように構成されたものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】公開実用 昭和55−40996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載された電池ボックスは、電池収容室内での電池のスライド方向と蓋体がスライドする方向が略平行であることから、電池ボックスが衝撃を受けて電池が電池収容室内でスライドすると、それに応じて蓋体も一体となって容易にスライドしてしまう。その結果、衝撃を受けると電池のプラス電極と端子板が離間してスイッチがオフ状態になる、または、電池のプラス電極と端子板が接触してスイッチがオン状態になるというおそれがあった。
【0006】
本発明は、衝撃を受けても不意にスイッチがオフ状態またはオン状態になるおそれを低減した電池ボックスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電池ボックスは、電池を収納可能な電池収納部と、電池収納部内面に配置された端子板と、前記電池収納部に配置され、前記電池収納部に収納された前記電池を所定方向に付勢する弾性部材と、操作部を有し前記電池の移動を規制する移動規制手段と、を備え、前記移動規制手段は、前記操作部が第1の状態のとき、前記電池が前記電池収納部内において前記弾性部材による付勢方向に移動して第1の位置にあることを許容し、前記操作部が第1の状態から前記弾性部材による付勢方向と異なる方向へと操作された第2の状態のとき、前記電池が前記電池収納部内において前記弾性部材の弾性に抗して移動した第2の位置に位置するように前記電池の移動を規制することが可能であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る電池ボックスにおいては、前記操作部を第1の状態から第2の状態にするための操作は、弾性部材による付勢方向と略垂直な平面内での操作であるようにしても良い。
【0009】
また、本発明に係る電池ボックスにおいては、前記移動規制手段は、前記操作部が第2の状態とされたとき、前記操作部が前記電池を押して前記弾性部材の弾性に抗して前記電池収納部内において移動させるようにしても良い。
【0010】
また、本発明に係る電池ボックスにおいては、前記移動規制手段は、前記弾性部材により付勢された前記電池と当接し、当該電池とともに前記電池収納部内を移動可能な移動規制部材を有し、前記操作部は、第2の状態とされたとき、前記移動規制部材を押すことにより当該移動規制部材と当接する前記電池を押して、前記弾性部材の弾性に抗して前記電池収納部内において移動させるようにしても良い。
【0011】
また、本発明に係る電池ボックスにおいては、前記操作部、または、前記移動規制部材のいずれか一方には突起が設けられており、前記操作部は、前記第2の状態とされたとき、前記突起を介して前記移動規制部材を押すようにしても良い。
【0012】
また、本発明に係る電池ボックスにおいては、前記操作部、または、前記移動規制部材の他方には、前記突起が進入可能な孔が設けられており、前記操作部が第1の状態のとき、前記突起が前記孔に進入することにより、前記移動規制部材は前記電池とともに前記弾性部材による付勢方向へと移動可能となるようにしても良い。
【0013】
また、本発明に係る電池ボックスにおいては、前記電池収納部は、側壁部を有し、前記操作部は、前記側壁部に軸支されて配置される回動つまみであり、前記回動つまみは第1の状態から回転操作されることにより第2の状態とされるようにしても良い。
【0014】
また、本発明に係る電池ボックスにおいては、前記端子板は、前記電池が第1の位置にあるとき前記電池と接触可能であり、前記電池が第2の位置にあるとき、前記電池と離間可能であるようにしても良い。
【0015】
また、本発明に係る電池ボックスは、走行玩具の車体に組み込まれているようにしても良い。
【発明の効果】
【0016】
上述した本発明の電池ボックスによれば、衝撃を受けても不意にスイッチがオフ状態またはオン状態になるおそれを低減した電池ボックスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の電池ボックスを示す上面図で、スイッチがオフおよびオンの状態を示している。
【図2】本発明の電池ボックスに組み込まれる回動つまみおよび回動板の実施例を示す構成図である。
【図3】本発明の電池ボックスに組み込まれる移動規制部材の実施例を示す構成図である。
【図4】本発明の電池ボックスに組み込まれる端子支持板の実施例を示す構成図である。
【図5】本発明の電池ボックスに組み込まれるカバー体の実施例を示す構成図である。
【図6】本発明の電池ボックスが適用される走行玩具で、電池ボックスに蓋体を取り付けた状態と電池ボックスから蓋体を外した状態を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る好適な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において同符号を示す部材は同一あるいは同機能の部材を示している。
(実施態様1)
【0019】
図6(a)は、本発明の電池ボックスが適用されている走行玩具を示す上面図である。図6(a)に示す走行玩具100は、たとえば成形樹脂から構成される車体1に4個の車輪2が取り付けられている。車体1の前方(図中左側)に取り付けられる一対の前方車輪2の車軸3と、車体1の後方に取り付けられる一対の後方車輪2の車軸4は、それぞれ車体に内蔵されるモータ(図示せず)によって回転できるようになっている。モータは、たとえば車体1のほぼ中央に配置され、車体1の前後方向に突出する回転軸の回転を、それぞれ、たとえばウォームギャを介して、前方車輪2の車軸3および後方車輪2の車軸4に伝導させるようになっている。そして、前記モータを駆動させる電池は該モータの上方において車体1に内蔵されている。
【0020】
図6(b)は、図6(a)の走行玩具100において、車体1の一部を構成する蓋体5を取り外した状態を示す上面図である。図6(b)において、車体1内には電池6が配置されている。電池6は、その中心軸が車体1の長手方向に一致づけられて配置されている。電池6は、図中右側の端面に突起部からなるプラス電極6aを備え、図中左側の端部に平坦面からなるマイナス電極(図1にて符号6bで示す)を備えるようにして配置されている。そして、電池6のプラス電極6a側には、電池収納室(本発明にいう「電池収納部」)7を構成する第1側壁部(本発明にいう「側壁部」)8が形成され、この第1側壁部8には、回動つまみ(本発明にいう「操作部」)10が設けられている。この回動つまみ10は、電池6の中心軸とほぼ同軸となる軸(図1にて符号10cで示す)を有し、この軸10cは第1側壁部8に支軸されている。回動つまみ10は、後に詳述するが、その回転によって移動規制部材(図1にて符号40で示す)を移動させることができ、この移動にともなって電池6を移動させることができる。また、端子板20を支持する端子支持板21が電池6のプラス電極6aに対向するように固定されており、電池6の電池収納室7内での移動によって、電池6のプラス電極6aと端子板20との接触、離間(非接触)がなされるようになっている。
【0021】
なお、図6(a)、(b)では、車体1の前方にキャラクタの頭部9が取り付けられ、この頭部9は、走行玩具100の走行時に、前方の車軸3に取り付けられたカムを介して前後方向に往復移動できるように構成されている。玩具としての興趣を向上させんがためである。また、図6(a)、(b)に示す走行玩具100は、一実施例を示したものである。このため、走行玩具として他の種類のものであってもよく、また、走行玩具に限定されることもない。
【0022】
図1(a)、(b)は、前記走行玩具100のうち電池ボックスのみを示した上面を一部透視的に描いた図である。図1(a)は、電池6のプラス電極6aが端子板20と離間している(非接触の)状態(オフ)を示している。これに対し、図1(b)は、図1(a)と対応づけて描かれた図で、電池6のプラス電極6aが端子板20と接触した状態(オン)を示している。
【0023】
図1(b)において、まず、電池収納室7に収納された電池6のマイナス電極6b側には第2側壁部12を有し、この第2側壁部12にはたとえばスプリングからなる弾性端子13(本発明にいう「弾性部材」)が取り付けられている。電池収納室7に配置される電池6は、この弾性端子13によって、常時、プラス電極6a側の方向(図中α方向、本発明にいう「弾性部材による付勢方向」)に付勢されることになる。図1(b)の状態においては、後述する移動規制手段における操作部(回転つまみ10)は第1の状態にあり、電池6の電池収納室7内における弾性端子13による付勢方向(図中α方向)への移動が許容されているため、電池6は弾性端子13の弾性により図中α方向(弾性部材による付勢方向)に移動して本発明にいう第1の位置にある。このとき、電池6のプラス電極6aは端子板20に接触している。
【0024】
また、図1(a)の状態では、電池6は、後述する移動規制手段によって前記付勢による移動が規制されている。換言すれば、後述する移動規制手段によって、前記弾性端子13の弾性に抗して電池6は電池収納室7内である位置(本発明にいう「第2の位置」)へと移動させられている。なお、本実施形態においては、第2の位置は、第1の位置よりも弾性端子13側の位置であり、このとき、電他6のプラス電極6aは後述の端子板20と離間されており、非接触状態となっている。
【0025】
次に、本発明における移動規制手段について説明する。移動規制手段は操作部を有し、本実施形態では回動つまみ10が相当する。また、本実施形態においては、移動規制手段は移動規制部材40をも有している。以下、個々に詳述する。
【0026】
<操作部(回動つまみ10)>
図1(b)に示すように、第1側壁部8の外側には、本発明でいう操作部である回動つまみ10が設けられている。当該回動つまみ10は、図1(b)に示す第1の状態から、弾性端子13による付勢方向αとは異なる方向への操作(例えば、弾性端子13による付勢方向αと角度θをなす方向(ただし、0°<θ<180°)への操作、または、回転操作)を行うことにより、図1(a)に示す第2の状態とすることが可能である。なお、本実施形態においては、最も好適と思われる、前述の回動つまみ10に対する操作が、弾性端子13による付勢方向αと略垂直な平面内での回転操作である場合(前記角度θが約90°の場合での回転操作)を例として説明する。すなわち、この回動つまみ10は、第1側壁部8の外側から観た場合、たとえば図2(a)に示すように、平板10aにつまみ10bが取り付けられた構成となっている。また、平板10aにはつまみ10bが形成された側とは反対側に軸10cを有して構成されている。回動つまみ10の軸10cは第1側壁部8に軸支され、これにより、回動つまみ10は軸10cを中心に回動できるようになっている。すなわち、操作部である回動つまみ10は、図1(b)に示す第1の状態から、弾性端子13による付勢方向αと略垂直な平面内で(弾性端子7による付勢方向αに対して約90°をなす方向で、図から観者へ向かう方向で、または、第1側壁部8の外側から見て反時計回りの方向で)操作(回転操作)することにより、図1(a)に示す第2の状態とすることが可能である。
【0027】
図1(b)に戻り、第1側壁部8の内側(電池収納室7側)には回動板30が配置されている。この回動板30は、第1側壁部8の内側から観た場合、たとえば図2(c)に示すように、平板30aに突起30bが形成された構成となっている。突起30bは、平板30a周辺部においてその円周方向の一部に形成されている。この突起30bは、平板30aの周方向に沿った断面が緩やかな山形状に形成されている(図2(c)参照)。また、平板30aには突起30bが形成された側とは反対側に軸10cを有して構成されている。この軸10cは、回動つまみ10に形成された前記軸10cと同一となっている。これにより、回動板30は回動つまみ10と一体となって回動するため、回動つまみ10の回転にともなって、突起30bも移動することになる。なお、図2(c)は、前記軸10cを介して一体化された回動つまみ10と回動板30を上方から観た上面図である。回動つまみ10と回転板30の間には前記第1側壁部8が位置付けられるようになる。
【0028】
<移動規制部材40>
図1(b)に戻り、回動板30に対して電池6側には該回動板30に対向するようにして移動規制部材40が配置されている。移動規制部材40は、電池収納室7内に移動可能に配置されており、また、弾性端子7により付勢された電池6と当接している。したがって、移動規制部材40は、電池6と当接しつつ、電池6とともに電池収納室7内を移動可能である。また、本実施形態においては、この移動規制部材40は、回動板30に対向して配置される平板部40aと、後述する端子支持板21の両脇に配置される延在部40bと、この延在部40bの先端に設けられる係止部40cとから構成されている。係止部40cは、一対の延在部40bに対して内側に屈曲された屈曲部によって構成されており、当該屈曲部において電池6と当接している。図3は、移動規制部材40をその係止部40c側から観た斜視図である。図3に示すように、平板部40aには孔40eが形成されている。この孔40eは、前記回動板30の回動によって、該回動板30に形成された前記突起30bが進入することが可能となるように形成されている。
【0029】
なお、図1(b)は移動規制部材40の平板部40aの孔40eに突起30bが進入している状態を示している。このように、突起30bが孔40eに進入していると、移動規制部材40は突起30bにより押されないため、突起30bが孔40eに進入する分だけ、電池6とともに弾性端子13による付勢方向(図中α方向)へと移動可能となっている。そして、この状態(本発明にいう「第1の位置」)では、移動した電池6のプラス電極6aは端子支持板21の端子板20に接触している。すなわち、オンの状態となっている。
【0030】
また、図1(a)の場合、移動規制部材40の平板部40aの孔40eに回動板30の突起30bが進入していない状態となっている。そのため、該突起30bの高さに応じた距離だけ移動規制部材40は図中α方向と反対側の方向に押されて移動した状態となっている。すなわち、移動規制部材40は突起30bを介して押されていることになる。また、移動規制部材40の係止部40cは、電池6のプラス電極6a側の端面であってプラス電極6aの部分を除く周辺に当接しているので、移動規制部材40の移動に伴って電池6を押して、弾性端子13の弾性に抗して電池収納室7内を移動させるようになっている。すなわち、移動規制部材40は、弾性端子13による付勢によって図中α方向(付勢方向)に電池が移動することを規制するようになっている。そして、この状態(本発明にいう「第2の位置」)では、電池6のプラス電極6aは端子支持板21の端子板20から離間して、電池6のプラス電極6aと端子板20との電気的接触はなされていないようになっている。すなわち、オフの状態となっている。
【0031】
以下、その他の構成についても説明する。
図1(a)に示すように、端子支持板21は、電池6側において移動規制部材40の平板部40aに対向して設けられている。この端子支持板21は電池収納室7に対して固定され、電池6側の面には端子板20が取り付けられている。図4は、端子支持板21を電池側から観た斜視図である。図4において、端子支持板21は電池収納室7の底部から植設され、電池6側の面にはたとえば金属板からなる端子板20が配置されている。端子板20は、電池6のプラス電極6aと接触すべく部分において半球状の突出部20aが形成されているともに、電池収納室7の底部に形成された開口7aを通して、図示しないモータ側に引き出されるようになっている。なお、図4において、端子支持板21の端子板20が形成されている面と反対側の面側に、上端面に円弧状の切り欠き8bが設けられた壁板8aが植設されている。この壁板8aは、図5に示すカバー体50とともに、前記第1側壁部8の一部を構成するようになっている。すなわち、図5に示すカバー体50は、切り欠き50bが形成された外壁部50aを備えて構成され、前記壁板8aの切り欠き8bと前記外壁部50aの切り欠き50bとで、回動つまみ10および回動板30の共通な軸10cを支軸する孔を構成するようになっている。なお、カバー体50には、電池6側に延在する一対の延在部50cを有し、これら延在部50cの内側に移動規制部材40および端子支持板21が配置されるようになっている。カバー体50の各延在部50cは、移動規制部材40の移動の際のガイド壁としての機能を有するようになっている。また、各延在部50cの上端には内側に屈曲する係止部50dを備え、前記移動規制部材40が上方へ抜け出してしまうのを回避するようになっている。また、各延在部50cのそれぞれの下端には挿入部50eが形成され、これら挿入部50aは、図4に示すように、電池収納室7の底部に形成された溝70bに挿入されて、該カバー体50の電池収納室7への取り付けがなされるようになっている。
【0032】
さて、このように構成された電池ボックスにおいては、操作部に相当する回動つまみ10は、図1(b)の状態(本発明にいう「第1の状態」)から図1(a)に示すように、弾性端子13による付勢方向(図中α方向)と異なる方向への操作(例えば、角度θをなす方向(ただし、0°<θ<180°)への操作、または、回転操作)を行うことにより第2の状態とすることができる、なお、本実施形態では、回動つまみ10を、第1の状態から、第1側壁部8の外側から観て、反時計回りに90°回動させる、すなわち、弾性端子13による付勢方向αと略垂直な平面内で(弾性端子13による付勢方向αと約90°をなす方向で)回転操作すると、第2の状態となる。また、このとき、回動板30も同様に回動されるので、回動つまみ10が第2の状態にあるときには、回動板30に形成されている突起30bも移動して、移動規制部材40に形成されている孔40eから脱することになる。なお、突起30bの断面は図2(c)に示したように山形状に形成されているため、突起30bの移動規制部材40の孔40eからの進入、脱却はスムーズに行われるようになっている。さて、突起30bが孔40eから脱すると、移動規制部材40は突起30bにより押されることになり、突起30bの高さ分だけ弾性端子13の弾性に抗して図中α方向とは逆の方向へ移動する。これにともない、電池6も移動規制部材40と同様に移動し、電池6のプラス電極6aは端子支持板21の端子板20から離間(非接触、オフの状態)する。これにより、走行玩具100に内蔵されているモータは駆動を停止するようになる。
【0033】
電池ボックスを図1(a)に示す状態から図1(b)に示す状態に移行させるには、回動つまみ10を、第1側壁部8の外側から観て、時計回りに90°回動させて(弾性端子13による付勢方向αと略垂直な平面内で回転操作して)第1の状態とすれば良い。このとき、回動板30も同様に回動され、該回動板30に形成されている突起30bは、移動規制部材40に形成されている孔40eに進入する。結果、弾性端子13の弾性により図中α方向に付勢されている移動規制部材40は、突起30bが孔40eに進入する分だけ電池6とともに図中α方向へと移動することになり、すなわち、電池6の移動が許容されることになる。これにともない、電池6のプラス電極6aは端子支持板21の端子板20と接触(オンの状態)する。これにより、走行玩具100に内蔵されているモータは駆動するようになる。
【0034】
このように構成された電池ボックスは、操作部(回動つまみ10)に対して、弾性端子13による付勢方向と異なる方向への操作(例えば、角度θをなす方向(ただし、0°<θ<180°)への操作、または、回転操作)を行うことによって、電池6の電池収納室7内での移動を行わしめ、これにより電池6のプラス電極6aと端子板20との接触、離間を図らんとしたものである。すなわち、電池6の電池収納室7内での移動方向は弾性端子13による付勢方向と略平行であるが、これに対し、操作部(回動つまみ10)を第1の状態から第2の状態、または、第2の状態から第1の状態にするために操作する方向は、弾性端子13による付勢方向と異なる方向であり、すなわち、平行な方向ではない。したがって、衝撃等により電池収納室7内で電池6が移動しようとしても、その移動しようとする方向と、操作部(回動つまみ10)が第1の状態から第2の状態、または、第2の状態から第1の状態になるために操作される方向とが平行でないので、容易には操作部(回動つまみ10)は第1の状態と第2の状態の間で動いてしまうことはない。その結果として電池収納室7内での電池6の移動も規制され、スイッチが不意にオン、オフされるおそれが低減されている。
【0035】
なお、従来は電池ボックスに収納する電池6は種類が多くなかったため、端子板20の方をプラス電極6aに対して移動させることにより、プラス電極6aと接触、離間させてオン、オフするように構成された従来構成の電池ボックスであっても電気的接続にはなんら問題はなかった。
しかし、マンガン電池、アルカリ電池、あるいはエボルタ電池等、近年の電池の種類が多様化しており、これら種類の異なる電池は、突起部として形成されるプラス電極6aの突出高さがそれぞれ異なっているのが現状である。
このため、前述のような従来構成の電池ボックスにあっては、電気的接続に不具合が生じるようになっていた。すなわち、プラス電極6aの突出高さが大きい電池6を使用した場合、端子板20をプラス電極6aから離間させようとしても接触状態が保たれてしまうことがあった。また、そのような突出高さが大きい電池6を長期間の収納の後には端子板20が変形してしまう場合があった。そのため、後日、たとえばプラス電極6aの突出高さの小さな種類の電池6を収納しようとする場合には、端子板20とプラス電極6aを接触させようとしても接触させることができず、電気的接続に不良が生じるという不都合が往々にして生じていた。本発明の電池ボックスは、電池ボックスに対して電池6を移動できるようにし、この移動に応じて、電池ボックス内に形成されている端子板と電池のプラス電極との接触(オン)および非接触(オフ)を図るようにしていことから、前記のような、電池6の種類の多様化に応じて生じてきた新たな不具合を回避できるという効果も奏し得る。
【0036】
また、本発明において、移動規制部材40の移動のストロークを比較的大きくし(たとえば突起30bの高さを大きくする)、電池6のプラス電極6aと端子板20との接触の後にあっても前記移動規制部材40の移動が行われる遊びを設けることによって、プラス電極6aの高さの異なる各種の電池6を収納し得る電池ボックスを得ることができる。ちなみに、特許文献1に示される電池ボックスでは、電池のスライドのストロークは蓋体のスライドのストロークによって一義的に定まり、上述した遊びがないことから、他種の電池を収納することが困難となる不都合が生じる。
【0037】
上述した実施態様では、移動規制手段には移動規制部材40を有するものを示したが、移動規制部材40は必須ではない。すなわち、操作部(回転つまみ10)が、第2の状態とされたとき、直接電池6を押すようにしても良い。また、回動つまみ10の側に突起30bを設けたが、移動規制部材40の側に設けるようにして、回動つまみ10の側に孔40eを形成することにしてもよい。同様の効果が得られるからである。また、本実施形態では、電池6のマイナス電極6bと接する弾性端子13をもって弾性部材としているが、マイナス電極6bと接する端子とは別に、弾性部材を設けることとしても良いことはいうまでもない。
【0038】
また、回動板30の回動に対する移動規制部材40の移動は上述したものに限定されることはなく、他の構成によって達成するようにしてもよいことはもちろんである。たとえば、移動規制部材40の回動板と対向する面に突起30bを形成し、この突起に当接される回動板の面を軸に対して傾斜をもった面として形成するようにしてもよい。回転板の回動によって前記突起30bに接触する部分が軸方向に変動するようにできるからである。
【0039】
上述した実施態様では、電池ボックスは走行玩具に備えられたものを例に挙げて示したものである。しかし、走行玩具に備えられたものに限定されることはなく、静止玩具、あるいは電子機器等に備えられるように構成してもよく、また、電池ボックス単独で構成するようにしてもよいことはもちろんである。同様の効果を奏するからである。
【0040】
また、本発明にかかる車両玩具は、樹脂から作られる構成としたが、本発明はこれに限定されず、金属や木材などから構成されていてもよいことはもちろんである。
【符号の説明】
【0041】
1……車体、2……車輪、3、4……車軸、5……蓋体、6……電池、6a……プラス電極、6b……マイナス電極、7……電池収納室、7a……開口、7b……溝、8……第1側壁部、8a……壁板、8b……切り欠き、10……回動つまみ、10a……平板、10b……つまみ、10c……軸、12……第2側壁部、
20……端子板、20a……突出部、21……端子支持板、30……回動板、30a……平板、30b……突起、40……移動規制部材、40a……平板部、40b……延在部、40c……係止部、40e……孔、50……カバー体、50a……外壁部、50b……切り欠き、50c……延在部、50d……係止部、50e……挿入部、100……走行玩具。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池を収納可能な電池収納部と、
前記電池収納部に配置された端子板と、
前記電池収納部に配置され、前記電池収納部に収納された前記電池を所定方向に付勢する弾性部材と、
操作部を有し、前記電池の移動を規制する移動規制手段と、
を備え、
前記移動規制手段は、
前記操作部が第1の状態のとき、前記電池が前記電池収納部内において前記弾性部材による付勢方向に移動した第1の位置に位置することを許容し、
前記操作部が前記第1の状態から前記弾性部材による付勢方向と異なる方向へと操作された第2の状態のとき、前記電池が前記電池収納部内において前記弾性部材の弾性に抗して移動した第2の位置に位置するように前記電池の移動を規制することを特徴とする電池ボックス。
【請求項2】
前記操作部を第1の状態から第2の状態にするための操作は、弾性部材による付勢方向と略垂直な平面内での操作であることを特徴とする請求項1記載の電池ボックス。
【請求項3】
前記移動規制手段は、前記操作部が第2の状態とされたとき、前記操作部が前記電池を押して前記弾性部材の弾性に抗して前記電池収納部内において移動させることを特徴とする請求項1または2記載の電池ボックス。
【請求項4】
前記移動規制手段は、前記弾性部材により付勢された前記電池と当接し、当該電池とともに前記電池収納部内を移動可能な移動規制部材を有し、
前記操作部は、第2の状態とされたとき、前記移動規制部材を押すことにより当該移動規制部材と当接する前記電池を押して、前記弾性部材の弾性に抗して前記電池収納部内において移動させることを特徴とする請求項3記載の電池ボックス。
【請求項5】
前記操作部、または、前記移動規制部材のいずれか一方には突起が設けられており、
前記操作部は、前記第2の状態とされたとき、前記突起を介して前記移動規制部材を押すことを特徴とする請求項6記載の電池ボックス。
【請求項6】
前記操作部、または、前記移動規制部材の他方には、前記突起が進入可能な孔が設けられており、
前記操作部が第1の状態のとき、前記突起が前記孔に進入することにより、前記移動規制部材は前記電池とともに前記弾性部材による付勢方向へと移動可能となることを特徴とする請求項5記載の電池ボックス。
【請求項7】
前記電池収納部は、側壁部を有し、
前記操作部は、前記側壁部に軸支されて配置される回動つまみであり、
前記回動つまみは第1の状態から回転操作されることにより第2の状態とされることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の電池ボックス。
【請求項8】
前記端子板は、前記電池が第1の位置にあるとき前記電池と接触可能であり、前記電池が第2の位置にあるとき、前記電池と離間可能であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載の電池ボックス。
【請求項9】
電池ボックスは、走行玩具の車体に組み込まれていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項記載の電池ボックス。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−94387(P2012−94387A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−241229(P2010−241229)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(000135748)株式会社バンダイ (246)
【出願人】(597047130)株式会社ウィズ (19)
【Fターム(参考)】