説明

電池モジュール

【課題】部品点数を増加させることなくケース内にガス放出部を区画すること。
【解決手段】電池モジュール10は、連通孔を有する電池20と、この電池20を収容するケース11と、ケース11内をガス放出部31と温調流路32とに区画するとともに、電池20の負極20bと電気的に接続される区画板30と、を備える。区画板30は、電池20の負極20bと接続されることにより、電池20の電極として機能する。区画板30は、電池20に接続される必須部品であるため、電池モジュール10の部品点数が増加しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス抜き部を有する電池がケースに収容されてなる電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
電池をケース内に収容してなる電池モジュールにおいては、電池には、電池内で発生したガスを電池外に放出するガス抜き部が設けられ、このガスはケース内に放出される。通常、ケース内には、電池の温度調節(以下、単に「温調」という。)を行うための熱媒体が流通されている。このため、電池からガスが放出されると、ケース内で熱媒体とガスが混合されてしまい、ガスが電池の温調の妨げになっていた。
【0003】
そこで、特許文献1では、区画板によりケース内を電池室と排気室に区画し、電池から放出されたガスを電池室に流入させることなく排気室に放出するようにしている。このように、ケース内に区画板を設けることで、ガスが温調の妨げになることを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−27011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1では、ケース内に排気室を区画するために区画板を設けており、電池モジュールの部品点数が増加してしまっている。
本発明はこのような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、部品点数を増加させることなくケース内にガス放出部を区画することができる電池モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、電池内で発生したガスを電池外に放出するガス抜き部を有する電池と、前記電池を収容するケースと、前記ケース内を前記ガスが放出されるガス放出部と前記電池の温度調節を行う熱媒体を流通させる温調流路とに区画するとともに前記電池の電極と電気的に接続される区画板とを備えたことを要旨とする。
【0007】
本発明によれば、区画板は、ケース内を温調流路とガス放出部に区画する。このため、区画板により、ガス放出部に放出されたガスが温調流路を流通する熱媒体に混合することが防止され、ガスが熱媒体による電池の温調を妨げることが防止される。また、区画板は、電池の電極と電気的に接続される。すなわち、区画板は、電池に接続される必須部品であるため、電池モジュールの部品点数が増加しない。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電池モジュールにおいて、前記電池は前記ケースの底板と対向する面である底面から立設する側面が極性を持つように構成され、前記区画板には前記電池が挿通される挿通孔が形成されるとともに、前記区画板は前記電池の側面と電気的に接続されることを要旨とする。
【0009】
本発明によれば、電池の側面は極性を持つとともに、区画板には電池が挿通される挿通孔が形成される。このため、電池を区画板に挿通した状態で、電池の側面と区画板を電気的に接続することにより、区画板は電極として機能する。区画板は電池の側方に配置されることになるため、電池の側面が極性を持つことにより、容易に電池の電極と区画板を接続することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の電池モジュールにおいて、前記ガス放出部に露出する前記電池の前記側面は絶縁部材により覆われていることを要旨とする。
本発明によれば、ガス放出部での電極同士の電気的接続を防止でき、短絡が防止される。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の電池モジュールにおいて、前記区画板に形成される前記挿通孔の孔径は前記電池を圧入できるように形成されていることを要旨とする。
【0012】
本発明によれば、電池が挿通孔に圧入されることにより、電池の側面が挿通孔に密着する。このため、電池と挿通孔の間に隙間が生じることが防止され、挿通孔を介してガス放出部と温調流路が連通されることを防止できる。また、電池と区画板が、密着するため電池の側面と区画板は電気的に接続される。
【発明の効果】
【0013】
部品点数を増加させることなくケース内にガス放出部を区画すること。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態における電池モジュールの斜視図。
【図2】実施形態における電池モジュールの断面図。
【図3】実施形態における区画板の平面図。
【図4】別例を示す電池モジュールの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の電池モジュールを具体化した一実施形態について図1〜図3にしたがって説明する。
図1に示すように、電池モジュール10の一部をなすケース11は、平面視矩形状をなす底板12の四辺から立設された側壁13と、底板12と対向する方向に位置する天板14とから形成されている。底板12及び側壁13は、樹脂、絶縁性コーティング膜が形成された金属、シリコン等によって形成されている。天板14は導電性の高い金属(例えば、銅やアルミ)によって形成されるとともに、天板14には、楕円形状の貫通孔14aが複数形成されている。
【0016】
図2に示すように、底板12の短辺から立設する側壁13には、ケース11の外部に開口する開口部13aが形成されている。なお、本実施形態では、底板12及び側壁13で囲まれる領域をケース11の内部領域とする。また、底板12の短辺から立設する側壁13には、図示しない温調装置が取り付けられるとともに、開口部13aからケース11内に熱媒体が供給されるように構成されている。ケース11の内部領域には、円柱状の電池20が、その軸線が底板12と直交し、かつ互いに隣接する電池20との間隔が一定間隔となるような状態で収容されている。また、ケース11の内部領域には、複数枚(本実施形態では9枚)の平板状のフィン21が電池20の軸方向に配置されるとともに、各フィン21には、電池20が挿通されている。このフィン21により電池20の熱伝導面積を大きくしている。
【0017】
図1に示すように、電池20の軸方向第1端部(底板12と接していない端部)には正極20aが設けられるとともに、電池20は、軸方向第2端部(底面)でケース11の底板12に支持されている。また、電池20においてケース11の底板12と対向する底面から立設する側面には、負極20bが設けられている。電池20は、異常な状態で放電などされた場合に、その内部にガスが発生するおそれがある。電池20内には、ガスの発生に伴い電池20内の圧力が高まったときに開弁するとともに、ガスの放出に伴い電池20内の圧力が低くなると閉弁する安全弁22が設けられている。また、電池20の軸方向第1端部には、電池20の外部と電池20の内部を連通させるガス抜き部としての連通孔23が形成されている。したがって、電池20は、電池20内で発生したガスを電池20外に放出する連通孔23を有する構成とされている。
【0018】
図2及び図3に示すように、ケース11の内部領域には、平面視矩形状の区画板30が収容されている。区画板30は、導電性の高い金属(例えば、銅やアルミ)からなる。区画板30の長辺寸法は、ケース11を平面視したときのケース11の内部領域における長辺寸法とほぼ同一とされているとともに、その短辺寸法は、ケース11を平面視したときのケース11の内部領域における短辺寸法とほぼ同一とされている。
【0019】
区画板30には、電池20が挿通される複数の挿通孔30aが形成されている。
挿通孔30aの直径(孔径)は、電池20の直径よりわずかに小さく設定されており、挿通孔30aに電池20が挿入されると、電池20の負極20bと、挿通孔30aの内周面とが密着するようになっている。すなわち、区画板30に形成される挿通孔30aの直径は、電池20を圧入できるように形成されている。そして、電池20は区画板30の挿通孔30aに圧入される。
【0020】
区画板30は、その短辺側に取り付けられた導電部材33によりケース11内の上部に取り付けられるとともに、挿通孔30aに電池20が挿通されている。ケース11内は、区画板30によりケース11の底板12側と天板14側の二つの領域に区画されている。区画板30より天板14側の領域には、挿通孔30aに挿通された電池20の軸方向第1端部側が突出している。よって、本実施形態では、天板14側(上側)に位置する領域を電池20内部で発生するガスが放出されるガス放出部31とし、底板12側に位置する領域を電池20の温度調節を行う熱媒体が流通される温調流路32としている。すなわち、区画板30は、ケース11内をガスが放出されるガス放出部31と、電池20の温度調節を行う熱媒体を流通させる温調流路32とに区画している。
【0021】
区画板30の四側縁は、側壁13と密着した状態でケース11内に取り付けられるとともに、各挿通孔30aは、電池20の負極20bに密着している。このため、区画板30は、ガス放出部31と温調流路32を非連通状態としている。
【0022】
また、区画板30の天板14側の表面には、ゴムシート34が貼られている。このゴムシート34により、ガス放出部31と温調流路32のシール性が高められている。
電池20は正極20aがガス放出部31に突出するとともに、負極20bと区画板30は電気的に接続されている。また、電池20の正極20aは、図示しない導電部材を介して天板14に電気的に接続されている。したがって、本実施形態では、電池20は天板14及び区画板30により並列接続されるとともに、天板14は正極用の電極を構成し、区画板30は負極用の電極を構成している。そして、区画板30は、導電部材33を介して、接続対象と接続されるように構成されている。よって、本実施形態では、電池20と、電池20を収容するケース11と、区画板30とから電池モジュール10が構成されている。
【0023】
次に、本実施形態における電池モジュール10の作用について説明する。
電池モジュール10において、電池20内で発生したガスは、連通孔23を介してガス放出部31に放出される。この際、ガス放出部31と温調流路32は、区画板30により非連通状態とされていることから、電池20から放出されたガスは、温調流路32に流入することがない。
【0024】
また、区画板30は、電池20の負極20bと電気的に接続されている。したがって、区画板30は、ケース11内をガス放出部31と温調流路32に区画するだけでなく、電池20の電極(負極)を構成している。
【0025】
したがって、本実施形態によれば以下のような効果を得ることができる。
(1)区画板30は、ケース11内をガス放出部31と温調流路32に区画している。このため、電池20から放出されるガスは、温調流路32に流入することが防止され、温調流路32を流通する熱媒体と、電池20から放出されたガスが混合されることが防止される。したがって、熱媒体による電池20の温調はガスによって妨げられることがない。そして、区画板30は、電池20の負極(電極)20bと電気的に接続されることにより、電池20の電極として機能し、電池モジュール10に必須の構成である。よって、電池モジュール10の部品点数を増加させることなく、ケース11内をガス放出部31と温調流路32に区画できる。
【0026】
(2)電池20の側面を負極20bとしている。また、区画板30に挿通孔30aを形成することにより、挿通孔30aに電池20を挿通できるように構成している。このため、区画板30は、電池20の側方に配置されることになる。したがって、電池20の側面が負極20bとなっていることにより、容易に負極20bと、区画板30を電気的に接続することができる。
【0027】
(3)電池20は、区画板30の挿通孔30aに圧入されている。これにより電池20と挿通孔30aの間に隙間が生じることが防止される。このため、挿通孔30aと電池20の間にシール部材を介在させることなく、ガス放出部31と温調流路32を非連通状態とすることができる。
【0028】
(4)区画板30に挿通孔30aを形成し、その挿通孔30aに電池20を圧入している。電池20を圧入する際に、複数本の電池20を配置するとともに、その上部から区画板30を設置することにより、複数本の電池20を組み付ける場合でも1工程で組み付けが可能とされている。
【0029】
(5)区画板30の天板14側の表面にゴムシート34を貼り付けている。このため、ガス放出部31と温調流路32のシール性が確保されている。したがって、電池モジュール10に衝撃が加わった場合など、電池20と挿通孔30aに隙間が形成された場合であっても、ガス放出部31と温調流路32の非連通状態を維持することができる。
【0030】
なお、実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 実施形態において、図4に示すように、ガス放出部31に露出している電池20の負極20b(電池20の側面)を絶縁部材35で覆ってガス放出部31での負極20bと、正極20aとの電気的接続を防止するようにしてもよい。このように構成することにより、正極20aと負極20bは、電気的に接続されることが防止される。また、絶縁部材は、電池20の側面を覆うようなコーティング膜であってもよい。
【0031】
○ 実施形態では、区画板30に、別体の導電部材33を取り付けて一体化したが、区画板30に導電部材33を一体成形してもよい。
○ 実施形態において、電池20の軸方向第2端部(底板12と接している端部)に形成される面をなす底面が負極を形成していてもよい。この場合、電池20の底面と区画板30を導線などの導電部材で接続するなど、電池20の底面と区画板30が電気的に接続されるように構成すればよい。
【0032】
○ 実施形態において、区画板30に形成された挿通孔30aの内周縁にシール部材を設けてもよい。
○ 実施形態において、電池20の側面が正極を、電池20の軸方向第1端部が負極を構成するようにしてもよい。
【0033】
○ 実施形態において、フィン21と区画板30を電気的に接続することにより区画板30が負極を構成するようにしてもよい。この場合、フィン21は導電性の材料から形成されている必要がある。
【0034】
○ 実施形態において、区画板30に凹部を形成するとともに、凹部に電池20を収容することにより区画板30と電池20の負極20bが電気的に接続されるようにしてもよい。また、この場合、電池20の底面に負極が構成されていてもよい。
【0035】
○ 実施形態において、電池20は、円柱状以外の形状のものであってもよい。例えば、角型電池やラミネート型の電池であってもよい。すなわち、電池内で発生したガスを抜く構造を有している電池であれば、どのような形状のものであってもよい。
【0036】
○ 実施形態において、底板12側(下側)に位置する領域を電池20内部で発生するガスが放出されるガス放出部31とし、天板14側(上側)に位置する領域を電池20の温度調節を行う熱媒体が流通される温調流路32としてもよい。この場合、連通孔23は、電池20の軸方向第2端部(底面)に形成される。
【符号の説明】
【0037】
10…電池モジュール、11…ケース、20…電池、20a…正極、20b…負極、23…連通孔、30…区画板、30a…挿通孔、31…ガス放出部、32…温調流路、35…絶縁部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池内で発生したガスを電池外に放出するガス抜き部を有する電池と、
前記電池を収容するケースと、
前記ケース内を前記ガスが放出されるガス放出部と前記電池の温度調節を行う熱媒体を流通させる温調流路とに区画するとともに前記電池の電極と電気的に接続される区画板とを備えたことを特徴とする電池モジュール。
【請求項2】
前記電池は前記ケースの底板と対向する面である底面から立設する側面が極性を持つように構成され、
前記区画板には前記電池が挿通される挿通孔が形成されるとともに、前記区画板は前記電池の側面と電気的に接続されることを特徴とする請求項1に記載の電池モジュール。
【請求項3】
前記ガス放出部に露出する前記電池の前記側面は絶縁部材により覆われていることを特徴とする請求項2に記載の電池モジュール。
【請求項4】
前記区画板に形成される前記挿通孔の孔径は前記電池を圧入できるように形成されていることを特徴とする請求項2に記載の電池モジュール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−252946(P2012−252946A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126335(P2011−126335)
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】