説明

電池充電システム

【課題】2次電池の電池充電システムにおいて、充電電流を確保しつつ制御トランジスタの発熱を抑制することである。
【解決手段】電池充電システム10は、充電用の電源アダプタ6と充電対象の電池8との間に配置され、充電制御トランジスタ12と充電電流を検出する充電検出素子14とが直列に接続されて構成される第1充電パスと、充電制御トランジスタ12と並列に配置され、全充電電流(I1+I2)の一部I2を分担して流す電流源回路20を含む第2充電パスと、充電検出素子14の検出値に応じ、充電制御トランジスタ12及び電流源回路20の動作を制御して充電状態を制御する制御回路18とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電池充電システムに係り、特に充電用電源アダプタを用いて充電対象電池を充電する電池充電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機、PHS(Personal Handyphone Systems)、PDA(Personal Digital Assistant)、PC(Personal Computer)等の携帯型電子機器には、リチウムイオン電池等の再充電可能ないわゆる2次電池が用いられる。これらの2次電池を再充電するには、AC電源からDCに変換する電源アダプタを用い、効率的な充電のための充電制御が行われる。例えば、充電初期においては定電流充電によって短時間に充電レベルを上げ、その後定電圧充電を行う等の方法がとられる。この場合に、充電パスにスイッチング素子等の充電制御トランジスタを設け、充電レベルを監視しながら、充電パスの充電電流を制御することが行われる。
【0003】
例えば、特許文献1には、アダプタから2次電池の充電を行う際に、アダプタからの直流電圧と電池電圧との差電圧と充電電流の積による大きな熱損失が充電制御トランジスタに発生することを抑制するための電池充電回路が開示されている。ここでは、アダプタを電流制限付き定電圧直流電源とし、電流制限値を変更可能な定電圧回路を用いて電池を充電し、電流制限値の変更を電池の充電に応じて適時に行うことで充電制御トランジスタに要求される許容損失を小さくする構成が述べられている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−159477号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に述べられているように、従来技術において充電パスに設けられる充電制御トランジスタは、充電パスを流れる充電電流のオン・オフを制御するものであるから、アダプタと電池との間の差電圧と充電電流とによる発熱が生じる。したがって、充電制御トランジスタを許容温度以下で使用するには、充電電流を絞ることになるが、その場合には充電に時間がかかる。特許文献1に開示される構成によれば、充電制御トランジスタに派生する熱損失を抑制できるが、充電システムが複雑になる。
【0006】
本発明の目的は、充電電流を確保しつつ制御トランジスタの発熱を抑制することを可能にする電池充電システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電池充電システムは、充電用電源アダプタと充電対象電池との間に配置され、充電制御トランジスタと充電電流を検出する充電電流検出素子とが直列に接続されて構成される第1充電パスと、充電制御トランジスタと並列に配置され、充電電流の一部を分担して流す充電電流源回路を含む第2充電パスと、充電電流検出素子の検出値に応じ、充電制御トランジスタ及び充電電流源回路の動作を制御して充電状態を制御する充電制御回路と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る電池充電システムにおいて、充電制御回路は、充電対象電池の充電状態を監視し、所定の充電状態に到達したときに充電電流源回路の動作を停止することが好ましい。
【0009】
また、本発明に係る電池充電システムにおいて、第2電流パスは、充電電流源回路と抵抗素子とを直列に接続して構成されることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る電池充電システムにおいて、充電電流源回路と充電制御回路とが一体のICで構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
上記構成により、充電用電源アダプタと充電対象電池との間に配置される充電パスとして、充電制御トランジスタと充電電流検出素子とが直列に接続されて構成される第1充電パスと、充電電流の一部を分担して流す充電電流源回路を含む第2充電パスとが並列に設けられる。このように充電電流の一部が充電電流源回路に分担されるので、充電電流を確保しつつ制御トランジスタの発熱を抑制することが可能となる。
【0012】
また、充電対象電池が所定の充電状態に到達したときに充電電流源回路の動作が停止される。例えば、所定の充電状態を、それ以後の充電電流を充電制御トランジスタに負わせても発熱が十分抑制される程度に設定することで、それ以後について、発熱を抑制しながら従来用いられた充電制御に従って行うことができる。
【0013】
また、第2電流パスは、充電電流源回路と抵抗素子とを直列に接続して構成されるものとするので、充電電流源回路の発熱を抵抗素子側に分散させることができ、能動素子を含む充電電流源回路の発熱を抑制することができる。
【0014】
また、充電電流源回路と充電制御回路とを一体のICとするので、電池充電システムの構成が簡単になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき詳細に説明する。以下において、充電対象の2次電池としてリチウムイオン電池を述べるが、これは説明のための例示であって、それ以外の再充電可能な2次電池であっても構わない。また、以下において、充電制御トランジスタとしてPチャネルMOSトランジスタを述べるが、回路構成を適当に修正することによってそれ以外のスイッチング素子を用いてもよい。例えば、PチャネルMOSトランジスタに代えてPNPトランジスタを用いる構成とすることができる。一般的には、電池に対し充電電流をプラス側からマイナス側に流す回路構成が簡単であるが、回路修正が可能な場合、NチャネルMOSトランジスタ又はNPNトランジスタを用いる回路構成としてもよい。また、以下で述べる電流値等の回路条件は説明のための一例であって、具体的な充電条件に合わせて適当な値等に設定することができる。
【0016】
図1は、電池充電システム10の構成を示す図である。ここでは、電池充電システム10の構成要素ではないが、充電電源である電源アダプタ6と、充電対象の電池8も図示されている。電源アダプタ6は、AC電源から所定の電圧を有するDC電源に変換する交流/直流変換回路である。所定の電圧としては、例えば約5V程度である。充電対象の電池8は、ここではリチウムイオン電池である。リチウムイオン電池は、例えば約3V程度の充電電圧に充電される。電池充電システム10は、電源アダプタ6を用いて、充電電流を適切に制御し、迅速に所望の充電状態に電池8を充電する機能を有する回路システムである。充電電流としては、例えば、500mAから1A程度が用いられる。
【0017】
電池充電システム10は、電源アダプタ6と電池8との間に、互いに並列の関係で設けられる2つの充電パスと、制御集積回路16とを備える。2つの充電パスの1つは、第1充電パスで、充電制御トランジスタ12と、充電検出素子14とを直列に接続して構成される。もう1つの充電パスは、充電制御トランジスタ12に対して並列に配置され、充電電流の一部を分担して流すことができる電流源回路20を含んで構成される。制御集積回路16は、制御回路18と電流源回路20とを一体化して集積したICである。
【0018】
第1充電パスは、上記のように、電源アダプタ6と電池8との間に、充電制御トランジスタ12と、充電検出素子14とを直列に接続して構成される。第1充電パスは、電源アダプタ6のプラス側端子から電池8のプラス側端子に向けて電流を流すための電流パスで、従来技術においてよく知られている電池充電パスである。
【0019】
充電制御トランジスタ12は、第1充電パスを流れる電流について、制御回路18の制御の下でオン・オフする機能を有するスイッチング素子である。かかる充電制御トランジスタ12としては、PチャネルMOSトランジスタを用いることができる。充電制御トランジスタ12をPチャネルトランジスタとして、ソース端子は電源アダプタ6のプラス端子に接続され、ドレイン端子は充電検出素子14の一方側端子に接続され、ゲート端子は制御回路18に接続される。
【0020】
充電検出素子14は、電池8に充電される全充電電流の大きさを検出し、制御回路18に出力する機能を有する素子である。具体的には抵抗素子を用いてその両端を制御回路18の電圧検出部にそれぞれ接続する。これによって抵抗素子に電流が流れるときの電圧降下を制御回路18で検出し、予め分かっている抵抗素子の抵抗値で除すことで充電検出素子14に流れる全電流の大きさを求めることができる。上記の例で、充電電圧は約3Vであり、充電電流は約500mAから約1Aであるので、充電検出素子14の抵抗値は約0.1Ωから0.5Ω程度が好ましい。例えば約0.33Ω程度を用いることができる。
【0021】
第2充電パスは、電池8に流す全充電電流を確保しながら、充電制御トランジスタ12に流れる電流を抑制するため、全充電電流の一部を分担して電池に流す機能を有する。具体的には、充電制御トランジスタ12に並列に電流源回路を設け、ここを通して電池8に充電電流を流す。図1においては、第1充電制御トランジスタ12を流れる充電電流をI1とし、電流源回路20から流される充電電流をI2として示してある。充電検出素子14には、全充電電流である(I1+I2)が流れる。したがって、第2充電パスは、第1充電パスに並列に配置されるのではなく、充電制御トランジスタ12に並列に配置されたもう1つの充電パスである。
【0022】
第2充電パスを構成する電流源回路20は、電源アダプタ6から電源供給を受け、充電制御トランジスタ12と並列に配置される電流源である。図2にその内部構成を示す。電流源回路20は、電源側端子22と、出力端子24と、制御端子26とを有する。図2の配置例では、電源側端子22は電源アダプタ6のプラス側端子に接続され、出力端子24は充電制御トランジスタ12のドレイン及び充電検出素子14の一方側端子に接続される。制御端子26は制御回路18に接続される。電流源回路20は、制御端子26を介して制御回路18から指示された一定の電流を発生することができる基準電流源30と、その電流の大きさを抵抗R1と抵抗R2の比を用いて増幅する比較増幅器32及び出力トランジスタ34を含んで構成することができる。例えば、基準電流源30が流す電流を100μAとし、(R1/R2)=1000とすれば、出力端子24にはI2=100μA×1000=100mAの電流が出力される。
【0023】
制御回路18は、充電検出素子14に流れる全充電電流に応じて、電流源回路20から供給できる充電制御I2の大きさを決定し、充電制御トランジスタ12のオン・オフを制御して、電池8に対する充電を制御する機能を有する回路である。例えば、充電の初期において、全充電電流(I1+I2)を大きくし、さらに充電制御トランジスタ12のオン・オフのデューティを大きくしたい場合には、充電制御トランジスタ12における発熱が許容値を超えないように、電流源回路20による充電電流I2を大きくする。充電が進んで来て、全充電電流(I1+I2)を少なくできるようになれば、電流源回路20の分担分を低下することができる。そして、ある程度の充電状態になれば、電流源回路20の動作を停止し、充電制御トランジスタ12のオン・オフ制御のみで電池8の充電制御を行うことができる。制御回路18による充電制御は、公知の定電流制御、定電圧制御、あるいはプログラム的に充電電流を変化させるプログラム制御等を用いることができる。
【0024】
このように、全充電電流(I1+I2)の一部の充電電流I2を電流源回路20に分担させることで、充電制御トランジスタ12に流れる充電電流I1の大きさを抑制することができる。例えば、全充電電流(I1+I2)=500mAとして、上記の例で、電流源回路20の出力をI2=100mAと設定すれば、充電制御トランジスタ12によってオン・オフされる充電電流をI1=500mA−100mA=400mAと低減することができる。このようにして、充電制御トランジスタ12に流れる充電電流I1を電流源回路20によって低減できるので、充電制御トランジスタ12の発熱を抑制できる。また、電池8に対する全充電電流の大きさを増大することができ、充電時間を短縮することができる。
【0025】
なお、上記では、制御回路18と電流源回路20とを一体の集積回路で構成するものとしたが、もちろん、制御集積回路16の機能を、1つの集積回路とせずに、2つの個別回路素子で構成してもよい。また、電流源回路20を制御集積回路16の一部として集積化したことで、制御集積回路16の発熱が心配であるときは、電流源回路20の電源側端子22又は出力端子24側に適当な抵抗素子を配置し、抵抗素子を発熱させることで、制御集積回路16の発熱を抑制するものとしてもよい。
【0026】
図1の例では、充電制御トランジスタ12を電源アダプタ6側に配置したが、これを電池8側に配置することもできる。図3は、そのような電池充電システム11の構成を示す図である。図1と同様の要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。ここでは、電源アダプタ6側に充電検出素子14が、電池8側に充電制御トランジスタ12が配置されている。この場合でも、電流源回路20を含む第2充電パスは、充電制御トランジスタ12に並列に配置される。すなわち電流源回路20のプラス側端子は、充電検出素子14の他方側端子及び充電制御トランジスタ12のソースに接続され、電流源回路20のマイナス側端子は、電池8のプラス側端子に接続される。このような配置によって、電流源回路20は、全充電電流(I1+I2)の一部のI2を分担し、充電制御トランジスタ12を流れる電流I1の大きさを抑制し、その発熱を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る実施の形態における電池充電システムの構成を示す図である。
【図2】本発明に係る実施の形態における電流源回路の内部構成を示す図である。
【図3】電池充電システムの他の構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0028】
6 電源アダプタ、8 電池、10,11 電池充電システム、12 充電制御トランジスタ、14 充電検出素子、16 制御集積回路、18 制御回路、20 電流源回路、22 電源側端子、24 出力端子、26 制御端子、30 基準電流源、32 比較増幅器、34 出力トランジスタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電用電源アダプタと充電対象電池との間に配置され、充電制御トランジスタと充電電流を検出する充電電流検出素子とが直列に接続されて構成される第1充電パスと、
充電制御トランジスタと並列に配置され、充電電流の一部を分担して流す充電電流源回路を含む第2充電パスと、
充電電流検出素子の検出値に応じ、充電制御トランジスタ及び充電電流源回路の動作を制御して充電状態を制御する充電制御回路と、
を備えることを特徴とする電池充電システム。
【請求項2】
請求項1に記載の電池充電システムにおいて、
充電制御回路は、充電対象電池の充電状態を監視し、所定の充電状態に到達したときに充電電流源回路の動作を停止することを特徴とする電池充電システム。
【請求項3】
請求項1に記載の電池充電システムにおいて、
第2電流パスは、充電電流源回路と抵抗素子とを直列に接続して構成されることを特徴とする電池充電システム。
【請求項4】
請求項1に記載の電池充電システムにおいて、
充電電流源回路と充電制御回路とが一体のICで構成されることを特徴とする電池充電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−67551(P2008−67551A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−244666(P2006−244666)
【出願日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(506227884)三洋半導体株式会社 (1,155)
【出願人】(000214892)鳥取三洋電機株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】