説明

電池外装ケースの傷の検査装置

【課題】鋼板製の円筒状となった電池外装ケースにおける内部欠陥を、磁気的手段により精度よく検査する。
【解決手段】電池外装ケース1を、非磁性体材料からなる直線状のパイプ4内に挿入し、スライダ3等を用いて直線運動させる。パイプ4の外側の近接した位置に、対向して配置された磁極6と磁気センサ2とを備えた漏洩磁束検出装置7を設置して、電池外装ケース1に磁束を流すとともに漏洩磁束を検出する。パイプ4内を直線運動する電池外装ケース1は、パイプ4に案内されて磁気センサ2との距離が略一定の状態に保持され、内部の欠陥を精度よく検出することが可能となる。電池外装ケース1を直線運動させるとともに、漏洩磁束検出装置7をパイプ4の回りに回転するように構成すると、単一の磁気センサにより電池外装ケース1の全面の検査を行うことができる。電池外装ケースの回転が不要なため、ハンドリングが容易となり、タクトタイムを短縮することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば薄板鋼板等の磁性体材料からなる円筒形の電池外装ケースについて、その表面付近の傷など内部欠陥の有無を、磁気的手段を用いて自動的に検査する電池外装ケースの傷の検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な乾電池においては、電池外装ケースにはニッケルメッキ等の表面処理を施した薄板鋼板が使用される。電池外装ケースの中には、薄板鋼板の素材を深絞り加工により円筒状に加工して製造するもの、あるいは、さらにしごき加工を加えて電池外装ケースを製造するものがある。深絞り等の製造方法においては、薄板鋼板の素材は、加工の過程でプレスの型や工具と接触し、強い力を受けて大きな変形が生じる。
【0003】
深絞り加工を行う薄板鋼板の素材には、素材の鋼板の製造過程で発生するブローホールによる細かい穴や非金属介在物の混入などの不可避的な欠陥が存在することがある。素材にこのような欠陥が存在すると、深絞り等の加工の際に、欠陥の個所から亀裂などの傷が生じる場合があり、また、素材に欠陥がないときでも、加工過程においてプレスの型等との接触により、鋼板の内部に内部欠陥が生じる場合がある。
【0004】
乾電池を長期間使用すると、電解液等の劣化に起因して液漏れを起こし乾電池を電源とする電子機器等を汚染し損傷させる虞れがある。さらに、複数個の乾電池を直列に使用する機器において、1個の乾電池の極性を誤って逆に接続したようなときは、その乾電池に逆電流が流れてガスが発生し乾電池を破裂させる虞れもある。乾電池の外装ケースは0.1mm〜0.2mm程度の薄い鋼板であるので、これに傷があると、その個所から液漏れが起こり破裂の原因ともなる。そのため、乾電池の外装ケースにおいては内部欠陥のあるものを不良品として極力排除する必要がある。
【0005】
本件の出願人は、磁気的手段を用いて電池外装ケースの内部欠陥を検査する装置として、円筒形の電池外装ケースの検査に適した検査装置を提案している(特許文献1参照)。この検査装置は、図5に示されるように、円筒形の電池外装ケース1を回転装置101の非磁性体からなる回転軸102に嵌め込み、電池外装ケース1の両側に対向して設置した磁性の異なる磁極から電池外装ケース1に磁束を流すものである。電池外装ケース1に内部欠陥が存在するときは、電池外装ケース1の薄板鋼板を流れる磁束が亀裂等の欠陥が存在する部位においては曲がりを生じ、図6(a)のように薄板鋼板の表面から外部に漏れ出す漏洩磁束が発生する。この漏洩磁束を磁気センサ2によって検出することにより、電池外装ケース1の内部欠陥の有無を判別することができる。
【0006】
特許文献1に開示されている前記検査装置においては、回転装置101で電池外装ケース1を中心軸の周りに回転させながら、磁気センサ2によって磁気量を測定する。磁気センサ2が欠陥部分を通過したときは、図6(b)に示すとおり、測定される磁気量(信号レベル)に漏洩磁束に基づく鋭いピークが現れ、測定された信号の信号処理を実施すると、欠陥部分の周方向位置を特定することが可能である。そして、磁気センサ2をアクチュエータ103により軸方向に移動させると、電池外装ケース1の全面に亘って欠陥の有無を探査できる。
【0007】
【特許文献1】特開2006−153856号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
円筒状の電池外装ケースに対する前記検査装置は、比較的簡単な装置でありながら内部の傷等を精度よく検出することが可能である。しかし、この検査装置は、回転する電池外装ケースと磁気センサとの間隔を一定に保つ必要があり、検査をする際には、電池外装ケースの中心軸と回転装置の中心軸とが正確に一致するように電池外装ケースを取り付けなければならない。電池外装ケースの直径方向の両側には磁束を流すための磁極が設置されているが、強力な磁力線が存在する場所では、磁性体である電池外装ケースを回転軸に取り付けるのは困難であって、磁極の近傍で電池外装ケースをハンドリングするには磁力線の消勢が可能な電磁石を用いることとなり、励磁電源や電流制御装置が必要となる。
【0009】
また、回転装置により電池外装ケースを回転させたときは、種々の要因で電池外装ケースに直径方向の振動が生じる。例えば、電池外装ケースの回転方向の重心位置は、厳密にはその中心軸とは一致していないため、重心の偏心に起因する振れ回り振動が発生する場合がある。このような直径方向の振動が生じると電池外装ケースと磁気センサとの間隔が変化する結果、欠陥の検出精度が低下し、振動の振幅が一定値を超えて大きくなると検出が不可能となる。
【0010】
本発明の課題は、上述の不都合を伴うことなく、円筒状の薄板鋼板製の電池外装ケースの内部欠陥を精度よく検出することのできる電池外装ケースの傷の検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題に鑑み、本発明の電池外装ケースの傷の検査装置は、円筒状の電池外装ケースを非磁性体材料からなる直線状のパイプ内に挿入して直線運動させ、この電池外装ケースに磁束を流して内部欠陥を探査するようにしたものである。すなわち、本発明の電池外装ケースの傷の検査装置は、「円筒状の電池外装ケースの欠陥を検査する装置であって、前記電池外装ケースが挿入される円形断面の中空部を備えた、非磁性体材料からなる直線状のパイプと、前記パイプ内で前記電池外装ケースを移動させる駆動装置と、前記電池外装ケースに磁束を流すよう前記パイプの外側に対向して置かれた極性の異なる磁極及び漏洩磁束を検出する磁気センサを備えた漏洩磁束検出装置とを有している」ことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の電池外装ケースの傷の検査装置は、請求項2に記載のように、前記漏洩磁束検出装置の磁気センサを、前記パイプの円周方向の位置を変えた状態で前記パイプの軸方向に複数配置することができる。
【0013】
また、本発明の電池外装ケースの傷の検査装置は、請求項3に記載のように、前記パイプに軸方向に延びる切欠き部を形成し、前記駆動装置が前記切欠き部を介して前記電池外装ケースを移動させるように構成することができる。
【0014】
また、本発明の電池外装ケースの傷の検査装置は、請求項4に記載のとおり、前記漏洩磁束検出装置が、前記パイプの周りに回転するよう構成してもよい。
【0015】
また、本発明の電池外装ケースの傷の検査装置は、請求項5に記載のとおり、前記漏洩磁束検出装置の磁極を、永久磁石の磁極とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明においては、漏洩磁束を検出して電池外装ケースの欠陥の有無を判別するにあたり、円筒状の電池外装ケースを非磁性体材料からなる直線状のパイプに挿入し、このパイプの中で電池外装ケースを直線的に移動させる。パイプの外側の近接した位置に、対向して配置された磁極と磁気センサとを備えた漏洩磁束検出装置を設置して、電池外装ケースに磁束を流すとともに漏洩磁束を検出する。パイプの内径は、電池外装ケースの直線運動に支障のない限りで電池外装ケースとの間に間隙が小さくなる寸法、つまり電池外装ケースの外径よりも僅かに大きな寸法に設定されており、パイプ内を直線運動する電池外装ケースは、パイプに案内されて磁気センサとの距離が略一定の状態に保持される。したがって、磁気センサが相対的に移動する電池外装ケースの軸方向について、内部の欠陥を精度よく検出することが可能である。また、検査にあたり電池外装ケースには直線運動のみを加えるため、ハンドリングが容易となりタクトタイムの向上を図ることができる。
【0017】
また、被検査体である電池外装ケースは、漏洩磁束検出装置の磁極と離れた位置からパイプを通して漏洩磁束検出装置に送られる。電池外装ケースは磁性体であるが、磁極とは一定距離離れた位置でパイプへの挿入作業等のハンドリングが実行されるため、磁極からの磁力線の影響は実質上無視できる。その結果、漏洩磁束検出装置の磁石として、請求項5の発明のように、磁力線発生の励磁電源等が不要な永久磁石を使用することが可能であって、検査装置を簡易な構造とすることができる。
【0018】
請求項2の発明のように、漏洩磁束検出装置の磁気センサを、パイプの円周方向位置を変えた状態でパイプの軸方向に複数配置した場合には、磁気センサが対向する複数の電池外装ケースの円周方向位置について欠陥の検出が可能となる。こうした漏洩磁束検出装置をパイプの軸方向に複数段設置すると、実質上、電池外装ケース円周方向の全ての位置における欠陥を探査することができる。
【0019】
請求項3の発明のように、パイプに軸方向に延びる切欠き部を形成し、電池外装ケースをこの切欠き部を介して駆動装置で移動させるように構成すると、電池外装ケースの直線駆動手段を簡易に構成することができ、パイプの下部に駆動装置を設置することにより、検査装置の軸方向の長さが短縮される。
【0020】
請求項4の発明は、対向する磁極及び磁気センサを備えた漏洩磁束検出装置を、パイプの周りに回転するように設置したものである。磁気センサを回転させると、単一の磁気センサによって、直線運動を行う電池外装ケースについて円周方向の全ての位置における欠陥の探査が可能となり、検査に要する磁気センサの数を大幅に節減できることとなる。回転する磁気センサからの出力信号は、いわゆるスリップリングを介して外部に取り出すことができる。
【0021】
直線運動を行う電池外装ケースに対し相対的に回転する磁気センサを用いて漏洩磁束を検出すると、固定した磁気センサを使用するものに比べ、欠陥の検出可能範囲が拡大するという有利な効果もある。この効果について以下に説明する。
【0022】
磁束の流れる電池外装ケースが直線運動を行う場合、パイプの軸方向の固定位置では、電池外装ケースの両端部が通過するときに急激な磁束変化が発生する。磁気センサが固定位置に置かれていると、電池外装ケースの両端部が通過する際には、磁束変化の影響により漏洩磁束の検出が困難となるため、電池外装ケースの両端部には欠陥の検出が実質的に不可能となる領域、いわば不感帯が存在する。これに対し、漏洩磁束検出装置の磁気センサを回転させたときは、磁気センサが基本的には電池外装ケースの円周方向に相対的に移動する。そのため、電池外装ケースの両端部の通過時に発生する磁束変化の影響は、軸方向については極めて限られたものとなり、欠陥の検出が不能な領域は事実上存在しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図1から図4に基づいて、本発明の電池外装ケースの内部欠陥の検査装置について説明する。ちなみに、薄板鋼板から円筒形の電池外装ケースを加工するには、深絞り加工法、絞りしごき加工法(DI加工法)、絞りストレッチ加工法(DTR加工法)あるいは絞り加工後ストレッチ加工としごき加工を併用する加工法等があるが、本発明の検査装置は、いずれの加工法による成形品にも適用できるものである。
【0024】
図1は、本発明の検査装置の第1実施形態の概要を表す概略図であり、(a)には検査装置の全体図を、(b)には漏洩磁束検出装置の詳細図を示す。これらの図において、図5に示す従来例において対応する部品等には同一の符号が付してある。
【0025】
図1(a)に示すとおり、第1実施形態の検査装置の下部には長手方向に延びるスライダ3が置かれている。スライダ3の上部には直線状のパイプ4が配置されており、これはブラケット等の図示しない固定手段によってスライダ3に取り付けられている。パイプ4は、漏洩磁束検出に影響を与えない非磁性体によって形成されており、例えば透明なアクリル樹脂等の合成樹脂によって形成するとよい。パイプ4の端部近傍には電池外装ケース1の投入口41が形成されるとともに、下部には長手方向に延びる切欠き42(同図(b)参照)が形成されている。パイプ4の内径は、電池外装ケース1の外径よりも僅かに大きな寸法、例えば電池外装ケース1が外径14.5mmの単3乾電池用であるときには15mmの内径に設定されている。
【0026】
スライダ3上には、パイプ4内に挿入された電池外装ケース1を直線的に移送するためのテーブル5が載置されている。テーブル5はABS樹脂等の非磁性材料で製作され、その上面には、パイプ4に形成されている切欠き42を通過して電池外装ケース1に接触する移送用爪51が立設されている。スライダ3には、テーブル5を直線的に往復動させる送りねじ機構等が内蔵されており、投入口41からパイプ4内に挿入された電池外装ケース1は、移送用爪51に軸方向端部を押されてパイプ4内を移動させられる。
【0027】
検査装置の長手方向の略中央位置には、パイプ4の直径方向に対向して配置された2個の磁極6とホール素子等の磁気センサ2とを備えた、図1(b)に示す漏洩磁束検出装置7が設けられている。本実施形態においては、磁気センサ2は、電池外装ケース1に近接させるためにパイプ4に埋め込まれ、検出信号の増幅、前段階処理を実行するプリアンプ21が磁気センサ2と一体に固定されている。プリアンプ21には、その電源となり、また、検出信号を処理し不良品の判別を行う制御装置8が接続されている。漏洩磁束検出装置7の2個の磁極6は永久磁石であって、磁石のN極とS極とが対向するよう配置されており、両方の磁極6は磁気回路を構成する枠体(ヨーク)61によって結合されている。永久磁石としては、ネオジュウムを含有する合金からなる保磁力の大きいネオジ磁石が用いられている。漏洩磁束検出装置7における磁極6、磁気センサ2及びプリアンプ21は、パイプ4と一体に合成樹脂によってモールドして組み付けることが好ましい。
【0028】
次いで、第1実施形態の検査装置の作動について説明する。
【0029】
検査を実施するときには、スライダ3によってテーブル5を図の左端に位置決めし、被検査体である電池外装ケース1を投入口41からパイプ4内に挿入してテーブル5の移送用爪51の間に位置させる。テーブル5をスライダ3により図の右方に移動させると、電池外装ケース1は移送用爪51で押されてパイプ4内を直進する。電池外装ケース1が漏洩磁束検出装置7の位置に到達したときには、図5のA−A断面図と同様に、対向する磁極6から電池外装ケース1を通過する磁束が流れるようになる。このとき電池外装ケース1に内部欠陥があるとそこで漏洩磁束が生じ、磁気センサ2によって検出される。こうした検出原理は、図5及び図6に示す従来技術のものと同様である。電池外装ケース1を漏洩磁束検出装置7の部分を通過して直進させることにより、磁気センサ2に対向した部位の欠陥を電池外装ケース1の軸方向に沿って検出することができる。
【0030】
本発明の検査装置においては、電池外装ケース1がパイプ4に案内されてその内部で直線運動を行う。パイプ4の内径は、電池外装ケース1の外径より僅かに大きい寸法に設定されおり、電池外装ケース1は、磁気センサ2との距離が略一定の状態で直進するので、距離の変動に伴う検出精度の低下は防止される。また、電池外装ケース1のハンドリングを行う投入口41の位置は、漏洩磁束検出装置7から離間しているので、磁極6として永久磁石を使用してもその磁力線の影響がハンドリングを行う位置に及ぶことは殆どない。
【0031】
図1(b)の実施形態の漏洩磁束検出装置7は、磁気センサ2を枠体61の中央部に1個備えたものであるから、欠陥を検出する電池外装ケース1の円周方向位置は1個所に限定される。これに対し、図2に示される変形例のように、非磁性材の連結部材62によって対向する位置に他の磁気センサ2aを設置すると、円周方向位置の2個所において、電池外装ケース1の軸方向における欠陥の有無の検出が可能となる。そして、このような漏洩磁束検出装置7を、角度を変えてパイプ4の軸方向に複数個設置し、電池外装ケース1を通過させることにより、実質上電池外装ケース1の全ての円周方向位置について欠陥の検出ができる。なお、図2に示す漏洩磁束検出装置7を設置する場合には、電池外装ケース1を直線運動させる駆動装置として、電池外装ケース1をパイプ4内で後方から押圧する、後述するような駆動装置を用いるとよい。
【0032】
図3及び図4は、漏洩磁束検出装置をパイプに対して回転させる本発明の検査装置の第2実施形態を示すものであり、図3は漏洩磁束検出装置部分の長手方向の概略図、図4は図3のB−B断面図となっている。
【0033】
図3に示すとおり、第2実施形態の検査装置には、図1の第1実施形態と同様な長手方向に延びる直線状のパイプ4が配置されている。即ち、パイプ4はブラケット等の図示しない固定手段によって検査装置の基台に固定されている。パイプ4は、第1実施形態と同様に、非磁性体の合成樹脂からなり、挿入される電池外装ケース1の外径よりも僅かに大きな内径を有するものである。
【0034】
パイプ4の周囲に設置される漏洩磁束検出装置7は、パイプ4が貫通する中心孔を形成した円盤状の本体部71の両側に、連結アーム72によって結合される円筒状の軸受部73を設けたものである。軸受部73は基台に固定されたベアリング9に挿入されており、漏洩磁束検出装置7はパイプ4の回りを回転するように支持されている。本体部71、連結アーム72及び軸受部73は合成樹脂で一体に成形され、軸受部73の一方には、漏洩磁束検出装置7を回転させるための歯車伝動装置74が設けられている。歯車伝動装置74の代わりにベルト伝動装置等を用いてもよい。
【0035】
漏洩磁束検出装置7の本体部71には、図4に示すように、枠体(ヨーク)61によって結合された2個の磁極6と、ホール素子等の磁気センサ2及びプリアンプ21とが配置されており、これらは、モールドにより合成樹脂の本体部71に埋め込まれて固定されている。2個の磁極6と磁気センサ2とは、漏洩磁束検出装置7を貫通するパイプ4の直近位置に配置されている。プリアンプ21の入出力電路は、図3の左側の軸受部73に固定したリング状の電極75及びこれに接触する端子電極からなるスリップリングを介して、外部の制御装置8に接続されている。また、本体部71における枠体61の反対側には、回転体である漏洩磁束検出装置7の静的バランスを図る目的で、枠体61等と重量の等しいバランサ錘76が埋め込まれている。
【0036】
パイプ4内に挿入された電池外装ケース1を移動させるため、電池外装ケース1を押圧する押圧ロッド10がパイプ4内に設置され、押圧ロッド10は、流体圧シリンダ等の往復動アクチュエータ11に連結されている。押圧ロッド10の反対側には、電池外装ケース1に接触する対抗ロッド12が配置されており、対抗ロッド12はばね装置13に連結されている。電池外装ケース1に当接する押圧ロッド10と対抗ロッド12とは非磁性体からなり、押圧ロッド10の先端部には、軟質ゴム等の摩擦材14が取り付けてある。これは、磁極6を有する漏洩磁束検出装置7を回転させた場合には、電池外装ケース1に回転磁界が作用し、誘導電動機の原理で電池外装ケース1が回転を起こす現象が生じるので、その回転を防止するよう、電池外装ケース1を摩擦材14を介して回転不能の押圧ロッド10に当接させるものである。
【0037】
次に、第2実施形態の検査装置の作動について説明する。
【0038】
検査を実施するときには、被検査体である電池外装ケース1をパイプ4内に挿入した後、往復動アクチュエータ11を作動させて押圧ロッド10の摩擦材14を電池外装ケース1に当接させる。この状態で押圧ロッド10を図3の右方に移行させると、電池外装ケース1は、対抗ロッド12のばね装置13のばねを圧縮しながら漏洩磁束検出装置7の部分を通過する。漏洩磁束検出装置7は、図示しない回転装置により歯車伝動装置74を介して回転駆動されている。したがって、その磁気センサ2は、電池外装ケース1の表面を螺旋状に移動するので、電池外装ケース1の移動速度と漏洩磁束検出装置7の回転速度とを調整すれば、単一の磁気センサによって実質上電池外装ケース1の全面を走査することができ、全面の内部欠陥の検出が可能である。検査が終了したときは、押圧ロッド10を左方に移行させると、ばね装置13のばねによって電池外装ケース1が投入口位置まで戻され、取り出しが可能となる。
【0039】
ところで、磁気センサ2が固定された位置を、磁束が流れる電池外装ケース1の軸方向両端部が通過するときは急激な磁束変化が発生するため、第1実施形態のように磁気センサ2が固定されていると、電池外装ケース1の両端部には欠陥の検出が実質的に不可能となる領域が存在する。これに対し、第2実施形態の検査装置においては、磁気センサ2が電池外装ケース1に対し螺旋状に、つまり基本的には電池外装ケース1の円周方向に相対的に移動するため、電池外装ケース1の両端部の通過時に発生する磁束変化の影響は、軸方向については極めて限られたものとなり、事実上電池外装ケース1の軸方向の全てに亘り欠陥の検出が可能となる。
【0040】
以上詳述したように、本発明は、円筒状となった薄板鋼板製の電池外装ケースの内部欠陥を検出するため、電池外装ケースを非磁性体材料からなる直線状のパイプ内に挿入して直線運動させ、この電池外装ケースに磁束を流して内部欠陥を探査するようにしたものである。上述の実施形態においては、磁極として永久磁石を使用しているが、電磁石を用いることもできる。また、磁気センサとしてホール素子以外のものを使用するなど、前記実施形態に対し種々の変形が可能であることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1実施形態に基づく電池外装ケースの検査装置の概略図である。
【図2】本発明の第1実施形態における漏洩磁束検出装置の変形例を示す図である。
【図3】本発明の第2実施形態に基づく電池外装ケースの検査装置の概略図である。
【図4】図3のB−B断面図である。
【図5】従来の電池外装ケースの検査装置の概略図である。
【図6】漏洩磁束による内部欠陥の検査の原理等を示す図である。
【符号の説明】
【0042】
1 電池外装ケース
2 磁気センサ
3 スライダ
4 パイプ
41 投入口
42 切欠き
5 テーブル
6 磁極
61 枠体(ヨーク)
7 漏洩磁束検出装置
8 制御装置
10 押圧ロッド
11 アクチュエータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の電池外装ケースの欠陥を検査する装置であって、
前記電池外装ケースが挿入される円形断面の中空部を備えた、非磁性体材料からなる直線状のパイプと、
前記パイプ内で前記電池外装ケースを移動させる駆動装置と、
前記電池外装ケースに磁束を流すよう前記パイプの外側に対向して置かれた極性の異なる磁極及び漏洩磁束を検出する磁気センサを備えた漏洩磁束検出装置とを有している
ことを特徴とする電池外装ケースの傷の検査装置。
【請求項2】
前記漏洩磁束検出装置の磁気センサが、前記パイプの円周方向位置を変えた状態で前記パイプの軸方向に複数配置されたことを特徴とする請求項1に記載の電池外装ケースの傷の検査装置。
【請求項3】
前記パイプには軸方向に延びる切欠き部が形成されており、前記駆動装置が前記切欠き部を介して前記電池外装ケースを移動させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電池外装ケースの傷の検査装置。
【請求項4】
前記漏洩磁束検出装置が、前記パイプの周りに回転することを特徴とする請求項1に記載の電池外装ケースの傷の検査装置。
【請求項5】
前記漏洩磁束検出装置の磁極は、永久磁石の磁極であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の電池外装ケースの傷の検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−256403(P2008−256403A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−96534(P2007−96534)
【出願日】平成19年4月2日(2007.4.2)
【出願人】(390003193)東洋鋼鈑株式会社 (265)
【Fターム(参考)】